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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ボストン・ストロング~ダメな僕だから英雄になれた~」(Stronger)(米映画):2013年に実際に起きたボストン・マラソン爆弾テロ事件で両足を切断した、ジェフ・ボーマンの実話。

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爆弾テロ事件の映画は「パトリオット・デイ」として、2年先行して上映されている。
「パトリオット・デイ」(愛国者の日)とは、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州、メイン州、ウィスコンシン州の3州において4月の第3月曜日に制定されている地域限定の祝日で、毎年ボストンマラソンが開催される日である。

戦後間もない1950年代に田中茂樹が(1951年に優勝したのを皮切りに)、山田敬蔵が(1953年)浜村秀雄が(1955年)優勝し、国威を発揚したと子供の僕は大騒ぎをしたのを覚えている。その後日本人のチャンピオンは2度優勝の君原を始め多く出ているがそれほど騒がれなくなった。

16年の映画「パトリオット・デイ」は、ボストンマラソン爆弾テロ事件の裏側をマーク・ウォールバーグ主演&ピーター・バーグ監督で仕上げている。

捜査関係者や犯人、被害者の市民など事件に関わった多くの人々の動きをたどりながら、事件発生からわずか102時間で犯人逮捕に至った顛末を、映画オリジナルのキャラクターであるウォールバーグ扮する刑事の視点から描いている。

今日紹介の映画は「爆弾テロの被害者」側から描くもの。
ボストンマラソン爆弾テロ事件で「ボストンのヒーロー」と呼ばれ「ボストン・ストロング」のアイコンになった男。

死者3人重軽傷者282人の被害を齎したボストンマラソン爆弾テロ事件で両足を吹き飛ばされる被害にあった、ジェフ・ボーマンの手記をブレット・ウイッターと一緒に仕上げた実話「Stronger」をジョン・ボローノが脚色しデヴィッド・ゴードン・グリーンが監督したもの。

グリーン監督は「セルフィッシュ・サマー ホントの自分に向き合う旅」で「ベルリン国際映画祭」銀熊賞を獲得した実力派だ。

ジェフ・ボーマン自身は邦題にあるように「ダメな僕」でチャランポランの食堂従業員。
住んでいる町はチェルムズフォードという人口34千人のかつての工業都市だが今はシャッター通りでさびれている。

チキンを焦がしてタイマーのせいにするし、レッドソックスが2連敗していると仕事を押し付けスポーツバーに駆けつける。

そこへ元カノのエリン・ハーリー(タチアナ・マスラニー)がマラソンで寄金を集めるチャリティランを走るから、とビラを配る。エリンとは長い付き合いだがボーマンが大酒飲みでいい加減な男だから今は別かれている。

しかし明日は必ず行くと固い約束をする。何としてでもエリンを取り返そうと。

ギリギリになったがゴール近くにボーマンが駆けつけエリンに手を振ったところで爆発が2度起こり、ジェフは意識を失う。
病院のベッドで気が付けば両足は切断されている。

シャワーも浴びられない、トイレも行けない、苛立ち周りの人たちに悪態をつき大声を挙げるジェフは約束を守って応援に来てくれたからだとエリンは自責の念に駆られて寝ずの看病を続ける。
ジェフの母親パティ(ミランダ・リチャードソン)も酔っぱらってマスコミの前に立ちたがる。
息子のジェフこそ愛国者で英雄だと宣伝をしまくる。そしてパティはジェフの傍を離れないエリンが邪魔だ。

不幸なテロに巻き込まれ、両足を失ってしまいながらもいながらも、ボーマンはFBIに協力し意識を失う前に目撃したテロリスト像を伝え、緊急逮捕にも貢献して、「ボストン ストロング」というテーマでボストン復興のアイコンとして脚光を浴びる。

しかし、ボーマンの本当の復活はここから勝負。様々な困難が立ちはだかる。
アルコール依存症でチャランポランのジェフがエリンの助けを受け、「ボストン・ストロング」のアイコン、理想像に昇華していく過程をジェイク・ギレンホールは熱演する。ギレンホール一世一代の感動の大芝居だ。

ジェイク・ギレンホールは「ノクターナル・アニマルズ」や「ナイトクローラー」など多種多様の映画に出演し器用に役柄をこなす。

ボーマンを支えるエリン役はカナダのTVで活躍すし日本人には顔馴染みではないキュートなタチアナ・マスラニーが演じる。

アメリカでは昨年の9月29日から公開されるが一度もベスト10にも入ってこないローカル映画の扱いだ。

アメリカの歴史が始まったニューイングランド、とりわけその中心地ボストンのフェンウェインパークとかニュートン、MITなど観光案内をたっぷりと堪能できる、おまけつきだ、

5月11日(金)からTOHOシネマズシャンテほか全国で順次公開

「焼肉ドラゴン」(日本・韓国映画):セリフの一言一言が胸に突き刺さる。笑って教えられ泣いて終わる

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今日から大阪万博のシンボルだった「太陽の塔」の内部に入れるようになったという。
万博と言えば半世紀近くも前の話だ。
太陽の塔はこの映画の登場時人物たち、下積みの人たちの希望の星で映画のアイコン的存在だった
戦後の混乱期にいつの間にか国有地にデンと根を張った「焼肉ドラゴン」の裏のそう遠くない所に「太陽の塔」は聳え立つ。

僕らの周りにいる在日の人たちはこんな苦労をしていたのかと教えられる。
この映画はある朝鮮人夫婦の涙なしでは見られない大河ドラマだ。
余りに面白いからストーリーを紹介する。

金龍吉(キム・サンホ)は大東亜戦争に従軍して左腕を失った。、
妻の高英順(イ・ジョンウン)島民8万人が虐殺された四・三事件で故郷の済州島を追われて来日したときに知り合い結婚する。
両方とも再婚だ。

龍吉は長女静花(真木よう子)と次女・梨花(井上真央)、妻、英順は三女・美花(桜庭ななみ)をそれぞれ連れており、2人と3人の子どもの5人家族は
国有地を不法占拠した在日の集落で焼肉店「焼肉ドラゴン」を開業し、やがて長男の時生が生まれた。時生だけが2人の血が繋がっている。」
焼肉店は龍吉の名からドラゴンと店の名前をつける。

ここまでは夫婦の会話やナレーションで分る前提だ。
映画が始まるのは大阪万博の前年、1969年春からで、中学生となった時生(大江晋平)は学校に馴染めず朝鮮人だと苛められ
「僕はこんな町大嫌いだ!」と屋根の上で叫ぶ]。

梨花は李哲夫(大泉洋)と結婚パーティーを挙げようとしていたが、区役所の窓口で担当者と哲夫がケンカして婚姻届を提出できなかった。
夏になると国有地から立ち退くように一家は通知を受ける。

龍吉は息子に学歴をつけさせることを目的に、有名な進学校の私立中学に通わせるが、時生キムチ臭いと、いじめにあって不登校となり留年する。
哲夫が働かないこともあって梨花は立腹し、かつて付き合っていた静花の事をまだ好きなのではないかと責める。
これを気にした静花は尹大樹(ハン・ドンギュ)付き合うが哲夫はそれでも好意を捨てず、梨花も常連客の呉日白(イム・ヒチョル)と関係を持つようになった。

美花は勤め先のクラブの支配人の長谷川(大谷亮平)との不倫が明らかになる。
冬になり静花と大樹は婚約したが、そこに哲男が現れて静花に一緒に北朝鮮へ帰国事業で移住する事を求め、静花はこれに応じる。

エスカレーㇳする苛め、時生は裸にされ背中に「キムチ」と落書きされるようないじめが続いて時生は失語症となり、不登校になる。
留年した時生に対してそれでも学校に通うよう龍吉は説得するが、時生は川に飛び込み自殺をしてしまう。

落胆する龍吉に英順が「頑張ってもう一人作ろう」と慰めるシーンは笑うに笑えない。

1970年になり近くで万博が華々しく開幕した。
三波春夫や坂本九が歌う「こんにちは こんにちは 世界の西から」とのフレーズが風に乗って流れてくる。

土地の収容に訪れた大阪市職員に、龍吉はこの土地は醤油屋の佐藤さんから買ったものだと主張し、感極まって「戦争でなくした腕を帰せ」、「息子を帰せ」と叫ぶ。
龍吉が過去を語る時に「働いた働いた」と何度も繰り返すセリフが胸に迫る。

1971年春、ついに店は取り壊される。

哲夫は帰国事業で二度と再会できなくなる未来を暗示するように記念写真をしつこく撮り、梨花は呉日白と韓国へ移住、三女の美花は長谷川と日本で「スナック美花」を経営して一家は離散する。
龍吉と英順はリヤカーに荷物を載せて去り、死んだ時生が屋根の上に現れて「アボジ!オモニ!本当はこの町が大好きだった!」と叫ぶ中で桜の花びらが降ってくるラストシーンは近来見たことも無い衝撃を観客に与える。

「血と骨」など脚本家としても著名な劇作家で演出家の鄭義信が長編映画を初監督、自作の中でも人気もあり傑作でもある自信作戯「焼肉ドラゴン」を映画化。
高度経済成長と大阪万博に沸く1970年代。関西のとある地方都市で小さな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む夫婦・龍吉と英順は、静花、梨花、美花の3姉妹と長男・時生の6人暮らし。龍吉は戦争で故郷と左腕を奪われながらも常に明るく前向きに生きており、店内は静花の幼なじみの哲男ら常連客たちでいつも賑わっていた。強い絆で結ばれた彼らだったが、やがて時代の波が押し寄せ……。

主人公は焼き肉店主夫婦を演じる「隻眼の虎」のキム・サンホと「母なる証明」のイ・ジョンウン、この二人が抜群に上手い。
3姉妹を真木よう子、井上真央、桜庭ななみ、長女の幼なじみ・哲男を大泉洋がそれぞれ演じる。
日本人の役者はサンホやジョンウンに比べれば影が薄い。

第43回紀伊國屋演劇賞で個人賞、第16回読売演劇大賞で大賞・最優秀作品賞を含む4冠に輝くなど、演劇賞を総なめにした同名舞台を原作として、舞台版の演出を手がけた鄭義信が脚本・監督による映画版。
セリフが研ぎ澄まされており一言一言が胸に突き刺さる

6月22日より全国公開される

「トゥームレイダー ファースト・ミッション」(Tomb Raider)(アメリカ映画):アンジョリナ・ジョイ主演で楽しんだアドベンチャーもののリバイバルは楽しめるがオリジナルより力不足は否めない

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アメリカでは先週金曜日(16日)から公開された
新登場のワーナーブラザースのこの「Tomb Raider」)が4週連続王者「Black Panther」にどれだけ迫まれるかに興味は集まった、

しかし健闘の末3.5Mの差で2位に留まる。
女性主導映画のこの作品「Tomb Raider」は3854館で上映されWBとしては期待外れの23.5M。

ロットントマトメーターでは50%のフレッシュネス(新鮮度が多いほど映画が優れている)、観客の出口調査(CS)ではB評価と高くない。
こうなると口込みはネガティブに働く。「詰らない映画」「見ない方がいいわよ」

海外市場の方がせ成績が良くて、中国単独の41.1Mを含む65カ国で開けて102.5M,グローバル総計は126M(134億円)になる。

僕はハッキリ言ってロットントマトメーターも出口調査の結果も正直で納得できる。
加害市場で支えている中国人は15年ほど前の「トゥームレイダー」を見ていないから甘い点をつける。


誕生から20年以上もの間、世界的人気を獲得し続けるゲームシリーズ「トゥームレイダー」。
その主人公が「女性版インディ・ジョーンズ」としておなじみの主人公、ララ・クロフトだ。

2001年と03年のアンジョリナ・ジョイが演じ伸びやかな肢体を一杯につかい素晴らしいララ・クロフトを演じたのが、頭に焼き付いているから新ララ・クロフトのアリシア・ヴィキャンデルでは物足りない。

スエデーン女優としてハリウッドに進出す「リリーのすべて」「エクス・マキナ」などのオスカー女優助演賞にノミネートをされている演技派かもしれないが
29歳を若くもないしアクションものは初めてではないか。

アンジョリナ・ジョイがララ・クロフトで暴れ回ったのは25歳から27歳の年頃。
(余談だがジョイのスパイもの「ソルト」も1回で終わってしまって残念だ)

それに何よりも監督の力量が違う。
「スピード」でブレイクしたヤン・デ・ボンのララ・クロフトはインディ・ジョーンズも顔負けだった。
デ・ボンがオランダ出身なら、ノルウェー出身のローアル・ユートハウグがアメリカに招かれ
この作品でハリウッド・メジャー映画を初監督する。

ノルウェーの家族を守るディザスター映画「THE WAVE ザ・ウェイブ」で注目されただけのマイナーリーグの投手がヤンキースタジアムのマウンドで
ヤンキースのスラッガーに立ち向かうようなもので、
ロットントマトや出口調査の観客の評価も最低、映画公開後のプロの批評家からも酷評の雨嵐!

さてストーリーを追ってみよう。
ララが14歳の時に父は行方不明なり7年、親類に占拠された家庭が煩わしく、女子大生になったララ・クロフトは独立して自転車宅急便で働いている。

冒険家で資産家の父親リチャード(ドミニク・ウェスト)の1人娘として生まれたララは、
失踪して7年経ち死亡とみなされた父の遺書が弁護士の手で公表される。
殆どの遺産はララが受け継ぐことになるがその中に手紙(遺書)がある。

ララは、父の遺書の命じるままに最初の任務にトライする。
それはなんと、父の最後の目的地であった、日本のどこかにあるとされる「卑弥呼」の神話上の島、
さらにその島には世界を滅ぼすほどの邪悪な力「幻の秘宝」が封印されている墓があることが記されていた。

ララは父が失踪した真相を確かめるべくその島へと旅立ち、自分と同じように墓を探し当てようとする謎の邪悪な組織「トリニティ」に立ち向かっていく。

誕生から20年以上もの間、世界的人気を獲得し続ける日本の神話上の「卑弥呼」の島に隠された、世界を滅ぼすパワーを秘める「幻の秘宝」を封印すること。
秘宝にアクセスするのは出される難問を解いて行く、ゲーム感覚だ。

興味深いのは「卑弥呼」は闇の凶悪な世界を代表していることだ。

主演のアリシア・ヴィキャンデルを助ける、共演にドミニク・ウェスト、ウィルトン・ゴキンズ、ダニエル・ウーなどが脇を固める。

ミステリアスな土地で繰り広げる冒険で成功したヒロイン、ララのアクションもので、
エピローグでは当然「トゥームレイダー 」の2弾、3弾と続くことを暗示している。

観客も批評家も本国アメリカではサンザンな酷評のこの作品がシリーズものになるかどうかは
日本も含めた海外市場、特に中国人の間でどう受け止められているかどうか、その評価にかかっている。

3月21日より丸の内ピカデリー他全国で公開される

「君への距離、1万キロ」(Eye on Juliet)(カナダ映画):北アフリカの石油パイプラインを監視するロボットをアメリカ・デトロイトから遠隔操作する警備員ゴードンはロボットを通して美しいアラブの

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「いちどに1ダースの猫を飼っていた」
無類の猫好きで知られる洋画家猪熊弦一郎展「猫たち」を東急百貨店地下1階の
「BUNKAMURAザ・ミュージアム」で見た。

昨日(3月20日)から始まり4月18日まで約1か月の展示。
気温が1ケタ台に下がり雨風も半端ではないのに結構な人たちが訪れ猪熊流で描かれる色んな表情の猫を鑑賞していた。

愛猫家文子夫人に子どもが出来ず愛情のはけ口を猫に求め、猫は絶やしたことは無い。
その上絵のモチーフにこの小さな可愛い動物を選び、パリ、東京、ニューヨーク、ハワイと何処にアトリエを移しても91歳の天寿を終えるまで猫を絶やしたことは無かった。

「昨日(20日)は澁谷円山町の美学校試写室で2本の映画を見た。
映画と映画の間に3時間の余裕が出来たので歩いて3分の東急百貨店地下1階の
「BUNKAMURAザ・ミュージアム」で猪熊弦一郎展「猫たち」を鑑賞する余裕があった。


原題「Eye on Juliet」は「ジュリエットを見詰めて」と言う何ともロマンティックなタイトルだが「ジュリエット」は監視ロボット。
北アフリカの砂漠地帯を横断するアメリカの石油パイプラインの泥棒をを監視する6本足の蜘蛛型状のロボット・Juliet3000は直径40C,高さ40Cの円形で地上を高速で移動できる。

アメリカの警備会社社員、ゴードン(ジョー・コール)は1万キロ離れたアメリカのデトロイトからジュリエットをモニターを見ながら遠隔操作している。

無人機プレデーターやリバーがアフガニスタンやイラクに潜むテロリストをラスベガス郊外にある空軍基地から遠隔操作で攻撃していることは周知の事実だからジュリエットもあながち空想の産物とは言えまい。

恋人ジャニーン(アレクシア・ファスト)と別れたばかりのゴードンは立ち直れず動揺したまま監視ロボットを操作して若くて美しいアユーシャ(リナ・エル=アラビ)にぶつかってしまう。

無害と知ってロボットに近づき、背後のゴードンと打ち解け身の上話に及ぶ。
アユーシャはカリム(フェイサル・ジグラット)という恋人がいながら、親からは別の相手との結婚を強要されていた。
アユーシャとカリムは危険を冒してでも駆け落ちをして国外へ逃亡しようとする。

それを知ったゴードンは、アユーシャの運命を変える大胆なアクションを起こす。

遠隔操作ロボットを通してのロマンティックなストーリーだが、バカバカしい穴だらけのエピソードを繋いだだけで、別に面白くも何ともない。
だから観客の感情移入も起きなく、ああそうですかで終わってしまう。

役者も端役で顔を出したことがある、程度の二流俳優。

主演のジョー・コールはカナダのTVで活躍する短く刈り込んだ頭髪と顎鬚が似合う29歳のイケメン。

ただアユーシャ役のリナ・エル=アラビはフランス国籍の浅黒い瞳の大きいモロッコ系美人。ジュリエットのオズオズと近づき悩みを告白する姿は絵になる。

「魔女と呼ばれた少女」(12)で注目され第85回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた他数々の賞を授与されたカナダのヴェトナム系キム・グエンが監督と脚本を担当する。

4月7日より新宿シネマカリテにて公開される。

「ゼ ニ ガ タ」(日本映画):港町の路地裏にひっそりと営む居酒屋「銭形」。だが午前零時を過ぎるとトサンの暴利を貪る阿漕な闇金「「ゼ ニ ガ タ」に看板が変わる。

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勧善懲悪、潔癖症の日本人は悪漢が主人公のピカレスク映画を好まない。
ひねくれものの僕は大好きだが、久しぶりにコテコテの悪漢映画に堪能する。

錆びついた漁船が停泊するひなびた漁港。路地裏の一角でひっそり営む居酒屋「銭形」。
店主は銭形兄弟の兄、富男(大谷亮平)と阿漕の取立屋・弟、静香(小林且弥)。
表向きは居酒屋だが、深夜0時の鐘を聞くと突如闇金「ゼニガタ」に変わる。
トサン(10日で3割)10日で3割の超暴利で金を貸しつけ苛烈な取り立てで債務者を追い込む冷酷無比な金貸しで苛烈な取立てで債務者を追い込むのが銭形兄弟のスタイル。
借金の払えないボクサー崩れの男・八雲(田中俊介)が「銭形」に入れてくれと申し出てきて銭形兄弟の用心棒に雇われる。

銭形兄弟に対抗できるのはヤクザの出入りでムショ勤めを終えシャバに出て来た一匹狼のヤクザ・磯ヶ谷剣(渋川清彦)。

僕はこの清川と大谷がひいきの役者だ。

大谷亮平はモデル出身のイケメンで韓国に渡り、映画「神弓-KAMIYUMI-」や「バトル・オーシャン 海上決戦」などで大スターとなり逆輸入で16年に帰国して今引っ張りだこ。
渋川清彦は映画「お盆の弟」、「アレノ」で第37回 ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞するなど、数多くの監督やプロデューサーから出演依頼が殺到している。
パンチ一発1万円で用心棒を請け負う元ボクサー、ブランド狂いの田舎キャバクラ嬢や半ぐれ、ヤクザなど、金の魔力に取り付かれたアウトローな連中たちが続々登場する。
返せるあてのない借金を抱え銀行信用金庫から相手にされず、家族や友人たちからも見捨てられ、最後の手段として居酒屋「銭形」を訪れた人々の夫々の運命はドラマティックで凄惨だ。

主人公、銭形富男役の大谷亮平と準主役のムショ帰りの一匹狼ヤクザ、及川清彦の他に悪役集団が顔を揃える

弟・銭形静香役は、小林且弥。「マエストロ!」「あ、荒野」などの他白石和彌監督の「凶悪」で注目を集めた。切れると狂暴になり手が付けられない借金取り立て屋を好演している。

佐津川愛美の開き直りの芝居が迫力ある。映画「ヒメアノ~ル」「ユリゴコロ」「リベンジgirl」など出演が続いているが、
この映画では田舎のキャバクラ嬢でブランド狂い、
金は借りるだけ借りて最後は貸主,静香の家に乗り込む曲者債務者、早乙女珠役を演じる。

田中俊介は兄弟の用心棒として元殺人ボクサー崩れの剣持八雲役を演じる。人気エンターテインメント軍団「BOYS AND MEN」で映画は「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」に出ている。

ヤクザに憧れ、兄弟に難癖をつけては噛み付く半グレ・樺山博史役を「曇天に笑う」など人気舞台の玉城裕規。

「同情するなら金をくれ」の名子役、安達祐実もすっかりおばさん。資金繰りに窮し、銭形兄弟に泣きつく脱サラ債務者・真田留美役で顔を出す。

兄弟の過去知る、警察署長・二階堂猛役をベテラン升毅。主演を務めた映画「八重子のハミング」の妻の
アルツハイマー型認知症を8年も介護する地味な役で泣かせたのも記憶に新しい

淋しい港町を牛耳る小悪党たちを屈指のピカレスク俳優たちが日頃披露できない芝居を地で演じる

37歳の綾部真弥監督もこれだけ豪華な役者たちを揃えて貰ったラ心置きなく全力投球が出来る。彼の代表作になる映画に仕上げている。

5月26日より公開される。(劇場未定)

「子どもが教えてくれたこと」(Et Les Mistrals Gagnants)(フランス映画):主人公の5人は6歳から9歳の子どもたちで、皆何らかの不治の病を抱えている。

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エンドクレジットの幼い子どもたちの会話に笑ってしまう
5歳の兄がお婆ちゃんにアレを買ってコレを買ってとねだっている
3歳の弟がたしなめる。
「お婆ちゃんはお兄ちゃんの財布じゃないんだよ」

3歳の男の子が家族の年齢を紹介する。
パパは38歳と半、ママは35歳と半、お姉ちゃんは8歳と半、
僕は3歳と半、「うちは『~と半』家族だね」

 監督のアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンは自分の2歳の次女を病気で亡くしている。
娘の発病から死亡までの日々を綴った「濡れた砂の上の小さな足跡」がベストセラーになった。

母親として小さな娘とかかずらわった経験をもとに5人の子どもを観察し
「子どもたちの持つ力」を見事にカメラに収めたドキュメンタリ映画に仕上げている。

画面に登場する5人はアンブル、カミーユ、イマド、シャルル、デュデュアル。
6歳から9歳の子どもたちで、皆何らかの不治の病いを患っている。

子どもたちは楽観的な明日を夢見、手をとって大人たちを彼らの世界へ案内してくれる。
一緒にゲームをし、喜び、笑い、そして自分たちの病気まで分かち合う。

1985年のヒットソング「Winning Mistral=強い北風に打ち勝って」から引用した原題は、
子どもたちが治療を続けながら毎日を精一杯「生きている」ことを応援している。

子どもたちの会話や行動は笑って泣けるビタースィートのエピソードが一杯だが
詳しくは映画館に足を運んで観察して欲しい。

アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督はいつ生命を絶たれるかも知れない病魔と戦いながら、
家族とのかけがえのない時間、学校での友達と過ごす時間、
「今この時間」を生きることの大切さを丁寧にトレースしている。

子どもたちは「死ぬこと」など一瞬も考えていない。
どうしたら「楽しく生きていけるか」だけを考えている。

皮膚病に罹ったシャルルは「僕の皮膚は蝶々みたいに柔らかだ」
カミーユは「神経芽細胞腫」という難病を患っているが、サッカーとショウのことしか頭に無い。
「私が死んだら、もう病気には罹らないね」と泣かせる。

過去を振り返るのではなく、未来を予測するわけでもなく
ただ目の前にあるあありのままの日常、そしてその瞬間を、子どもたちのおかげで人生を愛せるようになったと、女流監督は述懐している。

2年前に公開されたこのドキュメンタリはジャンル映画にも関わらずフランス本国で23万人を動員するヒットとなった。

6月下旬シネスィッチ銀座にて公開される。

「ラッカは静かに虐殺されている」(City of Ghosts)(米映画):武装勢力イスラム国に支配されたシリア北部の街「ラッカ」の惨状を世界に発信している、市民ジャーナリスト集団の活動を追う。

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べトナム戦争の頃一人のベトコンゲリラ路上に座らせの頭を撃ち抜く南ベトナム政府軍兵士の公開処刑の映像を見て震え上がった。
そんなのは序の口で、この映画の冒頭でイスラム国(IS)の兵士が3-4人を座らせて立て続けに拳銃で射殺する。
立たせたままの銃殺シーンは何度も出て来る。間違って政府軍でもない普通の市民も処刑される。

良く撮影できたものだと感心するが、隠し撮りしたクルー(RBSSのメンバーも含む)も命がけのドキュメンタリ-だ。

メキシコ麻薬戦争を追った「カルテル・ランド」(15)のマシュー・ハイネマン監督が、11年から始まり今も続行していて
7年間での死亡者が47万人を超える、戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦の特にイスラム国(IS)の残虐さに肉薄したドキュメンタリー。

2012年の「アラブの春」以来シリア内戦の中、政府軍や反政府軍などの権力が空白地帯になっている「ラッカ」に侵攻して来たのは
突如浮上して来たイスラム国(IS)。
2014年に制圧した街「ラッカ」はISの本拠地となってしまった。
トルコに隣接するシリア北部の街「ラッカ」はかつて「天国」と呼ばれる平穏で静かな街だった。

その天国を過激思想と武力で勢力を拡大するイスラム国(IS)が制圧し、ラッカの街はISの首都とされ世界にしれわたった。
穏やかだった街は政府軍などの空爆や砲撃により廃墟と化し、街では残忍な公開処刑が日夜繰り返されていく。

「カルテル・ランド」でも麻薬組織が支配するメキシコの田舎で、無力な警察に幻滅した一般市民たちが立ち上がり治安改善のため自ら武装しカルテルと戦うが、
ここラッカでも無力なアサド政権に頼らず、匿名の市民によって結成されたジャーナリスト集団「RBSS」が活躍する。

RBSSとは「Raqqa is Being Slaughtered Silently」の略で「ラッカは静かに虐殺されている」の意、これが邦題にもなっている。

RBSSは、海外メディアも報じることができないこの惨状を国際社会に世界に伝えるべく、スマホを武器に街が直面している現実を次々とSNSに投稿する。

「RBSS」の表紙のデザインがISの機関誌からコピーしたものだけに怒りは倍増する。
そのショッキングな映像に世界が騒然となったが、RBSSの発信力に脅威を感じたISは次々とRBSSメンバーを探し出し暗殺していく。
ISはメンバー個人ばかりかその家族や友人までも処刑する、残忍さだ。

RBSSはISと敵対し戦うと言うのではなく、メンバーがこのIS圧政下でどう生き残って行くかに腐心する。
組織対組織でなく、メンバー1人1人のサバイバルを記録している。

2人のメンバーは隠れていたアパートを襲われ、ISの兵士に首を斬られ、頭が無い遺体が部屋から運び出される。
ほとんどのメンバーは処刑されるか、何人かは隣国のトルコへ逃げ出す。

トルコに逃げ込んだメンバーの1人、ハムードは自分の父親が拷問され処刑されるヴィデオを見て、
自分1人が安全地帯に逃げ身の保全をはかったと罪の意識に苛まれる。

こんな迫真の記録映画を見ているとハリウッド製映画は児戯に思えるほどだ。


監督は第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「カルテル・ランド」(15)のマシュー・ハイネマン。
NY在住の34歳、油が乗りきっていて次々と戦場のドキュメントを送り出している。
次回作は戦場ジャーナリストをテーマにした「A Private War」。

なおこの作品は、「シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭2017」の審査員大賞を受賞しているほかいくつかのドキュメンタリー賞を獲得している。

4月14日よりポレポレ東中野他で公開される。

「レディ・バード」(Lady Bird)(アメリカ映画):田舎の母親の元を離れ大都会で羽ばたきたい高校生の娘とのアンビバレントな関係

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2002年、カリフォルニア州サクラメント。閉塞感溢れる片田舎と言うセリフが多々出て来るがサクラメントはカリフォルニア州の州都でサンフランシスコからベイブリッジを渡って2時間、オールドタウンとニュータウンに分かれた静かな街だ。
僕はクルミなどの農産物の日本キャンペーンの扱いを取るため3回ほどプレゼンテーションや成果報告に出かけている。

主人公はカトリック系の女子高に通いはこの州都はド田舎だと言うインフォリオリティコンプレックスが底流にある。ニューヨークやサンフランシスコに比べれば確かに小さな街だ。

主人公は閉塞感漂うこの片田舎の町でカトリック系の女子高に通い、自らを「レディ・バード」と呼ぶ17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)が、高校生活最後の年を迎え、友人やボーイフレンド、家族、そして自分の将来について悩み、揺れ動く様子を、みずみずしくユーモアたっぷりに描かれている。

もう一つサクラメントは色々な宗派のキリスト教とその教会があり、教義の論争も1部見られる。
例えば校長であるシスター、サラ・ジョーンズ(ロイス・スミス)との諍いは笑える。
ある女性が妊娠した。周囲は堕胎しろと勧める、彼女は迷う。「さあどうしたと思いますか?と生徒たちに問う。
レディ・バードは手を挙げ「それはシスター貴女のお母さんのことでしょ。彼女が決断してくれていたら、私はこんなくだらない説教を聞かなくて済むのに」
1週間の停学を食らい、教育熱心な母親マリオン(ローリー・メトカーフ)の嘆くこと。

サクラメントはキリスト教の宗派が乱立している。西方教会 の カトリック教会、 聖公会、 プロテスタント。 東方教会の正教会。
その癖高校生たちは誰も神を信じていないのがオカシイ。

マクファーソン家は父親ラリー(トレイシー・レッツ)がアルコール依存症から強度のうつ病で働かず、母親マリオンがレジ打ちやウェイトレスとパートを二重にこなし家計を維持し高い学費のカソリック系私立高校に通わせている。
卒業後も地元なら学費も安い州立カレッジへ入って一緒に住みたいと思っている。

レディ・バードは文化度や教養知識度が高い東海岸、特に
大都会ニューヨークへの大学進学を夢見る。
アプリケーションをコロンビアや出したNYU,総て不合格。

唯一最難関とされるバーナード大学から補欠合格の通知を受け取り天にも昇る気持ちだが、
学費が年間5万ドルもするから奨学金がなければやって行けない。
父親には相談するが賛成してくれる。しかし金銭面ではアテにできない。
絶対反対するだろう母親には内緒だ。

監督・脚本で本業女優のグレタ・ガーウィッグのオリジナル脚本は「Mothers and Daughters」とあるように基本的には母娘のアンビバレントの関係を描いたものだ。
娘が勝手にNYの大学へ行くのに腹を立て、サクラメント空港まで車で送るがゲイトへは見送らない。
しかしグルリと車を一周する間に堪らなくなりチェッキングカウンターへ駆けつける。

サクラメントでは突っ張って「レディ・バード」と自称していたがNYに着くや否や綽名は捨て「クリスティー」と呼んで、と最初のボーイフレンドに頼み込む
そして日曜だと気付くと教会へ駆けつける。

監督と脚本は「フランシス・ハ」「20センチュリー・ウーマン」などユーモアたっぷりの青春もので知られる女優のグレタ・ガーウィグが、自身の出身地でもある米カリフォルニア州サクラメントを舞台に、自伝的要素を盛り込みながら描いた青春映画。
「フランシス・ハ」や「ハンナだけど、生きていく!」などでは脚本も手がけ、初の単独監督作としてメガホンをとった。

主人公クリスティンを「ブルックリン」「つぐない」でアカデミー賞候補にもなった若手実力派のシアーシャ・ローナン、
母親マリオン役をテレビや舞台で活躍するベテラン女優のローリー・メトカーフが演じた。
何も取れなかったが、今年3月の第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネートされた。
ガーウィグも女性として史上5人目の監督賞候補になった。

低予算ながら戦略の良さで女性層を引っ張って利益を上げて来られたのは特筆に値する

6月1日よりTOHOシネマズ系で全国公開される。

「わたしにXXしなさい」(日本映画):学校一のモテ男、時雨の腹黒の秘密を握ったウェブ小説家、雪菜が、自身の恋愛小説のネタを得るために時雨を脅して次々と「XXしなさい」と恋のミッションを与える。

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白内障手術を土曜日に受けたので医者から本を読むこともPCをいじることも禁じられている。
目に負担をかけてはいけないと。だからブログも短くする。

原作は遠山えまの漫画「わたしにXXしなさい!」が実写映画化されたものと言うが当山えまもこの漫画も僕は知らない。だがこのタイトルは上手い。女の子に向かって「XXXしなさい」と言うと大抵はHなSM的ことを想像し女の子は受け身で奴隷だ。
しかし内容を見ると真逆で学校一のモテオトコ男に対し、主人公はその上を行く女王様だから興味が湧く。

女子高生にしてウェブ小説家としての顔を持つ氷室雪菜(玉城ティナ)は恋愛経験が無く小説にラブの要素を駆けないで困っていた。

一方、学園一のモテ男であり頭が良くて生徒会長の北見時雨(小関裕太)は腹黒い一面を持っている。時雨の腹黒の秘密を握った雪菜が、自身の恋愛小説のネタを得るために時雨を脅して次々と「XXしなさい」と恋のミッションを与える。

やがてそれらのミッションを実行している内に時雨と雪菜の間に本当の恋愛が芽生えて二人は恋人に発展していく。

主人公の「雪菜役を演じるのは名前から分かるように沖縄出身の玉城ティナ。モデル出身、TVで活躍し20歳で映画初主演。小説家の役柄大きな眼鏡をかけているが、取るとなかなかのキュートな容姿だ。

北見時雨役を子役から長いキャリアの22歳の小関裕太が演じて、玉城とのダブル主演を務める。

他に佐藤寛太(劇団EXILE)や山田杏奈が脇を固める。

監督は「グッモーエビアン!」「猫なんかよんでもこない。」などの山本透。大学を卒業して20年近く助監などをして現場を経験しているので映画を良く知っている。JKたちの生態を捉え現代ドラマとして生き生きと仕上げている。

6月23日より新宿バルト9他で公開される。

「ラスト・ホールド!」(日本映画):2020年の東京オリンピックから正式種目となるスポーツクライミングの「ボルダリング」を題材にした青春ドラマ

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NYに住んでいた時リンカーンセンターの手前にいつも人だかりのしているジムがあった。
6階分位の吹き抜けに高い岩場を作りロープとヘルメットの若者たちが登攀の実用性を競う。

今から考えると「リードクライミング」でクライマーがロープを自らルート途中の確保支点にセットしながら登るものか、
予めルート最上部の強固な確保支点に通した確保用のロープにて安全を図りながら登る「トップロープクライミング」で岩場登攀に実用的なものだ。 -
20年の東京オリンピック競技種目に採用された「ボルダリング」は 最低限の道具(シューズとチョーク)で岩を登る。高さに規定はない。

登るルートはその度に変えられ、そして最後にあるトップのホールドを5秒以上掴んで(ホールド)いなければならない。

スポーツクライミングのボルダリングを題材にした青春YAドラマ。
廃部寸前のボルダリング部に入った新入生たちが、次第にその魅力に気付いていく姿が描かれる。

卒業を控え、取手坂大学で主将を務めているボルダリング部が廃部寸前であることが気掛かりでならない岡島健太郎(塚田僚一)。

部を何とか存続させようと、あの手この手と策を練り、彼は新入生6人を入部させることに成功する。
だが集まったのは元ボルダーだがクールな河口(岩本照)ダンス好きの桑本(佐久間大介)、元ドラマーの高井戸(宮館涼太)、ゲームおたくの中道(阿部亮平)など、ボルダリングとは縁遠い初心者ばかり。

それでも彼らは、失敗を繰り返しながらも次第にボルダリングの楽しさに目覚めていく。
それぞれが自分と向き合い、部員同士の絆も生まれていった。

しかし、彼らが目指していた「インカレ団体戦」決勝戦で、河口がトップのホールドを掴みそこない墜落負傷するし、岡島も敗退する。

日本はボルダリング最強国だとは知らなかった。2014年から4年連続で世界ランキング第一位を維持している。

地味な競技だがこの映画を切っ掛けにもっとボルダリングが広まれば良い。


アイドルグループ「A.B.C-Z」の塚田僚一が映画初主演でボルダリング部主将の岡島役を演じ、事務所の後輩グループ「Snow Man」(ジャニーズJr.)の岩本照、深澤辰哉、渡辺翔太、宮舘涼太、佐久間大介、阿部亮平が部員役で出演している。

監督は「ボクは坊さん。」などの真壁幸紀。

5月12日より新宿ピカデリー他で公開される。

「ピーターラビット」(Peter Rabbit)(米映画):ハリウッド製のピーターラビットは自分たちの居住する山荘の中庭を守るため、ロンドンからやって来た新オーナーのトーマスと死闘を繰り返し権利を維持

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1893年9月4日にビアトリクス・ポターが友人の息子に宛てた絵手紙が原型で、その日がピーターラビットの誕生日とされる。
もう1世紀前、正確には125年、1世紀と1/4世紀の昔になる。

1902年には初の本「The Tale of Peter Rabbit(日本語タイトル:「ピーターラビットのおはなし」)が出版される。

ピーターラビットシリーズの累計発行部数は全世界で2億5千万部を超え、日本の福音館書店版は1300万部以上が発行されている。

ビアトリクス・ポター原作による絵本や漫画は近い距離だが、イギリスの名作絵本「ピーターラビット」をハリウッドで初めて実写映画化。

写真の様な精密な兎は思わず抱きしめたくなる。
監督・脚色は「ANNIE アニー」「ステイ・フレンズ」などのファミリー映画が得意のNY出身のウィル・グラッグ。

舞台はイギリスで最も美しい風景と称えられる世界遺産の「湖水地方」。
原作者ビアトリクス・ポターはこの地でピーターラビットを生み、所有の4000エイカ―を遺贈した。
今も当時のままの美しさを保ち世界中の人々を魅了し続けている。

青い上着のピーター(声:ジェームズ・コーデン)は沢山の仲間に囲まれて世界で一番幸せなウサギ。
画家のビアと言う美女もピーターの親友で近くに住んで居る。

両親は亡くしたが三人の用心深い姉妹がいる。
フロプシー(マーゴット・ロビー)、モプシー(エリザベス・デビッキー)、コットンテイル(デイジー・リドリー)。

デブの従弟ベンジャミン・バニー(コリンムーディ)も気の置けない仲間だ。

近所にギョロ目で髪がカールしている変なお爺さんMR.マクレガー(サム・ニール)が居る。野菜好きで盗もうとする小動物を許さない。

その老人が心臓麻痺で死に森の山荘は甥のトーマス・マクレガー(ドーナル・グリーソン)に譲られる。
山荘の中庭は兎たちの遊び場だ。

ある日、ビアのお隣さんとして大都会のロンドン・ハロッズ百貨店玩具売り場主任をクビになった潔癖症のトーマス・マクレガーが引っ越してくる。

マクレガーは小動物が大嫌い。
ピーターの幸せな生活は一変。
動物たちを追い払いたいトーマスとピーターの死闘はダイナマイトを投げ合い高圧電流を柵に流し、トラップを仕掛け、毒薬を仕込むなど争いは日に日にエスカレートして来る。
いき、トーマスは一目惚れしたビアをめぐる恋心も絡んで事態は複雑になり大騒動に発展していく。

•この女流画家.ビアは抽象画を描いているが下手くそなことは素人目にも分かる。
•ピーターがトーマスとの喧嘩で描きかけのキャンバスを汚してしまい、この世も終わりと嘆く。
•また鈍感で、ピーターが二本足で立ち喋れることを最後まで知らない。

•ビア役は「ANNIE アニー」「X-MEN:アポカリプス」のローズ・バーン、
•トーマス・マクレガー役は「スター・ウォーズ」シリーズのドーナル・グリーソン。
•CGで描かれるピーターの声を「ワン チャンス」「イントゥ・ザ・ウッズ」のジェームズ・コーデンが、
•ナレーションとプロプシーは「アイ・トーニャ」のマーゴット・ロビーが担当している

•動物たちが奏でる、まるでミュージカルのような心躍る世界が、一大パノラマをバックに繰り広げられる舞台がイギリスの湖水地方と言うことで、
先週末、アメリカでは12位の2.5MだがUKでは7Mを挙げパシフィック・リムやリンクル・タイムを押えて海外累積で86M、グローバル総計累積183.1Mで3位の成績を挙げている。

5月18日より新宿ピカデリー他全国で公開される

「パシフィック・リム アップライジング」(Pacific Rim: Uprising)(アメリカ映画);日本を舞台に地球を襲うKAIJU(怪獣)の大群と人工巨大ロボットのAEGER(イェーガー)が激突

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今日は電通の株主総会。
株価低迷の要因について幾つかの質問をしなければならない。
ブログは昨夜書きあげている。

3月23日に新登場のレジェンダリーとUNIの「Pacific Rim: Uprising」が5週連王者の「Black Panther」を遂に破った。
その所為か昨日(28日)の東宝東和の試写室は上映開始1時間前から長蛇の列。入場出来ない人たちも多かった。

3708館で公開され28Mで、2位の「Black~」の16.7Mに11.3Mの差をつけての首位。
問題は広告PRなどマーケティング費を除く制作費を155M(163億円)も注ぎ込んでいることで首位と言っても僅か28Mのデビューではリクープが大変です。

実際、新登場が5作品と過激な競争に加え先週末はNCAAバスケットトーナメントや全国規模のMKLの孫娘も参加した「銃規制デモ」などで映画館へ足が止まり前週に比べ37%の急激な落ち込みになっている。

救ったのは海外市場。
中ツ国、中国単独で65M(69億円)(オリジナルの45.2Mを凌駕)を含む122.5Mを挙げ、グローバル総計は150.5M(160億円)とほぼ制作費に匹敵する興行成績だ。
それもその筈、大連の万達グループがレジェダリーを35億ドル(371億円)で買収している。
中国企業になったレジェンダリーが制作費を殆ど出しているから中国人がキャストの半分以上を占める。

人工巨大ロボットのAEGER(イェーガー)の「トップガン」スタイルのパイロットの訓練とか中国系シャオ産業の企業スパイの話が前半延々と続くが面白くない。

後半に入ると舞台は東京。KAIJU(怪獣)の脅威がなくなって10年。チャ―リー・デイやバーン・ゴーマンなどの懐かしいマッド・サイアンティストが更に異常さを増して出て来る。

主演で天才パイロットを演じるのはジョン・ボイエガ。亡き英雄ペントコストの遺児ジェイク。高い資質を備えていながらPPDCを去り、違法行為に手を染めていた。ある日同じくイェーガーに興味を抱く孤児のアマーラ((ケイリー・スピーニー)と出会い一目惚れ、一緒にパイロット養成所でトレーニングを受ける。
同じような養成所仲間にネイト・ランバート(スコット・イーストウッド)がいる。気味が悪いほど父親クリントにそっくり、と言うのも一興だ。

深海の割れ目では無く突如として巨大KAIJUの大群が現れ日本を目指す。目的地は富士山。活火山だけにレア・アースが山麓にふんだんに埋葬されているが、それがKAIJUのエネルギー源だ。
だが富士山に要らぬ刺激を与えると環太平洋の火山帯が一斉に活動を始める。そうなると地球は破滅する。

次世代イェーガー「ジプシー・アヴェンジャー」に乗り込んだジェイクは若いパイロットたちのイェーガーを引き連れて決戦に臨む。

殆ど東京が舞台だが、看板やネオンサインはどう見ても日本語ではない。
日本人しか気づかないだろうが、ハリウッド版・ゴジラなどはしっかりと東京の繁華街や高層ビルを再現していた。
映画はバカバカしいと思うが面白い。だがこの美術を見ると質はB級だな、やっぱり。

日本人として菊地凛子や真剣佑などが加わるが早々に消えてしまう。
彼らのサバイバルは日本からの出資にかかっているね。

監督はこれが長編劇場用映画デビューのスティーヴン・S・デナイト。TVドラマで長い経験があるのでツボを心得た演出をしている。

オリジナル版の監督で今年のアカデミー監督賞受賞者、ギレルモ・デル・トロがプロデューサーに廻ってバックアップしている。

余談だが電通は年間通してユニバーサルに制作費を提供している。
殆どの作品にばら撒くから凛子や真剣佑の生き残りに手を貸すほどの額ではないのが残念。
エンドクレジットにIn Association with Dentsuに注目。

4月13日よりTOHOシネマズ日比谷他で全国公開される。

「トレイン・ミッション」(The Commuter)(米英映画):クビになった保険屋で元警官のマイケルは謎の女から10万ドル上げるから通勤で見慣れないプリンと言う人物を探して欲しいと頼まれる

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昨日(29日)が「東京ミッドタウン日比谷」のオープニング。
三井不動産が家主だから「東京ミッドタウン六本木」に今度は「日比谷ミッドタウン」、ティナントのTOHOシネマは口一つ挟めず
日劇ビルの看板映画館・日劇1,2,3を今年の2月4日に閉鎖を余儀なくされ、正に「火の消えた」淋しい廃墟となっている。

昭和8年(1933年)からあの昭和20年(1945)3月の大空襲にも耐えて生き残ったランドマーク。
ストリップ劇場「日劇ミュージックホール」で進駐軍にもサービスした日劇ビルだけに下の8階までのデパートと松竹が頑張ってピカデリーの1と2を残しているが、
映画の他にホールとして、僕はウェスタンカーニバルを含めた日劇で育てられた感があるだけに淋しい。

だが早速、「ミッドタウン日比谷」なるバカでかいと言っても三信ビル跡地だけの大きさだから宝塚ビルと東宝ビルの間の6階建てのニューモニュメントを偵察がてら、
本来なら30日封切りを繰り上げのGAGA配給「トレイン・ミッション」の夕刻7時15分の回に駆けつけた。

驚いたのは見物を兼ねた暇人の多いこと。エスカレーターとエレベーター前はディズニーランド真っ青の長蛇の列でカタツムリ状にロープが張られ順番を10分以上待つ。
B1-3階までは殆どがレストラン(ピンからキリまで)コンビニ、本屋に理容室、6Fの屋上はパークビューガーデン。
日比谷公園を見下ろすだけの屋上も鈴なりの観光客。警備員が「時計と反対廻りの一方通行ですよ!」と怒鳴っている。

映画チケットは4Fで小屋は吹き抜けで5FまでがTOHOシネマズの11スクリーン、2200席ある。
シャンテ前のゴジラ像はチケット売り場ロビーに引っ越し、スターの足型手形は地下1階の「テラス」の壁面を飾っている。

日劇1が946席、2が667席、3が523席、合計2136席だったから席数は間尺に合わせスクリーン数で8S増やしている。

つまり日劇を細分化してミニシアターに改造したのだ。
確かに日劇1が満席になったことは無いし、施策としては世の趨勢に乗っている。
楽しいのは待望のIMAXシアターが日比谷に誕生したことだ(スクリーン4)。これで六本木ヒルズや新宿、品川、日本橋に行かなくて済む。
おまけに地下鉄からのアクセスが日本橋同様短いのもパーキンソン病でヨタヨタ歩く僕には嬉しい。


還暦を超えた65歳にしてアクションスターに変身したリーアム・ニーソン。
北アイルランド生まれにして地味な役者のリーアム・ニーソンはS・スピルバーグの「シンドラーのリスト」で大ブレイク、『ラブアクチュアリー』『バッドマン ビギンス』などスターの道をあゆんでいたが、

2008年、フランスの大御所、リュック・ベンソンから「96時間」の主演の指名でアクションスターに変身させられたのが55歳の時。これが受けてシリーズ化して12年に2,14年に3と続行中。

それにしても65歳のニーソンは日本ではローキーで人気の無い役者だ。
今日紹介のこの映画の前倒しの初日、ミッドタウンのオープニングに併せて上映だ。

主人公、マイケル・マコーリー(リーアム・ニーソン)は、10年間勤勉に働き続けた保険会社を60歳でリストラされる。NYPD(NY市警)で20年収入が良いからと誘われて転職して保険のセールスを10年。
警備員に追い出されるようにミッドタウンの会社を出た所で、妻(エリザベス・マクガバン)や大学生ダニー(ディーン・チャ―ルス・チャップマン)高校生の娘コニー()へ言い訳を考えている内に近所のバーで一杯やってからいつもの電車にのらないかと元MYPDでコンビを組んでいた警部補(パトリック・ウィルソン)誘いがある。

通勤電車メトロノースハドソン線の出る、グランド・セントラル・ステーションは目の前だ。グラセンを出発しコロンバスサークル、ハーレムの125丁目、ヤンキースタジアム、タ-リータウン、スカスボロ、コールドスプリング、そしてロングアイランド・ウェストチェスターの終点(ニューハンバーグのことだろうが仮名にしてある)まで1時間。


駅でドンとぶつかった男に携帯を掏られるが、扉が閉まりもう遅い。
いつもの通勤電車で帰路につき、顔見知りの乗客に挨拶しながらも、頭の中は住宅ローンと息子の学費のことでいっぱいのマイケルの前に見知らぬ女(ヴぇラ・ファミンガ)が座る。
そして飛んでも無いオファーを申し出る。
乗客の中からいつもの通勤客で無い「プリン」と言う人物を見つけてくれれば、前金で2号車トイレに隠してある2万5千ドル、上手く見つけて鞄を奪ったら更に7万5千ドル、合計10万ドルの報酬を払うと持ちかける。ヒントは、男か女か分からないがこの列車の常連客ではない、盗品を隠した鞄を持っている、そして終点まで必ず乗ってから下車する、プリンと名乗っているのも大きな手掛かりだ。

マイケルは高額の報酬に抗えず、元警官のスキルを駆使してその乗客を探し始める。しかし、さすがに無理だと諦めようとしたとき、妻の結婚指輪が届けられ、いつでも息子や娘はを人質に取ると脅しのメッセージが届く。

バーで見たTVでは都市計画の担当職員が自殺したと報じているが、あれは屋上から投げ落とされたと目撃者「プリン」から通報があり、謎の女一味が、元警官のマイケルに探偵をやらせていることを知る。

A・ヒッチコックの「見知らぬ乗客」や「北北西に進路をとれ」などがベースにあるだろうが、実にチープなアクション・スリラーだ。
謎の女の指示で見張られているマイケルは油断すると次々と手の内の者に襲われる。捜査中のFBI捜査官も床下で死んでいた。

前半はともかく終盤になるとヒッチャカメッチャカ。誰をどう信用していいか分からなくなるがやけになった謎の女一味は運転手を殺し、ブレーキを壊し、終点を通過させて列車そのもの乗客全員を殺害しようとする。脱線、転覆の大惨事もマイケルの指示でしゃがんで物につかまり死傷者は出ない。

一家は抱き合いハッピーエンド、しかしネタバレになるから書けない最後のオチは噴飯ものだ。
B級アクションも真面目に取り組むリーアム・ニーソンに「高齢者の星」の称号を与えたいほどだ。


グついでに映画鑑賞と言う僕みたいなもの好きでスクリーン7は8割がた埋まっている。

監督。脚本はスペインのサスペンス得意のショウマ=コレットセラ。サメに襲われる「ロング・バケーション」や航空機の貨物室に隠れる「フライトプラン」などの傑作を送り続けている。

TOHOシネマズ日比谷にて公開中。

「ラジオ・コバニ」(Radio Kobani)(オランダ映画):イスラム王国(IS)との凄絶な戦闘で廃墟になったシリア北部のクルド人居住区に平和が戻り、女子大生のディロバンは手作りのラジオ局を始める

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 先日のブログで紹介した「ラッカは静かに虐殺されている」(City of Ghosts)では武装勢力「イスラム王国」(IS)に支配されたシリア北部の街「ラッカ」の惨状を世界に発信している、市民ジャーナリスト集団のドキュメンタリーを紹介した。

 今日の記録映画も「IS」に占拠されたシリア北部のクルド人街「コバニ」の廃墟をカメラは追う。
撮影は3年に及んだが、ISが侵攻して来た2014年9月から始まり、良く5年1月のISの撤収、そして戻って来た平和な街の現状などを描きながら20歳の女子大生が始めた「ラジオ・コバニ」を紹介するものだ。

 同じシリア内部で「IS」を告発するSNSやラジオと言うメディアだが、ラッカを占拠したISはそこを王国の本部として圧制を敷いている。
抵抗勢力の市民ジャーナリストは片端から捉えられ拷問され処刑される、唯一隣国のトルコに逃げ込んだメンバーだけが父親の処刑をTVで確認すると言う
閉塞感に満ちた凄絶なドキュメンタリーだった。

 そこへ行くとこの映画は真反対、明るく希望に燃え視聴者の琴線に触れる。
主人公がキュート(顔は見えないが)な女子大生で明るい声で「希望」や「美しい未来」を呼びかける雑音だらけのラジオ放送の
それも一日僅か2時間足らずのトークでも町の人々は潤いを感じ共に明るい将来を希求するようになる。

映画の冒頭は空撮でコバニの延々と続く廃墟を紹介する。人も動物も姿を消し、倒壊した建造物の灰色か焦げた黒で覆われている。
 
トルコとの国境に近いシリア北部のクルド人街コバニは、2014年9月から過激派組織「イスラム国」(IS)の占領下となるが、
勇猛果敢なクルド人民防衛隊(YPG)による激しい迎撃と連合軍の空爆支援により、2015年1月に解放された。人々はコバニに戻って来たが、

冒頭で紹介されるように数カ月にわたる戦闘で街の大半が瓦礫と化してしまった。

そんな廃墟から不死鳥(フェニックス)のように飛び立ったのが、20歳の大学生ディロバン・キコ。
友人とラジオ局を立ち上げ、ラジオ番組「おはよう コバニ」の放送をはじめる。

生き残った人々や、戦士、詩人、ミュージシャンなどの声を届ける彼女の番組は、街を再建して未来を築こうとする人々に希望と連帯感をもたらす。

スタジオ(と言っても民家の狭い部屋だが)の壁に大きな手紙が張ってある。
書いてある内容を敷衍しつつディロバンはゲストとして生き残った人たちをスタジオに呼びインタビューをする。

いつか生まれるわが子、そして今後生まれてくる総ての子どもたちに「コバニで何が起きたか」、自分の街や家族、友人たちが受けた悲惨な物語を手紙につづる。

ディロバンは確信をもって手紙の1節を毎回繰り返す
「未来のわが子へ。戦争に勝者などいません。どちらも敗者です」

戦闘真っ只中の2014年、完全装備のISは、ライフルはもとより手榴弾、迫撃砲、ロケット砲などフル装備で街を蹂躙する映像は迫力がある。

クルド人民防衛隊(YPG)を中心にISを駆逐しコバニに復興の光が差し込み始めるまでの激動の3年間を追ったカメラは、平和が戻りつつある街の表情を捉え、視聴者を安堵させる。

やがて日常生活のささやかな喜びや恋愛を享受するディロバン自身の姿も捉えている。
廃墟の中で空爆を逃れ生き残ったウェディングホールから新郎に手を引かれ友人家族それに一般視聴者に囲まれて現れたディロバンは純白のドレスにスカーフに包まれ幸せの絶頂にいる。

このディロバン・フェニックスこそ「復興のコバニ」の象徴、アイコンだ。

映画は素人の域を出ないが過去の惨状を脱し昇華するスピリットの崇高さに感動を覚える。
監督は、自身もクルド人のラベー・ドスキー。
地雷や戦車を越えコバニに赴き戦地での撮影を敢行、クルド人兵士によるIS兵士の尋問にも立ち会った。

そしてエンドクレジットでこの映画を「戦死したクルド人兵士の姉」に捧げている。
この一行の献辞も心打つ。

5月12日よりポレポレ東中野他で公開される。

「蚤とり侍」(日本映画):越後長岡藩のエリート侍、小林寛之進は根が真面目で不正を許さない。藩主自作の歌を「良寛作ですぞ!」と指摘したことから藩を追い出され「蚤とり」業に身を堕とす。

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土曜に右目の白内障手術を受け、グルグル巻きの大きな眼帯をしてフランケンシュタインのような顔をしたまま、驚く人々を尻目に電車に乗ってクリニックを訪れ、術後診察を受けて帰って来たばかり。
PCや読書禁止令が出ているので饒舌にはなれない。

昨年3月に亡くなった小松重男は綿密な時代考証をして本当にあった事実しか書かない歴史小説家だ。初めて知ったが江戸時代に実在したと言う猫の「蚤取り」業が紹介される。
猫の蚤取りは表の顔、実は町をながして「猫の蚤取りましょう!」呼ばわっていると女が呼び込む。
女性に「愛」を貢ぐ添え寝業、そう裏は男娼なのだ。


主演の阿部寛と言う役者はバタ臭い顔をしているが、時代劇に上手く嵌っている。
古代ローマ人に扮して江戸時代にタイムトラベルする「テルマエ・ロマエ」は笑った笑った。

映画の冒頭、老中・田沼意次(桂文枝)が駕籠に乗りゆっくりと進む。次から次へと金子や貢物が届けられる。金品で何でもOKな太平な江戸の世。

画面が変わると越後長岡藩藩主、牧野備前守忠精(松重豊)の読む歌を家臣一同褒めながら聞く会。素っ頓狂な声をあげ下手な節回しの歌は自作と称する。
根が糞真面目でエリートコースの勘定方書き役、小林寛之進(阿部寛)は藩主の自作ではない「良寛の作ですぞ」と指摘した途端、藩主は大恥をかかされたと怒り出し、「蚤とりにでもなれ!」と藩から追い出し左遷。

左遷先は、猫の蚤とりを生業とする貧乏長屋。
そこには、旦那の甚兵衛(風間杜夫〕と女房のお鈴〔大竹しのぶ〕、
それに貧しい子供たちに読み書きを教える友之介〔斎藤工〕が暮らしていた。

甚兵衛は熱心に「蚤とり」の技術を伝授する。

蚤とり侍になって町にでた寛之進にとって最初のお客は、おみね(寺島しのぶ)だった。
その容姿は、寛之進の亡き妻に瓜二つ。
だらしがないことに、寛之進はアッチの方はまるでダメ。
「この、下手クソが!」と罵倒される。

教えを乞うのは伊達男の清兵衛〔豊川悦司〕。妻・おちえ〔前田敦子〕に浮気を封じられながらも
女遊びは止まない。
清兵衛のセックスを覗き見るだけでなく一緒にっセックスの輪に加わる。

藩を追い出されてからここまでは,
根が真面目だから真剣に蚤とり技術を学び、さらにセックスを学ぼうと4Pまでやってのける、
まるでドタバタ劇で少しも面白く無い。

興味が湧くのは寛之進の本当のキャラが紹介されてから。
それを観客に紹介するのがどう言う訳か田沼意次と言うのも可笑しい。

算盤だけの男かと思ったら御前試合で8人抜きの腕前。藩士の中で抜け荷などの汚職に手を染めているのを内偵の最中だったと言う。だ。突如、山本周五郎の世界だ。

それを受けて藩主が告白する。
そうなんだよな、俺が女好きなのを見越してイイ女次から次へと送り込む藩士がいるんだよな。分かっているけどついつい女を供給されると見逃してしまう。
寛之進の女房もその犠牲者だった。

読売TVの看板ディレクターだった鶴橋康夫も卒業して随分と砕けて来たものだ。
しかし演出はともかく脚本はダメだね。
この本も途中から豪華俳優陣に惑わされ宛書したのか知らないが、基本的には取っ散らかっている。
結婚相談所を舞台に保険金詐欺を画策する女とその女に騙される 男たちの喜劇「後妻業の女」(16)は本がしっかりしていたが、この作品は阿部寛の熱演でアナを埋め笑いをとっている。

他に馬にけられて記憶を失う色男、清兵衛の豊川悦司。貧乏人の子弟に読み書きを教える斎藤工、蚤とり業を牛耳る甚兵衛の風間杜夫、とその妻、大竹しのぶ、
それに前田敦子、松重豊、桂文枝と俳優陣は豪華だ。

5月18日よりTOHOシネマズ日比谷他で全国公開される。

「女と男の観覧車」(Wonder Wheel)(アメリカ映画):辛い仕事や年上の夫との再婚同士の夫婦関係に悩む中年女性、ジニーの心の癒しは海岸でライフガードの青年、ミッキーとのロマンスだった

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 3月29日の電通株主総会で、電通株価が6650 を付けた2年半前の高値よりも
2000円以上低下しているのは、
検察庁再審査請求を含めて過労死遺族代表の肩書を振り回している、
夜郎自大のアイコンにの「まつり母」だと正面から攻めたかったのだが、
審議中でGW明けに結論が出るので直接的な言い方はやめて欲しいとのO君のリクエストで、
私の質問は、友人に言わせると迫力も無い、
角を矯めて牛を殺すようなもんだったと。

中本副社長は答弁のプロになって危うい所は巧みに避ける
株価低落の原因は一つじゃない、なんて誰が思っているだろうか
まつりさんの自裁と幸美さんの劇場型記者会見が主導していることを
少しでも認めれば可愛いが
彼の答弁は国会で財務相が野党から逃げ回る際に使うものだった

しかしSNSで早速僕の発言が取り上げられ「いいね!が85人中84人だったのは驚いた。

「君みたいなキレイな人は電通であわないよ、他社を攻めたら」と
入社面接の試験官が言ったとの噂は本当だったんだと中本副社長は認めてしまった。

実際担当官を聴取をしているO君は全くのデマだと確信しているので
あの発言で頭を抱えている。

株価低迷の僕の質問のようにどうして逃げなかったのか?
真正面に噂が本当だと臭わせて、おまけに処分を検討中と付け加えてしまった。
これでは電通本体が噂をVerifyしてしまった事になった。マスコミでは大問題になるぞ。


 1950年代のブルックリン外れのコニー・アイランド。
海岸のボードウォークに立つ安手のクラムハウス(ハマグリ屋)でウエイトレスとして働く元女優のジニー(ケイト・ウィンスレット)は、再婚同士で回転木馬の操縦係を務める夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)と自分の連れ子で幼いリッチー(ジャック・ゴア)と一緒に、観覧車が海を隠す部屋に住んでいた。
リッチーは手癖が悪く、そのうえ放火魔、ジニーは校長先生にしょっちゅう呼び出される。

夫は無骨でがさつ、怒りっぽく教養の欠片も無い。
夫婦間で喧嘩は絶えないがジニーに出て行かれると困るので「愛しているよ、ジニー」と折れて謝る。
ジニーは、肌は荒れて顔に皺が出来、疲れ果てた平凡な日々に幻滅していた。

ところが夏の海水浴シーズンに浜辺で監視員のアルバイトをしている脚本家志望の
ミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)に出会い、
ひそかに交際して生き返り始めたジニーだったが、
ある日久しく連絡がなかった夫の娘キャロリーナ(ジュノ・テンプル)が
現われたことで歯車が狂い始める。

物語りの進行役でナレーションはティンバーレイクのミッキーで、
時にはカメラを正面に見据えて喋る。

キャロライナは勝手に大物ギャングの息子と駆け落ちして結婚し姿を消して5年になるが、
不仲となった夫の悪行の数々(何処に死体が埋められているかなど)
FBIに洗いざらい喋ってしまったから、
今は元夫とその手下たちが血眼になってキャロライナを探している。

ハンプティは冷たい態度をとり追い返そうとするが、娘はコニー・アイランドに隠れていなければ
必ず見つかる。見つかれば殺される。
最初は冷たいハンプティだが、実の娘には弱い、一緒に住み果ては
NY州立大学への学費まで払ってあげるのにジニーは腹を立てる。

しかし我慢が出来ないのはミッキーはキャロライナを見染め、悪い気がしない彼女はロマンスの悩みをこともあろうにジニーに相談する。

ウディ・アレンの主人公はいつでも純粋で自己中心的、他人がどう見ているか余り考えない。
悩みを打ち明けられ親身に面倒を見る振りをして二人の仲を裂こうとし、
若い恋人を手放したくないジニーはハンプティのヘソクリから400ドルも盗んで
高級懐中時計を贈ったりする。

明らかにこの映画の主人公はジニーで42歳のケイト・ウィンスレットの若い恋人の心をつかみ損ねる中年女性の焦りを好演している。

歌手でグラミー賞を取ったこともある36歳のジャスティン・ティンバーレイク。俳優歴は10年を超えたが上手いものだ。

金髪で前を大きく開けたブラウスで巨乳を覗かせるキャロライナ役のジュノー・テンプルのカマトトぶった純真さが魅力的。

82歳でオスカーの常連ウディ・アレンがヨーロッパ一周を終え、NYに戻り生まれ故郷のコニー・アイランドを舞台にしておかしな人間ドラマを描く。

平穏そうなストーリーの裏側に必ず殺人などに至る危険な関係を潜ませるのもいつもの手だ。

アレンの映画は面白いが、必ずしも商業的に成功するとは限らないジャンルフィルム。
16年のTVシリーズからアマゾンが制作を担当して以来、この映画でも25M(27億円)の制作費を出した「AMAZON STUDIO」のエンブレムが表紙を飾る。

撮影監督は3度のオスカーに輝き、「カフェ・ソサエティ」でもアレン監督と組んだヴィットリオ・ストラーロ。わざと鮮明なカラーを避けてくすんだ色で色調を整えた画面は変わっている。

6月23日より丸の内ピカデリー他で公開される

「レディ・プレイヤー1」(Ready Player One)(米映画):映画ファン層の内、ゲームに夢中の若者とクラシックフィルムをカルト的に愛する中年層、しっかり捉えたスピルバーグの勝算通り大ヒット

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4月1日のイースター週末BOのチャンピオン。
4月1日は復活祭、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるイースターホリデイの週末、
スティブーン・スピルバーグ監督の「Ready Player One」は4324館で公開され41.2M(木曜からスタートで4日間53M)。

Rotten Tomatoesで76%、出口調査(CS)で、 A- 評価。
海外市場は62か国が火曜から先行していて、128M。特に中国が18200館で上映し驚異の61.7Mを挙げたのを始め、韓国が8.1M,UKが7.3M,ロシアが6.1M、6.0 Mなど。
ワールドワイド総計は日曜までに181.2M(193億円)に達した。.

先週首位の「Pacific Rim: Uprising」もこの作品も海外市場は北米BOの倍以上を記録していることは注目に値いする。
この映画評は3月14日にブログで書いているが、アメリカの興行界は大不況。
「ジュマンジ」や「ブラック・パンサー」な大ヒットがあるが他の作品群との差が大きい。つまり一本尖塔が高く聳えるが裾野が広く低い。

だから、前年同週比で21.2%のダウン。全体でも前年に比べ3.8%の下落、3月単体では24.1%のダウンだ。

メディア・アナリストのポール・ダーガラベディアンは
「3月は荒れたBOだったが『Ready Player One』は4月の興行界に明るい希望を齎してくれた」と。
つまり、この映画を先頭にリードされ4月以降BOは大きく伸びるだろう。

長期低落傾向にあるハリウッド産業を救う作品、4月以降のハリウッドの行方を見据えて
コムスコアのポール・ダーガラベディアンのコメント、
「3月は荒れたBOだったが『Ready Player One』は4月以降の興行界に明るい希望の光を投げかけた」
を検証してみたい。

映画ファンのコア層は5つに分かれると言う。

スピルバーグはこの映画で2つの層に訴えている。
ゲーム感覚に溢れている若者たちとクラシックフィルムに固執する中年のカルト愛好者。
男性が中心の観客層だが、スピルバーグはこの2つの層の嗜好に映画を仕立てている。
これがこの作品のヒットした主要因だ。

この映画はアーネスト・クラインによる小説「ゲームウォーズ」(11)を映画化したSFアクション。
クラインは脚本家の1人だが小説で表現できることと映画でヴィジュアルの方がエキサイティングだと原作を離れる箇所も散見されると言う。

ゴーグルをつけたヴァーチャル世界VFXと現実世界のリアルなライブ描写を織り交ぜている。

近未来2045年のオハイオ州コロンバス、環境汚染や気候変動、政治の機能不全が原因となって、地球上の人口の大半がスラム街で暮らしている地球は荒廃したデストピア。
惨めな現実を逃れるのはオアシスでオンラインゲームに耽るのが一番の解消法。

人類の歴史を変えたと言われ、世界中の人々がアクセスする仮想ネットワークシステム「OASIS(オアシス)」に突如としてメッセージが発信される。

OASISの開発によって巨万の富を築いた大富豪のジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が死去し、OASISの隠された謎を解明した者に、
オアシスの所有権と2400億ドル(2兆5400億円)相当のハリデーの遺産が授与されると。
謎を追及するし積極的にレースに参加するのは
現実の荒れ果てたデストピアに幻滅してヴァーチャル世界に逃避する「オタク」の若者世代か

オアシスを共同経営していたオグデン・モーロ―など管理権を欲する大企業IOIの息の根がかかった人間(ベン・メンデルゾーン)もおり、
アノラック・ゲームは資本主義社会の現実世界をも巻き込んだ泥仕合の様相を呈し始める。

主人公はメッセージを見た「オタク」グループのリーダーで、孤独な少年ウェイド・ワッツ(タイ・シェリダン)は謎の解明に挑戦したいと手を挙げる。
ワッツにはいつもゲームを一緒に競う仲間がいる。
キュートなアニメスタイルのArt3milsのクーキー(オリビア・クック)巨大な黒人天才医学者アエック(ルナ・ワイツ)、に加えて
日本人2人、ダイトー(ウィン・モリサキ)とショトー(フィリップ・ザオ)が入っているのが嬉しい。

だがダイトーはオンライン企業IOIの放した殺し屋に命を奪われる。

オアシスの秘密を解く三つの鍵を巡り、仮想空間でアノラック・ゲームが行われウェイドは仲間とともに、オアシス内に隠された「イースターエッグ」を探し出す冒険に乗り出す。
問題の中に多くの80年代の映画が含まれる。
故ジェームズ・ハリデイはカルト的に80年代のポップカルチャ・カルチャーを愛していた。

最初のゲームはカーレース。
ウェイドの車はバック・トゥ・フューチャーのガルフ・ウィングの2シータ、「デロリアン」だ。斬新なデザインで注目を浴びたが」・しかし今見ると完璧にクラシックかーだ。

作中のゲーム世界には、アメリカはもとより日本のアニメや映画、ゲームに由来するキャラクターやアイテムなどが多数登場する。

例えば作者本人が気にいっていない映画とは?の答えは、
スティブーン・キングス原作でスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」
5人が訪ねたさびれた雪に閉ざされたリゾートホテルに双子の姉妹が現れ、追いかけたアエックは突然の泥水の奔流に溺れる。

蘊蓄やトリビアを試されている。
ガンダムやマッドマックスやバットモービルなどは大丈夫だが「アキラ」に登場した金田のバイクなどは知らない。
前後の脈絡なしに「ローズ・バッド」が出て来るがオースン・ウェルズ監督主演の1941の映画で新聞王の残した謎の言葉だ。
だが75年前の作品のキーワードなど誰が知っているのだろうか?比較的新しいデロリアンだって今の若者は知らない。

この映画はスピルバーグの原点帰りだと言うこと。初期の作品はSFアドベンチャー一色だった。
「ET」「未知との遭遇」「レイダーズ」「インディ・ジョーンズ」シリーズなど強烈なインパクトがあった。
この映画はその初期作品への」原点帰りだ。
得意中の得意の分野で充分に腕を振るったのも大ヒットに繋がった。

カルト的にクラシックフィルムを求めトリビアを愛する層には具体的にフーテージを見せ感動を呼び起こす。
映画ファン層の5つの内から2つのグルー-プをしっかり抑えられれば映画はこのように成功だ。

4月20日より丸の内ピカデリー他で全国公開される

「ラプラスの魔女」(日本映画):自然現象で殺人が出来るのか?未来を予知できたのは何故?東野ミステリーの理解を超える連続殺人事件の謎。

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原作となった東野圭吾の本は2015年の発売と同時に読んだ。
面白かったが映画化は難しいと思った。

理系の東野は蘊蓄をこめて ガリレオシリーズのような物理的な要素とミステリーを織り込んだ多くの短編で単純に優しく科学的に謎解きをしてくれる。

物理的要素が超能力的なイメージになると映像ではミスリードするし、読書と違いロジカルに考えなくなる。

「もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態がどうなるか完全に予知できる。」

フランス人数学者の「ピエール・シモン・ラプラス(1749-1827)」が提唱した「計算によって未来が予測できる」と言う仮説は「ラプラスの悪魔」と呼ばれ、東野の原作の基本スタンスでこの映画は一つの具体的なサンプルだ。

初老の男が妻と寛ぎに来た温泉地で硫化水素中毒に罹り死亡する。
変死と見て捜査に当たった刑事、中岡祐二(玉木宏)は、中毒死は若い妻の遺産目当ての殺人ではないかと疑う。

警察の依頼で詳しく調査した地球化学を専攻の青江修介教授(桜井翔)は事件性を否定する。
気象現象の一定しない屋外で致死量の硫化水素ガスを計画的に吸引させることは不可能だと。

数日後、別の都市で同じような硫化水素中毒による死亡事故が発生したが、
その被害者と温泉地で中毒死した初老の男は顔見知りだと分かる。
しかし青江教授は屋外でガスを吸引させ殺すことは不可能と同じ結論を出す。

現場で起こる総ての自然現象を予知できれば、連続殺人と言うことになるが、青江は未来を予知する知性など「ある筈がない」と断定する。

そこに若い女性、羽原円華(広瀬すず)が事件現場に現れ、そこで起こる自然現象を言い当てる。
「ラプラスの魔女」ではないか。

円華は甘粕一家が流化水素中毒死した中、一人生き残り失踪している甘粕謙人(福士蒼汰)を探していて、青江教授に協力を依頼する。

小説では円華の知見や予知能力を読者に論理的に納得させるが、そんな余裕のない映像では円華は超能力者のように見えてしまうのが難点。
そして円華がサイキックになってしまうと映画は取っ散らかってしまう。

三池崇史監督は細部に拘らずガムシャラにストーリーを進めるので、円華の説明不足は免れない。
登場人物も多く相関関係も複雑。
2時間かけても舌足らずの箇所が多々あり、
「ラプラスの魔女」の看板だけが独り立ちして睥睨し観客の理解を阻害する。

僕も原作を読んでいたので付いて行けたが三池監督の話の展開をどれだけカバーできるかが問題だろう。

主演の桜井翔はどう見ても理系の大学教授とは思えず、謎の女の広瀬すずも魔力を感じられない。

東野作品の中でも500ページを超す大分な長編小説だけに脚色の八津弘幸はもう少し整理をしてミニマムでこの作品のエッセンスを映像化して欲しかった。

5月4日よりTOHOシネマズ日比谷他全国公開される。

巨大な損失を隠し続けた旧経営陣と真相追及のさ中、突如解任された雇われ英国人社長、マイケル・ウッドワードの反撃

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「サムライと愚か者―オリンパス事件の全貌―」(Samurai and Idiots)(独・仏・英・日・デンマーク・スェーデン映画):日本を代表する多国籍企業オリンパスの「飛ばし」の不正経理で
昨夜(4日)は試写の後、監督の山本兵衛、事件をスクープしたFACTAの契約記者山口義正、海外メディアの火付け役となったファイナンシャルタイムスのジョナサン・ソーブル記者、業界誌Lapis Worksで日本通のワク・ミラーなどの記者会見が行われた。

周知の通り、オリンパス株式会社の損失を「飛ばし」で隠ぺいした事件の闇に迫るドキュメンタリー。
世界に誇る日本の大企業が、10年以上にわたり巨額の損失を隠し続けてきた事実を解明する当事者たちの談話が面白い。

2011年4月にオリンパスの社長に就任したマイケル・ウッドフォード氏は、半年後の10月14日に開かれた取締役員会で解任される。
11年7月に月刊「FACTA」に同社の損失隠ぺい事件の暴露記事が掲載されたが、会社も日本のマスコミもその記事を黙殺。

ウッドフォードだけは事態を重く受け止め、真相を確かめようと奔走していた矢先の解任だった。
事件をスクープしたフリーの山口記者の話が一番興味深い。

山登りが好きな山口は山岳グループを作り暇になれば仲間と山を楽しんでいた。
11年初夏、尾瀬に行った仲間の1人がオリンパス社員で会社ぐるみの不正に悩み愚痴を零して居た。
話を聞いてやると喜々として損失を関連会社三社に「飛ばし」決算の数字に損失が現れないように隠蔽していて、それが10年も続いていると言うのだ。
雑誌社に持ち込んでも相手にされず唯一マイナーな「FACTA」のみが取り上げてくれたと言う。

雑誌FACTAのスクープと事件を解明しようとする英国人社長マイケル・ウッドフォードの不当解雇により、明るみになったオリンパス損失隠蔽事件。

日本有数の大企業の一つとして、創業100年近くもの歴史を誇る多国籍企業オリンパスで起きたことは
FTのジョナサン記者の記事で海外に飛び火し、
英国SFO(重大不正捜査局)や米FBI(連邦捜査局)を巻き込み、
世界のメディアでも大々的に報道され、ようやく日本のマスメディアも大騒ぎをする。

オリンパス経営陣は「飛ばし」などどこの企業もやっており、何が悪いんだと開き直る風情も見えるが、やはり隠蔽していると言う自覚があり最後は頭を下げる。

ウッドワードに言わせると、日本人は両極端だと「正義を貫き企業の諸悪を内部から告発する侍と波風立てずにお上の命令通り唯々諾々としたがうバカ者グループ」
ここからタイトルが付いた。

プロデューサーの奥山和由が記者会見場に来ていて
「オリンパスで起こったことは松竹で奥山父子を襲ったことと同じ現象だ」
だから制作費を負担したと言う。

ただその描写と隠蔽術については異論があるが、山本監督が自分の作品だと拘り受け付けて貰えなかったと。

監督は本作が劇場公開長編映画のデビューとなる山本兵衛。NYUで映画を学び、短編などを手掛けて来たが初めての長編に未熟な部分が散見されるので僕は質門をした。

ニュースや新聞雑誌など報道された面は網羅し整理されているが、いずれもセカンドハンドだ。
ファーストハンドで当事者へのインタビューや映像が欠けているのではないか。
特にオリンパス経営陣の言動は記者会見のみだ。
ドキュメンタリは是々非々でいかねばならないとしたら、ウウォーターフォードだけでは片手落ちだと。
監督はお願いしたのだが実現しなかったと言い訳をしている。

ジャーナリストの山口義正が最後に爆弾発言をする。
今オリンパス内部から情報を取っているが、中国へ進出する子会社の展開をスムーズにするため
賄賂を送っていると告発を受けている。スクープ記事になるだろう。
隠蔽でこれほどの打撃を受けているのに、オリンパスの企業体質は少しも変わっていない。

各国のドキュメンタリ映画祭で称賛され、ようやく本国で凱旋興行に漕ぎつける。

5月より渋谷イメージフォーラムにて公開される

「ガザの美容室」(Degrade)(パレスチナ・仏・カタール映画):パレスチナ自治区、ガザ。クリスティンが経営する美容室は、イスラエル軍と「ハーマス」との熾烈な戦火をよそに女性客でにぎわっている。

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2年前、2016年の第68回カンヌ国際映画祭批評家週間に出品された。
監督はガザ生まれの28歳の若い双子のタルザン&アラブ・ナサール。

長編劇場用作品は初めてのナサール兄弟監督は、制作現場の経験も乏しくご都合主義で陳腐な作りの未熟な作品だ。
しかし我々日本人としては弱者パレスチナ「ハーマス」への同情で「判官贔屓(ほうがんびいき)」をもよおし応援したくなる。

イスラエルとハ-マスの銃弾が飛び交うガザで、戦火を逃れ、女性だけ13人が閉じこもる別世界「美容室」を舞台にした実験劇場の感は免れない。
だから抽象的で暗喩的な構成でリアリティはまるで無い。

パレスチナ自治区、ガザ。クリスティンが経営する美容室は、女性客でにぎわっている。
美容室の店主、クリスティン(ヴィクトリア・バリツカ)は、ロシア人でパレスチナ人と結婚してガザに住み、経営するサロンをしっかり取り仕切っている。

クリスティンのアシスタント・スタイリストのウィダト(マイサ・アブドゥ・エルハディ)は若くて美人、だが恋人で、マフィアの一員アハマド(タルザン監督が演じる)との関係に悩んでいる。アハマドはライオンの子どもを盗んで店の外へ繋いでおいたので大騒ぎになる。これは実話だそうだ。

亭主の浮気が原因で離婚調停のエフィティカール(ヒアム・アッバス)は、弁護士との相談に支度中。
戦争で負傷した兵士を夫に持つお節介なサフィア(マナル・アワド)は、夫に処方された薬物を常用するドラッグから抜けきれない。

敬虔なムスリムであるゼイナブ(ミルナ・サカラ)は、コーランの教えを忠実に守り、これまでに一度も髪を切ったことがなく、女だけの美容室の中でも決してヒジャブを取ることはない。

臨月の妊婦ファティマ(サミラ・アル・アシーラ)、や離婚経験のある図々しい、ソーサン(ウェダッド・アル・ナサル)。

結婚式を今夜に控えたサルマ(ダイナ・シバ―)は、式の準備の身支度に余念がない。美容室にいて当然なのはサルマ位で、何で麻薬中毒者や弁護士との打ち合わせの離婚準備の女や出産間際の女がいるのか(実際美容室で出産する)?

サルマに付き添う母親ワファ(レーム・タルハミ)はひどい喘息を患っている。
花婿の母親、サメーハ(フダ・イマム)は意地悪で批判的、それに新郎の妹マリアム(ラネム・アル・ダオウド)まで付いて来ている。

それぞれの事情をもつ、個性豊かな女性たちで「女性国家」を作っている。

美容室はまるでトーチカ、要塞で一歩外ではイスラエル軍とハーマスの熾烈な戦闘が繰り広げられ、機関銃やロケット砲、迫撃砲の轟音だけが響く。

出来は悪いが、古代ギリシャのアリストパネスの喜劇「女の平和」のエピゴーネンの感がある。

6月23日より新宿シネマカリテ他にて公開される。
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