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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「パパはわるものチャンピオン」(日本映画):往年のチャンピオン大村隆志は膝を痛めてチャンピオンの座を降りても悪役「ゴキブリマスク」として大好きなプロレス界を離れられない.

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渋谷ショウゲイトの試写前に藤村享平監督が自信満々で面白い映画だから楽しんでくださいと短い挨拶。
34歳の藤村にしても女子中学生ものの「バルーン・リレー」(12)以来6年振りの作品だ。入れ込み方が違う。

映画を見始めて、これは10年ほど前のミッキー・ロークの「レスラー」(The Wrestler)じゃないかと気づく。
実生活でも落ちぶれていたミッキー・ロークがレスラー役でヒットし、公私ともにカムバックした作品として話題になった。
制作費僅か6M(6.6億円)、アメリカ国内で興行成績は44.7M(49億円)とソコソコヒット。

かつては人気を極めたものの今では落ち目のレスラー、ランディ(ミッキー・ローク)。
ある日、ステロイドの副作用のために心臓発作を起こし、レスラー生命を絶たれてしまう。
家族とはうまくいかずガールフレンドでストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)にも愛想をつかれ、孤独に打ちひしがれる中で、元妻に引きとられ会えなくなった幼い一人娘のステファニーに出会い、彼女のためにランディは再びリングに上がる決意をする。

今日紹介するこの映画は、かつてのチャンピオンだった大村孝志(棚橋弘至)は膝のケガと世代交代の影響で現在は悪役覆面「レスラー・ゴキブリマスク」としてリングで血と汗を流しながら戦っていた。

彼我の違いは、日本人は女っ気無し、大村は家族を支えるために好きなプロレスで与えられた役割がヒール(悪役)でも一生懸命にやるだけと割り切っている。

孝志と妻の詩織(木村佳乃)は小柄な小学3年の息子、祥太(寺田心)に大きくなったら父親の仕事を教えてあげると約束していたが、ひょんなことからゴキブリマスクの正体が孝志であることを祥太が知ってしまう。

祥太は恥ずかしさとショックからクラスメイトにはパパは人気レスラー、ドラゴン・ジョージ(オカダ・カズチカ)だと嘘をついてしまう。

だが、そんなウソは直ぐにバレ、同級生にもあわす顔もなく不登校になっている所でキリン出版の編集者大場ミチコ(仲里依紗)に出会う。

ミチコは高校生の頃隆史の全盛期のリングを見てプロレスマニアになった。
ミチコから祥太の生まれる前、全盛時代の父親のことを聞き,リングで必死にバトルを繰り広げるゴキブリマスクの姿がだんだんとかっこよく思えて来る。

ドロップキックやナックルパンチ、空手チョップ等簡単な技やパイルドライバー(脳天杭打ち)やフェイス・バスター、ボディ・スラムなど
危険度や技術度も高い標準なものも出て来るが棚橋を始め現役プロレスラーが顔を揃えているからワイヤ―アクションもCGもVFXも必要ない。
やはり特殊効果を使わないLive実写は迫力がある。

極め付きは医者(大谷亮平)が膝裏の痛みを再発するからと厳禁してるいるのに、リングコーナーによじ登り、飛び降りる必殺技の「ラム・ジャム」を決め手と考えていることだ。
ドラゴン・ジョージとのチャンピオン戦で止めを刺そうとゴキブリはリングコーナーによじ登り飛び降りる必殺技の「ラム・ジャム」を放つが不発、逆にジョージの反撃を招いてしまう。

ランディと大村、往年のチャンピオンが子どもたち(祥太&ステファニー)にカッコ良いところをみせ、互角の死闘の末にコーナーポストからマットに横たわる相手に向かい必殺技「ラム・ジャム」を放つも、何と不発で逆転惜敗すると言うのも似ている。

原作は板橋雅弘・作、吉田尚令・絵による人気絵本「パパのしごとはわるものです」「パパはわるものチャンピオン」をプロレスラー棚橋弘至の映画初主演作として実写映画化。

かつては人気レスラーとして活躍していた大村孝志は、ケガや世代交代の影響で現在は悪役覆面レスラー・ゴキブリマスクとしてリングで懸命に戦っていた。

孝志と妻の詩織は息子の祥太に大きくなったら父親の仕事を教えてあげると約束していたが、ひょんなことからゴキブリマスクの正体が孝志であることを祥太が知ってしまう。
祥太は恥ずかしさとショックからクラスメイトにはパパは人気レスラーだと嘘をついてしまうが、リングで必死にバトルを繰り広げるゴキブリマスクの姿がだんだんとかっこよく思えて来る。

家族のパパ孝志役を映画初主演となる本物のプロレスラー棚橋弘至が演じる。
アメリカではプロレス世界チャンピオン、The Rockことドゥエイン・ジョンソンが世界一のドル箱スターになているように、また棚橋以外で準主役ドラゴン・ジョージのオカダ・カズチカ、内藤哲也、田口隆祐、真壁刀義ら新日本プロレスの選手たちの芝居の上手さに驚く。
その他妻の詩織役を木村佳乃、10歳の祥太役を寺田心が演じる。子供ながら寺田の美男子ぶりは周囲も振り向く程だ。
その他仲里依紗、大泉洋、大谷亮平、寺脇康文が脇を固める。

板橋雅弘、吉田尚令による人気絵本「パパのしごとはわるものです」「パパはわるものチャンピオン」を、プロレスラー棚橋弘至の映画初主演作として実写映画化。かつては人気レスラーとして活躍していた大村孝志は、ケガや世代交代の影響で現在は悪役覆面レスラー・ゴキブリマスクとしてリングで懸命に戦っていた。孝志と妻の詩織は息子の祥太に大きくなったら父親の仕事を教えてあげると約束していたが、ひょんなことからゴキブリマスクの正体が孝志であることを祥太が知ってしまう。祥太は恥ずかしさとショックからクラスメイトにはパパは人気レスラーだと嘘をついてしまうが、リングで必死にバトルを繰り広げるゴキブリマスクの姿がだんだんとかっこよく思えてきて……。孝志役を棚橋、詩織役を木村佳乃、祥太役を寺田心が演じるほか、仲里依紗、大泉洋、大谷亮平、寺脇康文が脇を固めている。

9月21日よりTOHOシネマズ新宿他全国公開公開される。

「イマジネーション・ゲーム」(日本映画):大手ゼネコンで部長をつとめるエリート早見真紀子は,ネットの世界でカリスマ的な人気を誇る「謎の女神」として別の顔を持っていた。

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主演のマチャミ、ヒサモトこと久本雅美は7月に還暦を迎える。Hなことやバカ言ってイケメンタレントが番組に出ると触りまくるお姉ちゃんは映画に初主演する。
マチャミで気になっていたのは「創価学会」の熱心な信者で広告塔になっていたことだが、最近は聞かないから止めたのだろうか。

大手ゼネコンで部長をつとめる早見真紀子(久本雅美)は、仕事一筋で生きてきたシングルのキャリアウーマン。
会社では男性社員たちと対等に渡り合い、部下の白石久美子(仙石みなみ)にも厳しく接する真紀子は、
仕事はできても女性としての幸せには縁がないまま歳を重ねてきたようである。

久本の芝居は固くぎこちないのは映画初主演の重荷のせいか?
しかし芸歴35年が効いて来てスムーズな動きが出て来るが、真紀子と言うキャラを演じていると言うより
大企業の敏腕部長が部下や仕事を仕切るのはバラエティー番組の司会と同じだ。

しかしそんな彼女には誰も知らない別の顔があった。
ネットの世界のあるサイトでカリスマ的な人気を誇る「謎の女神」として別の顔を持っていた。
ヴァーチャル世界では「なりすまし」はあたり前。男が女を装える醜女も絶世の美女にもなれる。

カトリーヌ・ドヌーブ主演の名作「昼顔」のように貞淑な妻が夫のいない留守に奔放な娼婦になれるように、
また渋谷繁華街の廃屋で殺された東電キャリアOL変じた夜の街娼のように、二面性はにエリート女性特有の現象かも知れない。

だから大企業エリート部長の真紀子は若くて超美女の「ミューズ=女神」になりすまし、夜の街に出かけて動画で下半身を映してパンティを脱ぎ、あちこちに隠し、崇拝者の男性たちに「宝探し」をさせたのも本来の成り行きだった。

そして自称「真夜中の女神」ネット上大ヒットでこれが炎上寸前の大人気。

 一方、専業主婦として何不自由ない生活をおくる池内葵(板野友美)は、一見勝ち組であるかのようだが、
夫の勉(田中幸太朗)とは会話すらほとんどないすれ違いの日々。これでは「家庭内別居」で葵は決して幸せではない。

秘かに夫に復讐しようとした陰謀がバレ、家を飛び出し帰るところもない。葵こそ、夫が留守の間にこっそりと復讐を試みる「夫への復讐サイト」のカリスマブロガーだった。
そのストレスをぶつけるかのように、夫に不満を持つ女性たちが集まる復讐サイトに書き込みを続けるうち、いつしか「夫への復讐サイト」のカリスマブロガー人気を誇る存在になっていた。

先輩の大島や前田に美人度も芝居もやや及ばないが板野友美も頑張っている。

しかしこの映画は久本雅美が主演。真夜中の女神の真相が知れ、バッシングは凄い。
折角ゲットした高価なレースの黒いパンティが燃やされる痛ましいイメージもSNSに乘る。

久本が自分の芸能生活にポイントとならないような作品に良く出たな、と言う感じがするが、
映画初主演は美味しいエサなんだろう。

現実とヴァーチャル世界を描いた映画は多々あるし、もう一つ何かギミックが欲しかった。

出演者は葵の夫役に田中幸太朗、真紀子の部下役にアイドルグループ・アップアップガールズの元メンバーである仙石みなみ、
葵の母親役に東ちづる、取引先の社長役に水橋研二、そして人気YouTuberユニットのカリスマブラザーズが本人役として参戦。

謎の女神を捜査する刑事役で寺島進が久しぶりに寺島節で圧巻の存在感を放っている。

畑泰介が監督・脚本・編集を担当している。広告業界でキャリアを積んできたがこれが商業監督デビュー作。未経験の映画の世界でもがいているが出来は良くない。
匿名で別の人格になりきれるネット社会と言う素材は手垢のついたテーマで何を今更と言う感じでサスペンスとうたっているがスリルも無い。 自分らしく生きることとは? 女性の幸せとは何か? なんて今更持ち出してもクリシェばかり。

7月27日よりシネ・リーブル池袋にて公開される

「菊とギロチン」(日本映画): 大正末期。関東大震災の混乱に乗じて活動家たちが次々と粛清されていく中アナキスト集団「ギロチン社」と「女相撲興行」は、「自由な世界に生きること」と同じような夢を見る。

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瀬々敬久監督は言う。
「十代の頃、自主映画や当時登場したばかりの若い監督たちが世界を新しく変えていくのだと思い、映画を志した。
僕自身が「ギロチン社」的だった。
数十年経ち、そうはならなかった現実を前にもう一度「自主自立」「自由」という、お題目を立てて映画を作りたかった。
今作らなければ、そう思った。
映画は多くの支援があったからこそ完成できた。
何かを変えたいと映画を志した若い頃、自分はこういう映画を作りたかったのだと初めて思えた」

作りたい映画を作る。
生きて毎日を暮らしていかなければならない縛りがあると、そんな贅沢なことを言っていられない。
映画作家が、自分が作りたい映画を制作すると間違いなく商売にならない。拘っていると干上がってしまう。

例えば、瀬々敬久監督が、作りたい映画の第一弾は10年の「ヘブンズストーリー」。
全9章4時間38分の長尺で、家族を惨殺された8歳の少女サトにとって、妻子を殺した犯人を「この手で殺す」と宣言するトモキはずっと英雄だった。

そして事件から8年後、サトはトモキに会いにある島へ向かう。
「普通の人が殺す、殺される」をテーマに日常から突如殺人事件に直面した人たちのその後の人生の複雑な絡み合いが描かれる。
この4時間半を超える長尺では商売にならないが、瀬々は自分のテーマでヤリタイ作品を撮ることに生き甲斐を感じている。

出演は、サトに「掌の小説」や「地球でたったふたり」などの寉岡萌希
トモキに「気球クラブ、その後」「ハッピーエンド」の長谷川朝晴のほか、
村上淳、吹越満、嶋田久作、光石研、津田寛治、佐藤浩市、柄本明ら個性派俳優が脇を固める。

生きていくためには「何でも屋」で与えられた作品をヒットさせる職人、だが瀬々監督の本領は自主映画で発揮される。

その第二弾が「菊とギロチン」。
相変わらず長尺だが3時間29分で1時間10分短縮したし、インターミッションも必要無い。

舞台は第一次世界大戦後、大正末期の日本。
関東大震災の混乱に乗じて活動家たちが次々と粛清されていく中、報復しようと立ち上がる者たちがいた。
「社会を変えたい、弱い者も生きられる世の中にしたい」と言う夢を持つ、
中濱鐡(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)たちが仲間とともに立ち上げたアナキスト集団「ギロチン社」。

同じ頃、「女相撲興行」が全国各地で開催され農村を中心に盛り上がりをみせていた。
女だと言う理由で困難な人生を歩まざるを得なかった女相撲の一座は「強くなりたい」と言う願いを果たせる唯一の場所だった。
江戸時代に端を発した女相撲は当初の見世物的色合いから時代を経て格闘技へと変貌しのちの女子プロレスへと繋がっていく。

立場は違えど両者の願いは「自由な世界に生きること」だ。
アナキスト集団「ギロチン社」と「女相撲興行」は実在し、同じような夢を見ていたのだ。

ここからがフィクションになる。
瀬々監督はこの両者を出会わせ、格差のない社会作りに情熱を注ぐアナキストたちと活力に溢れた女力士たち。
若者たちが出会い、夫々恋に落ち、官憲の非条理で不穏な時代を力強く生き抜く様を描く。

自由な雰囲気が失われつつある世相の中、東京近郊で出会った女相撲一座の女力士たちとアナキスト・グループ「ギロチン社」のメンバーが惹かれ合っていく。

大正末期。関東大震災直後の日本には、不穏な空気が漂っていた。
軍部が権力を強める中、それまでの自由で華やかな雰囲気は徐々に失われ、人々は貧困と出口の見えない閉塞感にあえいでいた。

そんなある日、東京近郊に女相撲一座「玉岩興行」がやって来る。

稽古では土俵際の投げ合いでオッパイがポロリと見えるサービスも瀬々監督は忘れない。
力自慢の女力士たちに加え、元遊女の十勝川(韓英恵)や家出娘など、ワケあり娘ばかりが集まったこの一座には、
新人力士の花菊(木竜麻生)の美形の姿もあった。
貧しい農家の嫁だった花菊は、夫の暴力に耐えかねて家出し、女相撲に加わったのだ。
「強くなりたい。自分の力で生きてみたい」と願う花菊は、周囲の人々から奇異の目で見られながらも、厳しい練習を積んでいく。

そして訪れた興行の日。
会場には、妙な若者たちの顔ぶれがあった。それは「格差のない平等な社会」を標榜するアナキスト・グループ「ギロチン社」の面々。

師と仰ぐ思想家の大杉栄が甘粕大尉に斬殺されたことに憤慨し、復讐を画策すべく、この土地に流れ着いたのだ。

女力士たちの戦い魅せられた「ギロチン社」の中心メンバー、中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)は、彼女たちと行動を共にするようになる。
「差別のない世界で自由に生きたい」。
彼ら共通の純粋な願いは、性別や年齢を越え、アナキストや女力士らを強く結びつけていく。

特に次第に惹かれあっていく中濱と十勝川、古田と花菊。
だが、彼らの前には、軍部や警察の介入と厳しい現実が容赦なく立ちはだかる。

細かく書くと3時間半の作品だけに膨大な量になるので概略だけを紹介する。
新人を中心のキャスティングに特色がある。

ヒロインである新人力士・花菊ともよには、約300名の中から選ばれた木竜麻生。
普段は深刻な顔をしているが笑うとキュートだ。
貧しい農家の主婦で乱暴な夫、定生(篠原篤)との生活を抜け出した女力士、得意技は「内無双」で劇中でも一本決めている。

ギロチンの中心メンバーである古田大次郎(寛一郎)に恋している。寛は俳優・佐藤浩市を父に持つ。映画初挑戦だったが、繊細さと荒々しさを絶妙なバランスで保ち、純粋な夢に殉じる青年を好演している。

「ギロチン社」のリーダーで、強く、自由に生きる道を模索する詩人の中濱鐵を演じるのは、今TVに映画に引っ張りだこの東出昌大。世の中を変えたいという理想を持つ正義漢だが、強請りや女遊びにうつつを抜かしながら日々を過ごす。中濱と心を通じ合わせる朝鮮出身で元遊女の女力士・十勝川には「誰も知らない」「ピストルオペラ」などの演技派、韓英恵が演じている。気が強く興行中に林の中で客をとりセックスをする。

この2人は美形でほっそりしているが無名で力士役の女優たちは、日本大学の相撲部に指導を受けて役作りをした。

文字通り体当たりの女相撲シーンを嘉門洋子、前原麻希、持田加奈子らは体力勝負で演じる。
女相撲に監視の目を光らす冷徹な警察署長、丸万の菅田俊、

他にも、甘粕大尉に斬殺された大杉栄(小木戸利光)を支えた雑誌「労働運動」の村木源次郎の井浦新や仲間の和田久太郎の山中崇は甘粕に復讐を誓う。

相撲一座の親方役に引っ張りだこの渋川清彦、元豪農の地主で女相撲大好きな田中半兵衛は嶋田久作、
分会長として軍服に身を包み反共半朝鮮の飯岡大五郎は大西信満などなど個性派キャストが脇を固める。
さらに国際的に名が通っている永瀬正敏がナレーションを務めている。

「64-ロクヨン- 前編/後編」「ストレイヤーズ・クロニクル」「友罪」などヒットメーカーの瀬々敬久が、構想30年の企画を実現させた入魂の自主制作作品。

7月7日よりテアトル新宿他全国公開される。

「泣き虫 しょったんの奇跡」(日本映画):プロ棋士養成機関で修練するも26歳で4段に達せず規定により脱落した男が、アマの世界で活躍し35歳でプロ棋士試験に合格するまでの波乱万丈の半生記

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このところ将棋の話題で盛り上がる。高校一年生の藤井六段や羽生永世名人などの話題が頻繁に取りあげられ、これまで以上に将棋にハイライトが当たっている。

映画は大コケしたがコミック原作の上下2巻の大作「三月のライオン」とか、29歳の若さで亡くなった棋士・村山聖の生涯を描く松山ケンイチ主演の「聖の青春」も感動的だった。

そんなブームの中で異色の脱サラ棋士・瀬川晶司の自伝的小説が、松田龍平を主演に迎えて映画化された。
6歳の幼児の頃から将棋一筋だった主人公しょったんが、1度は挫折しながら再び夢に挑む。主人公の親友で幼馴染の生涯の親友を演じるのは、松田の友人でもあるミュージシャンの野田洋次郎。
監督は松田とは「青い春」などで組み、自身もかつてはプロ棋士を目指していた豊田利晃。
監督・豊田利晃が「青い春」「クローズEXPLODE」で主演・松田龍平と16年振りのタッグ。
35歳のサラリーマンが、乾坤一擲、慣習を破り、将棋界の歴史を変えた、感動の実話
原作は将棋界にアマチュアからプロ棋士を3人破りプロになった異色の棋士・瀬川晶司五段の自伝的作品「泣き虫しょったんの奇跡」(講談社文庫刊)。

知らなかったが日本将棋連盟のプロ棋士養成機関では6級から三段まで160―170人の会員で構成されており、満26歳までのリーグ戦で勝ち越せば4段に昇格しプロ棋士になれる。
中学3年で奨励会の試験をパスして将棋一筋、22歳の夏に3段に昇段し4段は指呼の間にあったが、4年間足掻いた末に、最後の三段リーグで負け越してチャンスは潰え年齢制限の鉄の掟は絶対的に君臨する。

泣く泣く将棋と縁を切り27歳にして神奈川大学法学部に入学し学生生活を送る。
将棋以外何の知識も経験も無いまま、下界の社会の荒波に放り出されてしまう。
父、敏雄(國村隼)は息子に優しく、理解を示す「お前は本当に奨励会で頑張った。しばらくゆっくり休め」と暖かい。
ずっと応援してくれた父が突如交通事故で他界してしまう。
遺体を前にプロ棋士の息子の姿を夢見ていた父親の願いを叶えられなかった昌司は滂沱の涙を流す。
このシーンもターニングポイントの一つで貰い泣きをしてしまう。

居場所を求めて訪ねた悠野の家で久しぶりに指した将棋は、年齢制限に怯えていた将棋と違う。
再び将棋道場を訪れるようになった昌司は将棋に挑戦しアマ名人位に優勝したほか次々とタイトルを取りアマチュアの強豪として大活躍をする。
卒業してサラリーマンになるがプロとの対戦で7割の勝率を挙げ、新聞記者の新條やアマの強豪藤田守(小林薫)に励まされて日本将棋連盟にプロ入りの嘆願書を提出する

この辺りが映画で一番盛り上がるところで周囲の協力もあり、日本将棋連盟を説得して遂に05年、35歳の時にプロ棋士編入試験を実施させる。

条件は6人のプロ棋士と対戦し3人破ったら合格というもの。
ところが最初の相手は奨励会をでたばかりの年下の4段にあっさり負けてしまう。
映画ながら大丈夫かいなと心配するが、「年齢が下でも対戦相手6人の中で彼が一番強い」と。まあ中学時代の藤井少年のようなものだ。

5人目で3人に勝利し見事プロ棋士誕生のカタルシスを味わせてくれる。
殆どの人は将棋を知らないし、映画の中でも指し手を細かく説明しない。むしろ瓦礫の中から不死鳥のように飛び立つ男を描く人間ドラマとして見るとすごく面白いし、こんな人生があるんだと驚く。

主人公の瀬川晶司を演じるのは「舟を編む」で第 37 回日 本アカデミー賞・最優秀主演男優賞ほか数々の賞を受賞し、
豊田監督作品には「青い春」「ナイン・ソウルズ」「I'M FLASH!」 と息の合った出演を重ねてきた松田龍平。

瀬川のプロ棋士編入試験を陰ながら支える親友であり最大のライバル、鈴木悠野役には松田と公私ともに仲の良い、
人気ロックバンド RADWIMPSの野田洋次郎。

昌司の挫折にも暖かな理解を示す父敏雄に國村隼、妻で晶司の母・瀬川千香子に美保純。
昌司の家庭環境はパーフェクトに彼を守る。

晶司の小学生時代に多大な影響を与えた担任教師・鹿島澤佳子役に松たかこ、

イッセイ尾形は中学生時代の晶司に将棋の道を教える将棋クラブの席主・工藤一男役、
プロ棋士養成機関を放り出された昌司を暖かく迎い入れて将棋三昧に漬ける。
小林薫は再びプロを目指す晶司を支えるアマチュアの強豪、藤田守役、

他に永山絢斗、染谷将太、駒木根隆介、渋川清彦、新井浩文、早乙女太一、妻夫木聡など芸達者の男優たちが脇を固める。

興味深いのは豊田監督自身も関西で将棋のプロを目指した過去を持ち、17歳まで新進棋士奨励会に所属していた経験がある
「僕は幼い頃から奨励会にいて挫折した人間で、将棋を憎んでしまったこともあった。瀬川さんの自伝を読んだ時そんな憎しみが消えて、こういう生き方もあるんだと感動して、ぜひ映画化したいと思いました」と、
自らも将棋の世界の厳しさを体感していたからこそ、本作の映画化を熱望していたとコメントしている。
将棋に詳しくない人や子供から年配まで楽しめる作品にしたと前置きした上で、
「個人的には、自分と同じように奨励会を挫折した人に見てほしい。夢破れた経験のある人たちに届けたい」と。

瀬川五段は、「あきらめなければ夢は叶うというのが大きなテーマだけど、実際には色んな人たちの支えがあって実現できた。
この映画は、一人じゃなくて誰かに支えられていることに気付かせてくれる。特に小中学生や、先生方にも見ていただきたい」と要望している。

今秋全国で公開。

「ワンダーランド北朝鮮」(独・北朝鮮映画):「祖国統一」を目指し変貌を遂げつつある北朝鮮を韓国の女流監督チョ・ソンヒョが紹介する。

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8日金曜日の夜7時から、試写会会場として初めて足を踏み入れたのは、日比谷公園内にある「日比谷図書文化館」。いつも建物の前を通るが中へ入るのは初めてだ。
学校のように部屋が並んでいる。無機的な冷たい感じの内部。
4階のスタジオプラスと言う小ホールでの上映だった。

主宰は福岡市に本社を置く「ユナイテッドピープル」で文字通り「人と人をつないで世界の課題解決をする」をミッションに、映画輸入・配給・宣伝・制作事業を行なっていて、普通の映画PR会社と違う。

受付を一人で仕切っている中年の男性と名刺を交換したが
関根 健次氏で肩書は
ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役
一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事

世界半周の旅の途中偶然訪れた紛争地で世界の現実と出会い、そのことで「平和実現」が関根の人生のミッションとなる。
2002年に「世界の課題解決」を事業目的とする非営利会社、ユナイテッドピープル株式会社を創業。国連の仕事を個人で遂行しようとしている奇特な御仁だ。


肝心の映画の方だが、韓国の女流監督、チョ・ソンヒョが、北朝鮮の「普通の人々」を取材するために、韓国籍を放棄し、ドイツ国籍を取得して北朝鮮でのドキュメンタリー映画制作を試みる。映画一本とるのに韓国籍を捨てるとは凄い。
しかし変貌して南に寛容になっている北朝鮮を見るとドイツ国籍を取る必要があったのかね。

いつものように北朝鮮では自由に取材できない制限があるが、韓国人女性だからと「同胞」として受け入れられたチョ監督はドキュメンタリーの中で今まで見られなかった普通の考え方や意見や姿形を報告してくれた。

しかし撮影は公務員ガイドが決めた場所と取材対象しか出来なかったし、北朝鮮のオバサンアナウンサーの気張ったニュース番組の焼き直しに過ぎない。
将軍様の対外政策が変わって来ていてそれのPRと言うかプロパガンダをチョ監督がパペットのように従順に描写し自由世界で報告しているに過ぎない。

そんな意味では昨年(17)1月に上映された「太陽の下でー真実の北朝鮮―」(UNDER THE SUN)(チェコ・露・独・ラトビア・北朝鮮映画)は凄い。
北朝鮮当局の用意した脚本を換骨奪胎、ロシア人マンスキー監督は「独裁国家・北朝鮮の実態と真実を暴く」ことにテーマに記録映画を仕上げている。
 一見北朝鮮って「才能ある子どもを育てる、文化活動に熱心な模範的な国」だな、と思ってしまうような脚本が用意される。

北朝鮮側の用意した理想的な家族の記録映画撮影に24時間係員が付きっ切りで見張り決められたシチュエーションで指定場所でのロケーション、撮影デイリーはその日に1本残らず検閲し意図に沿わないネガは没収する。
このドキュメンタリー映画の監督で脚本も担当するロシア人、ヴィタリー・マンスキーはしたたかだ。
隠し撮りでその裏側の係員が台本通りのシチュエーションを要求しモデルの家族や少女にヤラセを強制する姿を隠し撮りで暴露し、ネガが没収されないように巧みに隠す。
そして出来上がった記録映画は「やはり北朝鮮は我々の想像通りの全体主義国家だ」と強い印象を残す。

残念ながらチョ・ソンヒョ監督は前述のようなロシア人、ヴィタリー・マンスキー監督のような才覚や知恵経験もなく、北朝鮮当局の筋書き通りの記録映画しか撮れなかったようだ。

独裁国家、全体国家で、核開発を行う危ない国。北朝鮮に良いイメージを持っている人は少い。

しかし幸いなことに将軍様の雪解けで国家の進むべき方向が変わってきているのでそれはそれで北朝鮮の台本映画も価値がある。

それは「祖国統一」を目標とした政策の大変換だ。
だから市井の人々の幸せそうな表情に、自然エネルギーを活用した循環型な暮らし。エンジニア、兵士、農家、画家、工場労働者など「普通の人々」への取材を報告している。
公務員画家の男性は、美しい女性を描くことを楽しみ、表情は明るい。デザイナーという言葉を知らない縫製工場で働く少女の夢は、「今までにない独創的な服を作る」こと。休憩時間に職場の人々と体操をする。一糸乱れぬ動きは却って気持ちが悪い。
経済制裁下にある北朝鮮の人々の暮らしぶりは貧しく慎ましいが、「統一」で抜け出せる希望をあてにしていること感じさせる。
韓国出身のチョ・ソンヒョン監督が、興味を抱いた国は北朝鮮とイスラエル。
イスラエルはドンパチが日常的で危険だから止めて朝鮮にしたと言う。
映画製作を行うため韓国籍を放棄し、ドイツのパスポートを得て北朝鮮に入国。

北朝鮮と言う言葉は撮影に入るとスタッフやナレーションも使わない。「朝鮮」とだけ表現する。
言葉が同じなので気持ちが通じる「同胞」として迎えられたチョ監督でも、慣例通り自由な取材は出来ない。
政府派遣のガイドが必ず付き添い、決められた場所で決められた人々だけをインタビューする。
バラエティに富んでいて、エンジニアや兵士、農家、画家、工場労働者といった広範囲の市井の人々に会って話を聞く。

場所もピョンヤンではなく南へ200キロ、人口33万人、北朝鮮6番目の都市ケソン(開城市)で南北境界線の板門店まで8キロと韓国に一番近い都市だ。

そこで決められた人たちにインタビューするが答える内容はハンで押したように
「祖国統一」だ。
今や北の将軍様も南の大統領も雪解けムードで、世界の警察アメリカの強面トランプの「核廃棄」も唯々諾々と従う様子を見せている。

将軍様に従う市井の人々に「祖国統一」に異論がある訳が無い。

夫が金日生と一緒に日本と戦い獄死したと言う上品なお婆ちゃん。夫を讃える記念碑墓もソウルにあるからどうしようもない。死ぬまでに統一されれば76年振りに夫の霊前に花を手向けられるのにと。
一家の孫で長男は生活が苦しいが統一されれば一気に景気は良くなり、物資も豊富に給与も上がる、と地獄から天国へ駆け上がる姿勢だ。

デザイナーという言葉は知らないが「今までにない独創的な服を作りたい」と夢を抱く縫製工場員の少女や、「美しい女性だけを描く」ことを楽しむ画家の男性など、経済制裁下で慎ましい生活を送りながらも、素朴で天然な人々と出会う。

だが美人しか描かないと言う公務員画家が面白かった。チョ・ソンヒョン監督は美人だから是非描かせて欲しいと粘っていたが、どうも目が悪いんじゃないか。

また、経済制裁を受けているからこそ自然エネルギーを活用する循環型の暮らしがある。
例えば田舎の農夫、小さな太陽光パネルで電力を作り出す。
たい肥も人糞、豚糞、鳥糞、あらゆる糞を使う。

上映終了後、高校生の時から北朝鮮に興味を持ち17歳で単身訪朝した平さん(仮名)がスライドで北朝鮮ツアーを紹介するが、内容もガイドにキッチリと仕切られており映画と殆ど同じ。
「祖国統一」とテーマを決められ、喋るセリフも決まっているからハプニングは期待できない。

6月下旬よりシアター・イメージフォーラムで公開される。

「ダリダ あまい囁き」(Dalida)(フランス映画):半世紀前、全世界を席巻したダリダ。惹きつけて離さないその美貌と歌声の「フランスの女神」の奔放で短い生涯を全編ダリダの歌声に乗せて描く。

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5月の19日からスタートして4週間。
土曜日(12日)の角川シネマ有楽町は日に2回の公演になっており、1時15分の回は30人ほどの観客だった。
シニアで1100円を払おうとすると支配人が証明する書類を見せろと言う。この顔、この白髪頭で60歳以下に見えるかと突っかかるとウチは免許書など証明書を見ない限り1800円を頂きますと頑固だ。
折角気持ち良く「パローレ」や「ベッサメ・ムーチョ」「18歳の彼」を聞きたいムードもふっとんでしまうよ。

映画は充分に堪能できる。
半世紀前、僕はダリダの活躍はリアルタイムで追っていた。

ダリダの名前を知らなくても曲を聞けば誰でも聞いたことがある。
特にアラン・ドロンとのデュエットで,この映画のサブタイトルにもなっている「愛の囁き」(Parole)は70年代半ばにはどのラジオどのTVからでも流れていた。
フランス語、イタリア語、アラブ語そして日本語でもこの曲と「18歳の彼」もレコードが売れていた。

映画は時代順にダリダを追う。
イタリア移民の家系でエジプト・カイロに生まれ育った少女ヨランダ。本名ヨランダ・クリスティーナ・ジリオッティ。
イタリア移民の家系で、父・ピエトロはバイオリン奏者。母・ジュゼッピーナ、兄・オーランド、弟・ブルーノの5人家族。
幼い頃に目の手術を受け眼鏡をかけて過ごす。父はダリダが12歳の時に病死。

幼い頃は、眼鏡姿をいじめに会い、自分はブスだと思いこんでいたし父親から暴力を受けていてトラウマになっていたが、16歳で自分を苦しめていた眼鏡と決別する。
そして20歳の時、ミス・エジプトの栄冠に輝く。
眼鏡は美貌にダメージを与えるのかな。ブルネットの長い髪は彫りの深い顔立ちに似合い印象的だ。但し歌はオリジナルのダリダの歌声を使っている。本人は歌えない。

数年後、ヨランダ(スヴェヴァ・アルヴィティ)は「ダリダ」として芸名に変え、美貌とエキゾチックな歌声で、フランス全土に社会現象を巻き起こし、スターの座に上りつめていた。
ビジネスパートナーのルシアン(ジャン=ポール・ルーヴ)には妻がいたが、ふたりは愛し合いやがて結婚する。

スヴェヴァ・アルヴィティとは聞いたことが無いが、モデル出身で映画はこれが初めてと言うキャリアにしては

ダリダには「夫と子供を持つ夢」があったが、ルシアンはダリダのキャリアを優先してしまう。
22歳の時に中絶が祟って子どもを産めない身体になっていることで苛立つ。

結婚からわずか1か月後、画家のジャン(ニールス・シュナイダー)と新たな恋におちる。
不倫をしたダリダへの世間の風当たりは強かったが、弟のブルーノ(リッカルド・スカマルチョ)のサポートもあり、歌手として成功を収め、元夫のルシアンとも友人としての絆を取り戻していく。

ダリダの男関係は凄いってもんじゃない。
元夫を含め3人が彼女の為に自殺をし、ダリダ自身も54歳の時自裁して果てる。

新しく恋人になったイタリア人歌手ルイジ・テンコ(アレッサンドロ・ボルギ)と過ごす音楽祭の夜、スターとしてステージに立つダリダの影で、一次審査で落選したルイジは絶望し、「人間は死に向かって生きる存在だ」という尊敬するハイデガーの言葉を実行して拳銃自殺をしてしまった。
ベッドではダリダは「人間は恋に向かって生きる存在よ」と主張していたのだが。

絶望から立ち上がったダリダは、1973年1月、ブルーノがイタリアから持ち帰ってきた「Parole, Parole(あまい囁き)」をアラン・ドロンとデュエットし全世界で大ヒット。
1974年2月には「愛するジジ」を発表、12カ国のヒットチャートのトップになる。

特に、アラン・ドロンとのデュエット曲「あまい囁き」が大ヒットし、夕刊紙などに「ドロンとの熱愛発覚」と騒がれた時も、サンジェルマン伯爵こと新恋人のリシャール(ニコラ・デュヴォシェル)に夢中だった。
しかしリシャールは一番厄介な男だった。嫉妬深く、酒乱で人間関係は滅茶苦茶で、ダリダのアパートで逢引していた家政婦のボーイフレンドを射殺して逮捕される。保釈金を含め裁判の費用を総てダリダが引き受けた。

出会いと別れに傷つきながらも、その全てを歌にのせてステージで輝き続けるダリダ。
歌とは別にエジプトの巨匠ユーセフ・シャヒーンの映画への出演が良い気分転換になっていた。生まれ故郷のカイロへオープンカーで凱旋パレードが凄い歓迎振りだ。

だが、再びダリダには、悲しい別れが待っていた。

監督・脚本はリサ・アズエロス。
1965年フランス生まれの52歳。
母は「太陽がいっぱい」でアラン・ドロンと共演した女優マリー・ラフォレ。
ハスキーな声でテーマ曲を歌うマリーに僕らは夢中になったものだ。

角川シネマ有楽町他にて公開中

「スターリンの葬送狂騒曲」(The Death of Stalin)(英・仏・加・白映画):恐怖政治の独裁者、スターリン死後、ソ連の大物たちがゲスな本性を現し漫画のような熾烈なドタバタ闘争劇を展開する

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独裁者の虐殺者数と言えばアドルフ・ヒトラーがナンバー1と思うだろうが、ユダヤ人600万人を入れても1100万人で3位、

それより多いのがこの映画の主人公のヨシフ・スターリンの2000万人で2位、レーニンの後継者争いの中、大粛清で、政敵を次々と葬っている。
しかしダントツは中国の毛沢東でバカげた「大躍進政策」で飢餓を生じ6000万人を殺して虐殺王だ。

「我々が手を組んでもスターリンの前では糞の役にも立たなかった!」と中央委員会第一書記のニキタ・フルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)は独裁者スターリンの死後数時間しか経っていないのに政治局の仲間に大声で叫ぶ。

「敵のリスト」をチェックして名前が載れば問答無用で「粛清」される。
旧ソ連・モスクワ、独裁者スターリンは粛清という恐怖で30年の長きに亘り国を支配していた。
1953年3月1日、幹部との夕食後寝室のソファに脳内出血で倒れ帰らぬ人となる。

彼の後釜につくチャンスだと色めき立つ側近たちの、互いを出し抜く卑劣な駆け引きが始まり、権力バトル開始される。

表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、スターリンの腹心だったマレンコフ(ジェフリー・タンバー)、中央委員会第一書記のニキタ・フルシチョフ、NKVD警備隊長のベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)が3大トップとなる。

幹部会でマレンコフが次期書記長に任命され、ベリヤがナンバー2の地位を手に入れ、葬儀委員長を押し付けられたフルシチョフは闘争の土俵から降りざるを得ない。
そこで図に乗ったベリヤが優柔不断なマレンコフを操り大暴れをするところから物語は始まる。

スターリンの粛清リストを破棄し政治犯を釈放し宗教弾圧の犠牲者だったロシア正教の主教を葬儀に招く。

怒り心頭に発したフルシチョフは最高司令官ジューコフ元帥(ジェイソン・アイザックス)と組んでベリヤに戦いを挑む。

ソ連の大物たちがゲスな本性を現し漫画のようなドタバタ闘争劇を多少オーバーに描いていたとしても
殆どの展開は史実に基づいているだろう。

一時は地に落ちたスターリンの経歴と尊厳さも最近は復活している。
それに伴い、プーチン・ロシア大統領はこの映画の上映を公開3日前に禁止した。

ロシア国民は半世紀前の自国の大物政治家たちの破廉恥な醜態を見なくて済む訳だ。
それが今後のために良いことか悪いことかは知らないが。

出演は主人公フルシチョフに「ファーゴ」のスティーヴ・ブシェーミ、
優柔不断の書記長マレンコフ役は「ハングオーバー!」シリーズのジェフリー・タンバー、
スターリン憧れのピアニスト、マリヤに「007 慰めの報酬」のオルガ・キュリレンコ

監督・脚本はスコットランド生まれの54歳のアーマンド・イアヌッチ。TVドラマで続けている政治の辛口批判が評判を呼び、長編ブラック・コメディを演出する。

しかしモンティ・パイソンでもイギリスの風刺やユーモアは日本人には通じないものもあり,
翻訳の字幕は辛い。

恐怖政治の独裁者、スターリン死後のドタバタ劇のコメディとトラジェディは初めて知るものが多く、
興味深く見終わった。

8月3日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される。

「スティル・ライフ・オブ・メモリーズ」(日本映画):若手カメラマン春馬の作品に心奪われた怜は何も訊かないこととネガをもらうことを条件に、自分の性器を撮ってくれと切り出す

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昨日(12日)が最終試写と言うことで新橋高速道路地下のTCC試写室は30分前に着いたが既に補助椅子を準備するほどの盛況。
何しろ女性器が抽象的に植物や貝に似せて画面に現れるかと思うと具体的にも挿入される。
イヤラシさは全く無く、田舎のスタジオの年月を経た重みや山林の自然の大らかさに融合されて観客に訴える。

後述するがカメラマンとその人間関係、被写体の性器、死の床にある老母と娘、その総ての中心にあり映画を差配するのは
「ハッセルブラッド」だと思う。
カメラマンの春馬はスウェーデンの古いが手入れが行き届いたレンズ交換型6×6cm判一眼レフカメラ「ハッセルブラッド」(Hasselblad)に自分のカメラマン生命を託している。
山梨県立写真美術館でキュレーターをしている怜(永夏子)は、偶然入った東京のギャラリーで若手写真家・春馬(安藤政信)の作品に魅了される。
その翌日、怜は撮影の依頼のために春馬にコンタクトを取る。

何も訊かないこととネガをもらうことを条件に、自分の性器を撮ってくれと怜は春馬に切り出す。
謝礼も悪くない。

春馬には夏生(松田リマ)という妊娠中の彼女がいるが、夏生は春馬と怜の創作作業に立ち入れない自分にしだいに歯がゆさをつのらせる。

暗い感じの怜役の34歳の永夏子も底抜けに明るい恋人、夏生の23歳、、松田リマもなかなかの美人、そして惜しげもなくヘアヌードで画面を動き回る。

性器を毎回覗き込んでいる春馬が、撮影を通じて怜との距離が縮まっていくが、
ある日とうとう我慢が出来なくなり怜にのしかかる。
ここで強姦もどきの乱暴狼藉シーンとなるとぶち壊しだが、
襲われた怜が手元にあったハッセルブラッドを春馬の股間に投げつける。

痛さでハッと我に戻った春馬は怜の性器の撮影に戻る。
ハッセルブラッドは急場を救い軌道を元にもどす重要な役割を果たす。

怜の母親が亡くなり遺言通り遺灰を富士の麓の湖(河口湖)に撒くシーンは掉尾を飾る美しさだ。

原案はアンリ・マッケローニの「とある女性の肉体写真集成百枚 ただし、二千枚より厳選したる」という写真集から、女性性器を撮り続けたマッケローニと、撮らせ続けた彼の愛人の二年間に触発され、企画され脚本になった。

監督は「スイートリトルライズ」「ストロベリーショートケイクス」「無伴奏」など佳作を発表し続ける矢崎仁司。

主演の春馬に「GONIN サーガ」「キッズ・リターン」の安藤政信。
彫りの深い偏執狂的な容貌で女性の股間を覗き込む芝居は様になっている。

何れにしてもこの映画、興味本位ではなく、今までの邦画の埒を飛び出し自由闊達にセックスを描く注目すべき作品で一見の価値はある。矢崎仁司の代表作となるだろう。

7月21日より新宿K's cinemaにて公開される

「二重螺旋の恋人」(L‘Amant Double)(仏映画):パリに住む25歳の女性、クロエが偶然にも、2人の精神科医に出あい、双子だと知れる。3人の愛憎半ばに絡み合ったアンビバレントの生活は果しない

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冒頭のシーンでクロエ(マリーヌ・ヴァクト)が髪をカットしている。濡れた髪、青白い顔バックのグレイの壁とパリに住む25歳の女性が原因不明の嘔吐を繰り返すのを
上品にカメラは追う。
暗い部屋の産婦人科で膣を広げて診察を受けるが女医、ウェクスレル(ドミニク・レイモン)は何処にも悪いところが無い。

むしろ精神的な原因だろうと、精神科分析医、ポール・メイエル(ジェレミー・レニエ)を
を紹介される。優しく患者に寄り添い話を聞いてくれるポールに恋心を抱くには時間がかからない。
美術館の監視員の仕事にもつき落ち着いたクロエは同じ気持ちを抱くポールと恋人同士になり同棲を始める。

ある日バスに乗っていてポールにそっくりの男を見つけ調べるとレイ・ドロール(レニエ二役)と言い同じ精神科分析医でポールの双子の兄だと判明する。
初対面から神経を逆なでする言動でクロエを診察するレイはポールと正反対な尊大で傲慢な男だった。

ここからが映画と言うか、女心の計り知れない矛盾と言うか、クロエはレイにも惹かれ診察に通い詰め肉体関係にもなる。

主人公クロエ役のマリーヌ・ヴァクトはモデル出身の27歳。売春に手を染める名門女子高生を演じた、
オゾン監督の「17歳」(13)で映画デビューしたが
その美しい均整のとれた裸身で双子の兄弟の間を優雅に遊泳する。幻想か現実か兄弟に挟まれて3Pの乱れたセックスシーンは興奮する。

しかし驚愕のシーンはクロエの妊娠した大きなお腹にヒビが入り、エイリアンの誕生のような黒い心臓大の生き物が蠢きながら頭を出すことだ。
久しぶりに故郷に戻ったクロエの母親ジェンケル夫人(ジャクリーヌビセット)がクロエの子宮内に飲み込んだ双子の姉の話をする。
オゾン監督の終盤はエイリアンやエクシシストより怖い。往年の美女、ビセットも74歳、なつかしさだけは残る。

監督は 「スイミングプール」「8人の女たち」などの作品で知られるフランソワ・オゾンが、4年の構想期間を経て放つ心理サスペンス。

原作は米国の女性作家ジョイス・キャロル・オーツの双子をテーマとした短編小説「Lives of Twin」をオゾン監督が翻案して脚色。

そのクロエと心理的にも肉体的にも激しい駆け引きを演じる、優しい兄と乱暴な弟の双子の精神分析医を、「しあせの雨傘」「最後のマイ・ウェイ」のジェレミー・レニエが演じる。

8月4日よりヒューマントラスト有楽町他全国公開される。

「アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!」(Early Man)(英・仏映画):原始時代、少年ダグは仲間と平和に暮らしていた渓谷に青銅を獲得に暴君ヌース卿が軍隊を引きつれ侵攻する。「サッカー」好きのヌ

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ハリウッドの洗練されたCGやVFXの立体アニメと違い、ストップモーション(CGも幾らか使っているが)で時間をかけて描く、土臭いと言うか牧歌的な「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」シリーズ。

イギリスのニック・パーク監督とアードマン・アニメーションズが、テーマをガラリと変えて、先史時代を舞台に、暴君から故郷を取り戻すため「サッカー」で戦いに挑む原始人の少年と仲間たちを描いたアニメ。
原始の時代にサッカーがあるのも奇妙だが、いよいよ開幕するワールドカップサッカーとタイミングを合わせて観客サービスに努めているのだろう。

隕石が地球に激突しイギリス・マンチェスター近郊に破片が落下する。
まだ地球上にマンモスがいた先史時代。
巨大な隕石が火を吹く丸いボール状のものを他の溶岩と一緒にふき出す。熱いにも拘わらず原始人たちは火のボールを器用に足で扱い、パスをまわし木と木の間の狭い隙間に蹴り込む。

勇敢な少年ダグ(声:エディ・レッドメイン)は、部族のユーモラスな仲間とブタの相棒ホグノブ(ニック・パ-ク=監督)と一緒に、小さな谷間で平和に暮らしていた。
しかし、軍隊を引き連れて谷に侵攻して来たブロンズ・エイジ・シティの暴君ヌース卿(トム・ヒルドストン)に、故郷を追われてしまう。谷に埋まっているレア・メタルの青銅の独占が狙いだ。悪者ヌースは強いフランス訛りの英語を喋る。

ニック・パ-クの描く人間は皆出っ歯で鼻の穴が天井に向き、動物も人間も大きな丸い目玉を持つ。

ブロンズ・エイジ・シティではサッカーと呼ばれるボールをゴールに蹴込むスポーツが盛んだ。ヌース卿はサッカーでダグのチームが勝てば故郷の谷間を返してくれると言う。仲間と特訓に励むダグとその仲間に頼もしい助っ人が現れる。サッカーの天才少女、金髪のグーナ(メイジー・ウィリアムス)だ。

始まったゲームは一進一退、デッドヒートでアニメと思えないほどの迫力があり、ワールドカップ並みに盛り上がる。
仲間とファミリ―を描き、一旦目標を決め皆で力を併せれば必ず達成されると、励ます。

主人公ダグの声を「リリーのすべて」「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」「博士と彼女のセオリー」などのエディ・レッドメイン、
ヌース卿の声を「マイティ・ソー」「アベンジャーズ」のトム・ヒドルストンが担当。
ほかにメイジー・ウィリアムズ、ティモシー・スポールらが声の出演をしチームを結成する。

7月6日よりTOHOシネマズ新宿他全国公開される

「センセイ君主」(日本映画):コクって振られて7連敗の女子高2年の佐丸あゆはの前に水も滴るイケメン先生が現れる

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またJKものか、と思っていたらこれが意外と面白い。
「君の膵臓をたべたい」で泣かせた浜辺美波が一転してコメディアンヌに転じる器用さ上手さに舌を巻く。

今一番の若手演技派女優は二階堂ふみだと僕は思うが、浜辺は二階堂より上手くなるだろう。
未だ17歳の浜辺は何処まで伸びるか、また芸域の広さに日本の若手女優を今後リードする将来性が期待できる。

告白7連敗中の佐丸あゆは(浜辺美波)は、恋に恋するパワフル女子高生。
ある日、クラス担任の代理でやってきた、イケメンだけど冷徹でヒネクレ者の数学教師・弘光由貴(竹内涼真)に一目惚れしてしまう。

あゆはクラスの人前でもスリスリしアタックするが、弘光先生としてはウザイだけ。どんなにバカにされても「絶対に先生をおとしてみせます」と大胆発言をまき散らす。
「そこまで言うならおとしてみなよ」
あゆはの全方向に間違った恋の猛アタックが始まる。

音楽と踊りに乗せてミュージカル風に展開するロマンティック・コメディは決してシラけず、しっかりと板についている。
日本映画としては珍しい。

そんな二人の恋愛バトルにあゆはの幼馴染・虎竹(佐藤大樹)、あゆはの親友・アオちん(川栄李奈)、更に音楽教師で弘光の幼馴染・秋香(新川優愛)も参戦する。果たしてあゆはと弘光の“恋”の行方は?

結論は「やって見るものですね」

原作は映画化もされた「ヒロイン失格」などの幸田もも子の人気少女漫画。タイトル「センセイ君主」だけで噴出してしまう。

ヒット作「君の膵臓をたべたい」の月川翔監督が再び浜辺美波を主演に異色のJKコメディとして纏めている。
未だ35歳と若い月川監督の作品はどれも観客を意識して楽しませるように仕上げている。
特に「黒崎くんの言いなりにならない」(16)や「となりの怪物君」(18)などは素晴らしい出来だった。

相手役の弘光由貴を演じる竹内涼真はこれと言った作品に出ていないが、
クールでJKを寄せ付けないイケメン数学教師を好演している。音痴なピアノ弾きは笑える。

共演は幼馴染、虎竹役の「ママレード・ボーイ」などの佐藤大樹が男子生徒で目立つ。
他に親友葵役の「嘘を愛する女」などの川栄李奈、弘光の幼馴染でピアニスト秋香の新川優愛、
あゆはのクラスメイト役の福本莉子らキュートで美人の若手女優陣が脇を固める。

8月1日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

「虹色デイズ」(日本映画):17歳、一生に一度しかないこの青春を仲良し4人のイケメン男子生徒が友情と恋と勉学に燃える

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冒頭スローモーションで男の子4人がシャツとズボンを着たままはいたままプールに飛び込み、並んで浮かびながら青空を見詰める。
女子高生4人が同じように飛び込んでくれれば興味が湧くが、仲良し4人組の男の子なんて面白くも可笑しくもない。
だからこの映画の批評を書く資格は僕には無い。

が、毎日映画を取り上げるブログだから梗概だけはプレスを参考に書き留める。
ゴメンね。

集英社「別冊マーガレット」に連載された水野美波原作で性格も趣味もバラバラなイケメン男子高校生4人組の友情と恋を描いた青春ドラマ。

屋上から遥か山並みを望む、どこか関東地方で田舎の高等学校。
ピュアで元気な愛されキャラの羽柴夏樹ことなっちゃん(佐野玲於)
チャラくて女好きな松永智也ことまっつん(中川大志)
物静かで超マイペースな秀才直江剛のつよぽん(高杉真宙)、
いつも笑顔だけど実はドSな片倉恵一の恵ちゃん(横浜流星)は、いつも一緒につるんでいる親友同士。

4人はにぎやかで楽しい高校生活を送っていたが、恋に奥手ななっちゃんが同級生の小早川杏奈(吉川愛)に片思いし、連絡先もラインも交換できずにウジウジしている。
奥手ななっちゃんを冷やかしながらも応援する仲間たち。そん彼らの日常に変化が起こりはじめる。
まっつんは杏奈の親友で男嫌いの筒井まり(恒松祐里)に惹かれ始め、つよぽんは恋人のゆきりんこと浅井幸子(堀田真由)と離れての進学に思い悩む。そして、みんなに刺激された恵ちゃんのハートにも火がついて...
悩みながらもお互いを励まし、本当に大切なものを見つけようと奮闘する4人。悩みながらもお互いを励まし、本当に大切なものを見つけようと奮闘する4人。
春夏秋冬が過ぎ、3年になった彼らにも、卒業という終わりの時間が近づいてくる。そして迎える最後の文化祭

主人公となる男子高校生たち4人を演じるのは、いま最も人気と勢いのある旬な若手男優。
なっちゃん役は人気グループ「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の佐野玲於、
「きょうのキラ君」の中川大志がまっつん役、
「散歩する惑星」の高杉真宙がつよぽん役、
「キセキ あの日のソビト」の横浜流星が恵ちゃん役をそれぞれ演じる。
その4人に絡むのは吉川愛・恒松祐里・堀田真由・坂東希といったキュートな若手女優が彼らの青春を彩る女子高生たちを、
山田裕貴・滝藤賢一など大人が高校生たちを見守る家族や教師の役で出演する。

1979年の生まれの39歳、飯塚健が監督を務め脚本を書く。
。03年に映画「Summer Nude」で監督デビュー。
代表作に「荒川アンダー ザ ブリッジ」シリーズ(ドラマ:11/MBS、映画:12)、「風俗行ったら人生変わったwww」(13)、「大人ドロップ」(14)、「ブルーハーツが聴こえる」(17)、「笑う招き猫」(17)など。現在公開中の「榎田貿易堂」も評判が良い。

7月6日より新宿ピカデリ-他全国公開される

「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」(日本映画):天才阿部サダヲの怪演で観客を煙に撒きながら、ロックに乗せて八方破れのストーリーは快調に展開する。

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ガサツなタイトルに乱暴な内容、しかし映画から発生されるエネルギーは物凄い量と圧倒的なパワーは観客をノックダウンする。

監督の三木聡は大ヒットにはならないが「亀は意外と速く泳ぐ」「俺俺」や「インスタント沼」「転々」と小粒ながら光ものがある。
TVだから見ていないが「時効警察」シリーズで当てたようだ。

その三木聰の独自のコメディセンスや発想で、現代社会に「歌」と「笑い」の力で風穴を開ける、ハイテンションロックコメディというので興味が持てる。

驚異の歌声を持つロックスター・シンは阿部サダヲ。
驚いたことに阿部サダヲ自身が歌っている。

舞台出身だけにイケメンには遥か遠くどちらかと言えばモンキー顔だが、当然のことながら芝居は上手いし演出家の要求通り何でも応じてやってしまう。

さて映画は、その存在自体がロックであり、カリスマ的人気を誇っているが、実は彼には秘密があった。彼の歌声は「声帯ドーピング」というオキテ破りの方法によって作られたものだったのだ。
勿論「ドーピング」はアスリートに適応されるものだが、それを歌や声に持って来る奇想天外の発想に惹かれる。

長年にわたる声帯ドーピングの副作用で、限界が近づく喉に焦りと恐怖を抱えるシンが出会ったのは、
異様に声の小さなストリートミュージシャン・明日葉ふうか(吉岡美帆)だった。
ふうかは声が小さいだけで才能はある。

しんは怒鳴る。
「お前の歌は心が燃えない不燃ごみだ!」
「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」と映画のタイトル通りの大声非難となる。

2つの歌声が出会ったとき、ぶっちぎりのミラクルが起きる!
驚異的な歌声と、すべての人の心を打つ声量を持ち、金も女も名声も手にするロックスター・シン(阿部サダヲ)。

「歌を届けるためなら、もう声が出なくなってもいい、死んでもいい―」そんな思いを持つ彼の歌声は、「声帯ドーピング」という掟破りの方法によって作られたものだった。

長年にわたる声帯ドーピングの副作用により、声が出なくなる恐怖に怯えるシンは、ある日、歌声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか(吉岡里帆)に出会う。

2つの歌声が出会ったときに待ち構えているものとは何だ?。

主演のシンを演じるのは阿部サダヲ。「舞妓Haaaan!!!」「謝罪の王様」「殿、利息でござる!」などで注目され、人気も実力を兼ね備えた個性派俳優。
阿部サダヲみたいな役者が2-3人いたら日本映画も変わるだろうが。歌は紅白歌合戦出場も果たした人気バンド「グループ魂」のボーカルも務める阿部が、驚愕のちょっとトーンの高い歌声で一躍スターダムにのし上がったカリスマロックスターを演じる。

 破滅的なロックスター・シンのキャラクターは阿部が地で天然に演じてみせる。

 ヒロイン・ふうか役には、「ゆとりですがなにか」、「カルテット」、「ごめん、愛してる」など続々とドラマなどで売れっ子の吉岡里帆。美人じゃないのが良い。顔じゃなく演技力に集ストリートミュージシャンとして声が異様に小さく歌声が聞こえないという弱点を持つ演技は難しくないだろう。
茶髪のボブで笑顔でギターを弾く姿は様になる。

吉岡里帆の他にマネージャー役の千葉雄大、怪しげな女医、麻生久美子、ふせえりのデビルおばさんや岩松了の無料レコード店社長、松尾スズキのザッパおじさん、など面白い役で
三木グループの常連が笑わせる。

10月12日より全国の劇場で公開される。

「グッバイ・ゴダール」(Le Redoutable)(仏映画):天才J・L・ゴダールの二番目の妻アンヌが、ゴダールの特異な68年の「五月革命」「カンヌ映画祭」「ジガ・ヴェルトフ集団」を描く。

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今年87歳のジャン=リュック・ゴダールは矍鑠としている。
ジャン=ポール・ベルモンドを主演にヌーヴェル・ヴァーグの端緒となった「勝手にしやがれ」で強烈な衝撃を受けた僕はほとんどの作品を見ている。
「女と男のいる舗道」「軽蔑」「アルファヴィル」「気狂いピエロ」などなど。

因みに「勝手にしやがれ」をジム・マクブライド監督でリメイクした「ブレスレス」は、主人公'とストーリーはにているが、ゴダールとはフィロソフィーもコンセプトも天と地の差があるB級作品だった。チンピラ青年のギアと知りあったフランスからの留学生モニカはその強引さに惹かれ、いつしか彼と奔放なセックスに溺れる。彼女との生活を夢見る青年は一攫千金のチャンスに飛びつき、無軌道な悪の道をひた走る。
 
しかしこの映画で初めて知ったのはゴダールの政治的な突拍子もない行動だ。

舞台は1968年のパリ。
「勝手にしやがれ」などは過去の作品でゴダールのキャリアは最高の位置にある。
三月革命後のパリの大学生運動に端を発し,仏全土に広がった社会変革を求める大衆運動「五月革命」にのめり込むと、
その勢いで南仏へ出撃し第21回カンヌ国際映画祭を粉砕する

更に映画を撮るために政治的な「ジガ・ヴェルトフ集団」を結成した経緯とその行動だ。ゴダールとジャン=ピエール・ゴランを中心に政治的にアクティヴな映画作家によって結成された。彼らの作品は、ブレヒト演劇の形式、マルクス主義イデオロギー、個人的著作性の欠如を主として定義されている。
午前中は全員で民主的に映画の内容を検討し議論の結果を午後撮影すると言う。
民主的な多数決方式だ。これで良い映画が撮れるかね?

こうなるとバイオの伝記映画と言うよりも奇人変人のコメディとなる。

20代の若者の無鉄砲な行動では無い。ゴダールはこの頃アラフォー、38歳で人生経験も積み「悟り」を開いても良い歳だった。

原作は女優であり、作家であり、ゴダールの2人目の妻でもあったアンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝的小説「それからの彼女」(Un an Apres)。
天才と過ごした甘さと苦みの入り混じった青春の日々が、五月革命に揺れるパリという激動の舞台の中で綴られていく。
祖父はノーベル文学賞受賞作家のフランソワ・モーリアックという正統派インテリ一族に生まれた少女アンヌが、ゴダールというカウンターカルチャーと出会って魅惑的な女性に変身していく姿を郷愁交えて描く。

監督と脚本はパリ生まれの50歳、ミシェル・アザナヴィシウス。
11年に監督・脚本・編集の白黒サイレント映画「アーティスト」がアカデミー賞を総なめにして世界で一躍注目を浴びたフランスを代表する映画作家だ。

パリで暮らす哲学科の女子大生, 19歳のアンヌ(ステイシー・マーティン)は、それまで予想だにしなかった刺激的な日々を送っていた。
世界中から注目される気鋭の映画監督ジャン=リュック・ゴダール(ルイ・ガレル)と出会い、恋に落ち、彼の新作「中国女」(La Chinoise)の主演女優に抜擢されたのだ。
今までは触れ合わなかった新しい仲間たちと映画を作る刺激的な日々、そしてゴダールからのプロポーズ。

ノーベル文学賞受賞作家フランソワ・モーリアックを祖父に持つアンヌと、ヌーヴェル・ヴァーグを代表する監督であるゴダールの結婚は世間から注目され、
まるでアイドルのようにメディアにも追いかけられる。
パリのスタイリッシュなアパルトマンで、新婚生活をスタートする二人。
どこへ行き、誰に会い、何をして何を食べるか、すべて決めるのはゴダールだったが、生まれて初めての体験ばかりで、
アンヌはあらゆることを夢中で吸収していく。

しかし時代は、景気は落ち込み先行きが見えず、ド・ゴール政権も揺らぐ1968年。
街では革命の気運が日に日に激しくなり、ゴダールも映画制作よりも、学生や労働者と肩を並べて機動隊に石を投げたり、学生たちとの討論会に興じたりする事が増えていく。
そんな中、アンヌは友人の映画プロデューサーのミシェル・ロジエ(ベレニス・ベジョ)から、カンヌ国際映画祭へ行こうと誘われる。
共通の友人が監督する作品が選ばれたので、皆で応援をしようというのだ。

現ド・ゴール政権下の映画製作を批判するゴダールは、カンヌ映画祭を中止すべきだと主張。
カンヌ映画祭に行ってみたい気持ちを抑えきれないアンヌは、初めて夫に反抗し、ミシェルと共にカンヌへ出かけ優雅なバカンスを満喫する。
一方のゴダールは、フランソワ・トリュフォー、アラン・レネ、クロード・ルルーシュらと共にカンヌに乗り込み、映画祭を中止へと追い込んでいく。

パリへ戻ったゴダールは、「ゴダール」の名前を捨て「ジガ・ヴェルトフ集団」を結成。
全く新しい映画を撮ると宣言したかと思うと、ベルナルド・ベルトルッチ(グイド・カプリーノ)から誘われたローマでの映画会議で、
ベルトルッチと激論を交わした末、絶交してしまうなどと、我が道を進み続ける。

「私を広い世界へと連れ出し、輝くような日々を与えてくれたゴダールに、いったい何が起きたの?」と、揺れるアンヌの元に、イタリアの奇才マルコ・フェレーリ監督から新作出演依頼が届く。
アンヌは女優としてのステップアップを決意する。

新たなるゴダールミューズを演じるステイシー・マーティンが美しく瑞々しい。
輝くような全裸で同じく裸のゴダールとベッドの上で会話を楽しむのは
如何にもフランス的だ。
因みに原題「Redoutable」は二人が全裸で寛ぎながら聞いたラジオのフランス原子力潜水艦の名前で、勇敢な乗組員に自分たちを対比させている。

60年代フレンチカルチャーを描きあげる―。
主人公アンヌ・ヴィアゼムスキーに扮するのは、「ニンフォマニアック」で殆ど全裸で全編を演じるセンセーショナルなスクリーンデビューを飾り、MiuMiuのフレグランスの広告塔を務めるなどファッショニスタとしても今大注目されているステイシー・マーティン。

ゴダール役には容姿もそっくりさん、喋り方も似ていて「ゴダールの再来」とも言われるルイ・ガレル。
03年のベルトリッチ監督の「ドリーマーズ」の熱演で世に出て「灼熱の肌」「ジェラシー」など父フィリプ・ガレル監督作品に出ている。
天才の孤独や偏屈さ、それでも憎めないチャーミングな一面を、ユーモアと最大級の敬意をこめて演じている。
他にゴダールの友人のミシェル・ロジエを、「ある過去の行方」「アーティスト」などのベレニス・ベジョ。

時代考証がしっかりしているので、ファッション、ヘアメイク、インテリア、ストリート、音楽、映画―今も全く色あせない60年代フレンチカルチャーを堪能できる。

7月13日より新宿ピカデリー他で公開される。

「わがチーム、墜落事故からの復活」(Nossa Chape)(ブラジル映画):サッカーチ「シャペコエンセ」の主力選手と首脳陣らを乗せたチャーター機が墜落し監督、選手ら乗客77人中71 人が死亡。

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ワールドカップ・ロシア大会が始まった。日本はモルドヴィ共和国サランスクでの強敵コロンビア戦で勝利し、勝点3を挙げ国を挙げて盛り上がっている。
アジアのチームが南米のチームを破ったのは史上初めてで喜びに拍車をかけている。

そんなタイミングをはかって(予想して)公開する南米ブラジルのチームの飛行機事故ドキュメンタリー映画だ。
こんな時期だからこそ上映されるが普通なら無理だろう。

映画はコパ・スダメリカーナ準決勝の様子をとらえた映像からスタート。
守護神・GKのダニーロのミラクルプレイによって、南米国際タイトルへの切符を手にした「シャペコエンセ」。
コロンビアに向かう機内のなか、喜びを爆発させていた選手たちだったが、予期せぬ悲劇は突如訪れる。

2016年11月28日、南米大陸選手権コパ・スダメリカーナの決勝ファーストレグへ向かうため、
ブラジル1部リーグ・セリエAのサッカーチーム「シャペコエンセ」の主力選手と首脳陣らを乗せていたチャーター機が、
コロンビアのメデジン郊外で墜落。
監督、選手、解説者ら乗客77人中71人が命を落とすという大惨事となった。

主力選手やジャーナリストを含め71名の死亡事故は大きいが、ノンフィクションなのでクラッシュの状況も惨状もリアルタイムでカバー出来ず、
後追い取材も通り一遍で掘り下げも浅くならざるを得ない。

そこで焦点を生き残った3人に当て飛行機事故によってクラブ存続の危機に陥ったサッカーチーム「シャペコエンセ」の再建に向けた道のりを追う。
ほとんどの選手とスタッフを失い、新シーズン開幕に向けてゼロからの再出発を余儀なくされた「シャペコエンセ」が、
2017年シーズンへ向け、チーム、サポーター一丸となった奇跡の復活劇が描かれる。

共同監督は天才ペレの伝記映画「ペレ 伝説の誕生」(16)を手がけたマイケルとジェフ・ジンバリスト兄弟。「二人のエスコバル」(10)なども監督脚本を担当してサッカーのことは詳しい。

「シャペコエンセ」の本拠地シャペコ市は、リオやサンパウロから遥か南に位置する人口僅か20万人のサンタカタリーナ州の州都。
小都市だからこそ市民は一丸となって70年代に平地に建てられたお粗末なスタジアムで熱狂的にチームを応援する。

2016年11月28日、ブラジル・セリエA所属の「シャペコエンセ」は、2日後に控えた南米大陸選手権「コパ・スダメリカーナ2016」の決勝戦ファーストレグのため、コロンビアに向けボリビアのラミア2933便のチャーター機で出発した。

映画の中で収録された会話を披露しているが、テイクオフ寸前の選手たちが家族へ興奮した電話をかけている。ララミア航空は倒産寸前の赤字航空会社。経費節減で整備も手抜き、燃料も片道分しか積んでいなかった。

事故の後、実際に倒産し、補償問題を含め係争中の事例は続いている。
そして主力選手や首脳陣、ジャーナリストら77人を乗せた飛行機は、コロンビアのメデジンまで8マイル(12.8キロ)手前の丘陵にクラッシュ墜落。

「シャペコエンセ」のクラブ史上初の同大会決勝進出という、歓喜に沸く中での大惨事だった。71人が命を落とし、ほとんどの選手とスタッフを失ってしまう。

生き残ったのはGKのジャクソン・フォルマン、DFのエリオ・ネトとアラン・ルシェウの3人。
生還したフォルマンらが満員のスタジアムで歓迎されているシーンは熱いものがこみ上げる。

フォルマンは右脚を切断するも、クラブに残り国際親善大使の役割を務める。
肉体に大きなダメージを負ったDFのネトが練習着姿でチームに復帰した仲間からハグを受ける様子や
18年シーズンの復帰を目指すDFのルシェウは治療を受けリハビリに励んでいる。

クラブ再建の歩みをともにする熱狂的なサポーターなどもしっかりカバーしている。

 チーム再建のシンボルとしての重責を担う「生き残った3選手」の姿を追いながら「奇跡の復活」までの道のりを、感情を交えず描写する。
合同葬儀の翌日、同クラブは新シーズン開幕へ向けゼロからの再スタートを切り、苦しみながら奇跡を起こしていく。

7月6日より新宿ピカデリーで公開される

「輝ける人生」(Finding Your Feet)(イギリス映画):35年間連れ添った夫に裏切られたサンドラは過去を総てを捨て、新しい世界のチャ―リーの胸に信じて飛び込む,Leap of Faith

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イギリス映画らしい伝統的な階級や社会を背景に35年間信じていた夫に裏切られた老女が、ボヘミアンの姉を通して下層階級の人々と交わり自由とロマンスを取り戻す。
過去を捨て新しい世界をLeap of Faith(信じて飛び込む)がキーワードだ。

映画はシャンペンとキャビアそれに「乾杯!」が溢れる華なパーティ。
主人公のサンドラ(イメルダ・スタウントン)が、富裕層の住宅が密集するサリー州の豪華な自宅で35年連れ添った夫、マイク(ジョン・セッション)が州警察本部長を務めあげ定年退職して「ナイト爵」を授与されサンドラもレディ」となった祝賀会だ。

鍵がかかっていないトイレに飛び込むと親友と夫が熱いキスを交わしている浮気を目撃してしまう。

一人娘の二コラは元気な男の子を育てており、サンドラは仲の良い友達とテニスで毎日を過ごす順風満帆の予定だった夫婦生活が悪夢に転じる。
言い訳をし許しを乞うマイクとの絆は切れてしまう。別れるしかないと決めたサンドラは10年も疎遠になっている姉ビフ(セリア・イムリ―)のアパートへ転がり込む。
ロンドン郊外のむしろ貧民窟と言っても良い市営住宅。
結婚もせずポット(大麻)を吸いボヘミアンの姉は自由な空気の下で伸び伸びと暮らしている。
遊びに来ていた親友チャ―リー(ティモシー・スポール)も気の置けない好ましい男性だ。

居候のくせにサンドラは街の人たちを見下し、酒を飲んで酔っ払って暴言を吐く。中華レストランの主人に人種差別吐き警察に連行される始末。

ビフはサンドラが結婚前、ダンスに夢中だったことを思い出しダンス教室へ連れ出す。
教室にはいろいろな事情を抱えるシニアの常連たちが集う。
最愛の妻を亡くしたばかりのテッド(デヴィッド・ヘイマン)5回の離婚歴を誇る(?)美人弁護士ジャッキー(ジョアンナ・ラムレイ)。
中古家具修理人、チャ―リーは妻を亡くしてから小さなボートで暮している。
雰囲気に馴染めず居心地が悪かったサンドラはチャ―リーと踊る内に何やら総ての抑制から解放されて行くことを感じる。

ダンスシーンになるとミュージカルだ。
50年代60年代お「ロック・アラウンド・ザ・クロック」「シャンティリーレース」「ロッキン・ロビン」などフルコーラスで聞かせ、
コンテストでローマ遠征の舞台ではピーナッツや森山加代子がカバーしティンタレラ・ディ・ルナと声を張り上げた「月影のナポリ」「ストンプ」「インザ・ムード」
ラストシーンからエンドクレジットに流れる「ランニング・トウ・ザ・フーチャー」などなど
チャ―リーとサンドラのロマンスは何処へ行ってしまうのかのミュージカル・ダンス劇で大騒ぎ。
所詮先が読めるビタースィートのメロドラマだから観客はきにしないで音楽を楽しむ。

ホロっとするのはビフの葬儀。本当はエリザベスなのだがサンドラが発音できなく「ビフ」になったこと。
肺癌が転移して余命幾ばくも無い人生を延命装置に頼らず微笑んで死んでいったことを会衆に打ち明ける。
プールに遺灰を散華するサンドラに泣ける。

チャ―リーは妻を亡くしたと嘘を付いていた。奥さんは「生きていた」。
アルツハイマーで何が何だか分からない状態で介護ハウスに収容されていた。
亡くなった時にサンドラに告白し結婚して欲しいと申し入れるが、サンドラは拒否、チャーリーはボートで運河を下り世界旅行に出る。
この嘘は許せる。

やはりチャ―リーしかいないとサンドラはボートを川沿いに追う。パンプスを脱ぎ、自転車を拝借しボートと併行に走りながら「Leap of Faith」
ストップモーションでボートの縁に飛びつこうとするサンドラで終わるエンドシーンは洒落ている。

監督は「ファイアー・ウォール」「ウィンブルドン」「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」などのリチャード・ロンクレインが不器用だが心温まるドラマに仕上げている。

主演は、「ヴェラ・ドレイク」で英国アカデミー賞主演女優賞を受賞し、TVや舞台、ミュージカルでも高く評価される62歳のイメルダ・スタウントン。

相手役チャ―リーは「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」や「否定と肯定」でほろこーすとは無かったと物議のティモシー・スポール、

ボヘミアンの姉ビフは「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」シリーズのセリア・イムリーが出演。
他に元プロダンサー20名も出演し、主役のシニアたちを助ける見事なダンスを披露する。

8月シネスィッチ銀座にて公開される

「ヒトラーを欺いた黄色い星」(Die Unsichtabaren)(独映画):ナチス宣伝相ゲッベルスは、首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言したが、約1,500人がドイツ敗戦まで生き延びた。

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原題Die Unsichtabarenは英語ではThe Invisible。目の前に存在しているのに「見えない」のだ。
ヒトラーナチスは600万人のユダヤ人をアウシュビッツなどの絶滅収容所で殺害した。
1943年6月19日。ナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは、首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと正式に宣言した。
しかし、事実は違っていた。およそ7,000人のユダヤ人がベルリン各地に潜伏し、最終的に約1,500人が戦争終結まで生き延びたのだ。

今読んでいる本もアウシュビッツを生き残った幼児のエピソード。
「4歳の僕はこうしてアウシュビッツから生還した」(Survivors Club)(NHK出版:2018年4月刊)で、マイケル・ボーンスタインと言う1940年ドイツ占領下のポーランドで生まれた78歳。
家族と一緒にゲットーや所暮らしを強制されていたが4歳でアウシュビッツに送られる。子どもたちが次々と殺される収容所でソ連が侵攻し解放してくれるまで6か月も生き延びた。

アウシュビッツから生還した6年後にアメリカに移住しアイオワ大学で薬学の博士号を取得し現在はニュージャージー州で妻と暮らしている。

マイケルの娘、デビーはNBCTVとMSNBCTVの番組プロデューサー。父の体験の裏をとる取材と調査を行い執筆を手伝い仕上げる。
人間の悪の可能世とそれを跳ね返す抵抗性の限界までの凌ぎ合いはスリラー以上の迫力がある。


今日の映画は第二次世界大戦下のベルリンで、ナチスの迫害を逃れて戦後まで生き抜いたユダヤ人4人の実話を、記録映像を交えたドキュメンタリーに本人たちへのインタビューに加え、俳優が演じる4人の言動の再現映画。

戦時中のベルリンで地下に潜伏したユダヤ人に関する緻密な調査を行ったクラウス・レーフレ監督は、そこから最も興味深い4人のサバイバル・ストーリーを選び出し、その映画化を実現させた。クラウス・レーフレ監督は、テレビドキュメンタリーを中心に活躍してきた実績がある。

いずれも潜伏開始時に16歳から20歳の若者だったツィオマ・シェーンハウス、ルート・アーント、オイゲン・フリーデ、ハンニ・レヴィの物語である。

。出演は「ヴィクトリア」のマックス・マウフ、「あの日 あの時 愛の記憶」のアリス・ドワイヤー、「ゴーストハンターズ オバケのヒューゴと氷の魔人」ルビー・O・フィー。

ユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れる極限状況下、彼らはいかにして身分を隠して住み家や食料を確保し、ゲシュタポの追跡や密告者の監視を掻い潜ったのか。

咄嗟の機転で運よく収容所行きを免れ、大胆にもドイツ人兵士に成りすましてベルリン市内の空室を転々としたツィオマ・シェーンハウス(マックス・マウフ)は、ユダヤ人の命を救うため、身分証の偽造を行なう。

友人と共に戦争未亡人を装って映画館に出かけたルート・アーント(ルビー・O・フィー)は、ドイツ国防軍の将校にメイドとして雇われる。

最も若い16歳の少年オイゲン・フリーデ(アーロン・アルタラス)は、活動家の家に匿われ、ヒトラー青少年団の制服を着て身元を偽り、反ナチスのビラ作りに協力。

17歳の孤児ハンニ・レヴィ(アリス・ドワイヤー)は、ユダヤ人にはあり得ない髪をブロンドに染めて髪をブロンドに染めて別人になり、映画館で知り合った男性に素性を明かし、その母親の家に匿われた。

2人の青年が戦時中スイスに逃げ、ソ連がベルリンに侵攻しナチが降伏したので帰って来る。2人はソ連兵に捕まる。自分たちはユダヤ人だと言っても聞く耳を持たない。多くのナチがユダヤ人に
「成りすまし」ている。ソ連兵はユダヤ人なら誰でも知っている神を讃える「アミ―ダの祈り」を言って見ろ!と拳銃の引き金に指をかけて怒鳴る。
2人ともオズオズとだが祈りを完璧に唱える。
ソ連兵が2人に飛びつき強烈なハグをして涙を零す。
感動的なシーンだ。
ソ連兵の中にユダヤ人も徴兵されていたのだ。

ナチス圧政下でのユダヤ人の悲劇は語り尽くされていたと思ったら、こんな鼻を明かす陰謀や背任が堂々と行われていたとは、痛快で楽しいではないか。

7月28日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

「500ページの夢の束」(Please Stand By)(米映画):自閉症で非常識な若い女性ウェンディと矢鱈ピー(オシッコ)をするチワワの「ピート」のロードムービー。

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 自閉症病みを主人公とする映画は多い。
見ただけでパズルを解いてしまう少年「マーキュリー・ライジング」ケビン・ベーコンが協調性ゼロで性格の悪い天才科学者の「インビシブル」
数学の天才少女「ギフティッド」など幾らでも出て来るが、

代表的なのは「レインマン」だろう。
常識が無いが数字については凄い記憶力を持つレインマンこと
ダスティン・ホフマンはカジノで勝ち続けるシーンは思い出しても痛快だった。

この映画の主人公、21歳のウェンディ(ダコタ・ファニング)は、「スター・トレック」について並外れた知識を持つ自閉症の女性。

映画の冒頭は宇宙から始まる。SFの砂漠を我々もお馴染みのキャラクターが歩いているとウェンディの声でナレーションをしている。

大好きな「スター・トレック」の執筆に夢中になっているのだ。
特にヴァルカン星人と地球人の混血・ミスター・スポックに夢中だ尖った耳、吊り上がった眉、個性的な外見で冷静に論理的な言動をする。
スポックを軸に自分なりの「スター・トレック」の脚本を毎日書くがのが趣味だった。
ある日、放送開始50周年を記念し「スター・トレック」脚本コンテストの開催を知り脚本を早速応募しようとする。

しかし今日は土曜で日曜は配達は無い。おまけに月曜は祝日で、
郵送だと締め切りを過ぎてしまうことに気付く。

ウェンディはサンフランシスコのマーケット通り近くの自立支援ホームで暮している。
肉親では姉オ-ドリー(アリス・イブ)はいるが結婚して赤ん坊ルビーが生まれたばかり。
時といて起こすウェンディの勘気を避けるためベイエリアに離れて暮らしている。

ウェンディの世話をし面倒を見るのはソーシアルワーカーのスコッティ(トニー・コレット)で
彼女の店「シナポン」(パン屋)で昼はアルバイトをしている。

郵便で間に合わないから「500ページの脚本」を届けるために朝早く家を出る。すると愛犬、チワワの「ピート」がくっついて来ることから旅のトラブルは始まる。

最初はLA行きのバスに乗るため決した渡ってはイケないよと言われているマーケット通りを勇気を鼓して渡る。
バスに乗ろうとするとチケットが要る。片道か往復かの議論の末に往復88ドルを払う。
ペット持ち込み禁止のサインを手で隠しピートをトートバッグに隠してハリウッドを目指す旅に出る。

ここからがクリシェで旅の途上に出会う様々な人物を描く。
ウェンディを助けるイイ人と騙す悪い人の2種類だ。

ピートがピー(オシッコ)をしたいからバスを止めてと運転手に頼むとピートと一緒にバスから放り出す黒人の小太りの女性運転手。
出目のチワワ、ピートは大活躍の名演技。

何も無い野っぱらだが赤ん坊にオッパイを飲ませている白人の若い母親とボーイフレンドにIPodと現金を強奪される。
メモ帳だけは返してと哀願すると「ごめんね」と放り投げる。
歩いてベイカーフィールドのバス停で明朝一番のバスを待つことにして従業員の女性は表のベンチで泊まらせてくれる。

翌朝切符を買おうとすると小銭で7ドル50セントしかない。
黒人切符売りはウェンディの目も見ず、22ドルだから足りない「はい次の人」(Step Aside)とつれない。
車体底部の荷物入れに潜り込みLA入りを果たすウェンディも大したタマだ。

スコッティとオードリーは警察やモーテルなどに片端から電話をしバスデポでの情報でLAまで辿り着く。
LAPDのパトカーからウェンディを見付け追いかけるドイル巡査(ロビン・ワイガート)が変わっている。
怯えて物陰に隠れ出てこないウェンディにヴァルカン語で話しかけウェンディも警官に保護され
そしてオードリ-とスコッティの許に戻る。
そしてメルローズにあるパラマウントの脚本担当オフィスへ脚本を再びスッタモンダのドタバタの末、締め切り迄に届けることに成功する。

ダコタ・ファニングが子役を脱し自閉症を抱える若い女性を見事に演じる。
社会の荒波を潜り抜け500ページの脚本を届けるためハリウッドを目指す旅の中で、少しずつ大人への通過儀礼を経て変わっていく常識の通じない笑える喜劇

原題は「PLEASE STAND BY」、準備して待っていてね。
「I am Sam アイ・アム・サム」(01)アイムサム」や「リリィ、はちみつ色の秘密」などの子役を脱する名演技を披露するダコタ・ファニング、
ウェンディを支えるソーシアルワーカーのスコッティ役に「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレット、

ウェンディを大切に思いながらも自分の赤ん坊で動けない姉・オードリーは「スター・トレック イントゥ・ダークネス」などが共演。

監督はポーランド生まれでイギリスのTVドラマで活躍しているベン・リューインが務めた。JKシモンズがアカデミー助演男優賞に輝いた「セッションズ」で一躍世界の注目を集めた。

多様化した登場人物が主人公に善悪両方で挑むエピソードはクリシェながら観客を飽きさせない。

9月7日より新宿ピカデリーほか全国で公開

「ワンダー 君は太陽」(Wonder)(米映画):遺伝子の疾患で異様な顔の少年オギーは10歳になり初めて学校に通う。クラスメートから「ペスト」とか「ゾンビ」などと呼ばれ猛烈な「苛め」を受けることになる

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6月15日からTOHOシネマズ日比谷で公開されているこの映画、評判が良いので夕方5時前の回のチケットをITで押さえようとしたら#10スクリーンは空きが最前列にしかない。
こんなことは初めてで、実際入場してみると100名収容の小さな小屋とは言え超満員の盛況だった。
日本でも流行りの「苛め」をテーマとしたこの映画はタイミング良く、その感動のストーリーは観客の心を捕らえている。

原作はNYタイムス・ベストセラーとなり、全世界で800万部を超えるR・J・パラシオの2012年に発表した小説「ワンダー」を、スティーヴン・チョボスキーが監督したもの。

チョボスキ―自身も小説「ウォールフラワー」(壁の花)を書き映画化している。
シャイで物静かな主人公、高校生チャーリーは、クラスメートたちに「壁の花」とあだ名を付けられバカにされている。
ワンダーの主人公オギーとチャ―リーは一脈通じる。

この映画、アメリカでは昨年11月半ばから公開が始まった。
制作費は20M(22億円)のミニ予算だが、最終的な興行成績は295M(324.5億円)のヒットになった。

遺伝子の疾患で人とは異なる顔で生まれた少年が、両親の決断で小学5年生から初めて学校へ通い、さまざまな困難に立ち向かいながらも成長していく姿がつづられる。

10歳のオギー(オーガスト)・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、「スター・ウォーズ」が大好きで、宇宙飛行士に憧れる男の子。
生まれた時から「トリーチャーコリンズ症候群」が原因で顔が変形しており、長らく入退院を繰り返していた。

オギーは、普通の子とは少し違う見た目をしていた。遺伝子の疾患で、他の人とは異なる顔で生まれてきたのだ。27回もの手術を受け、一度も学校に通わないまま自宅学習を続けてきた。
外出する時は好きな「スター・ウォーズ」の宇宙服ヘルメットを被り顔は見られないようにしていた。

母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は、「まだ早い」という夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に通わせることを決意する。
夏休みの間、イザベルに連れられて校長先生に会いに行くオギー。
トゥシュマン校長先生(マンディ・パティンキン)の「おケツ校長だ」というユーモラスな自己紹介に、オギーの緊張はややほぐれる。

この校長は持論を堂々と披露し主張する。
映画の後半で、苛めで罰を受けた自分の子供が可愛いだけの「モンスターペアレント」の猛烈な抗議に
「あの子の顔は治りません。我々が考え方を変えなければならないのです」と突っぱねる。

日本の先生の多くは「苛め」は厳然と存在することを知りながら敢えて「見よう」とせず、「苛めはありません」と言い張る。
モンスターペアレントの前では無力で、身を呈して被害者を守ろうと言う積極性に欠けるから、自殺する生徒たちが後を絶たない。

一通りの治療や手術を終え、容態が安定したオギーは学校に通うようになるが、クラスメートたちの、差別によるいじめを受けふさぎこんでしまう。
机や椅子、ロッカーにベタベタと「怪物」だの「ペストだの「死ね!」などの紙切れが貼り付けてあり、オギーが通ると
「ばい菌」「ゾンビ」など悪口を聞こえよがしに言いたいことがオギーの耳に届く。

オギーは自分の顔が普通ではないことを嘆いたが、両親の励ましを受け立ち直り、学校生活に適応するため、誰も相手にされなくとも屈せずに通う。

その内にサマーと言う黒人の女の子が食堂で近寄って来て一緒にランチを食べたり、苛めの大将だったジャック・ウィル(ノア・ジュプ)が理系に強いオギーに関心を持つようになり友達になる。
ジャックはオギーの悪口を言うジュリアン(ブライス・カイザー)を殴り倒す。
ジャックは2日間の停学を食らう。

裕福な家庭のジュリアンは更に苛めをエスカレートし、上述のように両親と一緒に校長に呼び出され停学を言い渡される。ジュリアンは自分の非を認め反省するが、母親が毒づき来学期は転校させるとの暴言にもい放つも、「僕はこの学校が好きだ」とオギーへのシンパになり仲良しとなる。

当初、オギーの顔形がみんなと違う外見からじろじろ見られたり避けられたり、囃し立てたクラスメートたちも、彼らと仲良くなりたいというオギーの思いと行動は同級生たちが徐々に変わっていく。

彼との交流を通して「人間の内面の価値には外見で推し量れないものがある」ということを学んでいき、相互理解を得るようになる。
この間の態度や意見の変化はジャックやジュリアンを通して解り易く描かれている。

主人公に「ルーム」などの子役、10歳のジェイコブ・トレンブレイ、内面のコンプレックスを抑え学校の苛めに耐え忍ぶ少年を熱演している。
オギーを愛情深く支える母親イザベルを「エリン・ブロコビッチ」などのジュリア・ロバーツで50歳になる。リチャード・ギアと共演した「プリティ・ウーマン」の大ヒットで世に出たがその時は23歳。27年前の話だ。
父親ネートは「ナイト ミュージアム」シリーズや「ミッドナイト・イン・パリ」などの鼻の曲がった49歳のオーウェン・ウィルソンが演じる。いつもはコメディアンだが子どもを想う真摯な父親を演じている。
映画としての出来はともかく、「苛め」に関心を持つ人には一見の価値はある作品だ。

TOHOシネマズ日比谷他全国公開されている。

「チャーチル ノルマンディの決断」(Churchill)(英映画):第一次大戦で多くの若者を死なせたトラウマから、英国首相チャーチルは連合国軍の「ノルマンディー上陸作戦」に反対する。

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昨日(24日)、TBS TVに昨年の電通入社試験でセクハラを受けたと実名顔出しで告発をする女性の映像が流れた。
この女性は面接で「君みたいな美人は他社を受けた方が良いんじゃない?」と面接官(部長職)から高橋まつりさん自裁事件を暗喩して質問されたと
SNSで騒ぎまわった「出たがり屋さん」なのだ。
僕も色々と調べてみた。

電通も問題視して社内で調査し件の面接官に事情聴取したところ、
そんな事実は無いとの確信を得ている。

ところが今年3月末の株主総会で質問が出た時、答弁した担当役員が暗に認めてしまったのが問題で、
それが、今頃火が付いたようだ。
担当役員と言うのが調査の最高責任者の副社長、どうして副社長ともあろう男が火をつけるようなことをしたのか?

電通はTBSの大株主で社としては密接な関係があるが、出たがり屋、目立ちがり屋の言い分を
「面白いから」とウラを取らずにオンエアしたとしたらマスコミ倫理に抵触する。
他社も「ブラック企業」に加えて「セクハラ企業」と電通バッシングを再開すれば視聴率は取れる。

W杯で日本が健闘しているので出たがり屋の登場は今のところアキがなく控えているが、ポーランドに負けでもしたらアッと言う間に炎上する。

電通の危機管理はどうなっているのかね?

もしこれが事実ならそんなアホな面接官を選んだ人事部の責任は重いし、株主総会でチェックもせずに
セクハラ面接官を認めてしまった副社長は腹を切らねばならない。


ゲアリー・オールドマンがチャーチルに扮した「ダンケルク」でアカデミー主演男優賞を授与されたのは3カ月前。
今度はブライアン・コックスがチャーチル首相になるのでややこしい。
「ダンケルク」ではチャーチルは、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員した「ダイナモ作戦」を発動する。

1940年5月26日、北西ヨーロッパは80万人のドイツ軍によってフランス北端に追い詰められた英仏軍兵士たち40万人の運命と、救出に挑んだ。
この時のチャーチルはジョージ6世に励まされ地下鉄に乗り市民の声を聞いて悩むことなく決断する。33万人の英軍兵士を無傷で生還させたのだ。

それから4年後、同じ英国首相チャーチル(ブライアン・コックス)は連合国軍のノルマンディー上陸作戦決行までの96時間をイジイジと悩みに悩み抜く。

4年前にスパッと決断した同一人物とは思えないほどだ。
そう言えばオールドマンのチャーチルに比べコックスのチャーチルは陰鬱で恐ろしい顔をして人を寄せ付けず、秘書・ミス・ギャレット(エラ・ネパール)のちょっとしたミスにも苛立ち怒鳴りつける。

映画の冒頭は早朝の海岸。黒いコートに帽子のチャーチルは一人額に皺を寄せ眉を顰め思い悩みながら散策している。光る海は彼のイメージでは真っ赤だ。

ここでは明らかにされないが、チャーチルの悩みは第一次大戦で自分の計画した戦略で多くの若者を死に追いやったことを悔いており、その悲劇がまた繰り返されることをどう阻止しようかと悩んでいるのだ。

浜辺にもう一人の人影は妻のクレメンティーン(ミランダ・リチャードソン)だ。
夫の傍に歩み寄り、一国の首相としてイジイジせず男らしく作戦会議に臨み、個人のトラウマをオクビにも出さず、堂々と議論するようにとアドバイスをする。
駄々っ子をシャキッとさせ指導する母親だ。

ロンドンでの作戦会議は連日に渡り行われる。
米軍、ドワイト・アイゼンハウアー総司令官(ジョン・スラッテリー)や英軍、バーナード・モンゴメリー元帥(ジュリアン・ウォダハム)の指揮する連合軍は80万人のナチスドイツ占領下の北西ヨーロッパに侵攻する「D-Day Invasion」(ノルマンディー上陸作戦)を2日後に決行しようとしている。

しかしチャーチルは大勢の若者が死ぬことになる作戦に内なる「良心」から阻止すべく、
ジョージ6世(ジェームス・ピュアフォイ)も臨席する作戦会議で絶対反対を唱えて孤軍奮闘するが、あっさり拒否される。

2日目の天候は風と雨で取りあえず様子見のため延期になりホッとするが、決行を翌日に控えて天候は回復しチャーチルを除き全員賛成で「ゴー」サインが出る。

チャーチルが何故反対かは会議の席では明らかにされないが、妻クレメンティーンとの対話で詳らかになる。

第1次世界大戦中に自ら計画した作戦でイタリアとトルコの境にある「ガリポリ」での死闘で約50万人もの死傷者を出したことが、指導者としてのチャーチルの心の棘となっていたのだ。

余談だが「Gallipoli」は邦題「誓い」と言うタイトルで1981年(37年前)にオーストラリア映画として公開されており、僕は幸運にも見ている。
監督はピーター・ウィアー、主演はメル・ギブソンだった。

第一次大戦下、短距離ランナーを目指すオーストラリアの2人の若者は軍に入隊、ヨーロッパ・イタリアのガリポリ戦線に配備される。だが、そこは塹壕に身を潜めるばかりの地獄のような惨状で、オーストラリア軍は同盟英軍の犠牲となっていた。

連合国軍最高司令官アイゼンハワーに真っ向から反対意見を述べるチャーチルだったが、意見は却下され、唯一敬意を払わねばならないジョージ6世も賛成し結論は出る。
イギリス南岸に100万人もの兵士が配備されいつでも出撃できる体制が整う。

そして1944年6月6日午前6時。英国首相ウィンストン・チャーチルの国民を勇気づける演説が始まる。
歴史に残るラジオ放送で長年の戦争と不況に疲弊しきった国民に重い決断を呼びかけ、そして北西フランスの「ノルマンディー上陸作戦」が成功したことを伝え、英米を中心とした連合軍がナチスドイツに大打撃を与えたことを祝福する。

チャーチルがこそ歴史上で、最も偉大な英国首相と思われていたがこんなトラウマや悩みを抱えていたことを初めて知る。

出演者はTVや舞台で活躍するイギリスの俳優が殆どだから名前を知らない。
誰が演じても頬の垂れ下がったブルドッグ顔に葉巻を咥えたウィンストン・チャーチルを「Red」や「ボーン・アイデンティティー」シリーズのブライアン・コックス、

チャーチルを支える揺れる心をシャキッとしなさいと許さない妻を「スリーピー・ホロウ」や「ハリーポッター」シリーズのミランダ・リチャードソンが演じる。

士官候補生の許婚が駆逐艦に乗り込み上陸作戦の先鋒を務めている秘書ギャレットをエラ・パーネル。イラついたチャーチルが怒鳴りつけた秘書だ。
アイゼンハウアー役のジョン・スラッテリーは無名だが若き日のハンサムなアイクを凛々しく演じる。


監督はオーストラリア生まれの「レイルウェイ 運命の旅路」(13)のジョナサン・テプリツキー。

8月18日より有楽町スバル座他で公開される。
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