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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「告白小説、その結末」(Based on a True Story)(仏・白・ポーランド映画):真実と虚偽、現実と幻想が入り混じった虚実の被膜で82歳のロマンスキー監督が観客を弄んでいる。

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どうもロマンスキー監督が観客を弄んでいる。
真実と虚偽、現実と幻想が入り混じっているような気がする。
だからわざわざ「実話に基づく」と念を押す。
流行作家デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)に大ファンだと近づく若い美人、エル(エヴァ・グリーン)。
デルフィーヌが聞く、本当の名前は?だからエルよ。エルは彼女と言う代名詞だ。

スティーブン・キングの原作でキャシー・ベイツとジェームス・カーン主演の「ミザリー」(90)もベイツ扮する大ファンと言う女性に捕えられ、連載中のストーリーが気に入らないと拷問を受けるカーンの小説家の話が似ているが、ロマンスキーはもっと複雑で虚実の膜は厚く、見終わっても真相は分からない。

似ていると言えば、もう一つポランスキー自身の「ゴーストライター」(10)かもしれない。デルフィーヌの小説の構想や取材メモは4冊の小手帳に書き込んであるが、いつの間にかエルの手に渡り彼女の頭に入っている。エルの小説家志望でセッセと書いている。

デルフィーヌ自身はスランプで彼女のPCはワンフレーズも打てない空白だが、ある日彼女担当の編集者が「原稿を貰ったが、前作以上の傑作だ」と褒められる。原稿など送った覚えがない。

冒頭は日本でも見かける作家がファンサービスのため本屋で開くサイン会。
デルフィーヌが(セニエ)は、母親について綴ったデビュー小説がベストセラーとなり、作家としてのキャリアをスタートさせた。
詰めかけたファンが延々と列を作るがデルフィーヌは体調が悪く終わりにしてもらう。
しかし一人だけそっと近づき物陰でサインをもらうエル(グリーン)。喫茶店で偶然出会った二人の話は弾み互いに気に入った二人は親友になっている。

デルフィーヌが悩んでいるのは脅迫状めいた手紙を受け取るようになったこと。
「自分の家族を晒している」と非難した匿名の手紙が頻繁に送られてくる。フェイスっブックでデルフィーヌを名乗り、アパートに侵入してボヤ騒ぎを起こす。

家主から立ち退きを迫られたデルフィーヌを自分の部屋に引き取り、酷い不眠症にかかったデルフィーヌに精神安定剤を与え、執筆に専念させるため講演の依頼などはすべて断る。エルはすっかりマネージャー、いやデルフィーヌを公私ともに管理し支配するようになっている。
優しい夫、フランソワ(ヴィンセント・ぺレス)はTVの人気コメンテーターでデルフィーヌに割く時間は無い。
しかしエルは優しく労わってくれるかと思うと時にはヒステリーを起こすなど情緒不安定な面もある。

デルフィーヌが階段から転落し入院したことを受け、エルは所有の田舎の山荘に連れて行きベッドから動けない彼女にいそいそと食事をつくりスープを飲ませて体力を回復させようとする。しかし体調は更に悪化する。
デルフィーヌはコーヒーやスープなど飲み物から食事に毒が盛られていると疑う。
「ミゼリー」の世界だ。スリラーとしても段々面白くなる。

原作はフランスの人気作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」。監督は「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」などの巨匠ロマン・ポランスキー。「チャイナタウン」や「ローズマリーの赤ちゃん」など次々と秀作を送り出してきたが既に83歳。
ベテランのテクニックを発揮し、至る所に意味ありげなレッドへリングをまき散らしふたりのヒロインをアンビバレントな関係に放り込みこれからどうなるのだと予測不能の運命をスリリングに描く。

人からは「何故殺鼠剤で自殺未遂などしたのか?」と聞かれ、執筆した覚えの無い原稿を編集者に褒められる。果して「エル」なんて代名詞の女性がいたのかと根本的な原点に立ち返らなければ頭の整理も出来ない。
曖昧になっていく現実とフィクションの境目。
神仙の域に達したポランスキーは観客をたぶらかして楽しんでいる・

映画とは反対に女性運が悪く「少女淫行」で拘留中国外逃亡したとしてアメリカへ戻ると逮捕される。愛妻シャロン・テートをカルト集団に殺されたかと思うと15歳のナスターシャ・キンスキーとの少女淫行も有名でようやく三番目の今の妻、この映画の主役のエマニュエル・セニエで落ち着いている。

ヒロインを演じるのは、ポランスキーの妻、52歳のエマニュエル・セニエ。「フランティック」や「赤い航路」などの他ポランスキーの前作「毛皮のヴィーナス」でセザー賞候補になっている。
謎のヒロイン、エヴァ・グリーン。22歳の時「ドリーマー」で衝撃的デビューをした中堅女優。37歳になるがまだまだ綺麗だ。
この二人の醸し出すレズっぽい神秘的ムードが映画を引っ張る。

6月23日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町

「ランペイジ 巨獣大乱闘」(Rampage)(米映画):凶悪企業が「兵器」として 動物を巨獣化する遺伝子実験をしていて爆発し、実験用のモルモットのウィルスが地球上にばら撒かれ普通の動物たちが突如巨獣化

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昨日(27日)は早朝からパーキンソン病主治医の椎名先生を逓信病院に訪ねた。
5月9日より2週間入院してメディケイション(施薬)の変更とその経過診療を行うというものだった。
しかしNPO法人「子どもに笑顔」は大変忙しい時期で5月半ばにインドアッサムに医療ミッションを6月15,16日とスマイルアジアカウンシル会議を東京(ヒルトン)で開催しホスト団体としてアジア各国と米国からの理事とその一行の面倒を見なければならない。
施薬変更を通院でマネージできないかと、総合東京病院の脳神経内科のK先生にセカンドオピニオンを求め、ドパミントランスポーター・シンチグラフィーを受けたことで事前に通告したのにも関わらず椎名先生の勘気に触れてしまった。

K先生はあくまでもセカンドオピニオンで主治医を変える積りは無いこと、NPO活動がピークにある時に入院は出来ないことを昨日はじっくり話し合い、了解を得た時はホッとした。
新薬「エフピーOD錠」を今朝から飲み始めたが、警告されていたように少しくラクラする。飲んだ直後に電車に乗るのは確かに危ない。
幸い今日は休日、天気が良いのに外出も控えざるを得ない。


紹介する映画は「ランペイジ 巨獣大乱闘」。

ある大企業の宇宙衛星の秘密実験室で「兵器」になるように、動物を巨獣化すべく遺伝子組み換えをモルモットなどの動物を使って行われていた。
ところが実験が上手く行ったところで火災が発生、明らかに実験員は総て死亡し生き残った一人の女性化学者が実験動物を檻に入れ実験室を脱出直後大爆発。地球の3か所に遂落する。
実験モルモットは地球をウィルスで汚染し始める。

シカゴと大洋の海中とサンディエゴのワイルドライフ・サンクチュアリだ。所長はデイビス・オコヨ(ドゥエイン・ジョンソン)。アルビノ(白子)のゴリラ、ジョージとは大の仲良しで手話の会話は観客を笑わす。
デイビスは恋人のケイト・コールドウェル博士(ナオミ・ハリス)と巨大化したジョージを引き連れ戦場のシカゴで事を収めようとする。

原案はゲームセンターの良くあるストーリーのゲーム展開は陳腐で先は読める。
だがストーリーで客を呼ぶのでなく、巨大生物がどれほど暴れて大都市を破壊するか、巨獣同士が角突き合わせてとどのように戦うか。
CGの特殊効果の出来栄えを鑑賞に来ているのだ。

最新を誇る遺伝子実験の失敗で地球上にばら撒かれたウィルスに感染した
普通の動物たちが突如進化し巨大になり始める。
日ごとにゴリラ、オオカミ、ワニなどが猛烈に大きくなり、凶暴化。おまけに腹が
減っているので野生の熊なんか頭から食べてしまう。

観客の期待通り、陸・海・空からおかまいなしに襲い、街で破壊の限りを尽くす大乱闘をおっぱじめる。

元はと言えば巨悪の兄妹、クレア(マリン・アッカーマン)とブレット・ワイデン(ジェイク・レイシー)が遺伝子組み換えで狂暴で超巨大化した動物を「兵器」として世界に売り込み金儲けをしようとしたのだ。
だからこそ一目を避けて宇宙に実験室を作り組み換え作業を試行錯誤していた時に火事、爆発事故が発生したのだ。

生態系(生物ピラミッド)が一夜にしてひっくり返り最低に位置で捕食される人間たち。
あの憎々し気なクレアも真っ赤なドレスごとジョージのバカでかい口に補織り込まれてしまう。

空飛ぶ狼は何とか仕留めるが、巨大ワニの黒いウロコはチタンより硬く、デイビスのロケット砲も戦車の機関砲でもビクともしない。
足の指は車の大きさを超え、尻尾の先がスパイクボールのように変異し、ドラゴンと恐竜が合体したような姿は無敵だ。

空飛ぶヘリコプターを叩き落し、戦車に真っ向から向かってくるからさすがデイビスも逃げ出す。

そうなるとシカゴで暴れまわる巨獣たちを一掃するにはスティルス爆撃機の原爆投下しかない。
だが、もうだが、もう一つの解決策はケイトが実験室から持ち出した解毒剤だった。

主役は最強のプロレスラー、「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソン。
「ジュマンジ」に続いてジョンソン人気は高まる一方。このB級怪獣映画を大ヒットに導いた。

相方のケイトを演じるナオミ・ハリスは「マンデラ自由への道」(13)や「ムーンライト」などで注目を受けた。

ひと昔と違い、面白いのは良い方はジョンソンやハリスなどの黒人で悪者はアッカーマンやレイシーなどの白人だ。

監督はブラッド・ペイトンで、ジョンソンとはヒットした「センター・オブ・ジ・アース2」(12)と「カリフォルニア・ダウン」(15)に続いて3作目のコラボレーション。

アメリカでは4月13日から4101館で公開され34.5M。
ヴィデオゲームの映画化では最高のBOの一つ。
当初の予測では28M超は無理だと計測されていたが、ドウェイン・ジョンソンのスター・パワーで積み上げた。「ジュマンジ」と言い「ワイルドスピード」シリーズと言いジョンソン主演だと客が入る

現在の国内累積は66.6Mに対して,海外は216.4M,ワールドワイド総計は283M(305億円)。

制作費はMKT費抜きで120M(129億円)をかけているからリクープには海外市場での長い脚が必要だ。

5月18日より丸の内ピカデリー他全国公開される

「アメリカン・アサシン」(American Assassin)(アメリカ映画):婚約旅行中に無差別テロに恋人を殺されたミッチ・ラップは生涯かけてリベンジしようとCIAの対テロ極秘スパイ・チームに加わる

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今日、4月29日は「昭和の日」となっているが、太平洋戦争中の国民学校では天皇(昭和天皇)誕生日なので「天長節」と呼ばれていた。

 疎開先の長野県上松町の国民学校(小学校のこと)の音楽教師の下手なオルガンの伴奏で
「今日の良き日はおおぎみの生まれ給いし良き日なれ」
70数年経っても歌詞がスラスラ出てくるから不思議だ。もっともその時「おおぎみ」って何だとか訳わからなく歌っていただけだ。

アンダマン海に面したタイのプーケット、だと思うが、設定はスペインのイビサ島の浜辺。婚約した恋人同士、ミッチ・ラップ(ディラン・オブライエン)がカトリーナを残して飲み物を取りに離れた途端に無差別テロ事件が起きる。自動小銃で水着姿の観光客がバッタバッタと倒れる。
ミッチに駆け寄ろうとしたカトリーナは数発の銃弾を受けて砂浜に倒れ、その彼女にトドメをさす髭面のテロリスト。ミッチも銃撃を受け意識不明のまま倒れる。

 恨み骨髄のテロリストへの復讐に人生を捧げることを決意した青年ミッチ・ラップ。猛々しい闘争本能と戦闘の潜在能力を高く評価されCIAの対テロ極秘スパイ・チームにスカウトされる。

原作者、ビンス・フリンは前立腺がんと2年戦い47歳で早逝したが、累計売上げ2500万部を誇る人気小説「ミッチ・ラップ」シリーズの初の実写映画化で、テレビシリーズ「HOMELAND」のマイケル・クエスタ監督が長編劇所用映画のデビュー作にもなる。

小説に従い映画もシリーズ化されるならカトリーナを惨殺したテロリストとそのボス、マンスルー達へリベンジを誓いCIA対テロチームにリクルートされるまではプロローグだと言える。

ヒット作、YAの「メイズ・ランナー」三部作に主演しすっかりスターの座を掴んだ、ディラン・オブライエンはミッチシリーズの大人のアクションスリラーの主人公となるとティーネージャーの顔は捨て髭に覆われ鍛えた肉体を誇示逞しい青年に変化している。

実際の年齢27に戻って派手なアクションができる。「メイズ~」撮影中に大怪我をして撮影は1年休んだのだが、オブライエンのミッチはケガの後遺症は微塵も感じない派手なアクションをスタント抜きで演じたと聞く。

加入したCIAにミッチは、元ネイビー・シールズ(海軍特殊部隊)の鬼教官、スタン・ハーリー(マイケル・キートン)のもとで過酷な訓練を受ける。

キートンは頭髪を剃りスキンヘッドの冷徹な容姿でミッチたち訓練生を猛烈にしごく。
オスカー作品「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「スポットライト 世紀のスクープ」「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」などで最近は演技派俳優になったキートンの新ジャンルだ。

鬼教官に苛め抜かれる訓練生は「愛と青春の旅立ち」(82)の士官候補生、リチャード・ギアと鬼軍曹, ルイス・ゴセット・Jrを思い出す。
スタンの猛特訓で初心を貫きテロの最前線で活躍するまでに成長したミッチに与えられた最初のミッションは、ロシアから流出したプルトニウムで核兵器製造をもくろむテロリストの陰謀を阻むためヨーロッパへ向かう。

イスタンブールやローマなどのヨーロッパ各国の大都市を舞台に、複雑な国際情勢や諜報活動の内幕を見せながら、ミッチのアドベンチャーは(観光案内的)壮大なストーリーで展開する。

ミッチの追い求める当面の敵は、正体不明の武器商人上がりのテロリスト「ゴースト」(テイラー・キッチュ)。ゴーストもスタンの特訓を受けたシールズ出身だけに技術も戦法もミッチに引けを取らない。自分を追い出したCIAとアメリカを恨んでいるが、正体不明で神出鬼没のテロリスト・ゴーストに言いように翻弄され、「核テロのカウントダウン」が始まり、最大の試練に直面する。

共演にCIA上司ケネディに「エイリアンVSプレデター」などの黒人美女のサナ・レイサン、ゴーストに「バトルシップ」などのテイラー・キッチュ、イスタンブ―ルの現地協力員アニカ役のシヴァ・ネガーなどが脇を固める。

B級スパイアクション映画だが終盤の海中での核爆発の凄まじさにビックリする。
CGの特殊効果の凄まじさ。

駆逐艦巡洋艦は襲来する大津波に飲まれ大空母は数十台のジェット戦闘機や爆撃機を掲載したまま沈没する。

ヒットしなければシリーズ打ち切りだが、2017年9月15日、全米3154館で封切られ、公開初週末に14.84M,週末興行収入ランキングは2位。

収支採算を見ると制作費は33M(36億円)を投じ、ワールドワイド総計は62.7M(68億円)。宣伝PR費用もあるから結果は赤字だろう。

比評家の評価は低い。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesの批評家支持率は34%、観客の出口調査(CS)はB-評価と高く無い。

奇特なプロデューサーが現れるか、日本やアジアでヒットしない限り、この一本で「ミッチ・ラップ」シリーズは終焉を迎えるかも知れない。

6月29日よりTOHOシネマズ日比谷他で公開される。

「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire)(アメリカ映画):「ウェスト・サイド・ストーリー」と「乱暴者」を足して2で割ったような西部劇式ロックミュージカル作品。

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この映画には思い入れがある。
80年代前半、僕は電通でマックスファクター(MF)を担当していたが、CMタレントとしてハリウッドのMF本社からジャックリーン・スミスを使うように指示されていた。
誰も知らないだろうがTVの「チャーリーズ・エンジェル」の1人でまあ美人だった。
(今年72歳になる)

エンジェルの1人ならファラ・フォーセットを選ぶ、スミスなんて日本では人気がなく足を引っ張るだけだ、とハリスMF日本社長に掛け合ったら「君が本社を説得しろ」と言う。「但し今年は後2か月しかないから、新タレントは来年からだ」

ジャックリーン・スミスの撮影をLAで行ったら条件付き。スミスの旦那が売れないフォトグラファー。彼をカメラマンとして使い、CMにも相手役で出演させること」
アホらしいが本社の命令だと言うので従った。

「俺はアルマーニしか着ないと3着もスーツを作らされ(撮影後も返却無し)、おまけにスミスの写真には霞が掛かっている。冗談じゃない,ピントがシャープなのを出せと大喧嘩。
仲裁に入ったMF本社の宣伝部長によれば、スミスは顔の皺が目立たないようにスクリーンをかけた写真しか広告に使わせないのだと。

ハリス社長に「あんなひも付き婆あじゃなくて、19歳のダイアン・レインを使いたい」と申し出た。
友人でベバリーヒルに住むバート・I・ゴードン監督が演劇学校時代のダイアンの父親を知っていて、紹介して貰った僕はNYへ飛んで父親、ダイアンと3人でイタリアンで食事をしながら長い話をして交渉は成功した。

1984年だったと思うが「「ストリート・オブ・ファイヤー」と「コットン・クラブ」の後、暫く仕事が入って無いから「いいわ」と二つ返事を貰った時は天にも昇る心地。

僕は間にエイジェンシーやプロダクションを通さず「産地直送」スタイルだから、ギャラはタレントに丸々入るし、こちらもコミッション抜きだからその分安く、ウィン・ウィンで話は早い。
父親はNYタクシーの運転手でそれにモデル(プレイボーイ誌)との離婚慰謝料でぴーぴーだったので、父親にマネ-ジャー料を払う約束をした。

「リトル・ロマンス」の子役以来、日本ではダイアンは人気者。
それに時間があるのでCMが完成すると、キャンペーン毎に年2回来て貰い、福岡から札幌まで販社と愛用者サービスのイベントに付き合ってくれた。
5-6年ほど付き合ってくれただろうか、その後ウィノナ・ライダーに変えたが。

東京へ戻りハリス社長以下,余りダイアンを知らない幹部に何回も見せたのが「コットン~」と「ストリート~」だった。

「コットン~」は佳作だが「ストリート~」の出来の悪さに、MFがいつ「ダメだよ」と言うかとヒヤヒヤした。しかしダイアンのキュートさ美しさは変わらない。

ウォルター・ヒル監督としては最低の作品だろう。
「ザ・ドライバー」や「ウォリアーズ」「ロングライダーズ」「48時間」などヒット作の実績が泣くぜ。

西部劇の形式のロック映画、と言うか「ウェスト・サイド・ストーリー」と「乱暴者」を足して2で割ったような作品。
人気ロック歌手、エレン・エイム(ダイアン・レイン)が故郷リッチモンドでの凱旋ライブで歌っている最中に舞台からストリートギャング「ボンバーズ」に拉致される。
リッチモンドと言ってもノースカロライナ州かヴァージニア州か分からない。架空の都市になっている。ロケ地はシカゴで撮った。

今と違いタバコの煙は立ち込めネオンが間歇的に輝き、雨が降っている。地下鉄が高架を走り、倉庫が立ち並ぶ姿はNYのハドソン川沿いの「ヘルス・キッチン」を思わせる。

レイブン(ウィレム・デフォー)をボスとする「ボンバーズ」はマーロン・ブランドの「乱暴者」をコピーしたような大音量を響かせたバイクの暴走族だ。
ブランド並みに前髪を垂らしリーゼントで決めるデフォーはこの時、29歳の若さだ。

エレンの大ファンのリーヴァ・コーディ(デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ)は弟のトム・コーディ(マイケル・パレ)にエレンを取り戻してくれと頼む。
エレンのマネージャー、ビリー・フィッシュ(リック・モラニス)が救出してくれたらトムに1万ドルを払うと申し出る。
「ゴーストバスターズ」などのコメディアン、モラニスは真面目くさったチビで姿を見るだけでユーモラスだ。

トムは偶然出会った陸軍女兵士マッコイ(エイミー・マディガン)を相棒に報酬を1千ドル払うと約束し、ボンバーズのアジトを急襲し、エレンを救い出す。
マッコイもトムと組むからには格闘技や銃器の操作に長けている。女性をバディに選ぶのも変わっているがオリジナルは巨漢の男性だったと言う。

トムとエレンはかつて恋仲だったが、エレンが歌手を目指すために心ならずも別れていた。
今回の救出をきっかけに再び心が揺れるが、トムが金のために自分を救出したとエレンが誤解し仲違いする。
しかし、トムがビリーから謝礼を受けとらなかったと知り、二人の間にふたたび愛の炎が燃え上がる。

面目を潰されたボンバーズのボス、レイヴェンはボンバーズを率いて街を襲撃しようとしていた。
その前に立ちはだかるトム。レイヴェンはトムに一騎討ちを申し出、
トムも受けて立つ。拳銃は使わず斧で一対一の壮絶な対決の末、トムが勝利する。

ボスの敗北、住民の決起の姿をみてボンバーズは引き上げ、街に平和が訪れる。

エレンはトムに復縁を申し出るが、トムは「俺は君の付き人になる男じゃねぇ」と言い、二人は再びそれぞれの道を歩むこととなる。左団扇でヒモ暮らしは男の憧れだが、トムは拒否するなんてカッコ良い、。
ステージで歌う彼女の姿を見守りつつ、トムはマッコイと共にリッチモンドの街を去って行く。

制作費を14.5M(当時52億円)かけたが興収は8.1M(29億円)と経費をリクープ出来ずに大赤字。
もともとは「トム・コーディの冒険」(The Adventures of Tom Cody)と命名された3部作構想で、
「The Far City」「Cody's Return」と続く予定だったがこう外れてしまったら1作で終了。

クレジットで「ロックンロールの寓話」というテロップが示すように、ライ・クーダーとそのバンドが非常に効果的に使用されている。

エレンと舞台でいつも共演するのは「アタッカーズ」と言う黒人ヴォーカルグループ。プラッターズを思わせる素晴らしいハーモニーを聞かせる。
あれだけのバイオレンスと大爆発があるが、人が一人も死なないという珍しいアクション映画。マイケル・パレにもう少しスター性があればもっとヒットしたのに平々凡々の芝居と顔付では観客を惹きつけるに至らなかった。

85年度の「キネマ旬報」で、読者による選出でベストワンに選ばれたとはとても信じられないが、ドラマでなく歌って踊るダイアン感激したのだろう。

見せて貰ったニュープリントのディジタル・リマスター版はオリジナルより鮮明にイメージを映し出す。

7月21日よりシネマート新宿他で公開される。

「ウィンチェスター・ハウス アメリカで最も呪われた屋敷」(Winchester)(豪・米映画):カリフォルニア・サン・ノゼの豪邸は怨霊にとりつかれ38年間,当主が亡くなるまで増改築を続ける

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 先週の金曜日(27日)に全世界で一斉公開された超大作Disney-Marvelの「Avengers: Infinity War」(邦題「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」WD配給、TOHOシネマズ日比谷他GWに全国公開中) は、アメリカでは4744館で上映され、週末デビューBOランキングの歴代トップの「Star Wars: The Force Awakens」(15)の247M(269.7億円)を抜いて250M(273億円)に達した。

いよいよ今年のサマーシーズンの大作映画のキックオフだ。

マーベル・コミック「アベンジャーズ」の実写映画シリーズ第3作。
コミックの実写映画を、同一世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)シリーズとしては第19作品目の映画。

制作費はMKT費(広告やPR)を除いて300M(328億円)と言われる超弩級のスケール。

海外市場で380M(415億円)を積み上げ、ワールドワイド総計で630M(688億円)をたたき出した。
この数字には5月11日に開ける中国は含まれていない。

52か国で開けた海外市場で最大BOはUKの42.2M(46億円)で、2位の韓国が39.2M(42.8億円),次いでメキシコの25.1、ブラジルが18.8M、フィリピンの12.5M,タイランドが10M,インドネシアの9.6M、マレイシアが8.4Mと東南アジアでは日本はカヤの外のようだ。(今日明日には数字が判明する)
インドは18.6Mで自国以外の洋もので今までで最高の成績。オーストラリアでは「Force Awaken」に次ぎ歴代2位の23M。

ヨーロッパに目を向けるとフランスで17.7M、ドイツは14.7M、イタリアは11M,スペインは8.3M
ワールドワイド総計の記録はUNIの「The Fate of the Furious」(邦題「ワイルド・スピード ICE BREAK」) (17)の541.9M(592億円)だったが、630M(688億円)はそれを100億円近く凌駕する。

ストーリーは相も変わらず、地球の平和を守り人類を救うために戦う、イアンマン、キャプテン・アメリカ、スパイダーマンらヒーローチーム「アベンジャーズ」の活躍を描くSFアクション



 さて今日紹介する作品は、アメリカでは今年2月2日からの週末に公開された。
スーパーボウルの中継があるので映画館への足は少なく興行成績は低調だったが
3位加わり「ジュマンジ」や「メイズ・ランナー」に挑戦したのは新登場のイギリスとオーストラリアの恐怖映画「Winchester」。2480館で上映し9.3M(10.2億円)を挙げている。CBSフィルムが3.5Mで買い取りライオンズゲイトが配給。

しかし批評家からはサンザンの酷評を受けRotten Tomatoでは僅か9%と言う最低記録を作った。観客の出口調査シネマスコアはB-評価となっている。
観客の20%が18歳以下、36%が25歳以下、60%が女性。

ウィンチェスターとは馴染みのあるライフル銃の製造会社の名前で、年寄りはジェイムズ・スチュワートとシェリー・ウィンターズ主演の大ヒットした「ウィンチェスター銃73」を見ている。
南北戦争後、連発式モデル73は装薬量を増やした名器でコルト拳銃と並んで「西部を征服した連発銃」として名高い。

その後同社は数十種類のライフル銃、散弾銃と各種弾薬を設計開発し売り出して会社は順調に伸びている。
第二次世界大戦でもアメリカの軍用銃器製造数130万挺のうち80万挺を製造した。現在でも世界的に有数な銃器製造会社となっている。

ウィチェスター家は銃社会のアメリカでは大富豪の一族だと言うことを前提にしている。
サラ・ウィンチェスター(ヘレン・ミレン)は1862年に22歳で結婚し24歳で愛娘を恵まれたが1か月後に死亡する。

41歳の時に夫、ウィリアム・W・ウィンチェスターが亡くなり、夫が遺した広大な屋敷に暮らしていた。
夫はウィンチェスター銃製造会社の社長であったため、その突然死は銃で殺された人間の怨霊が原因だと噂された。

子供と夫を立て続けに亡くしたサラは悲しみの底にあったが、自分も怨霊に取り憑かれているのではないかという思いが日に日に強くなっていた。ついに耐えきれなくなったサラは霊媒師に助言を仰いだ。
サラはその助言通りにカリフォルニア州サンノゼに引っ越し、亡くなるまでの38年間を邸宅の増改築の建設を続ける。

傍から見れば狂気の沙汰であったが、サラにとっては怨霊から逃れるため無数の部屋を作る必要があったのだ。
会社の経営陣はサラの奇矯な行動を訝しく思い、上手く行けば経営権を取り戻そうと1906年、精神科医のエリック・プライス(ジェイソン・クラーク)を送り込む。
サラの診察のために邸宅に赴くことになったプライス医師は自分でも怪奇現象に遭遇し、サラが正気であることを確信するに至る。

多くの部屋に怨霊が残したもの、または怨霊そのものの残滓があったりする。

映画自体は墓の上に家を建てた「ポルターガイスト」や悪魔にとりつかれた女の子の「エクソシスト」に似ている。

しかしホラー映画なのに少しも怖く無い。
オスカー女優の「クィーン」が黒ずくめの衣装を纏って怖がって見せても観客は女王様がそんなモンに怯えるかよ、とハナから信じないからだ。

実話に基づくと強調してもダメ、夜半にガタゴトと言う音とミステリアスな低音通奏で陰鬱な音楽を流しても信じない。ぼんやりと妖怪らしき姿を認めるが怖くも何とも無いんだなあ。
泰然自若の女王様のキャスティングは恐怖スリラーではミスキャストだ。

「ゼロ・ダーク・サーティ」でウサマ・ビン・ラディンを勇猛果敢なCIAの活躍で拉致したジェイソン・クラークも剛毅過ぎる。

監督はドイツ生まれのオーストラリア人、マイケルとピーターのスピエリッグ双子兄弟、
デビュー作「アンデッド」(03)が注目を集めた。「ソウ」シリーズの最新作「ジグソウ」(17)の監督にも抜擢されヒットした。

アメリカ人はB級ホラー映画大好きピープルだが女王様やCIAの勇者では格上過ぎる、と言うもののヘレン・ミレンのホラー映画を一目見てみたいと言う好奇心は湧く。

「銃規制」を放任しているトランプ大統領にウィンチェスター邸の怨霊がとりついたら、この映画はヒットするぜ。

6月29日よりTOHOシネマズシャンテ他で公開される。

「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(Avengers: Infinity War)(アメリカ映画):究極の力を秘めた6つのスストーンを狙う最凶にして最悪の敵、宇宙の大魔神、サノスが地球へ降臨。

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昨日(1日)のTOHOシネマズ日比谷のスクリーン1の15時55分の回は前方の1-2列にちらほら空席はあるが9割を超える盛況だった。

スクリーン1は11の劇場の中でも456人収容できる最大の小屋で、その上TCX(TOHO CINEMAS EXTRA LARGE SCREEN)と銘打って独自規格によるWall-to-Wall(左右の壁から壁まで)の壁一面に広がった画面サイズを約120%拡大したスクリーンに映写する。確かに迫力のある映像に没入できる映画鑑賞環境だ。

先週金曜(27日)に全世界一斉に公開され、デビュー週末3日間の興行成績の史上トップの記録を塗り替えた。

アメリカでは言うまでもなく首位は超大作Disney-Marvelの「Avengers: Infinity War」で、4744館で上映され、週末デビューBOランキングの歴代トップの「Star Wars: The Force Awakens」(15)の
247M(269.7億円)を抜いて大差をつけて250M(273億円)で着地した。

さあ、今年のサマーシーズンの大作映画のキックオフだ。

マーベル・コミック「アベンジャーズ」の実写映画シリーズ第3作。
マーベルの実写映画を、同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)シリーズとしては第19作品目。

最初は自分たちのご都合主義のMCUかと思っていたら単体+混合部隊と公開のタイミングも計算に入れている。

制作費はMKT費用を除いて300M(328億円)と言われる超弩級のスケール。

海外市場で380M(415億円)を積み上げたが、ワールドワイド総計の記録はUNIの「The Fate of the Furious」(邦題「ワイルド・スピード ICE BREAK」) (17)の541.9M(592億円)だった。
ワールドワイド総計で100億円近くの大差の630M(688億円)で着地。
52か国で開けた海外市場で最大BOはUKの42.2M(46億円)で、2位の韓国が39.2M(42.8億円),次いでメキシコの25.1、ブラジルが18.8M、フィリピンの12.5M,タイランドが10M,インドネシアの9.6M、マレイシアが8.4Mと東南アジアでは日本はカヤの外。撮影もImaxカメラで総て撮り、Imax劇場のBOはワールドワイドで41M、USは22.5Mを挙げている。

この超ヒットもWD会長のボブ・アイガー(Bob Iger)の功績だろう。
2005年10月よりマイケル・アイズナーの後任としてWD(ウォルト・ディズニー・カンパニー)のCEOに就任し、
直後の2006年に「ピクサー・アニメーション・スタジオ」を買収し、2009年には4B(4400億円)と言う大金を払って「マーベル・コミック」を、2012年には「ルーカス・フィルム」を子会社とした。
巨費を叩いたすべてのM&Aが成功ししっかりとペイオフしているのもアイガーの慧眼によるものだ。
「今年はマーベルを買収した10周年目でそれを祝うような超メガヒットだ」とMarvelの社長Kevin Feige.

気になるのはピクサー創始者の1人、ジョン・ラセターを昨年暮れから休職させており、サバティカルは4月にあけたがラセターの居場所が無いということだ。

僕は3弾目の「アベンジャー」が一番面白いと感想を述べたら皆賛同する。
宇宙の大魔神、最強、最悪の敵サノス(ジョシュ・ブローリン)が、荒廃した自分の惑星を捨てて地球に現れる
アモイ像みたいな顔でヒーローたちの2倍の巨体を揺るがし当たるを幸いなぎ倒す無敵な悪者(ヴィレイン)が主人公だからだ。
アイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)を中心にキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、スパイダーマン(トム・ホランド)、マイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)ブラック・ウィドウ(スカレット・ヨハンセン)ら最強ヒーローチームが迎え撃つ。

大ヒットで驀進中の「ブラック・パンサー」の国王ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)がエデンの園のようなアフリカの秘境「ワカンダ」でサノスと対決する。
「デッドプール」はシリーズ2作目が近々公開だから顔を出さないし、贔屓のワンダーウーマンも登場しない。

6つのストーン、すべてを手に入れると世界を滅ぼす無限大の力を得ることができる「インフィニティ・ストーン」。
宇宙誕生以前に存在した6つの特異点が、大爆発によって宇宙が生まれた時に残骸となり、6つのエネルギーの結晶へと姿を変えたもの。
ブルー、レッド、パープル、イエロー、グリーン、オレンジ色に輝く6つの結晶は、それぞれが異なるパワーを秘めている。
インフィニティ・ストーンを意のままに操れるのは、並外れた力を持つ者のみ。

その究極の力を秘めた石を狙う最凶にして最悪の敵、サノス(ジョシュ・ブローリン)が地球へ降臨。
この危機にアイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)やキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、スパイダーマン(トム・ホランド)ら最強ヒーローチーム「アベンジャーズ」が集結。
派手で痛快な死闘が展開する。

しかしサノスにかかるとアイアンマンはブリキの人形、スパイダーマンは子ども扱いだ。ヒーローたちは鎧袖一触忽ち負け犬としてシッポを巻く。

サノスは地球を破滅するためにやって来たのではない。
逆に守るために降臨したのだと主張する。

サノスの主張は基本的には正しい。人口が爆発的に増加している現在彼のいた惑星も地球もこのままでは滅亡する。
6つの石を使い金持ちも貧乏人も公平に半分滅ぼさねばならない。

トム・ハンクス主演の「インフェルノ」でもロバート・ラングトン教授はマッドサイエンティストの作り出したウィルスを探す。
生物学者ゾブリストが100億人を超えると地球は破滅する。人類増加問題の解決策として恐ろしい伝染病を世界に広めなければならない。

サノスは自分は民主的で公平な人間だと言う。
「貧乏人も金持ちも差別しない」人口の半分を抹消するのだと宣言する。

監督はアンソニー・ルッソとジョー・ルッソの兄弟。「キャプテン・アメリカ」(14&16)を2作演出したが「アベンジャー」は初めてだが、複数のヒーローたちが入り混じる大バトル・ロイヤルを、観客に分かり易いように整理し手際よく見せてくれた手腕が買われての抜擢だろう。

エンディングでサノスは「帰って来る」と大魔神を主役にシリーズとなる予告が入る。次作第4弾藻待ち遠しい。

TOHOシネマズ日比谷他全国公開中

「アンロック/陰謀のコード」(Unlocked)(英映画):優秀なCIA捜査官のアリス・ラシーンは容疑者を尋問していたが不手際でパリの無差別テロを阻止できなかったトラウマで現場から身を引く。

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この映画もミッドタウン日比谷のTOHOシネマズ日比谷で見た。
オープニングして4日も経つのにディズニーランド状態は変わらない。
エレベーターやエスカレーターに乗るのに10分程待たされる。
1階で乗らずにB1で箱に乗らなければ絶えず満員だ。
つまらないレストランも開業前と同じメニューなのにしっかり値上げをしている。ティナント料も安くないだろう。
三井不動産のマーケティング戦略の勝利だ。

スェーデンのスティーグ・ラーソン原作の「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパスが主演を務めるサスペンス・アクションだがどうにも退屈な映画だ。

男スパイはジェイムス・ボンドとかジェイソン・ボーンとか多いが、女スパイものはパッとしない。
それでも最近は「レッド・スパロウ」や「トゥーム・レイダー」などでジェニファー・ローレンスやアンジョリナ・ジョイが活きのいい演技で女スパイも見直されて来たが、
39歳の子持ちの主婦、ノオミの不器用で愚図な芝居で一向に盛り上がらない。

2012年のパリの無差別テロの際、容疑者を今一歩追い詰められなかった自分の過失で、子ども6人を含む24人を死なせてしまったというトラウマを抱える元CIAの腕利き尋問官アリス・ラシーン(ノオミ・ラパス)。

今では心機一転,フィールド(現場)から、ISが支配すると言われるイースト・ロンドンの荒廃した街に移り住み、潜伏捜査官ながら、ケースワーカーとして静かな生活を送る。

ある日、ラングレーのCIA本部から元上司でアリスを引き立ててくれたエリック・ラッシー(マイケル・ダグラス)がロンドンに現れ、アリスの才能が勿体ない、現場復帰せよと励ます。

アリスのボスであるCIAロンドン支社のチーフ、ボブ・ハンター(ジョン・マルコビッチ)がロシア製のバイオテロ計画を察知し、容疑者を逮捕。

アリスはハンターに呼び戻され、絶妙な尋問ながら簡単に完落ちに追い込むが、その裏に二重、三重の裏切りとスパイの秘策が込められている。
長い友人の英国情報部MI6のエミリー(トニ・コレット)にアリスは協力を求めるが曖昧でどっちつかずの態度をとるばかり。

教えられたアパートへ行くと空き巣のジャック・オルコット(オーランド・ブルーム)がTVを盗んで出て来るところに鉢合わせ。

しかしテロの実行に関わるメッセージをアリスは掴んでいて、それを探ろうと二重スパイたちは躍起になる。

アリスを皮肉な目で追い冷淡ながら正義の味方のハンターを演じるマルコビッチはスキンヘッドでいつもの彼の様相ではない。

一筋縄ではいかない謎のイケメンのオルコットを「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのオーランド・ブルーム、

アリスのメンターで信頼していた元上司、エリックは「ウォール街」でオスカー俳優の
マイケル・ダグラス、喉頭がんで長い間スクリーンを外れていたが73歳の今も矍鑠としている。
MI6にエミリーに「マイ・ベスト・フレンド」のトニ・コレット、

監督は「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」などの73歳のマイケル・アプテッド。出来の悪い脚本だが監督としても何か新しいトリックを持ち込んで欲しいと思うが前にどこかで見たクリシェばかり。

例えばカウントダウンの始まったバイオテロ爆発装置のリモコンをテロの仕掛人(名は伏す)と争い敵を倒してスィッチをオフにした時は残り3秒を切っていた。何十とこんなシーンを見ているので結末は知れていて興奮もスリルも感じない。

2017年の初夏から秋にかけてヨーロッパを中心に公開されたがフランスの$700K(7700万円)がトップで次いでイタリア、ロシア、イギリスと続くが1M(1億1千万円)を超えた国は無い。アメリカでは地方都市での映画祭で上映されたが、一般公開されていない。
つまり、映画はコケた。

TOHOシネマズ日比谷他全国公開されている

「正しい日 間違えた日」(Right Now, Wrong Then)(韓国映画):自分の作品群を上映し講演をするミニ映画祭に早く水原に着いた映画監督チュンスは魅力的な女性ヒジョンに出会う。

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日本では、ホン・サンス監督のような映画作家は見当たらない。当たるを幸いなぎ倒して世界の映画祭で赫々たる戦果を挙げている。

アメリカに留学して1985年、カリフォルニア美術大学 を卒業。
1989年,シカゴ美術館附属美術大学 で美術修士号 (MFA)を取得。

1996年に監督デビュー作「豚が井戸に落ちた日」で青龍映画賞の新人監督賞を受賞、2010年に「ハハハ」が第63回カンヌ国際映画祭である視点賞を受賞。

2015年に第68回ロカルノ映画祭で「正しい日|間違えた日」で金豹賞(グランプリ)。
2016年に「Yourself and yours」(日本未公開)で、第64回サンセバスチャン国際映画祭・シルバー・シェル賞(最優秀監督賞)を受賞。

勲章を一杯もらたって映画はヒットしない。大体がジャンル映画と言うかアートフィルムで少数の小さな小屋でシコシコ上映するだけだ。

しかし外国の映画祭へ出品すると何かしら褒めて貰い、何かしらの賞を貰う。
勿論ホン・サンス監督の熱狂的ファンも少なくないが、彼らだけでそのままでは商売にならない。
受章して凱旋興行で権威主義に影響され易い素人観客が集まり何とか食って行けると言うのが現状だ。

日本では知られざるホン・サンス監督とその作品、「それから」、「夜の浜辺でひとり」、「正しい日 間違えた日」、「クレアのカメラ」の4本が6月から7月にかけてヒューマントラスト有楽町他で連続上映されることになった。

4本の中で僕の好きな(まともな)楽しい作品「正しい日 間違えた日」を紹介したい。

ホン・サンス監督は脚本を書かない。時間と場所が決まればそこから映画が出来る。
だから主人公は監督か大学教授、身のまわりの人間関係をドラマにする。

例えば「クレアのカメラ」(17)の場合、
2016年のカンヌ映画祭でフランスの大物女優、、イザベル・ユペールはポール・ヴァーホーヴェン監督作「エル ELLE」で、韓国の大スター、キム・ミニはパク・チャヌク監督作「お嬢さん」と、夫々主演女優賞を狙い共にコンペティション部門出品の上映でカンヌに来ていた。

身近なキャラクターと背景を使いドンドン作品を送り出す。
たまたま出会ったお気に入りの女優二人と一緒に、その場で構想を練って仕上げた。

そして実生活でも恋人であることを公言し注目を集める監督ホン・サンスと女優キム・ミニ。
「正しい日 間違えた日」は、そのホン・サンス×キム・ミニの記念すべき初タッグ作だ。

「タイミング」の違いによってたどりつく、2つのラスト。
恋の天国と地獄をそれぞれ描く、少し変わったラブストーリー。

主催者のミスで予定より一日早くソウルから離れた水原(スウォン)に到着してしまった映画監督のハム・チュンス(チョン・ジェヨン)。
自分の作品群を上映し講演をするローカルのミニ映画祭だ。
暇を持て余しているところで、魅力的な女性ヒジョン(キム・ミニ)に出会う。
二人はコーヒーを飲み、スシを摘まみながら、人生について語らい、お酒も入ってほろ酔い加減でいい雰囲気になる。

運命的に出逢った男と女がたどることになる、2つの物語。
異なるのは「タイミング」の違いだけという設定で、映画の前半と後半が2通りのエンディングを迎えるユニークなラブストーリーである。

ほろ酔いになったチュンスとヒジョンは、どんな2つの結末にたどり着くのか?
また運命を分けるタイミングの違いとは?男と女の本音と建前、男の下心に女のプライド、恋の天国と地獄を目撃する楽しさに溢れた一本だ。

「前半」は、あの時は正しく 今は間違い。
映画監督のハム・チュンス(チョン・ジェヨン) は自分のフィルムの特別講義で水原(スウォン)にやってくる。
スタッフのミスで予定より一日早く到着してしまった彼は、観光名所で魅力的な女性ヒジョン(キム・ミニ)を見かけ声をかける。絵を描いて暮らしているという彼女のアトリエを訪れ作品を褒め、寿司屋で過ごし、一緒にヒジョンの先輩が集まるカフェを訪れる。甘い雰囲気の2人だったが、酔った先輩たちが監督の女癖の悪さをヒジョンの前で曝け出しそして監督は妻帯者だと知らせる。明らかに不機嫌になるヒジョン。翌日の講義も滅茶苦茶で一人寂しくソウルに戻る監督。

「後半」は、今は正しく あの時は間違いだった
映画監督のハム・チュンスは特別講義でスウォンにやってくる。絵を描いて暮らしているという魅力的な女性ヒジョンと知りあい、アトリエにやってきた2人。
チュンスが正直に絵を評したことで、ヒジョンを怒らせてしまう。
寿司屋で弱さを見せるヒジョンに、チュンスは「愛している」と告白し、自分には妻がいる事実を告白する。
それでも愛していると道で拾った指輪をヒジョンの指に嵌める。
翌日の特別講義に来ていたヒジョンの左手に指輪が光っている。
互いに気持ちを確かめ合う。そしてチュンス監督は一人ソウルへの帰途に就く。

どちらも結論はチュンスが一人でソウルへ戻るのだが、経過で男女間の感情が天と地のように異なるのがミソ。  
 
この手の映画はハリウッドでも多い。例えば「スライディング・ドア」(98)
監督・脚本:ピーター・ハウィット、主演がグウィネス・バルトロウ、

地下鉄に乗れた場合と、乗れなかった場合に起こるだろう二つのドラマを同時進行させて描く。
ジェリーと同棲中のヘレンは遅刻が理由で会社をクビになってしまう危機に直面し必死に地下鉄に乗り込もうとする。
「乗れた場合」:ヘレンは隣に座ったジェイムズと意気投合。が、家に帰るとジェリーの浮気現場に遭遇してしまう。

「乗れなかった場合」:取り残されたホームでひったくりにあい怪我をしたヘレンは病院へ。
その間にジェリーの浮気相手は帰り、ヘレンはジェリーの二股に翻弄される。

主人公のハム・チュンス監督を演じる47歳のチョン・ジェヨンは上手い芝居をする。
二通りを演じ分けるのだから ジョエンのパーフォマンスで映画の優劣が決まる。
カン・ウソク監督「シルミド/SILMIDO」(03)で青龍映画賞助演男優賞受賞し注目を浴びた。
このホン・サンス監督作品「正しい日 間違えた日」(15)は、第68回ロカルノ国際映画祭主演男優賞、韓国映画評論家協会賞主演男優賞に輝いた。

画家のユン・ヒジョンを演じるキム・ミニは38歳。
モデルとして活躍したのち、パク・チャヌク監督の「お嬢さん」(16)で青龍映画賞最優秀女優賞を受賞した。
ホン・サンス監督とは「正しい日 間違えた日」(15)で初めて組み、以降「夜の浜辺でひとり」(17)、「クレアのカメラ」(17)、「それから」(17)と、今やホン・サンス映画には欠かせないミューズとなっている。
「今は正しくあの時は間違い」で果たせなかったロマンスを今やパートナーとして一緒に暮らしている。

6月30日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される

「セラヴィ」(C‘est la Vie!)(仏映画):ベテラン・ウェディングプランナーのマックスは最後の仕事として、パリ郊外・フォンテーヌブローの古城を舞台に豪華絢爛な結婚式をプロデュースを請負う

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フランス喜劇映画は時には何が面白いのか分からないのが多いが、6年前に見た
「最強のふたり」(11)は良かった。
無職の黒人が介護に応募して車椅子の富豪の老人と親友になる話で年齢人種貧富の差を超えた心打つ映画だった。
その作品の共同監督・脚本、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュが熟練の腕によりをかけたコメディは期待通り笑わせてくれる。

ベテラン・ウェディングプランナーのマックスは最後の仕事として、パリ郊外・フォンテーヌブローの古城を舞台に豪華絢爛な結婚式をプロデュースすることを請負う。

ウェイターやキッチンスタッフを雇い、カメラマンやオーケストラをブッキング、会場を彩る花や、スタッフの衣裳、出席者の席順など細かな演出をセッティングし、マックスはいつも通り、式を成功させるための準備を整えていた。

30年間にわたり数多くの結婚式を手がけてきたベテラン・ウェディングプランナーのマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は、近頃、引退を考え始めていた。

そんなある日、評判を聞きつけたピエール(パンジャマン・ラヴェルヌ)とエレナ(ジュディット・シュムラ)というカップルから、あのルイ13世が所有していたパリ郊外・フォンテーヌブローの近くのクランス城を借り切り華やかな結婚式をプロデュースして欲しいと頼まれる。

ウェイターやキッチンスタッフを雇い、カメラマンやオーケストラをブッキング、会場を彩る花や、スタッフの衣裳、出席者の席順など細かな演出をセッティングし、マックスはいつも通り、式を成功させるための準備を整えていた。

しかし、マックスのそんな努力も虚しく雇ったスタッフは全て間抜けで頭が悪くことごとくドジを踏む。

例えばカメラマンのギイ(ジャン=ポール・ルーブ)はスナップショットを撮るよりガツガツとオードブルを食べるか人とお喋りばかり。
DJのジェームス(ジル・ルルーシュ)は新郎ピエールから「シックでエレガント」な曲を流してくれとの注文を無視、がさつでロック調のミュージックを大音響で流す。

最悪なのはマックスの長年の愛人、ジョジアーヌ(スザンヌ・クレマン)が別れ話を持ち出し、若くてイケメンのウェイターにスリスリしてマックスに嫉妬させ始める。

ウェイターはシワシワなシャツにおかしなヒゲ、新婦を口説きはじめるスタッフ、オーケストラはワンマンショー気取り、カメラマンはおしゃべりとつまみ食いを繰り返し、マックスの綿密に組み立てた完璧なプランとは逆に、感動的になるはずだった豪華な結婚式は滅茶苦茶になる。

最高に笑えたのは新郎を大きなバルーンで吊るし、城の外からパーティの出席者へ挨拶をするサプライズ。
強いライトを浴びてタキシード姿の新郎ピエールは優雅で美しい.ところが地上でバルーンのロープを握っている筈の2人のスタッフが話に夢中になり手を放してしまう。折からの風に流されて新郎は空中に消える。
そしてその後に合図を待たずにボンボンと花火が打ちあがる。

出席者全員は消えた新郎を探しに四方八方に散る。

主人公マックス役に「ムッシュ・カステラの恋」や「みんな誰かの愛しい人」の67歳になるジャン=ピエール・バクリ。

他にプライドの高いDJのジェームスは「この愛のために撃て」などのジル・ルルーシュ、
カメラマンのギイに「愛しき人生のつくりかた」のジャン=ポール・ルーブ、
ジュリアンに「夜明けの祈り」のバンサン・マケーニュなどが脇を固める。

「最強のふたり」「サンバ」などの監督と脚本を共同で行うエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの喜劇は快調に終盤を迎えるが、パーティ終了後に雇ったスタッフなどに再就職の斡旋をしたり、将来プランの助言をしているのが面白い。

例えばカメラマンのギイには「皆がスマホでスナップショットを撮るようになっているからカメラマンとしての将来は無い、昔の記者の職へ戻れよ。」
ギイが「それは僕も考えている。これからは昔取った杵柄のジャーナリストにカムバックして『戦場カメラマン』になるよ」と。

7月6日より渋谷シネクイントにて公開される。

「空飛ぶタイヤ」(日本映画):父親から受け継いだ零細運送業を営む赤松徳郎は自社のトレーラーが人身事故を起こしてしまい、製造メーカーから「整備不良」だと指摘され会社は倒産の危機に見舞われる。

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池井戸潤の小説が余り面白かったので一気に読んでしまった記憶がある。
今から10年程前だが、後の半沢直樹シリーズのようにリベンジ、それも倍返しのスタイルはここでも基底に流れる。

リベンジと言っても意図したものではなく、身に迫る炎を振り払うため真相を追及していたら大企業の会社ぐるみの巨悪な嘘にぶち当たるのだが。
オリンパスや神戸製鋼、三菱重工にしても大企業の「隠蔽する闇」はCSRやコンプライアンスなど横文字に頼らなくとも大和魂的正義の味方が「内部告発者」として必ず現れるのだと確信できるのが嬉しい。日本人も捨てたものじゃない。

しかし原作が映画になっても、ストーリーはしっかり頭に残っているので、
次に何が起こってどうなるかはすっかりスポイラー(ネタばれ)で、サプライズやスリリングさに欠けるのが難点。
やはり「見てから読む」ほうが正解だ。

原作は「三菱自動車リコール隠し事件」をモデルとした池井戸潤の経済小説で
第28回吉川英治文学新人賞、第136回直木三十五賞候補作にもなった。

実際の事故は、
2002年1月10日、神奈川県横浜市瀬谷区下瀬谷2丁目交差点付近の中原街道で発生した事故。
綾瀬市内の運送会社が所有する、重機を積載して片側2車線の走行車線を大型トレーラートラックのトラクターの140kgの左前輪が外れて、下り坂を約50メートル転がり、ベビーカーを押して歩道を歩いていた母子3人を直撃。母親(29)が死亡し、長男(4)と次男(1)も手足に軽傷を負った。(映画では2人で長男のみ)

神奈川県警が、大型トレーラーの実況見分を行ったところ、事故を起こした車両はハブが破損し、タイヤやホイール、ブレーキドラムごと脱落したことが判明。

三菱自動車側は、一貫して「ユーザー側の整備不良」だと主張したが、事故を起こした車両と同じ93年製トラックに装着されているハブの厚みが他社製よりも薄く、締付トルクを強く掛けた場合やカーブ時に掛かる荷重により金属疲労が生じハブが破断しやすいことが判明した。

これで三菱自動車は04年3月に製造者責任を認めて国土交通省にリコールを届け出、製造責任者5名が道路運送車両法違反容疑で、品質保証部門の元担当部長ら2名が業務上過失致死傷容疑で逮捕起訴され、法人としての三菱自動車も道路運送車両法容疑で刑事告発された。

この概要で見る限り、映画の中での事故を起こした運送会社の社長が会社倒産の危機に瀕して自己調査で真相追及したのでは無く、警察の調査で判明したと言うのだが、ヒーローを作り上げなければ小説も映画も成り立たない。

実際ボンクラな神奈川県警に、同じ車種の三菱自動車トレーラーの引き起こしたタイヤ脱輪事故のデータを提出したのだろうし、善意の内部告発者が出現したのだろう。

車両の欠陥によって命を落とす事故が発生しているならば、メーカーは第二の事故を防ぐためにも、すみやかにリコールを発表するべきなのだが、社の業績に響くとか責任者の自己保全のために隠蔽が行われた。

父親の後を継ぎ細々と小さな運送会社を経営する赤松徳郎(長瀬智也)。
ある日、自社のホープ自動車製トレーラーが中原街道を走行中、左前輪タイヤが脱落し、歩いていた母子2人に直撃し死傷者を出す。

 狩野常務(岸部一徳)を責任者とするホープ自動車は事故原因をユーザーの「整備不良」と決め付けられた赤松は警察からも執拗な追及を受ける。会社も信用を失い、倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。

しかし赤松は、事故原因は整備不良ではなく、事故を起こした車両自体に欠陥があったと考えホープ自動車の販売部沢田課長(ディーン・フジオカ)に面会を求め日参する。

居留守を使い会わない沢田に業を煮やし、同じ疑問を抱いて取材していた週刊誌記者、榎本(小池栄子)に励まされるが、榎本の記事はホープ財閥系各社からの多大な広告を掲載している週刊誌編集長に没にされる。

これだけ虐められ奈落の底に叩き落された時を地獄とすれば、反動として一縷の望みをかけたリベンジがいよいよ始まる。

赤松は更にヒートアップし自社の無実を信じ、家族や社員たちのために、トレーラーの販売元である巨大企業の自動車会社に潜む闇に戦いを挑む。

 縁は榎本から貰った同種の事故を起こしホープから脅かされて泣き寝入りした運送会社のリストと自社の闇に気付き「内部告発」に踏み切った沢田課長。

感動して泣かされるのは大企業に対してドン・キホーテ敵に果敢に立ち向かう零細企業社長・赤松徳郎の強固な意志。
経理担当の宮代専務(笹野高史)が「もったいない」と嘆く様がオーバーで笑える。

「内部告発」に踏み切り、出世を諦めるエリートコースの沢田課長や同僚の杉本(中村蒼)の正義感。沢田は企画部へ栄転するが仕事をさせて貰えない「飼い殺し」。
杉本は本社を追われ大阪支店へ左遷。


社長の暴挙(ホープからの1億円の慰謝料を断る)で一層の苦境に瀕しながらも更に強まる社員たちや家族との団結と絆。
日本映画独特のお涙頂戴の思い入れシーンは分っていても涙が零れる。

悪役が巨悪で憎々しくなければリベンし甲斐が無い。
次期社長を狙い会社ぐるみのリコール隠しを指揮し、少しでも意見を挟もうなら大声で恫喝する狩野誠常務役の岸部一徳は好演している。
半世紀前、ザ・タイガースでベースを弾き「サリー「」と呼ばれて女の子にキャーキャー騒がれた面影は微塵もない。
ホープ銀行の巻田専務(升毅)も狩野と結託している悪い奴なのだが出番が少ない。

主役の赤松徳郎を演じるTOKIOの長瀬智也はこの10年ほどは役者も兼業している。TVドラマが多いせいかクローズアップの顔の表情は熱心だが、映画的なミドルやロングショットでは余り上手く無い。

沢田悠太役のディーン・フジオカもモデルからミュージシャン、そして俳優になった。180センチ筋肉隆々のドラマーの「坂道のアポロン」はチビの桜井翔とのコンビで面白かった。

監督、元木克英は早稲田卒で松竹へ助監として入社。映画の現場でたたき上げたベテラン職人監督で「釣りバカ日誌」シリーズや「超高速!参勤交代」シリーズなどコメディのヒット作は多い。こういう感動人間ドラマは少ないが、2時間を超える長尺にしたのは間違い。2-30分摘めばもっと感動は盛り上がったのではないだろうか。
脚色した林民夫の手際の拙さにも依る。

6月15日より丸の内ピカデリー他全国公開される

「キスできる餃子」(日本映画):夫の浮気で離婚しパートは不況でクビになった陽子は娘美咲を連れて故郷の宇都宮の実家に戻ると、餃子「フジタ」は廃業している

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勝手なことを言わせて貰えれば、この映画は気に入らない。
先ず、何て言うタイトルだ。「キスできる餃子」って意味が分からない。

大体ご当地映画は好きでない。
地元の客に阿る(おもねる)ばかりで,他所からの客にサービスが足りない。
宇都宮市民は自分たちの街が褒められるのだし、身近で見慣れた風景に嬉しくて仕方がない。
ご当地映画は大きなスタジオが金を出さないからクラウドファンディングで栃木県民に支援を呼びかける。呼びかけても県民はケチだから大したドーネーションは期待できない。

制作費が無いので映画の質はチープだ。
テーマは地元を離れる訳に行かないので自由な発想ができない。

監督・脚本の秦建日子は「地方創生ムービー2・0プロジェクト」を提唱している。
地元発で地元で撮影し、全国に発信して評価される映画というのがコンセプトだ。
秦は本職が作家でたまたまTVの脚本がいくつか当たったが映画に関しては素人。

プロジェクト第一作として三重県桑名市のご当地映画「クワナ!」を監督した。
NHK連続テレビ小説「まれ」で人気がでた松本来夢を主演に持って来た。
三重県桑名市に住む小学6年生の西田真珠。廃校が決まっている真珠の小学校に、プロのジャズプレイヤーだった教師が赴任してきたことをきっかけに、真珠たちはジャズのビッグバンドをやることになる。

「クワナ!」の方が出来も良いのだが興行成績は振るわない。

もっと言うと餃子は嫌いではないが中国の北京や上海、大連で焼き餃子を注文したら、そんなものは無いと断られた。
あるのは水餃子だけ、蒸した餃子でお祝い事や正月などの節句に食べる愛でたいシンボルなんだそうだ。

だから焼餃子は焼肉やラーメンと同様に日本で生まれた固有の食べ物のようだ。
それはともかくとして、左前か倒産寸前の食堂を立て直す話は伊丹十三の「たんぽぽ」を元祖として山ほどある。
(タンポポのせんぞ帰りは「シェーン」に行き着く)
この映画もその焼き直しだ。もう少し知恵をだせないのかねえ。

駆け落ち同然で親の意向に逆らい宇都宮を飛び出した藤田陽子(足立梨花)は夫の浮気で分かれる決心をする。タイミング良く(悪く?)パートもクビになり、家賃も払えない東京にいる理由もなくなり一人娘の美咲を連れ実家に戻って来る。
餃子屋「フジタ」は荒れ果て締め切られた扉に「廃業しました」の張り紙。

知らなかったが父、信介(浅野和之)は体調を崩し寝たり起きたりの生活を送っていた。陽子は店を任せて欲しいと父親に頼み込み、必死で餃子に挑む。

市内に200店もあると言う餃子の質を維持するため「宇都宮餃子会」の認定をパスしなければ開店できない。
一度落ちたが二か月後にも不合格、陽子は再チャレンジに励む毎日だが、一晩中焼き続けた徹夜明けのある朝、自分好みのイケメン新聞配達の岩原亮(田村侑久)に出会い一目惚れ。

ここから餃子の試練と亮とのロマンスが二本立てで展開する。
コメディ仕立てだが、疑問に思うのは、岩原亮はTVでも引っ張りだこの人気ゴルファー。
幾らスランプでトーナメントに出なくとも、絶対に新聞配達などしないと確信を持って言える。陽子と亮の出会いの機会は思いつかないとしたら,深刻なアイディア不足だ。

もう一つ肝心なことは餃子が本当に美味しそうに見えるジューシーな場面が無いこと。
特別なレシピ―も紹介されないし、エンディングで行列のできる「フジタ」には???
どうしてと理由を聞きたい。

主役の藤田陽子役はホリプロの掘り出したタレント。25歳のキュートな明るい性格でキャラに嵌っている。
相手役のプロゴルファー,岩田亮は27歳のTVタレント。難点は人気プロゴルファーにどう引っくり返しても見えない。
新聞配達員には似つかわしい体躯だ。 

監督とオリジナル脚本は秦建日子。
「アンフェア」の原作や「HERO」「救命病棟24時」「ドラゴン桜」など数々のTVドラマ脚本を手がけた経験を活かそうと作家の秦建日子は「地方創生ムービー2・0プロジェクト」を提唱している。
地元発で、地元で撮影し、全国に発信して評価される映画というのがコンセプトだ。

三重県桑名市に住む友人から「映画で町を活性化させたい」との依頼が舞い込んだ。
渡りに舟だ。

「自分の作品が視聴率といった数字だけでなく、一つの町に、社会にさまざまな貢献ができるかもしれない」と原作・脚本・初監督を引き受け、
桑名市発の映画「クハナ!」は16年に全国公開された。

「クハナ!」はNHK連続テレビ小説「まれ」でヒロインの子供時代を演じ人気となった松本来夢の初主演映画と言うだけが話題。
松本が演じるのは、三重県桑名市に住む小学6年生の西田真珠。廃校が決まっている真珠の小学校に、プロのジャズプレイヤーだった教師が赴任してきたことをきっかけに、真珠たちはジャズのビッグバンドをやることになる。

素人監督に素人子役、結果は見えている。

そんな経緯を経て「キスできる~」は、地方の文化や暮らしを題材とした映画「地方創生ムービー2・0」第二弾だ。

だが上述のように素人衆の映画では結果は予想できる。
プロジェクトには経験を積んだ映画人に手伝って貰わないと意気込みは高くとも目も当てられない映画(もどきの)残滓が残るだけだ。

6月22日より新宿ピカデリー他で公開される。

「イカリエ―XB1」(IKARIE XB1)(チェコスロヴァキア映画):54年前チェコで制作された生命探査の宇宙船映画。CGの特殊効果の無い時代に200年後の人類の未来を託す意気込みを玩具で描く

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何とも珍しい映画を見た。
今から半世紀以上前(正確には54年前)の1963年、共産主義下にあったチェコで製作された本格SF映画。
勿論白黒映画で今ならベタベタのCGの特殊効果を軸に制作されるだろうが、そんなものは無い有史以前のプリミティブなSF映画だ。

だから宇宙船はミニアチュアで星空の中を飛行するだけのロングショット。
クローズアップが無いのでディテイルは不明。

時代は63年から200年後の2163年。
東欧映画は真面目で遊びない。だから共産主義時代のチェコ人が未来をどう考え想像していたかが分かる。クルーの着ている宇宙服のダサいこと。

スペースシップはミニアチュアのロングショットだが、宇宙船内部はセットで組んでいるのでそこでのクルーたちのドラマが主流になる。

ブタペストのハンガリアン・フィルムラボが制作の4Kでデジタル・リマスター版で画面はシャープにくっきりと映し出される。
16年にカンヌ国際映画祭カンヌ・クラシック部門で上映されたことで各国から関心が寄せられ日本でも上映の運びとなった。

はっきり言って、1時間半を切る(88分)短さなのに長く感じるのは展開がスローで、山場のアドベンチャーと言えば廃船となり宇宙に漂う、前世紀(21世紀)の探査ロケットを捜査に内部に入ったところ核爆発が起り2名の犠牲者を出してしまうこと位だ。

ストーリーの概略は
22世紀後半、宇宙船イカリエ-XB1は生命探査のためアルファ・ケンタウリ系へと向かう途上、地球から旅立った宇宙船が朽ちた状態で漂流しているのを発見する。
漂流船内にイカリエ-XB1から調査員を数名送り込むが、死因不明の乗組員たちの死体が転がる漂流船内に積載された核兵器の爆発により、その命が失われてしまう。

悲劇の中、イカリエ-XB1は航行を続けたが、謎のダークスターとの遭遇によって乗組員一同が眠りについてしまう。

スタニスワフ・レム原作のSF小説「マゼラン星雲」の映画化。
後に「スタートレック」や「2001年宇宙の旅」に影響を与えたと言われている。

確かにクルーの友情や絆は「スタートレック」の雰囲気だし、「2001年宇宙の旅」で反乱を起こすコンピューターHALは謎のダークスターかも知れない。クルーたちは眠りに落ちてしまう。やがてダークスターの先に光る惑星が現れ、船は惑星へと降下していく。
宇宙船の中で乗組員が狂気に支配されるスタニスワフ・レムの小説を原案に映画化されたもの。

名前もバックグラウンドも知らないが、
監督はインドゥジヒ・ポラーク、脚本は「狂気のクロニクル」(見ていないが)などのパヴェル・ユラーチェク。

出演はズデニェク・シュチェパーネク、フランチシェク・スモリーク、 ダナ・メドジツカー、イレナ・カチールコヴァーら、と言っても知らない有史以前の俳優たち。

5月19日より新宿シネマカリテにて公開される

「ゲッペルスと私」(A German Life)(オーストリア映画):ナチス政権の宣伝相ヨーゼフ・ゲッペルスの秘書だった104歳の老女、ブルンヒルデ・ポムゼルが最後の生き証人として思い出を語る

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 最近これほどショックなドキュメンタリを見たことは無い。

今年1月27日、ミュンヘンの老人ホームで106歳なくなったブルンヒルデ・ポムゼルが104歳の時にインタビュ-に応えた記録映画なのだ。
痩せて顔中皺だらけのお婆さんのクローズアップは最初戸惑うが、しっかりした口調と記憶力で43年から45年まで仕えたナチス政権の国民啓蒙・宣伝相ヨーゼフ・ゲッペルスのこと語る。

 43年まではユダヤ人の弁護士の速記者として働いていたがユダヤ人なので弁護士業を続けられず失職したボムゼルは国民啓蒙・宣伝省でヨーゼフ・ゲッペルスの秘書を探していると聞き応募し採用された。
宣伝省の提示した報酬は高く、職場環境も素晴らしかったから。私の仕事場は、ヴィルヘルム広場にあった建物の2階でヒトラー官房のすぐ近くだった。

ゲッペルスには6人の秘書がいた。
そのひとり、速記秘書だったポムゼルは、ゲッペルスと時間を共有した最後の生き証人だった。

 監督、クリスチャン・クレーネスはポムゼルがゲッペルスを始めナチの上層部が計画し実施したホロコーストなどのユダヤ人問題(The Last Solution)をどの程度知っていたか、どう理解していたか
彼女の真意を問いただそうとしているのがインタビューでありありと見える。

秘書と言っても速記者でゲッペルスと接触する時間など無いポムゼルははっきりと全く知らなかったと答えると同時に自分はユダヤ人を差別し貶めるようなレイシストで無いと断言している。
それなのにソ連軍に逮捕され5年間も収監されたことを憤っている。

彼女自身が認める罪とは第一次大戦後ヒトラーのナチ党の台頭をドイツ国民の1人として許したことと、ゲッペルスの演説を聞いてその雄弁さに感動したことだと言う。

映画の原題「Ein Deutsches Leben=A German Life「あるドイツ人の生涯」はそういう意味だ。

ポムゼルの証言の合間にアーカイブから当時のフィルムが挿入される。
映画の前半はナチの宣伝PR用のもので党集会でのヒトラーやゲッペルスの演説やユーゲントの若者たちの映像が流れる。

後半のアメリカ公文館のアウシュビッツで施行されたLast Solution(ホロコースト)の映像がショックだ。遺体を山と積んだトラック、これ以上痩せられない骨と皮ばかりの囚人たち。骸骨同然の男女の区別がつかない遺体がベルトコンベアで大きな穴に放り込まれる。


アメリカ兵の担当者が映像を見ているだけで良いとは幸運だ。何しろアウシュビッツ全体が死臭で堪らず吐き続けたと述懐している。

ポムゼルは6人の子供も妻マグダと共にゲッペルス一家が自殺した時も本部となった地下壕にいたと過去の記憶を淡々と語る。
「ゲッペルスの秘書だったことは、恥とは思いません。でも誇りに思っていないことも事実です」

無神論者の彼女は「神は存在しないが、悪魔は存在する。正義なんてものはない」と言い切る。
難民や移民受け入れにおける国家間の誤解や意見の食い違い、人種差別やテロ行為など様々な混乱がある現代だからこそ、特に若い人たちにこのフィルムを見てもらいたいとポムゼルは言い残した。

6月16日より岩波ホールにて公開される。

「オンリー・ザ・ブレイブ」(Only the Brave)(アメリカ映画):2013年アリゾナ州ヤーネルの大規模森林火災で19名の犠牲者を出した消防集団「グラナイト・マウンテン・ホットショッツ」の実話

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アメリカではソニー映画配給で、昨年10月20日の週に公開され5位に滑り込んだ。
2577館で6.0M。制作費は38M(42億円)。
公開に先立ち、ワシントンDCでの試写会にペンス副大統領が出席した。

ヒットとはならず11月10日の4週目のチャートで11位に入ったのが最後に埒外に消えている。
アメリカ国内の総計で18M(20億円)ほどで終わった。大赤字だ。
国威発揚の愛国映画だけに海外では今一つだから日本でこれから(6月)頑張っているからタカが知れている。
だからここでは興行成績のことでは無く映画の質や内容について議論したい。

南西部アリゾナ州プレスコットの消防団。労働者階級の若者たち、重い器具を扱い、軍隊式の訓練を受け、ウェイトトレーニングのジムで冗談を言い合う。
隊員たちは大音響で好きな音楽をかけてピックアップトラックに乗り込み、家族ぐるみでピクニックに出かけ何も無ければ楽しい人生を送っている。

しかし一旦森林火災が起きると覆い尽くす業火の中に飛び込み、何日も獅子奮迅の命を賭けた活躍をしなければならない。
単なる山火事では無い。紅蓮の炎は隊員たちの悪魔のように襲い掛かる。
CGの特殊効果だろうがコントロールできなくなった森林火災はまさに「インフェルノ」だ。
飛び火して背後の進路をふさぐ事は頻繁に起こる。

女たちの悩みは男達は90%を森林火災に捧げ自分たちに割く時間は殆どない(10%)だと言うこと。

主人公はチームを率いるエリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)、眼鏡をかけ口髯を生やしゴツゴツした顔の隊長は鞭でひっぱたいても一流のクルーに育てあけようと日頃腐心しているが、歯に衣きせぬ妻アマンダ(ジニファー・コネリー)と家庭を顧みないと激しい議論に明け暮れる。
40歳を超えたマシューもアマンダの攻勢に引退を考え始める。

消防隊員の応募して来た大学生のブレンダン・マクドナウ(マイルズ・テラー)は、怠惰に暮らしていて麻薬の溺れ窃盗などで一時収監されていたが、
恋人の妊娠を契機にそれまでの生き方を改めようと就活に励むが悪評は知れ渡っており、マーシュに過去の反省と人生やり直しを総て告白する。

マーシュはブレンダンの意気を感じ周囲の反対を押し切って自分の隊員として迎え入れる。

俳優は作品で役柄でガラリと変えなければならないが,隊長のジョッシュ・ブローリンは公開中の「アベンジャー」の主役で宇宙の大魔神・サロス。
無表情の土偶のような巨漢ブローリンの活躍でアベンジャーは大ヒット驀進中。

救いを求めるブレンダンのマイルズ・テラーは「セッション」でJ・K・シモンズに猛烈なシゴキを受ける音楽学生のドラマーが印象的だった。
ブレンダンは「セッション」よりも激しい過酷な特訓に明け暮れる中、次第にをはじめとする隊員たちと親睦を深め、彼らに支えられながら少しずつ成長していく。善意に囲まれた仲間と絆を結んでいく描写は微笑ましい。
幾つかの森林火災を経験し今は名誉のエリート消防集団「グラナイト・マウンテン・ホットショッツ」の一員としての誇りを持ってる。

2013年、アリゾナ州ヤーネルに、運命の大規模森林火災が発生してブレンダンは仲間と消火に向かうが、山を覆うような巨大な火災になって隊員たちを襲う。


「トロン:レガシー」や「オブリビオン」などのジョセフ・コジンスキー監督が、過去に例のない大規模森林火災から家屋を守るために命がけで消火にあたり隊長以下19名の犠牲者を出した森林消防士たちの実話をベースにしたアクションドラマ。

しかし2時間15分の長尺は長すぎる。30分ほど摘まめばもっと盛り上がっただろう。

キャストには主演のジョシュ・ブローリン、とマイルズ・テラーの他、市の消防署長デュエインに「クレイジー・ハート」などのベテラン、ジェフ・ブリッジス、
隊長の妻、アマンダに「ビューティフル・マインド」などのジェニファー・コネリーら顔馴染みの役者がズラリと揃う。

6月22日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

厳寒の大自然に囲まれたアメリカ中西部ワイオミング州のインディアン居留地ウィンド・リバーで次々と殺人事件が起きる

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「ウィンド・リバー」(Wind River)(アメリカ映画)

最近のクライムサスペンスでは異色で良く出来た作品で最後まで退屈させない映画だ。

冒頭の真っ白な画面、厳寒の大自然に囲まれたアメリカ中西部ワイオミング州のインディアン居留地ウィンド・リバーで次々と殺人事件が起きる。
最初に見つかったのは18歳の少女、ナタリー・ハンソン(ケルシー・アスビル)の凍死体。
クーガーを追って山奥に入り込んでいた地元のFWS(Fish and Wild Service=合衆国魚類野生生物局)の職員、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)が
遺体の第一発見者だった。
長らくこの地に住むベテランハンターのコリー・ランバートは死んだ娘、エミリーの親友であったナタリーと知って胸が痛む。
ナタリーはレイプされ殺害されていたが低温で肺出血が直接の死因なのでFBI本部は大デリゲーションを送らず
新人の女性捜査官を1人形ばかり送り込んで来る。

単身派遣された心細いFBI捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)はインディアン部族警察長(グラハム・グリーン)と共に行動を始めるが
さらに地元のベテラン・トラッカー・コリーに捜査の協力を依頼する。

コリーとジェーンはナタリーの父親マーティン(ギル・バーミンガム)を訪ね、殺された夜ナタリーは恋人に会いに出かけたことを知る。その白人の恋人、
マット・レイバン(ジョン・バーンサル)は森の中で殺されていた。

世の中から忘れられたネイティブアメリカンの闇の中での連続殺人事件。
「ボーダーライン」などのテイラー・シェリダンの初監督作品だが脚本家の経歴も長くその才能を活かして、夫々のキャラクターの生き生きとしrセリフやしっかりした構成、
そして犯人捜査のプロセスが良く書きこまれている。
主人公のトラッカー、コリーは留守中に失踪して殺された娘エミリーに何もしてやれなかった自分を責める。娘の親友ナタリーの殺害の犯人追跡に
娘への償いの気持ちが籠っている。

単身派遣された新人FBI捜査官ジェーン・バナーはアカデミーを終えたばかりの実戦に不器用に戸惑いながらもコリーの指導のもと成長して行く。
ジェーンは慣れない雪山の不安定な気候や隔離されたこの地でネイティブアメリカンの多くが未解決事件となる現状を思い知る。

インディアンからネイティブアメリカンに呼び名が変わっても外の白人社会では居場所が無く、彼らの怠惰癖、アルコールやドラッグ依存症は減らず
居留地に特例で許されたカジノの上がりや免税、社会保障などでシコシコ生きている特殊社会だ。弱者を襲う犯罪も多発する。

終盤の官憲に取り囲まれたトレーラーからの応戦のシュートアウトは凄まじい。
一人生き残り雪山を這うように逃げる真犯人をはるか離れた所からコリーが仕留めてケジメをつける。
「ハート・ロッカー」以来の熱演でジェレミー・レナーが映画を引っ張る。
相手役の新人FBI捜査官ジェー・バナーには「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のエリザベス・オルセンが頑張る。
 
この映画の公開方法が面白いので紹介する。
アメリカで大作を含めて作品は全国、4-5000の映画館で一斉に投網をうつように公開する方法が一般的なのだが

このマーケティング費用の無いインディ映画(この作品は兄がセクハラで失脚したワインスタイン・カンパニー)のように
昨年の8月4日より公開されLAとNYで僅か4館ながら52.2K(57万円)の好成績を挙げてスタートしてプロの批評家やじ観客の口コミやPRで勝ち上がっていく方法がある。
次週は45館で641K(6987万円)、3週目は694館に拡大して4.1M(49億円)と10位にランク入り。
25日の週で4位に入ったのは2095館に拡大し4.5Mと累積9.8M着。
9月1日に5週目を迎え3位に入ったのは, The Weinstein Co.の「Wind River」。
この週末、2602館に拡大し5.9M、累積18.3Mと着々と数字を伸ばしてきています。

9月8日の週は5位に入った。 7週目週末は2890館にのばし3.2M,累積は25M。
15日の7週目週末は2619館で2.55M,累積は29.1 M(32億円)と着々と数字を伸ばしている。

そして22日の8週目の週末は1431館で1.3M、8週目国内累積は31.7 M(34.6億円)と数字はゆっくりと伸び来ているがリクープは難しくなっててきている。
そして8月29日の週でチャートから姿を消す。

最終的に締めた興行成績は$33,800,859(37億円)。この他海外市場で、例えば角川映画に配給権の売り上げを加えても45億円も行かないだろうから
苦しい台所だ。

2017年5月に開催された第70回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、シェリダンが監督賞を受賞した。

7月27日より角川シネマ有楽町他にて公開される

「ザ・ビッグハウス」(The Big House)(日・米映画):11万人を収容する超大型スタジアム「ビッグハウス」に集う人々を通してアメリカの素顔を浮き彫りにする「観察映画」

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 ドキュメンタリ作家、想田和弘監督は撮影前に台本を作らず「そこにある」ものを撮る。
ナレーショやBGMなどを一切排した「観察映画」と自称する独自のスタイルで、東京都の小さな街での選挙とか、岡山の田舎の心療内科クリニックや瀬戸内海の港町で市井の人々や猫などを「観察」していたが、いきなり太平洋を越えてアメリカ・ミシガン州のアナーバー市にやって来た。
観察映画第8弾スペシャルだ。

ミシガン州の人口10万の小さなアナーバー市にはテキサス州ダラス市のAT&Tスタジアムに次ぐ、全米第2位の11万人を収容する「ザ・ビッグハウス」で知られるフットボール・スタジアム「ミシガン・スタジアム」がある。
ミシガン大学のフットボールチーム、ミシガン・ウルヴァリンズの本拠地の「大物」に、想田和弘監督を含むミシガン大学生17人の映画作家が夫々密着撮影を行った。

例によって台本が無いので各自バラバラのイメージを撮って想田監督に提出する。
想田の本領は自らの手をかける「編集」にある。
数千時間のフーテージを切った貼ったで繋いで行くのだが、
いつもは1時間半で仕上がる映画もこの作品は観察映画でも最長の時2時間をかけている。

フットボールの試合の始まる前、空っぽのスタジアムから始まりダイナミックな試合の映像、と言っても必ずしも時間列に順序だてて絵を並べていないから
ミシガン大学の対戦相手も分からない、(後半になり強敵でライバルのウィスコンシン大学と判明)、いきなりヒーロー記者会見で、褒めるどころか簡単なフィールドゴールを連続3回のミス追及する記者の鋭い質問に飛んだりする。

11万人を超す大盛況のスタジアムはエキサイトする観衆の様子から、パンするとビッグハウス横の道路をトランプ大統領候補のキャンペーントレーラーが華やかな飾りつけと大音響のスピーチで通り抜ける。
撮影は2016年の大統領予備選の真っただ中。

スタジアムの外の世界も面白い。ファッシズム反対とヒラリー支持のプラカードを下げた男が叫ぶかと思うと「罪を悔い改めよ」と罪の種類を10も列挙した黒人伝道師が
通りかかる人々にアピールする。
スタジアム内のマクドナルドの忙しさにもかなりの時間を割き、無数のパテやドウの焼き上がりを見せる。

試合が終わるとミシガン大学卒業生の「ホームカミング・パーティ」。
奨学金の寄付者を中心に950人のOBOGGが大ホールに集まり、学長からの賛辞を受ける。
1817年の創立だから200年の記念でもある。(撮影時は2016年だが)。

「観察映画」では人々の関心の的、
肝心のフットボールの試合の詳細を写さないが、どうやらウィスコンシンを破ったらしく「ブルー」と叫び腕を伸ばす観客の狂喜の模様が映し出される。
17人の協働監督が17台のカメラでビッグハウスの表の顔ばかりか肉弾逢い打つフットボールをそっちのけで裏側を子細に観察している。

ダフ屋も大っぴらに商売をしているし、クンクンと運搬車を嗅ぎまわる麻薬犬たちの可愛いこと。切符のモギリなんてものは無く、無人の機械でチケットをオプティカルにチェックさせている。
「観察映画」第8弾はかつてない大スペクタクルで華麗に描かれている。
大胆で緻密な編集で巨大な生命体のように機能するスタジアムの全貌が浮き彫りされる。

スタッフは監督・製作・編集が想田和弘。他の共同監督・製作はマーク・ノーネス、テリー・サリス、撮影はミシガン大学の映画作家たち。

昨年のベルリン国際映画祭の批評家週間に正式招待された作品だ。

6月9日より渋谷ユーロスペースにて公開される

「サバービコン 仮面を被った街」(SUBURBICON)(米映画):50年代パックスアメリカーナ時代にアメリカン・ドリームを具現した白人だけの理想的な郊外住宅。突如黒人一家が移住して来て大騒動となる

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 アメリカでは昨年10月27日から公開され2,046館で2.8M、同じ週のホラー映画「ジグソウ」の1/5にも及ばない、惨憺たる成績だった。
何しろ25M(27.4億円)の制作費をかけた作品が1か月で終映し、ワールドワイド総計でも僅か5.8M(6.4億円)しか挙げられなかった。
ジョージ・クルーニー監督作品中で最低の興行成績だった。

パラマウントがアメリカ国内配給権を10M(11億円)で叩いて買った時は儲かったと喜んだ。
何と言ってもジョージ・クルーニー監督、脚本がコーエン兄弟。主演がマット・デイモンジュリアン・ムーアと言う豪華キャスト。

蓋を開けたら批評家からブーイングの大合唱に加え、観客の出口調査(CS)では「Dマイナス」」と今までB級映画でも見られない最低の評価。

どれどれそんなに酷いのかと昨日(11日)、TOHOシネマズ日比谷のスクリーン11の15時45分の回を覗くと満席ではないか。

黒人差別のレース・ヘイトは良く分からないようだが、主人公ガードナー・ロッジ(マット・デイモン)一家の闇に触れるエピソードに入ると、観客の反応も良くポイントでしっかり笑いを取り、妻ローズ(ジュリアン・ムーア)殺しの犯人を追うサスペンスを楽しんでいる。

実にアメリカ的な映画がここ日比谷の小屋でウケているのに驚く。
僕自身も堪能して映画の後の生ビール(サントリー・モルツ)の美味かったこと。
登り龍の我が読売巨人軍が地方紙の中日如きにシャットアウトされたことを除けば充実した土曜の宵だった。


1957年にペンシルバニア州レビットタウンで起きた人種差別暴動をベースに、白人のアメリカン・ドリームのような理想のコミュニティで起きる騒動を描くのだなと思って見ていると、突然住人のロッジ一家への押し込み強盗と殺人事件に場面はコペルニクス的転換をする。

G・クルーニー監督の意図は郊外の白人コミュニティに侵入して来た黒人マイヤーズ一家を中心にアイロニカルなブラックコメディにする積りだったと思う。

1959年。パックスアメリカーナの時代、白人だけが暮らす町、サバービコンは閑静な住宅街で、住民たちはようやく掴んだ夢のような幸福な生活を送っていた。

しかし、そんなサバービコンに黒人(今ではアフリカ系アメリカ人と言わなければならないが)のマイヤーズ一家が引っ越してきたため、町全体に突如として不穏な空気が流れ始める。

初めは眉を顰めヒソヒソ話の段階がやがて一家の境に塀を建て、徒党を組んで暴徒と化し窓ガラスを叩き割り、車に火をつける騒動にまで発展する。

 住民たちは総てWASP(白人、アングロサクソン、プロテスタント)。
黒人はおろかユダヤ人やコミュニストも敵とみなしている。
プロテスタントでも宗派同士相手を罵り合い唯我独尊の世界だ。

しかしどうもこのマイヤー一家が話の主流にならないだろうことは配役を見れば分かる。
スターは誰も出ていない。無名の役者ばかりだ。

テーマが逸れて来るのはイーサンとジョエルのコーエン兄弟が本の中心作家であることと無関係でない。
彼らはユダヤ人だがレイシストには興味がない。
ストーリーはパルプフィクションになりバイオレンスが中心となる。

ある夜、2人の強盗がロッジ家に押し入った。
強盗は一家全員を縛り上げ薬を使い気絶させたが、妻のローズ(ムーア)だけがクロロホルムを過剰に吸入され死に至る。
ローズは強盗の前にも夫ガードナー(デイモン)の運転する車で事故に会い下半身不随になっていた。

ローズの双子の妹であるマーガレット(ムーアが二役)が幼い少年ニッキー(ノア・ジュープ)の面倒をみると言う名目で同居する。

ニッキーは真夜中、地下室で女性のうめき声で目を覚まし、また強盗かと鉄棒を持って降りて行くと父と叔母マーガレットがセックスの真っ最中。

サバービコンの緊張状態はマイヤーズ家vs暴徒化した住民、そして妻ローズを強盗に見せかけて殺し、
義妹と爛れたセックスに溺れるガードナーと、おまけにガードナーはマフィアの高利貸から借金しているらしくギャングたちも出入りして、コミュニティの環境は日に日に悪化して行く。

こんな陰険で危ないムードを救うのはニッキー。
隣りの黒人の少年(トニー・エスピノーサ)と仲良くキャッチボールを楽しむ。

だがニッキーにも危機が迫る。
セックスをモロに見られてしまった叔母マーガレットと父ガードナーは少年を始末しようと計画を巡らす。

主演は「オーシャンズ11」シリーズなどでクルーニー監督とコンビを組んだマット・デイモン。
オスカー女優のジュリアン・ムーアがその妻ローズと姉マーガレットを1人2役でしれっと演じるのがおかしい。

他に保険会社調査員バッド・クーパーをオスカー・アイザック、能天気のマーガレットの夫ミッチをゲイリー・バサラバ。
可愛くてスマートな子役、ノア・ジュープがいたいけない幼いニッキー・ロッジを好演している。
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この映画は第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品されたが勿論カスリもしなかった。

だが上述のように東京ではどういう訳かウケているので、クルーニー監督にとってはグッドニュースだ。
作品は東北新社が日本の配給権をバイアウトしているのでヒットしてもプロデューサー、ジョエル・シルバーの懐には入らない。

TOHOシネマズ日比谷他で全国公開中。

「悲しみに、こんにちは」(Summer1993)(西映画):女性監督カルラ・シモンズが父母を亡くし孤児になった6歳の時、大都会バルセルナからカタルーニャの叔父一家に引き取られ疎外感を味わう

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この邦題は酷い。
僕はてっきりフランソワーズ・サガンの「悲しみよ、こんにちは」のリメイクだと信じ切っていた。配給会社の宣伝担当はもう少し頭を捻って欲しい。

原題「1993年の夏」で何故悪いのか。
短編やドキュメンタリの映画しか撮ったことが無い、カルラ・シモンズが父母に死なれ孤児になった6歳の時、大都会バルセルナからカタルーニャのド田舎の叔父叔母の家に送られ疎外感を味わいながらひと夏を過ごす少女の心を描いている。

素晴らしい感動的な作品だが、サガンでなければ斉藤由貴の歌になってしまう程度の低い題名に足を引っ張られる。

映画の冒頭、6歳の少女、フリダ(ライラ・アルティガス)は一人ぽっちで荷物が詰められるのを見ている。父は以前に亡くなり、マムはエイズ関連の肺炎で死んだばかりだ。

シモン監督のコメントに依れば、フランコ独裁政権が終わり、圧制から自由になったスペインの人々はドラッグを享楽し奔放なセックスに溺れエイズ患者がヨーロッパで最多の21000人を超えたと言う。

映画でははっきりと言明しないがエイズで死に、フリダは孤児になってしまう。年老いた祖父母も少女の世話は出来かねる。

幸いなことに叔父、エステべ(ダビド・ヴェルダグエル)とエステべの妻、マルガ(ブルーナ・クッシ)が姪の4歳になるアナ(パウラ・ロブレス)が喜んで父母妹の家族となってフリダを引き受けてくれる。

フリダはエステべ一家は心からフリダを実の娘として歓待してくれるが、戸惑うことばかり。

大都会の生活に慣れたフリダは、森や澄んだ青空や慣れ慣れしい村人たちの溢れた田舎の環境に戸惑うばかり。
お姉ちゃんとスリスリして来るアナにもつい冷たく意地悪をしてしまう。

シモン監督は少女の姿を孤児としてセンチメンタルに描こうとしていない。
客観的な視点で周囲から疎外された少女として淡々と追って行く。

血に鋭敏だ。
マルガの生理の血、ケガをしたフリダから零れる血。
村人たちは狭い世界で当然フリダの父母がエイズで死んだことを知っているから
子どもたちをフリダに近づかせない。

八つ当たりでアナを苛めて骨折させても、フリダをお姉ちゃんとすり寄るアナの純情さに涙が零れる。
エスエベもマルガもフリダを罰したり、折檻しない。
父母と妹の役割をしっかり果たす一家にも感動する。

そんな暖かい扱いを受けながらもひねくれたフリダは家出をして姿を消す。
一家も村人たちも総出で探し回る。
深夜に及んでアナが「暗くってフリダが見えないから、明るくなって探そうよ」の幼い舌足らずの助言は観客の笑いを取る。

少女からやがて大人に向かう通過儀礼の経験。
太陽が一杯の田舎のひと夏の経験をカルラ・シモン監督は感傷的になるのを抑えながら繊細に心温まるべく淡々と客観的な目で眺めている。

ベルリン映画祭やスペインのゴヤ賞で新人賞を授与され、今年のアカデミー外国語賞にスペイン代表に選ばれている。

エンドクレジットで亡き母へとシモン監督の献辞が心を打つ。

7月渋谷ユーロスペースにて公開される 

「ゲティ家の身代金」(All the Money in the World)(アメリカ映画):非情な誘拐犯、そして冷酷な大富豪と戦う、誘拐された少年の母

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1973年7月、ローマ市内で1人の少年がギャング団に誘拐された。
人質は【世界一の大富豪】であるアメリカ人石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジョン・ポール・ゲティ三世。
1,700万ドル(約50億円)という破格の身代金もさることながら、50億ドル(1.4兆円)の資産を持つゲティが身代金の支払いを拒否した。
「わしには14人の孫がいる。一人に払えば14人が狙われる」
しかしこの事件の裏側で、誘拐犯と身代金を拒むゲティの間で戦い続けた人質の母親がいたことはあまり知られていない。離婚で一族を離れていた“一般家庭の母”は、いかに2つの強敵に立ち向かったのか―

映画はお蔵入りの危機からコペルニクス的発想で大逆転で完成する。

2017年11月、ジャン・ポール・ゲティ役のケビン・スペイシーが少年たちから同性愛ハラスメントで訴えられて突如降板。
映画は既に完成、全米公開は1か月後だったが御年80歳の巨匠リドリー・スコットは即座に決断した。

「再撮影だ。」
 数日後にはアカデミー賞®俳優御年89歳のクリストファー・プラマーの出演が決まり、1週間後には撮影を開始、その2週間後には映画を完成させる。
お蔵入りも決定していたこの作品はプラマーの代役で短期間で乗り越え、アカデミー賞®(助演男優賞)、ゴールデン・グローブ賞(監督賞、主演女優賞、助演男優賞)、英国アカデミー賞(助演男優賞)でノミネートされるという、史上空前の快挙を果たすこととなる。プラマーはアカデミー賞®演技部門ノミネートの歴代最高齢記録を更新した。

C・プラマーは卒寿を前に「終わった人」暇ならヤマほどある。普段なら31歳離れた58歳のスペイシ―の代役は無理だ。
危機存亡の秋を迎えてリドリー・スコット監督のやけくそ的決断は功を奏した。

(外出のため以下の書き込みは後刻おこないます)

5月25日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」(日本映画):毎日ネタも尽きずに死ぬ振りをする妻を、愛していればこそ、その秘密を探りだそうと焦る夫

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タイトルが可笑しいし、代わっている。
もともとは2010年に「Yahoo!知恵袋」に妻の「奇行」についての質問を投稿され、それが笑えるとネット上で話題を呼び、ボーカロイドの初音ミクでオリジナル楽曲が制作され、
コミックエッセイ化などメディアに広がりをみせた。

前提が面白い。とても愛し合っている夫婦、専業主婦の加賀美ちえ(榮倉奈々)と
真面目なサラリーマンの夫、加賀美じゅん(安田顕)。

夫、じゅんはバツイチだ。
一度目の結婚も順調だったが3年目に突如破綻して離婚。
だから2人は約束する
「3年たったら結婚生活を継続するか互いの意志を確認し合おう」と。

3年目が近づいたある日、帰宅したじゅんは、玄関で倒れている妻ちえの姿を目にして驚く。
ベッタリブラウスから顔中に血を出している。

「救急車、救急車」と叫びながら117番に電話するじゅん。
「正確な時刻」を流す受話器。
救急車は119番、警察は110番は常識。ではクイズ欠番の118番はなーんだ?
かけて見て分かったが何と「海上保安庁」。海の難事トラブルを扱うから、この順番で良いのだ。

だが、ちえの血はケチャップで彼女は死んだふりをしているだけだった。
電話をかけまくりドタバタの夫を見てゆっくり立ち上がり「驚きましたか」と語りかけながら
「やったー!」と内心ほくそ笑むちえ。

その日を境に彼女は、ワニに食われたり、姉御緋牡丹お竜の刺殺、軍服姿にアソートライフル銃で撃たれた名誉の戦死や、オデコに矢が突き刺り、頭を貫通して後頭部に飛び出すトリックは、じゅんも感心し仕組みを調べる。

その他ロミオとジュリエット、やファラオの呪い、ウルトラマンなどさまざまなシチュエーションで死んだふりをするように。
よくもアイディアが次から次へと出て来るものだと、あきれるじゅんだった。
じゅんは会社の後輩で仲の良い佐野(大谷亮平)と妻の由美子(野々すみ花)をまじえて食事をしながらちえの気を紛らわせようとする。
アツアツの佐野夫妻は子どもが
が出来ない、ただそれだけで離婚する。

映画の終盤、「死ぬ振り」をする理由を尋ねるじゅんに耳元で何か囁く。
元論観客には聞こえない。
観客が???状態でも映画のロマンティック喜劇の味は落ちない。

監督は、「デトロイト・メタル・シティ」「幕末高校生」「神様はバリにいる」などの李闘士男。
軽妙なタッチでバカ話が荒唐無稽にならない範囲で遊んでいる。

主演は「図書館戦争」シリーズなどの30歳にあn榮倉奈々、
背の高いドラマで活躍している安田顕らが顔をそろえる。
ちょっと変わり者の妻と冷静な夫が繰り広げるエピソードはユーモラスだが15回も繰り返されるとやはり飽きる。

他の出演者は韓国帰りで売れっ子の大谷亮平 宝塚出身の野々すみ花など。

6月8日より角川シネマ新宿他で公開される。
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