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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「蝶の眠り」(日本・韓国映画):過去のこと、楽しく過ごした時間のこと、相手の名前など総て忘却してしまうが「愛したこと」は記憶の片隅に焼き付けられている。

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発症してから3年で死に至る「遺伝性アルツハイマー」。
僕の父親も80歳を迎える前に発症して2年で亡くなった。
病気の進行がそんなに早いとの認識は無く、NY駐在だったので知らせを聞いて直ちに帰国したが通夜にも間に合わなかった。

父の年齢に近づく今日この頃、「遺伝性アルツハイマー」を題材とするこの映画を恐怖の実感を持ちながら鑑賞した。

高齢化社会にあって、アルツハイマー病や認知症といった病気と、どう向き合って人生の最後を終えるのか。これまでもいくつかの映画で警鐘を鳴らしている。

日本映画では若年性認知症を扱った渡辺謙主演の「明日の記憶」が良かったが、
強烈にアルツハイマー病の恐ろしさを印象付けたのは3年前,ジュリアン・ムーア主演の「アリスのままで」(Still Alice)だった。

NYコロンビア大学の言語学教授アリスが授業中に言葉を忘れるは,毎日走っている大学構内で何処に居るか迷うところから「若年性アルツハイマー」と言う病気の存在を知った。
アカデミー女優主演賞を受賞する熱演だった。

これはいま多くの人たちが直面する人生の課題だ。
不治の病と告げられ、自らの余命を知った主人公の女性小説家が、
最後に自分の尊厳を守り、見守る人たちに美しい記憶を残そうと静かに行動する。

同じ作家の夫、綾峰龍二(菅田俊)と別れこの数年は独身を楽しむ売れっ子の女性小説家、松村涼子(中山美穂)は、ある日突然医師から宣告を受ける。
自分が母と同じ「遺伝性アルツハイマー」に冒されていることを知る。
発症から余命は3年しかない。

死を迎える前に、何かをやり遂げようと考えた涼子は、大学で文学の講師を務めることを決める。
講義の初日、学生と訪れた居酒屋でアルバイトをする韓国人の留学生チャネ(キム・ジェウク)と出会い、涼子は最後となるかもしれない小説「永遠の記憶」の執筆を手伝わせることに。

年の差は30歳以上離れた若い韓国人のイケメン青年に惹かれる50代の初老の女性と言う図式は納得性がある。

突然可愛がっていた愛犬(ラブラドール)「トンボ」の死により正気を失う涼子、そこへ駆けつけ慰めるチャネといつしか二人は年齢の差を超えて恋人のように惹かれ合っていく。

中山美穂も48歳ながら均整のとれシェイプされた裸身を晒してのベッドシーンに驚かされる。
もう少し露出して胸などを見せてくれたら良いのにと思いながら裸の背中を見詰める。

病が進行するにつれ、涼子は愛と不安と苛立ちの中、
元夫の介入もありチャネとの関係を精算しようと決意するのだが、その思いは到底チャネには受け入れられないものであった。

作家を目指す一人の青年チャネとの出会いにより、自分が何をなすべきかを心に決める。互いの気持ちを量りながらも、2人の思いはすれ違っていく。

韓国に戻り2年後チャネは作家としてデビューし学生時代の友人アンナ(石橋杏奈)に仲介して貰い日本で出版されることになる。

来日し涼子の最後の小説「永遠の記憶」を手にとると、涼子と自分しか知らない記憶が蘇って来る。
介護ハウスに入居している涼子を訪ねるがチャネが誰だか分からない。。

しかし涼子の瞳の中にチャネは存在していることを確信する。
遺伝性アルツハイマー患者の無垢で透き通るような表情は見る者の心を揺さぶる。

過去に何があったか、何をしたかは忘れてしまっても、
愛し合ったことは出会った一瞬に思い出す。

47歳の韓国女性監督、チョン・ジェウンの原案・脚本。
「子猫をお願い」(01)で劇場用監督デビュー、他に建築ドキュメンタリー「語る建築家」(12)(日本公開未定)は4万人を超える観客を動員してヒットになったと言う。
太宰治や森鴎外、林芙美子などの作品をチャネに語らせるなど日本文学の古典などに関心を寄せる劇中劇など、斬新な表現方法で監督のセンスや斬新性を観客に印象付けている。。

「新しい靴を買わなくちゃ」以来となる映画主演が5年ぶりの中山美穂は、自身の年齢よりも年上の女性小説家を好演、
相手役の「アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~」などキム・ジェウクも、素朴な(カマトト風ではあるが)表情と流暢な日本語で物語を引き立たせる。

5月12日より角川シネマ有楽町他で公開される。

「ホース・ソルジャー」(12 Strong)(アメリカ映画):2001年9月11日の直後、米陸軍特殊部隊12名はテロリストの本拠地アフガニスタンの山岳地帯に馬に乗って侵攻する

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アメリカでは今年1月19日に新登場のこの作品「12 Strong」は3002館で公開され16.5M、2位にランキングされた。

観客は主人公たちの溢れる「愛国心」に感動し好感を抱いて出口調査(CS)で最高のA評価。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件翌日に、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)が召集され、ウズベキスタン基地から空輸でアフガニスタンに潜入し、山岳地帯を陣取ったタリバンと戦うことだった。

海兵の特殊部隊「シールズ」はウサマ・ビン・ラディンのタマを取ったりして有名だが、ビン・ラディンが全盛の頃の時代に久しぶりにグリーンベレーの活躍を見る。
戦場は険しい山岳地帯だったために、車ではなく、馬に乗って戦う米陸軍特殊部隊(ホースソルジャー)はタリバンを制圧に向かう。観客は25才以上の男性が大半を占める。

原作は作家ダグ・スタントンが2009年に出版したベストセラーになったドキュメント「ホース・ソールジャーズ(horse Soldiers)

2週目には6位に落ちて3018館で公開され8.6M。男性観客層に特化している作品は落ちるのが早い。
アフガニスタンに潜入し、山岳地帯を陣取ったタリバンとアナクロニズムにも、馬に乗って戦う米陸軍特殊部隊(ホースソルジャー)を描く。
北米では40M(40億円)超くらいの興行成績で、愛国心満々の映画は海外では受け入れられないので制作費は回収出来ただろうがヒット作とは言い難い。

 全世界を震撼させたアメリカ同時多発テロから17年、これまで明かされなかった「9.11直後のテロ勢力・タリバンとの最初の戦い」の全貌がベールを脱ぎ映画化されたのだ。

 2001年9月11日、ドイツに駐留するミッチ・ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)は内勤への転属願いが通り、今年は落ち着いてクリスマスが祝えると妻と幼い娘の一家3人は喜んでいた。

新居に移ったその日NYからのTV中継はワールド・トレード・センターへ突っ込む大型旅客機を映し出していた。

その翌日の12日、ミッチ・ネルソン大尉は、自分から志願した内勤への転属を断り、最も危険な対テロ戦争の最前線部隊に志願し、特殊作戦の隊長に任命される。

ミッチは典型的だが、アメリカ人の「愛国心」にはいつも感心させられる。
安倍首相の主導し見えて来た憲法改正で日米安保条約に遵守し戦闘地域への派遣の可能性が出て来ると防衛大学卒で任官拒否が輩出する。ミッチの「愛国心」こそ、日本人には欠けているものだ。

ウズベキスタンの「K2」と呼ばれるカルシ・ハナバード空軍基地で2年間訓練を共にした12人の特殊部隊員が集まる。
ネルソン大尉は右腕の部下、キャル・スペンサー准尉(マイケル・シャノン)を連れマルホランド大佐(ウィリアム・フォークナー)の命令を受ける。

アフガニスタンへ乗り込み、反タリバンの地元勢力、北部同盟を率いるドスタム将軍(ナヴィッド・ネガーバン)と手を結び、テロ集団の山岳の拠点マザーリシャリーフを6週間で制圧するがミッションだ。

ネルソンは「3週間で」と言い切る。
11月半ばには山道が雪で閉ざされるからだ。
空爆の絶えざる支援を受けることになるウズベキスタンからの空爆を駆使して一等曹長サム・ディラ―(マイケル・ペーニャ)を下士官とする12人の陸上部隊は空輸で戦場に降り立つ。

部隊はコードネームODA(Operation Detachment Alpha)595と呼ばれる。
コリン・パウエル大将は圧倒的な地上部隊でテロ勢力を制圧する戦術を主張するが、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は少数の地上精鋭部隊と大量の空爆が勝利への道だと説くが、このODA595は長官の戦術の正しさを証明する。

ドスタム将軍から険しい山岳地帯で勝利を収めるための最大の武器は、ほとんどの隊員が1度も乗ったことのない「馬」だと言い渡される。

かくして西部劇さながら、ホース・ソルジャー12名はタリバンの立て籠もるマザーリシャリーフへの40マイル(64キロ)の山岳湿地帯を進み、途中のタリバンに占拠された小さな村を解放する。

この辺りは「帝国の墓場だ」と将軍は呟く。

だが、現地に着いたODA595部隊に、次々と予期せぬ危機が襲いかかる。
敵の数はまさかの5万人、しかも彼らは米兵の命に10万ドルもの高額の懸賞金をかけていた。
ドスタム将軍配下は僅か200人、しかも北部同盟の他の部族とは険悪の仲、いつ味方同士の内乱が起こるかも知れない。

大軍のタリバン部隊との戦闘は単純で繰り返しが多い。
しかし白旗を掲げ降伏の行進に「気をつけろ」のサイン。案の定白旗男の「自爆テロ」猛烈な爆風で隊員はぶっ飛ばされるが用心していた分死傷者は
いない。

ただ白兵戦でスペンサー准尉が胸に銃弾を受け、瀕死の重傷を負う。ウズベキスタン基地からのヘリコプターは雨霰の銃撃の合間を縫って准尉を運び込む。

タリバンへの反撃は民間人や戦友が傍にいても危険を顧みず空爆を求める。座標軸を打ち込むと2分で、ピンポイントの猛烈な爆撃が始まる。戦争の形も変わったものだ。

降雪で山道が閉ざされるまでのタイムリミットは3週間。
外人の傭兵部隊に最新鋭のミサイルや戦車などを装備したタリバン5万人を相手に、西部劇さながら、前時代の遺物のはずの騎馬隊」(ホース・ソルジャー)で反撃する12人。

その後将軍はアフガニスタンの副大統領になるが、ミッチ・ネルソン大尉を親と呼んでいる。しかし部隊は直ぐ帰国するからで「このままこの土地に留まったら敵になるかも知れない」と意味深い言葉を大尉にかける。


「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「ブラックホーク・ダウン」「キング・アーサー」などの大物製作者ジェリー・ブラッカイマーがプロデューサーを務めド、デンマークCM界の鬼才でコソボ紛争を追ったドキュメンタリーや報道写真家でもあるニコライ・フルシーを監督に抜擢。
フルシーは監督デビュー作品だ。

主役のネルソン大尉には「アベンジャーズ」シリーズのクリス・ヘムズワース、腹心の部下スペンサー准尉にオスカー作品「シェイプ・オブ・ウォーターなどでも注目されるマイケル・シャノン、
一等曹長にサム・ディラ-に「フューリー」のマイケル・ペーニャ、
連隊長のマルホランド大佐にウィリアム・フォークナーなどのベテランが脇を固める。

911で散った何の罪もない人たちとその遺族、そしてアメリカ合衆国の未来のために「愛国心」を掲げ、壮絶な戦いに挑むホース・ソルジャーたちの誇り高き実話。

エンドクレジットに情報解禁となった「ODA595部隊」の面々の映像。
G・ブッシュ大統領からの受勲を受け天にも舞い上がりたい大尉以下特殊部隊のメンバーは観客にカタルシスを齎す。

2001年9月11日の直後、米陸軍特殊部隊の隊員(グリーンベレー)の驚くべき実話は、作家ダグ・スタントンが2009年に出版したベストセラー「ホース・ソルジャー」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)によって初めて紹介された。
撮影はすべて、アフガニスタンと非常によく似た自然環境を持つニューメキシコ州で行われた。

5月4日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

「名もなき野良犬の輪舞」(The Merciless)(韓国映画): 刑務所内で出会い、家族や兄弟のように固く結ばれた2人の犯罪者の絆が、ある真実によって次第に悲しみと憎しみに変わっていく

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あの香港映画の永遠の名作「インファーナル・アフェアーズ」三部作を一つに纏めて凝縮したような映画。
ギャング、警察、潜伏刑事に二重三重の裏切り、そして再三の再四のドンデン返し、忙しい作品だが韓国映画だけにツボを心得ていて観客を堪能させる。

邦題は配給会社も頭を捻ったのだろう「名もなき野良犬の輪舞」などとヨーロッパ古典文学を思わせるが、映画を見終わって内容に余りあっていないような気がする。
韓国語で何と言うか知らないが、英語では一言「The Merciless」=「冷酷無比な奴ら」と明確でポイントを突いている。

プロローグでギャング仲間が酒を飲みながらジェホが如何に冷酷か話している。殺した死人の目をじっと覗き込むと。

ギャングの犯罪組織のトップを目指すジェホ(ソル・ギョング)の地位はナンバー2、服役中の刑務所で鼻っ柱の強い野心的な若者、ヒョンス(イム・シワン)と出会う。

周囲の人間を誰も信じずに生きてきたジェホだったが、ある時、外から送られた刺客に獄中で命を狙われピンチを救われたことでヒョンスを信頼するようになり親友として固い絆で結ばれる。
驚いたことにヒョンスは潜入捜査官だと身分を明かし、二人で手を組み犯罪組織を乗っ取ろうと持ち掛ける。

出所後、チームを組み、提案通り、犯罪組織を乗っ取ろうと企てるジェホとヒョンス。
先にシャバに出ているジェホが釈放され刑務所から出て来るヒョンスを迎えるシーンがカッコ良い。

アメ車のオープンカーで大型マッスルカ―(マスタング)。決して韓国製のフィエスタでは無い。
しかし、それぞれの動機が次第に明らかになっていき、そのことから信頼で結ばれた2人の関係が変化していく。

「こっちも乗っていいよ」と美女が後ろのシートに横たわっている。

全体にスタイリッシュな仕上げは監督のビョン・ソンヒョン好みだ。だが何かと言えば雨が降っていて明
かりが暗いのが難点だ。

主役は「シルミド」「殺人者の記憶法」「力道山」などの50歳になるソル・ギョング。上述のようい冷酷で無慈悲な目付き。イイねえ。

「戦場のメロディ」「弁護人」などで俳優としても活躍するアイドルグループ「ZE:A」のイム・シワンが、ヒョンスを演じる。ジョホのすることは何でも許すが
母親にジェホが犯したことは許せない。

監督は「マイPSパートナー」のビョン・ソンヒョン。劇場用長編映画では2作目。試行錯誤で様々な撮り方をためしているのは良い。

5月5日より新宿武蔵野館他全国公開される。

「ゆずりは」(日本映画):葬儀社を舞台にした人間ドラマ。葬儀社の営業部長として多くの死と向き合ってきた水島正二をモノマネのコロッケが本名、滝川広志として演じる。

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 主人公水島正二(滝川広志)は多くの死と向き合ってきた葬儀社の営業部長として、自分が面接で選んだ新入社員の高梨歩(柾木玲弥)に潜在能力を認め、じっくりと教育しようとする。
高梨の言葉遣いや態度は葬儀社にあるまじきひどさだが、ルールを無視してでも遺族の気持ちを考える優しい青年だった。

そんな高梨と共に遺族たちの葬儀を通して交流を重ねるうちに、
妻に自殺されアルコールに依存した荒れた生活を送った過去のトラウマを抱く
水島の心境は変化していく。

モノマネ芸人のコロッケが本名の滝川広志名義で役者を務めると言うので期待したが、
芝居が下手でがっかりした。
やはり野に置けモノマネ屋さん。
葬儀社が舞台となっているから見送る人、見送られる人、
エピソードは多く泣かされるのではと期待していて、
実際ハンカチを取り出し何度も涙を拭ったが、
それは映画に感動した訳では無く、浪花節の人情噺に乗せられただけ。

吉田順と久保田唱の本はクリシェばかりで退屈だし、何よりも監督加門幾生の演出の未熟さも目立つ。
映画は一本撮っただけで見ていない。TVで活躍したディレクターのようだ。

そういう意味から言えばコロッケを活かしきれなかったと言うか、
コロッケのエスタブリッシュした「したり顔した芸」をいじれなかったスタッフの努力の無さに
非難の目は向けられる。

「したり顔」はリセットしてスクラッチから組み立てなければ、妻に自殺された十字架を背負い、葬儀社の営業部長・水島正二として部下を統率し、義父のオーナー社長(勝部演之)に仕えるキャラクターは難しいのだ。

それに「ゆずりは」の意味と意義を(さも教えてやるとばかりに)映画のエピソードとプロローグでじっくりと2度も繰り返すこともリダンダント。

新入社員高梨歩(征木玲弥)のオカメインコも何度も出て来る。弟を亡くして口を利かなくなった少女に「効いた」とは思えない.

若い頃水島は親を亡くして泣いている少年に「頑張れ!」と言ってしまい、
反発されたことを高梨に「口は禍の元」として反省を込めて話すと、
「その少年はボクです」と。

こんなご都合主義なストーリーには乗せられる程観客はバカではない。

葬儀社のベテラン社員と新入社員のコンビが、亡き人々とその遺族との交流を通して生と死に向き合うさまが描かれる人間ドラマと宣伝文句は唱えるが、
コロッケもモデル上がりの征木も演技は素人芸の域を抜けない。
島かおりや勝部演之らベテランが顔を見せるとホッとする。

いろいろとエラそうなことを書いてしまったが、ポロポロと涙を零したことは間違い無い。
最近こんなに泣いたことはなく、その意味では兜を脱ぐ。

6月16日より新宿K’s Cinema他で公開される。

「となりの怪物くん」(日本映画):自分勝手で他人の思惑を顧みない不器用な男女2人の「怪物くん」たちのロマンチックでハチャメチャドラマ

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またJKものかいな、と諦めながら見始めると、これが意外以上に面白い。
友達の居ない主人公は他の映画にも多く出て来るが、居ない度合いが凄い。
だからお金をあげて歓心を買ったりする。
不登校だが試験があれば一番になると言うのも嬉しい。

映画の冒頭、吉田春(菅田将暉)は下の駐車場で大騒ぎしている連中を見付けると、
寛いでいる店先から海浜に面したベランダから白いボックスカーの屋根に飛び降り
1人の少年を苛めている4-5人の高校生をボコボコにする。
車の屋根は大きくへこみ苛めっ子たちや被害者の少年も含めて逃げてしまう。

そのいざこざが素で校長に叱責を受けた春は学校に行かなくなる。
行動予測不能な超問題児、吉田春こと「怪物くん」のイントロダクションだ。

不登校の春の空席の隣が学年一の優等生、ガリ勉&冷血の水谷雫(土屋太鳳)。
先生に頼まれ溜まっている学校からの通知やプリントなどを嫌々ながら春の部屋に届ける。

友達が居ない春にしてみればワザワザ家まで来てくれた人は誰も居ない。
家と言っても実家を出て従兄の三沢満善(速水もこみち)の雑貨屋に世話になっている。
嬉しくって嬉しくって、雫を「初めての友達」と公認し「雫が好き」と告白までしてしまう。

勝手に友達認定し、好きと迫られてもがり勉で春同様に友達0の雫は別の目標がある。
シングルマザーで仕事に忙殺されていると、雫を見放す母親へのリベンジを込め、中学以来の慣習となった学年で一番になることだ。

不登校は直る。雫の後を子犬みたいにつき纏いどこに行くにも雫から離れない。女子トイレからも追い出される始末。
期末テストでは雫は2番、そしてウザったい春が首位で雫同様先生生徒一同驚く。

子犬みたいにつき纏う春はイケメンでその気になれば、知的能力も誰にも負けない。
「俺のこと春って呼べよ」と好きだと猪突猛進の「好きだ」コールにいつしか春にロマンスを感じる雫。
 
友達居ない学力一番という特殊キャラのロマンスは興味津々で展開を楽しむが、
何よりも2人の会話が可笑しい。

用事が終わって「どうだ、一発するか?」と聞かれてドキッとするが
隣接しているバッティングセンターの話し。

ああ言えばこう言う式のラリーは飽きが来ない。

春の家族がゴージャス。
大物政治家で総理の椅子を狙う、父親吉田泰造(佐野史郎)は春の兄で人望もある吉田優山(古川雄輝)を差し置いて後継者に指名しようとする。

それが春の一番気に入らない所。優山の誕生パーティーを滅茶苦茶にし、その夜から行方不明。
勿論残りの高校生活も不登校で卒業も出来ない。

3年前に先生に頼まれてプリントを持って行ったみたいに高校生活の残滓(雫と過ごした思い出の品々)を段ボールに入れてトボトボと春に下宿先に運ぶ、雫。

そこで三沢に「一発やってけ」と誘われて渾身の一撃は一番上のマークをヒット。
「ホームランだ!雫」と懐かしい春の声がバッティングゲージに届く。

不器用な主人公たちが織りなす自分勝手で他人の思惑を顧みない「怪物くん」たちの破天荒ドラマ。

大ヒット映画「君の膵臓をたべたい」の月川翔が監督を務めスィートビターで最後はロマンスを成就させる演出力は見事だ。

4月7日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

「OVER DRIVE」(日本映画):各企業の先端技術の結晶、モンスターカーを操るドライバー、チームを支えるメカニック、人車一体の公道の格闘技の最高峰「WCR」で17年のトヨタの優勝はこの映画を後押し

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カーレースの映画と言えば「栄光のルマン」や「スピードレーサー」などF1レースの映画は多いが、公道でタイムアタックを繰りかえスプリント形式の絵は単独で走るので映画は少ない。
そこでラリーのおさらいをしてみる。

ラリー (Rally) とは指定された公道でタイムアタックをする自動車競技。ドラバ-とナビゲーターの2名1組が競技車両・ラリーカーに乗り、公道上を1台ずつ走行して、区間タイムの速さや運転の正確性を競う。自動車競技としてのラリーは、1911年に始まったラリー・モンテカルロが起源とされる。
ラリー界ではラリー・モンテカルロと1932年創設のRACラリー(現ウェールズ・ラリーGB)、1953年創設のサファリラリーのことを「三大ラリー」と呼ぶ。
かつては長距離・長時間走行の耐久性を競う傾向が強かったが、現代ではコースや日程をコンパクトにまとめ、短距離のタイムアタックを繰り返すスプリント形式が主流となっている。

ラリーの最高峰は1973年に創設された世界ラリー選手権 (World Rally Championship, WRC) 。 ラリーでの好成績には市販車の販売促進効果があるため、上位シリーズや伝統イベントでは自動車メーカーが一流プロ選手と契約し、ワークス・チームを編成して参戦する。
現代の主なラリーは、SSにおけるタイムトライアルを主体としている。数日間の合計タイムによって純粋な速さを競う。「スプリントラリー」とも呼ばれる
映画の世界では半世紀前の「ラリー・モンテカルロ」(69)があるだけ。

しかしラリーでの特殊な運転技術「ドリフト」については日本が本場で幾つの作品がある。
ユニバーサルの「ワイルドスピード」(06)はドゥエイン・ジョンソン主演でシリーズも8を数えているが、第3弾の「TOKYO DRIFT」は東京・渋谷を中心にドリフトを駆使しながら公道での手に汗握るレースだった。
香港映画で日本のコミック原作の「頭文字D」(06)は山道をドリフトで駆け降りる。
アンディ・ラウが監督でシリーズ化され、豆腐屋のオヤジがスターになった。

そういう意味で公道を全開走行で駆け抜ける最も過酷な自動車競技ではあるが、
抜きつ抜かれつと言うレースの醍醐味に欠ける「ラリー」映画は本邦では殆どない。

そういう意味ではコミックを原作としているがラリーに焦点を当てて、命を賭けるレーサーとメカニックの兄弟を描いた作品はレアものと同時に
人間ドラマとして良く描かれている。

子どもの頃山道を自転車で猛スピードで競争しそのまま成長した2人の兄弟。
主人公で兄の檜山篤洋を演じるのは東出昌大。
メカニックという、裏方で作り手側に立ち、自分の技術の誇りと兄弟の絆との狭間で揺れ動く芝居は上手い。
その弟であり、天才ドライバー・檜山直純役には、千葉真一の息子でLA育ちの真剣佑、国外の多数の映画(パシフィフィク・リムなど)、に出演しているが
最近は邦画が多い新田真剣佑(性の改名も「ちはやふる」の芸名)。

兄弟はレースを巡り殺し合い寸前の喧嘩や確執を繰りかえすが、子ども時代の自転車競走の原点帰りで緊密な絆を取り戻し日本ラリーの総合優勝をする、他愛のないハッピーエンドを迎えるが、映画のキモは過酷なラリーの「タイムアタック」
0.1秒でもセーブする凄惨な戦いに目を瞠る。

2017年には18年振りにTOYOTAが、最高峰の「WORLD RALLY CHAMPIONSHIP」に参戦。
開幕2戦目にして優勝を飾る快挙となり、大きな話題となった。

監督は「海猿」「MOZU」「暗殺教室」などの羽住英一郎監督。
出演は森川 葵、北村匠海、町田啓太など若手や
要潤、吉田鋼太郎ほか実力派俳優が脇を固める。
すっかり堪能して興奮した映画だった。

6月1日よりTOHOシネマズ日比谷他全国で公開される。

「ラ・チャナ」(La Chana)西・アイスランド・米映画):一人で歩けない71歳のフラメンコダンサー、ラ・チャナは椅子に座ったまま鬼神をも驚かす、阿修羅のような激しいフラメンコダンスを踊りまくる

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真っ赤なドレスの小太りの老女が画面に現れる。あのラ・チャナだ。
名声を馳せたジプシーのフラメンコダンサー、ラ・チャナ(本名、アントニア・サンティアゴ・アマドール)が30年振りに舞台に戻る。
立つことが出来ず、一緒に歌う男性歌手3人に支えられて舞台中央に一段と高い位置に据えられた椅子に腰を下ろす。

「おどれるかしら・・・」って言葉を発していたチャナ、観客も同じ感想だが、椅子に座ったまま、ギターなしでソレア・ポル・ブレリアを踊る。

足は機関銃みたいにリズムを刻み手拍子と腕の動き、それに顔の阿修羅の如く凄まじい表情。それは見事なほどのフラメンコだった。
僕の見た最高の踊りだった。
71歳の身体障碍者とはとても思えない。

何故30年も舞台に立たなかったか、否,立ちたいと思いながら踊れなかったか?

14歳でプロとして踊り始め、17歳でフラメンコ・ギタリストの、ミゲルと結婚。
夫がマネージャーになり暴力を振るうようになりDVに悩みながらも、
フラメンコダンサーのキャリアは順調だった。
サルバドール・ダリも毎回通い詰める熱心なふぁんだった。

映画で共演したことのあるピーター・セラーズからハリウッドに招かれるも封建的なヒターノ(ジプシー)の世界では女がジブの意見を主張することは許されない。

31歳の時TV番組「今夜はフィエスタ」で大成功を収め、ラ・チャナは世界のアイドルになる。
彼女が成功すればするほどミゲルの嫉妬は高まりDVはエスカレートする。

そして33歳キャリア絶頂期にミゲルは二人の間の娘を人質に
「仕事を辞めなければ、娘から引き離す」と強引に引退させてしまう。

生活の困窮し優しく誠実なフェリックスに出会い結婚するが二人の生活を大切にするため45歳で引退する。
そして「関節炎」のため立って踊ることは不可能となる。

だがラ・チャナの舞台へのアーティスト魂は消えない。
椅子に座ってでも踊ろうとする。

上述の椅子に座ったフラメンコは13年10月にバルセルナ・カタルーニャ国立劇場で開催されたカルメン・アマヤへのオマージュ公演で、鬼神も器かしむる激しい感動の踊りを終え、3人の歌手に腕を抱えられ立ち上がったラ・チャナへのスタンディング・オベーションはとどまることを知らなかった。

7月21日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

「クレアのカメラ」(Claire’s Camera)(韓国映画):フランスの大物女優・イザベル・ユペールと韓国の人気女優・キム・ミニは夫々主演女優賞を狙いカンヌ映画祭に来ていてホン・サンス監督と出会う

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ホン・サンス監督がたまたま出会ったお気に入りの女優二人と一緒に、その場で構想を練って仕上げた「クレアのカメラ」。
何ともお手軽な映画だが、サンス監督の独自の映画制作法だ。

2016年のカンヌ映画祭でフランスの大物女優、、イザベル・ユペールはポール・ヴァーホーヴェン監督作「エル ELLE」で、
韓国の大スター、キム・ミニはパク・チャヌク監督作「お嬢さん」と、夫々主演女優賞を狙い
共にコンペティション部門出品の上映でカンヌに来ていた。
その機会を利用したわずか数日の撮影で、この小品は生まれた。
普通映画は構想10年なんてのはザラで、少なくとも3-4年かけて映画は完成する。

しかしホン・サンス監督は脚本を書かない。時間と場所が決まればそこから映画が出来る。
だから主人公は監督か大学教授、身のまわりの人間関係をドラマにする。
ジャンル映画の巨匠になったサンス監督には固定したファン層が付いている。
だが映画興行成績(BO)は振るわない。僕は彼の作品は買わない。

映画会社で働くマニ(キム・ミニ)は、カンヌ国際映画祭への出張中に、突然女社長ナム(チャン・ミヒ)から解雇されてしまう。
誘われて行ったカフェで唐突に仕事に不誠実だからクビだから韓国へ帰れ、と。
帰国日を変更することもできず、一人カンヌに残ることにしたマニは、ポラロイドカメラを手に観光しているフランス人、クレア(イザベル・ユペール)と知り合う。
クレアは、自分が一度シャッターを切った相手はもう別人になるという自説を持つ、不思議な人物だった。
クレアは韓国人監督ソ(チョン・ジョニン)と知り合った2人は、マニが解雇を言い渡されたカフェに行き、マニのボスだった社長のナムと3人で同じ構図の写真を撮る。

ホン・サンス監督が描きたかったのはカンヌ映画祭と言うか映画業界の裏事情だ。
女癖の悪い映画監督、監督と男女の関係にある映画会社の女社長、監督と火遊びしてしまった映画会社の社員。キャラクターに目の前の女優を当てて本を仕上げる。
事実は曖昧なま、嫉妬と虚実ないまぜの設定でそれぞれの憎悪や思惑が交錯する。華やかな舞台の陰で繰り広げられる人間模様が描かれる。
着想は面白いがやはりヤッツケ仕事で細部に入るとボロが出る。


韓国の名匠ホン・サンスが、それぞれ過去にタッグを組んだことのあるイザベル・ユペールとキム・ミニをキャストに迎え、華やかなカンヌ国際映画祭の舞台裏で繰り広げられる人間模様をユーモアたっぷりにつづった。
ユペールとキム・ミニがそれぞれの出演作の上映でカンヌを訪れたわずかな期間を利用して撮影し、女癖の悪い映画監督、監督と男女の関係にある映画会社社長、監督と関係を持った映画会社社員がそれぞれの思惑を交錯させていく様子を描く。

映画会社で働くマニは、カンヌ国際映画祭への出張中に突然、社長から解雇を言い渡されてしまう。帰国日の変更もできずカンヌに残ることになった彼女は、ポラロイドカメラを手に観光中のクレアと知り合う。クレアは、自分がシャッターを切った相手は別人になるという自説を持つ不思議な女性だった。2人はマニが解雇を告げられたカフェを訪れ、当時と同じ構図で写真を撮るが……。

ホン・サンス、イザベル・ユペール、キム・ミニの3人の大物映画故に、
「クレアのカメラ」は「第70回カンヌ国際映画祭」のスペシャル・スクリーニングに招待された。
招待されただけで受賞などには関係ない。

クレア役のイザベル・ユペールは65歳。
2001年のカンヌ国際映画祭でグランプリ、最優秀主演女優賞、最優秀主演男優賞の三冠に輝いたミヒャエル・ハネケ監督「ピアニスト」で世界に衝撃を与えた。
他に、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「愛、アムール」(12)、「ハッピーエンド」(17)にも出演している。
2016年には「エル ELLE」で第89回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。
ホン・サンス監督とは「3人のアンヌ」(12)での主演に続いて二作目。

キム・ミニはモデル上がりの女優で36歳。
2017年、映画「夜の浜辺でひとり」の演技で、ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞している。

7月14日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

「修羅の華」(A Special Lady)(韓国映画): 会長秘書でナンバー2のナ・ヒョンジョンは「ハニートラップ」を武器に犯罪組織を大企業に成長させた

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昨夜(14日)は「NY会」。80年代、90年代をNYで過ごしゴルフに現を抜かした気の置けない仲間たちが外人記者クラブのバーに集まる。

僕は白内障の手術を終えて2週間、ようやく晴れてアルコールが飲めるようになった。60台から70台の老人の集まりと言えば皆何かしら持病を抱えている。アメリカBの会長だったGさんは昨年秋に心筋梗塞で7週間の入院生活を送ったが、その内3週間はICUに閉じ込められたコーマ状態を語っていた。
今は冠動脈にステントを入れ安定しているが、意識不明状態の時に不思議な「臨死体験」をしたと。

総天然色で自分の姿を上空から見詰めていたというが、僕も80年代の終わりタヒチのボラボラ島で溺れ心肺停止状態で引き揚げられた時、たまたま休暇でベルギーの心臓医が浜辺で胸を強打しマッサージを施してくれたそうだ。
息を吹き返したところで心臓医は、停止状態は5分以内だったから「言語障害」も起きないと言い残して遊泳を続けたと言う。僕は救急車で島の医者も居ないクリニックに運ばれたがその際に意識は無く「臨死状態」でGさんと同じく上空から運ばれる自分を見ていた。

人材派遣会社・米国R社社長だったI氏は戦友と呼び合う。
日本企業が大挙してアメリカ進出した時代だった。
人権無視やセクハラ、パワハラなど野放図な行為(殆どは言い掛かり)だと日本企業のアメリカ従業員から寄せられたクレイム(大抵は慰謝料狙い)を問いただされた。
下院議院での公聴会(Hearing)に喚問され、下院外交委員長のトムラントス以下
ずらりと議員たちがひな壇から敵意の目を光らせる中、言われなき罵詈雑言に答えなければならない。
ひな壇の下ではTVやカメラの放列、CSPSは生中継だし、日本からもTBSやNETなどが入っている。

あの頃はジャパンバッシングの頂点でNY在住の日本人は皆高揚感を持っていたが、(今やジャパン・パッシングで誰も気にも留めない)、市内引き回しの上さらし首は一種のショウだった。

昨夜の紅一点は、未だNY在住の澤野水櫻さん。4月25日から日本橋高島屋6階美術画廊で開催される個展の案内を出席者に配布していた。NYでは名の売れた人だが日本では無名。GWに入るが皆、顔を出すだろう。


男性上位の韓国映画、それもクライムフィルムで女性が主人公と言うだけで見る価値がある。あまり美人ではないが大胆なプラチナブロンドのウィグにボディコンシャスなテイラーメイドスーツのキム・ヘスは確かにサマになっているし、米露の二重スパイのジェニファー・ローレンス演じる「レッド・スパロー」にも酷似している。
どちらも最大の武器は「ハニートラップ」だ。

大企業ジェチョルグループの会長秘書でナンバー2のナ・ヒョンジョン(キム・ヘス)は、かつては娼婦だったが、犯罪組織を財界の有力企業に育て上げ、現在の地位を築いた。盗聴器盗視器満載のホテルの部屋で大企業や競合企業や組織のボスを誘い込み、秘技を尽くしてベッドの上で満足させる。
元娼婦だけに前戯も本番テクニックも並みじゃない。

47歳の老骨鞭打ってキム・ヘスの全裸オンパレードだが、カメラ視線に社長やボスはばっちり映っている。

これがナンバー2にのし上がった秘訣。
その裏では、社会の底辺に生まれ喪失感と劣等感に満ちた人生でヒョンジョンだけが生き甲斐。彼女にひそかに恋心を抱くイム・サンフン(イ・ソンギュン)が、フィクサーとして組織の闇の仕事を一手に引き受けていた。

さらなる事業拡大を狙うジョチル会長はクリーンな仕事しかしなくなる。
ダーティな仕事はヒョンジョンに押し付けられる。

しかし、ある時、サンフンはヒョンジョンを目の敵のように追いまわすチェ・デクシ検事(イ・ヒジュン)から彼女の愛する青年の存在を知ってしまう。
チェ検事はエリートコースをまっしぐらに登っていたがヒョンジョンに足元を掬われ総てを失った恨みを抱いている。

それは誰にも漏らしたことのないヒョンジョンの息子なのだが、絶望と嫉妬、そして復讐心から、サンフンはヒョンジョンの愛する若者を狙うようになる。

過去から生じた3人の確執は凄絶だ。
ヒョンジョンは組織内の権力争いと同時、サンフンとも壮絶な死闘を繰り広げる。

デビュー作のイ・アンギュ監督の脚本は緻密に書けていて説得力がある。
現場で助監督の長い経験と知見が初長編作品に活かされている。

主役は「コインロッカーの女」「10人の泥棒たち」などで知られる韓国の人気女優キム・ヘスの悪女ぶりを堪能できる。

第50回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭のフォーカス・アジア部門で作品賞を受賞した。

6月2日よりシネマート新宿他で公開される

「ママレード・ボーイ」(日本映画):両親同士のパートナーチェンジので、いきなり兄妹になった小石川 光希と甘いルックス、成績も学年トップ、全女生徒の憧れの松浦遊

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「ママレード・ボーイ」とは主人公を指して、「まだまだ甘い(幼い)少年」を意味すると言う。
いつものようなJKの詰らないありきたりのロマンス話かと諦めていたら、いきなり「近親相姦」を持ち込んで来たから気に入った。

両親同士がパートナーチェンジしたため、いきなり兄妹になってしまった高校3年の同級生の男女。

「ママレード・ボーイ」(Marmalade Boy)の原作は、吉住渉による1000万部突破の少女漫画作品。
TVアニメーションで視聴率を稼いだ勢いで実写映画化したもの(だそうだ。プレスに書いてあった)

桐稜高校3年でテニス部の小石川 光希(ミキ)(桜井日奈子)は、ある日ハワイ旅行から帰国した両親から「離婚する」ことを告げられる。

父親の小石川仁(筒井道隆)はハワイ旅行で出会った松浦千弥子(中山美穂)と恋に落ち、千弥子の夫、松浦要土(谷原章介)は仁の妻、小石川留美(壇れい)を気に入ったのだ。
お互いパートナーを交換して再婚するのだと言う。

どちらか片方が気に入らなかったら成り立たない。まるでマンガだね。(あ、これはマンガなんだ)
それにしてもバカな両親役に人気の中山や壇、筒井や谷原など主演クラスを充ててアホな役柄を演じさせるのはもったいないね。

松浦夫妻の息子の松浦 遊(ユウ)(吉沢亮)も含めて、6人一緒にキャッキャッキャと浮かれて暮らし始める。
そんな大人の非常識でハチャメチャな生活の中、光希は一緒に暮らす遊に惹かれ始めていくのは当然の成り行き。

游は「マーマレード」のような甘いルックス、頭脳明晰で成績も学年トップ、全女生徒の憧れの的。
やがて、二人は付き合うようになるが、遊は「自分の本当の父親」を探していた。
実の両親を幼くして亡くし、父親の親友、松浦要土に養子として育てられている。
そして両親たち4人が、ハワイ旅行で出会ったのではなく、古いアルバムを見つけ学生時代からの友人であったことを知り、自分と光希が「血のつながった兄妹」である可能性を疑うようになる。
遊は光希に別れを告げて、進学先を「京都工業大学」に決める。建築家志望の夢を果たすためとの口実も通用する。

東京で大学に進学しても、遊を忘れられない光希は、遊に会うために京都に行くが、遊は「彼女がいる」と嘘をつく。
しかし、気持ち抑えきれなくなった遊は、自分達が「兄妹」であることを光希に打ち明ける。
光希は全く気にしない、女性のサガだね。抱いてもらいたくて我慢できない。

別れの最後の思い出として、北九州への旅行をした二人は、別々の部屋をとるが瞬く間に遊の部屋へ飛び込む光希。
それならたとえ「禁断の関係」であっても結婚することを誓い合う。
遊も光希もやりたくて仕方がない欲求不満がしっかり描かれている。
しかし理性的な遊は「絶対に子供を作らない」という条件付きで。

「近親相姦」を悪としているが、ユダヤ人を見習えば良い。
選民のユダヤ人はユダヤ人しか結婚してはならないと言う基本理念がある。
オーストリアから出た「ロートシル家を見ると全世界の金融を支配するロスチャイルド家(Rothschild)は従兄妹同士、兄妹などは当たり前。
結果頭脳明晰な天才か奔放な芸術家の2極に分化する。フランスの分家「ロチルド」は見事なシャトームートンなどロートシルトワインを作り上げた。

4月27日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される

「V.I.P. 修羅の獣たち」(V.I.P.)(韓国映画):韓国国家情報部とアメリカのCIAは共謀して北朝鮮の大物の息子をVIPとして迎え入れるが、VIPは冷血で残酷無比の連続殺人鬼だった。

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悔しいけど韓国映画は日本より遥に優れていると認めざるを得ない。
昔はヨンさまなどつるりとしたイケメンが泣かしたロマンチックな悲劇ものや
男女の機微を突いた恋愛コメディなど、おば様たちばかりか日本国中の映画ファンを虜にした。

しかし近年、慰安婦問題がこじれ日韓両国民が憎み合うようになると、
例え楽しくても悲しくても、韓国作品は敬遠し始める。

そうなるとジャンルを変えて韓国映画は日本を攻める。
ブログでこの1-2週間で紹介した闇の世界を扱った「名もなき野良犬たちの輪舞」や
「修羅の華」など韓国製ノワールフィルムやクライムサスペンスは凄い迫力で迫る。
いつの間にか、すっかり虜になってしまった。

「名もなき~」は刑務所で知り合った二人のバディフィルム、一人はエリート(?)ギャング、一人は潜伏捜査官と言う
複雑で出口無しのドラマだった。

「修羅の華」は「ハニートラップ」のセックスを武器として犯罪組織の中でナンバー2まで上り詰める姐御の運命を描く。
何れも一癖も二癖もある捻りの効いたフィルムノワールだった。

特にこれから紹介する作品はその中でも一番強烈なインパクトを受ける。
映画の質はともかくそのバイオレンスや残虐性、冷血さは他に類を見ない。

ストーリーは複雑だ。
韓国の国家情報員とCIAの企てにより、北朝鮮から亡命したエリート高官の息子が、実はサイコパスの殺人鬼と言う設定。

3年前にシーンは戻ると北朝鮮での仲間と面白半分に犯す連続殺人事件の首謀者だ。
北からVIP扱いで韓国に亡命させ、これを隠蔽しようとする者、北から復讐のため亡命までして捕らえようとする者、殺された被害者の仇を討とうとする者、更に政治的な陰謀や北の中国隠金などそれぞれ独自の手前勝手な目的を持つ男たちがVIPを狙う。

細かく説明しよう。
 VIPは北のナンバー2、キム・モスルの息子、キム・グァンイル(イ・ジョンソク)。
キム・モスルは中国に預けた資金の金庫番をしている。

韓国国家情報院のパク・ジェヒョク(チャン・ドンゴン)と
米CIAのポール・グレイ(ピーター・ストーメア)は協力してグァンイルの脱北をほう助する。
それだからVIP扱いなのだ。

 韓国警察庁のチェ・イド警視(キム・ミョンミョン)は、北朝鮮でも、亡命してきた韓国でも殺人を犯していると確信しグァンイルを逮捕しようとする。

同じように北からも、グァンイルに脱北されたために責任をとらされ左遷された工作員、リ・デボム(パク・ヒスン)が復讐のため北を抜けて彼を追う。

キム・グァンイル演じるイ・ジョンソクが素晴らしい(?)残酷な演技を披露する。
ドラマや映画で活躍の青春スターで誰でもうっとりと見つめるほどのハンサムボーイなのだが、一転して演じる初めての悪役。
見かけと違い、実に冷血で凶悪で残酷。

通りかかった若い女性の殺害方法などは身の毛がよだつ。家族全員を皆殺しにして、
にして女性を暴力で拷問、強姦して最後は釣り糸で女性のクビを切り落とす。
眉一つ動かさず平然とやってのけるグァンイルは正に悪魔の化身だ。

観客も怒り狂い誰かグァンイルを殺せと思う頃に反旗を翻したパク・ジェヒョクがグァンイルを捕らえ縛り付け裸にして拷問する。

チャン・ドンゴンの冷血な芝居は観客の声に応えるように残酷だ。
責め質問を浴びせながら手や足に一発ずつ銃弾をぶち込み、更に犠牲者の声を代弁して銃を口に突っ込み止めを刺す。
そして大鉈を掴み、首を落とすシーンは流石に画面に出ないが身の毛がよだつ。

久しぶりのドンゴンは大歓迎だ。特に「ブラザーフッド」(04)で釜山映画祭の時ウォン・ビンや監督のCJなどと一緒にランチしたことも手伝いを僕は大ファンになっている。
日韓合作の「マイウェイ」(11)は詰らなかったが
「友へ、チング」(01)は感動した。
14年の「泣く男」以来久しぶりのドンゴンの渋みを増したハンサムな顔は嬉しい。

ドンゴン扮するパク・ジェヒョクはエンデイングに向け悪鬼のようにカッコ良い。
グァンイルの生首を紙袋に入れてCIAのポ-ル・グレイに手渡す。
これからはCIAの奴隷では無いとfの意思表示だがグレイの慌てようは尋常でないのは無理もない。
米国に言いなりになっている韓国政府への面当てのような独立宣言だ。

監督・脚本のパク・フンジョンは脚本家出身。
脚本家時代の「悪魔を見た」は僕の大好きな作品だが、
監督に転じたデビュー作「新しき世界」や「血闘」などに次いでこれで4作目。
闇の世界、スパイの組織などはお手の物だが今作は特に秀逸だった。

主役のチャン・ドンゴンや敵役のイ・ジョンソクの他に脇を固めるのは、
連続殺人事件の容疑者を追う韓国警察警察庁チェ・イド警部に「エンドレス 繰り返される悪夢」のキム・ミョンミン、
北朝鮮から左遷された恨みを晴らすためにやってきた保安省所属の冷徹な工作員リ・デボムに「密偵」のパク・ヒスン、
米CIA要員ポール・グレイにハリウッド大作「アルマゲドン」や「ファーゴ」「ジョン・ウィック:チャプター2」などのスウェーデン出身ピーター・ストーメアなど豪華な顔ぶれが揃っている。

6月16日よりシネマート新宿他で公開される

「メイズ・ランナー 最後の迷宮」(Maze Runner:The Death Cure)(米映画):シリーズ800億円を超える大ヒットの最終編。迷路を脱出した若者たちは不治の病の治療薬を求め敵の本部へ

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アメリカでは1月26日より公開が始まり、いきなり興行成績首位。
YAシリーズ三部作最終編「Maze Runner: The Death Cure」(邦題「メイズ・ランナー:最後の迷宮」)は3787館で23.5M。

第一作の「The Maze Runner」は2016年9月に公開され32.5M、第二作の「Maze Runner: The Scorch Trials,」は2015年9月で30.6M。
映画界の地盤低下か作品の前評判が低いのか、前2作を大きく下回るスタートだった。
海外市場は好調で62.5M、先行公開もされているのでグローバル総計は105.5M(115億円)。

公開は1年前の予定だったが、撮影中に主役のオブライエンが負傷したため完成が遅れ延期された。
主人公トーマス(ディラン・オブライエン)は仲間とともに感染症「フレール」と呼ばれる死に至る病(ウィルス)の治療薬を求めてWCKD本部への危険な旅に出る。

2週目は2位。先週首位でだったYAシリーズ三部作最終編は、3793館で58%ダウンの10.2Mと1週間だけの短い首位だった。
北米累積は39.8M、海外市場は20か国で35.2M、中国だけで10日間で37Mを入れると海外累積は149.9M、
ワールドワイド総計は187.2M(206億円)になる。

3週目になると6位。2923館で6M。国内累積は49M。海外は83か国で開け23.5Mを加え累積44.3M,グローバル総計は93.3M。

4週目は2.5M、国内累積で54M、以降チャートから消える。

しかし最終的には日本のように公開待機中の国があるが、シリーズ3作合せての興収は800億円を超える大ヒットとなって幕を閉じる。

記憶を消された若者たちが労苦を共にした仲間たちとの友情を大切にし、内面の魂の叫びを聞き、大人への通過儀礼を経るサバイバルアクションシリーズ。

振り返れば、舞台と背景は変わって行く。
 第一作「メイズ・ランナー」の巨大迷路「グレード」はコンクリートと腐食の世界だった。
 毎晩迷路は入れ替わり変化する。
 
 第二作「砂漠の迷宮」は焦土の砂と錆の世界。
 不治の感染症「フレア」ウィルスの治療法を巡り、
 主人公たちと対立する謎の集団「WCKD」との闘いが始まる。

 そして第三作「最後の迷宮」はガラスと鋼鉄の世界。
 高層ビルに囲まれた大都市、巨大なモンスターやゾンビが襲い掛かる。


 謎の巨大迷路、広大な砂漠の廃墟という難関をクリアしてきた少年たちは、
 最後にして最大のミッションに挑む。
 
 囚われた仲間を救うため、自分たちが閉じ込められた理由を解明するため、彼らは決死の覚悟で脱出し て来た「迷路」へと戻ることを決断する。
 謎を解かなければ、この世界は終わってしまう。
 挑戦しなければ、生き延びることは出来ない。

 トーマス(ディラン・オブライエン)、ニュート(トーマス・ブロディ=サングスター)、フライパン(デクスター・ダーデン)の3人はフレア・ウイルスの抗体を有するグレーダーたちの最後の生き残りで あった。
ヴィンス(バリー・ペッパー)率いるライト・アームの命令に反して、3人は友人のミンホ(キー・ホン・リー)を救うべく行動を開始した。
 
抗体を持つミンホは、世界災害対策本部(WCKD)でフレアウイルスの治療法を見つけるための実験の被験者になっているのだという。

3人はWCKDの本部がある最後の都市へと向かった。

トンネルを移動している最中、3人はクランクに襲撃され窮地に陥ったが、その場に駆けつけたホルヘ(ジャンカルロ・エスポジート)とブレンダ(ローラ・サラザール)の助力で何とか乗り切ることができた。

その頃、WCKDの本部はミンホの血液から血清を作ることに成功していた。しかし、思うような治療効果は出なかった。

5人は最後の都市に辿り着いたが、町は防御壁に囲まれていて、容易に侵入できそうになかった。
壁の外では、フレア感染者たちが「俺たちを壁の中に入れろ」と抗議集会を開いていた。WCKDの部隊が群衆に向かって発砲したため、人々は散り散りになってしまった。

その騒ぎの中で、5人は覆面を付けた集団に身柄を拘束された。
その集団の中には死んだはずのギャリー(ウィル・ボールター))の姿があった。
彼は生き延びていたのである。

ギャリーは5人をローレンス(ウォルトン・ゴギンズ)に引き合わせた。
ローレンスはウィルス感染者で構成される反乱軍のリーダーであった。
ローレンスは5人に秘密の出入り口の存在を教えてくれた。

トーマス、ギャリー、ニュートの3人は都市の内部に潜入し、本部の偵察を行った。テレサ(カヤ・スコデラーリオ)の姿を見かけたギャリーは、トーマスに彼女に手助けを求めてはどうかと提案した。
交渉の結果、テレサは3人が本部に潜入するのに協力してくれることになった。テレサは3人に埋め込まれたマーカーを除去し、WCKDが3人を追跡できないようにしてくれた。

WCKDの本部に潜入した4人は2グループに分かれて行動することになった。反乱軍の人々のための血清を探すギャリー、ミンホを探すトーマス、ニュート、テレサの2グループに分かれた。その頃、ローレンス率いる反乱軍が都市の壁を破壊したために、ウィルス感染者が都市内に雪崩れ込んでいた。


2時間半にもなる長尺だが、気付けば「愁嘆場」や「思い入れ」が長いことだ。
主人公トーマスは、死んだニュートを抱いて泣き、自分を助けるためにヘリに手が届かず奈落に墜落したテレサを嘆き悲しむ。

おまけにワールドトレードセンター跡地に被害者の名を刻んだように石碑に死んだ友人たちに名を刻む。

「愁嘆場」は日本の母ものの特許だったのがドライでクールのトーマス達若者が執着しているので驚く。

アクション自体もWCKDの勝と思った瞬間に向こう側についたテレサなどの女性たちが裏切ってゴチャゴチャのアクションが続くが
一番すっきりして面白かったのは冒頭の仲間を拉致された列車をSUVのトーマスとニュートが列車に飛び乗り客車を切り離し敵から分捕ったヘリで客車1両を吊り上げ逃走するシーンだ。
僕らが期待する唯一のスリルに満ちたアクションだ。

監督は引き続いて3作ともウェス・ポール。このシリーズで32歳の若い監督デビューだったポールは大ヒットを収めこれからは引く手あまたの売れっ子監督になるだろう。
原作はデストピアの世界をYA小説で描くジェームス・ダッシュナー。

5年間、シリーズを支えてきたディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、トーマス・ブロディ=サングスター、キー・ホン・リーら若手俳優たちの次のステップが楽しみだ。

6月15日より全国公開される。

「リディバイダー」(Redivider)(オランダ・米映画):近未来の地球はエネルギーが枯渇している。もう一つの地球のコビー「エコ・ワールド」からエネルギーを送り危機を解決しようと大胆な計画を立てた

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スティブーン・スピルバーグが「宇宙戦争」のジャパンプレミア以来13年振りに来日し、「レディ・プレイヤー・1」の宣伝で各種のマスメデァに顔を出している。

近未来、2045年をオハイオ州コロンバスを舞台に、17歳の少年ウェイドとその仲間たちが巨大なVRワールド「オアシス」開発者の遺産争奪戦を描くこの作品にスピルバーグは勝負を賭けてる。

 スピルバーグの映画の原点、SFアクションと古い映画(シャイニングやゴジラ、バック・トゥ・ザ・フューチャーなど)へのオマージュをまじえホームグラウンドに戻った作品だけに力が入る。
いよいよ明日、4月20日より丸の内ピカデリー他で全国公開される。

スピルバーグはこれから彼のプロダクション。アンブリンを引き連れDCコミックと組むことになる。
最初の作品は「ブラック・ホーク」で第二次大戦中にナチと戦うヒーローを描く。
「レディ・プレイヤー・1」はけじめの映画なのだ。

今年に入ってアメリカでも「ジュラシック・パーク」や「ブラック・パンサー」そしてこの「レディ~」などはヒットしたが、裾野が狭く映画興行成績は昨年よりダウンしている。

 昨日発表された日本の邦洋12社の3月興収はは前年比94.4%と落ち込み207億円。
洋の東西を問わず映画興行はパットしないようだ。

さて今日紹介の作品。
近未来の地球はエネルギーが枯渇している。
もう一つの地球をコビーした「エコ・ワールド」からエネルギーを送り込むことで危機を解決しようとしていた。

 地球とエコ・ワールドを繋ぐ巨大タワーを経由してエネルギーは順調に供給されていた。
しかし何者かが襲撃してタワーは暴走し世界中で異常現象が次々と起こり始める。

 危機に瀕した地球を救うためオランダに本拠を置く新興電力会社「アルタプレックス社」にスカウトされた元空軍でNASA宇宙飛行士のウィル・ポーター(ダン・スティーブンス)。
破格の条件で「特殊任務」要員としてウィルはエコ・ワールドに送り込まれる。

エネルギーの収穫源となる「人工的に複製されたエコー・宇宙」に上司のアビゲール・フォス(ベレニス・マーロウ)と一緒に飛び、新造の発電施設に「箱(ボックス)」と呼ばれる「調整弁」を据え付けてくること。

ところが、実際に着いた世界で彼が見たのは、おびただしい数の殺害遺体が転がる「廃墟の街」だった。

コピーしたエコ・ワールドは地球を複製しただけに、地球と同様、いやそれ以上に人間も含め動植物は荒廃しており、ウィルの元部下だったマイケルも加わった反乱軍は近づく者は誰でも攻撃する。
機銃を備えた攻撃型ドローンやロケット砲での攻撃を受ける。

突飛もないアイディアは良しとしても、その描き方に問題がある。

視点が二つあるのだ。ウィルの主観と客観的な視点。大部分はウィルの主観だから手持ちカメラのように揺れて安定しない。
見ていて気持ちが悪くなる。

どこにカメラを付けているのか、足もととか膝など不要な物なども写し込む。
走って戦うのだが、カメラをぶら下げているので速足が精々だ。

奇を衒った手法を良しとするティム・スミット監督の気が知れない。

多くの映画でVFXを担当してきた英国の映像作家ティム・スミットが2009年に自主制作した短編映画「What’s in the Box?」をリブートしたスミットの長編映画監督デビュー作となる。

主演は「スポットライト」や「ザ・ゲスト」などの英国人俳優、ダン・スティーブンス。
ボスのアビゲールには「007スカイフォール」のボンドガール、フランス人女優のベレニス・マーロウ、
他にチャリティ・ウェイクフィール、ティゴ・ゲルナントが脇を固める。

6月9日より新宿シネマカリテ他で公開される。

「ラブドック」(Love x Doc)(日本映画):女性パティシエ・郷田飛鳥はひと回り年下の花田聖矢と脱サラした権田健一を部下に巣鴨刺抜き地蔵のケーキ店で奮闘するアラフォー女性。

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期待はしていなかったが予想以上に面白く大声で笑ってしまった。

巣鴨とげぬき地蔵路地でスイーツ店「Trad」を経営する女性パティシエ・郷田飛鳥(吉田洋)は、
年下のパティシエ・花田聖矢(野村周平)と脱サラしてパティシエを目指している権田健一(篠原篤)を部下に使い年寄相手にケーキ作りに励むアラフォー女性。

ある日、イケメンの聖矢から告白されたことで過去の忌まわしい結果に終わった恋愛を思い出す。
フラッシュバックで漫画的に振り返る画面がスピーディーで快適。

独立前に務めていた妻子ある店のオーナーでカリスマパティシエの淡井淳治(吉田鋼太郎)との不倫や、
大学時代の親友、千種(大久保佳代子)が思いを寄せるジムトレーナーの野村俊介(玉木)と、成り行きで寝てしまった後悔など、
35歳を過ぎてからロクなことが無い、惨めなロマンスばかりだった。

しかし12歳以上も年下のイケメン部下の花田聖矢から突然の告白を受け、困った飛鳥は、
遺伝子検査で恋にまつわることがすべてわかるという不思議な診療所「ラブドック」を訪れる。

現れた女医院長の冬木玲子(広末涼子)。
自分は実年齢65歳だが、遺伝子実験でこんな若さを保てる、との出鱈目にコロリ騙される。
冬木が処方したのは遺伝子から抽出したと言う特別な薬。
これを打てば危険な恋愛をストップできると注射代20万円を取られてしまう。

脚本家の巨匠が書いただけにセリフの一つ一つが立っていて笑える。
吉田羊のトボケて真面目くさった表情もオカシイ。

脇で色んなキャラを演じる43歳の吉田にとっては、ドラマ「HERO」でブレイクして、初の映画単独主演。

「ハンサム・スーツ」や「新宿スワン」などの人気放送作家・脚本家である鈴木おさむが、「ラブ×ドック」で長編劇場用監督デビュー。

他に野村周平、篠原篤、吉田鋼太郎、玉木宏が、鈴木おさむの「初陣」応援するために顔をそろえた。

何と言っても最高にジューシーなのは
聖矢の勧める黒糖と千種推奨のレモン味のビター・スィートのケーキ。
連日ソールドアウトの大盛況!

やはり冬木院長は35歳で遺伝子抽出の処方薬もインチキ。
詐欺で連行される広末はめげなくキュートだ。

5月11日よりTOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開される。

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」(日本映画):泥棒に結婚以来20年貯めたへそくりを盗られ、夫、幸之助に俺のカセギをピンハネした「へそくり」だと嫌味を言われた主婦、史枝は家を飛び出す。

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最近の流行と言うか痛快で面白いのは、池井戸潤の小説の主人公・半沢直樹ではないが、
さんざ苛められた被害者が突如反撃に出てリベンジの「倍返し」と言うパターン。

この映画の敵役は性差別で男性至上主義で、妻・史枝の人権や主婦業の重要さを認めない平田家当主・幸之助。

半沢パターンにのっとり反撃に転じた一家の家事を担う史枝。
一切を取り仕切っていた主婦がいなくなるととてつもない緊急事態が起こる。
掃除洗濯がこんなに大変だと悟る男性至上主義の平田家のドン周造と当主幸之助の大騒動。
シリーズ3本の中で一番面白く、哀しく、思わず涙が零れてしまった。

「男はつらいよ」から山田洋次20年ぶりのシリーズ化となり注目を集めた。
そんな期待と人気を受けて3世代で賑やかに暮らす平田家のドタバタ劇シリーズ。
その第3弾「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」。
妻の反乱で、あのドタバタ一家」に史上最大のピンチが訪れる。テーマは「主婦への讃歌」


前日譚は「東京家族」だったが、出演者はオリジナルからおなじみの「家族」を演じる橋爪功×吉行和子、西村まさ彦×夏川結衣、中嶋朋子×林家正蔵、妻夫木聡×蒼井優の豪華実力派俳優陣が4度目の結集となる。
登場人物をそのままに置かれた状況をリセットして神奈川県の二階建ての独立戸一軒家に三世代の住む平田家と言う設定シリーズ「家族はつらいよ」が始まる。

第1作は平田家のドン周造(橋爪功)が妻、富子(吉行和子)に誕生祝に欲しいものは「離婚届」と「熟年離婚」をテーマに13.8億円のヒットとなったが、
第2作では周造の運転の車が酒場のママを乗せて追突事故を起こしたり、友人の葬儀場でのドタバタの「無縁社会」をテーマにしたが、9.3億円と10億円リストに届かなかった

平田家は周造を始め長男、幸之助(西村まさ彦)も過去の因習を引きずる男性至上主義。
ある日、一家全員が会社、学校へそして遊びに出払い、二階の周造の部屋を掃除した後少しウトウトしていた
主婦・史枝(夏川結衣)は階下での音に気付き降りて行くと空き巣が牛乳をパックから直接飲んでいる。
階段の途中で腰を抜かした史枝を尻目に悠々と玄関から出て行く。

被害は小銭と古い腕時計。
他に妻・史枝が結婚以来20年も貯めていた「へそくり」40万円ほどが泥棒に盗まれたことから始まる。
泥棒は笹野高史だと観客は知っているのも愉快。

香港出張から帰国した夫・幸之助(西村まさ彦)は怒り狂う。
毎月足りないと増額をせがんでいた癖に「俺の稼いだ金でへそくりをしていたのか!」とか
「鍵もかけずに二階で昼寝などしているから泥棒に」入られるのだと
途切れることのないグダグダの嫌味の嵐を浴びせる。

それまで自分のやりたいこと(フラメンコなど)を抑えるなどたまっていた不満が爆発し、
我慢も限界に達し、史枝は家を飛び出してしまう。

さあ、一家の主婦が姿を消した平田家は大混乱。
腰痛で起き上がれない具合の悪い幸之助の母・富子に代わり幸之助の父・周造が掃除、洗濯、食事の準備。おまけに子どもたちのお弁当まで。

主婦がいなくなってしまった家族の暮らしは大混乱。親友の角田医師(小林捻侍)に手伝わせ居酒屋の女将(風吹ジュン)を家政婦に仕立てて慣れない家事に挑戦する。

しかし、それも続かず、消防車こそ来なかったがレンジの火を点けっぱなしでボヤを出すなど大騒動。
家族揃って史枝の存在のありがたみをつくづく実感するのだが、史枝が戻ってくる気配は一向にない。
妹の金井成子(中嶋朋子)泰蔵(林家正蔵)夫妻、弟の庄太(妻夫木聰)憲子(蒼井優)夫妻がいろいろとアドバイスをし、

史枝さんに謝って帰って来るように頭をさげろと幸之助に忠告する。
ウンザリした幸之助はしまいには「お前たち家族なんてうんざりだ!」と飛び出す始末。
雅彦からまさ彦に改名した西村は憎々し気に男性至上主義者の仇役を熱演する。

三世代でにぎやかに暮らす平田家を仕切る主婦史枝の反乱でドタバタ平田一家に史上最大のピンチが訪れる。

5月25日より丸の内ピカデリー他全国公開される

「犬ヶ島」(Isle of Dogs)(米独映画):ドッグ病が大流行し犬たちはゴミ処理場の「犬ヶ島」に送られ殺傷処分されることになる。12歳の少年アタリは愛犬スポッツを救出しようと一人犬ヶ島へ向かう

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 3DCGアニメ全盛の時代に2Dのストップ・アニメーションは動きがクラシカルな感じだが独特の魅力で惹きつけられる。
ましてや舞台は日本で主人公は12歳の少年、小林アタリ、善人も悪人も日本人たちが活躍する映画だ。

監督は「グランド・ブタペスト・ホテル」や「ファンタスティックMr. FOX」などで 知られるウェス・アンダーソン。
特に「ファンタスティック~」と同じ手法の手間時間のかかる「コマ撮り」のストップ・アニメーションで4年の歳月をかけて仕上げている。

「黒沢明を初めとする日本の巨匠たちから強いインスピレーションを受けて作った」と日本大好きなアンダーソン監督は語っている。ストーリーに「悪い奴ほど良く眠る」や「天国と地獄」などの影響が見られる。

アメリカでは3月23日より上映が始まったこのアニメは25館で公開され1.57Mを挙げたことが注目される。一館当たり今年最高額の58.1K(6246千円)。

4月13日の週でランク入りの7位。小屋の数が25館から165館、そして554から1939館と増やして5M。アメリカ国内累積は18.5M(20億円)でこの数字はまだまだ伸びる。
ロットン・トマトは91%のフレッシュネスで観客のウケも良い。

冒頭、怪しげな襖絵と剽軽な俳句でこの千年の日本の犬の歴史を見せる。
初めは野良犬の群れだったが徐々に人間に愛されるペットになって行く。

近未来(2038年)の日本。
ドッグ病(犬インフルエンザ)が大流行するメガ崎市では、人間への感染を恐れた小林市長(声:野村訓市)が、すべての犬をゴミ処理場の「犬ヶ島」に隔離し殺処分する。

小林市長は闇の勢力とも付き合いがある小林財閥の一族。
大の猫好きで犬は大嫌い。

新幹線事故(無事故を誇る新幹線なのにどうして?)で両親を亡くし、遠い親戚の市長に引き取られた12歳の少年、アタリ(ランキン・こうゆう)が幼い頃から守護犬としてアタリを警護してくれたスポッツ(リーヴ・シュレイヴァー)を助けようとたった一人で小型飛行機に乗り込み、犬ヶ島に降り立つ。

愛犬で親友のスポッツを救うために命がけの冒険だ。

島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たち、誇り高いチーフ(ブライアン・クランストン)、明るいレックス(エドワード・ノートン)、ドッグフードCMで有名なキング(ボブ・ハラハン)、高校野球のマスコット犬だったボス(ビル・マーレイ)、噂大好きなデューク(ジェフ・ゴールドプラム)などを新たな仲間・相棒とし、スポッツの探索を始める。

そんな中でチーフが一目惚れしたナツメグ(スカーレット・ヨハンソン)のロマンスが色を添える。

アタリは日本語しか喋らないが、犬たちの吠え声は英語の字幕で表記され、コミュニケションは出来ないが意思はしっかり伝わる。この遣り取りは笑える。

小林市長も日本語だけ。
通訳ネルソン(フランシス・マクドーマンド=今年のアカデミー主演女優賞)が同時通訳を務めるが思わぬ結末に通訳を忘れる程興奮するのが笑える。

小林市長は上空にドローンを飛ばし、捕獲隊の「市庁タスクフォース」とロボット犬がアタリと犬たちに襲い掛かる。しかし激戦の末、撃退する。

小林政権を批判しドッグ病の治療薬を研究している渡辺教授(伊藤晃)は再選を狙う市長たちに囚われ軟禁される。

市長一派の不穏な動きに気づいたメガ崎高校新聞編集委員のヒロシ(村上虹郎)とアメリカからの交換留学生トレーシー(グレタ・ガーウィック)は背後にある凶悪な陰謀を嗅ぎ付け調査を始める。

アタリも日本の未来を左右する大人たちの陰謀へと近づいていく。

声の出演は豪華なスターたちだ。
ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、グレタ・ガーウィグ、スカーレット・ヨハンソンなどウェス・アンダーソン監督を慕う役者たちだ。
日本からは他にオノ・ヨーコや渡辺謙、夏木マリ、「RADWIMPS」の野田洋次郎はニュースキャスター役で進行も務め日本語を喋りまくる。

主人公、12歳の少年・アタリの声を演じるのは、ランキンこうゆう。 2007年にカナダのバンクーバーで生まれたランキンは、スコットランド系カナダ人の父と日本人翻訳家の母を持つバイリンガル。長編映画への出演は初めて。

アタリの愛犬で、親友のスポッツの声は、リーヴ・シュレイバー。「スクリーム」シリーズや「オーメン」、「スポットライト 世紀のスクープ」などでお馴染みの男優でナオミ・ワッツのパートナー。

第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞して花を添えている。

太鼓やパーカッションのリズム楽器中心の日本的音楽は画面背後に通奏。

日本人としては5月に封切られるや劇場に駆けつけるべき必見の映画。

5月25日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される。

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(The Florida Project)(米映画):ディズニー・ワールドの繁栄の影でその日暮らしの母娘。自由奔放な生活も官憲の手で娘は保護収容されようとしている

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3人の幼い子供たちはモーテル2階の通路から下に向かってツバの飛ばしっこをしている。
何に向けて飛ばしているかと思ったら、下から怒鳴り声が聞こえる。
「あたしの車、ツバだらけよ!親は何処にいるの?」
逃げる子供たち、追う小太りの若い女性。

映画の冒頭から真夏の暑い陽射しが追いかけっこを焼き尽くす。

6歳のムーニ-(ブルックリン・プリンス)はいつも悪戯をして飛び回るおませな女の子。
ママのヘイリー(ブルックリン・プリンス)とフロリダのディズニー・ワールドの外側にある紫の壁の1泊36ドルの安モーテル「マジック・キャッスル」で暮らしている。

ブラジルからの観光客の女性は男に騙されディズニーの「マジック・キャッスル」へ連れて来られ怒り狂うシーンには笑える。

ある日隣のモーテルに同い年位の女の子、ジンジャー(ヴァレリア・コット)が越して来ると聞き仲良しの男の子、スクーティ(クリストファー・リヴェラ)と一緒に部屋を訪ねる。

3人は忽ち仲良しになりいつも一緒に遊ぶ。
しかし「ビッチ」だとか「カント」や「ファックオフ」など大人だって使わない汚い言葉で注意する大人を罵倒する。

ムーニーの「しつけ」などは念頭にない無一文のママ、ヘイリーは全身タトゥーを彫り、部屋に男を部屋に呼び込み売春をして部屋代を払い暮らしている。

これが生活保護局の知る所となりムーニーは児童保護施設に収容されようとしている。

モーテルの管理人、ボビー(ウィレム・デフォー)は宿泊者から罵られたり苦情を受けたりいつも苦労の種は尽きない。特に問題ばかり起こすヘイリーとムーニー母娘には悩まされているが、心は優しく貧乏人には同情する。
生活保護局や連行しようとする保安官との間に入ってムーニーに気配りをする演技は今年のアカデミー助演男優賞にノミネートされるほどの好演だ。

全編iPhoneで撮影した「タンジェリン」(15)で社会の下層に蠢く男娼を世界中を驚愕させたショーン・ベイカーが、今度は35mmで撮影。

ディズニー・ワールドの影に建つ安モーテル。
鮮やかなブルーの空の下、モーテルの壁のピンクやパープル−の色合いは、撮影監督、アレクシス・サベの安定しない手持ちカメラで写し出される。
環境から乖離し現実離れしたパステルカラーに彩られたディズニーの世界で、富裕層が遊び回る社会の片隅で教会のフードサービスで生きる人々。

マネジャーのボビーに代表されるように下層で蠢く人々に関心を寄せ同情し優しく寄り添いながら、フロリダび眩い太陽の下でソーシアルリアリズムを浮き彫りにする。

キュートで気ままなムーニーを演じるブルックリン・プリンスは2010年生まれの7歳。ママのヘイリー役には監督がインスタグラムで発掘した素人のリトアニア出身のブリア・ヴィネイト。
この二人のダイナマイト級の熱演でこの映画は持っている。

全編iPhoneで撮影した「タンジェリン」で注目されたショーン・ベイカーが監督・脚本を務めたソーシアルリアリズム。

フロリダで貧しい生活をしている母娘と二人を取り巻く人々の日常を、6歳の少女の視点から描く社会ドラマ。

5月12日より新宿バルト9他全国公開される

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(Battle of the Sexes)(米映画):女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと元男子チャンピオン、ボビー・リッグスッの世紀の一戦

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日本でも話題になりリアルタイムで興味を抱いたことを思い出す。45年前の世界の耳目を集めた男女間の世紀のテニスマッチ。

ビリー・ジーン・キングはマイノリティを一身に集めて具現化したような女性だ。
先ずユダヤ人、これは姓、キングで分かる。キリスト教社会では爪はじきの異教徒。
それにレズピアン、カミングアウトして世間の知る所となる。
この時代にLGBT権を主張する。
そして何よりも大切なのは男性至上主義の世界で女性の基本的な人権を要求し守るフェミニストだということ。
少なくとも男女は同権で平等であるべきだと。

トーナメントでの観客動員数は遥に女性の試合の方が多い。にも拘らず優勝賞金は男子の1/8と言うののはオカシイ。
男女平等を求めた女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は仲間と共にテニス協会を脱退し、
「女子テニス協会」 を立ち上げた。
資金難の協会にスポンサーの支援が付いた。

フィリップ・モリス社の女性向けの細身の紙巻煙草「ヴァージニア・スリム」(現ヴァージニア・エス)だ。
余談だが69年に研修生としてアメリカで学んでいた僕はシカゴの代理店レオ・バーネット社を訪ねCDに
「ヴァージニア・スリム」のクリエイティブコンセプトを聞いている。

一世を風靡したCMソング「You've Come A Long Way, Baby」
女性が堂々と煙草が吸えるようになった道のりは長かった、のテーマは
まさにフェミニズムを主張する「女子テニス協会」の設立理念に合致するものだった。

大変なのは選手たち、煙草を吸ったことが無い女性でもマスメディアのカメラ前やインタビュ-時には
これ見よがしにパッケージを持ち灯をつけなければいけない。
ゴホン、ゴホンとむせる選手の醜態はユーモラスだ、。

そしてクライマックスは女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと、
年間グランドスラムを達成したことがある元男子チャンピオンでシニアトーナメントで常勝のボビー・リッグス(スティーブ・カレル)の戦いだ。
全米選手権でキングを破ったマーガレット・コー(ジェシカ・マクナミー)にストレート勝ちしたボビーは賞金を10万ドルに吊り上げ女性蔑視の発言を
繰り返しキングを挑発する。

数々の試練に立ち向かっていたビリー・ジーンに、「男性優位主義の代表」として挑戦状を叩きつけたのが、ボビーだ。

ボビー・リッグスはキングの対極にいる傲慢な白人。
ユダヤ人を忌み嫌うキリスト教徒で「女はテニスコートに必要だ。何しろ球拾いが居なくなるから」と嘯く様は女性蔑視の端的な発言だ。

映画の中でも単に女性対男性のテニスマッチだけでなく、テーマとして基底にあるのだが、字幕でも曖昧で日本人には感覚的について行けない部分だ。

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」=「性別間の戦い」と呼ばれて人々に衝撃を与え、試合会場はもちろん、テレビ中継でも前代未聞の視聴率を記録し、全世界9000萬人もの人々が見間守った。
ハイライトの試合はゲーム毎に細かくCGを用いて再現するので迫力があり、結果はなんとキングがストレート勝ちし、女性の力を証明する。
それだけにマッチゲームを勝ち取った瞬間は大カタルシスを味わい涙が零れる。

「リトル・ミス・サンシャイン」でブレイクしたジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスの夫婦共同監督、サイモン・ボーファイ脚本によるスポーツ・コメディ映画。
北米ではフォックス・サーチライト・ピクチャーズ配給で2017年9月22日に封切られ、6位にランクインしたフォックス・サーチライト配給で賞狙いと目された。
3週目は1822館に拡大して2.4M。
しかし5週目の週末は1394館で1.4M チャート外に転落。
24日間の累積は10.4M。

制作費は25M(27億円).
最終的に興行成績は15.7M(17億円)で赤字となっている。
やはりこの手のジャンル映画は儲からないものなのだ。

主役のビリー・ジーン役を2016の 「ラ・ラ・ランド」でゴールデングローブ賞、アカデミー賞をはじめ数々の主演女優賞を総なめにしたエマ・ストーン、

相手のボビー・リッグス役を「フォックスキャッチャー」のコメディアン、スティーブ・カレルがユーモラスに演じている。

テニス協会会長で矢張り男性至上主義者、ジャック・クレイマーを「インディペンデンス・デイ」のビル・プルマン、
他に「チョコレートドーナツ」のアラン・カミングらが共演。

今から45年前のこのアンシャンレジーム時にLGBTや人種などマイノリティ要素総てをさらけ出し、女性蔑視のブタ野郎たちに一泡吹かせる痛快な作品だ。

7月6日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される。

「30年後の同窓会」(Last Flag Flying)(米映画):家族の不幸に力を貸してとベトナム戦争の戦友2人の助けを受けてバグダッドで戦死した息子の遺体をDCから故郷の妻の隣りに埋葬するドク。

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こういうジャンル映画は興行成績を第一に考えるメジャースタジオは制作費を渋る。
だからウディ・アレンの監督の作品にしてもこのリチャード・リンクレイ監督の映画にしてもAmazon Studioが制作費を出し、当然のように紋章が表紙を飾り映画は始まる。

原作者のダリル・ポニックサンでハル・アシュビー監督「さらば冬のかもめ」(73)の流れでとらえると面白い。
募金箱から僅か40ドルを盗んだ水兵を営倉へ護送するJ・ニコルソンなどの下士官2人のロードムービー。
3人は意気投合しバディになって行く。

その伝を時代と状況を変えたのがベトナム戦争に従軍し、痛みを分かち合った気の置けない仲間たちがリユニオンして運ぶものは遺体と変わるが東海岸ヴァージニア州ニューワークからニューハンプシャー州ポーツマスまでの
アムトラック(列車)でのロードムービーだ。

2003年12月ヴァージニアージニア州ノーフォーク郊外の裏さびれたバー「サルズ・バー&グリル」にふらりと現れた初老の男。店主サルことサルバトーレ(ブライアン・クランストン)は怪訝な顔をするご
「俺だよ、ドクだよ」で大感激で抱きつく。

ラリー・シェパードは愛国心が強く16歳の時18歳で年齢を偽り、ばれたが衛生兵として招集された。だからドクターの略の「ドク」。
もう一人の親友は今や神父となっているミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)。

だが30年前に起きた不祥事(これが具体的に何であるか不明)でドクは3年間、営倉に強制収容されその後不名誉除隊、ドクの人生が大きく変わった。

しかし苦しい戦いを強いられていたベトナム戦争で3人は海兵隊員として,戦友として固い友情お結んでいた。

30年後突如現れたドクを囲んですっかり酸いも甘いも噛み分けた大人となり、それぞれの道を歩む旧友にして悪友の三人組は、ドクに起きた悲劇をきっかけにリユニオンに興奮し心からの支援を申し出る。

不名誉除隊後ポーツマスの田舎でひっそりと余生を送っていたドクは妻を不治の病で亡くし、一人息子のラリーJrをイラクで戦死させてしまった。

名誉の戦死と海軍はアーリントン墓地に埋葬しようとするが、ラリーは断固として拒否、軍が自分の生き甲斐を奪ったばかりか21歳の愛息Jrの命を奪ったのだと怒り心頭に発する。

遺体を盗み出してまでも故郷ポーツマスにある妻の墓の隣に、卒業式のスーツを着せて埋葬したい。
他に誰にも頼めるものじゃない、だからサルもミューラーも手伝って欲しいと。

海の向こうでイラク戦争が行われている時代に互いに全く音信が無くいきなり30年ぶりの再会を果たし、バーも教会も投げうって(かつての)親友の息子の遺体を連れ帰る旅に出る。
いかにも作り物でご都合主義のストーリー展開だ。
ヴェトナム戦争と911以降のイラク戦争、アメリカにとっても世界的にも意義や位置づけが全く異なる両極端だが、映画はそのことを敢えて触れない。

ラリーJrの親友のワシントン曹長(J・クィントン)はJrがバグダッドの子どもたちに学用品を配っても帰途自爆テロで亡くなったと。
戦死(DIA)では無いと証言しラリーたちは軍の欺瞞に怒り狂う。

ワシントンと埋葬の命をうけた海兵隊葬儀兵一行がポーツマスへ同行することで遺体搬送の許可が下りる。

東海岸をノーフォークから出発しミューラーの教会のあるリッチモンドで3人は再会し,埋葬予定地DCアーリントン墓地を横目で見ながらデラウェア州のドーバー空軍基地で遺体を
収容しワシントン曹長一行の葬儀隊を引き連れ一路ポーツマスへとアムトラックの旅。
NYで途中下車し慣れない携帯でてこずり乗り遅れた3人はペンステーションのベンチで目を覚まし、朝いちばんのボストン行き列車に乗り込む。

生と死、戦争と平和、軍人と市民、ベテランと現役、悲劇と喜劇、茶番と真摯なドラマ。
いろんな要素をてんこ盛りにしてJRの埋葬シーンに繋がる。
サルとミューラーは海兵曹長のユニフォームで埋葬に立ち会う。

墓地へ行く勇気が無いドクにワシントンはJrの遺書を手渡す。
「お父さん、この手紙を読む時には僕はこの世にいません。しかし僕は愛する者を守るため積極的にイラン戦争に参加したのです。だから埋葬する時は軍服でママの隣に眠ります」と。

ドクの悩みは晴れるが、結局はこの映画は愛国映画と言うことか。とっ散らかりバタバタした割には結論はシンプル。
ただ30年振りリユニオンの友情だけが印象づけられる。

キャストには主人公の三人組は何れもアカデミー賞にノミネートされた実力俳優たちだ。

海軍を除隊後、穏やかな家庭人として成熟しながらも、妻と息子、大切な家族を相次いで失ったドク役に、「フォックスキャッチャー」(14)で第87回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたスティーヴ・カレル。
ワイルドで冗談好きの明るいバー経営者ながら、一方で荒んだ酒びたりの日々を送るサル役に、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(15)で第88回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたブライアン・クランストン。
実質的な主役はクランストンだろう。キャスト配列も真っ先に出る。
敬虔な神父として聖職者の任を務めつつ、実は荒くれで向こう見ずだった青春時代の過去を持つミューラー役に、「TINA ティナ」(93)で第66回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたローレンス・フィッシュバーン。

喜劇でも人間ドラマでも10数年に亘る大河ドラマで何でもこなすオスカー監督のリチャード・リンクレイと言えども、ハル・アシュビーを超えられなかったようだ。

6月8日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される

「恋は雨上がりのように」(日本映画):17歳の高校2年生、橘あきらはバツイチ子持ちでずっと年上の加齢臭プンプンの近藤正巳に密かだが激しい恋心を抱く。

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おいおい、またJKものかよ、と半分諦めて見始めたら、これが面白い。
17歳の高校2年生、橘あきら(小松菜奈)が冴えないファミレスの店長、近藤正己(大泉洋)に一目惚れで夢中になってしまい猪突猛進。

それも倍以上、親子ほど年が離れた45歳、しかもバツイチと言うから本人以上にまわりは「まさか!」のムード。
大泉も札幌のBARばかりじゃない、横浜桜木町でも勢力を伸ばしているのだ。


陸上競技部のホープで100Mを11.44秒の記録を誇る高校2年生の橘あきら(17)は、アキレス腱を切って手術を受け陸上の夢を絶たれてしまう。

後で分かるのだが自転車に乗った客に追いついて忘れ物を渡すシーンがあるが、健脚は衰えておらずリハビリで一線の現役に戻れることを暗示している。

しかし連日、猛烈なトレーニングに励んだ陸上からは離れなくてはならない。
偶然入ったファミレスで放心しているところに、優しく声をかけてくれたのは店長の近藤正己(45)だった。

「刷り込み」とか「インプリンティング」と言うが、孵化の後、鳥の雛は最初に目に入ったものを「親」と錯覚し認識するが、まさしく、あきらに近藤は「恋人」と刷り込まれてしまったとしか思えない。

それをきっかけにあきらは、近藤が店長のファミレス「ガーデン」でのバイトを始める。
そしてバツイチ子持ちでずっと年上の店長、加齢臭プンプンの近藤に密かだが激しい恋心を抱く。

あきらはズバズバものを言い社交性に欠けるクールな佇まいの17歳のJKに、好意をもたれているとは思いもしない店長、近藤。客のクレームも頭の下げどうしでカッコ悪い。
しかし刷り込まれた近藤への想いを抑えきれなくなったあきらはついに近藤に告白する。
必死のあきらと戸惑う近藤の、この落差のあるシーンはハイライトだが「友達でいよう」と逃げる大泉の店長も上手い。

映画の中程で長髪に眼鏡姿の九条ちひろ(戸次重幸)と言う作家が出てきて、さえない近藤は大学生の頃から九条と筆を争っていたことが分かる。九条に白紙の原稿用紙を見つけられ「作家への執念」は燃え続けていることを指摘される。

一方あきらの方も京都から1年生の倉田みずき(山本舞香)が転校してきて陸上部に加わり、あきらに向かって「貴女の記録を破って見せます」と宣言する。
闘争心に火をつけられたあきらは「友達宣言」をしてファミレスを辞める。店長も必死に原稿に万年筆を走らせる(PCでは無い)

一時は二人で籠った部屋が停電で真っ暗になりキスなんか始まりドーナル、やっちゃうのか?と思わせたが、電気がつくと素早く離れ、そして夫々の目標と夢が定まり、これでハッピーエンドと、爽やかで楽しいコメディは幕を閉じる。

原作は2014年に連載を開始するやたちまち話題となった眉月じゅんのコミック「恋は雨上がりのよう に」。

主人公の橘あきらを演じるのは「ヒーローマニア」や「坂道のアポロン」などの22歳、小松菜奈。笑顔がとても可愛い。
あきらに片想いされるさえないファミレス店長、近藤は「探偵はBARに入る」シリーズや「焼肉ドラゴン」など大泉洋。実年齢も今年の4月で45歳。

その他清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、戸次重幸、吉田羊ら若手からベテランまで豪華キャストが脇を固める。

監督は「世界から猫が消えたなら」、「帝一の國」などの永井が、確かな演出で軽いコメディに仕上げて観客を堪能させている。

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