どうもロマンスキー監督が観客を弄んでいる。
真実と虚偽、現実と幻想が入り混じっているような気がする。
だからわざわざ「実話に基づく」と念を押す。
流行作家デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)に大ファンだと近づく若い美人、エル(エヴァ・グリーン)。
デルフィーヌが聞く、本当の名前は?だからエルよ。エルは彼女と言う代名詞だ。
スティーブン・キングの原作でキャシー・ベイツとジェームス・カーン主演の「ミザリー」(90)もベイツ扮する大ファンと言う女性に捕えられ、連載中のストーリーが気に入らないと拷問を受けるカーンの小説家の話が似ているが、ロマンスキーはもっと複雑で虚実の膜は厚く、見終わっても真相は分からない。
似ていると言えば、もう一つポランスキー自身の「ゴーストライター」(10)かもしれない。デルフィーヌの小説の構想や取材メモは4冊の小手帳に書き込んであるが、いつの間にかエルの手に渡り彼女の頭に入っている。エルの小説家志望でセッセと書いている。
デルフィーヌ自身はスランプで彼女のPCはワンフレーズも打てない空白だが、ある日彼女担当の編集者が「原稿を貰ったが、前作以上の傑作だ」と褒められる。原稿など送った覚えがない。
冒頭は日本でも見かける作家がファンサービスのため本屋で開くサイン会。
デルフィーヌが(セニエ)は、母親について綴ったデビュー小説がベストセラーとなり、作家としてのキャリアをスタートさせた。
詰めかけたファンが延々と列を作るがデルフィーヌは体調が悪く終わりにしてもらう。
しかし一人だけそっと近づき物陰でサインをもらうエル(グリーン)。喫茶店で偶然出会った二人の話は弾み互いに気に入った二人は親友になっている。
デルフィーヌが悩んでいるのは脅迫状めいた手紙を受け取るようになったこと。
「自分の家族を晒している」と非難した匿名の手紙が頻繁に送られてくる。フェイスっブックでデルフィーヌを名乗り、アパートに侵入してボヤ騒ぎを起こす。
家主から立ち退きを迫られたデルフィーヌを自分の部屋に引き取り、酷い不眠症にかかったデルフィーヌに精神安定剤を与え、執筆に専念させるため講演の依頼などはすべて断る。エルはすっかりマネージャー、いやデルフィーヌを公私ともに管理し支配するようになっている。
優しい夫、フランソワ(ヴィンセント・ぺレス)はTVの人気コメンテーターでデルフィーヌに割く時間は無い。
しかしエルは優しく労わってくれるかと思うと時にはヒステリーを起こすなど情緒不安定な面もある。
デルフィーヌが階段から転落し入院したことを受け、エルは所有の田舎の山荘に連れて行きベッドから動けない彼女にいそいそと食事をつくりスープを飲ませて体力を回復させようとする。しかし体調は更に悪化する。
デルフィーヌはコーヒーやスープなど飲み物から食事に毒が盛られていると疑う。
「ミゼリー」の世界だ。スリラーとしても段々面白くなる。
原作はフランスの人気作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」。監督は「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」などの巨匠ロマン・ポランスキー。「チャイナタウン」や「ローズマリーの赤ちゃん」など次々と秀作を送り出してきたが既に83歳。
ベテランのテクニックを発揮し、至る所に意味ありげなレッドへリングをまき散らしふたりのヒロインをアンビバレントな関係に放り込みこれからどうなるのだと予測不能の運命をスリリングに描く。
人からは「何故殺鼠剤で自殺未遂などしたのか?」と聞かれ、執筆した覚えの無い原稿を編集者に褒められる。果して「エル」なんて代名詞の女性がいたのかと根本的な原点に立ち返らなければ頭の整理も出来ない。
曖昧になっていく現実とフィクションの境目。
神仙の域に達したポランスキーは観客をたぶらかして楽しんでいる・
映画とは反対に女性運が悪く「少女淫行」で拘留中国外逃亡したとしてアメリカへ戻ると逮捕される。愛妻シャロン・テートをカルト集団に殺されたかと思うと15歳のナスターシャ・キンスキーとの少女淫行も有名でようやく三番目の今の妻、この映画の主役のエマニュエル・セニエで落ち着いている。
ヒロインを演じるのは、ポランスキーの妻、52歳のエマニュエル・セニエ。「フランティック」や「赤い航路」などの他ポランスキーの前作「毛皮のヴィーナス」でセザー賞候補になっている。
謎のヒロイン、エヴァ・グリーン。22歳の時「ドリーマー」で衝撃的デビューをした中堅女優。37歳になるがまだまだ綺麗だ。
この二人の醸し出すレズっぽい神秘的ムードが映画を引っ張る。
6月23日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町
真実と虚偽、現実と幻想が入り混じっているような気がする。
だからわざわざ「実話に基づく」と念を押す。
流行作家デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)に大ファンだと近づく若い美人、エル(エヴァ・グリーン)。
デルフィーヌが聞く、本当の名前は?だからエルよ。エルは彼女と言う代名詞だ。
スティーブン・キングの原作でキャシー・ベイツとジェームス・カーン主演の「ミザリー」(90)もベイツ扮する大ファンと言う女性に捕えられ、連載中のストーリーが気に入らないと拷問を受けるカーンの小説家の話が似ているが、ロマンスキーはもっと複雑で虚実の膜は厚く、見終わっても真相は分からない。
似ていると言えば、もう一つポランスキー自身の「ゴーストライター」(10)かもしれない。デルフィーヌの小説の構想や取材メモは4冊の小手帳に書き込んであるが、いつの間にかエルの手に渡り彼女の頭に入っている。エルの小説家志望でセッセと書いている。
デルフィーヌ自身はスランプで彼女のPCはワンフレーズも打てない空白だが、ある日彼女担当の編集者が「原稿を貰ったが、前作以上の傑作だ」と褒められる。原稿など送った覚えがない。
冒頭は日本でも見かける作家がファンサービスのため本屋で開くサイン会。
デルフィーヌが(セニエ)は、母親について綴ったデビュー小説がベストセラーとなり、作家としてのキャリアをスタートさせた。
詰めかけたファンが延々と列を作るがデルフィーヌは体調が悪く終わりにしてもらう。
しかし一人だけそっと近づき物陰でサインをもらうエル(グリーン)。喫茶店で偶然出会った二人の話は弾み互いに気に入った二人は親友になっている。
デルフィーヌが悩んでいるのは脅迫状めいた手紙を受け取るようになったこと。
「自分の家族を晒している」と非難した匿名の手紙が頻繁に送られてくる。フェイスっブックでデルフィーヌを名乗り、アパートに侵入してボヤ騒ぎを起こす。
家主から立ち退きを迫られたデルフィーヌを自分の部屋に引き取り、酷い不眠症にかかったデルフィーヌに精神安定剤を与え、執筆に専念させるため講演の依頼などはすべて断る。エルはすっかりマネージャー、いやデルフィーヌを公私ともに管理し支配するようになっている。
優しい夫、フランソワ(ヴィンセント・ぺレス)はTVの人気コメンテーターでデルフィーヌに割く時間は無い。
しかしエルは優しく労わってくれるかと思うと時にはヒステリーを起こすなど情緒不安定な面もある。
デルフィーヌが階段から転落し入院したことを受け、エルは所有の田舎の山荘に連れて行きベッドから動けない彼女にいそいそと食事をつくりスープを飲ませて体力を回復させようとする。しかし体調は更に悪化する。
デルフィーヌはコーヒーやスープなど飲み物から食事に毒が盛られていると疑う。
「ミゼリー」の世界だ。スリラーとしても段々面白くなる。
原作はフランスの人気作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」。監督は「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」などの巨匠ロマン・ポランスキー。「チャイナタウン」や「ローズマリーの赤ちゃん」など次々と秀作を送り出してきたが既に83歳。
ベテランのテクニックを発揮し、至る所に意味ありげなレッドへリングをまき散らしふたりのヒロインをアンビバレントな関係に放り込みこれからどうなるのだと予測不能の運命をスリリングに描く。
人からは「何故殺鼠剤で自殺未遂などしたのか?」と聞かれ、執筆した覚えの無い原稿を編集者に褒められる。果して「エル」なんて代名詞の女性がいたのかと根本的な原点に立ち返らなければ頭の整理も出来ない。
曖昧になっていく現実とフィクションの境目。
神仙の域に達したポランスキーは観客をたぶらかして楽しんでいる・
映画とは反対に女性運が悪く「少女淫行」で拘留中国外逃亡したとしてアメリカへ戻ると逮捕される。愛妻シャロン・テートをカルト集団に殺されたかと思うと15歳のナスターシャ・キンスキーとの少女淫行も有名でようやく三番目の今の妻、この映画の主役のエマニュエル・セニエで落ち着いている。
ヒロインを演じるのは、ポランスキーの妻、52歳のエマニュエル・セニエ。「フランティック」や「赤い航路」などの他ポランスキーの前作「毛皮のヴィーナス」でセザー賞候補になっている。
謎のヒロイン、エヴァ・グリーン。22歳の時「ドリーマー」で衝撃的デビューをした中堅女優。37歳になるがまだまだ綺麗だ。
この二人の醸し出すレズっぽい神秘的ムードが映画を引っ張る。
6月23日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町