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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜」(The Zookeeper’s Wife)(米映画): ワルシャワ動物園経営の夫婦のユダヤ人救出物語

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原作は、ユダヤ系米人作家ダイアン・アッカーマンによる2007年のノンフィクション「ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語」(亜紀書房刊)。

第二次世界大戦中のポーランド・ワルシャワで、動物園の園長夫妻ヤンとアントニーナがユダヤ人を動物園の地下の動物用檻に匿い、300名もの命を救った感動の実話だ。

1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤン・ザビンスカ(ヨハン・ヘルデンベルグ)とアントニーナ(ジェシカ・チャステイン)夫妻はヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいて市民の憩いの場となっていた。

冒頭のシーンが可愛い。餌をやるために園内を走り回るアントニーナ。彼女を追いかけるラクダの子。ぴったりと伴走するキュートさでアントニーナの動物への愛情の深さが分かる。動物たちを母性で包み込むアントニーナ。彼女は言う「動物は信用できるが、人間は信用しない」と。

1939年9月1日にドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。ナチの絨毯爆撃で動物園も被弾し炎上、動物たちが逃げ出し、街頭でポーランド警察に2頭の象が射殺される。

そしてナチの軍隊がワルシャワを占領して動物園の存続も危うくなる中、ヒトラー直属の動物学者で親衛隊将校のルッツ・ヘック(ダニエル・ブリュール)が親切ごかしに言う。
「あなたの動物たちを力を合わせて一緒に救おう」と言う暖かい言葉と「絶滅種の動物を預かり安全なベルリンへ移送しよう」との申し出に不審の念を抱く。果たして後になって分かるがアントニオーニに下心を抱いていた。

動物園を存続させるために夫婦は知恵をしぼり、軍隊に豚肉を供給する「養豚場」を作る。これならナチの許可が降りる。

夫のヤンから「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をしてくる。ヤンがユダヤ人強制居住区・ゲットーから買い入れた干し草を運ぶ時にユダヤ人たちをトッラックに次々と忍び込ませて、動物園の檻に運び込もうと言うのだ。

だが映画ではホロコーストとか占領軍のナチの圧制とか逃亡するユダヤ人の危機と言う恐怖シーンは全く描かれていない。 

一番感動するのは戦争やナチとは関係ない、象の赤ちゃんが難産で心肺停止状態の中、アントニーナがいきり立った母象に踏み殺される危険を冒して赤ん坊を心肺停止から蘇生させるシーンだ。

ユダヤ人たちも無名の集団で誰ひとり個性的に描かれている人は居ない。
アントニーナは得意のピアノや温かい食事で、彼らの傷ついた心を癒していく。
時にそのピアノは曲によって「安全よ、出て来ても良い」とか「隠れて」「逃げて」などの暗号になった。

ヤンがゲリラに加わり街頭戦で首を討たれて重傷を負う。ドイツ軍に捕らえられたことは事実で、夫の行方を探るためにヘッツのアパートへ押しかける。情報を教える代わりに交換のものをとアントニーナはベッドに押し倒される。

映画はセックスがあったかどうか顛末を伝えず、次のシーンに移動するが、おそらく身体を許したに違いないと僕は疑う。

ナチの恐怖やユダヤ人の悲劇、アントニーナの貞操モラルなどを飛ばして動物園を描くので、気が付くと戦争は終わって1945年の秋になっている。ドイツ敗戦から5カ月が経っているのだ。

そんなことで、この「救出活動」がドイツ兵に見つかったら自分たちだけでなく息子、リスザルド(ヴァル・マロク)の命すら狙われてしまう。危険を冒しながら、アントニーナはいかにして300人のユダヤ人の命を救ったのか?と言う肝心な描写は曖昧のままだ。

映画のテーマとして曖昧に描かれているのは、自らの命の危険を冒してでも、ナチス・ドイツに対して勇敢に立ち向かった夫婦の強い信念なのだがポイントを外れた描写ばかり。
終戦の平和になった動物園の事務所の柱に「ダビデの星」を描くアントニーナとトムの姿はテーマを強調するための「蛇足」の感がある。

主人公・アントニーナを演じるのは、シールズのウサマ・ビン・ラディン暗殺を描く「ゼロ・ダーク・サーティ」に主演してアカデミー賞他多くの賞レースにノミネートされたジェシカ・チャステイン。強さと優しさを兼ね備えた美しい女性を熱演している。

監督はニュージーランド出身の41歳、ニキ・カーロ。長編2作目の「クジラ島の少女」(03)は世界の注目を集め数々の賞を授与されている。ハリウッドに招かれた女流監督は戸惑いながら演出をしている。

12月15日よりTOHOシネマズみゆき座他で全国公開される

「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」(日本映画):最強にキュートで超セクシー、出会う男すべてを狂わせる天海あかりに出会ったことで編集者コーロキの人生が狂い始める

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外国特派員協会(FCCJ)が家主のM地所から来年(2018年9月)に立ち退きを求められているが、そこには種々雑多の難問が山積している。

FCCJ在籍46年の僕の親友橋淳一氏がUrgent!として下記の情報を寄せられている。
それによると、凡そ3年間に旦りM地所のプロに対し協会側はコンサル抜きのど素人発注者(HP)委員会として折衝を続けて、何も知らない歴代のFCCJ会長たちをミスリードしてきた。

そのHP委員会に、アズハリ新会長が自ら委員長として就任した。

会長は直ぐさま先月(17年8月)から原田敬美一級建築士をFCCJコンサルとして契約した。
原田氏は「建築家区長」として港区長時代に「積算制度」を導入し港区の累積赤字を任期4年で一掃して経営者としても名を馳せた。
因みに原田氏は前述橋氏の早大とフルブライト同窓会の後輩の友人関係。

68歳のベテラン建築エキスパートの原田顧問は今年8月半ば迄に3回に旦りM地所とFCCJの会談に臨席し意見を述べたが、以下はM地所との質疑応答の報告だ。

1)皇居と丸の内三菱村を見渡し、銀座をも一望する有楽町電気ビル北館20階(最上階)に位置し、1976年の同ビル竣工以来の看板テナントとして入居して以来今日まで43年。
その間、皇太子殿下ご夫妻(現天皇/皇后)を始め、内外の王侯貴族、政官財界要人、学芸、スポーツ、エンタメその他あらゆる階層のニュースメーカーを招致して、外国記者/特派員は本国より日本のマスコミにも門戸を開いて記者会見や発表イベントを行ってきた由緒ある、そして日本唯一の世界のマスコミへの窓だ。
この「外国人記者クラブ」は通称FCCJ,正確には「公益法人日本外国特派員協会」なのだ。
2)FCCJは年間150回前後の記者会見を主催し、ジャーナリスト志望学生の奨学金制度を設け援助している。
3)しかし、クラブの運営は1700名に及ぶ賛助会員の会費と年間200回を超える各種イベント、パーティ等による飲食関係の売り上げにより支えられている。
4)ところがM地所はFCCJの引っ越し先として旧東京会館跡に建設中の36階建ての新富士ビルの6階の、何の眺望もないオフィスフロアーを提供。
しかもリース契約調印後に新富士ビルのメインエレベーターは午後9時以降作動を停止する、と通知してきた。
イベントと食事売上で運営している記者クラブにとって9時閉店とは致命的な大事件である。
5)加うるに原田コンサルが下記に指摘するM地所デザインの諸問題を考慮に入れると、
我々の選択は現在の「有楽町電気ビル」にとどまるしかないと思われる。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
会議の席上、設計家/建築家としても大先輩にあたり、長年の顧客である/FCCJ顧問の原田氏がM地所設計の問題箇所を指摘した際、M地所のFCCJ担当の若輩者鬼沢氏(M地所設計)が取った対応と言動は不遜であり不届き至極だったと言う。
1)宴会場としてのサービス動線と顧客導線の「交錯」はサービス機能を劣化させるもので、建築計画としては基本的なミスであり大失敗だ。
2)200人の宴会場に対応不可能の狭い受付空間。ウェイティングルームはこのままでは客が溢れる。
宴会場のテーブル配置の図面.客待ち状態図面すら原田コンサルの指摘まで用意されておらず、素人集団だったFCCJのHP委員達は重大な欠陥を見過していた。
3)VIP用セキュリティ設備の欠如の指摘に対し、鬼沢氏は不貞腐れて「防弾ガラスが欲しいならFCCJが3000万円出せば付けてやる」と捨て台詞。
4)VIP顧客の多い宴会場そばのトイレが男女共用としているが、
女性専用があるのは常識と提案したのに対し
鬼沢担当は「工事図面は監督官庁の承認済み故、このまま完成後取り壊してFCCJ持ちで400万円でリフォームする」と回答。
都庁の監督官の回答は「全く問題ない」と。
ティナント顧客の顧問に対する鬼沢氏の敵対的態度は通常、即時契約破棄の理由になる。
5)発注仕様書の不存在の問題。
鬼沢担当は「現在のFCCJの現状が発注仕様書です」と回答。
通常は基本設計3案、打ち合わせ用模型とインテリア模型5個、パース立体図を5枚作成するのが常識。

40年以上昔に出来たFCCJの現状が発注仕様書とは詐欺まがいの言い逃れだ。
6)8月末の会議でM地所から工事費と設計料の資料が提示された。7億6000万円の想定工事費に対し7000万円の設計料が込まれている。
仕様書不存在では設計料の査定は出来ないが 常識的には設計料はこの半値位が妥当。
工事費の査定次第ではこれ以下にもなる。
これがM地所ともあろう一流会社の作法とは信じられない。
7)入居予定の6階から3名の工事関係者の墜落死(8月12日)と言う重大事故に関しM地所からは何の報告も謝罪もない。これも業界の常識では考えられない 不作法だ。こんな縁起の悪い所へ皇室や内外のVIPをお迎えすることは到底出来ない。
8)M地所設計の設計力の欠如、マナーや業界常識の欠如には唖然とする。
設計ミスの指摘への非常識/無礼な対応(設計変更は今なら間に合うのに、竣工後に発注者FCCJの費用でリフォームさせる等は自らの設計ミス責任を発注者に転嫁するもの。
私が現在も続けている多くの自治体での建築関係職員の技術研修で「やってはいけない建築デザイン見本ケース」として採用してゆく所存です。


前置きが長くなったが今日の映画を紹介する。

ぼくは安藤サクラも顔をだしているので奥田と聞いて奥田暎二のことだと信じ切っていた。
だがどうも話が食い違う、そこで調べたら奥田暎二と15歳も年下の52歳の 奥田民生のことで、シンガーソングライター、ギタリスト、音楽プロデューサーでロックバンド・UNICORNのメンバーではないか。
身長171cmと背は余り高くない。広島県広島市東区尾長出身。

1987年、ロックバンド「ユニコーン」のボーカリストとしてデビュー。「大迷惑」「働く男」「すばらしい日々」など、数々のヒット曲を世に送り出し、バンドブームの寵児ともいわれた。バンドは1993年に解散。その後、約1年間の充電期間を経て、1994年からソロ活動を開始。

奥田民生の大ファンの漫画家、渋谷直角は2015年に奥田に憧れる男性を描いた漫画「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」を発表。これが原作の映画化。
奥田民生を崇拝する35歳、コーロキ・ユウジ(妻夫木聡)。おしゃれライフスタイル雑誌「マレ」編集部に異動となったコーロキは、慣れない高度なファッション会話に四苦八苦しながらも、次第におしゃれピープルに馴染み、奥田民生のようなクールな編集者になって行くだろうとの予感がする。

そんな時、仕事で出会ったファッションPR「Goffin & King」の美女、天海あかり(水原希子)に一目で恋におちてしまう。
が、その一目惚れがコーロキにとって塗炭の苦しみとなるのだった。
あかりと寝るのは簡単だった。演じる水原希子は惜しげもなく裸身を見せびらかす。

ところがあかりは最強にキュートな上に超セクシーで、出会う男すべてを狂わせていることが分かる。つまりヤリマンで誰とでもセックスするから焼き餅を焼くと仕事が手につかない。
ざっと見渡しても編集部先輩の西住(新井浩文)ばかりか何と編集長の木下(松尾スズキ)まで垂らし込んでいる。

西住はコーロキにあかりを盗られたと会社へは不登校。木下はあかりの言うなりに特集をころころ変える。

あかりの唯一の恋人になろう、釣り合う男になろうと仕事に力を入れ、嫌われないようにデートにも必死になるが常に空回り。
あかりの自由奔放な言動にいつも振り回され、いつしか身も心もズタボロになって行く。

最高に笑えるのはあかりを挟んで3人のライバルの殺気を孕んだ対決。
あかりがこう約束したとか、愛しているのは貴方だけとか、いい年をした木下は「結婚したい」と言われたから離婚して来た!と叫ぶ。

ファムファタール・あかりはさっさと3人を捨ててパーティ会場へ行ってしまう。
残された男達の醜い争い。
抱腹絶倒のシーンはこのところ久しぶりに味わう。

監督は「モテキ」「バクマン。」の50歳を迎えた大根仁監督。コメディタッチのロマンスは流石に上手い。

主人公の奥田民生を崇拝する35歳の雑誌編集者コーロキに妻夫木聡。妻夫木はどんなキャラクターでもこなせるようになった。

芸歴は浅いが、男を狂わせガールのあかり役を演じる水原希子が素晴らしい。出演場面の半分はベッドの上か裸で歩き回っている。男は狂うわね。

他に松尾スズキ、新井浩文、安藤サクラ、リリー・フランキーらが脇を固める。

9月16日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ 他全国で公開中

「バリー・シール アメリカをはめた男」(American Made)(米映画):天才パイロット、バリ-・シールはCIAに徴用され麻薬組織に潜り込み、運び屋となり、自分自身も大富豪となる

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アメリカでは来週末の9月29日から上映が始まるが、東宝東和は昨夜(21日)TOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン2で試写をしてくれた。

 大スター、トム・クルーズも老けたなあ、と思いつつ、こんな年(55歳)まで若い頃そのままにアクション満開で暴れ回る姿を見ると元気が出る。

 1970年代後半、バリー・シール(トム・クルーズ)は天才的な操縦技術を誇り、民間航空会社TWAのパイロットとして安定した高給を取り、ルイジアナ州バトン・ルージュの自宅に帰れば美しい妻ルーシー(サラ・ライト・オルセン)と幼い娘の3人家族で何不自由ない暮しを送っていた。(バトン・ルージュと言えば留学生の服部君がハロウィーンの日に射殺された街だ)

 バリーのもとに、ある日CIAのエージェントがスカウトに現れる。
モンティ・シェイファー(ドーナル・グリーソン)と名乗る男に説得され、CIAの極秘作戦に偵察機のパイロットとして加わる。
 
時速500キロで飛べる双発の小型プロペラ機をあてがわれ、TWAを退職したバリーは、中南米の偵察飛行の写真撮影をおこなっていた。

80年代に入ると伝説的なコロンビア最大の麻薬密売組織「メデジン・カルテル」の麻薬王パブロ・エスコバル(モウリヒア・メヒア)らと接触し、コカインをアメリカへ直接空輸する運び屋の仕事を依頼される。

「産地直送」でコーク1キロの運賃2000ドルだ。
笑えるのは世界中どこでもメートルやキロが度量単位なのに1キロがどれ位かアメリカ人、バリーには分からない。

1キロはたった「2.2ポンド」に過ぎないと知ってバリーは大喜び。
1回飛べば500キロは軽く、時には1500-2000キロを運ぶ。
つまり一回で300萬ドル(33億円)から400萬ドル(44億円)が懐に入る。
札束がドドーっと家中に溢れる。ルーシーが「ゴミ箱まで一杯よ、何とかして!」と本気で怒る。

ホワイトハウスやCIAの命令に従いながら、同時に違法な麻薬密輸ビジネスで数十億円の荒稼ぎをするバリー。

映画の中で一番オカシイのがDEAのパトロール機に追いかけられ郊外の住宅地に不時着して塀や柵を壊し飛行機は翼を折って止まる。

そこで自転車を止めて呆気にとられている黒人の子供を捕まえて100ドル札の束を幾つか握らせ「塀の修理代とそれから君の自転車を買うよ」
DEAと地元警察がやって来る前に子ども用自転車をギコギコ漕いで住宅地を逃げ出すバリーに大笑い。

地元警察や州の司法機関に逮捕されても州知事やホワイトハウスからの電話一本で自由の身になるバリー・シールの雄姿はピカレスク映画のヒーローそのもの。

ドナルド・レーガン夫妻やジミー・カーター知事が実写のTVニュースで現れるが「麻薬撲滅運動」のキャンペーンだから皮肉だ。

しかし「好事魔多し」、いい気になって走っているバリーがエクアドルの政府高官がドラッグビジネスに手を染めバリーに協力している姿をバリーの盗撮からマスコミに洩れ、バリーにとんでもない危険が迫って来る。

監督は「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs.スミス」などで知られるダグ・リーマン。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(14)に続き、クルーズとタッグを組み息のあったコンビのアクションとコメディを披露している。

10月21日よりTOHOシネマ新宿他全国」公開される。

「セントラル・インエリジェンス」(Central Intelligence)(米映画):高校時代のスーパースターカルビンといじめられっ子のデブのボブ。20年後に会った2人の地位は逆転していた。

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電通の違法残業過労死裁判が昨日(22日)に開かれた。
スピード立件、略式一転して正式裁判になると言う異例ずくめの事件で、世間の注目を浴び、新聞もTVもトップにユースで報道した。

公判を開かず、書面審理のみで罰金刑を科す検察側の略式起訴に、簡裁が「略式不相当」という形で待ったをかけたのも異例だった。
判断した理由は明らかにされていないが、過重労働に対し社会が厳しい目を向けるようになったことを考慮し、事実の解明・明確化のためにも、より厳格な審理を求めたものとみられる。

「社長として責任を感じている」。女性新入社員が過労自殺し、大きな社会問題となった電通の違法残業事件。

緊張した面持ちで東京簡裁の初公判に臨んだ山本敏博社長はこう述べた。電通は過去に何度も厚生労働省から是正勧告を受けたが同社の体質は改まらず、社会的な信用は大きく損なわれた。

それだけに山本社長は「このようなことを二度と繰り返さないことが私の最大の責務だ」と誓った。
検察側は、「会社の利益を優先して労働者の心身の健康を顧みない姿勢が引き起こしたものだ」と指摘し、罰金50万円を求刑した。法人としての「電通」は、新入社員の高橋まつりさんらに違法な長時間労働をさせた、労働基準法違反の罪に問われている。
 
そこでいつものように顔を出し遺影を横に置き、娘の服を着て(毎回ではないが)マスコミを相手に劇場型記者会見をするのが自殺した高橋まつりさんの母親、高橋幸美さん。

 法廷後に会見し「電通が長年行ってきた社員に対する法律違反が明らかにされ、裁かれたことは複雑な心境ですが感慨深いものがありました。
山本社長は、公訴事実を全て認め反省とおわびの言葉を述べ、『新しい電通をつくる』との決意を述べられていましたが、遺族としてはにわかに今日の社長の言葉を信じることはできません。
現在の社長にいくらこういう表明されたり謝罪を述べられたとしても、娘が帰ってこないのは変わらないので、本当に複雑な気持ちでいます」などと語っている。
 
22日の初公判で「電通」の山本敏博社長は起訴内容を全面的に認め、「まつりさんの尊い命を失ってしまったことに極めて重い責任を感じている」などと述べた。

判決は10月6日に言い渡される。

この成り行きを見ていて僕は腹が立って仕方が無い。

先ず高橋まつりさんは「過労」でなんて死んだのではない。
僕は「東大現役合格症候群」と名付けてまつりさんをはじめ東大にストレートで入った連中を分析している。

彼らは基本的に頭が悪い。ただ記憶力が優れている。
かく言う私も現役合格組だから自信を持って言えるのだが一生懸命長い時間をかけて傾向と対策を学び実施する。

「4当5落」の言い伝えがあるように4時間しか眠らなければ合格し5時間だと落ちる。この伝で行くとまつりさんは月に600時間も机に座っている勘定になる。36協定を破って30時間や40時間オーバーしても屁でもない。

東大現役合格社員は上司を尊敬し命令をハイハイと聞くような態度で「何で偉そうな三流大学出身者メ!」と心の中でバカにしている。仕事だって命令されたからするものじゃない。だからボスのブリーイングの「パワーハラスメント」はあり得ない。

怖いものなしだが一つ情緒的な面、ロマンスや失恋には弱い。

僕が新入社員で花形ラジオテレビ局在籍時に東大経済卒のT君がいた。
NTV担当で徹夜は当たり前、慣れない勤務に右往左往していた。
上司は型通りのブリーフィングはするが直ぐに独り立ちをさせる。
ミスをすると鉄拳制裁(60年代は当たり前)でポカポカ殴られていた。

「大丈夫か?」と声をかけると「三流大学卒の奴らに何をされても平気さ」と。
東大卒の新入社員なら上司が東大卒で無ければこういう心構えで上に接する。そしてまつりさんの上司は東大卒では無かった。

しかしT君は新入社員の年の12月・大晦日に建築中の高層ビルから飛び降りて死んだ。意中の恋人と別れた「失恋自殺」だった。

高橋まつりさんの自殺は僕が調べた限り「過労から」や上司の「パワハラ」からの自殺ではあり得ない。
明らかに失恋から失意の飛び降り自殺でT君と軌跡を同じだ。

学生時代から付き合っているアメリカ駐在の人材派遣会社のボーイフレンドが4か月振りに帰国し、クリスマスイブをシャンペンと手作りのご馳走で過ごす予定だった。まつりさんの部屋でシャンペンを飲みながら、突如恋人が「別れよう」と切り出した。

僕も経験があるが長年異国の地に住んで居ると日本のガールフレンドは煩わしくなる。夜を徹し「別れる」「離さない」の堂々巡りの果て、明け方男はそのまま帰る。
まつりさんは会社借り上げの4階のマンション踊り場から飛び降りたのは数時間経ったクリスマスの午前中だ。

「過労」や「パワハラ」で判断力が少しは鈍っていたかも知れないが自殺の原因の7-8割は「失恋」したからだ。

2000年の電通ラジオ部員、大島君の自殺で(この原因も女性問題だったのだが)最高裁まで争い1億7千万円勝ちとった川人博弁護士がまつりさんの母親にアプローチし、電通はこういう具合にやっつければうまく行くと秘策を授ける。

電通は川人弁護士が出て来た瞬間にギブアップし大島君への和解金、3倍の5億円を超す慰謝料を払った。
これが間違い。
常識的に言えば、慰謝料は口止め料的意味を持つが意に介さず電通非難を機関銃の如く撃ちまくる。10億円貰っても慰安婦像を取り除かない朴クネも顔負けだ。
肩書も「過労死遺族の代表」と立派な誰も抵抗出来ないタイトルを葵の御紋のように掲げる。

だがそもそも上述したように「過労死」でも「パワハラ死」でもあり得ないのだ。週刊新潮が今年の1月と2月に亘り高橋まつり「失恋死」を2ページに亘って書いている。

他のマスコミは門前仲町の自殺現場検証に立ち会い、ボーイフレンドも目撃しているのに「電通憎し」の一点で失恋死を完璧に無視している。特に朝日とNHKが酷い。この二社は広告界を牛耳る電通を日頃から目の仇にしている。

僕ら電通OBは立つ瀬が無い。山本などと言う若造社長が自虐的に「私が悪うございました」と何をどう聞かれてもバカの一つ覚えのワンパターン回答。

あれは「失恋の果てでした」と一言何処かで反論は出来ないのか?
反撃こそ最大の防御だ。

広島や長崎に原爆を落とされ無辜の数十万人市民が亡くなったのに「戦争を終わらせるために仕方無かった」と反論も反撃もしない「自虐的態度」は許しがたいが、スケールやレベルが違うが山本社長の「自虐的態度」も容認できない。

ブラック企業と烙印を押され、精神の拠りどころ「鬼十則」まで完全否定。
今までの電通、そこでの40年の人生キャリアを捧げた僕らOBはどうすりゃ良いんだ?


 元プロレスラー「ザ・ロック」で今や「ワイルド・スピード」シリーズなどで人気絶頂のドウェイン・ジョンソンが余り知られていない・スタンダップ・コメディアンのケヴィン・ハートとタッグを組んだ、アクション・コメディ。

映画の冒頭、黒人のデブの高校生が裸で踊っている。肉がプルンプルンと上下するが踊りは抜群。白人の苛めっ子のトレバー(ジェイソン・ベイトマン)とその仲間は裸のボブを講堂で行われている満員の選手壮行会の真ん中に放り出す。

そこでのスターは勉学にもスポーツにも卓越した才能を発揮し「ゴールデン・ジェット」と呼ばれるカルビン・ジョイナー(ケヴィン・ハート)。
生徒会長を二期務め才色兼備のガールフレンド、マギー(ダニエル・ニコレット)とキング&クイーンに選ばれて栄誉と名声の最高位で輝いていた。

カルビンの目の前に裸の黒人のデブ、名前も知らないが皆に笑われ恥辱で震えている。カルビンは来ている「ゴールデン・ジェット」のウィンドブレイカーをボブに渡す。オチンチンを隠して講堂を逃げ出すボブ。

それから20年、高校時代は学園のスーパースターだったが、現在はパッとしない人生を歩んでいる中年会計士(CPA)カルビン。同窓会も皆と顔を合わせたくないと今は遣り手弁護士のマギーに断る。
そんな彼の事務所に、当時デブでいじめられっ子だったボブ(ドウェイン・ジョンソン)から、20年ぶり会いたいと連絡が入る。

仕方なく会いに行ったカルビンの前に現われたボブは別人、なんと6パックの筋骨隆々なCIA捜査官へと変貌を遂げていた。

濡れ衣を着せられCIAから追われているというボブに助けを求められ、一緒に逃げるハメになるカルビン。単独で写ると立派な体格と思えるケヴィン・ハートも30センチも背が低く、体重も50キロも違う。大人と子どもだ。

高校時代のボブを覚えていないカルビンは「ブラ」(兄弟)と呼ばれて戸惑うばかり。ボブはCIA内部で不正が行われているから経理データーを分析して欲しいと。ハッキングしてCIAのサーバーから引き出したデーターはス千億円の闇取引やらローンダリングと犯罪の証拠ばかり。

そこへ突然武装した数十人の男達が雪崩れ込んで来る。指揮をとるのはCIAのチーフ・エイジェント、パメラ・ハリス(エイミー・ライアン)。

 ライアンは「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(07)や「バードマン」(14)で様々な女優助演賞を授与された演技派。
強面のCIAチーフでボブを追い詰める。

ボブは俺は嵌められたんだと言うがケビンは半信半疑。パメラの言うことを聞きボブの逮捕を手伝う。
けれどもボブは神出鬼没、マーシャルアートもカーチェイスでの逃亡技術も火器の扱いも見事なもの。
それに高校時代のスーパージェットを尊敬し懐かしがりスリスリするので奇妙なバデームービーとなる。

ジョンソンは相変わらずタフでアクションは冴えるがストーリーが予想できるし、コメディと言ってもジョークも笑えない。

データーから引き出した数字が取引コードだったり取引場所だったり、振り回されるのも不興の一つ。
監督は「なんちゃって家族」などコメディ得意なローソン・マーシャル・サーバーが初めてアクションを演出する。やはり気がぬけている。

主演のドウェイン・ジョンソンと、コメディアンのケヴィン・ハートは映画での「格」がちがう,隙間風も吹いている。

他にCIA上司にエイミー・ライアン、CIAの同僚で天敵フィルのアーロン・ポール、苛めっ子、トレバーにジェイソン・ベイトマンらが名を連ねる。

カメオ出演でアーノルド・シュワルツネッガーとダニー・デビートが顔を出すので驚く。

まあ予想通りのB級アクション・コメディだがドウェイン・ジョンソンのファンの僕には楽しめる映画だった。

11月3日より新宿武蔵野館にて公開される

「立ち去った女」(The Woman Who Left)(フィリピン映画):冤罪で無期懲役の判決を受け30年を刑務所で過ごした女性が、恋人でありながら自分を嵌めた男に「復讐」を果たしにやって来る

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 4時間になんなんとする長尺。それでもフィリピンの巨匠、ラヴ・ディアスにしては短い方だと言う。

ラヴ・ディアス監督・脚本・撮影・編集による、2016年のフィリピンのある女性の復讐の映画で、昨年の第73回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、最高賞である金獅子賞を獲得した。

主人公のホラシオを演じるチャロ・サントス=コンチョの20年振りの復帰作でもある。ABS-CBNの社長兼CEOに就任して以降女優休業していたのだ。

ホラシア(チャロ・サントス=コンチョ)のナレーションで映画は進行する。
1997年6月30日。
ホラシアが働いているフィリピン女性刑務所の作業所に香港のラジオ放送が英語でニュースを伝えている。

 香港の返還を明日に控えフィリピンからの出稼ぎの女性男声は職を失い、フィリピン経済は大きな影響を受け、その結果誘拐ビジネスが流行り始めたと。今年は昨年の3倍を超えている。

 本編の会話はタガログ語なので香港ラジオの女性アナウンサーの英語は新鮮で鋭く突き刺さる。
英国が99年の借款を終え、香港を中国に返還するが、香港返還がフィリピン経済に暗い影を投げかけているのだ。

殺人罪で無期懲役の判決で投獄されている元教師のホラシアは受刑者に読み書きを教えながら30年を過ごした。

ところが同じように服役している親友、ペトラ(シャマイン・センテネラ・フェンカミノ)が殺人は自分がやった、ホラシオに罪を着せ刑務所へ送り込んだのだ。
事件の真の黒幕で、彼女を陥れたのは、かつてのホラシオの恋人ロドリゴ(マイケル・デ・メッサ)だと。ペトラは告白後自殺をする。

 釈放されたホラシオは故郷に戻るが夫は既に死亡、娘(マン・ロンコ)は島を出ており、息子は行方不明だがおそらく生きてはいまい。
 
 総ての不幸は自分を冤罪に陥れたロドリゴの所為だ。
復讐を誓い、拳銃を購入し、憎いロドリゴを探す孤独な旅に出る。(大型の自動拳銃がいとも簡単に購入できる)

 小さな島に辿り着いたホラシアは、今や闇世界のボスとなり豪勢な暮らしをしているというロドリゴの情報を集め始めるが、彼女の前に困っている者、弱い者たちが現れる。貧しいバロット売りの男、物乞いの女、心と身体に傷を抱えた謎の女、彼らに手を差し伸べ、惜しみなく愛を注ぐホラシア。社会の底辺にいる人々に注ぐ彼女の愛情や友情,同情は並大抵でない。接する一人一人を丹念にカメラは追うから時間もかかる訳だ。

一か所にカメラを据えると動かずジーット視点は動かない。長尺になる秘密はここにある。普通の監督のように、カメラの切り替えやパンや細かなカットで制作したら1/3の時間と長さに収まるだろう。

ホラシアの家に真夜中、息も切れ切れに辿り着き意識を失くしたホーランド(ジョン・ロイド・クルズ)。

 荒くれ男たちから殴る蹴るの暴行を受けレイプされたトランスベスタイト(性転換)の売春夫だ。
自分のベッドに寝かせ医者に見せ、流動食をスプーンで口に運び食べさせる。出来る限りの手を尽くして歩けるくらいまで回復する。

 幾分、回復すると懐中電灯をマイクに見立てて歌いだす。
「サンライズ、サンセット~」余り音程を外しているので何だか分からなかったが歌詞は「屋根の上のバイオリン弾き」だ。
ホーランドの夢は一度行った日本へもう一度行くこと。楽団の歌手とダンサーとしてミュージカルの歌を歌いまくる。
「Somewhere」って何だっけとホラシアに聞く始末。
「Westside Storyでしょ」教えられて相好を崩すホーランド。

快気を祝い、ホーランドとお酒を飲みながらホラシアは自分の過去を語る。
あの夜ホーランドが倒れ込んで来なければ銃を持ってロドリゴを殺しに行くところだった。
ホーランドのお陰で殺人犯にならずに済んだと感謝の涙を流すホラシア。
彼女の心の中から「復讐」と言う炎が消え去り「許し」が芽生えて来る


嬉しくて2人でお酒を飲む。久しぶりに大酒を煽ったホラシアはソファの上で寝てしまう。
そっとクッションをあてがうホーランド。

ふと気がつくとホーランドの姿が見えない。
浜辺でホーランドを探すホラシアの耳に何台もの警察車両のサイレンが聞こえる。

ロドリゴは何度も刺され絶命していた。血の滴るナイフを持っていたホーランドはその場で逮捕されるが「私を唯一人間扱いして大切にしてくれた人への恩返しよ」と繰り返すだけ。
「情けは人の為ならず」と僕の耳元で自分の声が聞こえる。

ベネチア、ベルリン、カンヌをはじめ世界の映画賞を席巻してきたフィリピンの鬼才ラヴ・ディアス。監督・脚本、撮影、編集と他人任せにせず一人で何役もこなす。59歳のディアスは油が乗り切っている。テーマも明確に伝わって来る。

激しい憎悪から始まり、光と闇、善と悪を通し、人間の本質に触れて行く。やがてホラシアの心は罪を憎まず許しの境地に達しているのを発見する。

2007年の「エンカントスの地の死」でベルリン国際映画祭オリゾンテ部門金獅子賞、08年の「メランコリア」で同部門のグランプリ。
14年の前々作「昔のはじまり」でロカルノ国際映画祭金豹賞、2016年2月の「痛ましき謎への子守唄』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、ベネチアでついに頂点に登りつめたラヴ・ディアスに、サム・メンデス監督率いる審査員団や批評家、観客たちから満場の拍手が贈られたと言う。

ラヴ・ディアスの作品は、平均で5~6時間、時に10時間を超えるなど、観客の度肝を抜く「長尺」をトレードマークとする。映画館泣かせだ、回転が少ないと収益も減る。

しかし本作は、ラヴ・ディアス作品の中では「異例の短さ」となる3時間48分にして、ベネチア金獅子賞受賞作で最高傑作の「立ち去った女」は、ラヴ・ディアスのショウケースになって行くだろう。

10月14日より渋谷シアター・イメージフォーラムで公開される

「否定と肯定」(Denial)(イギリス映画):「ホロコースト」など無かったと言うネオナチの作家と全面的に対決するユダヤ系歴史学者デボラ・リンシュタット。地味だがたっぷりと堪能できる法廷映画

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ナチスドイツによるホロコーストなど無かったと言う信念を持つ学者がいるのには驚く。勝負は最初から分かっていると思うものの、イギリスの法廷で争われる論争は映画にすると地味で最後になるまでカタルシスは味わえない。

1994年、イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)が唱えるホロコースト否定論を、自著「ホロコーストの真実」で否定していたユダヤ系アメリカ人の女性歴史学者デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は、アーヴィングから名誉毀損で提訴される。

アーヴィングは極右主義者でネオ・ナチの学者と言うより不穏当なアジ活動の作家として世間を渡っている。

勿論アーヴィングの売名行為だが真摯な歴史学者デボラは受けて立つのやぶさかではない。
常識的に言ったって今更万人が認知し了承し常識としている「ホロコースト」の「否認」なんてありえない。

デボラも観客も朝飯前|Piece of Cake」と舐めてかかったら飛んでも無い。
先ずイギリスの高等裁判所へ訴状があげられた。アーヴィングの著書を糞味噌にやっつけたから「名誉毀損」で提訴されるがこれを原告でなく被告デボラが自己の正当性を証明しなければならないと言う理不尽さに驚く。ポーランドのアウシュビッツの絶滅収容所の検証と言う原点から弁護団と現地に赴く。
ガス室の柱が4本なのは良いが屋根にある柱の穴が地面に無いのがオカシイとアービングが突っ込む。

アービングは弁護士を使わず自身が自著の記述を繰り返し、さらに詭弁や虚言はお手のもの。

演じるテイモシー・スポールが馬ずらの太々しさで鋭く迫る。
「ハリーポッター」シリーズや「英国王のスピーチ」などに脇で活躍したベテランイギリス俳優は上手い者だ。

被告が説明責任を持つという制度もアタマに来るがデボラが怒り狂うのは自分たちの弁護団だ。
主任弁護士、リチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン)はデボラは被告席に着くのは良いが一切の発言を禁じる。

証言を望むホロコースト生き残りの老女もダメ、総てはリチャードが対処する。
リチャードは喋り始めると感情が込められ怒りと憎悪で発言の上げ足をアービングはとると。
だから冷静に対処できるリチャード一人だけに任せなさいと。

憤懣やるかたないデボラも百戦錬磨の釣り好きのスコットランド人に総てを委ねざるを得ない。
4億5千万円と3カ月をかけたホロコースト否定論の審理の判決が降りる。

主人公のユダヤ人歴史学者を「ナイロビの蜂」でオスカーを受賞した47歳の女優のレイチェル・ワイズが熱演する

相手役のホロコースト否定論を唱える歴史学者を。「ハリーポッター」シリーズや「ターナー、光に愛を求めて」などのティモシー・スポールが憎々し気に演じる。

が何と言ってもハイライトは「フル・モンティなどの名優トム・ウィルキンソンの飄々たる名演技。その他「007 スペクター」などのアンドリュー・スコットらが共演。
監督は「ボルケーノなどのミック・ジャクソン。

地味だがたっぷりと堪能できる法廷映画だ。

12月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

「ドクター・エクソシスト」(Incarnate)(アメリカ映画):11歳の少年に摂り付いた悪霊「マギー」はドクター・セス・エンバーの妻子を殺し、エンバーの下半身不随を齎した天敵だ

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1か月ほど前に紹介したイタリア映画の「悪魔祓い、聖なる儀式」(LIBERA NOS)で「エクソシスト」は,映画の世界だけではない。現代でも神父たちは忙しく悪魔に憑かれた者達を助ける毎日を送っているという記録映画があった。

遥か昔の45年前、ウィリアム・フリードキン監督の映画「エクソシスト」は世界的に大ヒットした。十字架と祈祷の言葉を武器に敬虔な神父が悪魔の前に立ちはだかる。
世界的に大ヒットした映画「エクソシスト」。

「悪魔祓い、聖なる儀式」で描かれる悪魔に憑かれた者を助けようとする神父たちは、映画のフィクションではなかった。
現代の神父たちもカトリックの総本山ヴァチカンとイタリアを中心に、日毎膨らむ悪魔祓いの需要に対応していたのだ。

登場するカタルド神父はシチリア島の有名なエクソシスト。科学や医療では解明できない問題や病を抱えた人たちが教会に殺到。人々はそれが悪魔の仕業だと信じている。カメラは悪魔を祓う儀式や神父の日常だけでなく、悩みを抱えた人々の日常も描写される。

今日紹介する「ドクター・エクソシスト」はフィクションだが前代未聞の方式で患者の身体に入り込み、そこで悪魔と対蹠する。

原題のIncarnateは肉体を与える、新しい身体で生まれ変わる、ということだ。
主人公のドクター・セス・エンバー(アーロン・エッカート)は、神父でもエクソシストでもない。悪霊に取りつかれた人の潜在意識の中に入り込んで除霊する優れた除去者だった。

自分はエクソシストでは無い、悪霊を追い出す(Eviction)するだけだ、と主張する。
だからカトリック教会と手を結ばないが,時々教会は聖水や十字架を使って手助けをする下請け業者(サブコントラクター)だ。
エンバーの格好はみすぼらしい.脚が動かず車椅子に縛り付けられたままだ。昔妻と娘を悪霊、マギーに奪われ下半身不随にさせられたのだ。

ヴァチカンからの遣いが2人(キア・オドネル&エミリー・ジャクソン)がエンバーに悪霊に摂り付かれた11歳の少年キャメロン(デイビッド・マズーズ)を助けてやってくれと、母親リンジー(カリス・ファン・ハウテン)と一緒にやって来る。
少年キャメロンに摂り付いた悪霊こそエンバーが長年追い続ける「マギー」だった。

キャメロンはリンジーと別居した夫、ダンとオーストラリアに住む普通の子供だったが、マギーが乗り移って以来、深い闇に落ちずる賢く人の心を読めるようになる。マギーと戯れだすと宙を飛び、天井に張り付き逆様に壁に張り付く。
エクソシスト映画ならお馴染みのシーンだが、やはり怖い。

少年の意識の中に飛び込めば四肢健常となり不要な車椅子から立ち上がり悪霊マギーとの決戦に挑むことになる。

恐怖映画と言っても三流の監督や役者が顔の並べるようではダメだ。

「エクソシスト」のしてもウイリアム・フリードキンと言う一流の監督にエレン・バースタインやマックス・フォン・シドーなど大スターが出演している。

監督は「カリフォルニア・ダウン」や「センター・オブ・アース」などのブラッド・ペイトン。

主人公ドクター・セス・エンバーは「サンキュー・スモーキングや「エンド・オブ・ホワイトハウス」などのアーロン・エッカート

恐怖映画の生産工場、「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」「アナベル」などのジェイソン・ブラムのブラム・ハウスが製作すれば本当に怖い壺を心得ていてそこを突きさす。この映画も怖ろしかった・

11月25日よりシネマート新宿にて公開される

「ゲット・アウト」(Get Out)(アメリカ映画):黒人カメラマン、クリスは白人のガールフレンド、ローズに誘われ泊まり込みでNY郊外の実家でのパーティに参加することになる

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昨日紹介した「ドクター・エクソシスト」同様にホラー・ブランドのブラムハウス・プロダクションと言うのも観客に影響を与えている。「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」「ヴィジット」「スティル」などホラー作品を立て続けに成功させているジェイソン・ブラムが製作。

アメリカでは2月28日より公開されいきなり首位の座につく。
制作費は超低予算5M(5.6億円)のホラー映画で、2777館で上映され30.5M(34.5億円)。
いきなりモトを取ってしまった。
NYタイムスやWSJなどの批評家からも好評を得、ロットン・トマトでも99%フレッシュ度と観客のウケも最高に近い。

「脚本が良く書けているからだ」とコムスコアのアナリスト、ポール・デルガラネディアン。「素晴らしい本から出来上がった秀作は金がかからないものだ」

NYに住むカメラマンの黒人青年、クリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ)は白人の彼女ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ)のNY郊外の邸宅を訪問する。ローズの亡き祖父の例年の偲ぶ会に出席するためだ。

ローズの両親に挨拶する。
父、ディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)や
母、ミッシー(キャサリン・キーナー)は娘のボーイフレンドが黒人だと知らなかった。

シドニー・ポワティエの「Who's Coming to Dinner」(招かねざる客)(68)に状況は似ているがこれはホラー映画。

ローズの両親はクリスを下にも置かぬもてなしで気持ちの悪いほどクリスを持ち上げるが
弟のジェレミー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)はクリスに突っかかる。

邸宅には黒人たちが使用人として働いている。
執事のウォルター(マーカス・ヘンダーソン)や家政婦のジョージナ(ベティ・ガブリエル)、二人とも慇懃無礼、ゾンビのように言われたことをやるだけ。
同じ黒人のクリスに対しても感情を表わさない。

彼らは拉致され働かされているのではないかと疑う。

ローズの家族に疑惑をいだくうちにクリスは ローズの母、精神科医のミッシーによって喫煙をやめさせるような催眠術にかけられ、身動きが取れなくなる。
夢の中で幼い頃に母親を交通事故で亡くしたトラウマが現れる

翌日亡き祖父を称える会に裕福そうな白人ばかりの客がリモやSUVで集まって来る。(一人だけ日本人タナカ(オオヤマ・ヤスヒコ)がいたが)盲目の美術商だとか、神話に出てきそうなやせっぽちの少女とかキューブリック風の娯楽室とか、興味ある組み合わせだ。

唯一かなり年配の白人妻と連れ立って若い黒人のローガン(レイキッシュ・ス単フィールド)が居るのを見つけたクリスは嬉しくなり、フラッシュを焚いて彼の写真を撮る。
その瞬間ローガンは鼻血を出し、涙を浮かべて「出て行け!」と襲い掛かる。
出て来る黒人は何か異様でオドオドしている。
恐らくゲストのローガンだけが必死で何かをクリスに伝えようとしたのだろう。

 設定はNY北部の郊外となっているがロケはアラバマ州モービル。
僕も一度だけ行ったことがあるが南北戦争以前のように黒人は従順で僕に対しても一々「イエス、サー」を付ける。
ポロ競技を見物に2泊したがアナクロ的な白人至上主義の街で驚く。

スポイラーになるので細かなことは書けないが最後に明らかになるアミテージ一家の陰謀は人種差別的で怖ろしい。

終盤で可愛い女の子だったローズがロングヘアを巻き上げ顔の輪郭を露わにし本性を現し、
吊り上がった目でクリスに迫る。
美女だけに一段とその冷徹な恐ろしさは暗い森をバックに浮き上がる。

人気お笑いコンビ「キー&ピール」のコメディアン、ジョーダン・ピールの長編劇場用作品の監督デビュー作。ピールは次回作のオファーも来ていると言う。

ホラー映画に人種問題や差別社会を絡めて恐怖映画の新しいフィールドを広めた功績は大きい。

主演のクリスを演じたイギリス俳優、ダニエル・カルーヤもこの一作で有名になりハリウッドでの将来は明るい。

10月27日よりTOHOシネマズ・シャンテ他で全国公開される

「こいのわ 婚活クルージング」(日本映画):65歳の大富豪、門脇誠一郎は、社長を解任され心機一転、第二の人生をともに歩むパートナー探しを始める

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 日本映画でこれほど笑ったのは久しぶりだ。
大抵はコミックの原作で奇想天外な発想は僕には付いて行けないコメデイが多いし、主人公がJKで年齢も離れすぎていて感情移入が出来ないからだ。

脚本・監督の金子修介の腕によりをかけた傑作の賜物だ。
僕は日活ロマンポルノ時代から金子の作品は殆ど見ているが、
ポルノを卒業してゴジラだとかガメラの怪獣もの、学校の怪談のようなホラーもの、
大ヒットしたSF恐怖映画「デスノート」や「リンキング・ラブ」のような少女アイドルもの、
何でもござれの職人作家だが器用貧乏では無い。
一作一作に魂を込めて渾身の力で秀作を送り続ける。

中でも異色なのは「ご当地映画」、「地元映画」だ。
例えば香川県のローカル作品「百年の時計」も良かった。
しかし今日紹介するのは広島県人を対象とした「こいのわ」は時計を更に上回る「ご当地映画」だ。

広島県庁が行なっている婚活事業「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」に題材を得て(と言うか地元映画の「紐付き」は宿命的)金子修介がそれをどう料理して書き下ろし、オリジナル脚本にするかが問題だが、見事及第点と言うか、押し付けられたことを感じさせない秀作に仕上がり、
付録に「介護」や「少子化」などの問題提起までセリフの中に散りばめられている。

だから観光案内に広島カープやMAZDAスタジアム、もみじ饅頭、家電のエディオン、市街電車の広島電鉄、瀬戸内海の島々などなどが紹介される。
原爆ドームや平和祈念資料館など敢えて画面に登場させないのが良かった。
しめっぽくなるもんね。

特に広島カープは連続Vの真っ最中。
僕は熱狂的巨人ファンだが、これだけぶっちぎりで優勝されると諦めが付き、今はセ・リーグ代表でソフトバンクをやっつけて欲しいと思うだけ。
真っ赤なカープ女子が主導する女性グループは皆魅力的だ。

映画の冒頭、歩きスマホで「衝突防止機器」のアプリが紹介される。
それを発明して大儲けをした電機メーカー社長、門脇誠一郎(風間杜夫)が主人公として登場するが、彼のキャラが可笑しく興味深い。

歩きスマホの衝突を防ぐ電子機器の開発で大儲けしたものの、ある日取締役会で社長を解任されてしまう。衝突防止機器以来ヒット商品が出ず社員の丘陵も払えない状態では仕方がない。

創業者として会社から100億単位の慰労金を貰った65歳の門脇誠一郎。心機一転、第二の人生をともに歩むパートナー探しを始めるが、最初にお見合いした美人編集者・山本ナギ(片瀬那奈)は実は取材が目的で、「うそ発見器」で分かった二人は大喧嘩になる。

ナギは広島カープのウグイス嬢をスタートに女優志願で上京したが目も出ず編集の仕事に携わっていた。35歳にもなってシングル、高年齢出産ギリギリの状態を編集長に見抜かれ公私混同して大金持ちの門脇と面談したのだった。

その後も婚活に励む誠一郎の前には高齢出産をあきらめない産婦人科医(白石美帆)、シングルマザー綾香(小橋めぐみ)やトランスジェンダー(おかま)愛里(コトウロレナ)、遺産狙いで後妻業疑惑のある美魔女(中山忍)など、ひと癖もふた癖もある女性たちが現れる。候補者の面談はどれも笑える。

一方、ナギも負けない。年下のイケメン県庁職員北野(町田啓太)にアタックされるが、なぜか誠一郎のことが気になってしまう。
誠一郎もナギのことが心に引っかかっている。

主人公門脇誠一郎を演じるのは68歳の風間杜夫。8歳から子役で活躍しているから芸歴60年。「蒲田行進曲」など印象に残る作品が多い。金子監督の「DEATH NOTE デスノート the Last name」にも出演したことがある。

ヒロイン山本ナギ役の片瀬那奈は初めて見る顔だが、キャリアとしてモデルが長い。すらりとした美人で見とれてしまう。36歳と実年齢に近い役。

他に八嶋智人、白石美帆、中山忍、藤田朋子、小橋めぐみ、町田啓太(劇団EXILE)ら芸達者な面々が名を連ねる。

嬉しいのは突然山本浩二がカメオ出演で顔をみせてくれたこと。
もう71歳、広島カープ一筋で選手、監督を通して現在のカープを育て上げた実績は尊敬に値する。

金子修一作品の中でも群を抜いて面白いコメディ、お薦めの映画だ。

11月11日より広島で先行ロードショウの後、11月18日より角川シネマ新宿他で公開される。

「スイス・アーミー・マン」(Swiss Army Man)(イギリス映画):流れ着いた死体と大親友となる孤独な青年

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時間がありタイトルがおもしろそうだったので昨日(28日)日比谷のTOHOシネマズシャンテの午後2時半の回を覗いてみた。

こんなくだらない、詰まらない、そして下品な映画は初めて見た。
(試写で見せて貰ったらこんな悪口は書けないが、入場料を払っているから正直に感想を述べる)

シャンテで上映の映画はある程度の質とレベルを保っているから期待を裏切らないだろうと信じ切っていた。
 しかもポニー・キャニオン創立50周年記念作品と銘打ってある。

大体タイトルに知恵を絞っていない。
原題をそのままカタカナ表記にしたら日本人にはチンプンカンプンだ。
スイス・アーミーと言えばナイフに繋がる。
ナイフ本来の大刃、小刃の基本機能以外に缶切り、コルクや栓抜き、ねじ回し、ハサミ、ピンセットなどなど何にでも使える。

だからせめて「十徳ナイフのような男」とか「何にでも役立つ男」とか短く「重宝な男」とかにして欲しかった。

漂流した無人島で助けを求めていた孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。しかし、いくら待てども助けは来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたそのとき、髭もじゃで尾羽打ち枯らしていたハンクの目前に背広をきちんと来た男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が波打ち際に流れ着く。

その死体からは何やらガスが漏れ出ており、海につけると浮力を持っていた。その力は次第に強まり、死体は勢いよく沖へと動き出す。

ハンクが意を決してその死体にまたがると、ジェットスキーのように発進する。

タイトル前のこのシーンは痛快で愉快だ。

海岸に戻り死体を引き上げると、ハンクは何やら生きる希望を見出す。
死体に話しかけるが当然返事は無い。
びしょ濡れでガスが充満しガラスのように反応が無い目をしているが、名前はと聞くと「メニー」と答えた(と思いこむ)ので身体を引きずり森の中へ入り込む。
そして一生懸命に介抱する。

なにしろ友達の居ないハンクにとっては初めて何でも話せる親友(バディ)が出来たからだ。バスでいつも乗り合わせて心ときめく美女、サラ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)への想い、子どもの頃の父親に叱られ苛められたトラウマ、オナーニの仕方、何でも聞いてくれる。(当然だよね)

喉が渇いて仕方が無い、メニーは突然口から水を吐き出す、
コップで汲めども尽きない水の量に驚く。メニ-の口から吐き出したものもお腹が空いたハンクには美味しい食料だ。

オナラは絶えずするので火をおこしたき火は絶やさない。
オナラで石を撃ちだし鳥を落とし、鹿を狩る。

一番驚いたのは大きな熊に襲われた時だ、オナラは火炎放射器となって熊を追い払う、自身も燃えるが火傷もしない。

もっと器用なのは縮んだオチンチンがコンパスの役目を果たし進む方向を教えてくれることだ。

「生きること」に欠けた者同士が力を合わせて大切な人がいる故郷に帰る努力をする。

最後はバカバカしさを通り越して笑ってしまうが、それこそがこの映画の狙いなんだろう。

無人島で遭難してした孤独な主人公、ハンクに「ルビー・スパークス」「プリズナーズ」「リトル・ミス・サンシャイン」などのポール・ダノ。

死体のメニーを「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフ。何で大ヒットシリーズのプリンスがこんなしょうもない役を引き受けたのか分からない。

ハンクが思いを寄せる女性サラを「10 クローバーフィールド・レーン」などの演技が高評価だったメアリー・エリザベス・ウィンステッド

CMやMVディレクターを経たダニエルズ(ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワン)のコンビが初長編作品で監督デビュー。破天荒なプロットやジョークを良く考え出したものだ。

2016年のサンダンス映画祭のドラマ部門で最優秀監督賞を受賞し、シッチェス・カタロニア国際映画祭では作品賞&主演男優賞のW受賞、そしてヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭では観客賞を受賞したと言うから驚く。

少し毛色の変わった映画はトクだね。

TOHOシネマズシャンテ他で公開中

「パーティで女の子に話しかけるには」(How to Talk to Girls at Parties)(米・英映画):内気なパンク少年、エンは遠い惑星からやって来た美少女ザンと出会い初めての恋におちる

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大笑いした「DCスーパーヒーローvs鷹の爪団」は昨日(29日)見た2本の最初の映画だった。

世界征服をたくらむ何をやっても失敗ばかりの秘密結社 鷹の爪団と彼らの野望を阻む正義なのかよくわからないヒーローのデラックスファイターとのやり取りを描いた脱力系コメディは、この10年間に殆ど見ているが余り面白くも無いヘタウマ漫画だな、と言う印象しかないが、昨日の作品はいつもと違い笑い転げた。
 
原作者であり監督・脚本のフログマン(本名:小野亮)の住む島根県を一所懸命にPRしようと空しい努力(人口が大正時代より減った過疎地島根県に600Mの大物を目指すシン・入社員を送り込んだり)はいつもの通りだ。
可笑しいのが画面の右端の予算メーター。制作費が撮影が進むにつれて落ちていく。プロデューサー・フログマンがポルシェなど高価な買い物をすると急激に下がる。底を打つと映画は中止、画面は真っ黒になる。

そこで映画と関係無い「眼鏡スーパー」や「ヤマキの花がつお」などクライアントがプロダクトプレイスメントをしてくれると予算メーターは復活し映画は続行する。

さてメインイベントは、鷹の爪と競演する「DCスーパーヒーローズ」で、バットマンやワンダーウーマン、スーパーマン、アクアマンたちが「ヴィラン」(悪者)のジョーカーやハーレイ・クイン、ペンギンたちと戦う。

チビの吉田くんとジャスティス・リーグの活躍も楽しいが、一番オカシイのは小池百合子がいつの間にか「ソーリ」となって国政を取り仕切っていることだ。
ワン・マン(失礼!ウーマン)でヴィランやシン・入社員が荒らしまわる国難に直面し、、適宜な指示を大臣どもにテキパキと命じる。

だが横文字は3字以上は覚えられず、化粧がお粗末でアイシャドウなど直される。文句ばかり付ける前頭部禿の官房長官(スガ?)があんまり煩いんでクビ!と一声で解任、スゴスゴと退場するハゲ。

やはり小池は国政にうって出て、安倍を破るのかね。


さて今日紹介するんは「パーティで女の子に話しかけるには」
原作のニール・ゲイマンが10代のあの頃会う女の子はエイリアンのようだったと言っているが、その発想で書いた小説「パーティで女の子に話しかけるには」の映画化。

監督がジョン・キャメロン・ミッチェルと聞いて見る前から興奮する。

役者だったミッチェルがカミングアウトして脚本を書き主演した「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」は01年の昔だが、今でも一つ一つのシーンが思い出される傑作だった。東ドイツに生まれた男の子ハンセル。
母と二人暮らしの彼の夢は、自由の国アメリカでロックスターになること。ある日、米兵から結婚を申し込まれた彼は、性転換手術を決意する。しかし、手術のミスで股間には“怒りの1インチ(アングリー・インチ)”が残ってしまう。名前をヘドウィグと変え、渡米するも米兵には結局捨てられてロックスターになる物語。

さて今日の映画の舞台は1977年、ロンドン郊外、クロイドン。

大好きなパンクロックだけを救いに生きる冴えない内気な高校生エン(アレックス・シャープ)は、ベッドから出るとTシャツとチェインを付け鏡の前で気合を入れ、自転車でアパートを出る。

途中、学校の仲間、デブのジョン(イーサン・ローレンス)とヴィック(エイブラハム・ルイス)と3人でつるんでライブハウスに繰り込む。

途中でこの界隈のパンクシーンを仕切りボス的存在のボディーシア(ニコール・キッドマン)がマネージャーを務めるディスコーズが今夜の主役だ。

ライブの後打ち上げパーティに潜り込もうとした3人は道を間違えかすかに聞こえる音楽を頼りに辿り着いたのが古い大きな邸宅だった。

そこは目当ての場所では無かったがドアを開けたステラ(ルース・ウィルソン)と言う美人女性がヴィックを気に入り中へ入れてくれる。

中では不思議な美しい男女が身体にピッタリの衣装を着けて踊っている。外国から来た旅行者らしいがシャイなエンは今夜も誰にも話しかけられず帰ろうとすると一際美しい少女ザン(エル・ファニング)と出会う。
一緒にパンクへ行っても良いと言われてエンは舞い上がる。

ザンは他の惑星から来た宇宙人で地球滞在時間は後48時間。初めてガールフレンドが出来たエンは一生懸命にパンクミュージックを説き、ザンの気を引く。

2人が舞台に上がりパンクでもロックでもない静かなブルースのデュエットが素晴らしい。ダコタの妹エルはこんなに歌も上手かったのだ。ミュージカル舞台の経験もあるアレックスも絶唱する。ザンは遠い惑星へと帰らなければならないのだが、大人たちが決めたルールに反発したふたりは、危険で大胆な逃避行に出ようとする。

エイリアンとの青春ラブロマンスでSF要素に満ちた展開だが、ミッチェルはロックほどにパンクを理解していない。単に素材として使っている感じだ。

地球人とエイリアンのロマンスなど今までにありふれているから映画としてはストーリーも予想がつく。
やはり「ヘドウィン~」のようなレベルの高い作品を期待するのは無理だった。

今年のカンヌのコンペティションに出したがカスリもしなかったようだ。

主演は「マレフィセント」や「20センチュリー・ウーマン」のエル・ファニング。ダコタの妹で19歳になる美少女。
相手役はトニー賞受賞のイギリス生まれの若手、アレックス・シャープ。

オスカー女優ニコール・キッドマンが、パンクロッカーたちを束ねるボス的存在の女性を演じる。もう少し出番があるかと思ったらあっさり消える。

12月1日より新宿ピカデリー他で公開される

「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」(Neruda)(アルゼンチン・仏・西映画): 著名な文学者の政治的逃亡を執拗に追うパラノイアの刑事との憎悪、同情、友情、愛情とアンビバレントな関係を描く

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日本人にとって地球の裏側でこんな言語道断な政治的驚異的事件がノーベル文学賞受賞者にやがてなる偉大な文学者ネルーダに降りかかっていたとは知る由も無い。

それだけに興味ある歴史的事実であるが、それをチリの世界的著名の監督が虚実を織り交ぜセンセーショナルにユーモラスで基調はサスペンス作品に仕上げているので必見の価値がある。

主人公、パブロ・ネルーダはこの映画で描かれた逃亡事件の四半世紀後の1971年に「ノーベル文学賞」を受賞するチリの国民的英雄の詩人で、官憲の手を逃れ国外逃亡を余儀なくされ、生涯の大半を逃げまわったパブロ・ネルーダの逃亡中のある1年に焦点をあてている。

第2次世界大戦が終結した途端、世界は米ソ対立の冷戦の影響を大きく受けるようになる。
そして1948年、マッカーシズム(赤狩り)が吹き始まるアメリカに追従するチリでは共産主義が迫害されていた。

上院議員で共産党員のパブロ・ネルーダ(ルイス・ニェッコ)は共産党が非合法の扱いを受けていると、上院議会で政府を激しく非難する。
ネルーダは芸術や酒場を愛するエピキュリアン(享楽主義者)で、貧しい人々に関心を抱く博愛主義者であり国民的な人気者だった。

ネルーダを弾劾したガブリエル・G・ビデラ大統領(アルフレド・カストロ)は日頃公私に亘り面倒をみているチリ警察警部、オスカル・ペルショノー(ガエル・ガルシア・ベルナル)に直接ネルーダの逮捕を命じる。

南米一の美男子で人気スター、ベルナルはこの映画ではネルーダよりもスポットが当たっており、ナレーションを勤める。
敏腕刑事特有の執拗と言うか偏執狂的にネルーダを追いつめ、ネルーダは同士の手を借り逃げ回る日々がスタートする。
ペルショーネは警察署長が娼婦に産ませた私生児と言うバックグラウンドも話を面白くする。

ベルーでは妻、デリア・デル・カルデス(メルセデス・モラーン)に何かと近づくペルショーネと官憲の手を逃れて最初は海外へ高飛びしようとするが失敗し暫くは国内に隠れる。

物語りのツボであるペルショノーとネルーダの猫と鼠の追いかけっこにフィクションが加わり、映画は歴史的事実を更に膨らませて面白くなる。

隠れていても夜になるとネルーダは酒場に繰り出し、通報をうけたペルショノーが駆けつける頃には姿を消している。
敵味方と別れながらも二人の間にアンビバレントな感情と友情が芽生えて来るのをパブロ・ラライン監督は描きたかったのだろう。

また、ネルーダはその弾圧された逃亡生活からインスピレーションを受け、彼の代表作となる詩集「大いなる歌」を生み出すこととなるから楽しい。

その頃ヨーロッパでも迫害を受けているネルーダの噂は伝わり、パブロ・ピカソ(エミリオ・グティエレス)率いるアーティスト集団がネルーダの自由解放を訴えている。

やっと国外脱出が可能になり船で南下するがマプチュ族の地主に助けられるエピソードもエキサイティングだ。
雪の降り積もる山奥を馬に乗り手下を引き連れて執拗にネルーダを追うペルショーネの鬼神のような姿。だがマプチュ族の地はネルーダのホームグラウンドになっており、警部に悲劇が訪れる。


主人公、ネルーダ役を、日本では知られていないがチリのTV舞台で活躍する人気コメディアンのルイス・ニェッコが演じる。サンディエゴ出身の55歳、小太りの大きな目元に愛嬌のある親しみやすい風貌はネルーダのキャラクターを表している。

南米一の美男子と僕が推奨する39歳のメキシコ人俳優、ガエル・ガルシア・ベルナル。「アモーレス・ペロス」「天国の口、終りの楽園。」「モーターサイクル・ダイアリーズ」「バベル」「ノー・エスケープ 自由への国境」などの作品に主演して人気も高い。

ソフトの中折れ防止に口髭、三つ揃いのスーツ姿のスマートな刑事役ペルショーネは生き生きと演じる。大統領の命でネルーダを追うも、次第に享楽的なネルーダに魅了されてしまうキャラクターを理解させる演技力がある。

ネルーダの魅力的な妻、デリア役のメルセデス・モラーンは64歳のアルゼンチンの女優で二度の結婚で3人の娘がいる。アルゼンチンTVで大活躍だが映画でも「ローマ法王になる日まで」などに顔を出している。

演出は41歳のチリ人監督、パブロ・ラライン。父親は独立民主連合選出の上院議員のエルナン・ラライン、母親はセバスティアン・ピニェラ政権で住宅・都市大臣を務めたマグダレーナ・マッテという政治家一家にうまれているから得意のジャンルだ。
ガエル・ガルシア・ベルナルを主演にアウグスト・ピノチェト独裁政権の是非を問う国民投票を描く「NO」(12)で注目を浴び、JFK未亡人、ジャックリーヌ・ケネディの伝記映画「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」など政治的映画が多いのは彼の出自にも関係がある。

南米映画は滅多に日本で紹介されないが、久しぶりの南米オールスター&キャストで日本人が知らなかった著名な文学者の政治的逃亡と執拗に追うパラノイアの刑事との憎悪、同情、友情、愛情とアンビバレントなリレイションの進歩と展開そして結末は予想以上の見応えある作品になっている。

11月1日より新宿シネマカリテ他で公開される

「リトル・デビル」(Little Evil)(アメリカ映画):理想の女性サムと結婚したゲアリーは連れ子ルーカスが悪魔の子だと気付くのが遅かった

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「Hitman’s Bodyguard」を見たくてNetflixのメンバーになって作品を探しているが、既存の映画は殆ど見ている。ただNetflixオリジナル作品と言うリストが2ダースばかりあり、この映画を選んでみた。

不動産会社のサラリーマン、ゲアリー(アダム・スコット)は美人のサム=サマンサ(エヴァンジェリン・リリー)と結婚出来て毎日が天にも昇る気持ち。
サムこそは理想の女性、だから一旦サムがOKしてくれて殆ど何も知らない内に一緒になった。

サムは期待通り素晴らしいワイフだ、が連れ子のもうじき6歳の誕生日を迎えるルーカス(オウエン・アトラス)はゲアリーと目を合わさず口も利かない。
毎日学校への送迎はゲアリーの仕事だが車の中でも黙りこくって目を合わすと敵を見るような目つきだ。

ルーカスはアンチクライスト(反キリスト)だ悪魔の子だと言う噂がゲアリーの耳に入り始める。ルーカスとサムの結婚式は途中で大嵐が吹き荒れ滅茶苦茶になるが、式を撮影したディレクターがゲアリーを呼んで警告する。

ルーカスこそが嵐を呼んで母親が詰らぬ男と結ばれるのを阻止しようとしたのだと。
その証拠に高台に立つルーカスは大嵐の中でも髪の毛一本なびいていない。彼の後ろの納屋は吹き飛ばされているのに。

サムの最初の夫は交通事故で死に、二番目は庭で心臓麻痺、3番目は屋根からおちて死んだ。何れも短い結婚生活だったと。

ある日学校から呼び出される。校長と精神科医が並んでゲアリーを迎え、入口横の椅子にはルーカスが黙って座っている。

授業中に若い男の先生がルーカスに何か注意をした。ルーカスは一言「地獄に落ちろ」(Go to Hell)。すると先生は窓をよじ登り3階から飛び降りた。舌は尖塔の鉄冊で先生は胴体を鉄冊の尖塔で突き通されていた。

ルーカスが直接手をかけた訳では無いが悪魔の呪文で殺したのではないかと校長は疑う。

ルーカスを可愛がるサムはそんな精神を病んだ先生を雇う校長が悪いのであってルーカスはむしろ被害者だと取り合わない。
6月6日に6歳の誕生日。
庭のパーティでマジックを見せるクラウン(道化師)に呪詛(らしきもの)で火を付けるルーカス。

ゲアリーも悪魔の子と断定しなければならない事件が勃発する。
サムに緊急電話。
「窒息しそうだ、早く掘り起こしてくれ!」
庭の木の下に箱に詰められたゲアリーが埋められていた。
ブランコに静かに乗るルーカスに「ちょっと悪戯が過ぎただけなのね。パパに謝りなさい」で済ませるサム。

しかし、ゲアリーは心を鬼にしてルーカスの実の父は誰だと問い詰める。
渋々白状するサム。若くて処女の時カルト宗教に誘い込まれ何やらハーブの臭いのする飲み物で意識を失う。万座の中で犯されたようでその場から逃げ出すがそのカルト集団の首領(クランシー・ブラウン)が実父ではないかと。

ルーカスをやらねば自分は殺される。ゲアリーは会社の同僚で親友のアル(ブリジェット・エヴェレット)と対策を練る。
デブのアルは女か男か分からないが、ゲアリーはアルが居なければ確実にルーカスにやられている。

ここまで来れば監督で脚本も書いているエリ・クレイグの目論見は分かる。「オーメン」(76)で、頭に「666」のアザを持つ悪魔の子ダミアンを思い起こさせる。風貌も目つきもそっくりだ。黙示録で悪魔(動物)の数字とされる666がキーになる。

ルーカスは6月6日に6歳となる。カルト集団は6歳になった日の6時にルーカスをカルトの短剣で刺しその血で祝おうと大儀式を計画しており、学校からルーカスが何者かに拉致されたと急報が入る。

悪魔の子が実際の子のように思われアルとその仲間が巨大車輪のモンスタートラックでカルト集団儀式に殴り込みをかけ首領の司祭を地獄へ落としルーカスを救うシーンは緊張する。
そこで見せる地獄は「ポルターガイスト」の図柄だ。

このようにクレイグ監督は「オーメン」を土台に少しずつアチコチのホラー映画から剽窃しながらパロディ風のコミック作品に仕上げている。

前半のアンチクライストのルーカスが後半は良い子になってゲアリーを「パパ」と呼ぶコペルニクス展開のチープさには呆れるばかりだが。。。

B級以下のネット映画として我慢しなければならないだろう。いい暇潰しの作品で目くじら立てる必要はない。

主演のサマンサ(サム)を演じるエヴァンジェリン・リリーはカナダ生まれの38歳、モデルでCMで活躍し「ホビット 竜に奪われた王国」「ホビット 決戦のゆくえ」「アントマン」などの準主役を経験しネット映画で主役の座を掴む。

相手役のサマンサの夫で悪魔の子、ルーカスの義父役、ゲアリーのアダム・スコットは人気スターではないが、誰でも顔は知っている。カリフォルニア生まれの44歳で、シリアスな役柄からコミカルな役柄まで幅広い演技を披露して現在までの出演作品の数は映画とテレビを合わせると50本以上にも及ぶ。近年ではコメディ映画の出演が目立ち、ウィル・フェレルやセス・ローゲンなどの人気コメディ俳優らと共演している。
「オ-メン」の子ども似のルーカスは子役のオーウェン・アトラスが演じる。

前半の「地獄へ落ちろ!」(Go to Hell!)と叫んで呪いをかける子どもと後半義父ゲアリーを「パパ」と呼ぶようになるルーカスがガラリと顔付から態度を変える演技はみものだ。

児童相談処の指導員で古稀(70歳)を迎えたサリー・フィールドが顔を見せるのも懐かしい。1979年の「ノーマ・レイ」、1984年のプレイス・イン・ザ・ハート」で2度アカデミー主演女優賞を受賞したが今では3年前の「アメイジング・スパイダーマン2」以来の顔見世。

Netflixにて9月よりVODで公開中

「シンクロナイズド・モンスター」(Colossal)(カナダ映画):飲んだくれのダメ女、グロリアは韓国・ソウルに毎晩出現する怪獣の動きが自分の動作と同じようにシンクロナイズしているのに気付く

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昨日(2日)は素っ頓狂な洋画(シンクロナイズド・モンスター)と邦画(斉木楠雄の災難)を見て頭を抱えている。

どう見ても納得性(アカウンタビリティ)が得られない。つまり訳分んない。
映画としての造りはRom-Com(ロマンティック・コメディ)の範疇におちるが、理解を超える展開に、
「ええ、、どうしてこうなるの?」と自問して自答できないシーンが最後まで続く。

先ず紹介するのは「シンクロナイズド・モンスター」から。
タイトル前のプロローグも何のことか分からない。
どうやら韓国ソウルの郊外らしい。

手に韓国旗を掲げたジオラマを持って学校へ向かう白人の男女2人の小学生。
突風が吹いて女の子のジオラマが飛び高い木の枝に引っ掛る。
男の子が木によじ登りジオラマを大切に抱えて地面に降ろす。
優しい子だね、と思った瞬間、突如少年はジオラマを足で乱暴に踏み潰す。

何で舞台が韓国なんだ?
何で韓国旗を踏みにじる。
(これは慰安婦の少女像より重大な名誉棄損だぞ!)
さっぱり意味不明の画面が終わる。

スーパーインポーズ,「それから25年」

ストーリーを追うとプロローグで滅茶苦茶に踏み潰されたジオラマが主人公、グロリア(アン・ハサウェイ)のトラウマになったと言うことが秘められている。

そして成人し(三十路は過ぎたか)憧れのNYに住むが、やっと手にした編集者をクビになり、ボーイフレンドのティム(ダン・スティーブンソン)と同居しながら職探しをするでもなく、毎晩大酒を飲んで朝帰り。

ティムを演じる、ダン・スティーブンソンはケンブリッジ大学卒のシェイクスピア舞台で経験を積み映画界に入って来て「美女と野獣」などでヒットをとばした、35歳のジェントルマン俳優。

職も無く探す気もなく大酒を飲んで朝帰りじゃ、出かける寸前のティムはセックスも出来ず怒り狂ってグロリアの持ち物を纏めて放り出し家の鍵も没収する。

家も仕事も彼氏も失ったグロリアが向かったのは、生まれ故郷の小さな田舎町。 両親も亡くなり荒れ果てた実家に転がり込む。

そこでばったり再会した幼馴染のオスカー(ジェイソン・サダイキス)。グロリア同様、両親を亡くして家業の古いバーを引き継ぎオーナーとして仲間(ティム・ブレイク・ネウソンやオースティン・ストーウェル)を呼び寄せ毎晩酒盛り。

そのオスカーに誘われ、グロリアは彼のバーで働くことになる。 プライドはかなぐり捨てウェイトレスだが糊口は凌げる。

グロリアが新生活と言っても朝帰り二日酔いのある日の午後、ソファーからTVを見ると衝撃のニュースが世界を駆け巡っている。

地球の裏側、韓国のソウルで突如巨大な怪獣が現れたというのだ。
テレビに映し出された衝撃映像に皆が騒然とする中、ただひとりグロリアはある異変に気付く。怪獣が現れるのは毎晩、8時05分だ。裏側のアメリカの田舎町では朝の8時05分。グロリアが酔っぱらって朝帰りの時間だ.
それに、
「この怪獣、私と全く同じ動きをする…?!」
舞い上がったグロリアは、怪獣をアメリカからTVを通してリモートコントロールで操るのでソウル市街はさらなる混乱へと陥れるが、そこに「新たなる存在」が立ちはだかる。そうオスカーは巨大ロボットを扱えるのだ。

オスカーを演じる、カナダ生まれの41歳、ジェイソン・サダイキスは喜劇役者として経験が長い。「なんちゃって家族」や「モンスター上司」などの映画で笑わせてくれる。

「プラダを着た悪魔」で世界的注目を浴びオスカーまで手にした大スターの仲間入りしたアン・ハサウェイがなんでこんな素っ頓狂な映画にダメ女役で主演し、しかも製作総指揮なんて金も時間もかかる縁の下の力持ちをやっているのかも大きな謎だ。

スペイン生まれのナチョ・ビガロンドの監督・脚本作品。これで2作目だが、このクレイジーなスペイン人の頭の中を覗いて見たい。

11月3日より新宿バルト9他で公開される

「プラハのモーツアルト 誘惑のマスカレード」(Interlude in Plague)(英・チェコ映画):プラハで初演「ドン・ジョヴァンニ」の歴史的事実から創作。歌姫と男爵とモーツアルトの三角関係。

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日本の週末、土日の興行成績で首位は「亜人」。動員21万人、興収2億7200万円。まあ地味な成績だね。「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督が実写映画化。主演は佐藤健、共演に綾野剛、玉山鉄二。

2位は犬好きで犬の映画を多く撮ってきたラッセ・ハルストレム監督が50年で3回も生まれ変わった犬と子供から初老の大人になった人間との絆を描く「僕のワンダフル・ライフ」は動員14万人、興収1億6300万円をあげてまずまずのスタート。
先週1位だった「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は動員11万4千人、興収1億3千万で3位に留まった。

残念なのは本年度アカデミー賞でノミネートされ話題となった「ドリーム」は動員4万3千人、興収5100万円7位に潜り込むのが精一杯。1960年代初頭の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」で人種差別と闘いながら黒人の女性数学者たちが、陰で多大な貢献を成し遂げた史実を描いている。


さて今日の映画はモーツアルト。5歳で作曲を始めたと言う早熟で35歳で夭折した偉大なる音楽家・ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。彼のオペラは「魔笛」や「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」など映画化された作品は多いが、モーツアルト自身を描いた作品はミロス・フォアマン監督のアカデミー賞8部門を受賞した映画「アマデウス」(84)にとどめをさし、恐れをなしてこの30年間敢えて挑戦する映画は出なかった。

F・マーリー・エイブラハム演じる宮廷作曲家サリエリのモーツアルトへの嫉妬と苛め、天真爛漫のアマデウス。粗野で絶えずケラケラ笑い女好きな天才モーツアルトのトム・ハルスの名演技も印象に残っている(でもトムは今や64歳ただのデブ老人の醜態はあのアマデウスの面影も無い)


 1787年にプラハで初演された「ドン・ジョヴァンニ」の時代と背景は事実だが、猟色家ドン・ジョヴァンニを主人公にしたオペラ創作の背景で繰り広げられるフィクションを創り上げている。
華麗なる恋と陰謀、具体的に言うと、オペラの歌姫とその許婚の貴族そしてモーツアルトの三角関係が招く悲劇とややオーバーだ。

しかしストーリー自体は単純で観客が先を読めるが、物語そっちのけで「フィガロの結婚」と「ドン・ジョヴァンニ」をたっぷり聞かせてくれる。唯一ハラハラさせられるのは「ドン~」の作曲がギリギリ本番までできず、インクも乾いてない楽譜をリハーサル無しで演奏に入るところくらいだ。

 1787年プラハはモーツアルト(アナイリン・バーナード)のオペラ「フィガロの結婚」上演に湧いていた。上流階級の名士たちは、モーツァルトをプラハに招き新作を作曲させようと決める。その頃、モーツァルトは三男を病で亡くし失意のどん底にあり、陰鬱な記憶に満ちたウィーンを逃れるために、妻と子供たちをウィーンに残し単独でプラハにやってきた。

ところが主役ケリビーノ役の歌手がドイツへ帰国し興行のスポンサーのサロカ男爵(ジェームス・ビュアフォイ)は代役にスザンナ・ルブタック(モーフィッド・クラーク)を推す。モーツアルトは会ってみると歌声も素晴らしくその上凄い美人だ。
オペラ興行スポンサーのサロカ男爵は自分の婚約者だと紹介する。

その美貌と才能に大いに魅了される。
一方、スザンナもモーツァルトが妻帯者と知りながら、その天才ぶりに引き付けられずにはいられなかった。

急速にその距離を縮める二人。しかし、オペラのパトロンであり、猟色家との噂のあるサロカ男爵もまた、婚約者をたてにスザンナの肉体を狙っていた。そして、三人のトライアングルは、愛と嫉妬と陰謀の渦に引き込まれてゆく。

アカデミー賞8部門を受賞した『アマデウス』に続き、ついに誕生した“本格的モーツァルト映画”最新作『プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード』。天才音楽家を巡る主演のアナイリン・バーナードは「ダンケルク」でちょい役で馴染みが無いが白面の美青年に扮するモーツァルトは印象深く際立っている。

というのも周りの役者が酷いからだ。
サロカ男爵に扮するジェームス・ビュアフォイも下手だし、スザンナ役のモーフィッド・クラークも影がある。

男爵に殺されたスザンナの仇をとると息巻く父親役のエイドリアン・エドモンドソンに至っては素人同然だ。

イギリスの俳優陣で固めたキャストだが人が居ないのか、ギャラをケチったか今一つ生彩がない俳優陣だ。

肝心のモーツアルトの楽曲は地元プラハ市立フィルハーモニー管弦楽団でこれまでに「タイタニック」や「ロード・オブ・リング」など大作名作の音楽を担当した一流の楽団でやはい良い音を提供している。
ただ歌の吹き替えが誰かクレジットには出ていない。役者が歌っていないのは確かだ。

クラシックのジュークボックスのような映画だからスタッフやキャストがヘボでも楽曲が素晴らしければそれで満足。

監督のジョン・スティーブンソンは特殊効果とかアニメやセカンドユニットの監督を経て長編劇映画はこれで2作目。未だ38歳の若手に任せられる程偉大な作曲家のエピソード映画の内容は軽くない。

12月2日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

「氷菓」(日本映画):好奇心一杯お嬢さん、えるの依頼する、神山高校の33年に亘る謎を「省エネ探偵」折木奉太郎は文集「氷菓」を読み、姉の手紙を分析し、見事な回答を出す。

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氷菓ってアイスクリームのことじゃない?見る前に僕は自問自問自答していた。その通りなんだがそれで総ての「解」では無いところにこの映画のミステリーがある。

 冒頭、神山高校に入学したばかりの主人公、折木奉太郎(山崎賢人)の許に姉、供恵から1通の手紙が届く。「古典部に入りなさい」と命令のような懇願のような手紙が届く。姉は今インドのバラナシの町にいる。

供恵は詳しいことは言わないがバラナシという町の背景が面白い。
バラナシはガンジス河のほとりの、ヒンドゥー教(シヴァ派)最大の聖地で、毎年100万ともいう巡礼が、この町を目指してインド中、いや世界中からやってくる。河沿いには80を越える、ガートと呼ばれる階段状の沐浴場があって、巡礼者は朝な夕なにガンガーに身を浸し、罪を清める。(身を清め洗濯もし食べ物を洗った上に大小便を排泄もする)

映画に関して大切なのはダーシャシュワメート・ガートという最大のガートの近くに、マニカルニカー・ガートと呼ばれる火葬場がある。ここで焼かれるためにインド中、世界中から遺体が集まり、24時間365日火葬台から火が消えることはない。死者だけでなく、不治の病に冒された死を待つだけの病人や、死期を感じた乞食が、最後の力を振り絞ってこの町を目指してやってくる。

ここで焼かれ灰になって、母なるガンガーに抱かれてヒマラヤに帰るのがヒンドゥー教徒の夢なのだ。シヴァ神の住まうという、チベットの聖山カイラスへ。ここは死者が集まる町でもあり、ここで焼かれれば「輪廻」が断ち切れると言う。つまり何かに生まれ変わると言うことが無くなるのだ。これが目的の巡礼者が大多数なのだ。


ここから本来の映画のストーリーが始まる。
IQが高いが姉には従順な折木奉太郎は「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーとする「省エネ主義」だが、姉の手紙の命令で部員ゼロ&廃部寸前の「古典部」に入部する。

その部に好奇心一杯のお嬢さん、千反田える(広瀬アリス)が何やら「一身上の都合」で入部してきた
お嬢さんは一度好奇心を刺激されると、「わたし、気になります!」と大きな目を輝かせ、誰にも止められない。

えるにひっぱられ、奉太郎の潜在的な推理力が開花し、毎週不自然に駆り出される「学園史」など学園に潜む謎を解こうとする。

中学からの友達、自称データベースの福部里志(岡山天音)や里志に片思いで漫画の上手い伊原摩耶花(小島藤子)も加わって4人となった神山高校古典部員たちは、事件の真相に迫り次々と解き明かしていく。

そんなある日、奉太郎はえるから、33年前に起きたある事件の謎を解明してほしいと依頼される。
関谷純(本郷奏太)は神山高校「古典部」の大先輩で文集「氷果」の名付け親だ。
そして関谷純はえるの優しい叔父だった。だが33年前の学園騒動で火災が起き、逃げ遅れた女生徒を火の中から救った英雄にも関わらず校長は騒動の責任者として関谷純をスケープゴートにして退学させられる。

10年前叔父関谷純は5歳のえるを残して失踪する。えるは何を言われたかその内容を思い出させて欲しいと。
言われた本人しか知らないことを思い出させろとは無理難題じゃないの?
それならと状況証拠を積み上げるしかない。

先ず火の中から救い出された少女、既に50歳近い女性を探し出す。ご都合主義ですな、少女は糸魚川養子と言う名で神山高校の教師をしている。

昔「古典部」に居たと言うから廃部同然の部に援助の手を差し伸べるか顧問教師にでもなったいれば良かった。

関谷純に助けて貰ったのにも関わらず騒動の責任者で関谷が退学させられた時も抗議の声一つ挙げていない。

いずれにしても糸魚川先生と姉の手紙、そして省エネ探偵の推理力で見事事件の全貌は明らかになり、えるが死んだと思っている関谷純が生きていて何処にいるかまで解明する。

原作は、「折れた竜骨」で第64回日本推理作家協会賞、「満願」で第27回山本周五郎賞を受賞、「王とサーカス」「満願」では「このミステリーがすごい!」で1位、人気ミステリー作家・米澤穂信の同名の小説「氷菓」の映画化。

古典部員4人のキャラクターが多彩で興味を引く。
山崎賢人扮する折木奉太郎の「省エネ主義」の天才探偵はクールでカッコ良い。
広瀬アリス演じるお嬢様のえるは、謎解きが大好物の「依頼人」。折木とえるとの2人でやっててくれよ、と言いたくなるね。
探偵には必須の「データベース」と「情報収取」は岡山天音演じる福部里志もおっちょこちょいで上手い。
小島藤子は勤勉で自他共に対して厳しい漫画好きな伊原摩耶花は探偵事務所の所長的役割。

その他、関谷純を本郷奏多が好演。斉藤由貴、眞島秀和らが脇を固める。

脚本と監督は、沖縄出身の41歳安里麻里。「独立少女紅連隊」でデビューして切れのいい演出が高い評価を得る。13年の経験を持つ中堅派。「リアル鬼ごっこ」シリーズなどの幻想的な手法は高く評価されている。「バイロケーション」「劇場版 零~ゼロ~」などの作品を手がけている。
高校生のロマンスを交えたミステリーと少し変わったジャンルだが上手く纏めて見応えのある作品に仕上げている。

11月3日より新宿バルト9他で公開される。

「ゴースト・ブライド」(The Bride)(ロシア映画):19世紀の帝政ロシア時代から伝えられた死者をよみがえらせる儀式が、現代に復活する

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 昨夜(5日)は洋服のアオキの青木会長の招待でサントリー・ホールでの大友直人指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートに出かけた。

高校同級生でNPO「子どもに笑顔」の理事をお願いしている田島知郎医師と青木会長は故郷の川中島で親友の誼の繋がりだ。

しかし大したものだ。長野県松本市で1973年にスタ-トした「アオキ・ハーモニーコンサート」は東京ばかりでなく長野市、金沢市、富山市、京都市、横浜市など全国各地で開催している。

ビジネス以外に地域の人々に喜びを分かち合いたいという「公共性の追求」と言うアオキの経営理念に基ずくコンサートなのだと言う。

これで20回目を迎える「アオキ・ハーモニーコンサート」は9月1日にリニューアルオープンしたサントリー・ホールの大ホール。2006座席も満杯だ。全員招待の貸し切りで幾らかかるか計算もしたくなる。

会場入口で息子さんの青木彰宏社長と並んで挨拶している青木擴憲会長に招待のお礼を言って会場に入る。前から16列目真ん中の良い席だ。

久しぶりのサントリー・ホール、何十年振りになるかクラシックコンサート。
生でフルの交響楽団の演奏が胸にズンと来る衝撃波だった。
(壁に貼ってあるの「コンサートを聞くときの注意」が愉快。スマホや音のでる時計はオフにしてと言うのは常識だが「拍手は指揮者がタクトを降ろしてから」には笑ってしまう。日本人ってセッカチだもんね)
 
いつものように最初はホール名物の巨大パイプオルガンの演奏でJ・S・バッハのフーガト短調。耳慣れた曲だ。
そこから大友直人とピアニストの伊藤恵が登壇してフィルハーモニー交響楽団をバックにシューマンの「ピアノ協奏曲op.54」の演奏。

休憩を挟んでエクトル・ベルリオーズの「幻想交響曲op.14」。馴染みの無い曲だが打楽器が派手で地獄の門が開いているような曲だ。聞くとベルリオーズが失恋し絶望し薬物自殺を図るが死に切れず様々な幻影を見る。断頭台で死刑になり魔女の夜会で邪悪な姿になった彼女と再会する。

すっかり打ちのめされた観客がアンコールビゼーの「アルルの女」の短いが陽気な曲で元気を取り戻して帰路につく。

しかしどんな種類のコンサートでもヴォーカルは欲しい。
「トゥーランドット」や「フィガロの結婚」のような馴染んだ曲をやってくれれば嬉しいんだが、とアンケートにリクェストする。

外へ出ると号外号外と鈴の音。「ノーベル文学賞受賞」の見出しを見て後ろから来たオッサンが「村上春樹、ついにやったか!」と大声をあげて感激していた。


格安の制作費で必ずソコソコヒットするのはホラー映画。この作品はロシア製で、ロシア国内で大ヒットを記録したのゴーストストーリーを世界で見て貰おうというもの。

タイトル前のプロローグはモノクロで、19世紀半ばからロシア帝国で伝えられてきた死者を復活させる儀式を紹介する。男が写真を撮っている。美人の死者は写真に撮れば銀板に魂が残ると言う。死者と一緒に若い処女を生き埋めにすれば死者は生き返ると言う。大事なのは写真の銀版でこれを保存しておけば死者はいつでも甦らすことが出来ると言う

タイトルが出て画面はカラーに代わり時代は現代になる。

•恋人のヴァンヤ(ヴィアチェスラブ・チェブチェンコ)と婚約した女子大生のナスチャ(ヴィクトリア・アガラコヴァ)は、結婚式を挙げるためにヴァンヤの田舎の実家へと向かう。

ヴァンヤの家は、不思議な空気と謎めいた雰囲気に包まれている。あの帝政ロシア時代の邸宅だからだ。
到着してから、ナスチャは数々の幻想に襲われる。

しかし、ナスチャが見た、死者をよみがえらせる惨劇の儀式の幻想は、単なる幻ではなかった。
彼女はヴァンヤの曽祖母であるオルガを現世によみがえらせるための生贄として、この家に迎えられたことに気づいてしまう。

19世紀の帝政ロシア時代から伝えられた死者をよみがえらせる儀式が、現在に復活する恐怖を描いたロシア製ホラー。
恋人のヴァンヤと婚約した女子大生のナスチャは、結婚式を挙げるためにヴァンヤの実家へと向かうが、不思議な空気と謎めいた雰囲気に包まれたヴァンヤの家に到着してから、ナスチャは数々の幻想に襲われる。

しかし、ナスチャが見た、死者をよみがえらせる惨劇の儀式の幻想は、単なる幻ではなかった。
彼女はヴァンヤの曽祖母であるオルガを現世によみがえらせるための生贄として、この家に迎えられたことに気づく。

ホラーと言ってもそう怖くはない、し話の先が読めてしまう。何で若者ヴァンヤが父親に言われたからと愛する恋人ナスチャを犠牲に捧げようとするのか分からない。過去の家族の呪詛を断ち切るには保存してある写真銀板を破壊すれば済むことだ。

と理屈の上では言えるがロシア帝政時代の死者を復活させる儀式で、生贄になってしまった現代の花嫁が味わう恐怖も悪く無いかなと思い始める。
モノクロ・トーンで古典的サスペンスとホラーもたまには良いかな。

監督は「ミラーズ 呪怨鏡」を手がけたスビヤトスラフ・ポドゲイエフスキー。
デビュー作で呪いの鏡の恐怖を描いた「ミラーズ 呪怨鏡」で注目されたスヴィヤトスラフ・ポドゲイエフスキー。

11月25日よりシネマート新宿他で公開される

「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」(Rodin)(仏映画):ロダン初めての自伝映画。40歳を過ぎ国から認められ「地獄門」を完成、バルザック像の制作を始めた所へ19歳のカミーユが弟子入り

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 昨日(6日)電通の違法残業事件で、東京簡裁は、労働基準法違反罪に問われた法人としての同社に求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した。

菊地努裁判官は違法な長時間労働が常態化していたとして、「刑事責任は重い」と結論づけた。電通は控訴せずに判決は確定する。

裁判では電通山本敏博社長が法廷に出廷。社会的批判も浴び、労務管理の甘さが経営リスクにつながることが示された。
 判決は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)の過労自殺に触れ、「尊い命が奪われる結果が生じたことは看過できない」と指摘。長時間労働が常態化していたのに、「労働者の増員や業務量の削減などの抜本的対策を講じず、労働時間の削減を現場任せにしていた」と批判した。

 一方、午後10時以降の業務を原則禁止するなどの対策を評価。判決言い渡し後には「計画が達成されるか社会全体が注視している。日本を代表する企業として立場に相応した社会的役割を果たしてほしい」と説諭した。

 事件により電通は社長が2度にわたって出廷したほか、一部官公庁の入札参加資格を失うなどのペナルティーを受けた。
国や自治体が一律に契約を結ばないなど業績への影響も大きい。
一番のダメージは電通が一手で引き受けている東京オリンピック組織委員会からの発注だ。

電通の株価は判決をうけて値下がりが続いているが、往時は6650円の高値をつけたものが2000円もダウンした。(最近は持ち直し気味だったのだが)

電通の山本敏博社長は閉廷後に記者会見し「判決を厳粛に受け止めている」と謝罪した。

 判決によると、電通本社の部長3人(当時)は2015年10~12月、高橋さんら社員4人に対し、1カ月の残業時間の上限を最大で約19時間超えて働かせたとされる。

電通の判決が出たことを受け、過労自殺した高橋まつりさん(当時:24)の母、幸美さん(54)は6日、厚生労働省内で記者会見し、罰則強化の法改正を求めるとともに、NHK女性記者の過労死にも触れ「企業の『二度と起こさない』という言葉が空虚に思えるほど、過労死は繰り返されている」

ここでいくつかの問題がある。

1)高橋まつりさんは(僕が縷々説明しているように)過労死では無く恋人から別れを切り出された「失恋」による衝動的な飛び降り自殺だ。(週刊新潮も2度に亘りクリスマスイブの訣別を記事にしている)

2)NHKの首都圏放送センターに勤務していた佐戸未和記者(当時:31)が2013年7月、長時間労働で過労死した。これはハッキリと証明が出来る。
残業は月200時間を超えていて就寝中にうっ血性心不全で亡くなっている。明らかに過労死だ。高橋まつりさんの「19時間の残業時間」と言う佐戸さんの1/10にも満たない残業が過労をもたらすか?

3)NHKはこの過労死を4年間も公表せず、高橋まつりさんの自殺を勝手に過労死と断定し、電通を「ブラック企業」と批判するキャンペーンを大々的に展開した。(英語ではLook who’s talkingと言う)

4)高橋幸美さんは5億円を超す慰謝料を電通から受け取り、表立って電通批判はしないことになっていると思うのは常識だ。
(しかし昨日の記者会見も堂々と電通批判を機銃のように浴びせている)。
佐戸さん両親はNHKから電通の1/20の和解金しか貰っていない。


これは楽しめる映画だ。今までオーギュスト・ロダンの生涯をテーマにした作品はあっただろうか?
パートナーの女性彫刻家カミーユ・クローデルの映画は例えば、「カミーユ・クローデル」(1988年)はイザベル・アジャーニが扮するフランス映画でジェラール・ドパルデューがロダンを演じた。「カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇」(2013)年のフランス映画。クローデルの後半生をジュリエット・ビノシュが演じている。

それもさることながら男性観客は冒頭からふんだんに彩る美女のヌードが修正なしで楽しめることだ。ロダンの要求するポーズはアクロバティックで官能的、さすがに正面を向いての大股開きでは割れ目チャンはぼかしてあるが、そんな程度で美女のヘアヌードが次から次へと現れるこんな嬉しい映画は初めてだ。

おまけに映画の大団円は箱根彫刻の森に移り、「熊が後ろ足で立った」ようなバルザックの巨像をピクニック気分の日本人家族が愛でるシーンで終わる。

この作品は「地獄の門」「考える人」などの作品で知られ、「近代彫刻の父」と称される19世紀フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの没後100年を記念して製作された伝記映画。

1880年、パリ。40歳の彫刻家オーギュスト・ロダン(ヴァンサン・ランドン)はようやく国から作品制作を依頼されるようになり、後に代表作となる「地獄の門」を生み出していく。

その頃、内妻ローズ(セヴリーヌ・カネル)と暮らしていたロダンだったが、42歳の時、弟子入りを願う19歳の女性カミーユ・クローデル(イジア・イジュラン)が現れ、彼女の才能に魅せられたロダンはクローデルを助手にする。

やがて愛人関係になっていく。この辺りの経緯は「カミーユ・クローデル」(188年)はイザベル・アジャーニが扮するクローデルがジェラール・ドパルデュー演じるがロダンに詳しく描かれている。

セクシーでショックなシーンはロダンが全裸のモデルといちゃついているところにクローデルがにじり寄り3Pが始まるのにはびっくりする。
「貴方のことを想って昨夜は眠れず指でしちゃった」なんてセリフが飛び出す。

それでいて好色に溺れる訳でもないロダン。「地獄の門」はしっかり完成し、その後に「バルザック像」に取り組むのだ。

芸術家、ロダンの自伝映画なのかロダンがアートを制作する作品なのかで同じ外面でも内容は大いに異なる。

この映画は国から依頼されたバルザック像の制作に焦点を当てている。
制作途中をチェックに来た政府筋の官僚からもう少し「痩せさせて」欲しいと注文がつく。巨大な熊が後ろ足でたっているようだと。
だがバルザックはロダンの彫刻通り巨体だった。そこでロダンは大きな外套を着せると言う素晴らしいアイディアが出て来る。映画のハイライトだ。

中盤に印象的な場面がある。批評家ミルボーの仲介でロダン、モネ、セザンヌが顔を合わせたとき、サロンでの落選が続き情緒不安定なセザンヌにロダンが忠告する。
「人の意見など聞かずつくり続けろ。美は作業の中に宿るものだ」。

主人公のオーギュスト・ロダンを演じるのは「ティエリー・トグルドーの憂鬱」(15)でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞したヴァンサン・ランドン。覆面をしたように頭髪と顔半分を覆う髭の間から鋭い目が光る。

カミーユ・クローデルをフランスで歌手としても活躍しているゴージャスなイジア・イジュランが演じた。日本では顔馴染みでは無いがアジャーニやビノシュに引けを取らない体当たり演技を披露する。

監督・脚本は「ポネット」(96)、「ラ・ピラート」(84)などのベテラン、ジャック・ドワイヨン。

知っているようで殆ど知らない「近代彫刻の父」オーギュスト・ロダンの人物像を初めて紹介した映画だ。

11月11日より新宿ピカデリー他で公開される

「勝手にふるえてろ!」(日本映画):頭の中で片思いの「イチ」と同期で会社で毎日顔を合わせる「二」とのリアルな恋愛の同時進行に、恋愛ド素人で24歳のヨシカは「私には彼氏が2人いる」と頭を悩ます。

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辻村深月の「かがみの孤城」(ポプラ社:2017年5月刊)は550頁を超す長編。
苛めや家庭の事情などで不登校になっている7人の中学生が「自宅の鏡」を抜けると入れる不思議な古城に入れることを発見し出会う。

主人公、安西こころは都下の雪科第五中学に入学したばかりだが同級生たちの苛めに会い学校へ行かなくなった.不登校の子供たちを会埋めるフリースクール「心の教室」に5月から通うことになったのだが朝起き支度をしていると必ず腹が痛くなる。だからまだ登校したことがない。

どこにも行けず部屋に閉じこもっていたある日、
こころの目の前で突然鏡が光り始めた。

C・S・ルイスのファンタジー小説「ナルニア国ものがたり」に似ている。第二次大戦中ロンドンから田舎へと引越しをしてきた、4兄弟が自宅の薄暗いクローゼットの奥から、偉大なる王アスランが作ったナルニア国へと迷い込んでしまう。

クローゼットの奥の小さな入口を抜けるとそこは荒野になる「ナルニア国」のように
輝く鏡に手を指し延ばすとそのままズブリと通り抜ける。更に歩を進めると体もスルリと通り抜けられ、その先は西洋の古城のような広い部屋。

そこにはこころと似た環境の中学生男女7人が集められている。
ポニーテールが似合う、年上っぽい女の子・アキ。
声優さんみたいな声の、おとなしそうな女の子・フウカ。
ジャージ姿だけどイケメンな男の子・リオン。
生意気そうで、ゲームが好きな男の子・マサムネ。
そばかすがあって、ハリーポッターのロンみたいな男の子・スバル。
ぽっちゃりしてて、気弱そうな男の子・ウレシノ。
そして、こころと計七名。

狼の仮面をつけた少女「狼サマ」が中学生7人に指示する。
城に居られるのは朝9時から夕方5時まで、時間厳守。
夫々が秘めた「願いを叶える鍵」が城の何処かに隠されている。見つけた者は一人だけ胸に秘めた願いを果たすことが出来る。
但し起源は翌年の3月30日までと限られている。

直木賞作家、辻村深月の初期時代に戻ったような「10代の子どもたち」を主人公たちを描くSF小説は間違いなく辻村の最高傑作だ。
同じ雪科第五中学の中学生だが現実世界で会えない。パラレルワールドなのか時代が違うのか、SF要素は小説への興味をいや増す。

「あなたを助けたい」と言う暖かいテーマが7人の心を貫く。


直木賞作家の37歳の辻村深月とほぼ同年代の33歳芥川賞作家・綿矢りさ。
17歳の時「インストール」で文芸賞、19歳で芥川賞を受賞しているから文壇歴は17年にもなるベテラン作家だ。


命令口調と言うか上から目線のような「勝手にふるえてろ」のタイトルは意味不明だがインパクトがあり引き付ける。(実は映画のエンディングでヒロインのヨシカの吐くセリフだがネタバレになるから書けない)

主人公ヨシカが2人の男の狭間で揺れる内面描写でビジュアルにするには難しいテーマだが監督・脚本の大九明子は見事に咀嚼し組み立て映像化に成功している。
そう言えば主演の松岡茉優は勿論、原作者綿矢、企画のプロデューサー白石裕奈大監督の大九と皆、女性陣で固められている。

主人公江藤良香(ヨシカ=松岡茉優)は24歳の会社員、趣味は絶滅動物をネットで調べること。通信販売で購入したアンモナイト化石を宝物のように愛でている。恋愛経験ゼロ、おたく系女子の処女ヨシカ。
ヨシカは中学時代から初恋で片思いの相手のイチ(北村匠海)を忘れられないヨシカは、ある日職場の同期のニ(渡辺大知)から交際を申し込まれる。

突然告白してきた暑苦しい入社同期の「ニ」と繰り広げるリアルな恋愛と、中学時代からの片思いの相手「イチ」との脳内恋愛が同時進行している。

2つの恋に悩み暴走する様がオカシイ。
誠実で正直者でひたすらヨシカを「好きだ」と「二」に迫られる度に「イチ」のことが頭をよぎる。
詰らない単調な経理の仕事なんてやっていられない。
課長に「産休」の申請を出す。
課長にウソだと見破られるとサッサと辞表に切りかえた机周りの私物纏めてアパートへ。

一方的な脳内の片思いとリアルな恋愛の同時進行に、恋愛ド素人で24歳処女のヨシカは「私には彼氏が2人いる」と頭を悩ませていた。

そんな中で「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこう」という奇妙な動機から、ありえない嘘をついて10年振りに中学同窓会を計画。

やがてヨシカとイチの再会の日が訪れるがイチは冷静でクール。ヨシカにしてみれば冷酷かとも思われる。

 
監督と脚本は大九明子。今は澁谷にある(昔は京橋)映画美学校の第一期生で「意外と死なない」(99)でデビュー。「ただいま、ジャックリーン」「モンスター」や「でーれーガールズ」など。

主演は松岡茉優。「ちはやふる」シリーズなどで顔を見せているがこの作品が映画初主演。22歳の美人では無いが恋に悩んで暴走するOLを好演している。

相手役「二」の渡辺大知はイケメンでは無いが朴訥で正直者の人の好さのキャラを上手く表現している。
「イチ」の北村はヨシカの理想な男性だが冷たい感じの美男子。

日本映画はベタベタした恋愛映画が多いが、無鉄砲で思いを寄せる「二」を振り回し暴力を振るい唯我独尊のヨシカは彼女の好む「絶滅動物」そのものだが大九監督はヨシカをクールでスタイリッシュに描いている。

12月23日より新宿シネマカリテ他で公開される。

「ブレードランナー 2049」(Blade Runner2049)(アメリカ映画):長らく待った82年のカルト的SF「ブレードランナー」の続編。元ブレードランナーを演じるH・フォ-ドが素晴らしい

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アメリカで6日よりスタートしたこの作品。今朝(9日)に週末の興行成績が報告されている。

北米4058館で公開され45M以上は行くだろうとの大方の予測を裏切り31.5M(35.5億円)と言う低いBOには関係者一同失望を隠しきれない。

問題は165分の長尺だ。内容を見る限りダレル中盤を含めて1時間はカットできるのではないかと思う。

海外では63か国で上映が始まり45か国で首位、そこそこの50.2Mを挙げ、ワールドワイド総計は81.5M(91.8億円)になる。
しかしこれから開ける中国、日本、韓国など大きいマーケットの帰趨がどうなるか、中国などで好成績を挙げないと赤字を覚悟しなければならない。

何しろ150M(169億円)の制作費を考えるとワールドワイドでは400M(450億円)を超さねばならないのだから。

観客層は男性71%、25歳以上が86%、内35歳以上が63%で若者たちには見捨てられています。批評家の評価は高く観客の出口調査(CS)はA-評価。

国内配給を担当するWBのジェフ・ゴールドスタインは「監督が素晴らしい作品に仕上げているのに残念な結果だ。市場に長く残るパワーを持っているし、賞獲得競争でも注目されるだろう」と。

35年の、長らく待ち望まれていた82年のカルト的SF「ブレードランナー」の続編。
自分の代表作であるリドリー・スコットは製作総指揮にまわり、監督は「メッセージ」(Arrival)などのドゥニ・ヴィルニール。

オリジナル「ブレードランナー」の2019年には自然は朽ちかけ環境は破壊されつつあったが、映画はその30年後、2049年。地球は更に過酷な状況、温暖化で海抜は上がり海岸部は消滅、天候は更に厳しく、閉塞感は深まるばかり。
貧困と病気が蔓延するカリフォルニア。人間と見分けのつかない「レプリカント」が労働力として製造され、人間社会と危うい共存関係を保っていた。

人々は都市部で生活するが灰色の空に突き刺すような高層ビルが虚しく立ち尽くす。南カリフォルニアでは地球環境の変化で雪が降り霧が立ち込めている。

美術や音楽は劣悪な環境を見事に伝えている。

人間に害を及ぼす旧式レプリカント(ネクサス8)狩りのLA市警・ブレードランナーK(ライアン・ゴズリング)。冒頭にシーンで農園に入り実直そうな老農夫サパー(デイブ・バウティスタ)を無慈悲に射殺するシーンに驚かされる。
引退しプロテイン・ファーマーのサパーは無害な年寄りの人間に思えるが旧式レプリカントの逃亡者だったのだ。

Kは更に事件の捜査中にその「レプリカント」開発に力を注ぐニアンデール・ウォレス(ジャレッド・レト)率いるウォレス社の陰謀を知ることになる。

最新型ネクサス9は繊細に人間そっくりに出来ている。Kの親しくなったガールフレンドnジョイ(アナ・デ・アルマス)はネクサス9でウォレス社は莫大な利益を上げている。

更に捜査を進めるとその闇を暴く鍵となる男に辿り着く。
その男こそ元辣腕のブレードランナーだったが、ある女性レプリカントと共に30年間も姿を消していたリック・デッカード(ハリソン・フォード)だった。

デッカードは一体どんな「秘密」を抱えて行方不明になっていたのだろうか?
75歳のH・フォードが82年のオリジナルのストーリーを繋ぐ元刑事の老人役でいい味を出して好演している。

共演はアナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、ジャレス・レトなど。
リドリー・スコット監督がフィリップ・K・ディックの原作をSF「ブレードランナー」(82)はスコットの代表作だが、35年の時を経て生み出された続編。オリジナル版も評判は取ったが興行成績はパッとしなかった。リドリー・スコットは「エイリアン」(79)以外どの作品も当たらない、

「ワールド・オブ・ライズ」(2008)「ロビン・フッド」(2010)「プロメテウス」(2012)「悪の法則」(2013)「エクソダス:神と王」 (2013)「オデッセイ」(2015)「エイリアン: コヴェナント」(2017)。弟のヒットメイカー、トニー・スコットが自殺して以来、「フリー・スコット」社は負債を抱えている。

だから監督を「メッセージ」「ボーダーライン」などで注目を集めるカナダ出身のドゥニ・ビルヌーブに任せたのっだと思う。スタイリッシュな演出は冴えている。

30年後の2049年の世界を舞台に、新人ブレードランナーの“K”が、新たな世界危機を解決するため、30年前に行方不明となったブレードランナーのリック・デッカードを探す。映画の後半に現れる前作の主人公デッカードを演じたハリソン・フォードが顔を出すと映画は重みを増す。

LA市警のブレードランナー「K」を演じるレイノルズ・ゴズリングは、「LA,LA,LAND」で脚光を浴びただけにオーラがあり、老優、ハリソン・フォードと互角に張り合あっている。演出も美術も音楽も役者もどれを取っても素晴らしい。

惜しむらくは3時間に近い長尺が総てをぶち壊している。

10月27日より丸の内ピカデリー他全国で公開される
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