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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ラッキー」(Lucky)(アメリカ映画):主人公、ラッキーと名を借りた、ハリー・ディーン・スタントンの自伝映画の趣きがある。

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僕はハリー・ディーン・スタントンの大ファンだ。映画の冒頭で痩せた皺くちゃの骸骨のような老人がいきなりクローズアップで出て来るのでびっくりするがよく見るとスタントンだ。被っているストロウのテンガロンハットだけは馴染んだもので、ようやくスタントンだと認識する。

多くの人がそうであるようにスタントンのファンは1984年のヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」の妻を探してテキサス州の町パリを求めて砂漠をさまよう男トラビスはスタントンの熱演で観客の心に響いた。34年前のスタントンは58歳の若さにも拘らず尾羽打ち枯らしたラッキーのようだった。

スタントンは昨年9月15日にLAの病院で亡くなった。享年91歳。
この作品が遺作となるだけに穴の開くほど映画を見つめた。

主人公、ラッキーとスタントンのキャリアや人生やフィロソフィーは、この映画の中で重なる。つまりラッキーと名を借りスタントンの自伝映画の趣きがある。

神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで12時の目覚まし時計ラジオでベッドから出て、コーヒーを飲みタバコをふかす。
そして歩いて3分のいつものバー「エレインの店」でブラッディ・マリアを飲み、馴染み客たちと談笑する。

辛口の店主、エレインを演じるのは68歳のベス・グラント。髪を後ろでひっつめ大きなイヤリングをぶら下げ厳しい目付きでズバズバと客をやっつける。

そんな毎日の中でふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされた彼は、「死」について考え始める。

子供の頃怖かった暗闇、突然居なくなった100歳の亀、「エサ」として売られるコオロギ。
小さな町の、風変わりな人々との会話の中で、ラッキーは人生の終わりの「それ」を悟っていく。

少し嫌な場面もある。スタントンは第二次大戦で海軍に入り日本軍と戦い、沖縄戦を経験している。
バーの客としてたまたま立ち寄ったフレッドと話が合う。フレッドは退役海兵隊員。

「ジャップ」「ジャップ」の日本人侮蔑言葉が飛び交う。
サイパン島北岬のバンザイクリフで子どもを突き落として母親が後を追う話を冗談混じりでラッキーと話すのは我慢できない。

フレッドは「トップガン」でトム・クルーズの教官を演じたトム・スケリットで84歳になる。

脇役専門の俳優、ジョン・キャロル・リンチが、全ての者に訪れる「人生の終わり」を、スタントンの人生になぞらえて描いた初監督作品である。

リンチと言うからスタントンの親友、デヴィッド・リンチと関係あるかと思うが全く無い。

その映画監督、デヴィッド・リンチはラッキーの友人、ハワード役として出演。可愛がっていた100歳の亀、ルーズベルトが失踪したことを嘆き、ルーズベルトに遺産を相続させようとする。
実際、20歳の年齢差を越えてリンチとスタントンは長きにわたる友人で、彼らを当て書きした脚本は二人に共通する哲学や人生訓にで示唆に富んでいる。

オリジナル脚本を書いたのはローガン・スパークスとドラゴ・スモーニャで2人ともスタントンと親しい。ラッキーをスタントンで当て書は自然の流れのこと。

前述した第37回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」で主人公トラビスを演じ注目を浴びたことが契機となり、寡黙で笑顔を見せない芝居と飄々とした存在感がスタントンの専売特許となった。

ニコリともせず、町のフィエスタでマリアッチの演奏をバックにスペイン語の歌を聞かせてくれるサービスショットは嬉しかった。

3月17日より新宿シネマカリテ他で公開される

「君の名前で僕を呼んで」(Call Me By Your Name)(伊・仏・墨・米映画):北イタリアの避暑地で家族と過ごす17歳のエミオはアメリカの名門大学教授の父の考古学研究のインターンとしてやっ

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電通出身の田中洋・中央大学教授がフェイスブックに「電通OB会」と言うスレッドを持っているが、その中で嘆いているのは、
「東大京大の学生たちの志望ランキングでも広告業界の人気は急落。16年のランキングでは電通が14位、博報堂DYグループが22位に位置したが、17年は電通が39位、博報堂が38位へと転落している」
(因みに田中教授は京都大学卒)

電通は知識産業の会社で頭が良い社員、人材で成り立っているが、高橋まつりさんの「失恋死」を事実を検証もせず「過労死」と錯覚し認定した諸々の機関やマスメディアや世間の人々から罵詈雑言を浴びせられている。「ブラック企業」の汚名を着せられて以来、将来の社の根幹を揺るがす飛んでも無い事態を招いている。


1983年の夏、北イタリアを舞台に、17歳と24歳の青年が織りなすひと夏の情熱的な恋の行方を、美しい風景とともに描いたパピーラブの爽やかなストーリー。
17歳のエリオ・パールマン(ティモシー・シャラメ)は、今年も両親と共に北イタリアの豪邸のVillaで一夏を過ごしている。

家族はアメリカの名門大学で教鞭をとるギリシャ・ローマ考古学・教授パールマン(マイケル・スタルバーグ)の父と、何ヶ国語も流暢に話す母親,アネラ(アミラ・カザール)の一人息子。
エリオは、他の同年代の子供に比べて、文学や古典に親しみ、英語、イタリア語、フランス語を流暢に話し、音楽の編曲を趣味にするなど、知性豊かな少年だ。

この映画の基調となるトーンは「品格」であり、一家は紛れもなく上流家庭だ。
別荘(Villa)は豪邸で広い居間にはグランドピアノが置いてある。
飾り物では無く音楽の才能に溢れているエリオは退屈をするとピアノで演奏をし編曲もする。ピアノを弾きこなすだけでなく、ギター演奏の名手でもあるが、そんなことを誇る様子もない。

家族は相手によって英語、イタリア語、フランス語を自由に操る、知的教養的文化度の高い品格ある家族だ。

ギリシャ・ローマ考古学教授の父は毎年研究のインターンとして博士課程の学生を招くが、今年は24歳の大学院生オリバー(アーミー・ハマー)がやって来る。ユダヤ系アメリカ人と言う人種はペンダントで分る。エミオもユダヤ系だがイースターもクリスマスも楽しむ無宗教。

一緒に泳いだり、自転車で街を散策したり、本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすうちに、エリオとオリバーの間で相互に特別な感情が湧いて来る。

気怠い、のんびりとした誰もがやる気の無いような田園風景の中で毎日の生活はゆっくりと動いていて、二人の燃え上がったロマンスは待ち受けている様に嵌まり込む。

映画はエリオの視点で描かれる。

最初はオリバーが積極的で内気なエリオは目を反らし惹かれるけど近寄らない。

2人の年齢差は7歳。この年代では大きな差だが監督のルカ・グァダニーノは年齢差を意識させない演出をする。

「知らないことは無い?」
「大事なことを知らないんだ」(What it matters)
自分の恋心を知って欲しいエリオ。

憧れの気持ちに耐えられなくなり「告白」し積極的にオリバーに近づくエミオ。

「君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶんだ」

ふたりはやがて激しい恋に落ちるが6週間と言う時限装置付きの恋だ。

帰国の時に毎年、院生は言う「またな(Later!)」
オリバーが「またな!」と言ったことでエミオは怒り狂い日記に彼の非難を書き綴る。

自分の気持ちは抑えられず肉体関係は続く。

だがこれは単なるゲイ映画でも成人への通過儀礼映画でもない。
エミオもオリバーも地元イタリアの少女と寝るが物理的な接触だけで感情は互いに分かち合っている描写がクールだ。

夏の終わりとともにオリバーが去る6週間も終わりになる。

オリバーの乗った列車を見送る勇気が無いエミオ。そぼ降る雨空を見上げると涙がツーと零れる。

素晴らしい映画だ。

アンドレ・アシマンの07年の同名小説を原作に「日の名残り」「眺めのいい部屋」の名匠ジェームズ・アイボリーが脚色しプロデューサーを務める。

監督は「ミラノ愛に生きる」や「胸騒ぎのシチリア」などで知られるルカ・グァダニーノ。この作品が今までの中で抜きんでている。

主演は「インターステラー」のティモシー・シャラメットが17歳の少年エリオを
「コードネーム U.N.C.L.E.」のアーミー・ハマーが20代の大学院生、オリバー役。
2人ともイケメンで爽やかな男優だ。

3月4日のアカデミー賞に作品賞、ティモシー・シャラメットが主演男優賞、ジェームズ・アイボリーが脚色賞など主要部門にノミネートされているのも楽しみだ。

4月27日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される。

「ダンガル きっと強くなる」(Dangal)(インド映画):頑固おやじは,自分の果たせなかった夢を娘たちに託し,女子レスリングで世界を相手に金メダルを獲得する。

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この映画の主人公、マハヴィールを見ているとインド版「アニマル浜口」ではないかと錯覚する。
昨年古稀を迎えた浜口は、貧困な家庭で育ち少年の頃苦労しボディビルダーとなり金のためプロレスに転向し活躍する。
引退し「アニマル浜口レスリング道場」を主宰。
マハヴィール同様に長女、浜口京子を幼い頃から鍛え世界大会に常連の一流女子レスリング選手に育て上げる。
京子の戦うリングサイドで、大声で連発する「燃えろー!」、「気合だー!」が有名で流行語にもなった。

舞台は北インド、ハリヤーナー州。自らが果たせなかったレスリングのナショナル・チャンピオンへの夢を託すべく男児の誕生を願うマハヴィール(アーミル・カーン)の意に反して、生まれてきたのは4人続けて女児ばかり。

神は自分の願いを聞いてはくれぬのだと、女ばかりでほかに男の働き手がいない家族を養うために黙々と働く。

ある日、ケンカで男の子をボコボコにした幼い長女ギータ(ザイラー・ワシーム)・次女バビータ(ススハーニー・バトナ―ガル)の格闘センスに目から鱗、金メダルへの新たな希望を見出す。

彼女たちを訓練してレスラーとしてデビューさせるという道を思いつく。
突然、おまえたちはレスラーになれと命じられた長女ギータと次女バビータは、父親の命令には逆らえず、いやいや筋トレやレスリングの稽古を始める。

インドの田舎の常識では、女の子がレスリングをするなどとんでもない。道場へは門前払いされてしまう。そこでマハヴィールは畑の一部をつぶし、土を入れてインド伝統の泥レスリングの土俵をつくる。

逃れるため色んな言い訳にも、マハヴィールは聞く耳持たず、こうと決めた頑固親父の絶対命令は着々と進行し、やがて娘たちも理解し出場する試合でソコソコの成績を収められるようになる。

映画の進行はマハヴィールの甥っ子、オムカル(アバルシャクティ・ウラーナー)のユーモラスな語り口で進行する。オムカルは子ども時代から大人になっても2人について回り時には稽古相手になりボコボコにされる。職も持たず家族も持たない自由人の存在も観客にとっては不思議だ。

インド映画と言うのは簡単に予見できる。
物語りは歌と踊りに載せた「サクセス・ストーリー」でエンディングはハッピーエンド、必ず悪者が出て来て最初はやっつけられるがどんでん返しで退治する。

一流選手に育った長女ギータ(ファーティマ―・サナー・インク)と次女バビータ(サニャ―・マルボートラ)は国立スポーツアカデミー(NSA)に入所を許され国費でトレーニングを受けることになる。目指す大会は2010年の「コモンウェルス大会」

日本人には知られていないが僕はNY時代にヴァンクーバーで開かれた大会を覗いたことがある。大英帝国時代の植民地はコモンウェルスとして緩やかな連携をとっているが参加国は107か国。クリケットなどが人気種目だ。

悪役はNSAのコーチ。インドは弱い、コモンウェルスで何とかしてメダルを取りたいと2人に減量を命じ55キロ級から51キロ級へ落とせと言う。

マハヴィールは落とす必要なしと、腹ペコで出て来た2人にムシャクシャ食わして帰って体重が増えるには大笑いする。父親は出入り禁止になる。

父親がヴィデオで研究し相手の攻略法を指示する。コーチといつも逆で「攻めろ」の時は「守れ」だ。
父親の言いつけを聞いてギータは決勝まで勝ち進む。

対戦相手はオーストラリの茶髪の選手。デブでどう見ても65キロ以上ありそうだ。

悪役コーチは父親をアリーナの用具入れに閉じ込めてリングに顔を出させない。
ギータは父親が見えなく不安だが
ファイナルセットで1-5であと数秒の時に大技で5点を稼ぎ大逆転!表彰台でインド国歌が流れるのを閉じ込められた用具室で聴くマハヴィールはハラハラとうれし涙。

実話だけにボリウッド風味付けにも充分耐えられるエンターテインメントであり、
それに男尊女卑の保守的インド社会にウーマンパワーをテーマで殴り込みをかけるスポコン映画に仕上がっている。

主演の頑固一徹パパ、マハヴィールにはインドの国民的スターで「きっと、うまくいく」「PK」などのアーミル・カーン。

監督・脚本はニテ―シュ・ティワーリー。

蛇足だが通常3時間も4時間もかかるボリウッド映画なのに2時間20分と「短く」あげてくれるのも嬉しい。

4月6日よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開される

「女は二度決断する」(In The Fade)(独映画):家族とともに幸せの絶頂にあるカティヤが、極右のネオナチの爆弾テロで最愛の夫と息子を失い絶望のどん底に叩き落される

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トルコ系ドイツ人の巨匠、ファティ・アキン監督の外国人特に難民を襲う極右翼(ネオナチ)のテロ事件にインスパイアされて制作されたサスペンスドラマ。

昨年の第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映されてパルム・ドールを争い、ダイアン・クルーガーが女優賞を獲得した。本年度のゴールデングロブ賞で外国語映画賞を獲得、3月4日のアカデミー賞ではノミネーション中最右翼に挙っている。

ドイツのハンブルクで暮らす純粋のドイツ人、カティヤ(クルーガー)とトルコ移民のヌーリ(ヌーマン・アチャリ)は、カティヤの学生時代に知り合い愛し合って結婚する。
ヌーリは、以前は麻薬売買で刑務所に入っていたが出所後は足を洗い、トルコ人街で外国人相手にコンサルタント事務を開き、カティヤも経理を手伝う。

結婚生活は息子ロッコにも恵まれ一家は幸せに暮らしていた。
しかし、ヌーリの事務所前で自転車に積んだ釘爆弾が爆発し、彼と6歳のロッコ(ラファエル・サンタナ)が命を落とす。

警察はイスラム教徒のテロかギャング団の仕業と疑うがカティヤは、ドイツ人のネオナチによる移民や難民を襲うテロだと推察する・

彼女が確信した通り、ドイツ人、エダ・メラー(ハンナ・ヒルスドルフ)とアンドレ・メラー(ウルリッヒ・ブラントホフ)が逮捕される。

この事件の顛末を伝えるイントロ部分はカティヤの嘆きも含め淡々と描写される。

テロ現場より盛り上がるのは法廷での対決だ。
カティヤは友人の弁護士ダニーロ(デニス・モッシ)が丁寧にロジカルに犯人夫婦を追い詰める。犯人の父親、ユルゲン・ミラー(ウルリッヒ・トゥクール)が自宅の納屋で爆弾製造の素材を見つけ警察に通報したことがあり、カティヤに有利に審議は進められる。
「愛する二人を残虐に殺した夫婦を極刑にして欲しい」

しかし、夫婦の弁護士、ハーバーベック(ヨハネス・クリシュ)は敏腕で悪賢い。
カティヤの部屋に少量のコカインが発見されたことで爆弾を積んだ自転車を曳いていた妻エダを目撃したと言う証言は信憑性に乏しい。
納屋に鍵が掛かっていないから爆弾製造は夫婦以外の他人かも知れない、夫婦はその時ギリシャへ旅行中だったとギリシャの極右団体の仲間がアリバイを主張する。スキンヘッドに鋭い目つきでハーバーベック弁護士は一つ一つカティヤの証言のあげ足を取る。

判決は証拠不十分で夫婦は無罪、しかし被害者が移民、加害者は純粋のドイツ人と言う背景が裁判長のレイシズムを煽った結果ではないかと想定される描写だ。

大喜びで飛び上がる夫婦を憤怒の形相で見詰めたカティヤはある決断をする。
第三パートはガラリと変わって夫婦をギリシャまで追っていくカティアの執念を描くサスペンスになる。
最愛の2人が居なくなった人生は彼女にとって意味が無い。

トルコからの移民を両親に持つファティ・アキン監督が、ドイツの極右テロ組織・国家社会主義地下組織(NSU)が00~07年に起こした人種差別テロ事件に着想を得て脚本を書き監督、製作した。

「愛より強く」(04)は「そして、私たちは愛に帰る」(07)へと続くファティ・アキン監督の企画、「愛、死、悪」をテーマにする三部作の最後の作品ではないかと僕は見る。

カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭それぞれで受賞歴を誇るトルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督の渾身のサスペンスドラマだ。

アキン監督の演出も脚本も秀逸だが唯一気に入らないのが撮影だ。
手持ちカメラなので画面がユラユラ動き、「ドグマ95」に従っているのだろうか,照明は使わず自然光で絵は暗い。音もブームで拾うので聞き取れない所もある。

主演のダイアン・クルーガーはドイツ・ハーバー生まれの41歳。ヨーロッパ映画「トロイ」で世界の注目を集め、「ナショナルトレジャー」シリーズなどのハリウッドやで活躍し、英語、フランス語、ドイツ語を操るクルーガーが、ネイティブのドイツ語を使った演技に初挑戦と言うのも面白い。

共演に「顔のないヒトラーたち」などのヨハネス・クリシュが冷酷な弁護士役を好演し、「白いリボン」などのウルリッヒ・トゥクールが人の良い犯人の父親を演じる。
ヌーリ役のヌーマン・アチャリは82年にトルコからドイツに移住してきた俳優。

4月14日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される

「ラーメン食いてぇ!」(日本映画):世界一のラーメン屋を目指す「青蘭」は息子たちが背を向ける店主・紅烈士の孫娘、女子高生・茉莉絵と親友のコジマがラーメンに取り組む

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新入社員、高橋まつりさんが自死して以来、母,幸美さんは「過労死遺族代表」としてそこここで派手な記者会見をして騒いでいる

直近では「起訴猶予にした検察の処分は不当」 と当時の上司を起訴猶予にした検察の処分は不当だとして、「東京検察審査会に審査を申し立てた」ことを明らかにした。

幸美さんが騒ぐ度に株価は下がり、
果ては2018年就職希望学生による企業人気ランクは凋落の一途。
 
東洋経済(後期調査ー試験日に近い時点)によると
電通74位 博報堂 20位
僕が知っている電通は常にトップ10に入っていた



無料で閲覧できるウェブコミックは聞いたことがあるが見たことはない。
原作は PV数100万超えを記録した林明輝のWEB漫画「ラーメン食いてぇ!」を熊谷祐紀が脚色し監督した実写映画化した。

ストーリーは3人の主人公のバラバラなエピソードが最後に一本に収斂して伝統ラーメンの暖簾を守る。

先ず登場するのが
長年ラーメン作りのベストパートナーだった妻を亡くし、人気ラーメン店「青蘭」を畳もうと悩んでいる店主・紅烈士(石橋蓮司)。

心ない高校の同級生(誰か分からない)の男女関係の噂がSNSでばら撒かれ自殺未遂で入院中している女子高生・茉莉絵(中村ゆりか)。

そしてガラリと変わった、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区でのテレビ取材中、事故に遭い、一人荒野をさまよう羽目になった料理研究家・赤星亘(片桐仁)。極寒の中、飢えた赤星は「青蘭のラーメン喰いてぇ!」と絶叫する。

物語は孫娘、入院中の茉莉絵にラーメンのスープを見舞いに持参する紅烈士から始まる。女子高生を見舞いに行くのに花やケーキでなく、
「自分の中華店のスープを持って行くかよ」と思うのは僕だけではあるまい。

茉莉絵は祖父の店のラーメンやスープは当然何度も味わっている筈。

それが飲んだ瞬間、感動して「私にラーメンを教えて!」と懇願するのだから短絡的過ぎて、訳が分からない。

紅の長男も次男もちっぽけなラーメン店など継ぐ意思はない。
孫娘の願いは一も二も無く紅に受け入れられる。

紅の亡き妻と見た「世界一のラーメン屋」(ラーメン如きでオーバーな)を目指してもう一度挑戦できる。
茉莉絵は親友コジマ(葵わかな)を引き込んで「青蘭」で紅の指導を受けながらラーメン作りの修行に入る。

青蘭のラーメンは何が人気で世界を目指すほどのレベルか納得性が無い。
材料に特殊なものを使うとか隠し味の秘密とか何かありそうだが、画面に写るラーメンは少しも美味しそうでも特別でもない。フツーの中華そばじゃないか。

一杯のラーメンが、3人を思わぬ形で結びつけ、変えていく展開も想定内でクリシェだらけ。。

主人公の孫娘をTVドラマで活躍する中村ゆりか、
親友のコジマをNHKで放送中の連続テレビ小説「わろてんか」ヒロインの葵わかな、
「青蘭」店主紅を石橋蓮司、料理評論家の赤星を片桐仁らが共演する。

熊谷祐紀が脚色をして演出をしているが、
どうも未熟でそこここでボロを出し、お粗末な失敗をしている。
TVドラマや短編を撮っているが長編劇場映画はこれが初めて。
完成試写を見て反省点は山積みだろう。

コミック原作者の林明輝の実家は高崎で実際ラーメン屋を出しており、映画の撮影はその狭い店で行われた。間口1間テーブル席を置く余裕もなくカウンターも8人ほどの店だ何が「世界一」かと噴飯ものだ。
子どもの頃からラーメン作りの中で育った林のコミックは細かくレシピなどもあるが、映画の中ではどこでもある普通のラーメンしか紹介されず差別化や特異性も出ていない。

3月3日より新宿武蔵野館他で全国公開。

「ミスミソウ」(日本映画):東京からの転校生、春花はクラスメイトから「部外者」として、中傷、苛め、暴力、果ては家族への危害を受けながら耐え抜き、そして遂に堪忍袋の緒が切れて凄惨なリベンジに転じる。

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カタカナの題名「ミスミソウ」は三角草のこと。別名「雪割草。葉は常緑で三角形に近く三つに分かれている。 色は白、紫、ピンク色などがあると言うが映画の中では黄色の花だ。
冬の間に雪の下で蕾をつけ厳しい季節を耐え抜いて雪を割るようにして小さな黄色の花を咲かせる。中傷、虐待、苛め、暴力、果ては家族への危害を受けながら耐え、そして爆発してリベンジに転じる。

銀行員、半沢直樹の「倍返しリベンジ」がトラウマを抱えて現代人にウケているが、苛め抜かれたうえに、両親を焼き殺され妹が火傷でコーマ状態に突き落とされた主人公野崎春花がついに切れて、怒りを爆発させリベンジに走る様は凄まじい。
いくらなんでもここまでやるかと、唖然とする。春花は中学生だぜ。

20年ほど前に深作欣二監督出演に藤原竜也、前田亜季主演で「バトル・ロワイヤル」言うR15の映画が大ヒットした。
これも中学生同士の殺し合いだがゲーム感覚でリアリティに乏しかった。
「ミスミソウ」学校での苛めから極端に発展したものだが現代社会でありうることとして身の毛もよだつ映画だ。

映画の冒頭、下校しようと支度をした春花は自分の下駄箱をジーっと見つめている。
東京から田舎に転校してきた春花は「部外者」として扱われ、壮絶なイジメを受けていた。
下駄箱に入れた靴が無くなっている。仕方無く「上履き」のまま林の中の雪道をトボトボ歩いていると、待ち構えていた苛めっ子グループの面々。

クラスの女王的存在、小黒妙子(大谷凜香)の取り巻きは深く掘った穴に春花の靴を放り込むと春花を穴の中に蹴込み泥や石をを投げつける。
男子生徒もまじえた妙子のイジメグ軍団による嫌がらせは日に日にエスカレートしていった。

ホームルームの担任、南京子先生は「苛め」はとうの昔に知っている、しかし巻き込まれたくない一心で「見て見ぬふり」をし、生徒や親たちに責められると口から「吐く」特異体質。京子先生も学生の頃同じ苛められた体験者だった。

春花の唯一の味方は、同じように東京から転校してきたクラスメイトの相場晄(清水尋也)の支えがあるから必死に耐えてきた。

2人で外出し帰宅しようとすると、春花の家が激しく燃え上がっている。両親は焼死し炎の中に飛び込んだ晄が焼死寸前の妹を助け出すがコーマ状態でICUで死と戦う。
亨が春花の家を覆い尽く。幼い妹、祥子は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。思いもよらない悲劇に遭遇した春花の心は、崩壊する 。

苛めの構造は興味深い。春花が転校して来る前は「うざったい」佐山流美(大塚れな)だった。だから春花が両親のすすめで不登校になると妙子は流美を苛め始める。
流美は過激な行動を誇示しなければ自分の身が危ないと、春花の家に放火しようと提案しグループから賛同をうると灯油を運び春花家に向かう。

やがて事件の真相が露見することを恐れたイジメっ子達は春花に自殺するよう強要するが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったイジメっ子達に己の命を賭けた凄惨な復讐を開始する。

残酷なのは目をナイフやボウガンの矢でくり抜き、更に腹を短刀で抉られるのと同じに即死では無いから苦しみのたうちまわりながら血を流し徐々に死んでいく。

春花の凄絶なリベンジ現場の背景に厳しい冬を耐え抜き雪を割るようにして咲く花、三角草(ミスミソウ)が真っ白な雪をバックに可憐な美しい黄色の花をつけて見守っている。
 
主役の17歳の山田杏奈が「ああ荒野」や「野球部員、演劇の舞台に立つ」なその端役を経て映画初主演。美人ではないが芝居はしっかりしている。

主人公・春花を学校で支えている唯一の味方・相場晄役を、映画「渇き。」、「ちはやふる 上の句/下の句」などのひょろりと背の高い清水尋也。

監督は映画美学校卒で35歳の 「ライチ☆光クラブ」「先生を流産させる会」など少年少女を主人公としたクライムサスペンスの作品を撮ってきた内藤瑛亮。

原作は「ハイスコアガール」「でろでろ」などの押切蓮介の人気サスペンスコミック。

随分と怖い思いをしながら映画を見終わる。中学生ってあどけない顔をして大人顔負けの冷酷な殺人鬼になれるんだ。

4月7日新宿バルト9他全国公開される。

「不能犯」(日本映画):赤く光る妖しい瞳とセクシーなイケメン、不気味な能力で人の心を操り、しかも犯罪を立証できない黒いスーツの男、宇相吹正

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昨日(10日)昼は傘寿を過ぎた老人たちが11人も外人記者クラブに集まりランチとビールワインで談笑し午後の3時間余りを楽しく過ごした。
1961年東京大学文学部社会学科卒は30余人いたが、その1/3が集まるとはたいしたものだ。この年だから当然鬼籍に入った人も5人いる。
夫々の分野で位人臣を極めた人々だ。

過去形にしてはいけない。弁護士の2人は現役だし、企業の社外取締役やコンサルタントをしているのも2人、引退した大学教授の1人は東欧のある国と日本の友好協会会長をしている。

老人は皆元気だ。
一番若い僕だけがパーキンソン病と緑内障で手足と目が不自由で杖を突いてヨタヨタしているので一番の年寄に見える。

しかし僕には誇れるNPO法人「子どもにえがお」理事長の肩書がある。この同窓会の2人、元野村証券副社長のI君と元横河電機常務のT君に理事になって貰い寄付集めに昔取った杵柄を使わせて貰っている。

それにしても慈善団体として名前を変えて(変えさせられ)知名率がゼロになって寄附が集まらない。新聞広告でもモトが取れなく赤字になる。

僕は買い貯めた電通株を売って活動資金としてかなりの額を投入しているが、新入女子社員の自死以来「ブラック企業」の汚名を着せられ株価は1/3も下落し売るに売れず難平買いをして更に値が下がり傷口を広げている。
これで自死した女子新入社員高橋まつりさんの母親、幸美さんがそこここで派手な記者会見をして騒いでいる。

昨年暮れには「起訴猶予にした検察の処分は不当」 と当時の上司を起訴猶予にした検察の処分は不当だとして、「東京検察審査会」に審査を申し立てた。
元上司は事件以来ノイローゼで出社もままなら辞職願を出して退社している。
東京地検審査会への申し立ては「死者に鞭打つ」冷酷な仕打ちだ。
審査会のメンバーは市民11人、皆素人で法律の知識は皆無だ。
裁定の基準は世論とかマスメディアに頼りきりで、電通に同情する人は皆無だろうと恐れる。

もしここで再告訴が認められればまたもや「電通ブラック企業」の非難中傷の渦に巻き込まれる。
それして幸美さんが騒ぐ度にマスメディアは大々的に報道し、株価は下がり、
僕の主宰するNPO法人「子どもに笑顔」(東南アジアに日本人医師団を派遣して兎口の子どもたちに無料手術を行う)は巻き添えを食らって存亡の危機を迎えている。


何やら意味不明のタイトルで話題にもなっている。
昨日(10日)の夕刻(5時35分)に品川T・Joyまで出かけた。

上映開始が2月1日だから2週間近くになるがスクリーン10は狭いながらも6割の入り。松阪桃李がまたヘンテコなキャラクターを演じ沢尻エリカの刑事が追う。

最初に字幕で不能犯(ふのうはん)の説明をしている。
刑法学上の概念の一つで、行為者が犯罪の実現を意図して実行に着手したが、その行為からは結果の発生は到底不可能な場合をいう[

冒頭。遠景で街路脇の電話ボックスが見え、若い女性の会話。
「電話ボックスの男って知ってる?ボックスに殺したい人のメモを残しておけば殺してくれるんだよね」
「あなたは人生の終わりについて考えたことがありますか?」と
黒いスーツ姿の宇相吹正(松阪桃李)の声と顔のクローズアップ。

赤く光る妖しい瞳とセクシーなイケメン、不気味な能力で人の心を操り、しかも犯罪を立証できない男、宇相吹正。

大都会のど真ん中で連続変死事件が立て続けに勃発し、その現場には決まっていつも黒のスーツを着た男の姿が目撃されていた。

その男は宇相吹正(松坂桃李)で、「電話ボックスの男」とSNSで話題になっている。
ある特定の電話ボックスに殺人の依頼を貼るだけで必ず遂行されると噂されていた。実際に標的は100パーセントの確率で命を落としているが証拠や犯人像は掴めないまま。死因は病死や自殺に事故と、いずれも立件できないようなものばかり。

そんな不能犯・宇相吹のもとに、愛憎や嫉妬、欲望にまみれた人々が今日もやってくる
果たしてその手口は?目的は?初めから観客は分からないことだらけ大変だ。
何度も変死事件現場で宇相吹は目撃されながらも、誰もその犯行を立証できない。

警視聴は宇相吹を任意で拘束し、夜目刑事(矢田亜希子)が彼の取り調べにあたるが、次第に夜目の様子がおかしくなる。
引き継いだ多田友子刑事(沢尻エリカ)と部下の百瀬刑事(新田真剣佑)は宇相吹を追及する。
宇相吹は赤く光る目で見つめるだけで人の心を操れるが、唯一効かないのが多田刑事。

更に日本中を騒然とさせる連続爆破事件が勃発するが、多田は宇相吹が関連していると見る。

「グランドジャンプ」連載の宮月新・原作、画・神崎裕也の人気コミック「不能犯」人気コミックを実写映画化したサイコスリラー。

やたらと色んなキャラを演じる松坂桃李が主演、久しぶりの沢尻エリカ街路共演。
他に「ちはやふる」の新田真剣佑や「帝一の國」の間宮祥太朗が脇を固める。

監督は「ある優しき殺人者の記録」「貞子vs伽椰子」などの白石晃士。

不能犯では犯罪的結果の発生は意図しているが、その行為の性質上当該結果を発生させることがないなどとご託を並べられても映画としては興奮しないし面白く無い。

TOHOシネマズ日本橋他全国公開中

「ロンドン、人生はじめます」(Hampstead)(イギリス映画):ロンドンの高級住宅街の片隅に手作りの掘立小屋に住むホームレスと豪華マンションの富裕な未亡人とのロマンス

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映画の原題の「ハムステッド(Hampstead)」は日本人に知られていないので邦題で、愚にもつかない詰らない説明のタイトルをつけた。

欧米人なら著名なロンドン中心部にある地区で、広大な公園「ハムステッド・ヒース」と、お洒落なショップなどが並ぶ「ハムステッド・ハイ・ストリート」を中心にした緑の多い「高級住宅地」として知られている。
言って見ればNYのセントラルパークを見下ろすCPS(セントラル・パーク・サウス)や東京の田園調布かLAのベルエアのような金持ちが住む街なのだ。

手つかずの原生林が残る風光明媚なロンドン最大の公園「ハムステッド・ヒース」の自然美に魅了され、古くから作家や詩人が暮らした場所としても有名で、今でも著名な俳優やミュージシャンなどセレブが多数住んでいる。

また、数々の小説や詩、絵画のモチーフになっている。
例えば、映画「ノッティングヒルの恋人」(99)のロケ地のとしても有名だ。

ロンドン中心部の高級住宅街、ハムステッド。

主人公のエミリー(ダイアン・キートン)は夫の死後も、公園を見下ろす「高級」アパートに住んでいる70歳を超える老女。

夫が死んで判明した幾つかの浮気も多額の借金も出て来るし、滞納していた税金やアパートの管理費も払えず立ち退きをせざるを得ないと思っている。

一見富裕な未亡人で気ままな一人住まいと言うとカッコ良いが借金のことを考えれば気もそぞろ。
昼はチャリティで支援者から寄付された古着を商売として過ごしている。基本が慈善活動だからそ生活費を賄うのは苦しく、日々のお金の工面と借金返済に追われている。

親友のフローラ(レスリー・メルビル)はエミリーに惚れている会計士ジェームス(ジェイソン・ワトキンス)を焚きつけて無料でエミリー家の財務状態を精査させる。気のない素振りを隠し好きよのジェスチャーは欠かせない。

エミリーからその迫り来る負債の「苦しさ」は全く感じられない。
おしゃれな服、おしゃれな帽子、靴やハンドバッグなど持ち物どれもが趣味の良さや裕福なことを表す。
彼女のアパートは最上階(ペントハウス)なので屋根裏が付いていて、

夫の遺品が収納物中にあった望遠鏡で公園の辺りを「のぞき見」するエミリー。
驚いたことに公園の池で小太りの大男が泳ぐと言うか身体を洗っている。

それが彼女とハムステッドの森の掘っ立て小屋に暮らすドナルド(ブレンダン・グリーソン)を結びつけるきっかけを作ることになる。

森に中人目に隠れた場所に手作りの掘立小屋がありそれがグリーソンの住処だ。
ドナルドはいわばホームレス。

公園近くの森は市がリゾートホテルを建てる計画で当然市当局から小屋を立退くように要請されている。
確かに税金は払っていないがゴミは出さない公害はまき散らさない秘かに迷惑を掛けずに暮らしている。
何で出て行かなければならないか、頑として立ち退かないドナルド。

街には彼をサポートしようとするボランティア団体が立ち上がるけど、彼は野次馬的な彼らのことも信用していない。

孤高の初老男性。
エミリーは好奇心から近づいたがすっかりドナルドが気に入ってしまう。
ドナルドも物好きな上流階級の未亡人として敬遠していたが暇な2人は毎日公園のベンチで話をし池で魚を釣り泳いでいる内に
いつの間にかエミリーを愛している。

エミリーは会計士の求婚を経理処理をやらせている打算から気を持たせている。

ここで僕として疑問に思うのは70歳を超えた老女を10歳も20歳も年が離れた男性2人がかくも熱心に追いかけるか?と言うこと。

ダイアン・キートンはW・アレンと付き合っていた頃の40年も昔の「マンハッタン」や
「アニー・ホール」そのままの若作りだがクローズアップに耐えられない。

実話を基にしたと言っても演じる役者にリアリティが無ければ嘘っぽいフィクションになってしまう。

しかし興味をかきたてるのは、立ち退きを要求する市とドナルドの法廷場面で実話の迫力はある。
不法占拠であれ12年以上住んでいれば居住権が発生し土地は自分の物になるそうだ。
人知れず隠れて住んでいたドナルドに居住権が請求できる証拠物件があるかどうか?

映画の興味は法廷の検事と弁護士の丁々発止の遣り取りになるがここからは面白い。
12年どころか17年前にハムステッドに潜り込んだ時のエピソードが証拠としての書類となって出て来て
ドナルドはは300万ポンド(4.5億円)相当の土地を手に入れることとなる
「アメリカンドリーム」じゃない「ロンドン・ドリーム」の大富豪が現実になる。

嘘っぽいロマンスよりこちらの方は楽しい。

ダイアン・キートンより髭もじゃの大男、ドナルドが可笑しくて気になる
アイルランド生まれの62歳、ブレンダン・グリー、は「ハリー・ポッター」シリ-ズや「夜に生きる」「ヒトラーへの285枚の葉書」など多くの映画の脇役をつとめたが日本でば余りしられていない。

監督は英国アカデミー賞受賞監督で「新しい人生のはじめかた」のジョエル・ホプキンス。47歳でTVや短編で活躍しこの作品は
長編劇場映画の第二作目。

人生をやり直すのには年齢や社会的階級、貧富の差なんて関係ないのだと教えてくれる実話から生まれた夢のような話し。

4月21日よりシネスィッチ銀座他全国公開される

「恋するシェフの最強レシピ」(This is not What I Expected)(香港・中国):世界を股にかける大術業過が親子ほど年下の見習いシェフのお試し料理に感激しロマンスに発展する

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馬鹿げた笑えないシーンから始まる。
若い女の子、ションナン(チョウ・ドンユイ)が黒塗りの高級車のボンネットに座り込んで落書き文字を刻んでいる。
親友を裏切った男の車の筈だ。友達は電話で2階に駐車しているからと指示しているのにここは3階だ。

黙って見ていた高級車のオーナー、ソフト帽の下の眼鏡を光らせた口髭の紳士は落書きが見つかり戸惑うショナンに「(修理が)終わったらここへ電話を寄こすように」と名刺を渡して静かに立ち去る。

男の名はルー・ジン(金城武)。成功を収めた有能な実業家だ。
上海で名門ホテル「ローズバッド・ホテル」の買収に成功した実業家のルー・ジンは、ビジネスにも食事にも常にパーフェクトを求める高慢な男だ。少しだけミスを犯した10年勤続で2人の子持ちの従業員を情け容赦なくクビにする。

世界の味を知り尽くした「絶対味覚」を持つ彼にとって、ルームサービスでメニュー通り取り寄せたホテルの有名(と言われる)料理長が提供する料理はどれも感動できるものではなかった。それどころか一口食べては吐き出す始末。

料理長が最後にヤケになって出した見習いシェフのグー・ションナンだけがジンの舌を満足させる。
口に合わないと吐き続けるルーに「巫女パスタ」が口に合う。シェンナンの独特のスパイス多用のパスタだ。

日頃シェフの命令を聞かず自由な発想で斬新なレシピを編みだしている。
ジンがテーマを決めて料理をオーダーすると、ションナンもプライドをかけて完璧な逸品を次々と編み出していく。
互いに顔をあわせることなく、「オーダー」を完璧にこなす対決はゲーム感覚で楽しいし見事だ。

これはロマンティック・コメディと聞いていたがグルメ料理を並べる「フードポルノ」映画じゃないかと思い始める。料理発信源が見習いシェフ、PRはジンが務める

その「フードポルノ」が段々ヒートアップすればするほどジンは見習いシェフに会って見たいと思うのは当然だ。

ある日の食材は日本からの「但馬牛」。ベテラン社員たちが時間をかけて取り寄せたと自慢するもの。
「お前の重要性はこの但馬牛より上だと言いたいのか?

ある夜、ジンのベランダに上の階から酔っぱらった若い女が落こって来る。ショナンだ。ここで初対面の挨拶を済ますとかねてから料理を通じて交流の出来ていたこともあり2人は急速に親しくなる。
笑いを取る漫画的な描写で感心しない。

可笑しいのは真夜中に小腹が空いたと「インスタントラーメン」をルーは夢中で食べるシーンだ。

食を通して心を通わせはじめた二人はルーのアパートに戻ると、そこで料理をしている美人シェフ(。ン・チーリン)いるではないか。
一口味わうとションナンの才能を遥かに超えるしかも長けた美人シェフ。しかもジンの個人シェフを長年務めていると言う。
ここで三角関係となり見習いシェフが美人中年シェフとのバトルとなるかに期待するが中年女性は静かに身を引く。台湾随一の美女をもっと見たかったがアット言う間に消える。
後の2人、特に冷酷無比で実業家マシーンのようなリーがNY出張を放り出してションナンと上海で愛を語るなんて少しも興奮しないし面白くない。

日台混血美男スター、「レッドクリフ」「ウォーロード 男たちの誓い」「Lovers」などの金城武が主演のライトタッチのラブ・コメディ。金城の「任」では無いジャンルの映画だ。44歳と油の乗り切っている年代だ。ハリウッドへの挑戦はもっと続けて欲しい。

ヒロイン役で見習いシェフは「サンザシの樹の下で」や「シチリアの恋」などの26歳チョウ・ドンユイ。美人ではないが幼い頃体操チームに入っていたと言うから動きはコメディ向き。

また[レッドクリフ」などの台湾トップ女優リン・チーリンがチラリとカメオ出演をしている。

監督は編集監督として活躍し、本作で初監督を果たしたデレク・ホイ。未熟な演出が散見される。

昨年秋の第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で「こんなはずじゃなかった!」=「原題:This is not What I Expected」のタイトルで上映された。

この映画自体が「こんなはずじゃなかった!」とガッカリ。

3月10日より新宿武蔵野館にて公開される。

「私はあなたの二グロではない」(I am not your Negro)(米・仏・白・映画):3人の公民権運動の指導者で暗殺されたM・エバース、マルコム・X、MLKの回想から米国史を振り返る

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 ぼくがいまでもはっきり覚えているのは2001年の「ルムンバの叫び」がある。ベルギー領コンゴに育った32歳の郵便局員ルムンバ(エリック・エブアニー)は祖国の自由を求めて奮い立っていた。やがて彼は演説者、そして戦略者として才能を発揮し、支持者を増やしていきコンゴの初代首相にのぼりつめながら、その志半ばで命を奪われた、パトリス・エメリー・ルムンバの生涯を描いた作品。
監督・脚本はドキュメンタリーのラウル・ペック。

4月28日より岩波ホールにて公開される「マルクス・エンゲルス」(The Young Karl Marx)も見応えがある。

ドキュメンタリ映画出身の劇映画だけに丹念に資料を漁り僅かな映像を追って見応えのあるマルクスの伝記映画を劇場用映画に仕上げている。

2017年2月12日、ベルリン国際映画祭で初公開され、同年ドイツやフランスで劇場公開された。史劇映画を対象とするフランスの映画賞の最優秀映画賞ならびに脚本賞を受賞した。

そして、今日紹介する長編ドキュメンタリー映画「私はあなたの二グロではない」(I am not Your Negro)は昨年2017年)のオスカーノミネーションに至る。

ラウル・へッケ監督は1953年9月にハイチの首都ボルト―フランス生まれの65歳。8歳で家族とともにコンゴに移住、コンゴ、アメリカ、フランス、ドイツで学ぶ。上述の「ルムンバ~」で世界的な注目を浴び「ルワンダ流血の4月」(05)などドキュメンタリータッチの作品を多くおくりだしている・

この映画は小説家、劇作家であり熱心な公民権運動家だったジェイムズ・ボールドウィンの未完成原稿「Remember This House」を基にしたラウル・ペック監督による2016年のドキュメンタリー映画である。

ボールドウィンは1924年に9人の子供の長子として生まれた。 彼は実の父に会ったことも、父がどういう人であるかを知ることも無かったが、その代わりに継父のデイビッド・ボールドウィンに父の姿を見ていた。

 サミュエル・L・ジャクソンがナレーションを務めるが、ボールドウィンの力強い声が、演説やTV、ラジオなどで語った言葉とごっちゃになって観客に伝わる。
しかしそんなことはどうでも良いことで
ボールドウィンが語るのは公民権運動指導者の3人。

何れも、暗殺されたメドガー・エバース、マルコム・X、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの光を当てその回想を通してアメリカ合衆国の人種差別の歴史、そして米国史についての彼の個人的な考察が描かれる。

3人の中で余り祇知られていないメドガー・エバースについても詳しく述べている
NAACP(全国黒人地位向上協会)ミシシッピ州支部ディレクターのメドガー・エバーズは、白人街に住宅を建てたが夜、車で帰宅した何者かの銃弾を背中に受けて倒れ、家族に近い勝手口へと這いよりながら気絶し救急病院へ運ばれて絶命している。1963年6月12日、ケネディ大統領がTV放送で今までになく強烈に公民権運動を推進する決意を表明した夜だった。

攻撃的なマルコムXと無抵抗主義の、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(MKL)との論争も当時のTVやニュースリールで紹介される。
しかし2人は和解に達しい共闘を誓った後に暗殺される。ルイジアナ州メンフィスのモーテルで暗殺されたMKLのみが国民的祝日(1月第3月曜)として記憶にと留められるが

他の2人も人種差別、憎悪と戦った歴史はMLKに匹敵する。

日本人はジムクロウ法や公民権運動について概略の知識はあるがその暗黒部に光を当て
潤沢なデータや映像、音声、ニュースリールを1時間半にコンパクトにまとめて教えてくれる啓蒙的映画で
ドキュメンタリーでこれほど衝撃的な事実を見せられたのは初めてだ。

5月ヒューマントラスト有楽町で公開される

「終わった人」(日本映画):「落わった人」とこれから「始まる人」とのコントラストと確執が軸となって物語は思わぬ展開をする。

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凄く面白い映画だった。
前提に二つのことを考えた。

一つは「アバウトシュミット」(02)。ニック・ニコルソンがゴールデングローブ主演賞の好演で、定年退職した男を描いている。ネブラスカ州オマハの保険会社でアクチュアリーとして働いていた平凡な66歳男性のウォーレン・シュミットは退職した。皆華やかに送ってくれていつでもオフィスに顔を出してくれと言われて出すと迷惑がられる。退職後の新しい生活に馴染めず、自分には価値がなくなったように感じていたウォーレンは、TVCMでアフリカの子供たちを援助するプログラムを知り、6歳の少年ンドゥグの養父になって彼に手紙を書くようになる。しかし、家族のことなどを書いてゆくうちに世の中や自分の境遇に関する怒りがこみ上げてくる。

小説「終わった人」の原作者、内館牧子はこの映画から着想を得たのは間違いない。
因みに僕は年間200冊以上の本を乱読するが、この小説は面白さの最高級の点数がつけてある。
実は読んだことを忘れていたが、どうもストーリーは知っているぞとおもうところに「散る桜、残る桜も散る桜」の良寛の辞世の句で内館の小説を思い出した。

もう一つは監督、中田秀夫のことだ。
日活ロマンポルノ誕生45周年となる2016年、新企画に「ロマンポルノリブートプロジェクト」。 ロマンポルノを1988年から28年ぶりに新作を制作、しかも監督は、現代日本映画界を代表する気鋭監督5人。脚本を書き演出をする。
10分に1度の濡れ場、製作費約1000万円、上映時間約80分、撮影期間約1週間という条件で依頼され、行定勲監督は「ジムノペディに乱れる」、塩田明彦監督「風に濡れた女」、白石和彌監督「牝猫たち」、園子温監「ANTIPORNO」、中田秀夫監督は「ホワイトリリー」で女性の花弁をイメージする一番ポルノっぽい。

蓋をあけて劇場公開した結果、一番ヒットしたのは白石和彌監督作品「牝猫たちで」で一番ダメだったのは中田秀夫の「ホワイトリリー」だった。
中田と言えばJ-ホラーの旗手としてハリウッドに進出し成功した日本を代表する映画作家だ。
しかし中田のヒット作「リング」シリーズや「仄暗い水の底から」などは何れも鈴木光司と言うホラー作家の原作があるからで、リブート企画でオリジナル脚本勝負では白石に負けるのも頷ける。

この映画の場合内舘のベストセラー小説があり脚色をベテラン根本のんじが書いてくれるから中田としては条件は揃い得意の演出に全能力を集中することができる。

「アバウトシュミット」でのジャック・ニコルソンの演技力に敵うべくもないが、主人公の田代壮介に扮する舘ひろしも頑張る。

東大法学部から大手銀行に入りエリートコースを突っ走ていたと思ったら外され、子会社へ出向となりそのまま為すことなく定年を迎える。
どう足掻いても世間から「終わった人」と思われるようになってしまう。

相手妻千草役は黒木瞳。かつての輝きを失ったばかりかイジイジしている夫に我慢出来ない。離婚(「卒婚」と呼ぶが)して美容師で自分の店を持ち一本立ちをしたい野心満々。

「落わった人」とこれから「始まる人」とのコントラストと確執が軸となって物語は思わぬ展開をする。

トーンはコメディタッチだが登場人物が優しく愛情に溢れているが取引先の倒産、負債が主人公の個人借金となるなど金に纏わるダークな話が中盤を占める。

主人公の鬱々とした心を救うのは被災にあった東北の故郷の旧友たち。NPO法人のチャリティを通して将来を活路を見出だすエンディングなどは悪くない。(僕自身が慈善事業のNPO法人を主宰しているからそう思うのだが)
この道は決して「終わりがない」のだから。

大河ドラマ「毛利元就」や、NHK連続テレビ小説「ひらり」など、数々の脚本を手がけ、ヒット作を世に送り出してきた内館牧子が、久しぶりの小説「終わった人」。
内容が充実した原石だけに磨けば光る。

すっかり堪能した映画だ。

6月9日より丸の内TOEI他全国で公開される

「ワンダーストラック」(Wonderstruck)(アメリカ映画):1977年父を探してNYへ出て来た少年ベンは50年前の少女ローズと出会う。NY自然史博物館で聾唖の2人の心は融和する

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 素っ頓狂なストーリーを考えるものだと感心する。
主人公の12歳の少年ベンの視点で物語は展開する。
余りに奇想天外なので粗筋を紹介しなければ狐に摘ままれたような????一杯になる。

1977年ミネソタ州ガンフリント。12歳のベン(オークス・フェグリー)は、母エレイン(ミシェル・ウィリアムズ)を交通事故で亡くし、伯母の家で暮らしている。生前の母は「いつか話すから」と言いながら、父の名前すら教えてくれなかった。

ある嵐の夜、母の家に秘かに戻ったベンは、「ワンダーストラック」というニューヨークの自然史博物館の本を見つける。
「愛を込めて、ダニー」のキンケイド書店の栞を見付ける。ダニーこそ父親に違いないと書店へ電話をかけようとうとした途端に雷が落ちて、病院で意識を取り戻したベンは耳が聞こえなくなり、唖になってしまう。。
それでも父親を探すために病院を抜け出し、ミシガンからバスに乗りニューヨークへ行きキンケイド書店を見つけるが、店は閉店していた。途方に暮れたベンは、声をかけてきた少年ジェイミー(ジェイデン・マイケル)のあとをついて行き、自然史博物館に辿り着く。
少年の耳が聞こえなくなった瞬間に映画はサイレントになる。

ここまでは付いて行けるが不思議なのは自然史博物館で50年前の少女と知り合うことだ。

1927年、ニュージャージー州ホーボーケン。
生まれつき聾唖のローズ(ミリセント・シモンズ)は、大きな屋敷に父と使用人たちと暮らしていた。支配的な父とは心が通わないローズにとって、大好きな女優のリリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)の映画を観て彼女の記事を集めることだけが心の支えだった。

ある日、リリアンがニューヨークの舞台に出演すると知ったローズは、彼女に会いに行こうと決意し、ひとりで船に乗る。
心が弾んでいるから他のいい旅が白黒画面で映し出され音楽も20年代ものだ。
兄のウォルター(コーリー・マイケル・スミス)が働く自然史博物館にも行ってみたかった。ローズはリリアンが稽古中のプロムナード劇場を探しあてる。

いつも疑問に思うのだが少年少女は両方とも唖だが、英語の台詞で
「deaf」が頻繁に出て来るのに耳が不自由とか曖昧な表現にする。名作「ノートルダムの」背むし男」を「ノートルダムの鐘」と訳しているのは日本だけだ。
もう一つ気になるのは憧れの美人女優に扮するジュリアン・ムーアだ。目の整形は歴然としておりくっきりとするがキツイ感じになっている。

2人の出会う「NY自然史博物館」(NY Natural History Museum)はMETと公園を挟んだセントラルパーク・ウェストにあり大人も子供も一緒に楽しめる名所だ。ベンスティラーノ「ナイトミュージアム:」シリーズが3本ともヒットして知らない人はいない。

2人は会う前から互いの名を知っており、50年の時空を超えて博物館内を追いかけっこをし喋りまくる(おっと、唖だからカードに絵と文字を書きまくる)至福の時間を過ごす。

中年女性同士の激しいロマンスを描いた「キャロル」のトッド・ヘインズ監督だけに期待したがどうもいけない。少年少女とはいえSF的なロマンスはヘインズ監督の任ではない。

閉塞感を打ち破り自分の居場所を見つける少年少女の天国は「驚きと幸せの一撃=ワンダーストラック」に満ち満ちた「NY自然史博物館」と言うのは良いのだがそれまでのプロセスがしっくりこない。ローズのパートを白黒サイレント、ベンのパートを音声つきカラーで描くのも分かるが押しつけがましい。

主人公のベン役を「ピートと秘密の友達」のわんぱく坊主顔のオークス・フェグリーが、
ローズ役には自身も聾唖者の新人ミリセント・シモンズがオーディションで抜擢された。
2人をつなぐ人物を「エデンより彼方に」の(整形失敗の)ジュリアン・ムーア、ベンの母親を「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のミシェル・ウィリアムズが脇を固める。

ファミリードラマと見ればリラックスして楽しめる。

4月6日より新宿ピカデリー他で公開される。

「15時17分、パリ行き」(The 15:17 to Paris)(アメリカ映画):554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに武装したイスラム過激派の男が乗り込んで来る

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クリント・イーストウッド監督作品なら傑作だと信じている人に冷水を浴びせる映画だ。
現代世間から絶賛された実際のヒーローを取り上げた「アメリカン・スナイパー」のイラク戦争で160人を射殺した狙撃兵や「ハドソン川の奇跡」のエンジン不調の旅客機を川に不時着させた機長などは深い感動を齎したヘビーウェイト級の作品だった。

しかしこ「のテロリストと戦った3人の若者たちの「再現ドラマ」の軽さはフライ級に届かない。
しかも俳優は使わず列車で戦った本人たち、スペンサー、アレクそしてアンソニーの3人を主演させるユニークさと言うかお手軽さ。

事件後フランソワ・ホーランド前仏大統領から顕彰されレジオン・ドヌール勲章を授与されるシーンは長々と続くが、そっくりさん大統領かと思ったらニュースリールだった。故郷カリフォルニア州サクラメント市の英雄凱旋パレードもTV報道のクリッピングだ。
イーストウッドのネオリアリズムやミニマリズムは存分に発揮されているが観る方は面白くないし、興奮しない。

アメリカでは先週2月9日よりWB配給を通し3042館で上映され12.6M(13.5億円)を挙げて3位に食い込んだ。

1位はエロチックな三部作最終弾「フィフティ・シェイズ;フリード」3768館で公開され$38.8M(42億円)だった。

3位に入ったものも、出来過ぎでプロ評論家たちから酷評の洗礼を受け、Rotten Tomatoで20%, 出口調査(CS)はB-評価と観客からも好まれていない。
観客層は年寄をターゲットにしており、50歳以上が57%、25歳以下は僅か14%に過ぎない。

事件は2年半前の2015年8月21日に起こった。、
554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに、ISISの感化をうけた武装したイスラム過激派の男、アイジーブ・エル・コサニがナイフ、拳銃、アソートライフルと弾丸300発を身につけて乗り込んで来る。

隣の車両で発砲し、マークと言う乗客が胸を撃たれ倒れる。
追いかけて来たテロリストにスペンサーが獲物を何も持たずに立ち向かう。自動小銃で狙うが不発、アレックスもアンソニーも協力するが(余り役に立たない)、スペンサーが大活躍、柔道の締め技で「落とす」。

他の乗客たちが恐怖で騒ぎ立てる中、3人は落ち着いてテロリストを拘束する。
仲間も居らず孤軍奮闘のテロリストは少しも怖そうではないし、自動小銃も不発でスリルもサスペンスも無い。

一瞬の出会い頭をスキンヘッドのスペンサーが制してしまう。
真のヒーローはスペンサーだけだろう。

若者3人はカリフォルニア州サクラメントで子供時代を過ごした仲良しだった親友同士。アンソニーは大学へ進学するが他の2人は軍人になる。

若者たちの生い立ちが収められているが後付けの蛇足の感がある。
「自分の過去を振り返ると、何を優先して生きてきたかがわかる」という声に重なり、軍隊に入隊し厳しい訓練に励む青年、幼き日にベッドに身を託して祈りをささげる少年、学校でイジメにあい、ふて腐れながらロッカーに八つ当たりする姿などが映し出される。若者たちの傍にはいつも温かく見守ってくれた母がいたなど成長の過程が紹介される。

そして成長した3人。アメリカ空軍兵スペンサー・ストーンはポルトガルに駐在し、オレゴン州兵アレク・スカラトスはアフガンで戦っていたが休暇でドイツにいるガールフレンドに会いに来ていた。二人は合流してローマにいる大学生アンソニー・サドラーと落合いパリ旅行となったのだ。

犯人に出会うまではドラマは無いし旅の飲み食いと出会う女性たちとの交流だけ。死闘も一瞬で長いのはホランド元大統領の演説だけ。

しかし勲章を貰う3人の横にトレンチコートを着たクリスと言うロンドンに住んで居る中年の男性がいる。誰だい?車中で重傷のマークを止血したのはアレックスや救急車のパラメディカルの若者たちだ。
何かトッ散らかっている間に1時間半の短い映画は終わる。

エンドクレジットで軍人のスペンサーとアレックスは昇格したことを告げているがそれがカタルシスとして残存する。

公開されれば必ずヒットするクリント・イーストウッド作品でも、こんな再録ドラマのB級作品もあるんだと認識する。

原作はジェフリー・E・スターンの「The 15:17 to Paris: The True Story of a Terrorist, a Train, and Three American Heroes」。

3月1日より新宿ピカデリー他全国公開

「ジュマンジ:ェルカム・トゥ・ジャングル」(Jumanji: Welcome to Jungle)(米映画):興行成績は上々、グローバル総計で1000億円を臨む、新社長の親会社ソニーへの大ご祝儀作品。

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2月15日(木)の夜、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた日本お披露目試写会は評判を聞いてか満員の大盛況。
原作は1981年に発刊されたクリス・ヴァン・アルスバーグの絵本で19世紀の怪奇ものだ。
映画化は14年後の1995年。

僕は父親役のロビン・ウィリアムが好きだったから22年前のオリジナル版を良く覚えている。
1869年、深夜の森を馬車の2人の少年たち。なぜか怯えた様子の彼らは、持っていた木箱を掘った穴に埋めて足早に立ち去る

それから100年後の1969年、大規模な製靴工場を経営し、町の名士でもあるサミュエル・アラン・パリッシュの息子アラン・パリッシュは、厳格な父親に反感を抱いていた。
パリッシュ家の12歳になる一人息子アランは気の弱い少年で、いつも厳格な父(R・ウィリアムス)に叱られていた。
ある日、いじめっ子にいじめられたアランは帰り道、工場の近くにある工事現場で太鼓のような音を聞き、土の中から古い木箱を掘り出した。

その木箱は「ジュマンジ」と書かれたゲーム盤で、アランはガールフレンドのサラを呼んで一緒にボードゲーム「ジュマンジ」をプレイする。
サイコロを振ってゲームを始ると、次々と不思議なことが起きる。ところが、このゲームはプレイするごとにキャラが現実に起きてしまう不思議なボードゲームだった

巨大な蚊、オマキザル、ライオン、巨大な植物、シロサイ、アフリカ象、シマウマ、ペリカン、次から次へと現れ居間を飛び出し、街の通りを駆け巡る。

少年のアランも少女サラも名前も知らない子役だったが今や30代後半の中年の男女だ。

1951年生まれのロビン・ウィリアムは生きていれば67歳だが、2014年5月に急死する、享年63歳、
油の乗り切った男盛りの年齢だ。

今日紹介するのは1995年製作の大ヒット作「ジュマンジ」の22年振りの続編で、ドウェイン・ジョンソンが主演を務めたアドベンチャーアクション。

元プロレスラー世界チャンピオン「ロック」ことドウェイン・ジョンソンは今や飛ぶ鳥を落とす勢いの大スター。
相棒のポール・ウォーカーの事故死で危うくなった「ワイルド・スピード」シリーズをジョンソン一人で乗り切った。

高校の地下室で居残りをさせられていた4人の生徒たちは、「ジュマンジ」というソフトが入った古いテレビゲーム機を発見する。

生徒たちは、「ジュマンジ」というソフトが入った埃まみれの古いテレビゲーム機を発見する。
スペンサー(アレックス・ウルフ)、ベサニー(マディソン・アイスマン)、フリッジ(サーダリウス・ブレイン)、マーサ(モーガン・ターナー)の4人は、

こんなレトロのボードゲームは今頃珍しいと、掃除をサボって「ジュマンジ」をプレイしようと
早速そのゲームで遊ぼうとするが、キャラクターを選択した途端にゲームの中に吸い込まれ、
各キャラクターのアバターとなって危険なジャングルの中に放り込まれてしまう。

マッチョな冒険家やぽっちゃりオヤジなど本来の姿とかけ離れた姿に変身した彼らは、ゲームをクリアして現実世界に戻るため、
それぞれ与えられたスキルを使って難攻不落のステージに挑む。
4人は元の現実の世界に戻るためにゲームをクリアしなければならない。
ヘマをして「ゲ-ムオーバー」になれば永遠にジャングルに閉じ込められるのだ。

ストーリーの先は読めるしアドベンチャーを楽しめば良いだけ。
この手のヴィジュアルで脅かす作品はIMAXか3Dで見なければならない。

全国の劇場をほぼ握るTOHOシネマズがIMAXに積極的でないので披露試写会と言えどエキストラワイドスクリーンだけど悲しい哉、2D版だ。

アメリカや中国ではIMAXは急激に劇場数が増えている。日本人はモデストなんでしょうか、3D立体とかIMAXだからと言って飛びつかない。

主人公のスペンサーは冒険家のブレイブストーン博士(ドウェイン・ジョンソン)になり大活躍だが
黒人の女子高生ペサニーは何と小太りの男性、オベロン教授(ジャック・ブラック)に、このブラックは余り面白く無い。

フリッジムーはムース・フィンバー(ケヴィンん・ハート)に
マーサのアバターはセクシ―な女性ファイター、ルビー・ラウンドハウス(カレン・ギラン)に。短い短パンに黒いブラ姿で華麗なマーシャルアートはジョンソン以上に観客の目を惹き付ける。
演じるカレン・ギランは30歳、「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」シリーズで注目された。

監督は「バッド・ティーチャー」のジェイク・カスダン。あの名匠ローレンス・カスダンの息子で脚本家として修業を積んだ。

配給会社ソニー映画でもこんなにヒットするとは思ってもいなかった。
出だしは「スター・ウォーズ:最後のジェダイ」に抑えられていたが今年の正月に興行成績(BO)首位の座につくと上位を維持、公開7週目にして全米No.1に返り咲いた。
12月全米公開作品で2月にNo.1になるのはあの「タイタニック「」以来だと言う

今週末は「プレジデントデイ」の祝日。映画の書入れ時だ。
マーベルのスピンオフヒーローで超弩級「Black Panther」(邦題「ブラックパンサー」)が200Mを超す成績を挙げる中、
9週目を迎えても堂々と4位の座を占め、これでアメリカでの累積は380M(410億円)ワールドワイド総計は1000億円を指呼の間に臨む。

親会社ソニーも新社長になった。大ご祝儀だ。

4月6日よりTOHOシネマズ日比谷他d全国公開される

「ベルリン・シンドローム」(Berlin Syndrome)(豪映画):ベルリンを旅行中のオーストラリア女性カメラマンが優しいハンサムな男と出会い一夜を過ごす、と彼は異常性格者で監禁拘束されてしまう

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拉致・監禁、そして区何度も逃亡して失敗の繰り返しだけの単調なサスペンスだが
人物像は良く描かれている。
僕も若い頃1か月もヨーロッパを1人旅をしたが淋しさを紛らわすため、レストランやホテル、飛行場や鉄道の駅などで、やたらと人に話しかけた。
皆親切で宿が見つからなかった時には自宅に泊めてくれた人もいた。

しかし女性の場合はセックスが絡んで来るから淋しさを紛らわすと飛んでもないことが起こるとこの映画は警鐘を鳴らす。

日本、そして世界中で多発している女性監禁虐殺事件。
普段は優しい温和な男だが一皮剥くと異常性格者、サイコパスの凶悪殺人犯に理不尽に襲われた被害者の恐怖と戦慄をスリリングに描いたメラニー・ジョーステンのベストセラー小説をオーストラリアの女性監督、ケイト・ショートランドが映画化。

建築物に興味を持つ女性カメラマンのクレア(テリーサ・パーマー)は仕事を暫く休み、ベルリンに旅行に来た。東ベルリン時代の建造物を撮りまくっていた。
雑踏の交差点でアンディ(マックス・リーメルト)と名乗る若い男と出会い、英語教師をしているアンディは流石に英語は堪能でベルリンで英語が通じない鬱憤をチャットで楽しむ。

翌日もYMCAの安宿で一緒の仲間と飲食をしているとアンディに再び出会い、意気投合した2人はそのままアンディのアパートに直行,ホットでジューシーなセックスに耽る。アンディの父親の栽培するイチゴ園を抜けてアパートは裏ぶれており他の住人も居ないようだ。

アンディとお泊まりして充実した夜を堪能し、朝を迎えたクレア。
陽も高くなっておりアンディはすでに外出している。

今日はデュッセルドルフへ行く予定で外に出ようとするが、部屋のドアが開かない。
外から鍵がかけられ一歩も外へ出られない。

帰宅したアンディは鍵を渡すのを忘れたと言い訳をすづがクレアは嘘だと知る。
そして。クレアはアンディによって監禁されたことがわかる。
アンディは花やお土産を買って来て機嫌を取ろうとするがその手に乘らない。

何度も部屋からの脱出を試みるのだが窓は二重ガラスで重い物をぶつけてもビクともしないし、家の外は車も通っていない。

アンディは年を取った父親を捨てた母が許せなくてそれがトラウマになりっ女性監禁のハラスメントになっているようだ。

半年以上も監禁されていると加害者との間にストックホルム症候群がおきるのだがクレアはアンディを許さなく,更に隠しておいたアンディのアルバムを見ると
自分と同じ被害者もおり殺されていることが分かる・

さあここからクレアのリベンジがはじまる。偶然性も手伝い上手く行ったように思えるエンディング。

ようやく終盤で盛り上がるが2時間もかけて退屈なキャット&マウスの繰り返しは退屈だ。

昨年のサンダンス映画祭に出品をはじめ世界各国のフェスティバルに臨むが授賞はない。

大胆なセックスシーン、全裸の絡みなど体当たりの熱演は2011年の大作映画「アイ・アム・ナンバー4」でブレイクし「ライト/オフ」「ハクソー・リッジ」などハリウッド映画の出演が続くオーストラリの女優テリーサ・パーマー。
クレアを監禁するサイコのアンディには「THE WAVE ウェイヴ」などのドイツ人俳優マックス・リーメルト。

4月7日より新宿武蔵野館他で公開される

「ちはやふる―結び-」(日本映画):瑞沢高校競技かるた部の綾瀬千早は高校生活最後の全国大会での優勝を目指して動き出すが思わぬ障害がたくさん出て来る

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僕の一家は子どもの頃から「小倉百人一首」のかるたに夢中になり、意味は分らないままに上の句に続く下の句を全部暗記した。

小学生2年の時、絶好調だったのは「狸山」だ。
このたびは 幣も取りあへず 手向(たむけ)山
   紅葉(もみぢ)の錦 神のまにまに
「手向け山」を狸山と思っていたのだ。

幼稚園児の弟、ユーちゃんはどう言う訳か「バネ」が好きで
 筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがは)
   恋(こひ)ぞつもりて 淵(ふち)となりぬる
「筑波嶺(つくばね)」はバネを突くことだと考えていた。

まあ落語の「ちはやふる」を花魁の「ちはや」に振られ妹分の「かみよ」も聞く耳もたず、と解釈するようなものだ。

だけどもこの映画のように高校生の「競技かるた」にはどうも違和感を覚える。
「スポコンもの」になって「かるた道」を踏み外しているのではないかと。

僕の思惑とは別に「競技かるた」を題材にした末次由紀の少女コミックス「ちはやふる」
累計2100万部を超える国民的大ベストセラーだと言う。

映画化された「ちはやふる」は2016年には2部作([上の句][下の句])として公開され、「上の句」が20位で16.3億円、「下の句」が36位で」12.2億円、合計38.5億円も稼いでいる。映画興行も大成功だ。
因みにこの16年は、アニメ「君の名は」が250億円を超す史上初のメガヒットで映画全体が上げ潮ムードに乗ったこともある。
あれから2年、「結び」は満を持して放つから少なくとも20億円を狙うだろう。

ストーリーをざっと追ってみる。
瑞沢高校競技かるた部の1年生・綾瀬千早(広瀬すず)がクイーン・若宮詩暢(松岡茉優)と壮絶な戦いを繰り広げた全国大会から2年が経った。
だから映画の「結び」も2年経つのだ。
3年生になった千早たちは個性派揃いの新入生たちに振り回されながらも、高校生活最後の全国大会に向けて動き出す。

一方、藤岡東高校に通う綿谷新(新田真剣佑)は全国大会で千早たちと戦うため、かるた部創設に奔走していた。そんな中、瑞沢かるた部で思いがけないトラブルが起こる。部長の真島太一(野村周平)が辞めると言い出す。
千早、太一、新はバラバラに成ってしまうがエンディングでどう締めるか興味が湧く。

広瀬すずが役柄と同様に芝居も上手くなっているのに驚く。

新たに登場する瑞沢かるた部の新入生・花野菫役をNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の優希美青、筑波秋博役を「ミックス。」の佐野勇人が
千早のライバル・我妻伊織役を「3月のライオン」の清原果耶、史上最強の名人・周防久志役を「斉木楠雄のΨ難」の賀来賢人がそれぞれ演じる。
キャスティングも色々と考えている。

若手俳優が騒しいが、ガーディアンの師匠・原田秀雄役の國村隼が画面に登場するとユーモアも緊張感も出て来る。矢張りベテランの演技力ですな。

脚色・監督の小泉徳宏は続投でシリーズ3本を撮り終わる。TV局で甘やかされずプロダクション「ROBOT」で現場を踏んでいるのが良い。演出も上手くなってきた。


3月17日よりTOHOシネマズ系で全国公開される

「ブラックパンサー」(Black Panther)(アメリカ映画):ハリウッドをどん底の不況から記録的なメガヒットで一気に復活させた黒人スーパーヒーロー映画

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渋谷の東急ホテル「セルリアン・タワー」は従業員教育が出来ていない。
昨夕アメリカの友人夫妻と40階のバー「べロビスクト」で6時半に会う約束で6時20分に着き、従業員にその旨を話しバー入口のソファーで待っていた。40分になっても現れないのでメイルでどうした?と確かめるともう10分も待っている、そちらこそ何処に居るのだ?と。
待っている間、2-3人の従業員に聞くとご予約は頂いていますが未だですと。
従業員を無視してバーに入るとちゃんと座ってカクテルを飲んでいる。

3年前2階のロビーでやはりアメリカの友人と会うことになっていたが、広いロビーで彼がカフェテラスの中なので気が付かず、従業員に待ち合わせをしているがアメリカ人で僕と同じように誰かを探している人がいないかと聞くと、そんな人はいないと言う。30分すぎてコンシェルジェのデスクへ行くとその友人も同じように尋ねているところで会うことが出来た。

昨日の「べロビスト」で更に後日談がある。立ち上がるとウェイトレスが勘定書きを僕に突き付ける。外人と飲むと日本人が払うものと決めている。友人が気づいてピックアップしてくれたから助かったが、僕を待たせた従業員たちはお詫びの一言も無い。
セルリアンで同じ苦い思いをしたが、これは従業員教育がしっかり行われていないことを如実に示している。

さて今日紹介する映画は前世界を騒然とさせた黒人スーパーヒーロー映画「ブラックパンサー」だ。最終試写で無理にお願いして見せて貰ったが「吹き替え版」でがっかり。

冒頭で監督、ライアン・クーグラーが日本向けに挨拶メッセージが挿入される。低い声に黒人独特の訛り、アクセント。これが吹き替えだと標準語の正統日本語で聞かされるから嫌になる。

2月第3月曜日の19日は「プレジデント・デイ」今年最初の大作「Black Panther」のメガヒットで市況は湧いている。

北米、4020館で上映され、いきなり201.8M(217億円)のデビュー。祝日の4日間で235M(253億円)に達した。(20日に数字は修正)

海外は通常黒人映画は難しいが49か国で開け169M、殆どの国で首位の座を占めている。
海外で1位となった韓国では25,3M(西洋映画で歴代5位)、UKが24.8M,など。近日公開ではロシアが22日、日本が3月1日、中国が9日と海外BOの前途は明るい。
現在のワールドワイド総計は404M(434億円)

キャストは全員黒人。それでいてMarvelでは「Avenger」(12)を抜いて歴代5位のデビュー成績。
2月公開映画では「Deadpool」(16)の156Mの記録を遥かに抜いて第一位。
観客があらゆるデモグラフィック層に広がっているのも強みです。アフリカン・アメリカンが37%、白人が35%、ヒスパニックが15%とスーパーヒーロー映画で入場者がこんなに拡散した層に広がっているのは初めてだ。女性層も45%と半数に迫る。(普通だと精々35-40%)だ

制作費は200M(215億円)。観客の出口調査(CS)ではA+評価と、Marvelでは12年の「Avenger」以来の最高評価。

2016年の「シビル・ウォー」でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に初登場した、国王と

ヒーロー、2つの顔をもつMarvelの新たなスピン・オフ・ヒーローだ。
なぜこれほどのメガヒットを齎せたのか?をつらつら考える。

アフリカの秘境に誰も知らない「エデンの園=ワカンダ」がある。何処までも澄んだ青空をバックに常緑樹の生い茂った森や平原、豊富な水源を持つ巨大な瀧。ドローンでの空撮でその絶景を余すところ無く紹介する。空中には宇宙船が飛行する。

ハリウッドのスーパーヒーローものではいつでもNYやLAのような大都会。摩天楼の間を縫って悪人を追いかける。人混みでの格闘では巻き添えもでる。スーパーヒーローはネタも出尽くしたし、シリーズものはクリシェの連続で金属疲労を起こし観客は飽き飽きしている。。

アフリカの秘境と言う環境でスーパーヒーローのアクションは原点帰りで「アメリカンドリーム?」の追求を可能にする。

アフリカの秘境にある超文明国家「ワカンダ」には世界を滅亡させるパワーを持つ希少鉱石・ヴィブラニウムの産出国だった。この鉱石は最新のテクノロジーを生み出す一方、悪の手に渡らないように歴代のワカンダ王はスパイを各国に潜入させ情勢を探りワガンダ王国を守って来た。

国王の父を亡くした若きティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は国王の地位につくべくあらゆる挑戦者をなぎ倒し国王となり、守護者「ブラックパンサー」に即位する。しかし国王の心構えが出来ておらず昔の婚約者ナキア(ルピタ・ニョンゴ)への想いもたちきれず亡き父王の遺志の間で悩んでいる。

その頃ワガンダを狙う謎の男エリック・キルモンガ-(マイケル・B・ジョーダン)が闇の武器商人、ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と組み陰謀を巡らせ始める。
ようやく父王の遺志を継ぐ決心をした若き国王ティ・チャラが、国を守るためにブラックパンサーとして活躍する。

この出で立ちがカッコ良い。スタイリッシュな漆黒のスーツを身にまとい、鋭い爪と優れた戦闘能力を誇るブラックパンサー。

エンディングクレジットに挿入される国連での国王ティ・チャラの宣言が良い。今まで孤立主義のワガンダは持てる超近代的アセットをフルに使用し世界平和に貢献すると。
出席していた白人の外交官が「お前の国はちっぽけな産業と言っても農業しかない小国だ。一体何が出来るんだ?」と。続編があることは明らかだ。

原作は古く、1966年のスタン・リーとジャック・カービーの
「ファンタスティック・フォー」に登場する。
主人公ブラックパンサー=ティ・チャラ役は41歳のチャドウィック・ボーズマン。初の黒人メジャーリーガー、J・ロビンソンの「42~世界を変えた男~」や「ジェームス・ブラウン」などの伝記映画に出演している。
共演に「それでも夜は明ける」でオスカーを受賞したルピタ・ニョンゴ,国王の妹役シュリで天才科学者役のレティ―シャ・ライト
他にアンディ・サーキス、ダニエル・カルルウヤ、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィティッカー、ウィンストン・ドュークなど。

監督は「クリード チャンプを継ぐ男」などの黒人、ライアン・クーグラー。この映画で主人公クリードを演じたマイケル・B・ジョーダンがパンサーの敵役として出演。

3月1日より丸の内ピカデリー他全国公開される。

「レザーフェイス-悪魔のいけにえ」(Leatherface)(米映画):「悪魔のはらわた」の前日譚。少年のチェーンソーで人間が切り刻まれ、血がドパッと飛び散り、巨大な豚がバラバラの人肉を貪る

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 前の晩は殆ど徹夜だったのでこの映画のは寝るぞと思って見始めたが、チェーンソーで人間が切り刻まれ、血がドパッと飛び散り、巨大な豚が人肉を貪る、怖い怖いで寝る間も無かった。

それにしてもホラー映画の基礎を作った巨匠、トビー・フーパー(Tobe Hooper)が昨年夏、8月に亡くなったニュースにビックリした、74歳だった。彼の映画は殆ど見ている。
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今日紹介する映画はフーパーの監督デビュー作「悪魔のいけにえ」(74)の前日譚だ。だから死ぬ前年17年に制作したこの作品のプロデューサーを担当している。
墓場の上に家を建てた一家が幽霊に悩まされる「ポルターガイスト」(82)や宇宙に飛び出す「スペースバンパイア」(85)など、ホラー映画の革新や変化進歩に腐心して数々のヒット作を生みだした。
監督した「リヴィッド」「屋敷女」のフランス人コンビ、ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロの2人はトビーのDNAを受け継ぎ、オリジナルを超える作品になるよう努力が見える。

 映画の冒頭は1950年代のテキサスの田舎。コーンの畑道でポニーの頭を被った少年を轢いてしまう。ケガは無く少年は足も速く遠い農場へ逃げこむ。ソーヤー農場と看板は立派だが廃屋のような母屋は足の踏み場もない。

先ほどの少年の5歳の誕生日。ケ-キのロウソクを吹き消した少年にバースデイプレゼントに両親や兄たちから贈られた「チェーンソー」。床に縛られて転がっている人間を切り裂いてみろと言われ少年は最初の人殺しをする。

凄惨な殺人事件を起こし、精神病院に入れられた少年ジャクソン。数年後、3人の入院患者と共に看護師を誘拐して施設を抜け出した彼は、復讐に燃える警官に追われながら恐ろしい逃走劇を繰り広げる。

B級ながら名作と称えられるホラー映画「悪魔のいけにえ」(Texas Chain Saw Massacre)の前日譚で、同作に登場する殺人鬼レザーフェイスの少年時代を描いた作品。
凄惨な殺人事件を起こし、精神病院に入れられた少年は成長しジャクソン(サム・ストライク)の名は知られるようになる。

3人の入院患者と共に看護師リジー(ヴァネッサ・グラッセ)を人質として誘拐して施設を抜け出した彼は、ハートマン保安官(スティーブン・ドーフ)率いるテキサス市警に追われながら恐ろしい逃走劇を繰り広げる。

人質になるリジ―役のヴァネッサ・グラッセは身体にピチピチのワンピースで川を渡り泥中を這いずりまわり一家の魔手を逃れようとするが何れも失敗。このキャット&マウス劇はかなりセクシーだ。その美形の顔の皮膚を剥がし被るエンディングの凄絶さは目を背ける。

ハートマンは娘をソーヤー一家に殺されており、一族と見ると片端から打ち殺す。
演じるのは「ブレイド」「SOMEWHERE」の口ひげとテンガロンハットの似合うスティーブン・ドーフ、

ソーヤー一家も悪いが保安官のハートマンはそれを上回る凶悪さだ。一家の保安官へのリベンジも短刀で動きを止めチェーンソーでハラワタを削り出す。
一家のゴッドマザーは「死霊館」のリリ・テイラー、子どもたちへの殺しの指令は血も涙もない。

主人公のジャクソンに扮するサム・ストライク短い髪に鋭い目、中々のイケメンだが凄みがある。「死霊館」や「メイズランナー」などの脇で顔を出している。初めての主演だ。
これだけホラーで観客を怯えさせればフーパーも草場の陰から満足して見ているだろう。

5月12日より新宿シネマカリテにて公開される

「四月の永い夢」(日本映画):桜の季節に恋人を亡くした滝本初海は3年経った今も立ち直れないが、ある日恋人が最後に書いた手紙を受け取る

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中川監督作品で最初に見たのが「走れ、絶望に追いつかれない速さで」だった、
タイトルの斬新さと誌的表現に惹かれて監督・脚本の中川龍太郎に注目した。
一昨年の第28回東京国際映画祭の「日本映画スプラッシュ」部門で入選上映された映画だ。

 それは中川龍太郎自身の実体験に基づいた物語。
青春の日々を共に過ごした親友・薫の死を受け入れられないでいる主人公の漣。亡くなった理由も分からず、悲嘆に暮れた慌ただしい日々が過ぎ去るなかで悲しさを紛らわしてゆく。ある時、薫が描き遺した大切な1枚の絵が手に入る。そこには薫の中学時代の同級生・環奈の姿があった。


今日紹介する、最新作「四月の永い夢」は2017年、世界四大映画祭と言われる第39回モスクワ国際映画祭のメインコンペティション部門に正式出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰を授与されている。

国際的には如何にも日本的で哲学的なテーマが「良く分からないが、いいんじゃない」って感じで受賞しているが、テーマは同じ喪失感から立ち直ろうと努力する主人公を描きながら中川自身のスタイルに拘り過ぎてインパクトや説得性が希少になり、その分商業性(Box Office)が失われるのではないかと心配になる。

桜の季節に恋人を亡くした滝本初海(朝倉あき)、27歳。
桜と菜の花の咲き誇る背景を前に初海は単調なモノローグで心境を語る。
類似のシーンは映画の展開に伴い何度も現れる。

T・ウィリアムスの「欲望という名の電車」の主人公で物語の進行役をモノローグで進めるブランチのようだ。

中学の音楽教師を辞めて3年、東京国立市の大学通り。近所の蕎麦屋でアルバイトをしている。
変わらない日常のなかで恋人の母親から一葉の手紙が届く。

それは3年前の春に亡くなった恋人が初海に向けて書き遺したものだが、彼女自身も開封しようとしない。

そば屋の常連で隣の工場で働く志熊(三浦貴大)からの求愛や、かつての教え子、楓(川崎ゆり子)との再会、そば屋が倒産し無職となる初海。
親友の教師、朋子が産休に入るから臨時教師をしないかと言う援助も断る。

周りの人物は魅力的な役者や豊富なエピソードに溢れているが消化していない。特に三浦貴大が好演している志熊との関係や楓のボーイフレンドのDVなどバカバカしい夾雑物だ。

教え子役の川崎と先生だった朝倉が実年齢が共に26歳と言うのは頷けない。
そのため老け顔の楓はジャズ歌手志望だと言って「As Time Goes By」げ劇中で歌われる「カサブランカ」をワザワザ観に行くか?しかも黒人ピアノ弾きのサムが歌っているから参考にもならない。「イングリッド・バーグマンって誰?」は可笑しかったが。

封を切らない一葉の手紙はエンディングに大きな白抜き字幕で現れる。
ミステリーの最後の謎が明かされるような勿体ぶった「フツー」の手紙だが、最後の留めの一行で初海のトラウマが解消される、と言うのも大げさ過ぎるのではないか。

初海が胸につかえていた想いや喪失感が手紙の最後のフレーズで、乗り越えてゆくことが出来る程のインパクトを感じない。

若い主人公の感情の機微を繊細に綴ろうとした中川龍太郎監督の意図は分るが、画面で観客に納得させるほどの説得性に欠ける。

主演の朝倉あきは知らなかったが「神様のカルテ」などの脇で顔をだしたことがあるようだ。特に美人でもないし芝居も上手いとは思えない普通の女性だ。

このところ活躍が目立つ三浦貴大が子犬みたいに只管ヒロインに憧れるだけと言うのも詰らない。

天真爛漫な楓役の川崎ゆり子も初めて見る顔だがジャズ歌手役なら1曲聞かせろよ。その癖、朝倉に「書を持ち僕は旅に出る」をフルコーラス(鼻歌ながら)歌わせている。「赤い靴」に中川は何か特別な思い入れがあるらしい。

前作の「走れ、絶望に追いつかれない速さで」の方がより完成度も高い作品だった。
恋人を亡くした喪失感やトラウマを抜け出し新しいテーマで中川龍太郎は再出発して欲しい。「人生って失っていくこと」だろう。

5月12日より新宿武蔵野館にて公開される

「さよなら、僕のマンハッタン」(The Only Living Boy in New York)(米映画):NYに住むトーマスは親元を離れ一人暮らし。父の女友達をストークする内に親しくなり寝てしまう

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ニューヨークに住む現代っ子トーマスの大人への通過儀礼を描く青春ドラマは可笑しく楽しい。
セントラルパークサウス(CPS)の高層アパート「トランプパーク」に長く住んで居た僕はレストランやバー、ホテル、公園の遊歩道と懐かしさ一杯の映画だ。

先ずこの変てこなタイトル、NYで生きているただ一人の少年」はサイモンとガーファンクルの曲でメキシコに長期滞在しているガーファンクルに、NYに1人取り残されたサイモンが自分の淋しさを歌ったものだとの解説で納得する。
劇中にはS&Gやボブ・ディランの曲がふんだんに挿入されている。

主人公のトーマス・ウェブ(カラム・ターナー)は物書きになりたいがまだ何者にもなれていない。
大学卒業を機に高級住宅街のアッパー・ウエストサイドにある親元を離れ
庶民的なロウワー・イーストサイドで一人暮らしを始めた。
豪華なアートギャラリーで成功し富豪の父親から離れたかった。
しかし虚弱体質の母、ジンジャー(シンシア・ニクソン)のことは気にかかる。

物書きのようだがアパートの隣人で風変わりな売れそうもないW.F.ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)が近づいて来て、友人となった彼から人生のアドバイスを受けることになる。
特に文学のコーチは念入りだ。

ある日、想いを寄せる古書店員のミミ(カーシー・クレモンズ)と行ったナイトクラブで、父、イーサン(ピアース・ブロスナン)が若い女性、ジョハンナ(ケイト・ベッキンセ-ル)と親しくしているのを目撃してしまう。
ストーカーまがいにトーマスはホテルにしけこむところまで追いかける。それも一度だけではない。

W.F.の助言を受けながらジョハンナを父から引き離そうと躍起になるうちに、「あなたの全てを知っている」という謎めいた彼女の魅力に溺れそのまま寝てしまう。

ジョハンナの魅力と愛しているミミの間に揺れ動くトーマス。

退屈な日々に突如発生した情事が予想もしていなかった自身と家族の物語に及ぶことになる。

作家の才能がある男と全くない男、二人の男はジンジャーを愛してしまった。ジンジャーはトーマスの生みの母だ。
 
ビタースイートなラブストーリーで感涙を流させた「(500)日のサマー」でデビューし、スーパーヒーロー映画「アメイジング・スパイダーマン」シリーズで大ヒットを飛ばし、「gifted/ギフテッド」で天才少女の家族の素晴らしさを描き、どんなジャンルの作品も見事に仕上げるマーク・ウェブ監督。
 
悩める主人公トーマスは、「グリーンルーム」や「アサシン クリード」などの英国俳優カラム・ターナー。イギリス人に典型的なNYっ子を演じさせるウェブ監督の得意技

 いやに慣れ慣れしい押しかけ友人W.F.を演じるオスカー俳優、ジェフ・ブリッジスは流石に上手い。ジェフのナレーションと視点でトーマスの退屈な日々の物語はミステリアスでユーモラスなものになる。

「007」シリーズのアクション俳優、ピアース・ブロスナンもすっかり年を取った。
「セックス&シティ」のシンシア・ニクソン、
父と息子を両天秤でセックスをする蠱惑的なジョハンナ役のケイト・ベッキンセール。
トーマスがそれ程美人でも無い黒人のミミ(カーシー・クレモンズ)に入れあげるのが
僕には分からない。
クレモンズは初めて見る顔だ。

未発表の優れた脚本を連ねたハリウッドの「ブラックリスト」に入っていたアラン・ローブによる脚本にウェブ監督がほれ込み、10年以上をかけて映画化を実現したと言う。

NYっ子コメディに堪能して映画の後はカクテル「マンハッタン」を飲んだ。

4月14日より丸の内ピカデリー他で公開される
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