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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「白鯨との戦い」(IN THE HEART OF THE SEA)(アメリカ映画):名作「白鯨」の裏に隠されていた人間の醜い真実とは?

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アメリカで先週の11日(金)から始まったロン・ハワード監督3D冒険映画「In the Heart of the Sea」(「白鯨との闘い」)は3,103館で開けて僅か11.M(13.4億円)の興行成績。完全なフロップ(失敗作)だ。例えば3週間前の「ハンガーゲーム最終章」デビュー週末は120億円を越えた。

評論家は口を揃えて酷評、映画を見終わった観客の出口調査シネマスコアはB+評価でまあまあ、と言っても辛口評論よりは我慢できるがレベルから言うと余り良くは無い。若い観客はそもそも劇場に足を運ばず見る前から嫌われているようで50歳以上が46%を占める。

何しろ100M(122億円)の巨額な制作費をかけた大作だが、今週から何とか挽回しようにも週末(18日)にはメガヒットが予想されるルーカスとWDの「Star Wars: The Force Awakens」(邦題「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」ディズニー配給:TOHOシネマズ日劇他)が全世界でオープンする。これでこの映画は息の根を止められてしまう。

大御所ロン・ハワード監督に頼り切っているWBは制作費回収の見込みが無くなると大慌て。
61歳のロン・はワードは「ビューティフル・マインド」(01)でアカデミー監督賞を授与され、「ダ・ヴィンチ・コード」(06)や「天使と悪魔」(09)でヒットを飛ばしたとは言え「スロストXニクソン」(08)「フラッシュ/プライド友情」(13)など質の高い映画は客が入っていない。
プロデューサーはそこを見極めて制作費をコントロールしなければこの作品のように全くモトが取れない映画になる。映画が当たらず全世界で1000人規模の大リストラを図ったWBの日系CEOケヴィン・ツジハラも頭痛の種が増えた。

「白鯨」(モービー・ディック)を書くために取材中のハーマン・メルビル(ベン・ウィンショー)はトマス・ニッカーソン(ブレンダングリー・ニッカーソン)の古びた家を訪ねるところから映画は始まる。
トマスは中心人物では無いが乗組員の中では一番年若く今も生き残っているキャビン・ボーイだったが老いさらばえ口も呂律がまわらず当時のことは喋りたく無いと沈黙を守る。
しかし巨鯨と闘いで沈没した捕鯨船エセックス号の漂流した船員たちに何が起こったのか?隠された秘密は何か?メルヴィルの必死の取材にトマスはポツリポツリと語り始める。1850年の頃だから既に30年以上前の事件なので生き残りはトマスしか居ない。

若いメルヴィルの取材で観客は興味を持ちトマスの話に従ってエセックス号航海の回顧シ―ンとなる。
1819年、クジラから取れる鯨油は生活になくてはならない油であり、捕鯨は一大産業であった。捕鯨船エセックス号の乗員たちは、船いっぱいの鯨油を取り込もうと、アメリカの港を後にした。
今でこそアメリカは日本に対して捕鯨禁止を強行に申し入れるがアメリカは鯨の油をあらゆるところに使っていた必需品だった。
下田に立ち寄ったぺリル総督も捕鯨のために燃料食料水などを補給する基地、港を探していたのだ。

彼らは大量の鯨を求めて進んだ太平洋沖4800kmの海域で、誰も見たことのないような30Mを越す白い巨大なマッコウクジラに遭遇する。
激しい戦いを繰り広げるものの、圧倒的な巨体に攻め立てられて船を沈められてしまう。このシーンは特殊効果と立体(3D&Imax)画面で凄い迫力だ。(だから2Dでなんかで見たら興ざめだろう)

 わずかな食料と飲料水をかき集め、3艘のボートで広大な太平洋に脱出した彼らを待ち受けていたのは、ギラギラ照りつける太陽や襲い掛かる暴風の中で水も食料も存在せず、自分たちがどこにいるかも分からない絶望的な漂流生活。
1人、また1人と仲間が倒れていく中、何としても生き延びるために彼らが下す「苦渋と究極の決断」と、彼らを試すように幾度も立ちはだかる「白鯨」との戦いの行方が描かれていく。Spoilerはカニバリゼーション。

 主人公の若い一等航海士オーウェン・チェイスを「アベンジャーズ」シリーズでソーを演じるクリス・ヘムズワーズ。その頃船長になるには名門の出でなければならず労働者階級のチェイスは技術も経験の船長より上のチェイスは心に鬱積を抱えていた。
新任ジョージ・ポラード船長を「リンカーン/秘密の書」のベンジャミン・ウォーカーは経験不足を懸命に補おうとする。
一緒に航海し苦労する仲間のマシュー・ジョイを「ダークナイト」シリーズのキリアン・マーフィー。

昔、1956年のジョン・ヒューストン監督、グレゴリー・ペック主演の「白鯨」(MOBY DICK)を見た感動とは違い葛藤と苦渋と人間同士の死闘のこの映画は別物に思える。仇敵「白鯨」の息の根を止めようとするエイハブの「狂気」の方がとっつきやすい。

原作は不朽の名作『白鯨』に隠された真実を描いたナサニエル・フィルブリックによるノンフィクション『復讐する海―捕鯨船エセックス号の悲劇』をもとにした21人の乗組員を恐怖のどん底に突き落としたのは、体長30メートルにも及ぶ巨大な白い鯨だった。
伝説の白鯨との死闘の末、船を失った男たちと彼らを率いたリーダー、小説では決して描かれることのなかった真実の姿ハーマン・メルヴィルの名著「白鯨」のモデルにもなった捕鯨船エセックス号沈没事故の真実を描き、2000年度全米図書賞ノンフィクション部門に輝いている。

1月16日より新宿ピカデリー他で公開される

「鉄の子」(日本映画):突然の再婚で兄弟になった小学生の陸太郎と真理子。苛めっ子たちに「フウフ」とからかわれ親を別れさせる「リコンドウメイ」を結成

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1974年生まれのミランダ・ジュライは今年41歳、充実した3人家族でLAに住む。
映画監督が本を書くと傑作が生まれる。ミランダ・ジュライの日記風エッセイ(フォト&ダイアリー)「あなたを選んでくれるもの IT CHOOSES YOU)(新潮社:2015年8月刊)も映画を作る過程の悩みと苦労がユーモラスに描かれている。

2005年、ミランダ・ジュライ監督のデビュー作品「君とボクの虹色の世界」と言う映画は面白かった。カンヌ映画祭で新人監督に贈られるカメラ・ドールを授与されている。

愛に不器用な人々の日常を、心地よいテンポと愛ある眼差しで綴ったヒューマンドラマ。監督はアートやファッションなど様々なジャンルで活躍しながら自ら脚本を書き主演もしている。

全編デジタルハイビジョンで撮影されたポップでカラフルな映像と、注目の歌姫バージニア・アストレイらが参加するサントラも魅力のひとつとなっている。
この作品で「ポスト・ソフィア・コッポラ」と言われるようになったミランダ・ジュライが、次の映画「ザ・フューチャー」(タイトルだけは決まっている)の脚本執筆に行き詰りその打開策を綴っている。

今の夫、マイク・ミルズと出会う前に暮らした恋人の残した「3Lサイズのコンドーム」が捨てられない。
大きすぎていつも痛かったのだが、マイケルのアパートに着の身着のままで飛び込んで4年過ごす。歩いて直ぐの昔の部屋に毎日戻り着替えをする。そして脚本に取り掛かるがタイトルの他に主人公、ソフィーとジェイソンが決まっているがストーリーも展開も何も思い浮かばない。

が、ある時配送されたフリーペイパ―の冊子「ペニーセイバー」に興味を持つ。毎週火曜に届けられる小冊子に色んな物を売りに出している人たちの広告が掲載されている。奇妙な物の買い手ではなく好奇心旺盛なLA住民としてどの広告は短い新聞記事のように興味があるものだった。
 シナリオの一助となると思い売り手にインタビューを申し込む。ギャラは50ドル、断る人は稀だ。この本はアメリカの片隅で同時代を生きる人たちへのインタビュー&フォトダイアリー集だ。

 LA中をカメラマンのブリジットとアシスタントのアルフレッドを連れて訪ね歩く。殆どネットの世界でヴァーチャルなキャラクターにしか会っていないミランダは生の人間=現実は新鮮なショックだ。

黒いLサイズの革ジャンパーを10ドルで売りに出したマイケルは性転換の手術を受けているマイケルと言う中年の大男。インドから移住した女性はインドの衣裳を1枚5ドルで売っている。家の庭に池を作りウシガエルを育てている男子高校生、オタマジャクシを一匹2ドル50セントで、珍しいレパード・キャット(ベンガル山猫)の仔は値段は応相談になっている。ベバリーは20年かけてレパードとアメリカン・ショートヘアと掛け合わせて小型にしている。ガレージセールで赤の他人のアルバムを買い漁るギリシャ移民の主婦は貯まったアルバムを。いろんな珍獣を育てて家が動物園になっている中年の女性。足首に警察からGPSを嵌められて家から出ずに子供向けの本を売る男。

少しずつシナリオのアイディアは貯まって行く。
そして冒険の最後に会った1929年生まれ81歳の老人ジョーは奇跡だった。クリスマスカードの表紙部分のみ50枚を一枚1ドルで売りに出している。
愛妻家で1948年に出会ってから62年間、1年に9回、クリスマスとか誕生日、結婚記念日、独立祭などにカードを贈る。
シカゴからLAに移って来て39年。8匹の犬の名前と沢山の外猫の名前は壁に墓碑銘のように彫られ2Mの穴に埋葬される。週に4回、歩けない近所の後家さん7人と男やもめ1人にために頼まれたショッピングに出かける。
インタビューは明るかったが「死」が充満している。犬や猫の死、買い物代行の老人たち、そして何度も口にする自分自身の死。

ジョーは81年間の人生に「やることリスト」を一つ一つ追いかけているのだ。
ミランダは映画の中でジョー本人を登場させることを決める。自然にやりさえすれば名演技だった。映画が完成しジョーの家に電話をかけると奥さんのキャロリンが出て「ジョーは2日前に死んだ」と。

 ミランダは映画「ザ・フューチャー」を2009年に完成させた。1匹の猫との出会いをきっかけに人生を振り返り、新しい一歩を踏み出すカップルの喜怒哀楽をユーモラスで描いている。
そして2012年に長男を生んで今年2015年は「THE FIRST BAD MAN」を出版した。



 角川第二本社の試写室で小太りのむさくるしい男が上映前に挨拶する。
監督の福山功だ。「自分の体験を映画に仕立てた」と言う。
福山は夫婦関係が築けない大人の男ではなく、その男を義父に持った男の子の立場のようだ。そう言えば主人公は男の子、陸太郎(佐藤大志)と男の娘、真理子(舞優)だ。大人は端役。

 福山は46歳、調理師やキックボクサーを経て映画監督を目指し、短編をとっていたが昨年「夜だから」(聞いた事もない作品だが)で長編デビュー、これが2作目だと言う。
経験は積んだと見え演出のテクニックはベテランの域に達しカッと割りや繋ぎもスムースだ。

 何よりも主人公の子役が良い。二人とも可愛いし芝居も上手い。
佐藤大志君は9歳、舞優ちゃんは10歳ながらTVドラマや舞台の経験がある。

埼玉県川口市。キューポラの町として有名な鋳物工場が立ちならぶ。鋳物工だった父親を亡くした小学生の陸太郎(佐藤大志)は、母やよい(田畑智子)と二人暮らし。
 ある日、トラックに荷物と娘を乗せて母親の再婚相手・紺(ぺ・ジョンミョン)がやって来る。
娘の真理子(舞優)は陸太郎と同い年、しかも転校して編入されたクラスは陸太郎と同じだった。
親の再婚によって真理子の生れ月が陸太郎より早いためお姉さん。
「キョウダイ」になった陸太郎と真理子はクラスの悪ガキたちから「夫婦、夫婦」とはやし立てられ二人はうんざり。

何とかしてこの状況を脱却しようと陸太郎と真理子は「リコンドウメイ」(離婚同盟)を結成する。
同盟を勝手に脱退したら「死刑」だと真理子はキツイ。

 先ずは弥生の料理に調味料を滅茶苦茶入れて「料理下手作戦」、次いで紺のワイシャツに口紅をつけて「浮気作戦」、あの手この手で両親を離婚させようと企むがしかし仲の良い二人は善意に解釈して益々仲がよくなる。
陸太郎は、亡き父の同僚だった鋳物工のおじさん(スギちゃん)に助けを求める。

 しかし怠け者の紺が不動産屋に就職し、やよいがスナックで働く内に紺が浮気を始めて離婚同盟の趣旨が成就することになる。

 やよいの田畑智子は美人で朗らか、紺のぺ・ジョンミョンは軽薄で浮気っぽい。
どちらもいい味を出している。

「離婚」と言うことは陸太郎と真理子も「フウフワカレ」をしなければならない。
二人は苦渋の決断を迫られ、去り行く真理子のトラックを陸太郎の懸命の追跡も空しい。

 ストーリーは興味深く主人公の子供たちも活き活きと描かれているが74分とは如何にも内容が充実しない。もう一ひねりも二ひねりもあって良かったのでは。
 
2月13日より角川シネマ新宿他で公開される。

「クリムゾン・ピーク」(CRIMSON PEAK)(アメリカ映画):イギリス北部・カンブリア州の丘の上に立つ豪邸は降る雪の中、クリムゾン(真紅)に染まる。

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「ホビット」や「パシフィック・リム」で横道に逸れたが、ギレルモ・デル・トロの本質はホラー映画作家だ。「クロノス」や「デビルズ・バックボーン」の怖さは尋常ではない。
 時代物は美術・衣装と金がかかるが、デル・トロの実力と名前に屈してハリウッドがゴーサインを出した作品にデル・トロが活き活きと演出をしている。

 19世紀初頭のアメリカNY州バッファロー。富豪の実業家ジム・カッシング(ジム・ビーバー)の娘イーディス・クッシング(ミア・ワシコウスカ)は30近くなり友人たちが婚活を盛んに行っているが超常現象の作家活動に夢中で男たちに見向きもしない。10歳の時に死んだはずの母親を目撃して以来、幽霊の見えるイーディスは死んだ母親(ダグ・ジョーンズ)が度々現れ忠告するのにうんざりしている。「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」という警告を与えられたが何のことだか分からない。

 いきなり母親の幽霊と会話を交わすイーディスに観客は引き込まれる。
そんな折父ジムの元にイギリス準男爵・トーマス・シャープ(トム・ヒドルストン)が投資を求め紹介状を携えてやって来る。
 ジムはインチキ発明家と見抜くが屋敷に暫く滞在を許す。
投資を求めてアメリカまでやって来たトーマスだが父ジムはその本性を見抜いている。
自分のイギリスの領土に産出する赤い粘土を掘って建築資材にしようと試作中の掘削機の完成に資金が要るのだ。

 トーマスはハンサムで機械技術に詳しい誠実(そうな)科学者。
男嫌いのイーディスはトーマスのイギリス英語と優しさ美男子振りにイチコロ。
熱心な地元の眼科医で求婚者のアラン・マクマイケル(チャーリー・ハナム)を袖にして、トーマスと結婚してしまう。

 イーディスの父親は浴室で転倒し呆気なく死に遺産は総てイーディスが継ぐ。
しかし観客はジムが暴漢に襲われ洗面台に頭を叩きつけられて死んだことを死っている。この暴漢は誰だ?

 熱々のカップルは海を渡り北イギリスの壮大な山脈に囲まれたカンブリア州に立つ古ぼけた豪邸に辿りつく。
「部屋は幾つあるか分からないわ」と迎えたトーマスと仲の良い姉、ルシール(ジェシカ・ジャスティン)が言う。
 ゴシック建築の城だが天井となる丸いドームに大穴が空いており、雪と風と葉っぱがホールに舞い落ちている。

 ルシールはミステリアスで陰気な美人。ジャスティンはオスカーに何度か候補になった大スター。ルシールでは無く、イーディスを演じても良いのでは。
ルシールの思わせぶりな言動で何か準男爵のシャープ家には秘密がありそうだ。
弟は純情だが姉は性悪と言う風情に見える。

 早速イーディスは廊下で血まみれの幽霊に追いかけられる。地下には大釜が何かを煮立てている。正に「幽霊屋敷」だ。

 唯一人の年老いた下男が言う「この地域は冬が訪れると地面に埋まった赤粘土が地上に現れる。地上に出て来た赤粘土は白い雪を血のように真っ赤に染める。だから、この丘は「クリムゾン・ピーク(深紅の山頂)」と呼ばれている」と。
死んだ母親の警告を思い出す「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」と。「クリムゾン・ピーク」の屋敷や周辺の土地がそれ自体の邪悪な命を行き始め真紅の亡霊が出現しイーディスは毎晩悪夢にうなされる。

 身体が弱って来たのはルシールの淹れる紅茶に毒が盛ってあるからだと気づくが「紅茶ばかりでは無い」と弟に打ち明ける。早く遺産を総て相続し送金させるように、と命じる姉の非情さ冷酷さ。

 三角関係で敗れた眼科医アラン・マクマイケルがNYからイーディスを救い出すために屋敷にやって来る。イーディスに毒がまわりルシールの魔手にかかる寸前だった。マイクルまでも逆襲に遭おうとしている。ルシールは強い悪女だ。

恐怖映画の巨匠ギレルモ・デル・トロ監督が久々にホームグラウンドのゴシックホラーを心行くまで飾り立てメロドラマ風を装いながら恐怖のどん底に突き落とす。ストーリーは浅薄なメロドラマだがトム・サンダーズの美術と毛糸・ホーリーの衣装が見事なゴシックロマンスの雰囲気を盛りたてているから見られる映画になった。

主演のイーディスは「アリス・イン・ワダーランド」のミア・ワシコウスカ。金髪を背中まで垂らし長いスケスケワンピース妖艶だ。
「アベンジャーズ」で脇のトム・ヒドルストンはハンサム故に儲け役を与えられた。
「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティンは詰まらない悪女を懸命に演じて可哀相だ。
 クリムゾン(真紅)の衣装、亡霊、血の池など脅かされる真っ赤などろどろの色も凄まじい。

1月18日よりTOHOシネマズシャンテシネ他にて公開される。

「最高の花婿」(QU’EST-CE QU’ON A FAIT AU BON DIEU)(フランス映画):敬虔なカトリック教徒のヴェルヌイ夫妻の嘆き。4人の娘の婿たちはアラブ人ユダヤ人、中国人それにアフ

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 フランス喜劇は最近では「最強のふたり」「クロワッサンで朝食を」など人種問題に取り組んでフランス人の常識や慣習を破るヒューマンドラマで元気になっている。
この11月の130人の死者をだしたパリのテロ事件はフランス国籍の移民「イスラム王国」の仕業だったが、ドイツやフランスでは難民や移民を多く受け入れており、特にフランスでは20%近くが異なった民族、人種や宗教間との結婚とだと言う。

 この映画もそんな実情の先を読み、楽天的でヒューマニズムの回答を出している。テロのはるか前、昨年の暮れから今年にかけての公開で1300万人の大ヒット作となった。
フランス西部、ロワーヌ河沿いのロワーヌ県シノンで暮らすブルジョワのヴェルヌイユ夫妻。クロード・ヴェルヌイ(クリスチャン・クラヴィエ)は敬虔なカトリック信者で保守的なド・ゴール主義者。妻のマリー(シャンタル・ロビー)も信心深く長い結婚生活もつつがなく4人の美しい成人の娘たちに恵まれていた。

 しかし夫妻の顔色は冴えない。三女のセゴレーヌ(エミリー・カーン)は銀行家の中国人シャオ・リン(フレデリック・チョウ)との結婚式なのだ。一度は夫妻の通うカトリック教会で式を挙げたいと思っていたが今度もダメだ。
長女イザベル(フレデリック・ベル)は弁護士仲間のユダヤ人・ラシッド(メディア・サドゥアン)と、次女オディル(ジュリア・ピアトン)アルジェリア生れの企業家・アラブ人ダヴィド(アリ・アビタン)、と結婚している。

 市役所で市長の司会で中国人シャオとの結婚式も終わり市庁舎前の階段で記念写真。クロードはしかめっ面をしているのをカメラマンに咎められる。夫妻は瀬ゴレーヌ夫妻を祝福したものの内心はがっかり。

 半年後の次女夫妻の男の子・ユダヤ教の「割礼式」に出る。ユダヤ教の男子は生後8日目で性器の先の包皮を切り落とす。私も式に出たことがあるが切られた瞬間の赤ん坊の泣き声は悲鳴に近い、そうだろう麻酔無しの昔ながらの除去で大抵ラビは年寄りで不器用で乱暴な割礼だ。モーゼの出エジプト記にあるが、割礼は砂漠の民が不衛生にならぬよう、性器の先端に恥垢が溜まり病気にならぬように始めた生活の知恵がユダヤ教の儀式になった。

 母系民族のユダヤ人は母親がユダヤ人ならユダヤ人、この次女の場合、はフランス人だから「割礼」の必要は無いが夫ダヴィッドに従いユダヤ教で生きよう育てようとするのだ。
ここで同じ砂漠の民、アラブ人のラシッドと論争。アラブは8歳頃まで割礼をしない。いい加減だとか不衛生だとかユダヤとアラブの論争。父親のクロードも式に出たくなかった不満からモンマルトルは外国人に占拠されていると洩らし、婿たちから攻撃を食らう。

 割礼した「皮」を瀬戸物の小箱へいれてデヴィッドは尊敬の念を込めて義父クロードに差し出す。「要らん,要らんそんなもの!」クロードの気持ちは分かるが妻マリーに説得されて庭のりんごの木の下に埋めると約束する。

 ここからが大笑い。穴を掘り小箱を出した所で落として割ってしまう。早く拾いなさい!とマリーの声にも怖気付いて拾おうとしない。そこへ可愛い飼い犬ジャック・ラッセル・テリアが駆け寄りパクッと一口。「どうせ次女夫妻には分かりっこないよ」とは不謹慎だ。

 クロードははっきり言って差別主義者。カトリック教徒でない異教徒の輩どもと見下している。
最後の希望末娘ロール(エロディ・フォンタン)が婚約し相手シャルル(ズーム・ディアワラ)がカトリック教徒と聞いて驚喜乱舞する。これでようやくカトリック教会で挙式が出来る。神父にも面目がたつ。ところが会って見てビックリ。シャルルはコートジボワール生まれの黒人だった。

 不思議なことに宗教や国籍を超えて白人vs黒人は相性が悪い。
日本人でも同じだ。僕の先輩がこぼしていた「娘を留学させていたら、外国人と結婚すると言い出しやがったんだ」一緒に飲んでいたもう一人の先輩がいきなり「白か黒か?」と聞く。「南米ウルガイの白人だがね」「白なら良いよ。黒はやっかいだからな」

 クロードも同じ気持ちだろう。3人の姉たちの異教徒の婿も黒人には反対なのには驚く。
ここからはロールとシャルルの問題では無く、コートジボワール元将軍のシャルルの父(パスカル・ンゾンジ)とクロードの死闘になる。二人ともド・ゴール主義の保守派でカトリック教徒。二人の意見が合うのは息子&娘は夫々黒人&白人と結婚すべきだ、と言うことだ。
二人で魚を釣りながら論争し、見た事が無い大物が獲れたので料理屋に持ち込み、夫々得意なワインやカクテルをガブ飲みし衣装を変えて打ち解けて行く。だが酔っ払いすぎて店の客と喧嘩になり暴れて二人とも留置所へ。
 
クロード役のクリスチャン・クラヴィエもマリーのシャンタル・ロビーもフランス映画で見慣れた顔だがシャルルの父の大男、パスカル・ンゾンジは初めて。コンゴの名舞台俳優だと言う。芝居は上手く区ラヴィエとの掛け合いも絶妙だ。

 黒人v白人が難関を乗り越え偏見を捨て去り仲良くなっていく「最強のふたり」のパターンだ。
クロードの「冗談だよ」と逃れるセリフで人種問題、移民問題、国籍問題への批判中傷を全部さらけ出している新鋭フレデリック・ドル・ショーヴロンは見事だ。フランス人の鬱憤晴らしにはもってこいだろう。

 本国フランスでは口コミで火が付き1300万人動員の大ヒット、世界でも145カ国で公開された。今年の5月、日本での「フランス映画祭2015」で「ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲」として上映され、評判になったものの公開が決まらなかったがようやく弱小の「セラ・インターナショナル」が買い付け2016年3月に陽の目を見る。
結婚をめぐる家族の大騒動を、人種や文化の違いを「最強のふたり」を凌ぐ面白さですっかり堪能するコメディだ。

バラバラ家族全員がフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を大声で斉唱する姿に感動する。
同じ光景が11月のテロの後、攻撃を受けた劇場で、レストランで、シャンゼリゼの路上で見られた。

3月にYEBISU GARDEN CINEMAほかで公開される。

「クリード チャンプを継ぐ男」(CREED)(アメリカ映画):シルヴェスタ・スタローンが一歩退いたロッキーのスピンオフ映画。親友クリードの息子のトレーニングを引き受けファイトを見守る。

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オリジナルの「ロッキー」を見たと同じ感動をこの映画は呼び起こしてくれて涙が零れる。
40年も前の1976年、実生活でも売れない役者シルヴェスタ・スタローンが自ら脚本を書き主演を務め名匠J・G・アヴィルドセン監督(本当はスタローン自身が撮りたかった)の「ロッキー」はメガヒットを飛ばしオスカーやGグローブを総なめにした。
 しかしシリーズものの難しさと人臣位を極めた主人公ロッキーの若さと力の衰え家族の喪失などで06年の「ロッキー・ザ・ファイナル」でもって終焉を迎えた。

 あれから9年、突如「ロッキー」は装いも新たに華々しく登場する。しかもスタローンはヅーっと続けていた監督と主演の座を若い人に譲っているのに驚く。
弱冠29歳の黒人監督・ライアン・クールグラーがメガフォンを取り、世間の注目を浴びたデビュー作「フルートベール駅で」主演の28歳マイケル・B・ジョーダンを引き続き監督2作目の「クリード」の主人公に据えている。白人警官の暴行を受け死亡する黒人青年役だが着物の下にこれほど見事な筋肉を備えているとは知る由も無かった。
殆ど無名の監督・主演の登場は「ロッキー」の世に出た時と同じだ。

 しかもジョーダン演じるアドニス・ジョンソンは金に困って住んでいるLAから2時間のメキシコ・ティワナへ出かけた賭けの闇市場ボクシングで15戦全勝だがそれでも貧乏のどん底。ロッキーがボクシングで食えなくて高利貸しの借金取りをして糊口を凌いだのに似ている。

映画はアドニスの幼児時代にフラッシュバックする。手に負えない孤児で悪戯ガキのアドニス(アレックス・ヘンダーソン)は施設をたらい回しになっていた。小奇麗な中年の小太りの女性、メアリー・アン・クリード(フィリシア・ラシッド)が施設に現れ「私の夫アポロが情婦に産ませた子がアドニス」だとLAの自宅に引き取る。流石に元世界ヘビーウェイト・チャンピオン・アポロ・クリードの自宅だけあり大理石の白亜の殿堂だ。

世界チャンピオンであったアポロ・クリードの息子と言う名前を出さずに自分の実力だけでこの世界を上り詰めて行きたいとアドニス(マイケル・B・ジョーダン)は考える。街のジムに出かけベテランのボクサーとスパークリングを戦うがあっさりノックアウトされる。メキシコ闇市場ボクサーの成り上がりと正当なトレーニングを積んだファイターとの力の差をさまざまと感じさせる。
メキシコでの15戦全勝の自負もリングに仰向けに倒されて吹っ飛ぶジョーダンの情け無い表情が淋しい。

メアリー・アンの躾も厳しく良い大学を出て大きな金融会社に勤め出世した途端にボクシングに生きようと辞表を提出する。

世に様々な伝説を残したチャンピオン・アポロ・クリードだが、クリードがロッキーと戦いリングで亡くなった後に生まれたアドニス。
そうした偉業を知らない上に、父との思い出もなかった。それでもアドニスには、アポロから受け継いだ血がボクシングを目覚めさす。
地元LAのジムではベテランに簡単にKOされたアドニスを受け入れない。そこでアメリカを横断しフィラデルフィアへ飛ぶ。
父・アポロ・クリードのライバルで親友だったロッキー(シルヴェスター・スタローン)を訪ねてトレーナーになってほしいと申し出る。
ロッキーが初めて画面に出る。しわくちゃな顔だがしゃきっとして背筋は伸び筋肉の付いた体格は頑丈そうだ。

亡き妻の名を冠した小さなイタリアンレストラン「エイドリアン」で赤と白の縞のクロス掛けたテーブルでホワイトソースのパスタを一人モリモリ食べているお馴染みのロッキーは嬉しい。

レストランの壁に飾られている「アポロとロッキーのファイト」写真を見ていると「アポロこそは最強のチャンピオンだった」と。

その呟きに励まされアポロの息子だと告白する黒人の青年を暖かく迎え入れるロッキーだがトレーニングして欲しいと言う申し出はきっぱりと断る。
エイドリアンやトレーナーで親友のミッキーが死んでボクシングから足を洗った。それにアポロは「3回戦った親友だが最後はオレが殺したようなものだ」と。しかしロッキーはジムを紹介する。ジムでは誰も何も教えてくれない。(月20ドルの月謝ではねー)

どうも気にかかったロッキーはジムを覗くと一人淋しくサンドバッグを叩いているアドニスを可哀相に思い指導してやろうと決める。亡きポーリーのアパートに住まわせ、付きっ切りでランニング、腕立て伏せ、パンチボール、シャドウボクシングとロッキー流の哲学を踏まえた訓練は厳格そのものだ。

しかしトレーニングの賜物でデビュー戦では歴戦の相手をあっさりと2回TKO.だが恐ろしいのはネット社会。たちまち出自は人の知るところとなる。元世界チャンピオン「アポロ・クリードの息子」で伝説のライバル・ロッキー・バルボアの指導でボクシング・デビューとセンセーショナルな扱いだ。

ここに世界ライトヘビー級のチャンピオンが現れなければ映画じゃない。それもいわく付きの悪名高きイギリス・リバプールのプリティ・リッキー・コンラン(アンソニー・ベリュウ)。銃の不法所持で7年の判決を受け、収監される迄の6ヶ月でチャンピオン最後の戦いをしたいと言う。気が短くて喧嘩早い。記者会見でアメリカのコンテンダーをぶん殴り鼻を折り試合が出来ずもてあましている。あの伝説のロッキーがセコンドに付いているアポロの息子クリードを刑務所へ入る前の土産にとタイトルマッチを引き受ける。
リバプールの古めかしい競技場はまるで古城の大ホールを思わせる4万人のコンラン応援の熱気で溢れている。

ボクシングシーンの美しく迫力は今まで見た事が無い。ロングショットはあるが殆どはスローモーションを交えたクローズアップで、カメラはボクサーの視点で360度回転し観客はボクシングの一部になっている。

ジャブ、ストレート、アッパー、パンチの素早さは目にもとまらない。
グローブの打撃の肉体を裂く音、飛び散る汗と血、潰れるクリードの左目。ドクターがリングに上がり指を立てて「何本か?」と聞く。肩を抱いたロッキーが4度押さえる。ドクターストップを免れたクリードは最後12ラウンドのリングに飛び出す。

オリジナル「ロッキー」と違いチャンピオンは性悪な白人、挑戦者は経験浅い黒人の若者と言う図式は、リセットされ更にシリーズ化されるだろう。

血と汗とアクションのシーンが主流の縦糸ならば、横糸に黒人のR&R美人歌手ビアンカ(テッサ・トンプソン)とのロマンスも織り込む。アパートの下のビアンカの部屋の音楽が煩くて「朝連」があるからと文句を言ったのが付き合いの始まり。小顔をビアンカの歌声も良い。
もう一本の横糸はロッキーが「ガン」に冒されていることが見つかる。医術を信用しないロッキーは抗がん剤治療を拒否していることだ。
アドニスの勝負とロッキーの治療は二人の取引の材料となる。

フィラデルフィアでは昔の懐かしいレストラン「エイドリアン」彼女とポーリーのお墓、そして極めつけは街を見下ろすフィラデルフィア美術館の長い階段。年を取ったロッキーは一歩一歩ヨタヨタと登って行く。

12月23日より丸の内ピカデリー他で公開される。

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(STAR WARS:THE FORCE AWAKENS) (アメリカ映画):新監督J・J・エイブラムスの3部作は秀作、アクションばかりか家族の愛情をも描き涙を誘う

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 宝くじの長蛇の列を避けて有楽町マリオン11FのTOHOシネマズ日劇1に辿り着くとここも宝くじよりも遥かに長い列が劇場入り口に向かってエレベーター、エスカレーターを横に見て二重三重に連なっている。

 昨晩(19日)7時05分の回のスター・ウォーズを見る観客の列だ。戦後映画が唯一の娯楽で1000近い座席を持つ路面劇場の前の光景を思い出す。あの時は例えば日比谷映劇は今のシャンテと東宝本社の場所で大きなファサードを広げ毎回映画上映の1時間程前から晴海通りに届き角を廻ってガードに近いところまで列が出来ていた。入場券を求める人たちで、果たして入れるかどうか不安を隠し切れなかった。
今はネットで販売機VITに繫げば希望の日時やシートの位置まで指定して事前に購入できるから不安は無いが、開場20分前に着いた僕の目の前の光景は昭和20年代のシーンをマザマザと思い出させる。今時路面劇場は無くビルの高い階で冷たい風や雨に晒されずに済むしチケットは確保してあるから時間ギリギリに来れば良いものを30分前からの長蛇の列はなんだか嬉しくなった。

 今年の映画産業は年末の「スター・ウォーズ」で救われるのは明らかだ。
アメリカでは17日(木)より始まってダース・ベイダーやC3POが並んでいる写真がマスコミに出ていた。

 映画調査会社Rentarkの週末までの予測では6月12-14日のUniversalの「Jurassic World」のオープニング記録 $208.4Mを破ってこの週末に215M(262億円)を越えるだろうと驚異的な数字を想定している。
暮れから来年春にかけて興行はアメリカで1B、海外で2.5B、ワールドワイドで計3.5B(4305億円)は行くという大ヒット予測値が出ている。凄いじゃないか、日本全体の映画興行は昨年度は6%アップして2060億円、その2倍以上をたった一本の作品が稼ぐのだから。

アメリカでは観客の70%を越える男性を劇場に呼び戻した。TVゲームやホームエンターテインメントに惹かれ劇場に足を運ばなくなり女性観客のシェアが増えていたのだ。

 中でも若い男性が目立つが1977 から1983年までの3部作で育った高年齢者層をも引き込み1999, 2002と 2005からのシリーズを引き続き見る観客とあらゆる年代層の客を動員している。
18歳から24歳までが34%で最大層を形成し次ぎが25歳から34歳までが31%、35 から44歳までが9%, 45 から 54歳までが6%と続く。これらの世代はスター・ウォーズをアイコンとして育った世代で子供連れも多い。13から17歳の子供たちは15%。55歳以上は僅か4%と言うのも驚くには値しない。
子供も大きくなりそれに年寄りは新登場作品を急いで見る習慣が無いからだ。観客は25歳を境目に半分に分かれる感じだ。

 さて新しいドラマの舞台は「スターウォーズ・エピソード6:ジェダイの帰還」から30年後。
悪の帝国の軍隊「ファースト・オーダー」と反乱軍「レジスタンス」の戦闘は続いている。

 新しい主人公はデイジー・リドリー演じる若い女性スカベンジャー・レイ。
家族を待ち続ける砂漠の惑星ジャクーで孤独に生きるヒロイン。

 一方、ストームトゥルーパーの格好をしているが、戦うことに疑問を抱く兵士フィン(ジョン・ボイエガ)は洗脳に耐え反乱軍に味方して玉子状の丸い新型ドロイドのBB-8を連れて脱走する。BB-8はB2-D2と同じ機能のようだ。喋ることばは特種な才能を持つ人しか分からない。

 ダース・ベイダーの暗黒面の受け継ぎファースト・オーダー司令官のカイロ・レン(アダム・ドライバー)はフィンを追跡し捕えるが、その前にフィンは何やらUSB状のものをBB-8に隠す。
同じく拘束されていたパイロット・ボー・ダメロン(オスカー・アイザック)とスターファイターを盗み出し逃走するが撃墜され砂漠に墜落。
ボーを失うがフィンはここでレイと出会いレジスタンスで志を同じくする二人は同志として帝国軍と戦いを続ける。

 嬉しいのは砂漠のバーの客の中古の貨物船「ミレニアム・ファルコム」を借りて飛行中撃墜されて不時着するが、そこに「俺たちの舟だ」とハン・ソロ船長(ハリソン・フォード)とゴリラのパイロットのチューバッカが乗り込んで来る。
フィンもレイも会うのは初めてだが伝説上の人物に会えて興奮する。しかもハン・ソロは結婚していて妻レイア姫(キャリー・フィッシャー)は反乱軍の将軍だ。

 2人の間の息子がダークサイドに転落したカイロ・レンらしくドラマは「家族のリユニオン」で盛り上がる。しかしレンは一筋縄では行かない。
ネタバレになるので書けないが大きな悲劇が待ち受ける。テーマ「家族の愛と喪失」が描かれる。果たして「真のフォースに目覚める者」は、誰か?God をForceに置き換えて「Be Force with you!」

 新たにJ・J・エイブラムスが監督。
2009年に落ち目の「スター・トレック」シリーズを引き受け完全なリブートに成功し軌道に乗せた手腕を買われ、「帝国の逆襲」の名脚本で知られるローレンス・カスダンと組んで作り上げた作品。
G・ルーカスの意図を充分に汲んでそれ以上の作品に仕上げている。

 83歳になるジョン・ウィリアムスは相変わらず荘厳で勇ましいバックミュージックを奏でる。スター・ウォーズ開始以来腕は衰えない。

 最初の三部作で活躍した懐かしいハン・ソロやレイア姫、R2-D2,C3POが出て来るがルーク・スカイウォーカーのマーク・ハミルだけが見えない。
しかし最後の最後、ミステリアスな山頂でレイが訪ねた老人がフードを取るとルーク・スカイウォーカー!新しい三部作のプロローグだ。次回作が待ち遠しい。

  新しい主人公レイとフィンを演じる二人、無名の白人女優と黒人男優の組み合わせも時代の流れ。
デイジー・リドリーはイギリスのTV俳優。美人では無いがひっつめ髪の丸顔は愛嬌がありキュート。
相手役のジョン・ボイエガもロンドンの舞台で育ちTVから映画へ。
ベテランの有名大スターたちに囲まれても臆することなく伸び伸びと芝居をしている。

TOHOシネマズ日劇他で公開中

「女が眠る時」(While The Women Are Sleeping)(日本映画):リゾートホテルで美少女と初老の男のロマンスを覗き見する作家の好奇心

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化石燃料の枯渇した世界を描く「ねじまき少女」でSF長編デビューをし、ヒューゴー賞、ネピュラ賞など主要SF賞をそうなめしたパオロ・パチガルビ。
アメリカ南西部は厳しい旱魃に悩んでいる。
コロラド川の上流コロラド州の出身の著者は「水」の問題に早くから関心をいだいていた。
「神の水」(早川書房:2015年10月刊)は刊行されるや否や各マスメディアで絶賛の嵐だと言う。

 近未来のアメリカは地球温暖化の影響で慢性的な水不足が続く。巨大な環境都市(アーコロジー)に閉じこもる一部の富裕層は命に直結する水供給をコントロールし、一般庶民の生活をも支配している。
 米西部では最後のライフラインとなったコロラド川の水利権を巡って、ネバダ、アリゾナ、カリフォルニアなどの諸州の対立が激化し一触即発の状態にある。

敏腕水工作員(ウォーター・ナイフ)のアンヘル・ベラスケスはラスベガスの有力者・南ネバダ水源公社(SNWA)代表、痩身金髪ヒップラインを強調する美人のキャサリン・ケースの命を受け水利権の闇へと足を踏み入れて行く。

 フェニックスで環境都市の大事業を支配しているのは中国の「太阳(たいやん)」グループ。地元商店街でもドルは受け取らず元が巾を利かす。
 アメリカも中国資本がコントロールし始めている。
著者のパチガルビはヒスパニック系だろうかメキシコの俗語や罵詈する言葉が頻繁に出てくるが中国語も多い。
オバーリン大学で東アジア学を専攻し中国に度々渡航している中国通だ。


伊豆の高級リゾートホテルで休暇を過ごしていた作家の健二(西島秀俊)は妻で編集者の綾(小山田サユリ)はプールサイドで寛いでいる。

健二はデビュー作が有名な文学賞をとったが二作目はパッとせず、三作目で行き詰っている。綾はホテル近くに住む高名な老作家の担当で連日彼の家を訪ねてご機嫌とりにせわしない。
プールの反対側には滞在客の得体の知れない初老の男性(ビート・たけし)と10代と思われる美少女(忽那汐里)のカップルに魅入られる。どうみても親子とは思えない。

健二は自己紹介して近づく。
小太りの初老の男は佐原と名乗り白いビキニの美少女、美樹の恋人のようだ。
背中にサンオイルをせっせと塗る佐原を見とれていると妻の綾は私にもしてと、健二に迫る。

 魅惑的な彼らに、次第に深くインボルブしてしまった健二はついに彼らの一階の部屋を覗くことが日常になっていく。
これは白昼夢か?健二にも分からない。ある日鍵のかかっていない部屋に入り込んだ健二はルームメイドに見咎められる。宿泊客だとキーを見せて逃れるが健二は完全に摂りつかれた。

 佐原は健二に自分が撮った多数のビデオを見せる。
何れも美樹がベッドで眠っているところで、眠り姿以外の画像は全く無い。
健やかな眠りで着衣の乱れも無い。唯ひたすらに眠るビデオは無数にある。
初老の男・佐原と親子ほど年の離れた美しい美樹の間にある愛情に健二は作家的興味も忘れて心奪われ、執拗に追いかけ、次第に自分を見失っていく。

 それにも増して美樹に注ぐ特異な愛を露骨に健二に誇示する佐原も普通で無い。「愛が死ぬなら、あの子を殺した方がいい」と激白する佐原に鼻じろむ健二。
狂気の佐原に常軌を逸した健二。何か起きそうな予感。

 そんなある日、健二のもとに伊豆署の刑事・石原(新井浩文)が訪ねてくる。美樹が突然姿を消したと言う。

 作家が覗き見たのは「狂気」か「愛」か。大上段に谷崎潤一郎風にふりかざして、背徳的で官能的な映像美を描こうとしたが、そんなものは何も感じない特にエロティックなものが欠けてしまえばコアを失う。

 原作はスペイン人作家ハヴィア・マリアスの短編小説「While the Women Are Sleeping」を映画化したもの。読んでいないので何ともいえないがWomenと複数になっているのが気にかかる。

 エピローグで健二の3作目出版のお祝いの席のレストランの向こうを佐原が一人歩いている。群衆の中から振り向く佐原、MOZUで火の中を脱出するビート・たけしと同じ表情。何だこれは?
ベテランのリリー・フランキー、新井浩文、渡辺真起子などがミステリアスな役柄(訳の分からない)で脇を固める。

 監督・ウェイン・ワンで期待したが、アートハウス向けのジャンル映画。
もっとカタルシスを味あわせて欲しいものだ。

 1995年の「スモーク」でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)、2007年の「千年の祈り」でサン・セバスティアン国際映画祭金貝賞(最高賞グランプリ)を受賞している。錚々たる作品群を生み出している69歳の巨匠ウェイン・ワンだがどうも冴えない。
考えてみれば07年以来8年振りの新作だ。すこしRustyになっているかも。

 映画は電通子会社の「CALの50周年」と言うことで電通が制作費を負担している。松下電器宣伝部・辺見さんの要望で「水戸黄門」や「大岡越前」の制作のために設立されたCAL.1966年だったから半世紀経つのだ。08年までCAL社長だった加地隆雄は横浜ベイ・スターの球団社長になったが、今年1月に亡くなった。
今は電通TV局にいた白石統一郎が社長でこの映画のエクゼクティブプロデューサーを務める。

2月27日より丸の内東映他で公開される。

「ピンクとグレー」(日本映画):映画の前半と後半は色分けされていて二人の幼馴染の親友が絶交し元に戻るが永遠の別れが待っている

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スターウォーズの最新の興行成績の情報が入って来た。土曜のブログを訂正しなければならない。

これまででアメリカ国内のトップは6月中旬公開のUniversalの「Jurassic World」のオープニング記録 $208.4Mだったがそれを破ってこの週末に215M(262億円)を越えるだろうと予想したが、着地は更に上回り248M(302億円)。

ワールドワイドではドル箱の中国が開けるのが1月9日だから「Jurassic World」の524.9Mには届かないだろうと関係者は思っていた。
ところが中国抜きで着地は529M(620億円)になったことが昨日(21日)配給元のウォルト・ディズニー(WD)から発表された。

最初の週末だけで620億円とは信じられない数字だ。
ウォール街でWDの株価は上昇を続けているが、明日から学校は休みでクリスマス・休日に突入するファミリー層を引き込み更に拍車がかかる。
 男性を映画館に呼び戻し、ヒロインがフォーズを持ち、白人と黒人が主役を務める世の中の流れに沿った映画がこれほどヒットするとは嬉しい限りだ。


秋川滝美と言う無名の女性作家のオンライン小説「居酒屋ぼったくり」シリーズの4弾(アルファポリス社:2015年10月刊)を読んだが予想しているよりも面白かった。「ぼったくり」と客の意表を突く小さな居酒屋のママ美音。
下町のひっそりとした居酒屋は亡くなった父親から出戻りの30女美音が受け継いだもの。名に似合わずお得なその店には旨い酒と美味しい手作り料理を出し、その上義理と人情に溢れている。
 
実際日本全国の銘酒情報や簡単で美味しいつまみのレシピ―が著者秋川の薀蓄をかけて紹介されている。
つまみで唾が出そうになったのは「油揚げのじゃこマヨ焼き」油揚げに醤油とマヨネーズを塗り、刻みネギとちりめんじゃこを散らして焼き上げる。常連はオーブントースターに入れられた油揚げが焼き上がるのを今か今かと待ち構える。

大葉に重ねてクルクルとまき串で止めたサヨリに薄く天ぷら粉をまぶし説いた天ぷら粉にくぐらせてから油に泳がせる。泡が小さくなって浮き上がって来たところで引きあげ油を切って敷き紙に載せて出す。塩と天つゆ、お好みで食べるカリカリのサヨリが絶品だと言う。
 この章の終わりに「サヨリの腹が黒い」理由が面白かった。
サヨリは昼光性の魚で海面近くおよぐ。青白く半透明な身は太陽光を通しやすく紫外線が内臓にダメージを与える真っ黒なお腹は紫外線から内臓を守るものだと言う。
漫画風のイラストも添えられて読みやすいし理解しやすい。

 弟の馨とやっている居酒屋「ぼったくり」は常連でもっている。
何れも近くの商店街で店を持つ人たちだ。その商店街の近くにショッピングセンターが出来ると言う危惧が今回の短編集のテーマだ。大手のチェーンストアが施主ででっかいスーパーが出来れば商店街の中心にある「スーパー呉竹」の危機だ。毎日常連たちの齎すニュースに一喜一憂の美音の心情が短編集に綴られる。第4弾は序の口、読者が増えて既に累積50万部だと言う。これからもドンドンと続編が出そうだ。


さて今日の紹介映画は途中から色が変わるのは良いが、演じる俳優が変わったり映画の中で主人公の映画を親友が演じたり、自殺や事故死が頻繁に出てきたり、どうもオジサンが着いて行くには難しい。
おまけに行定勲と言う監督は色んな映像の実験をするからややこしい。

この作品は今年の釜山映画祭でオープニング作品として上映されると言う栄誉に輝く。監督デビュー作「ひまわり」で釜山国際映画祭批評家連盟賞を授与され、在日の高校生を描く「GO」で賞を総なめにするなど行定勲監督は韓国とは縁が深い。

映画が始まってから62分後に色合いが変わり、世界が変わる仕掛けとなっている。ピンクからグレーへと色分けだ。
大阪から横浜へ越してきた11歳の小学生の河田大貴は、同じ団地に住む同い年の鈴木真吾と出逢い、中学高校とすっかり親友となった2人は、文化祭でバンドを結成したりしつつ青春を謳歌していた。
高校生になった二人は、雑誌の読者モデルをきっかけにバイト替わりの芸能活動をスタートする。同じ芸能事務所に所属した大貴と真吾はルームシェアを始め、小さな仕事をこなしていた。

ある日、2人は揃ってドラマのエキストラの仕事に出かける。そのドラマ撮影中に言ったアドリブのセリフをきっかけに、真吾はプロデューサー・鶴田に気に入られ連続ドラマに出演することに。
真吾はゴーディこと白木蓮吾(中島裕翔)という芸名で瞬く間にブレイクし、主演俳優として活躍するスターへ登り始める。一方はアルバイトをしながら、売れない俳優・リバーこと河田大貴(菅田将暉)まだ小さい仕事を続けている。

美大生サリーこと石川 紗理(夏帆)はロケ中の二人と知り合い真吾の恋人になる。中島裕翔と夏帆のベッドシーンは初初しくってエロっぽい。このため若いファンを締め出す「R15」 指定になっている
大学へ進学した真吾と大貴の二人は一緒のアパートで暮らし始めるが、真吾がスターダムを駆け上がっていく一方で、エキストラから抜け出せない河田だけが取り残されていく。
やがて二人はささいなことから大喧嘩となり「絶交だ!」と決裂。二度と会うことのない人生を送るはずだった。

5年後大貴と真吾は高校の同窓会で再会。真吾から2人きりの飲みに誘われ言葉を交わすうちに、大貴と真吾は昔のような親友の関係に戻っていく。
華々しく活躍している真吾だったが、実際にはプライドを捨て自分を捨てながら孤独に過ごしており、とても「幸せ」とは言えない状況だという

だが二人が再びめぐり逢ったとき運命の歯車が回りだすことを大貴は知らなかった。
別の日、大貴は約束通り真吾のマンションに訪れる。しかし、そこで大貴が目にしたものは、首を吊って息絶えている真吾だった。6通の遺書を残していたが大貴は自分あての遺書を読み、真吾の想いを汲み取る。そこから色がグレイに変わる。

ときめく人気俳優・ゴーディこと白木蓮吾(中島裕翔)が急逝したことで、白木と河田の二人の物語が映画化され河田が白木を演じることになる。
少年時代からの親友で兄弟以上の絆で結ばれていた、売れない俳優・リバーこと河田大貴(菅田将暉)が一躍世間の注目を集める。白木蓮吾を演技として追体験すること、白木になることで、もう一度昔の「ごっち」と邂逅する。

蓮吾の死は自殺なのか、それとも殺害されたのか。その死に立ち会った大貴は何を語るのか。唐突の首吊り自殺で観客も一斉に「どうして?」と頭をかしげる。

行定監督と脚本の蓬莱竜太のアイデアにより、原作を大胆にアレンジして再構築。
原作を読んでいないので何とも言えないが行定監督なら換骨奪胎、自分の世界で作品を仕上げてしまう。
ジャニーズの人気グループ「NEWS」の加藤シゲアキが2012年に発表した処女小説。ジャニーズ事務所所属のタレントが小説を出版するのも初めてのことらしい。

今やプロの作家が書いた書籍が売れず、お笑いの又吉直樹に芥川賞を与えて200万部を越させて活を入れる時代。加藤シゲアキもドンドン書きまくり売りまくって欲しい。

「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔が映画初出演で主演を務め、「そこのみにて光輝く」の菅田将暉、「海街diary」の夏帆、「誰も知らない」の柳楽優弥といったピチピチした若手俳優が脇を固める。

1月9日よりTOHOシネマズ新宿他で公開される。

「母よ」(MILA MADRE)(イタリア・フランス映画):スタッフは言うことを聞かない、主演男優はチョンボばかり、その上母親は明日をも知れぬ命、女性監督は発狂寸前

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昨日のブログで「スター・ウォーズ」は日本を含めて世界で興行のトップを獲得したとしたが、興行成績では首位だが観客動員数では2位だ。お隣の韓国でも同じ現象が起きている。3D上映の場合は料金プラス立体メガネ代400円が加算される。

だからトップは、昨年興収78億円の大ヒットとなったアニメ「 妖怪ウォッチ」の第2弾「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」が434スクリーンで公開。土日2日間で動員97万4557人、興収10億5780万8800円で、スター・ウォーズ」を抑え初登場首位を獲得。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は2倍以上の958スクリーンで公開され、土日2日間で動員80万258人、興収12億4502万3900円をあげ、興収では首位となったが、動員では2位にランクイン。金曜日初日からの3日間累計動員は104万人、興収は16億円をあげた。口コミが効くので最終BOは100億円を突破するものと思われる。洋画では久々の快挙だ。

今年は業界紙によると邦洋配給13社、1~11月累計1774億で4%増だと言う。
これにインディの配給会社や12月の「スター・ウォーズ」などを加えると2000億円をはるかに越え2100億円ラインを突破し2200億円まで行くかもしれない。(昨年は2070億円)



 「母」は主人公の女性映画監督、マルゲリータ(マルゲリータ・ブイ)だと思っていたら監督の母のことだった。

 スクリプトも完全に検証せず、主要な役者も決定しない様々な問題を抱えたまま労働組合の闘争を描く新作映画の撮影に入ってしまったマルゲリータ。

撮影を開始したがスタッフと揉めて思うような絵が撮れない。
その上俳優で元恋人も出演している。別れたばかりなのに毎日顔を合わせなければならないのは辛い。
その上に離婚した夫の間のティーネージャーの娘ヴィア(ビアトリス・マンチーニ)は思春期で反抗期の難しい年頃。

 だがなんと言っても心配なのは心臓肥大症で入院中の母アーダ(ジュリア・ラッツァリーニ)のことだ。
教師で誠実で真面目な生涯を送ったアーダは子供たちに迷惑をかけるのを心苦しく思っている。
兄のジョヴァンニ(監督のナンニ・モレッティ自身)が甲斐甲斐しく手作りの料理を毎日病院に差し入れている。
何時間もベッドに付き添うジョヴァンニは職を辞して母親の看病に当たっていることをマルゲリータの知るところとなる。
医師に話では病状は重く回復の余地は無いと。
ジョヴァンニは静かに受け止めるがマルゲリータは混乱して戸惑うばかり。
ラテン語の優れた教師をしていた母の痴呆症にも驚く。

 映画の主役、工場主を演じるアメリカ人俳優バリー・ハギンズ(ジョン・タトゥーロ)がスケジュールをはるかに遅れてようやくセット入りをする。

 軽薄なイタリア系アメリカ人ですこしばかり齧ったイタリア語を喋り、スタンリーキューブリックと親友だと法螺を吹くが彼の映画に出たことは無い。
それにシーンを間違えるは、セリフは入ってないは、冗談なのかシリアスなのか素っ頓狂な発言で周囲を混乱させる。

 ジョン・タトゥーロはイタリア系だから、イタリア語を喋れる前提なのだが怪しい発音で何度もNGを出す。
マルゲリータは発狂寸前。
兄のジョヴァンニと違い母のことは最重要では無い。
撮影の進行やプロデューサーや出資者のクライアント、下手な役者、言うことを聞かないスタッフなどなどが心に重く沈んで来る。
マルゲリータは神経衰弱になって行く。

 素晴らしい演技だ。53歳のマルゲリータはこの作品でドナテッロ賞最優秀女優賞を受賞した。通算7度目だから感激も無いだろうが。
男性と女性を入れ替えたがナンニ・モレッティ監督の体験に基ずくによるその家族の姿を描く、人間ドラマ
「親愛なる日記」や「息子の部屋」などでベルリンやカンヌ映画祭の常連、62歳のナンニ・モレッティ監督の自伝ドラマとしては貴重な作品だが、少しとっちらかっている感じは否めない。

3月より渋谷BUNKAMUAル・シネマ他で公開される。

「ミラクル・ニール」(ABSOLUTELY ANYTHING)(イギリス映画):願ったことは何でも実現できる全知全能の「奇跡の力」を手に入れた冴えない中学校教師男は愛犬と一緒に地球を救えるか?

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昨日(23日)の雨の降る中、NY在住の吉田洋(ひろみ)さんのリサイタルが新宿舟町の小さなジャズスポット「Diamond Club」で行われた。

吉田さんは電通中興の祖・吉田秀雄社長の孫、社内でも腫れ物に触るように大事に大切に傷つかないように、余り重要でない国際関連の仕事につかせ、ロンドン・パリ、ニューヨークと望みの場所に駐在させた。

 ところが電通がワールドワイド企業の「イージス」を合併吸収し国際ビジネスに焦点を移すと途端に邪魔者扱い。
吉田洋もさっさと見切りをつけて早期退職、NYで悠々自適の生活を始めて10年近く経つ。

 皮肉なことにイージス合併で海外業務の営業利益が全電通の半分以上を占め、株価は4倍以上に膨れ上がったから、電通の大株主の吉田さんは大富豪だ。
トライベッカにクラシカルなレストランを開いたが4年も持たず潰れた。が気にも留めず今は閑に任せてジャズ歌手を目指しダンスの練習に励んでいる。

 昨年の暮れ、銀座7丁目のジャズジョイントでのコンサートは耳を覆いたくなる歌声で「旦那芸」を印象つけたが、今年は「別人28号」。
 高音は伸びるし音程もしっかりしている。
 持ち前のハスキーな声質はフランク・シナトラやサッチモのカバー曲に合っている。
前唄のハルミさんが英語の発音が悪いし音程は狂う、出トチはすると散々なのに引き立てられてヒロミ君の歌声の冴え渡ること!
クリスマスソングを客と斉唱してお開きの顔つきは新米ながらプロ歌手の自信に満ちていた。

 還暦前だが超の付く富豪、シンガーで生計を立てる必要は無いがリサイタルはもっと増えるだろうし、僕らも懐かしい電通アルミナムの和気藹々さで雰囲気を楽しめて気持ちが良い。


さて今日の映画は、原題「ABSOLUTELY ANYTHING」願い事をすれば「何でも叶う」と言う意味。口で唱えて右手をサッと振る。あーら不思議、願えば何でも揃うし、人も自由に操れる。

 BBCTV(日本ではTV東京)で放送された「空飛ぶモンティ・パイソン」から約半世紀、映画では1974年の「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」で「聖杯」を巡ってのアーサー王と十字軍の話は笑い転げる程面白かったが、それからはメンバーが年をとり脚本も冴えずバカなスラプスティック・コメディも飽きられて来た。

 この「ミラクル・ニール」はバラバラになっていた英国コメディグループ「モンティ・パイソン」の70歳を越えるメンバーが再結集する。

 監督テリー・ジョーンズと宇宙人などの声の出演、他にジョン・クリース、テリー・ギリアム、エリック・アイドル、マイケル・パリンなどがリユニオン。

 そしてメンバーではないがパイソンが大好きな英国人俳優サイモン・ペッグ(ミッション・インポシブルなど)が主演し、さらに昨年死んだロビン・ウィリアムズが愛犬の声を担当するというオカシナキャスティング映画だ。
 むくつけき男どもに混じって美女ケイト・ベッキンセールが歌手として顔を見せる。

 はるか銀河系の先の先。
そこではエイリアンのカウンシルが地球滅亡を企んでいる。宇宙船は脚の長い蛸のような形。
しかし「銀河法」で、どんな惑星も一度は存亡のチャンスを与えるべきと定められていることから、適当に地球人をひとり選んで、地球の運命を預けることになった。
 選ばれた男のキャラクターが地球の運命を握っている訳だ。

 知らぬ間に地球の運命を背負わされたロンドン・パブリックスクールの冴えない英語教師ニール・クラーク(サイモン・ペッグ)は突如として全知全能の力を手に入れる。

 そんなことを知らないニールは言うことを聞かない煩いガキばかりのクラスなど宇宙攻撃で滅ぼしてしまえ!と腹立たしく言うと教室は空襲を受けて生徒全員死亡。
「死者よ、蘇れ!」と言うと生徒ばかりか墓の中の遺体までがゾンビとなって歩き回る。

このニールのオールマイティの能力発揮のパターンが延々と続く。
「女を喜ばせるアソコになれ!」にはデカ過ぎて「適当に!」と直さなければならないし、「素晴らしい肉体に!」ではオッパイつきの女性のトルソーが、「偉大な男の肉体に!」と言い直すとアルバート・アインシュタインの老体になる。
一階下の美女(ケイト・ベッキンセール)に思いを寄せていたニールは美女に自分を惚れさせたり。

CGの世界でギャグも何でも実現してくれるが、やがて飽きて来る。

「愛犬デニスが喋れるように!」で、ようやくR・ウィリアムズの声が勝手なことを言い出す。腹をだして撫でさせてやると人間がいい気持ちになる。犬がいい気持ちになるんじゃない、とか。イヌのウンコは脚が生えて自分でトイレに落ちて始末したり、ニールが長年取り掛かって完成しない小説を終わらせたりと。何でもそれこそ「ABSOLUTELY ANYTHING」願い事をすれば「何でも叶う」

最後は崇高な願望になる。ホームレスの居ない世の中に、飢える人が無い世の中に、戦争など無くなってしまえ、と。

犬のデニスの気まぐれな願望が宇宙船を破壊しエイリアンをやっつけるのが可笑しい。

 2014年に急逝したロビン・ウィリアムズがまさかの愛犬役で最後の出演。本編では声の出演だがエンドクレジットの流れる中アフレコで死ぬ前の姿が垣間見られる。

4月、新宿バルト9他で公開される。

「ブラック・スキャンダル」(BLACK MASS)(アメリカ映画):FBI史上最高の懸賞金をかけられた実在の凶悪犯ジェームズ・ホワイティ・バルジャーをジョニー・デップが熱演する実録映画。

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ボストンを舞台にギャング団の映画が何本かあった。
ベン・アフレック監督・主演で2010年に公開された「ザ・タウン」。
ボストンの北東部に位置するチャールズタウン。
そこに暮らす者たちは、愛と憎しみを込めて、その街を「タウン」と呼ぶ。
タグ(ベン・アフレック)は、強盗を親から子へと家業のように引き継がれてゆくこの街から抜け出そうとしていた。しかし、その思いとは裏腹に、今では強盗一味のリーダーに収まり、狭い街で幼い頃から家族のように育った3人の仲間たちと、証拠を何も残さない完全犯罪に命を張っていた。

ボストンは犯罪都市なのかだろうか。
マーティン・スコセッシ監督が念願のアカデミー賞を獲得した「ディパーティッド」(06年)もボストン南部、通称「サウジー」を舞台にする。
警察はこの街に蔓延する犯罪を撲滅すべく最終戦争に突入しようとしていた。
標的は犯罪組織のトップ、イタリア系のフランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)。
その支配力を内部から崩そうと警察は新人警官のビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)を組織に潜入させる。
香港映画「インファーナル・アフェア」のリメイクだ。


だが今日紹介するこの映画は伝説のギャング、ジミー・ホワイティ・バルジャーの実録作品だ。
舞台は1975年のサウス・ボストン南西部の「サウジー」。必ずボストンの犯罪映画に登場する地域だ。

 就任したばかりのFBI捜査官、ジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)はアイルランド系ギャング「ウィンター・ヒル」のボスであるジミー・ホワイティ・バルジャー(ジョニー・デップ)とサウジーで生まれ育った悪ガキの頃からの付き合いがある親友。
おまけにジミーの弟、ビリー(ベンディクト・カンバーバッチ)は州上院議員の実力者。

功名心に焦るコノリーはバルジャ―兄弟に手を組み一緒にアイリッシュの共通の敵であるイタリア系マフィアを排除しようと持ちかける。
 
アメリカへイギリスやフランス、ドイツなどより遅れて移住して来たイタリアやアイルランド、ユダヤ系のマイノリティは社会の底辺にあえぎ、ギャングやマフィア、モブなどと呼ばれる闇の組織を作っている。
NYやシカゴなどの大都市に共通に見られる現象で、因みにボクシングの世界も同様、
ヘビーウェイト・チャンピオンも黒人が台頭するまではこれらの人種が世界王者だった。
(フィクションだが、ロッキー・バルボアも「イタリアの種馬」のニックネームを持つ)

 自分たちアイリッシュのシマに入ってきてナンバー賭博や麻薬、売春、高利貸などに手を染めているイタリアマフィア、アンジェロ・ファミリーの撲滅なら喜んで手を組むとジミー・バルジャー。

 ファミリーを叩き潰すため子分のブライアン・ハロラン(ピーター・サースガード)ケビー・ウィークス(ジェシー・プレモンス)シティーブ・フレミ(ロリー・コクレイン)などと一緒に拷問や傷害、果ては殺しと何でもやってのける。
その残忍な描写に目を背ける。

一方では良き家庭人。恋人のリンジー・シル(ダコタ・ジョンソン)と幼い息子ダグラスを可愛がるジミー。

しかしダグラスが奇病にかかり短い命を終えると狂気に歯止めのきかなくなったホワイティは法の網をかいくぐって、コノリーのバックアップもあり絶大な権力を握るようになる。

1981年にジミ-・バルジャ-はコノリーとの密約の情報をFBIに提供し、次々とアンジェロ・ファミリーを絶滅に追いやりボストンで最も危険なギャングへとのし上がっていく。

コノリーの上司マクグワイア(ケビン・ベーコン)はバルジャーを嫌い不信感を抱くがコノリーは同僚ジョン・モリス(デイビッド・ハーパー)と手を組み巧みに上司の追及を逃れる。

 アンジェロが罪状を認めた逮捕され起訴されたことでコノリーは一躍FBIのエースの座を掴む。
バルジャーもコノリーも「ウィン・ウィン」ゲームだ。
しかし弟の上院議員・ビリーは一歩退いて仲間に加わらない。
 バルジャーは不正をリークしたと身内のハロランを射殺し、ギャング内の団結を固める。
 
 だが1985年に最愛の母を失ったジミーは更に狂気の暴走を始め、ギャング団内部で怪しい者たちの粛清を次々と始める。
 売春婦のジュノー(デボラ・ハッセイ)を残酷に絞殺し、夫がジミーと深入りするのを懸念するコノリーの妻マリアン(ジュリアンヌ・ニコルソン)を脅迫するに至って観客のジミーへの感情移入は薄れて行く。

 カリブの海賊で最高潮となった人気も「ヒューゴ」や「ローン・レンジャー」などの作品がコケ、今一つパットしないジョニー・デップが従来とガラリと変わったアンチ・ヒーローで当てた感じだ。

 欠けた前歯、オールバックのグレイの髪の毛は後退して半分禿げて額が広い。
革ジャン姿で現れサングラスを取ると冷たいブルーの目が鋭く光る。
ヴァンパイアの顔付きだ。
画面に現れた初めにはデップと気付かぬ程のメイク。
家族への暖かい愛情と冷酷な殺人、ビジネスとしてイタリア系ギャング団を壊滅させるための昔からの悪ガキの友FBI捜査官と手を組むクールさ。

FBIのポン友コノリーは「華麗なるギャツビー」のジョエル・エドガートン、
弟の上院議員ビリーに「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のベネディクト・カンバーバッチら演技派の役者が脇を固める。

監督はスコット・クーパー。
「クレイジー・ハート」でジェフ・ブリッジスにオスカーをもたらし、「ファーナス/訣別の朝」では、クリスチャン・ベイル、ウディ・ハレルソンで男のドラマを仕上げている。

やがて新たに辣腕の連邦検事ワイシャック(コリー・ストール)はコノリーのプレゼント(レッドソックスのプレミアム・チケットなど)も受け取らずコノリーとジミーとの関係を暴いて行く。
司法取引でケビン・ウィークス、シティーブ・フレミ、殺し屋ジョン・マルトラノ(アール・ブラウン)などにジミーの悪行を密告させる。

 FBI捜査官コノリーも逮捕され収監される。
警官とFBIの包囲網を破ってボストンから逃亡すること35年、2011年遂に伝説のギャング・ホワイティ・バルジャーは逮捕され11件の殺人容疑で、終身刑2回プラス5年の刑を宣告されて今は何処かの刑務所に収監されている。

 FBI史上最高の懸賞金をかけられた実在の凶悪犯ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーの実録クライムドラマは史実に基づくだけあって凄い迫力があるしジョニー・デップはスターの座にカム・バックした。

1月30日より新宿ピカデリー他で公開される。

「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」(IRIS)(アメリカ映画):顔より大きなトンボメガネの老女、アイリスはアメリカのファッションアイコンだ。

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顔よりデカくはみ出している丸い黒縁メガネの白髪のトンでもない老婆がいきなり画面に現れる。
この記録映画の主人公アイリス・アプフェル、94歳だ。

 75年のキャリアを持つファッション・アイコンの現役実業家。
画面に向かってしわくちゃのアイリスが独白する。

 「言われたわ、あんたは美人じゃない。だが、独特のスタイルがあるって。努力して魅力を身につけるの。色々な事を学び個性を磨くのよ」

 大きなメガネと大ぶりのじゃらじゃらしたアクセサリーがトレードマークのアイリス。
デザイナーのように自分でファッションを創り出すのではない。
独創的な着こなしやスタイルは、年2回の外国旅行やどこにでもある蚤の市などに出掛けて目に止まった衣服やアクセサリー靴バッグなどを収集し、それを「ジャズの即興」のように組み合わせて身につけることにある。

「ハリー・ウェストンの数万ドルする宝石よりも4ドル程度の大振りなジェイド」の方が似合うと。
例えば高価なオートクチュールのトップスに教会の祭服のようなパンツを合わせ、民族的な大きな首飾りやブレスレットの宝飾品を身に着けたコーディネートは実にユニークだ。牧師の式服はアイリスのラウンジウェアに仕立て直してある。

 スタートはインテリアデザインナー。
1948年に広告会社の役員だったカール・パテルに出会い大恋愛の末結婚。
二人でインテリアの古式な織物(テキスチャー)を収集し自ら織り販売する「オールド・ワールド・ウィーバーズ」社を設立し成功を収める。

このカールは撮影の最中に100歳の誕生日を迎えアイリスを始めスタッフからお祝いを受けているシーンがある。
「髪結いの亭主」ながら(だからこそ)矍鑠としていたが、アメリカで映画が公開された今年の8月、101歳直前にうっ血性心不全で亡くなったと言う。
アイリスは1921年生まれだから94歳、夫より7歳若いが100歳は軽く越えるだろう。

 この映画を撮ったアルバート・メイズルス監督は今年3月にすい臓がんで亡くなった。
88歳だった。エンドクレジットに献辞が出る。

 映画はアイリスの成功の秘訣」を探ろうと、展覧会や老舗デパートでのディスプレイ企画、売り切れ続出のTVショッピングなどの舞台裏に潜入する。

 アイリスは監督より6歳年上で昔からの親しい友達。
カメラに向かってファッション以外にも世間話をしたり人生相談をしたり、ともかく普通のドキュメンタリーと違い内面深く入り込んでいる。

 カメラはアイリスの日常に加えて、ドリス・ヴァン・ノッテン、アレキサンダー・ワンなど著名人のアイリス評も交えて、自由で楽しく生きる事と、サクセスの両立の極意を引き出している。

「パーティに出かける支度をする時の方がパーティに出るより楽しい」
「人の目を気にするのではなく自分のために服を着るのよ」
「人と同じ格好をしないのは、自分の意見を持つと言うこと」
「私は大きくて大胆で派手な物が好き。死者も目覚めるほどのインパクトよ」
「センスがなくても、幸せなら良い。皆好きな服を着るべきだもの」
五番街を歩く群衆の中で小柄なアイリスの特異なファッションは際立つ。

 94歳にもなると体験から孔子なみの格言が無数に輩出する。
映画を見ながらメモを取るのに大変だ。

 セントラルパークの南、黒人街のハーレムはお気に入りの場所。「ハーレムの人(黒人たち)はカラフルでスタイリッシュよね。ダウンタウン(白人たち)では皆黒ずくめよ。制服みたいで面白くない」

 マンハッタンで古くから住むパークアベニューの広大なアパートはアイリスの宝庫。
衣装、アクセサリー、バッグ、靴が無数に収納されその日の気分で選んで組み合わせて外出する。
フロリダ・マイアミビーチのアパートのコレクションはもっと奔放な品揃えだ。
ロングアイランの倉庫には更に長年愛用した品々が仕舞われている。

 二人は主義として子供を作らず67年の結婚生活を送った。
ハイライトはジャッキー・ケネディを始め9代に亘る大統領の在任中にホワイトハウスのインテリアを任されたことだ。
 84歳にしてNYメトロポリタン美術館での自身のファッションコレクションの展示会を開催(84歳の新人だと)、米国テキサス大学では客員教授など、現在も精力的に活動を続けている

 「ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター」などのメイズルス監督は「米ドキュメンタリー映画の巨匠」と呼ばれるが、彼女の始めた独特の「ダイレクト・シネマ」方式で撮っている。
スクリプトを予め用意せず撮影しながら録音しナレーションは入れない。
「選挙」などで注目されているNY在住の日本人ドキュメンタリー監督、想田和広が踏襲している手法だ。

 3月5日より角川シネマ有楽町にて公開される。

「地獄花」(韓国映画):韓国慰安婦(パンパン)は生きるための伝統的な女性のライフスタイルで日本の関与する問題ではない

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日韓国交正常化50周年記念と称して京橋の国立フィルムセンターで1934年から1959年までの古い韓国映画を21本上映している。1934年と言うのは日韓併合の年でもないし正常化とは関係無い。
併合1910年から1945年まで36年間はは韓国人の怨念の「日帝36年の支配」の時代で、正常化は1965年6月から。何故34年からの映画と言うのが分からない。

 昨日(26日)が最終日で1958年(昭和33年)に制作されたこの映画を見に行った。
フィルムセンターも今年最後の上映でいつもよりは少ない観客数。
だが65歳以上の老人は310円と言う格安入場券ですっかり固定客が付き、映画が終わると顔見知り同志が「良いお年を」「来年もここで会いましょう」と声を掛け合っている。

 お役所管轄のフィルムセンターは今日(27日)から1月4日まで休館し、5日からは三隅研二特集。19本の「必殺」シリーズなどで時代劇に新風を吹き込んだ日活や大映、独立プロと渡り歩いた監督だ。いざこれからと言う時に兵隊にとられ3年間もシベリア抑留を経て油の乗りきった54歳で撮影中に倒れ帰らぬ人となった、伝説の監督だ。これも3月半ばまで60本も上映される。

日韓外相会議が慰安婦問題でまたもや頓挫している。
阿部首相は「心からおわびと反省の気持ちを申し上げる」などと記した手紙を元慰安婦宛てに送っている。

だがそもそも慰安婦問題など存在しなかったのだが「売国奴」朝日新聞の虚偽の記事のために韓国側が問題視し始めた。
朝日新聞植村記者は「韓国女性を強制連行して慰安婦にした」と証言した唯一の日本側証人、自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の証言を第三者機関の調査は虚偽だと判断し関連記事16本を取り消した。
 済州島に行ったことが無いのに吉田は失職し証言すれば朝日が高い稿料を払ってくれるので済州島から女性が強制連行され慰安婦となったと虚偽の証言を繰り返し、あまつさえ各地を講演をして歩いた。

 それでも日本政府は謝罪し元慰安婦にお金を支払って問題は解決しているにも拘らず、新たな慰謝料を要求している。まるで「乞食」だ。
あらたな慰謝料の基金に関しては、日本は1億円超を軸に検討していたが、韓国側が総額10億円以上を求めていることから、さらに上積みができないか調整していると言う。
既に解決している問題にまたもやイチャモンを付けていて、日本大使館前の慰安婦像の撤去にも抵抗している。


 この「地獄花」に登場する女性たちは皆慰安婦だ。朝鮮戦争後だから日本軍相手でなく米国兵・ヤンキーに纏わりつく。
 その中の一人が言う「ヤンキー人でも無いし韓国人でも無い。あたしたちはパンパン人だ」

 日本でも貧困と飢餓に苦しむ東北の娘たちの親が女衒から金を受け取り娘たちは慰安婦となった。日本政府は韓国慰安婦に慰謝料を払うなら自国の犠牲者たちも面倒を見るべきだ。
 第二次大戦から朝鮮戦争終了の時代までは女性たちは自ら娼婦となり慰安婦となってその当時支配層の軍隊に媚びを売っていたのだ。

 この映画に描かれているように、日本軍の後は進駐して来たアメリカ兵(ヤンキー)の慰安婦になるのは強制されたからでも拉致されたからでも無い。
 「売国奴」朝日新聞の誤報に基づく記事を盾に日本政府に無理難題を迫るパク・クネ大統領はこの映画を見直せば、自国民の女性像が確認できる。

 1950年代から60年代にかけて売れっ子のシン・サンオク監督の7作目の作品。
田舎からソウルへ出稼ぎに行った兄を追った弟の大都会での彷徨を描く。

 軍隊を除隊し田舎に戻ったドンシク(チョ・ヘウォン)は、出稼ぎに行くとソウルへ行ったまま消息を絶った兄ヨンシク(キム・ハク)の行方を追ってソウルへ上京した。だが上京するなりスリに有り金の大半を盗まれて泊まるところも無く3日も食べていない。
だがたまたま街角で出会った占い師に、もうすぐ兄に会えるはずだが、直ぐに別れることになるだろうと予言される。
 
 果たして、占い師の予言通り、露店の立ち並ぶ市場で走り去る兄の姿を見てドンシクは必死に追いかけ、何とか兄を捕まえる。年老いた田舎の母が会いたいと伝えると、ヨンシクはパンパン(慰安婦)のソーニャ(チェ・ウニ)のヒモ兼強盗団の頭目になっており、米軍の補給処などから物資を盗み出しては横流しをして食いつないでいた。

 そんなヨンシクは故郷の母に合わせる顔がないとわざと消息を絶っていたのだった。
 ハンサムなドンシクは女にもてる。色目を使うソーニャに連れられて多くのパンパンを抱える置屋に着いて行く。

 そこでやはりパンパンのジュディ(カン・ソニ)に出会う。ジュディは朝鮮戦争で家を焼かれ両親を亡くし仕方なくパンパンをして暮らしていたが、一日も早くこの生活から足を洗いたいと思っていた。
ハンサムなドンシクに惹かれたジュディは、ドンシクに田舎に戻った時に自分も連れてってくれないかとそれとなく訊いてみるが、それには口を濁すドンシク。
 所詮パンパンの自分と結婚などしようと思わないのだと悲しく思うジュディ。

 一方、ソーニャに惚れきったヨンシクは大仕事をしてソーニャと結婚し故郷に連れていこうと考える。しかし都会育ちのソーニャはソウルを離れる気も今の生活から足を洗う気もない。
それどころか、ソーニャはヨンシクよりハンサムなドンシクに乗り換えようと、彼を誘惑い始めた。そして突然ヨンシクを消し、ドンシクと二人だけが生き残れるアイディアが閃く。米軍輸送列車をかっさらう大仕事に出かけたヨンシク一派の動きを憲兵隊に密告するのだ。

 戦争で焼け跡となったソウルの片隅でさまよう売春婦とギャング団の生き様を描く。白黒映画だがカーチェイスや銃撃戦など迫力はある。

 シン・サンオク監督は大戦中に東京芸大に留学をいている。日本の映画の影響も受けていると思われる。

 ソーニャ役のチェ・ウニはパンパンを天職と思い、自分の欲望のためには裏切りも辞さない悪女は時代を超えたファム・ファタール。
 身体の線を強調し胸元を大きく開けたセクシーなワンピースが良く似合う。
リタ・ヘイワースを思わせる美人だ。朝鮮戦争後の韓国社会の混乱が儒教社会をはみ出す新しい女性たちを生み出していたことは間違いないが、それをパク・クネはじめ国を挙げて蒸し返す必要も感じない。

ドンシク役のチョ・ヘウォンも兄ヨンシク役のキム・ハクものっぺりした朝鮮顔の美男子。これなら慰安婦にモテモテなのも良く分かる。

 東京国立近代美術館フィルムセンターにて上映された。

「幸せをつかむ歌」(RICKI AND THE FLASH)(アメリカ映画):大スターになろうと子供三人を捨ててカリフォルニアへ渡った母リンダ、数十年振りに家に戻って病気の娘ジュリーと向き合う

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「マンマ・ミア」「イン・トゥ・ザ・ウッド」などミュージカル映画で歌の上手さに驚かされたメリル・ストリープがこの作品ではロックンロールを最初から最後まで歌いまくる。

ジョナサン・デミ監督が撮るとまともな音楽映画にならない。
ストリープが素晴らしい唄を披露するが,尾羽打ち枯らしたロック歌手・リンダだ。
昼はスーパーのレジ打ち、夜はロック歌手。
フラワーチャイルド世代でオバマ嫌いの共和党保守派、背中に出身地アラバマ州ガスデンの旗の入れ墨を背中に背負っている。
レパートリーは往年のスタンダードナンバーから最近のレイディ・ガガやピンクまで客のリクエストに何でも応じる。

しかしストリープのコンサート映画だぜこれは、と思っている内にバラバラ家族のシリアスなドラマになる。

リンダはカリフォルニアでスターになろうとインディアナポリスのブラメル家に3人の子供たちを捨てて家を出た。
夢破れそのままLAに居残りタルザナ・バーの「リッキー&ザ・フレッシュ」のヴォーカル兼リーダーのリッキー・レンダッツォ(通称リンダ・ブルメル)。バンドの音が良い。それもその筈故ニール・ヤングと一緒にやったリック・ローザがベースをパーリアメント・フンカーデリックのバーニー・ウォーレンがキーボード、グラミー賞歌手のリック・スプリングフィールドがギター。

スプリングフィールド扮するグレッグがボーイフレンドで一緒になりたいと思っているが一文無しで借金を背負っている身では言い出せない。
リック・スプリングフィールドは大好きなミュージシャンで、シンガーソング・ライター、ハンサムな髭面はストリープと同じ66歳だが若く見える。

ある日そのインディアナポリスから元夫のピート・ブラメル(ケビン・クライン)から電話がかかって来る。娘のジュリー(ストリープの実娘、メイミー・ガマー)が夫に捨てられ離婚して神経衰弱になっていると。
 何とか工面して飛行機でインディアナポリスのピートの豪邸へタクシーで着くが文無し、タクシー代をピートが払う。
 ヒッピーのようなワイルドなリンダに比べるとピートはキチンとしたスェーターにベストとキチンとした身なり。
 
数十年も会っていない子供たちは母親に嫌悪の情を露にする。今更なによ。優しい気配りの義母モーリン(オードラ・マクドーナルド)が家に居ない隙にやってきたのだろうと。

 ジュリーは何度も自殺未遂を繰り返し、部屋に引きこもりシャワーも浴びないしパジャマを着たままだ。それでも好奇心から母に会う。
末っ子のアダム(ニック・ウェストレイト)は母のホモ嫌いの性癖が直っていないと憤慨する。
長男のジョッシュ(セバスチアン・スタン)は唯一うまく立ち回り母と接するが結婚式も間近で母親には出席して欲しくないと考えている。フィアンセも同感だ。

ジュリーとリッキーは段々と失われた年月を埋め始めて来た。
ピートは元妻リンダにセックスを仄かに感じる。
そこへ妻モーリンが帰って来てほんわかロマンスの雰囲気もすっ飛び、リッキーもLAに飛んで帰る。

 ハイライトは長男ジョッシュの結婚パーティ。
インディアナポリスに飛ぶ金の無いリッキーにグレッグは自慢のギブソンを売って二人分の旅費を作る。
 子供たちの前で母親として自分のバンドを引き連れパーティステージで歌おうとする。しかし登壇を臆する。

その時のリッキーのオマジナイが笑ってしまう。「ミック・ジャガーは4人の女性に7人の子供を産ませた。だがミックはその子たちの誰一人も育てていない」

 母親の屈託の無い素晴らしい歌声に新郎新婦を始めジュリーやアダムも心を解放しわだかまりも溶ける。「家族の絆」が取り戻せた瞬間だ。

近頃ハリウッドでも流行りかな。ボリウッド式に大勢が踊って歌う。メリル・ストリープの唄が何曲も何コーラスも延々と続きパーティ出席者はハッピーにダンスに夢中になる。

ストリープの唄と芝居に魅惑され娘メイミー・ガマーの好演に見とれる内に映画が終わる。
「羊たちの沈黙」の名匠、ジョナサン・デミが監督を務め、脚本は「JUNO/ジュノ」で一躍名を挙げた元ストリッパーで異色のディアブロ・コディが女性たちの生で微妙な感情を書き込んでいる。

3月初旬にヒューマントラスト有楽町他にて公開される。

「二十歳」(TWENTY)(韓国映画):20歳を迎え夢と希望に溢れた親友3人組を待ち受けているのは徴兵制度

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今朝のニュースを読んで腹が立つ。どの新聞も同じ見出しだ。

日韓両政府は28日の外相会談で、旧日本軍の従軍慰安婦問題の決着で合意したと言う。岸田文雄外相と韓国の尹炳世外相は会談後の共同記者発表で「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明。
韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団に日本政府が10億円を拠出し(虚偽報道で火を付けた朝日新聞に払わせろ!)、両国が協力していくことを確認した。国交正常化50年の年末ぎりぎりとなったが、安倍晋三首相と朴槿恵大統領が下した決断を評価したいと新聞TVは報じている。

 しかし日本大使館前の「慰安婦像」は撤去しないし、何よりも韓国民の動きを政府がコントロールできない、と言うか陰にまわって煽っている節も見られる。

案の定、今朝の産経は次のように報じている。
韓国では慰安婦問題は“聖域”と化しており、誰も異を唱えられない雰囲気が広がっているのが実情だ。元慰安婦の多くや支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)は合意に反発しており、世論の説得も容易ではない。

 現在、解体され工事中の日本大使館の前に2011年、慰安婦像を設置したのが挺対協だ。地元の行政当局は設置許可さえ出しておらず、外国公館に対する侮辱行為はウィーン条約にも違反している。

 しかし、韓国政府は「民間団体が自発的に設置したものだ」(外務省報道官)とし、違法行為を黙認してきた。日本大使館前では毎週、像を囲んで対日非難の抗議集会が開かれている。

 今回、韓国政府は「公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知」(尹外相)したとし、ようやく日本の抗議を受け入れた。しかし、合意を受け28日に記者会見した元慰安婦の間では「韓国政府の決定に従う」との声が出た一方で、「合意は無視する」といった反発が強い。

 挺対協は合意を「被害者や国民を裏切る外交的談合だ」と非難し、像の撤去・移転に関し「韓国政府の介入はあり得ない」と猛反発した。韓国紙も「韓国社会での合意で移転はできようが、その象徴性のため政府が一方的に移転できない」(朝鮮日報)と否定的だ。

 また、慰安婦像が日本大使館前から撤去されても、別の場所に移される可能性が高い。像は韓国各地で増え続け、昨年から今年にかけてソウル市内や地方で新たに複数設置された。

 韓国だけでなく、米国各地にも慰安婦の碑や像が設置されている。外相会談で韓国側は「第三国での慰安婦関連の動きは支持しない」との認識を示したが、韓国紙は「韓国政府が海外の像に、何ができるのか」と断言している。

 韓国では来年新学期から小学高学年から高校までを対象に、新たに「慰安婦教育」の授業が始まる。「最終的かつ不可逆的な解決」で合意したにもかかわらず、慰安婦像は撤去どころか今後も増え続け、慰安婦問題が韓国国内で“歴史の真実”として語り継がれていく可能性は残っている。


僕ははっきり言って「嫌韓」で韓国人の根性は「乞食」だと思っている。
だが韓国の映画だけは高く評価し好んで見る。

昨日も韓国映画専門のシネマート新宿の午後2時35分の上映の「二十歳」を観に出かけた。
スクリーン2は座席数は60余席だが10人ほどしか入っていない。

 この映画に興味を持ったのは、韓国で今年の3月25日から公開されたデビュー週末(3日間)で114万人を動員し$7.91M(9.6億円)を挙げたからだ。
 Rentrak(アメリカの調査会社)のグローバルBOでも7位にランキングされた。

 悩みや煩悩を抱えながらも絶対的信頼で結ばれた高校2年の男子3人組を描く青春ドラマ。
絵や漫画を描くことが上手い高校生ドンウ(ジュノ)は、クラスメートの可愛いソミン(チョン・ソミン)にひそかに思いを寄せている。

 ある日、プレイボーイのチホ(キム・ウビン)がソミンの胸にタッチしたことからドンウとチホはけんかを始めてしまう。
喧嘩する二人の中に入って止めたのは、秀才のギョンジェ(カン・ハヌル)だった。

それまでは仲良しに過ぎなかった3人は、この出来事がきっかけでかけがえのない親友になる。
困ったことにマッシュルームカットののっぺりとした韓国高校生の顔は目が悪い僕には区別がつかない。美少女のソミンや1年先輩のチンジュを巡って嫉妬や嫌悪などで一時的に争うことがあるが結局は仲直りする。

 学校のそばにある中華料理店を地上げしようとするヤクザたちとおかみさんが美人だからと店主に味方する大立ちまわりは愉快だ。
スローモーションでドンウのとび蹴りが逆襲されたことから始まるヤクザ3人相手のドタバタ喧嘩は完膚なきまでに叩きのめされる。店主は海兵隊上がりでテコンドー、特攻武術(トゥコンムスル)、柔道、空手、合気道と総ての達人と聞いていたがヤクザのバックルに拳が当たって悶絶し倒れる。頑張ったのは美人オカミでフライパン片手にぶん回す。
勢い余って亭主までぶん殴ってしまう。

 その喧嘩のバックに流れるのがセリーヌ・ディオンの「ALL BY MYSELF」。
美しいメロディと修羅場のアンバランスが笑える。

やがて高校を卒業した3人は、それぞれの道を歩む。
漫画家を目指すドンウは浪人生活を送り、親のスネをかじり続けるチホは駆け出しの新人女優ウネと出会いヒモになる。名門大学に進学したギョンジェには、先輩のチンジュとの恋のチャンスが到来する。

そして3人は共に20歳の誕生日を迎える。
大学へ進学を止め叔父の製造会社に就職し会社員風に短髪73分けにしたドンウ。
他の二人は裏切ったと攻めるが漫画家になる夢は捨てたわけでは無い。
「唐辛子宇宙人の逆襲」はネットで徐々に広まる。唐辛子とは男性のオチンチンのことだと言う。

20歳の誕生日を迎え、徴兵された3人は軍隊に入る前の1週間、一緒に駐屯地まで歩いて民間人の生活に区切りをつける。
これが映画の結論だろうか?

青春の絶頂期の20歳の若者たちは2年間を灰色の軍隊でシゴカれる。
どんなに活躍し夢を抱いても韓国には20歳になると徴兵制度がある。

釜山映画祭で「ブラザーフッド」に主演したウォン・ビンと話をしたが徴兵を目前に控えていた。案の定人気絶頂だったウォン・ビンが軍隊を終え映画界に復帰した後は「母なる証明」だとか「アジョン」などとかロクな役が廻って来ない。アジョンが最後で2010年以来日本で彼の映画は公開されない。(韓国でも映画出演が無くなっているのでは?)

WBCやオリンピックで韓国が強いのは「優勝したら兵役免除」が付くからだと聞く。
「20歳」は韓国徴兵制度を暗に批判し反対する映画だと僕は思う。

K-POP・2PMのジュノが主演し、『チング 永遠の絆』などのキム・ウビンや『きみはペット』などのカン・ハヌルらが共演する強い絆で結ばれた3人の親友同士の友情や愛情は共感を誘う。
イ・ビョンホンが監督デビューし脚本を書いている。
新人監督としては良く映画を知っていて仕上がりは見事だ。

シネマート新宿で公開中

「ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年」(日本映画):「浪速のジョー」辰吉丈一郎を追って坂本順治監督の20年に亘る長期のドキュメンタリ

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 37歳の米澤穂信の短編集「満願」は面白かった。山本周五郎賞などを与えられた出世作で夫々の主人公に隠された秘密があり終盤どんでん返しが意表を突いた。

この最新作「王とサーカス」(東京創元社:2015年7月刊)は長編で実在の事件で騒然とするネパールのカトマンズが舞台。

 主人公は28歳のフリー・ジャーナリスト大刀洗万智。新聞社に6年務めていたが同僚の死にショックを受け新聞社を辞め月刊「深層」に寄稿するライター。5月31日に到着して1週間の予定で滞在していたカトマンズで翌6月1日に国王夫妻が皇太子に射殺される事件に遭遇する。

2001年6月1日にネパールの首都カトマンズ、ナラヤンヒティ王宮で実際に発生した事件。
ディペンドラ王太子(事件直後、危篤状態のまま名目上は国王に即位し、その3日後に死亡)が父・ビレンドラ国王ら多数の王族を殺害したとされる「ナラヤンヒティ王宮事件」。
 
 雑誌「深層」の編集長の依頼で国王夫妻の射殺事件の現地ルポ取材を小遣い稼ぎで始める万智は王宮警備の軍人ラジェスワル准尉にインタビューを申し込む。
事件の翌日にも拘らず准尉は廃屋となったナイトクラブで30分ほど会ってくれるが自分は非番だったから何も知らないと言い張り肝心の事件のことは何も聞けない。

 しかし翌日万智が国王夫妻の葬儀を取材の帰り道、人通りの無い空き地にラジェスワル准尉の死体を見つける。
銃で撃たれて死亡しているが軍服のズボンは付けているが上半身裸で背中に「Informer」(密告者)とナイフで刻まれている。

国王夫妻射殺事件と警護の軍将校の死体、どう結び付くのか「深層」の編集長も興味を抱き万智は指示されるまま取材を重ねる。

寂れたホテル「トーキョーロッジ」で万智と同じく長期宿泊客として登場するのは10年もカトマンズに住んでいる60代の破戒僧の八津田、アメリカLAの学生ロバート・フォックスウェル、インド人商人・シュクマル、宿の女主人・チャメリ、そして万智にとっついお金を稼ごうと誰よりも重要な役目を果たすのが10歳位の男の子、サガル。

宿の真ん前の小さな家に母親と二人で住んでいるサガルは片言の日本語で化石のアンモナイトを売りつけようとしたのを初めとして、驚く程堪能な英語を喋り、情報通で事件を追う万智のガイドを務め関係ありそうな人物や場所に案内する。

「満願」でもそうだったように米澤穂信は一見事件に関係無さそうな人物に隠された秘密の動機があってどんでん返しで読者を驚かす。

プロットは国王事件と警護の軍人射殺事件と繋がる派手なミステリーを追いながら、最後は「裏」が取れないと記事にしない万智のジャーナリスト精神が彼女のキャリアを救うことになるのだが、多くのジャーナリストは外国からカトマンズにフラリと現れて住民たちの悲惨な状況を思い込みの勝手な記事を書き写真を撮って「サーカス」に仕立てることでネパール国民が苦しんでいる、と訴える10歳のサガル。
米沢の少年描写は哲学者であり国を思う愛国者だが10歳の男の子に着せる衣としては重すぎる。一家を細腕で支える少年が金銭を無視して大義に走るとは思えない。

言って見れば「復讐」の燃えた愛国心の高い少年が万智を「罠」に引き込もうとしていることに小説のキモがある。小学校へも通わないストリートキッドを登場させるのは良いが無責任なジャーナリストの引き起こす「サーカス」でネパール国民が災厄を背負い込むと言うのはいささか出来すぎではないだろうか。現地事情など良く調査し書きこまれた堪能できる小説だけにサガルをキーパーソンにすることでご都合主義や安易な逃れをしてしまったのが惜しい。


 左ジャブの打ち方から始まる「あしたのジョー」なら知っているがひっくり返った「ジョーのあした」とは何だ?
映画を見ている内に分かって来る。坂本順治監督が「浪速のジョー」こと辰吉丈一郎を撮り始めた1995年8月から2014年11月までの約20年間、40歳を過ぎてもドクターストップがかかってもボクシングを続ける辰吉のガッツに満ちた生き様を追う。

そもそもの二人の出会いはボクサーとして「浪速のロッキー」(大阪では必ず「浪速」と付く)と呼ばれ人気があった赤井英和を主演に「どついたるねん」(89)でデビューし注目を浴び、続いて赤井主演で撮った「顔」(90)も好評でボクシング通の監督として雑誌の対談から始まった。
辰吉のボクシングデビューと坂本の映画デビューは1989年と同じ年だ。

赤井の方は世界タイトルマッチでTKOがもとの怪我でチャンピオンにならずに引退して役者になったから辰吉の方がボクサーとしては上。今年56歳で坂本と同じ年だ。


波瀾万丈の天才ボクサー、辰𠮷𠀋一郎。50代日本バンタム級、第18代・第24代WBC世界バンタム級王者。
「浪速のジョー」として人気を集める。ボクシングを始めた切掛けは背が小さく貧弱な身体の子供時代に皆からいじめられっ子であったと語る。世界の王者とも思えぬ幼少時代だったようだ。

1995年に公開されたドキュメンタリー映画「BOXER JOE」で辰吉を追った阪本監督が、そこからさらに20年もの間、当時と同じスタッフでインタビューし続けスーパー16で撮影をしたと言う。今ではもっと安価なHDカメラを使うのだが、記録映画でもこんなに長期に亘った作業は無い。その間監督もスタッフも食って行かなければならないから大変だ。(映画は完成し小屋に掛ってナンボの世界だから)

最初の撮影はアメリカ・ラスベガス。ノンタイトル戦を前にした25歳のジョー。網膜剥離でJBC(日本ボクシング・コミッション)の既定で国内のリングに上がれず海外で試合をしていた。ボクサーとしては当然なのだが25歳のジョーも44歳のジョーも体重はそのまま体型は変わらず、眉毛の下に光る猛獣のような鋭い目は爛々と輝いている。違いは若いときに剃っていた髭は今や口や顎に黒々と精悍さを示し、サラリーマン風の大人しい髪型は両脇を刈り上げ後ろに長いポにーテイルにしている点だけだろう。

一度は引退し、3度の世界チャンピオンに輝いた不屈のボクシング人生を、次男・寿以輝がプロテストに合格した2014年11月まで、カメラはかつて誰も見たことのない辰𠮷𠀋一郎の「真実の姿」を映し出す。関西弁だが友人の豊川悦司の低い声の解説がフォローする。

物足り無いのは実際のタイトルマッチなどの映像(動画)が全く無いこと。著作権の問題をクリアして無いのでスティルだけ。試合に備えてのハードなトレイニングだけを追う。 ボクシングは打ってナンボ、倒してナンボの世界だ。止まった写真をクローズアップされても感動は今ひとつだ。
2000年に所属していた「大阪帝拳」を離れたのでトレーナーも居らず自分のメニュをコツコツとこなす。

ジムもタイトルを持たない旬が過ぎたボクサーはお荷物なのだろう。
ただ「大阪帝拳」は父親の代わりに次男・寿以輝を引き受けてくれた。2014年11月プロのライセンスを持って次男は帝拳所属となる

次男が身を落ち着けた2014年11月現在、44歳になっても未だ「引退」と言う言葉はジョーから聞かれない。ボロボロの身体を駆使してボクサー現役であり続ける姿は鬼神も之を避く。
父親は両側を短くモヒカン刈リ風にしながら後ろ髪を長くポニーテイルの独特の髪型だが、次男・寿以輝は茶髪のボクサー。

映画には出てこないが今年の4月16日、大阪府立体育会館第一競技場。デビュー戦の舞台は山中慎介(帝拳)の8度目の防衛戦の前座試合だった。
 あれから8カ月。この12月19日に20歳になった寿以輝は3戦目のリングに上がった。2回ともKOで勝ち進んで来たがKOを意識し過ぎたからか、硬さは否めなかった。2勝1敗の25歳、脇田洸一(クラトキ)には際どい2-1の判定勝ち。

 リングでの剥き出しのファイトと比べ、インタビューでは辰吉の人間性やボクシングに対する考えや父と子の絆、妻と家族を愛する優しいジョーが描かれている。
ナレーションを辰𠮷とも親交のある俳優・豊川悦司が担当する。

2月27日よりテアトル新宿他で公開される。

「麗しのサブリナ」(SABRINA)(アメリカ映画): 61年前のオードリー・へップバーンが華麗に蘇るシンデレラ物語

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昨日(30日)は今年見納めの映画として有楽町駅前のスバル座へ出かけた。映画。パラマウントクラシックス特集としてオードリヘップバーン・シリーズを週単位でやっている。

最近はTOHOシネマズの独占場として映画館は動線もシートも内装も均一化しているが、終戦直後昭和21年暮れに出来たスバル座だけは270席と言うミニシアターで独自のプログラムの編成だ。残念なことに二番落ちの映画とか古い名画のみなので殆ど僕は見ている。
でも年に10回は行くのはもう一度見たい映画(名画)などを見せてくれるからだ。
考えて見れば数百回は通っていることになる。

1階の路面チケット売り場は無くなり2階へ上る踊り場に窓口がある。
それから更に階段を登るとモギリ嬢が立っている。
傍に大きな看板「ただ今座ってご覧になれます」
終戦直後は座って見るには1時間か2時間並んで順番待ちだった。
今はギリギリに行っても座れないことは無い。
 昨日だって観客は30人位しか居なかった。
戦後の習慣をそのまま残す立て看板は可笑しいが親しみを感じる。

 従業員はチケット窓口に2名、受付に2名ロビーで客案内に1名とカスタマーサービスに抜かりはない。
もう一つのメリットは隣のビルに僕がメンバーシップの外人記者クラブがあることだ。
 良い映画を見るとワインを飲みたくなるパブロフの犬的発想で必ず20Fに上がり赤ワインにチーズボードで見たばかりの映画を反芻する。

 そう言えば一昨日の新宿武蔵野館では「嫌な思い」をした。
駅東口を出て狭い路地に建つ細長いビルの4階にあるこの映画館には何度来ても迷う。

 迷って5時25分本編が始まるのに33分、つまり8分遅れで窓口に着いた。
ネットで座席を調べたらこの回は8人しか埋まっていないので少しばかり遅れて本編の頭が欠けても見たいと思っていた。

 アメリカ映画「きみといた2日間」(TWO NIGHT STAND)で話題にもならなかった作品だ。
しかし窓口に座る若い男はチケットを売ってくれない。
「ウチは本編が始まったらお客さんを1人も入れません。既に座って鑑賞されているお客さんに迷惑をかけますから」

 頑固だ。客は8人しか居ない、席は充分空いている、映画館も商売だろう。
聞く耳を持たない。
「おお客さんが気に入らなければ今後ご来場を頂かなくても結構です」と。

 チンピラ係員の思いついた言葉ではないだろう。
武蔵野館経営者の指示でそんな客にはこう対処せよと命じられているのだろう。
澱みなく反論が出て来る。大したものだ。

そんなにしょっちゅうではないが年に3-4回は来ている小屋だ。
経営者はビルを所有し懐に余裕があるのだろう、

 武蔵野館のファンを作る、常連にするなんて気持ちは全く無い。
それはそれで経営方針として立派で尊重したい。
また出直すしか他は無い。
スバル座と武蔵野館、対照的な客あしらいだ。

 NYマンハッタンから30マイル、ロングアイランドの大財閥のララビー家のお抱え運転手トーマス・フェアチャイルド(ジョン・ウィリアムス)の娘、サブリナはララビー家の放蕩息子デイヴィッド(ウィリアム・ホールデン)に9歳の時から恋心を抱く。
 
 だがプレイボーイのデイヴィッドはションベン臭い小娘に気付きもしない。
デイヴィッドは三回も結婚し破綻をして現在は銀行家の娘、グレッチェン(ジョーン・ヴォ―ズ)に夢中である。

 サブリナの父トーマスは身分違いの恋を忘れさせるため娘をパリへ送り出す。
サブリナは8台の自家用車のエンジンをかけガレージでガス自殺を図るが、ララビー家の長男で勤勉実直女嫌いのライナス(ハンフリー・ボガート)に助けられる。

 傷心のサブリナはパリに送りだされ料理学校に通よう。
デヴィッドを忘れないままに2年間を過ごし、別人のように美しくなって帰国する。

 洗練されたパリファションに包まれトイ・プードルを抱えた淑女に変身したサブリナが帰国しアイドルワイル空港(今のJFK)から、ロングアイランド鉄道の小さな駅グレンコーブで降りると、たまたま通りかかったデイヴィッドはたちまちナンパして家まで送ろうと申し出る。
自分に家のお抱え運転手の娘サブリナとは知らずにすっかり夢中になる。


 僕はこの映画を見た昭和30年は高校生。受験英語に役立つかと対訳シナリオ(英語のシナリオに日本語の訳が反対ページにある)で勉強した。

 デイヴィッドが身なり雰囲気からサブリナを金持ちの娘と思い込みお父さんは何をしている人?と聞く。
父はRuns Automobiles(複数はララビー家には8台の乗用車があるからだ)
サブリナは運転している(Run)と答えているのに、自動車会社を経営している(Run)ととり「へー、複数の自動車会社を所有しているんだ」大金持ちの娘だと勘違いする。

こういう言葉のダブルミーニングは無数に出て来る。
パりへ発つ前の夜、サブリナがデイヴィッドとグレッチェンの逢引きを盗み見るシーン。
場所は室内テニス場。
艶めかしいグレッチェンが反対コートにいる。
二つのグラスをタキシードの尻のポケットにシャンペンボトルを下げてコートに持って行こうとする彼を止めた美女は、テニスはルールがあるでしょ、あなたはそちらの方とネットを超えさせない。
それではここからServeしよう。
サーブはシャンペンを注ぐと言う意味とこちらのコートから球をサーブ(打ち込もう)と二つの意味。
シャンペンを持って相手コートに侵入し打ち込んで行く。

 中盤ではララビー財閥発展の政略結婚でサトウキビ工場の娘エリザベス(ローザ・ハイヤー)とデイヴィッドは婚約する。
が、サブリナに目が移る彼を何とか諦めさせようとするライナスと父親のオリバー・ララビー(ウォルター・ハンデン)。

 室内テニスコートにサブリナを待たせいつものようにシャンペンに二つのグラスを尻ポケットのデイヴィッドを呼び止め椅子に座らせる。
グシャリと割れたガラスは尻に無数に突き刺さる。
暫く時間的余裕が出来た父と長男はサブリナを引き剥がしパリへ送り返す算段をする。

 その間の会話はGlass(シャンペグラス)に集中する。病床に横たわったデイヴィッドが詩を書くと。Glassと韻を踏む適当な言葉は?ライナスがAlas(悲しい哉)じゃないか。エリザベスがテニスコートへGlassを持って行こうとしたのは何故?と聞く。あそこは暗いからGlass(眼鏡)が要るだろう。

 こんなのは一例でダジャレや隠喩、ダブルミーニングがふんだんに出て来る。
だがAlass!(悲しいかな)日本語字幕には全く反映されない。
日本でコメディが当たらないのは字幕の問題がある。
ベテラン戸田奈津子さんなら見事に言葉遊びをやってくれるが最近は経費が惜しいのか、無名の三流の字幕翻訳者が輩出し意味さえ通れはそれで良い式の字幕でお茶を濁す。
僕の英語もNY時代は遥かに昔、Rustyになってしまったがこんなジャンク翻訳を読むより一生懸命生のセリフに集中している。

 デイヴッドはサブリナと結婚したいと言い出し、2人の結婚に反対する兄・ライナスはパリ送還の陰謀を巡らしながら時間稼ぎにサブリナと芝居を見、食事をとるがやがてサブリナに心惹かれてゆく。

 オープンカーでデートの帰りLIE(ロングアイランド・エクスプレス)の高速道路を黒いソフト帽を被って運転するライナスにパリでは傘を持ち歩かない、ソフト帽は鍔を半分下げて被るのよ、と教える場面がある。

 黒い鍔の下がったハンフリー・ボガートは途端に私立探偵サム・スペードに見えるから不思議だ。
ビリー・ワイルダー監督・脚本のこの映画は賞は何も取らなかったが僕は「ローマの休日」より好きだ。
 
 ハンフリー・ボガートの渋い声に鋭い眼、ウィリアム・ホールデンの女たらし、そして何よりもキュートなオードリー・ヘップバーン。
 彼女は決して美人では無い。
美人ナンバー1はイングリッド・バーグマン(誰が為に鐘は鳴る、カサブランカなど)だ。
ただスタイルの良さコスチュームの似合うこと、ショートカットのヘアスタイル。
オードリーがいなければジバンシーはあれ程の高みへ辿りつけなかったろう。

 1995年にリメイクされた「サブリナ」は酷い出来だった。
オードリーに代わって主役のジュリア・オーモンと言う目玉だけは大きいがブス女優が演じ相手役のライナスはハリソン・フォードだった。
  名匠・シドニー・ポラックでもこんなモンカと言うB級映画でコメディなのに笑えなかった。
オリジナルを冒涜しているような映画だった。

こんなオードリーやハンフリーのような役者は今見当たらないのは寂しい。

有楽町スバル座で公開中

「今年の映画界は?」:昨年、2015年の映画興行成績(BO)は日本もアメリカも最高記録

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あけましておめでとうございます。
今年も映画についてグダグダ書きますが宜しくお願いします。

昨年のアメリカの映画興行は「Furious 7」(ワイルド・スピード7)「Jurassic World」(ジュラシックパーク)「Avengers: Age of Ultron」(アヴェンジャーズ)や「Star Wars: The Force Awakens」(スター・ウォーズ/フォースの覚醒)などが大ヒットしたお陰で $11 billion(1兆3310億円)と言う映画史上の最高記録を達成した。これは2014年より7.3% アップで更に2013年の記録を1.5%更新したことになる。
日本でも昨年の2070億円を超え2100億、いや2200億近くになり、更に引き続き今年も映画は上昇気流に乗るだろう。

 アメリカで興味を引くのはヒット(成功作)とフロップ(失敗作)の差が激しいことだ。2013年と2014年は13本の映画が$200M(242億円)を越えた。2012年は11本。
それが昨年、2015年は9本しか200Mを突破していない。

「Star Wars: The Force Awakens」(邦題「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」WD配給:TOHOシネマズ日劇他で公開中)は日本でも年末には40億円を突破して、尚も正月休みに客を呼び寄せている。
ドル箱中国(来年1月9日公開)を除いてこの数字は驚異だ。
そして12月27日まで12日間のグローバル累積は1.09B(1319億円)。

 日本でもアメリカでもはっきり言えるのは観客の動員数は増えていないことだ。

 焦点は「映画料金」。
新作「スター・ウォーズ」で多くの映画館が通常1800円の一般料金を2000円にして更にImaxなら400円、3Dなら300円の上乗せをした。
アメリカでも立体映画は料金の上乗せがあり興行成績は3D大作の本数が増えるに従い数字は上がっている。
眼鏡ばかりでない。場面に合わせて座席が動く「MX4D」対応の劇場では3D料金とメガネを合わせ3600円。通常料金の2倍だ。

 世界では興行成績は金額で決めるが、日本もお隣の韓国も観客動員数で決めるのが分からない。
先週末(12月26日―27日)の興行成績を見ると「映画 妖怪ウォッチ」連続2週首位で興収23億円を突破。土日2日間で動員45万人、興収5億円をあげ累計成績も動員215万人、興収23億円を突破した。
前週に続き、興収では首位となっている「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が、土日2日間で動員44万人、興収7億円をあげ2位。累計動員は245万人、累計興収は38億円を突破している。

 思い出すのは03年の「スター・ウォーズ2 クローンの逆襲」では公正取引委員会が、当時の配給元である20世紀フォックス(6本はフォックス、今回からウォルト・ディズニー)の日本支社が映画館の入場料割引を不当に拘束したとして、独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除勧告した。

 因みにウォルト・ディズニー(WD)はジョージ・ルーカスに$4B(4480億円を払って映画制作権を買っている。これでPixar, Lucasfilmと Marvelなどをおさえたことになる。金のあるWDは益々商売繁盛と言う訳だ。

「スター・ウォーズ」の料金について日経が取り上げている。今回の値上げは価格維持とは逆だと。定価が崩れる背景には、映画を取り巻く環境の激変もある。

 娯楽が多様化し、ネットフリックスなどインターネットを使った動画配信も続々と登場した。スマートフォンやタブレット端末で自宅や外出先で映画やドラマを視聴するスタイルが定着した。
一昨年、2014年の映画館の入場者数は約1億6000万人。日本映画製作者連盟が動員数2億人を掲げて10年になるがここ数年ほぼ横ばいだ。

 上映回数やプレミアム席を増やすのにも限界がある。映画館が増収を実現するには今年の「スター・ウォーズ」や「ジュラシックパーク」のように超大作が出現するのが望ましいが、それ以外は値上げか、入場料金以外の収入増しかないのが現状だ。

 次の「スター・ウォーズ エピソード8」は来年の2017年公開、そして「スター・ウォーズ エピソード9」は2019年公開予定だから今年は間に合わない。
この三部作の後もまだまだ行けそうな感じだ。

 因みにフォックス「スター・ウォーズ」シ―ズを移籍したウォルト・ディズニーは映画制作権のトレードマネーでジョージ・ルーカスに支払った金額は$4B(4480億円)。
自分の作ったキャラクターをJ・J・エイブラムズに任せマーチャンダイズなどで映画以上の収益を挙げているルーカスの錬金術は大したものだ。

 日経新聞の「映画料金」の特集によると、時代を超えて物価を比較する際に用いられることも多い映画料金は1957年には130円だった。大衆娯楽が少なく、映画人口が年間10億人を超える「映画黄金期」だった。
その後、テレビが普及し、映画人口は減少。興行収入の減少を料金の値上げでしのぐ構図が続いた。65年に250円、70年に550円と値上げし、1800円になったのは93年だった。
 ただ、学生や高齢者、女性を対象としたサービス価格、曜日や時間帯を限った割引価格などの設定で観客が実際に払う料金は1800円よりも少ない場合が多い。
日本映画製作者連盟によると2014年の平均料金は1285円。1992年以降は一貫して1200円台で推移している。

 今年も3D大作が陸続と制作されるだろう。
と言うのも海賊版が公開直後から出回る中国で、中国政府はハリウッド映画に輸入クォータを課している。
 だが3D映画に関しては大きく門戸が開放された。海賊版は客席にハンディカムを持ちこんでスクリーンを撮影する。前の人の頭などが入っているのも御愛嬌だ。

 3Dはヴィデオカメラで撮ると二重になって写るから海賊版業者には商売にならない。
パイラシ―に頭を悩ますハリウッドにも中国政府にも「輸入クォータ」はウィンウィンゲームだ。

 その結果14億の民を持つ中国はGNPに引き続き日本を抜いて世界第二位の映画興行成績の地位を獲得した。アメリカの映画産業を支えているのは中国観客だと言っても過言ではない。作品によってはアメリカ国内のBOを抜くことがある。一昔前はアメリカと海外の映画市場は半々だったが今や2/3は海外からの収益で、中国はその半分以上を占める。

 今年も作品は充実している。
洋画では「オデッセイ」や「バットマンvsスーパーマン」「キャプテン・アメリカ」
邦画では「ゴジラ」「アイアムヒーロー」「太陽」など期待が持てる作品が目白押しだ。

「2015年の邦画ベスト10」:世界レベルから程遠いが日本人の琴線に触れる感動的な作品に恵まれた

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 昨年は498本見た。500本を切ったのは近年久しぶりだ。緑内障にかかり見え難くなったことと疲れるだけだから幼児向けのアニメを敬遠したことも500本に届かない要因になった。

その内ハリウッド作品など洋画と言うか、外国作品で日本映画以外が322本、邦画が172本。
今日はその中から邦画のベスト10を選んでみる。

相変わらずハリウッドは勿論のこと韓国や香港、中国と言う日本人が嫌う仮想敵国の作品に比べて質やレベルが低いのは目を覆うばかり。日本は明らかに映画後進国だ。

毎年オクラになる映画を含め500本近く制作されているがアカデミー外国語賞は勿論カンヌやベニス、ベルリンを制覇する映画も無い。

映画の技法やテクニックはともかく映画作家のフィロソフィーやコンセプトを伝えるものの、それが世界に通用しないと言うのはやはり「井の中の蛙」、ガラパゴス現象の表れなのだろうか、と言うことを去年も書いたが今年も変わらない。

技法と言えば立体映画が作られていないのもその「蛙」現象。
東宝主導の劇場ではIMAXが上映出来る小屋は都心にようやく歌舞伎座に出来た。
ショウケースとして注目を浴び、「MI5」や「スター・ウォーズ」で高料金にも拘らず客が集まっている。

昨日も書いたが映画観客数は1億7千万人前後でこの10年増えていないし、大幅な増加は見込めない。映画興行成績を挙げるためには1200円台半ばの入場料の平均価格を上げるしかない。
そのためにもIMAX劇場の増加は望ましいし、最高3600円まで取れる。

都内にはIMAX館は前述したTOHOシネマズ新宿のほか
東急リクリエーションが力を入れ109劇場は109シネマズ二子玉川 、109シネマズグランベリーモール 109シネマズ木場 そしてユナイテッド・シネマ豊島園の5館のみ。3Dはどこでも見られるようになったがIMAXと3Dの両方を見た人なら分かるが同じ立体映画でも迫力では天と地の差がある。立体映画大好きな中国ではIMAX劇場は至るところにある。

IMAXは劇場そのものの構造から違うが、3D映画はレンズを変えれば簡単に上映出来る。
ハリウッドではIMAXや3D映画は常識になっている。邦画も世界に追い付いて欲しいと思うがこのベスト10も立体映画は無い。

昨年見た172本の邦画から僕の選んだ10本は世界レベルから落ちる小粒ながら良く出来て日本映画独特の琴線に触れる作品で泣かされた。

1位「海街 Diary」
自分たちを捨てた父親の不倫相手の娘を妹として受け入れる香田3姉妹。
小津安二郎の宗方4姉妹にも似た姉妹愛を懐かしく感情移入させられる。鎌倉と京都と言う古都を舞台にした物語は時代を65年離れても類似点が多い。

是枝裕和が脚本を書き監督した作品は信頼がおける。「歩いても、歩いても」は僕の日本映画トップ5に入るし、「そして父になる」や「誰も知らない」は心に届く。家族のユニオンや情愛、家庭の暖かみやセンシビリティを描けば是枝の右に出る人はいない。鎌倉の街を舞台に、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという人気女優そろい踏みして、4姉妹を演じる。原節子や高峰秀子にヒケをとらない

2位「岸辺の旅」
3年前に夫・優介(浅野忠信)が失踪してしまってから喪失感を抱えていた瑞希(深津絵里)。突如優介が帰宅し「自分は死んだ」と告げる。

優介に誘われるまま旅に出た瑞希は3年の間に優介がお世話になった人々を夫と一緒に訪ねていく。優介と一緒に過ごしながら彼が感じたことを同じように感じるとともに、見たことのない優介の一面も知っていく瑞希。二人は改めて互いへの愛を感じていくが、「別れ」のときが近づいていた。
湯本香樹実による同名小説を黒沢清監督が映画化し、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した感動作。

3位「十字架」
14歳、中学2年の同級生・フジシュンの自殺で重い十字架を背負わされる「親友」と遺書に書かれたユウと首吊り前に最後の電話を受けた「憧れ」のマユの半生。
重松清の描く悲しい重い人情話が好きで映画も見小説も読んでいる。
直木賞をとった短編集「ビタミンF」なんかに比べると他の作品の方がもっと良い。
中でも2010年に吉川英治文学賞を受賞したこの「十字架」が一番優れている。そして忠実に映画化されたこの作品も朴訥で不器用ながらドラマの本質を抉っている。

この映画は傍観者の立場、主人公ユウの視点で描かれているので重い負担が観客にカブさって来る。
「親友なら何故息子を見殺しにした!」とユウとマユを許そうとしない父親、藤井晴男は責め立てる。勤めから帰宅して庭先の柿の木の枝にぶら下がっている俊介の遺体見つけ抱きしめて大声で叫ぶ。母親、澄子は庭に膝まずき泣き叫ぶ。フジシュンは戻らない。

4位「家族はつらいよ」
84歳の山田洋次監督のエイジシュートの84作目のコメディは大傑作だ。
この映画の前作が小津安二郎監督による「東京物語」(1953年松竹)のリメイクで「東京家族」と言う題名で2012年に上映されたがエピゴーネンは山田監督にとって苦手。

名誉回復とキャラクターをそのままに得意の「つらいよ」シリーズを寅さん抜きで創りあげた。72歳の平田周造(橋爪功)はゴルフに酒に、孫と遊び犬のトトの散歩と人生を満喫している。
事件はゴルフにかまけて誕生日祝いを忘れていた周造が妻(吉行和子)に催促されてプレゼントを贈ろう、「欲しいものは何だ?」と尋ねるが、その答えはなんと「離婚届」だと。
45年も平穏無事に過ごし3人の子供と二人の孫の三代揃った平穏な家族に激震が走る。一見纏まり平穏な家族も蓋を開けるとバラバラ家族だった。

5位「赤い玉」
年を取りセックスが出来なくなるとオチンチンの先っぽから「赤い玉」がポロリと出ると言う伝説を信じる奥田瑛二の半自伝映画。映画学校で監督の時田修次(奥田)が映画理論を講義、生徒は真剣に聞いている。

場面が変わると風呂場で激しいセックスシーン。全裸の時田は唯(不二子)と相対しているが唯が息も絶え絶え。唯のアソコは泡に塗れた時田の指が愛撫しているのだ。ヘアヌードもあるR18映画だ。

6位「俺物語」
他人のことを思いやるばかりに心がすれ違う主人公の猛男と親友大和。本当は二人とも愛し合っているとは気付かない猛男の溢れる男気。
 久しぶりに心から笑える青春ドラマに感激した。映画は原作のコミックを基にしている(作画:アルコで原作:河原和音)。
顔も身体もゴツイ15歳の主人公・剛田猛男の他人に対する優しさや思いやりにしばしば泣かされる。

7位「バグマン」
 コミックの世界に疎い僕には異世界の情報が魅力的だった。漫画家への登竜門「少年ジャンプ」に挑む高校生コンビ。主人公は高校2年生の二人。優れた画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を負け犬的に過ごしている真城最高(佐藤健)は、同級生の高木秋人(神木隆之介)から一緒に漫画家になろうと誘われる。高木は真城がクラスメート亜豆美保(小松奈菜)のデッサンを何枚も描いているのを見てその才能に感嘆したのだった。高木は絵こそ下手だが梶原一騎並みのストーリーテリングには自信があり、組めば少年ジャンプも夢ではないと説き伏せる。

8位「この国の空」
戦争末期。連日の空襲で里子(二階堂ふみ)一家の女性3人が頼りにしているのは隣家に1人で住む銀行員の市毛(長谷川博己)。徴兵検査で丙種になり年齢も39歳と年寄で徴兵を免除され、妻子を疎開させ一人で生活している。里子は身の回りの世話をすることに楽しみを見いだしている。宿直が多く家に帰れない市毛の家の掃除や洗濯を手伝っている内に奥の六畳間に敷きっぱなしの万年床のシーツや枕カバーを洗う。
近所に世話好きの老人(石橋蓮司)などはいるが市毛は近辺にいるただ一人の中年男性でいつしか自らのうちに潜む女性としての本能が芽生えて来る。
庭の赤いトマトをもいで食べた真っ赤な汁と同じ色の処女の血。

「戦争は終わった。でも私の戦争はこれからだ」と呟く里子。この二階堂ふみと言うコメディが得意な女優はシリアスな乙女を熱演して上手い、

9位「ビリギャル」
名古屋の女子高に通うお気楽女子高2年生の工藤さやか(有村架純)。制服はボタンを留めずヘソ出し超ミニ。輝く茶髪に耳にピアス。学校で指導しないのかね、こんな派手な生徒を。有村がこの派手なバカギャルを好演している。地の生活で芝居が出来るので有利だ。

名古屋の高校2年で学年ビリの女の子が母に叱られ、いつもの金髪パーマにピアス、厚化粧にミニスカートのへそ出しで渋々入塾面接に行き、驚く教師の坪田(伊藤淳史)と出会う。
映画もこのバカさ加減を追って行くだけで面白オカシクなるがビリのバカな子が現役で最難関の慶応大学総合政策学部を現役合格する実話だけにカタルシス満点。

10位「心が叫びたがってるんだ」
アニメ映画。おしゃまの女の子のお喋りで家族がバラバラになる。玉子の妖精にしゃべることを封印される。そのトラウマで全く口をきかないで生きて来たが、通っている高校の「地域ふれあい交流会」の実行委員会の委員になり、さらにそこで上演されるミュージカルの主役になってしまう。歌も音楽も良くアニメマンガなのに終盤は涙の感動を誘う。

次点「あん」
「殯(もがり)の森」など難解で独自の世界を展開するカンヌ受賞常連の河瀬直美監督が初めて他人の原作を映画化。だから分かり易い。
樹木希林を主演に迎え、元ハンセン病患者の老女が尊厳を失わず生きようとする姿を丁寧に紡ぐ。
しかし酷なようだがハンセン病患者の老女の作ったどら焼きの「餡」は食べたくないね。

「2015年洋画ベスト10」:立体映画の大作が勢ぞろいし興行成績が最高記録を刻む豊作の年だった

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ハリウッドの業界紙「ハリウッドレポーター」(THR)が例年通りベスト10を発表している。日本未公開作品もあるが主なところは

1位「Mad Mad: Fury Road」(マッドマックス 怒りのデス・ロード)
 1980年代の「マッドマックス」の前編(プレクェル)のリブート作品。僕はメル・ギブソンのものしか認めないが、主役はこの所メキメキ売り出して来たイギリス俳優トム・ハーディ。共演のチャーリーズ・セロンが唱える女権復活の映画。70歳のジョージ・ミラー監督が。前作「マッドマックス/サンダードーム」以来、27年ぶりに製作された「マッドマックス」シリーズの第4作。地球の近未来、ディストピアを描く傑作だ。
そう言えば今年は前編(プレクェル)の傑作が多かった。シュワルツネッガーの「ターミネーター:新起動」とかアニメの「ミニオンズ」など。今年はスタンリー・キューブリックの名作「シャイニング」の前編(プレクェル)(S・キング原作「DR. SLEEP」)が公開される。

2位「Inside Out」(インサイド・ヘッド)
ピクサーとウォルトディズニー(WD)のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼ねるジョン・ラセターはピクサーがに買収されてから軸足をWDに移してからというものWDは「アナ雪」や「ベア6」「シンデレラ」と大ヒットの連発だ。ピクサーはいつの間にかジョン・ラセターの頭の中から存在が希薄になっていった。だから2010年の「トイ・ストーリー3」以来ヒット作は出ていない。

それでも青息吐息のピクサー20周年記念作品。
11歳の少女ライリーの頭の中にある5つの感情──「ジョイ」〈喜び(ヨロコビ)〉「アンガー」<怒り(イカリ)>、「ディスガスト」<嫌悪(ムカムカ)>、「フィアー」<恐れ(ビビリ)>、そして「サッドネス」<悲しみ(カナシミ)>、それぞれがライリーの幸せを守ろうとぶつかり合う。
何か何処かで見たような作品で詰まらなかったし日本でも当たらなかったがTHRは2位に挙げているのが解せない。

3位「Ex Machina」日本未公開。人工知能(AI)を装備した女性ロボットを扱うSE。英国製SFホラー映画。見て無いからコメントは出来ない。

4位「Mission: Impossible – Rogue Nation 」(ミッション:インッポシブル ローグ・ネイション)
トム・クルーズのシリーズ5作目だが制作費の半分を中国が出している。ワールドプレミアも中国で行いグローバルBOの半分近くを中国人が寄与した。
今までのシリーズで一番見応えがあった。
大アクションは見飽きたMIシリーズでプロットに大変革がある。イーサンの属する秘密機関「IMF」(Impossible Mission Force)が米国政府やCIAに「敵」と見做され追いかけられるハメに落ち入る。味方の筈のMI6もイーサンに敵対する。
その上ウィーンでオーストリア首相(ルパート・ウィッカム)が暗殺され、ロンドンでイギリス首相(トム・ホーランド)が人質になる。何れもIMFの仕業とされCIAやMI6、それに各国の官憲に追われる四面楚歌の中、存在意義(レゾン・デートル)を明白にし、周囲に知らしめることに焦点が当たる。

5位「Star Wars: The Force Awakens」(スター・ウォーズ/フォースの覚醒)
長期低落傾向にあった「スター・ウォーズ」を覚醒させた手腕を買われG・ルーカスのキャラクターを使い脚本監督に新風を吹き込み全く新しいシリーズを立ち上げた新監督J・J・エイブラムスの才能の脱帽。これからの3部作は前の6作品を凌ぐ秀作、アクションばかりか家族の愛情を描く

8位に「Ant-Man」(アント・マン) 
10位にようやく「The Martian」(オデッセイ)が犬の「Paddington」(パディントン)とタイで入ると言うファミリーがポイントを稼いでいるベスト10だ。

そして僕のベスト10は

 1位:「Star Wars: The Force Awakens」((スター・ウォーズ/フォースの覚醒)
上述のようにJ・J・エイブラムズのリブートで映画として面白さが倍増したが、何よりの功績は世界中に映画の面白さ楽しさを「覚醒」さえたことだ。

 この映画のお蔭で日米ともに年間興行成績は最高記録を打ち立てる。観客数が頭打ちだが3DやIIMAX,4Dなどで特別料金で稼ぐ手法を教えた。通常1800円の料金なのに3600円も払った惜しく無いファンがTOHOシネマズ新宿のIMAXスクリーンに駆けつける。

 主人公は若い白人のスカベンジャー(ゴミ拾い)女性レイと黒人兵士レイの男性と言うのも時代に合っている。レイがフォースの持ち主。ハリソン・フォードもキャリー・フィッシャーもマーク・ハミルも顔を揃えチューバッカもR2-D2,C3POも懐かしい。

2位:「SON OF SAUL」(サウルの息子)
ハンガリー映画。ナチスの「アウシュビッツ収容所」で処刑された少年を自分の息子と見做し、少年を火葬ではなくユダヤ教の律法に従い尊厳ある「埋葬」にしようと奔走する囚人のサウル。
冒頭、ユダヤ人たちが貨車でアウシュビッツに到着するとサウルと仲間の「ゾンダー・コマンド」(囚人の中から選ばれた世話係)は「脱衣場」へと先導する。それからガス・チェンバーズへ。カメラは内部へ入らない。サウルの無表情な顔のクローズアップ。
短い悲鳴がガス室から聞こえる。観客は音とサウルの顔だけで恐怖が増す。ガス室からコマンドが死体を運び出し、壁や床の汚れをゴシゴシと落とす。焼却され死体の灰は近くの川へ捨てられる。

その死体の中で未だ息のある少年を見出したソウルは人間が変わって行く。少年は直ぐに死ぬがユダヤ人として焼却炉で焼かれるのではなく、埋葬したいと強く願うソウル。強制収容所の極限状態で人間の尊厳が完全に否定される状況でサウルが少年の埋葬にこだわるというテーマは衝撃的で感動をもたらす。

3位:「WOMAN IN GOLD」(黄金のアデーレ 名画の帰還)
82歳の老女が如何にしてナチに奪われた名画を取り戻したか?オーストリアに住んだ艱難辛苦を経たユダヤ人女性
第2次世界大戦中にナチスに略奪された美術作品(グスタフ・クレムト)の返却を求めてオーストリア政府を訴えたユダヤ系アメリカ人のマリア・アルトマンの闘争の実話を映画化したもの。
マリア・アルトマンの1925年生まれの叔母はオーストリア人画家グスタフ・クリムトのミューズだったアデーレ・ブロッホ=バウアー。
その肖像画 「Portrait of Adele Bloch-Bauer I」(1907)(通称「黄金」は第2次世界大戦勃発直前にオーストリアを併合し侵攻して来たナチスに略奪された後、長らくウィーンの国立ベルベデーレ美術館に「オーストリアのモナリザ」となって展示されていた。
が、2006年にアルトマンが返却を求めて裁判を起こした。4年がかりでこの訴訟に勝訴し、作品を7,300万ポンド(129億円)と史上最高額で売却。総てをホロコースト記念館に寄付したと言われる。
実話だけにカタルシスを感じるし、ユダヤ人だけに故郷オーストリアを追われたアルトマン夫人の口惜しさも激怒もヘレン・ミレンは熱演している。

4位:「SPECTRE」(スペクターSPECTRE 007)
ボンド役ダニエル・クレイグお別れの007映画は初期の作品にもどりクレイグ主演で一番面白い。任務を終えロンドンに戻ると情報部ではMI5や00の殺し屋は時代遅れで不要の論議がなされその情報部を取り仕切るCがボンドを含めMの馘首を検討している。マネー・ペニーやQなどの友達がCの目を逃れボンドに協力する。天敵「スペクター」は半世紀以上続く007シリーズ初期に登場したジェームズ・ボンドの宿敵の名前。「ロシアより愛を込めて」(1963)など過去6作品に登場するお馴染みの宿敵。ボンドの手で絶滅した筈だが再び顔を出す。
映画の大団円、スペクトルのボスを目の前にして銃を引っ込め「I’ve got something better to do」(お前を殺すより他に仕事がある)とつぶやいて銃を置き、愛しの美女マドレーヌのもとへ歩み寄るボンドに昔日の姿は無く、その台詞でファンに別れを告げている。

5位:「THE MARTIAN」(オデッセイ)
水無く、酸素無く、食料無しの火星にたった一人取り残された火星探査船クルーの植物学者のサバイバルゲーム。火星へ有人探査飛行ミッション「アレス3」に参加した主人公マーク・ワトニー(マット・デイモン)。
火星でのミッション18日目に猛烈な砂嵐に巻き込まれる。指揮官のメリッサ・ルイス船長は撤収を余儀なくされる。クルー6名の内マークだけは嵐に巻き込まれた通信アンテナに激突し遥か彼方に飛ばされてしまう。マーク・ワトニーは死亡したと見做され宇宙船ヘルメス号で地球へ向かう。マークは植物学者、メンバーの最下位。
ここから劣等生メロドラマの主人公の登場だ。火星のロビンソン・クルーソー。楽観的でポジティブ思考のマークの活動が始まる。
多くの映画が描く地球の未来は「ディストピア」。地球は荒廃し宇宙からエイリアンが攻め込んで人類は滅亡に瀕している、と言う世界ばかりだ。未来SFの先駆者リドリー・スコットは既にその手の映画は卒業している。ユートピア迄行かない迄も人類や地球に幸せや希望を持たせる作品を作って見ようと思うのは必至だ。そして多くの映画ファンもそのように考えていた。だからこその大ヒットだ

6位:「ボーダレス ぼくの船の国境線」(BORDERLESS)
イラン映画。イラン映画界は名匠を輩出しているアッバス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」を初めとして、モフセン・マフマルバフ監督「カンダハール」、マフマルバフの末娘ハナ・マフマルバフが19歳のころに撮影した「子供の情景」、(僕が一番好きな)マジッド・マジディ監督。

この映画で監督デビューとなったアミールフセイン・アシュガリ監督。イラクとイランの国境ラインのところで、川の名前は「シャトル・アラブ川」。30年前の「イラン・イラク戦争」であの船は砲弾で座礁しあの川で壊れたボロボロの廃船が舞台。
言葉の通じないイランの少年とイラクの少女、そしてアメリカ軍の脱走兵がやがて国境を越えて心を通わす。過酷な環境下で、たくましく生活をする子どもたちの姿をリアルに描いたイラン映画は感動を齎す。廃船の中には主義も主張も無い。国や言葉を越えて人類愛のテーマが浮かび上がる。

7位:「最愛の子」(DEAREST中国香港映画。
2009年7月に誘拐された3歳の男の子が深圳から誘拐される実話に基づく映画。その後見つかった男の子ポンポンは3年間育ててくれた誘拐犯の妻を母と信じて疑わない。「母ちゃん」と慕うのは、りー・ホンチンという「育ての母親」だった。それからリーの子供を取り返す執念が凄い。
「一人っ子」政策の中国で起こる悲劇をリアルに描く。
中国もようやく「一人っ子」政策を止める意向を示している。

8位:「セッション」( WHIPLASH)
19歳のジャズ・ドラマー、ニーマンはアメリカで最高の音楽学校、シェイファー音楽学校へと進学していた。そんなある日、シェイファー音楽学校の中でも最高の指揮者として名高いテレンス・フレッチャーが彼の学ぶ初等教室へやって来てニーマンを学校の楽団のドラマーとしてスカウトする。
フレッチャーのトレーニングは血を吐くように厳しい。完全に苛めだ。最後のリベンジが無ければ落ち込む映画だ。
その「伝説の鬼教師」テレンス・フレッチャー役を演じているJ・Kシモンズがアカデミー賞助演男優賞に輝いた。助演とは言え完全に主役を食っている。

9位:「CREED」(クリード チャンプを継ぐ男)
シルヴェスタ・スタローンが一歩退いたロッキーのスピンオフ映画。親友クリードの息子のトレーニングを引き受けファイトを見守る。
 オリジナルの「ロッキー」を見たと同じ感動をこの映画は呼び起こしてくれて涙が零れる。
40年も前の1976年、実生活でも売れない役者シルヴェスタ・スタローンが自ら脚本を書き主演を務め名匠J・G・アヴィルドセン監督の「ロッキー」はメガヒットを飛ばしオスカーやG・グローブを総なめにした。
 しかしシリーズものの難しさと人臣位を極めた主人公ロッキーの若さと力の衰え家族の喪失などで06年の「ロッキー・ザ・ファイナル」でもって終焉を迎えた。

 あれから9年、突如「ロッキー」は装いも新たに華々しく登場する。
しかもスタローンは続けていた監督と主演の座を若い人に譲っているのに驚く。
弱冠29歳の黒人監督・ライアン・クールグラーがメガフォンを取り、世間の注目を浴びたデビュー作「フルートベール駅で」主演の28歳マイケル・B・ジョーダンを引き続き監督2作目の「クリード」の主人公に据えている。

殆ど無名の監督・主演の登場は「ロッキー」の世に出た時と同じだ。
日本では先週末に封切られたがベスト10にも入っていないのは意外だ。

10位:「CAROL」(キャロル)
今でこそレズやホモ同士に結婚や同棲が社会的に認められて来ているが半世紀以上も前の黄金時代のアメリカでのレズビアンのラブロマンスとは随分と時代を先取りしている。

キリスト教では同性愛を罪としナチスドイツでは同性愛者をユダヤ人同様に収容所で処刑するなど激しく弾圧されたことで密かに目立たないように地下に潜っていた。日本でも最近は馴染みになった「LGBTQI」は、「自分が自分らしく生きる自由」をリマインドする社会的アイコンとして、様々なムーブメントを起こしている。
1950年代の富豪の夫人とデパートの売り子の恋。禁断のレズシーンが描き出される。
全裸のケイトとルーニーはスタイリッシュで美しいが露骨でない。
ロングショットと極端なクローズアップでベッドシーンは霞がかかり崇高な感じがすうr。(少しがっかりだが)しかしベッドの上では充足した二人の表情。
ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラーはの二人は上手い女優だ。ブランシェットはオスカーをとると確信する。

次点「「マイ・インターン」(THE INTER):
電話帳の営業部長を引退して10数年経つ独身老人がシニア・インターンのベンがネット通販会社ジュールスのアシスタントに就く。ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイのコンビが嬉しい。博物館行きの電話帳とIT通販のコントラストも面白い。一昔前のパラマウント映画を見ている雰囲気になる。
ジュールスは40歳も年上の人生の大先輩であるベンから様々な助言をもらい、次第に心を通わせていく。監督は「恋愛適齢期」や「ホリデイ」の女流監督・ナンシー・マイヤーズ。
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