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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」(日本映画):意外に楽しめるSFスリラー、超能力者同士の死闘。

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ヘンテコなタイトルの日本映画だがどうやら客は入っているらしい。
先週末2日間で「怪盗グルーのミニオン大脱走」が、3週連続1位を達成し、興収3億8千万円をあげ、公開17日間で興収31億円を突破した。

この映画はそこまで高いレベルではない。
4日からスタート、興収1億7千万円で5位にランクイン。
日劇など一流館で上映せず小屋の数も大作の1/3程度のハンディキャップを背負っているから立派な成績だ。

主役のジョジョの山崎賢人のポスターがベレー帽を被った女性に見えたのでどんな映画かと事前の知識無しで、昨日(10日)の3時40分のTOHOシネマズ日本橋に飛び込んだ。

平日の午後にも拘わらず一番広いスクリーン8の6割は埋まっている。
但し年寄はボクだけ、若いカップルが殆どだ。

僕の好きな「超能力者」同士の戦いは、当然荒唐無稽だが結構楽しく面白い。
連載開始から30年、シリーズ累計発行部数1億部を超える荒木飛呂彦原作の人気コミックを実写映画化したSFドタバタサスペンス。

この映画はシリーズのパート4に当たり時代は日本で1999年。

 美しい海沿いの町・杜王町。これはどう見ても湘南だね。
M県S市にある杜王町(もりおうちょう)に転校して来たばかりの高校生広瀬康一(神木隆之介)の視点と語りで物語が始まる。

海洋冒険家となった空条承太郎(伊勢谷友介)は、高齢の祖父ジョセフ・ジョースターの遺産分配について調査した結果、彼の隠し子である高校生・東方仗助(ジョジョ:山崎賢人)が杜王町に住んでいることを知る。
年上の承太郎が甥で高校生のジョジョを叔父さんと言うのが笑える。
承太郎が船乗りキャップを含め「真っ白」で
ジョジョが漆黒な髪の天辺から学ラン編み上げ靴に至る迄「真っ黒」なコントラストが目立つ。

仗助は承太郎の来訪により父のことを知ると同時に、いつの間にかこの町に潜む邪悪なスタンド使いたちを次々と見つけ出し彼ら邪悪な者たちとの戦いに巻き込まれてゆく。
スタンド使いたちは自分自身のシンボル、奇妙で不気味な「クリーチャー」を抱えていて戦いの最中に本性が現れる。

見た目は不良だが、心根の優しい高校生・東方仗助に扮する山崎賢人は女性的で美しすぎる。


 仗助の「仗」で「ジョ」、助は「ジョ」と読めるから略して「「ジョジョ」と仲間から呼ばれている。
優しいジョジョだが特殊な髪型を貶されるとかジョークにされると怒り狂い特殊能力で暴れる

このジョジョは「スタンド」と呼ばれる特殊能力の持ち主。
彼の「スタンド」は、触れるだけで他人のケガや壊れたものを直すことができる「クレイジー・ダイヤモンド」だった。

「スタンド」とはどうやら特別な力、超能力で個々人独自の「スタンド」を持っているようだ。

そんな優しい力を持つ仗助はある日、一連の事件に関わるスタンド使い、凶悪犯アンジェロ(=片桐安十郎)(山田孝之)の犯行を邪魔したことから、次の標的にされてしまう。

水を操る能力「アクア・ネックレス」を駆使して、執拗に仗助を狙うアンジェロ。
その狡猾な手口によって、ついに大切な祖父、東方良平(國村隼)の命が奪われてしまう。

家族と町を守るため、戦いを決意した仗助は、危険を知らせに来た空条承太郎(伊勢谷友介)と共に、アンジェロに立ち向かう。

しかし、アンジェロの背後では、謎の兄弟がすべての糸を引いていた。
果たして、仗助と町の運命は如何に?
杜王町の不思議な街並みを再現するためにスペイン、カタルーニャ地方のシッチェスまで飛び撮影を行ったと聞く。
監督は三池崇史。「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」とか「無限の住人」などの駄作もあるが、「十三人の刺客」「ヤッターマン」「クローズZERO」「愛と誠」や「藁の盾」など好きな作品を撮り続けており、本作もその一本に僕は数える。

TOHOシネマズ日本橋他で公開中

「愛を綴る女」(Mal de Pierre)(フランス映画):優しい夫の思い遣りと一瞬燃え上がる帰還兵とのロマンスの炎。チャイコフスキーの「舟歌」をなぞる悲劇に涙する。

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紫のラベンダー畑が美しい南仏プロヴァンスを舞台にした。
ミレーナ・アグスのベストセラー恋愛小説「祖母の手帖」を映画化。

スーパーヒーローやCGのおどろおどろしい大型画面が映画ファンを魅了する中にあって
古臭いコンベンショナルな「愛の悲劇」など誰が振り向こうか。
 
しかし僕みたいな古い人間にはピッタシ嵌り、エンドクレジットが涙で霞むほどだった。

殆どが回想シーンで綴られる。

冒頭、南仏の小さな村からリヨンで開かれるピアノコンクールに参加するティネージャーの息子、マルク(ヴィクター・クィリニチネ)は父ジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)の運転する車でやって来る。

突如母、ガブリエガブリエル(マリオン・コティヤール)が通りがかりの細い小道に「コミーヌ通り」と書かれた標識を見て、「車を止めて!」と叫ぶ。
「先に行っていて、後から追いつくから」

20年も前、1950年代、フランス南部の小さな村ラ・シオタに暮らす若くて美しいガブリエル。

最愛の人との理想の結婚を思い描きながら、地元教師との一方的な恋に破れたガブリエルは、両親の決めた正直者で情の深いスペイン人大工のジョゼと不本意な結婚生活を送っていた。

ジョゼは本気でガブリエルを愛し献身的に接するが、ガブリエルは「あなたを絶対に愛さない」と強く言い張るのだった。美人妻の夫を見下す不遜な態度。

それでも日々、近づいては離れる官能的な夫婦の営みは続く。
そして妊娠するが流産。その原因が腎臓結石と診断され、治療のためアルプスの山麓にある療養所(サナトリウム)に送られる。

アルプスの山並みに白い雲がかかりサナトリウム前の清冽なせせらぎには鳥が群がる。
今でも結石は水の衝撃波のショックで石を粉砕する治療法がとられる。

とは言え、治療と言っても単に水着姿になりホースで温水を大量に腰と尻に浴びせられるだけ。

ガブリエルは、その療養所で治療にあたっているインドシナ戦争(1946~54年までのベトナムのフランスからの独立戦争)で負傷した帰還兵、アンドレ・ソヴァージュ-中尉(ルイ・ガレル)と雷に撃たれたような運命的な恋をする。

 一目惚れ、アンドレこそ彼女が思い描いていた理想の男性だ。
人妻であるのを忘れアンドレ中尉の胸に飛び込む。

 激しいセックスシーン、ラジオから絶えずチャイコフスキーのピアノ曲「舟歌」が流れている。いつしか二人の間の愛のテーマ曲になっている。

監督と脚色は「海の上のバルコニー」などのニコール・ガルシア。女優としても活躍する
ミレーナ・アグスのベストセラー小説を映画化。

 ガブリエルが、およそ17年かけて愛の本質を見つけるまでの紆余曲折を描く。
妻を実直に愛し優しく愛おしんだ夫ジョゼは療養所で中尉が最後に転院する際に言葉を交わしており、
中尉の顛末を知っていた。

もし真実をガブリエルに話したら彼女は恐らく命を絶っただろう。
「君に生きていて欲しかった」と17年後に告白するジョゼの優しさに涙が止まらない。

僕がこの映画に惹かれるもう一つの理由はチャイコフスキーのピアノ曲「四季」の「舟歌」にある。
小学生の頃に聞いて何て美しいメロディだと印象深く胸に残っていた曲が、ガブリエルとアンドレのテーマ曲になり、二人の情熱的なセックスで生まれた息子、マルクに子ども時代からピアノを習わせ「舟歌」を繰り返し弾かせる。

アンドレとのセックスの激しさ。全裸の2人は絡み合い舐め合い抱き合うシーンがスローモーションを交えて実に官能的に描かれる。

前半に夫ジョゼとのベッドシーンとは対照的だ。
裸の絡みはビジネスライクで喜びも満足もあったものではない。

17年後、マルクが参加するリヨンでのピアノコンクールに一家揃って出かける時、
ガブリエルは何百通と書いて返事が無かったアンドレ中尉のアパートのある住所「コミーヌ通り」を見つける。

これが冒頭のシーンだ。
先に夫と息子に会場へ行ってもらい、ガブリエルだけが訪ねたパートに住んでいたのはアンドレの甥で、彼は17年前、療養所からリヨンの病院へ転移したその日に亡くなったと言う。

「君に生きていて欲しかったのだ」

ジョゼの言葉が舟歌のピアノ曲をバックに刻まれる時は感動のクライマックスとなる。
この実直なスペイン人の夫、ジョゼを「ローマ法王になる日まで」などのアレックス・ブレンデミュールが演じ、
致命的な病い(病名は不明、リヨンの病院で人工透析を受けている)に倒れたフランス軍中尉の帰還兵を「サン・ローラン」などのルイ・ガレルが好演。 影の薄い「運命の男性」のシルエットのイメージは残る。

 スペイン人の大工ジョゼは誠心誠意ガブリエルに尽くすが、彼女は決して彼を愛さないと決心する。 しかし17年後の告白、「君に生きていて欲しかったのだ」
はガブリエルのハートに突き刺さる。

昨年のカンヌ映画祭に出品され、フランスを初めヨーロッパ諸国で大ヒットを記録するが、アメリカではハワイ映画祭などと言うチンケなイベントで一回上映されたのみ。一般公開の予定は無い。

この手の泣かせ(ウィーピー)映画はアメリカ人のテイストに合わないのか。
韓国映画より遥かにスタイリッシュで気品に溢れもっと泣かせるロマンティック・トラジェディだ。

10月7日よりヒューマントラスト有楽町他で公開される。

「ブルーム・オブ・イエスタディ」(Die Blume Von Gestern)(独・オーストリア映画):祖父は生粋のナチ党員、ホロコースト研究所員のトトは、仏からのユダヤ人女性研究者の面倒を見ることに

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今日(13日)昼のNHKニュースを聞いて驚く。
中国映画「戦狼2」の興行収入が11日で40億元(約655億円)を突破し、文化的事件と呼ばれるほどの異常事態になっていると言う。

先月27日の封切り以降、驚異的なスピードで数字を伸ばしてきたアクション映画「戦狼2」が僅か2週間目の11日、とうとう興行収入40億元(約655億円)を突破。

すでに中国映画史上ナンバー1のチャウ・シンチー(周星馳)監督の昨年(16年)の大ヒット作「人魚姫」を100億円の差をつけて抜き去り、「中国で最も売れた映画」になっている。

中国映画は反体制のものが多く上映が禁止された作品は数えきれない。
ワン・ビンの「無言歌」にしてもアリソン・クレイマンの「アイ・ウェイウェイは謝らない」にしても反体制の匂いを嗅ぐとどんなにレベルの高い文化的啓蒙的作品もアウト。

 要するに北京「中海南」のお墨付きを貰わねば動きが取れないのだ。
全国民を挙げての文化的事件とも呼ばれるこのメガヒット。

「中国民族主義戦線が世界を救う!」と中南海が喜ぶスローガンでうたっているように、
中国の特殊部隊がアフリカで反乱軍と戦い、熾烈な戦闘を繰り広げ的るという内容で、
「中国版ランボー」とも呼ばれるこの作品。

「威圧的な愛国主義に満ちた民族主義のアクション映画」と批評している。
15年に公開された「ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 VS PLA特殊部隊」の第2弾となる。

中国の特殊部隊がアフリカで反乱軍と戦い、鮮烈なアクションを繰り広げる敵をせん滅していくという内容で、アフリカでの反乱軍にはアメリカ人の傭兵の顔も散見されるというから、
その反乱軍のバックのトランプ大統領を叩きのめして日ごろのウサを晴らしているのかも知れない。

中国の共産党機関紙・人民日報が、
「全世界に向けて中国式スーパーヒーローの姿を示した」と絶賛する。
人民日報は中南海のスポークスマンだ。

中国人民解放軍の建軍90周年に合わせて公開されたことも重要なモーメンタムだ。
だからお墨付きの「愛国映画」なのだ。
国民の14人に1人が(つまり1億人)映画を観た計算になり、国内での熱狂ぶりがよく分かる。

東南アジアや北米でもすでに上映されており、英国では今月4日にロンドンやマンチェスターなど4都市のみで公開していたが、好調につきグラスゴーやオックスフォードなど6都市を加え、上映館の拡大を決定しているという。


さて中国を離れてドイツに飛ぶ。
ドイツ人は自国の映画以外はすこぶる居心地が悪いと思う。2度の世界戦争でいずれも悪者になった。特に第二次大戦ではヒトラー率いるナチスドイツは残虐無比、ヨーロッパ各国を蹂躙し殺戮を重ねた。特にユダヤ人に対してはアウシュビッツなどの絶滅収容所で600万人の老若男女をガス室で皆殺しにしたと伝えられている。

この映画は戦後70年を過ぎても世界の人々に残るドイツ人への悪感情を逆手に取って、開き直ったようなコメディだ。ドイツ人だけにそう開けっぴろげでなく陰に籠って比喩だったり皮肉だったりジョークだったり、素直じゃないが国民性が出ていて面白い。

主人公のトト・ブルーメン(ラース・ディディンガー)は学者で「ホロコースト研究所」に努めている。独身のアラフォーだから勿論「戦争は知らない」世代だ。祖先たちの犯した罪の贖罪のためか「ホロコースト」に取り組んでいる。

つまり真面目にこの映画は皮肉からスタートしている。
家庭環境をみれば分かる。祖父と兄はナチのシンパ。特にナチ親衛隊大佐だった祖父を告発した著書は世間から評価されアンチ・ナチの学者としての地位は高まるが、家族からはあんな好々爺のおじいちゃんをクソミソに貶したと総スカンを食らう。

一族の原罪に真摯に立ち向かうあまりいつも精神は安定せず妻、アンナ(ハンナー・ヘルツシュブルング)との関係もギクシャクしている。

研究所では2年がかりで企画している「アウシュビッツ会議」のリーダーを信頼していたノルクス教授(ロルフ・ホッペ)から外され、新たなリーダーに指名された後輩で嫌味のバルザール(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)と殴り合いの喧嘩となる。
悪いことに止めに入った教授が心臓発作で急死してしまう。

研究所へパリからフランス人の女性研究者でインターンのザジ・ランー(アデル・エネル)がやって来る。
アラサーの中々の美人だがユダヤ人と知って誰もが面倒くさがって辞退する。

だがバルザールの命令で騒ぎを起こしたトトが研究所を案内し資料を提供し研究を手伝うことになる。
ザジは開口一番、祖母がナチスドイツの犠牲者になったユダヤ人である宣言する。
トトの運転するメルセデスに乗ろうとしない。
祖母はベンツのトラックに乗せられガスで絶滅させられたと。
トトはベンツじゃない、オペルだと言おうとするが聞く耳もたない。

 しかしきっかけは違えど、共にホロコーストの研究に没頭する二人は、アウシュビッツ会議を力を併せて企画することになる。
反発し合っていた二人の距離は、少しずつ縮まっていく。そして、過去を検証する旅で意外な事実が発覚する。

主演は昨年上映された「パーソナル・ショッパー」などで馴染みのあるラース・アイディンガー。ドイツ人らしい不愛想さが上手い。

ユダヤ人女性研究者に「午後8時の訪問者」「スザンヌ」などの活躍が著しい
フランス若手女優のアデル・エネル。

 監督・脚本は「4分間のピアニスト」(06)で注目を浴びた、ドイツの才能ある中堅映画作家クリス・クラウス。主人公と同じように、家族にダークなナチ党員の過去があると知りショックを受けて、自らホロコーストの調査を重ね脚本を仕上げたという。

 昨年秋の第29回東京国際映画祭のコンペティション部門で東京グランプリを受賞した作品。
ドイツを理解できるのはかつての盟友だった日本だけ。
アメリカでは一般公開はされない。

 ドイツ人やドイツ映画の世界大戦で迷惑をかけた意識を持つ。
だからこそ100万人を超す難民を受け入れている。憲法で規定されているのだ。

 だから映画もDNAにインプリントされた原罪を意識し、「贖罪」を果たそうとする。

 しかし未来を生きる世代のために、過去を嘆き「贖罪」だけの時代に終止符を打とうと決心する。
その過程をナチの血をひくトトとアウシュビッツ犠牲者の孫、ザジの組み合わせで描く。

 ベルリン、ウィーン、ラトビアへと過去を追いかける二人の旅で気付いていくのは「すべての人間に、どんな傷でも癒せる、素晴らしい力がある。困難な日々の中にも必ず美しい花のような瞬間があり、昨日咲いた花(ブルーム・オブ・イエスタディ)(原題)が、今日、そして明日を輝かせてくれる。破天荒な展開のその先に、前を向く勇気をくれる。Ever Onward!」と。

 9月30日よりBUNKAMURAルシネマにて公開される。

「The Limit of Sleeping Beauty-リミット・オブ・スリーピング ビューティー-」(日本映画):小さなサーカス団のマジシャン助手をして10年、若く美しかったオリアアキも、30歳

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 イギリスの作家、フレデリック・フォーサイス(Frederick Forsyth) は1938年8月25日(もう直ぐ誕生日)、イギリス、ケント州アシュフォード生まれの作家。最近読まなくなったが、1938年生まれで乙女座と言う年齢と星座は僕と同じでデビューした頃から親しみを覚えていた。

最初の3作「ジャッカルの日」と「オデッサファイル」そして「戦争の犬たち」は歴史的事実に沿った国際陰謀小説で夢中になって読んだ。映画化もされ出来も悪く無かったことでフォーサイス熱は高まった。

 「私の履歴書」ともいうべき「アウトサイダー 陰謀の中の人生」(The Outsider My Life in Intrigue)(KADOKAWA:2016年12月刊)は小説家としてデビューする前の軌跡が余り知られていない。
それを踏まえて、英空軍のパイロットから5か国語を流暢に操る能力を活かしてロイター通信の海外特派員、BBC放送記者などジャーナリストなどの記述が詳細なので興味深かった。

 シャルル・ドゴール大統領の暗殺未遂事件を間近で取材、旧東ドイツ国家保安省の裏をかいてアメリカ空軍に協力し、ナイジェリアで悲惨な独立戦争に巻き込まれて行く。ソ連とアメリカが夫々支援する東西冷戦のさなかでもあり第三次世界大戦にもなりかねなかった。

 フォーサイスはビアフラ共和国として独立宣言をした東部州の指導者、オジュク大統領に親しみを覚える。

 ナイジェリア連邦を支配する古いイスラム社会のエスタブリッシュメントと進取の気性に富むイボ人の戦いにイギリスの保守体制と中流階級の対立と同じ構図を見たからだと訳者の黒原敏行は指摘する。

 世の中でフォーサイスはMI6のスパイだったと言う通説が流れている。
赤道ベストセラーの「ジャッカルの日」の印税を使って傭兵部隊を組織し、ギニア共和国でクーデターを企て失敗した。その経験に基づいて書いたのが「戦争の犬たち」だと。

 フォーサイスの小説には普通の市民には知り得ない内部情報が満載されている。単なる推察のフィクションで無く、自ら現場に飛び込み、身をもって体験し当事者から話を聞いて小説にまとめているから迫力が違う。

 エンディングで引退した田舎で5歳の頃航空ショウでパイロット席に座らせ貰ったスピットファイアを操縦する。世界中を飛び回る冒険の末に成功とお金を手に入れ、最後に少年の夢を叶えて第二次大戦の名機スピットファイアMk9で生まれ故郷のケント州ダックスフォードの空を飛び回る爽快感はヒシヒシと伝わって来る。



タイトルを見て試写室へ飛び込んだ。熱くて思考能力が欠けている。
てっきり「眠りの森の美女」をテーマにしたハリウッド映画だと思ったら,
桜井ユキと言う園子温や三池崇の素っ頓狂な映画(「リアル鬼ごっこ」や「極道大戦争」)に脇で出ている若い子だと気が付く。

「SLUM-POLIS」「MATSUMOTO TRIBE」で注目を集める(とプレスに書いてあるが知らない)二宮健監督が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で審査員特別賞を受賞したインディーズ作品「眠れる美女の限界」を、商業映画デビュー作としてセルフリメイクしたものだと言う。知らない訳だ。

ヒロインは、小さなサーカス団でマジシャンの助手をしている29歳のオリアアキ(桜井ユキ)。
女優を夢見て上京するが芸能界は甘いものではない。
サーカスに拾われてマジシャンのアシスタントをはじめたが、入団した10年前はまだ若く美しかったアキもアラサー、30歳を目前に生きる目標すら見失っていた。

アキはステージの上で、マジシャンに身体を胴切りにされたり、樽の中で剣を突きさされたり、催眠術にかかり空中に浮く演技をしているうちに、彼女の妄想と現実の境界が揺れるようになる。

自分が歩んできた人生、そして過去の疑問と屈折ばかりがアキの中を駆けめぐる。
そんな精神状態のアキにとって、唯一の美しい思い出は、恋人カイト(高橋一生)と一緒にすごした時間だった。

2つの世界の境界が壊れようとしたとき、アキの人生再生がはじまるのだが、
そのあたりをしっかり観客に分かる形で提供して欲しかった。
だが、アキの妄想と現実の境界をさまよう姿は中々スタイリッシュなイメージで悪く無い。

主人公のアキ役を「フローレンスは眠る」などの桜井ユキ。

10月21日より新宿武蔵野館にて公開される。

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(日本映画):母親の再婚で町をでていかなければならない中学生のなずなは、同級生の典道に一緒に「駆け落ち」をしてくれないかと頼み込む

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今朝はこれから成田へ向いミャンマーヤンゴンに飛ぶ。
本来なら今頃は12日―19日とボランティア医師団8名を派遣し口唇口蓋裂(兎唇)の子どもたちに無料の手術(ミッション)を行う予定だったが、H1N1(スペイン風邪)の勃発で現地では6名も死亡し、10月に延期になった。

しかし現地での老朽化したヤンゴンジェネラル・ホスピタル(YGH)の改装や改築をスマイルアジア(SA)と共に僕の主宰するNPO法人「子どもに笑顔」が手伝うことになり、現地でのYGH幹部や日本のコントラクターの皆さん、そしてSA幹部とヤンゴンで落ち合い17日まで2日間に亘り協議する。

ヤンゴンはSAとしてはミッションを年に2-3回行う重要な拠点で日本の寄金で建立されたYGHは別名「ジャパン・ホスピタル」と呼ばれ市民の信頼の篤い病院だが、
さすがに半世紀以上経つと老朽化が目立つ。

旅支度をしているところへ、ソニー映画の広報マンから11日よりスタートした「スパイダーマン:ホームカミング」の嬉しそうなレポート。

中国(「戦狼2」の3週間で700億円の大ヒット)を除いてハリウッドを始め全世界が大作の「シリーズ疲労」に加え8月の夏枯れ「ブルース」で、例えば今週末の前年同週比興行成績(BO)で3割も落ち込んでいるが、日本でのスパイダーマンは元気なようだ。
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★週末興行収入No.1スタート!★
「スパイダーマン:ホームカミング」
日本全国大ヒット上映中!!
15歳の高校生スパイダーマンとアイアンマンとの競演で話題のスパイダーマン新シリーズ「スパイダーマン:ホームカミング」(ソニー・ピクチャーズ配給)が8月11日(祝・金)に日本公開を迎え、週末土日2日間で動員289,898人、興行収入448,410,600円となり、週末興行収入No.1ヒットスタートを切りました。
公開初日から3日間の累計成績は累計動員506,929人、累計興行収入775,325,400円と大ヒットとなっております。日本でのNo.1オープニング達成により、オープニングNo.1は世界54カ国となり、全世界累計興行収入は今週末で7億ドル(約763億円、1ドル=109円、8/14現在)を突破。

3日間累計で累計動員50万7千人,累計興行収入7億7千5百万円。
前作の「アメイジング・スパイダーマン2」の公開週末3日間累計興行収入対比で148%と、大きく超えてのオープニング成績となりました。
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紹介する映画は、意味は良く分からないがタイトルが良い。
中学生たちが議論している。
打ち上げ花火を下から見ると「丸い」が、高いところへ登って横から見ると「平ら」だと言う。

1993年にTV放映され、総集編が95年に劇場公開もされた岩井俊二監督の名作テレビドラマを、「モテキ」「バクマン。」の大根仁による脚本、「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之の総監督でアニメ映画化したもの。
20年後に今を盛りのアニメ化とは考えたね。
ウン、アニメにするのは正解だ。時間を繰り返しロマンスを盛り立てるファンタジーな設定が生きる。

ある海辺の町の夏休み。
中学生たちは花火大会を前に「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」という話題で盛り上がっていた。

島田典道(声:菅田将暉)と幼馴染で親友の安曇祐介(宮野真守)は、なずなの前で競泳対決をすることになる。
典道は、競争のさなかに水中で不思議な「玉」を見つける。

一方祐介は競争に勝ち、なずなに花火大会に誘われる。

クラスのアイドル的存在の及川なずな(声:広瀬すず)が、母親(声:松たかこ)の再婚のため転校することになる。

 母親は恋多き女で最初の男と駆け落ちしてこの町へやって来て生まれた女の子がなずな。
これで3度目になる結婚で、住み慣れた海辺の町を離れるのが嫌でたまらない。

そこで、なずなは典道に一緒に家出ではない「駆け落ち」をしてくれと頼み込む。
なずなを好きなくせに優柔不断で仲間にはなずなへの想いを隠している典道は即座に返答ができない。

大体この及川なずなは性格が悪い女の子だ。
自分は学校ではマドンナだと自覚し行動し、やたらとコナをかけるから周りでは誤解をする男の子が一杯いる。
典型的な被害者が安曇祐介。親友の典道に競泳で勝ったから、なずなに「告白」すると宣言する。

電車で「駆け落ち」寸前に新しい父親と母親に見つかり家に連れ去られようとするなずなをひき戻し、電車に乗って逃げる。
いや最初は新しい父親(三木真一郎)にぶん殴られ電車に乗れずなずなは目の前で連れ去られたのだ。

典道はどういう訳か水中で拾った「玉」を投げると時間は戻り、なずなを母親の手からひき戻し、電車に乗り込むことが出来る。

新しい父親と母親が電車を車で追いかけてくる。
踏切で祐介とその友人たちに見つかり、こちらも典道となずなを線路上を走って追いかける。

切羽詰まった時に玉を投げれば思い通りに状況は変わる。
車と仲間に追われ電車は臨んだように海の上を走り始める。
クリストファー・ノーランの映画「メメント」に似ている。時間を逆に巻き戻す。

「ラブレター」や「リップヴァンウィンクルの花嫁」などの岩井俊二によるTVドラマを基にして、「物語」シリーズなどの新房昭之が総監督を務めた。

 脚本は「モテキ」シリーズや「バクマン。」などの大根仁がアニメ用に書き上げた。
現代の要素を入れながら長編として再構築し、夏休みを過ごす中学生の男女を主人公に、
何度も繰り返されるある1日を描く。
そして1日の果てに起こる、恋の奇跡の物語。

「海街ダイアリー」や「ちはやふる」シリーズなどの広瀬すず、
劇中アイドルになりたいと松田聖子の「夜明けが来ない夜は無い~」と
「瑠璃色の地球」を歌いだすが、意外と上手い。

 主人公典道の声は「共喰い」などの菅田将暉、最新作の「帝一の國」は良かった。

パラレルワールドのアニメ「君の名は」が興行記録を塗り替えるヒット作になれるのなら、このアニメにはそれ以上のファンタジー・ワールドが詰め込まれている。

8月18日よりTOHOシネマズ日本橋他全国公開される。

「ザ・サークル」(The Circle)(アメリカ・アラブ首長国連邦映画):個人のプライバシーは完全になくなる近未来社会では何が起こるのか?

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昨夕(15日)ヤンゴンに到着した。時計をみたら9時、しかしローカルタイムは6時半、時差が2時間半ある。

外は雨が降っている。気温は27度と言うから、日本と変わりない。
雨季は4月後半から9月の終わりまで続く。ホテルまで1時間かかる。空港を出た途端にバンパーとバンパーが競り合う渋滞だ。

皆、ピカピカの新車(日本車、韓国車、ドイツ車)を乗り回している。自転車にバイクなんてイメージはひと昔のものだ。銀行や保険会社などの大きな建物が立ち並び、サムソンやメルセデスのネオンサインが大きい。

2年振りのヤンゴンだが盛んな外資の投入で更にどこでも見られる大都市になってきている。


僕は思うが、映画はネットの動画に徐々に蚕食されるどころか、存在を否定されつつあり、アマゾンやネットフリックスなどは家庭の大型画面に2K3Kで配信し、映画館にとってかわられようとしている。
だからネットでは追随が出来ないImaxや3D果ては4Dなどの大型の立体イメージで勝負しようとしている。

映画人はネットに精通してないだけ恐怖心も大きい。例えば今から20数年前にサンドラ・ブロックが主演した「ザ・インターネット」などは不気味で潜在能力の高いネットを神格化したスリラー映画を作っている。一枚のフロッピーディスク(今では博物館もの)を特定の操作をすると、絶対にアクセス出来ない施設や政府の機密情報に侵入するのが一大事件になる。

この映画に登場する「サークル」と言うIT会社、はそれほど幼稚では無いが、フェイスブックやグーグルやツイッターの機能を併合したような会社だ。脚本家も勉強しただろうが上っ面を撫でただけ。
巨大なオペレーティングシステムにより個人のメールやソーシャルメディア上でのSNSのデータを集め、銀行の取引履歴など全てがリンクし、1つのオンラインからすべてが見透かされてしまう。個人情報を完璧なものにしていく。
つまりモラルやコンプライアンスが無ければ、IT企業は個人のプライバシーを無くしつつある。

例えは悪いが宇宙人が人間の中に侵入し中身をすっかり頂く「ボディ・スナッチャー」のようなものだ。
その監視システムに偽造の映像を付ければ大ヒットするとの会社幹部の目論見は当たった。

スティーブ・ジョブ然としたサークルのCEO会長、イーモン・ベイリー(トム・ハンクス)は絶えず会社の方針として繰り返す。
「Know is good but knowing everything is better.」 情報を集めるなら徹底的に総てを集めよう、と。

舞台は近未来の社会、メエ(エマ・ワトソン)は、「サークル」と呼ばれるインターネット大企業に新入社員として勤め始め大きな仕事を任されることになる。

目玉大のカメラをつり下げ24時間メエの家庭や仕事環境、昔からの友人知人仲間たちに接して画像情報を送り続ける。メエの両親、父親、ヴィニー(ビル・パクストン)も母親、アニー(カレン・エリアン)も喜んで被写体になる。

映像は24時間放映されメエは今や誰でも知っているクィーンだ。
サークルでは、新入社員だが世間に名も知れ渡り献身的に情報取集の能力と成果が認められベイリー会長も大満足。

プライバシーが時代遅れとなり、個人情報が金儲けのために収集、監視されるデジタル社会に変わっていく様子がスリラーとして描かれている。

高給取りになり良い生活を送ることができて、仕事も順調のはずなのに。世界で最も影響力のある企業に就職できたのは自分にとっていいことだったのかと疑問を持ち始める。

実際両親のヴィニーとアニーもメエを敬遠して家にいれない。友達も同僚も遠ざかる。昔のボーイフレンドマーサー(エラー・コルトレーン)がコンプライアンスに沿った誠実なアドバイスを与える。

ファンの集いで例によってベイリー会長と取り巻きでナンバー2のタイ(ジョン。ボイエガ)がいつも通りの会社の先進的技術と無尽蔵のデータを誇らしげにスピーチしているところへメエが登壇しベイリー会長とタイ副会長のデータが抜けているので補充すると言い出す。
逃げ足の速い両巨頭の姿は巨大データバンク・メカニズムの崩壊を思わせる。

先端技術と個人プライバシーと振りかぶりアイロニーとコミカルタッチで描いた作品も大物スターを使いながらも観客には真面目にうけとられない映画になったようだ。

アメリカで4月28日に新登場したが惨めなのはトップどころか4位に甘んじている。
STX and EuropaCorpの制作の映画 「The Circle」は3163館で上映され9.3M.

前週の水曜にトライベッカ映画祭でお披露目上映もされた。

制作費は僅か20億円にも満たない18M。予想していたように観客のウケは最悪で、出口調査CSでD評価(ホラー映画でもD評価なんてない)、Rotten Tomatoesで17%と言う低評価。

二人の大物スターE・ワトソンとT・ハンクスが主演しているのにこの体たらくだ。
エマ・ワトソンは大作「美女と野獣」」に引き続きの主演だし、「ハドソン川の奇跡」や「王様のホログラム」や「インフェルノ」などヒット作で引っ張りだこのトム・ハンクスと話題の2人だ。

原作はデイヴ・エガーズの同名小説を映画化し、
「スマッシュド ~ケイトのアルコールライフ~」などのジェームズ・ポンソルト監督が自ら脚本を手掛ける。

3週目は1.7Mで9位に落ち、17日間の国内累積も18.9Mと20Mに届かず、興行的には大失敗だった。

4週目からはチャート外に消えた。

エンドクレジットに献辞が出る「ビルへ」(For Bill)
映画完成して半年、今年の2月に61歳で他界したビル・パクストンへのお悔やみの言葉だ
詰まらない映画でのちっぽけな役(メエのお父さん)が遺作では心残りだろう。

ビルとトムの主演したロン・ハワード監督の名作「アポロ13号」(95)のDVDを手向けに見てあげてほしい。

11月10日よりTOHOシネマズ六本木(予定)他全国公開される。

「亜人」(日本映画):いくら殺しても生き返る「亜人」。亜人のテロ集団ほど天下無敵で国家への脅威となるものは無い。

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ヤンゴンに来て3日目、
止まない雨は無いというが土地の人に聞けば4か月間毎日振り続けていると言う。
驟雨のようにザっと降るのでなく肌に絡みつくようにシトシトとか細く空から舞って来る。今晩の便で東京へ帰る。東京の暑さの方が未だマシだ。


北欧のミステリの重鎮、ジョー・ネスボの「その雪と血を」(Blood On Snow)(Hayakawa Pocket Mystery:2016年10月刊)は170Pに満たない短いハードボイルド小説だが面白さは抜群だ。
 
70年代のオスロ。
主人公、オーラブ・ヨハンセンは殺し屋で麻薬業者のボス、ダニエル・ホフマンに命じられるまま殺人を請け負っている。

 今回の仕事は不貞を働いているダニエルの妻、コリナ・ホフマンを殺すことだった。
 だが、コリナを見た途端、信じられないことが起きる。オーラブは一目でコリナに惚れてしまったのだ。
 だからコリナの不倫相手の若い男を射殺してボスに報告する。
ボスは激怒する。若い男はダニエルの一人息子、ベンヤミンだった。

 ホフマンは部下を送ってオーラブを消しにかかる。オーラブは麻薬市場を二分して争っている一方のボス「漁師」に近づく。
 
真っ白な肌を持つコリナとジャンキーのボーイフレンドが焦げ付かせた借金を身体で払おうとしたマリア、この二人のファムファタールを連れて「漁師」を利用しながらホフマンとの勝負に出る。
 タイトルで謳うように純白の雪と深紅の血にシンボライズされるハードボイルドミステリーが展開される。



冒頭シーンはショックだ。
病気の妹を救うために研修医となった永井圭(佐藤健)は、ある日道路を横断中に暴走して来たトラックに跳ねられる。トラックは永井の死体を敷いたまま車体を乗せて行き過ぎて止まる。

腕も足も不自然に曲がり頭から夥しい出血が舗道に流れる。
だが暫くすると死体から黒い煙が立ちむっくりと永井は起き上がる。
新しい「亜人」の出現だ。

亜人とはと、説明が入る。
「命を繰り返す。姿かたちは人間と同じ」
「死んで初めて自分の真実を知る」

医師の研修に励んでいたインターンの永井がトラックにはねられて生き返り
自分が「亜人」だと知る。
「亜人にしか見えないある能力を持つ」

僕はこういう荒唐無稽でハチャメチャな設定は好まないが、見ているうちにいつしか
引き込まれる。

プロローグで字幕が語る。いくら殺しても生き返る「亜人」ははじめアフリカで発見され今や世界で45人を数える。

日本では亜人の本格的動きは無いが、事前にその対策のため厚生労働省の亜人管理委員会担当局を設置しトップに戸崎優(玉山鉄二)を据えている。
2人目までは数えたが永井が3例目になるので捕らえて解剖しリセットをしながら亜人の解明に当たる。

亜人研究施設に監禁され非人道的な実験のモルモットにされた永井圭は、同じく亜人の男・佐藤(綾野剛〉が単独で施設に侵入し救われる。
が、佐藤は国家転覆を狙い大量虐殺を繰り返す不死身のテロリストだった。
永井はテロリストにはならない。
助けてもらったものの永井は佐藤と戦い離れて行く。

佐藤のテロ集団は亜人の仲間がいる。

永井の前、2例目の田中(城田優)は苦い経験から人類に敵意を抱き激しい復讐の念を抱いている。
佐藤の考えに共感する奥山(千葉雄大)は車椅子に座るITギークでハッキングが得意。
死なないのが嬉しくてたまらない高橋(山田裕貴)人類との殺し合いが大好きだ。

永井の他に佐藤の部下は皆亜人だし、亜人管理委員会の戸崎の秘書、下村泉(川栄李奈)も実は亜人で戸崎のボディガードを務めている。

田中と下村の亜人同士の死闘も見せ場の一つだ。小さな体で大きな田中と接戦を繰り返す下村はセクシーだ。

アクションの大きな見せ場は佐藤がショットガン一丁で精鋭兵士を集めたSAT(特殊急襲部隊)と戦うシーンだ。弾は5-6発しか撃てないから包囲されながら補填するシーンはハラハラする。
囲まれ捕縛寸前に自分で脳天を撃ち抜き返り血でSAT隊員がウロウロする間にリセットし反撃するなんてマンガだね。(いやこれはマンガだった)

丸太を製剤するソーミルの中に入り込み、肉体をバラバラにして肉塊の一番大きな部分から蘇生するなんて気持ちが悪い。

亜人がそれぞれ持っている黒い影のIBM(Invisible Black Matter)になると付いて行けない。あんなヘンテコな物体をよく作り出したものだ。

2015~16年に劇場3部作とテレビシリーズ2期でアニメ化もされた桜井画門の大ヒットコミック「亜人」を「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督が実写映画化。

故郷愛の「うどん」で道を外した本広監督もこういうアクションになると本領を発揮する。

9月30日よりTOHOシネマズ日劇他で全国公開される。

「スナッチド」(Snatched)(アメリカ映画):36歳のエイミー・シューマーと71歳のゴールディ・ホーンの母娘の最強のバディムービー。

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日本には入ってこない作品。どうして日本で公開しないのか分からないが、おそらくキャストや監督の名前だけで中身を見なくて断っている作品が多いと思う。

最近の飛行機は昔と違い最新の映画を2ダースも3ダースも機内で放映してくれる。
ヤンゴン往復で5本も見たが酷いのは1本だけで(リチャード・ギア主演のイスラエル映画「ノーマン」)他は十分堪能できるものばかり。

今日紹介するのは「Snatched」(さらわれて)、アメリカでは5月12日の「母の日」週末に新登場したが2位は予想だにしなかった。

この週のダントツ首位は2週目に入った夏シーズ大作の冒頭を飾った「GUARDIANS OF THE GALAXY VOL.2」(邦題「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」)が新登場作品を難なく抑えている。
63Mで国内2週目累積は246.2M(279億円)、1週先行している海外市場で52.2M,3週目累積が384.4M、中国市場だけで80.5M(90億円)も目立つ。ワールドワイド総計はアッという間に630.6M(714億円)に達している。,

このFOX配給、ジョナサン・レヴィン監督の「Snatched」は3501館で上映され、17.5M。
問題は主演の女優が、日本では余り知られていない、小太り美人(と言うか完全なデブ)の36歳のエイミー・シューマー主演の前作「Trainwreck」(15)はデビュー週に30M行っていたがやや追いつかない。

ジャド・アパトー監督のラブコメディ「Trainwreck」(邦題「エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方」)今年の3月に日本で公開されたが自分で脚本を書いて主演している。なかなかの才女だ。この映画でシューマーを知る。

「Snatched」は制作費は僅か42M(48億円)だから赤字の心配はない。

「母の日」の母娘アクション・Rレイト・コメディ。
ボーイフレンド・マイケルと南米旅行を計画していたエミリー・ミドルトン(エイミー・シューマー)だが旅行直前に無職になった上に振られてしまう。

チケットの払い戻しも出来そうもなく、仕方なく異常に用心深く膝が痛いと家を一歩も出ない変わり者の母親リンダ(ゴールディ・ホーン)を説得し、エミリーとリンダ親子ふたりで南米エクアドルのリゾート地のヴァカンスに旅立つことに。
早くに夫に死なれ娘と息子を長い間手塩にかけて育てて来た母親リンダは娘の必死の頼みを断れない。

懐かしいね、ゴールディ・ホーン。今年72歳で、顔こそ皺くちゃだが小顔でブロンド。怠け者でだらしが無いエミリーみたいなデブ女を持て余している図はアチコチで見られる。15年振りにスクリーン復帰したゴールディ・ホーンはまだまだ鑑賞に堪えるご存知のように、カート・ラッセルの妻であり女優、ケイト・ハドソンの母だ。

エクアドルは赤道直下の太平洋に面した観光の国。北はコロンビア、南と東ペルーに挟まれゴロツキや悪い奴がウロウロしている。
良い評判をとりたいエクアドルを舞台にして悪の巣窟みたいな描き方をして、国からクレイムが来ないのかね。

エミリーは例によって酒をがぶ飲みし人に無礼に当たり、ドラッグまでやり悪い連中ともめて殺傷事件まで起こし悪い連中の手に落ちる。

ここから何とか抜け出し逃避行が始まるが、年が離れたバディムービーの感がある。

主演のコメディアンヌのエイミー・シューマーに負けじとゴールディ・ホーン。50年も笑わせて来た実績はダテではない。年の功でしっかり「笑い」をとる。

映画評論家の批評はソコソコだが、観客にあまりウケが良くない。
出口調査(CS)はB評価、Rotten Tomatoesも38%と低調。
面白いことに Red States(共和党支持州)や西部諸州で好評。
77%が女性客、内51%が18-34才の年齢層。

この週の新登場で辛うじて3位に食い込んだWBの大作、ガイ・リッチー監督の「King Arthur: Legend of the Sword」(邦題「キング・アーサー」)は3702館でたったの14.7M。しかも制作費は4倍の175M(200億円)も使っているにもかかわらず、次週から早々にこけ、制作費の回収も出来ず赤字がドンと増えた。才人、ガイ・リッチーもエイミー・シューマーに負けている。

日本での公開は無い。FOXからDVDが発売されている。

「グローイング アップ スミス」(Growing Up Smith)(アメリカ映画):アメリカに移住したインド人の少年が隣の美少女エイミーに恋心を燃やすには時間がかからなかった

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インド映画は悪く無いが、時には3時間にナンナンとする長さ、最初は悪い奴に苛められるが最後は正義が勝利する単純さ、突如ストーリーに関係なく集団で歌い踊り出すこと、出て来る女性は皆美人だが、主役は男で大抵は醜男こと、などで積極的に見る気はしない。

インド人の少年が主人公のこの映画もインド映画かと思ったが上記の要素を含まないパリパリのハリウッド映画なのでホッとする。

 冒頭はインドの何処か丘の上で青年、スミス(サムラット・チャクラバルチ)が独白し回想する。
「僕はこれまで二人の女性を愛した。一人はアメリカに居た時、隣の家のエイミーで、もう一人は僕の妻、と言ってもメイルオーダーの花嫁で僕が学校へ上がる前に決まっていた。」

スミスは脳神経外科の医師、妻の脳腫瘍を治癒しようと脳神経外科を選んだのだが手遅れだった。

スミスの回想は1979年のアメリカ・オクラホマへ飛ぶ。
厳格な両親(アンジュ・ニガムとポルナ・ジャガナタム)とティネージャーの姉、アシャ(ショバ・ナラヤン)、それに中学1年生のスミス(ロニ・アクラティ)の4人でインドから移住して来た。

 アメリカに移住したと言っても、両親はヒンズーの教えに従いインドの慣習規律で生きている。外界のアメリカ文化など無視だ。

例えば子供達には既に両親がインドにいる時に決めた結婚相手を決めてあり、アメリカ文化をいち早く取り入れ社会に順応している子どもたちを苦々しく思っている。
ベジタリンでビーフやポークやましてやビーフなどはとんでもない。

スミスがお使いに行き、お釣りでケンタッキーフライドチキンのバスケットを買う。
一口食べて吐き出す。
突如両親の教え、菜食主義を思い出したのかと思ったら
、スミスは「こんな不味い食べ物は初めてだ!」と言うのに笑える。
KFCの逆PRだが、いいのかね。

スミスが一目惚れした向いの家の可愛いブロンドのエイミー(ブライトン・シャービット)。
同じクラス。
インディアン!と、レイシストの同級生に苛められるのを助けて貰ったり、
趣味の映画を話したり遊園地や映画館へ行ったりしている内に恋心は更に燃焼する。

しかしエイミーは父一人に育てられ寂しい。
町を出て橋を渡りお婆ちゃんの家に出かけそこから離婚して音信不通となっているNYの何処かにいる母親を探そうとする。
そうと知ったスミスは州境をまたぐ長い吊り橋を渡りタクシーに乗り込む寸前のエイミーをつかまえ説得し思いとどまらせる。

感謝したエイミーの父親ブッチ・ブラナー(ジェイソン・リー、キャストの中で唯一見たことがある)は今まで通り二人を温かく見守り、スミスに色々アドバイスを与えるメンターになって行く。

 妹のアシャがボーイフレンドと熱いキスをしている現場を捉えた両親は
エイミーの惚れているスミスともどもインドに送り返し、
ヒンズー教で一から鍛え直さねばならぬと決心し二人は強制送還される。
 反抗し家出などをしないのは両親を敬うインドの慣習をいまだ持っているからだ。

それから19年、シーンは妻の脳腫瘍を救えなかった青年医の回想になる。
スポイラーになるから詳しく書けないがスミスはオクラホマの両親の家を訪ねすっかりアメリカナイズされた両親や妹夫妻甥姪に会う。

エイミーは小学校4年の担当の先生だと聞き、19年前の子供用自転車を引っ張り出し
隣の州に住む彼女の許へ駆けつける。
長い吊り橋の前で一旦止まり意を決して走り出すとスミスはあの時の中学生になっている。

少しチープでインディアン的だが成人前の通過儀礼のほろ苦い青春コメディ映画としては良く出来ている。

監督のフランク・ロティトはオーストラリア・メルボルン生まれでコメディアンとして活躍しハリウッドへ渡ってTVドラマや短編の経験を持つ。
この作品で長編劇場映画の監督デビュー。
これからのキャリアには幸先の良い作品に仕上がりショウケースとして誇示できる。

日本での公開予定は無い。

「ギフティッド」(Gifted)(アメリカ映画):数学の天才少女メアリーは叔父さんフランクと楽しく生活を送っている

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今日も面白いのに日本では公開されない作品を紹介をしよう。
タイトルはGifted」天与の才能がある、と言う意味で意訳すれば「天才少女」だ。

数学の天才少女を巡る物語は痛快で面白い上に、クリス・エヴァンスやオクタビア・スペンサーなどの人気スターが出ているのに公開未定とは、日本の配給会社は見る目が無い。

6歳のメアリー(マッケナ・グレース)は叔父のフランク・アドラー(クリス・エヴァンス)と暮らしている。天才数学者の母親が30歳の時に自殺をして以来ハーバード大学の准教授を辞めて日雇い労働者として、メアリーの保護者として学校の送り迎えも含めて一生懸命に面倒を見ている。

フランクのガーディアンに反対なのが祖母でフランクの母、エヴリン(リンゼイ・ダンカン)。
彼女自身数学の達人だったが子育てのためきっぱりと足を洗ったのだ。

メアリーは母や祖母の足跡を追って数学の天才振りを発揮している。
学校へは行かなければならない、と言うフランクの方針は厳しく、地区の公立小学校へ通うことになる。

 メアリーを演じるマッケナ・グレースは11歳で映画初演。
如何にも早熟でマセた顔と態度は演技しなくとも自然体で行ける。

若い女性の先生、ボニー(ジェニー・スレイト)の質門が幼稚でバカバカしい。
1+1はとか7+9はとか、あっという間に解くと3ケタと4ケタの掛け算を出すと暫く考えている。
「そうらやっぱりダメだろう」と次の簡単な質問を他の生徒にだしているとメアリーは答えを出す。
計算機ではじくと合っている。

メアリーは問題児だ。
スクールバスで7歳の子を苛めている12歳の男の子を6歳の女の子が小黒板でぶん殴り
鼻骨を折り5針縫う傷を負わせる。
校長から呼び出されるがフランクもメアリーも平気の平左だ。

著名な大学教授が大学院生にも解けないような問題を出す。
解けない。
そら見たことかと教授は鼻高々。
大学からの帰り道フランクがどうしてもダメだったかと聞く。

「だって設問が間違っているもん」
「どうしてそれを言わないんだ!」
「だって叔父さん、いつも大人に反抗するなって言うでしょ」
フランクは教授室へ戻りメアリーは設問を直しアッと言う間にQED(=quod erat demonstrandum)証明終わり

担当教師ボニーは校長先生と相談して天才児を育てる私立学校へ奨学資金込みで決めるが
フランクがウンと言わない。
自分の許に置き普通の女の子として育てると一歩も譲らない。

前半ここまで天才少女振りの痛快さでグ映画を引っ張るが、
新聞報道でメアリーの存在を知ったバイオロジカルの父親と言うのが登場する。

ブラッドリー・ポラード(ケイル・オドネル)がメアリーの母親と一晩すごしたことを告白し
DNA鑑定で親権を求め法廷闘争となる。
天才少女の父親で一旗揚げようと言うもの。

フランクの弁護士グレッグ(グレン・プラマー)と色々対策を練るが、
日雇い労働者で養育費も出せないフランクには不利。

そうかと言ってメアリーが有名になるまで名乗りを挙げなかったブラッドリーにも
裁判長も簡単に親権を渡さない。

裁判の間にフランクとボニーにロマンスが生じるのは自然の成り行き。
メアリーが突然帰宅し全裸の身体にタオルを巻いただけの先生の慌てぶりに大笑い。
ませているメアリーもクールに「いいじゃない」と言う態度。

監督は「スパイダーマン」シリーズのマーク・ウエブ。
脚本は「Watch It」などのトム・フリンのお蔵入りの「ブラック・リスト」から拾われた作品。

少女メアリーのパーソナリティを映画の軸に据えストーリーをグイグイと引っ張る、なかなかのメロドラマ&コメディだ。
 
日本では公開未定。

「ホリデイ・イン」(Irving Berlin’s Holiday Inn The Broadway Musical)(アメリカ映画):大作曲家アービング・バーリンの名曲を辿るミュージックボックス型ミ

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アービング・バーリン(Irving Berlin)と言う偉大な作曲家の名は皆知っていると思うが、経歴は意外と知られていない。

生誕名はイスロエル・イジドル・ベイリンでロシアに接するベラルーシ生まれのユダヤ人。
追われて、アメリカに移住してから才能をメキメキと発揮し名を挙げた作曲家、作詞家。

1888年5月11日生まれで1989年9月22日に101歳の天寿を全うしている。
正式な音楽教育を受けたことはなく、楽譜の読み書きは出来なかったが、半世紀にわたる音楽活動で膨大な量の優れたポピュラー・ソングを作詞・作曲し、
ジョージ・ガーシュウィンをして「アメリカのシューベルト」と言わしめた人物である。

著名な代表曲に「ホワイト・クリスマス」「ゴッド・ブレス・アメリカ」「イースター・パレード」などがあり、このミュージカルの中にも散りばめられている。

底本になるのは1942年のアメリカの戦時中の映画。
ビング・クロスビー、フレッド・アステアが主演、アービング・バーリン音楽。

1940年5月、アービング・バーリンはアメリカの国民祝日だけにオープンする
「ホテル」のアイデアに基づくミュージカル映画の企画を
パラマウント・ピクチャーズに売り込み独占契約をした。

ビング・クロスビー、フレッド・アステア主演、マージョリー・レイノルズ、ヴァージニア・デール出演と豪華なメンバーが揃う。

マーク・サンドリッチがプロデューサー兼監督で1941年11月から1942年2月まで撮影し、1942年8月、ニューヨークのパラマウント・シアターで公開。

アメリカとイギリスで成功し(当然日本やドイツ、イタリアには入って来ないね)、
当時のミュージカル映画の中で最高の興行収入となる。
劇中歌「Be Careful, It's My Heart」がヒットすると思われていたが、
実際は「ホワイト・クリスマス」がヒットし1942年10月から11週間首位を守る。
他のバーリンの歌で「Happy Holidays」はオープニング・クレジットなどでも使われる。
この歌はそれほどぽピュラーでない。

さてその映画を原作としたミュージカルが「ホリデイ・イン」
今年のトニー賞候補にもなった舞台を「松竹ブロードウェイシネマ」を
シネ歌舞伎のノリで上映することになった。

出演者は若い俳優たちで名前も知らない。

冒頭「ブルースカイ」を歌いながら登場する主人公ジム(プライス・ビンカム)。
NYで華やかな小ビジネスに携わっているがスターになれる訳でもない。
NYの隣の州、コネチカットの農場で農業を営むことにする。

そんな時に地元、コネチカットで教師をしているリンダ(ローラ・リー・ゲイヤー)に出会う。
活発で元気溢れる若い美人教師。

ジムはリンダに会って人生が変わる。
農場を立派なホテル「ホリデイ・イン」に建て替え
11月の感謝祭から独立記念日まで祝日毎に豪華なショウを展開したらどうかとプランを練る。

 そこへジムの親友、テッド(コービン・ブルー)が訪ねて来る。
リンダの歌と才能を見抜きテッドはハリウッドへとリンダを誘う。

1942年のクロスビーとアステアの映画では絶対登場しないだろう、テッドは黒人だ。

ハリウッドの有名なプロデューサーも「ホリデイ・イン・ショウ」を見ていて折り紙付き、
ハリウッドでは映画も用意されていると言う。

ここでジムがOKと言ってしまえばドラマにならない。
「僕は田舎に残る、君はハリウッドでスターになれ」と突き放す。
テッドとリンダはハリウッドへ飛ぶ。

独立記念日の後は祝日は無い。感謝祭もクリスマスも祝日では無いが「ホリデイ・イン・ショウ」は
クリスマスを主題に舞台を仕上げる。
ここで初めてアービング・バーリン作曲の「ホワイト・クリスマス」がお目見えする。

初演では無いが「イースター・パレード」も彼の作曲、
第二の国歌「ゴッド・ブレス・アメリカ」「アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド」
「オールウェイズ」などヒットパレードの数々でうっとりとなると、
詰らないドラマはどうでも良くなる。

勿論ハッピーエンディングでジムとリンダは結ばれるのだが。

祝日で感謝祭やクリスマスをいれて何故「マーティン・ルーサー・キングJRデイ」
が無いのかとバカなことが頭をよぎる。

11月10日より東劇他にて全国公開される

「あなた、そこにいてくれますか」(Will You be There?)(韓国映画):ベテラン医師と研修医、同じ自分が時空を超えて一人の女性を熟愛するSF映画でこんなに泣かされるとは思ってみなかった

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冒頭のシーンにぎょっとなる。
2015年、カンボジアに子どもたちの治療を終えた医師団が洪水が押し寄せると
ヘリコプターで脱出しようとする。

1人遅れた医師ハン・スヒヨン(キム・ユンソク)は
盲目の老人に抱かれた赤ん坊の口唇口蓋裂(兎唇)に気付き
ヘリを降り老人から子供を受け取る。

 僕が主宰している慈善団体NPO法人「子どもに笑顔」も
ボランティアの日本人の医師や看護師を医師のいない東南アジア諸国に派遣して
無料の手術を施す。

カンボジアへも何度も行った。

術後に縫合した唇に絆創膏を貼った赤ちゃんが笑っている。
だが気になるのは、スヒヨンは形成外科医で口唇裂手術には麻酔医が必要だ。
子どもの場合は全身麻酔をかける。
手術そのものより麻酔が一番難しい。

麻酔医のミスで赤ん坊が死んだ例が北京とヴェトナムである。に
アメリカに本部を置く大きな慈善団体「オペレーション・スマイル」が発足したのも
似たようないきさつがある。
アメリカ人形成外科医、ビル・マギーが、1987年フィリピン・マニラで
かなりの数の赤ん坊の手術を終え出発しようとしていたら
口唇裂の孫を抱えた老婆が一房のバナナを差し出す。
言葉は通じないが「バナナを上げるからこの子の兎唇を直しておくれ」と言うのだ。
通訳を通して「必ず来年やって来るからそれまで待って」と言い残し、
そして翌年(1988)に無料手術を後進国で行う「オペレーション・スマイル」を
ビルとキャシー・マギー夫妻は設立するに至るのだ。

盲目の老人は村の長老。
お礼にと(バナナじゃなく)「過去に戻ることが出来る10粒の薬」を貰う。

半信半疑で薬を一粒飲んだスヒョンは深い眠りに落ちる。
目覚めるとプサンジン駅前の電話ボックスにいる。

心配して声を掛けて来た若い男(ビョン・ヨハン)を見て驚く。
何とその青年は30年前の研修医時代の自分ではないか。
若い研修医スヒヨンは鼻血をだしてる50代の男性を介抱するがトイレへ行ったままいなくなった。

30年前、研修医のスヒヨンはイルカの調教師のヨナ(チェ・ソジン)と恋仲だった。
彼女に会うためソウル大公園のイルカショーを見に来ていた。
ヨナは二人の間に子どもが欲しいと打明けるがスヒヨンは戸惑ったまま列車に乗って家路に向かう。
そこへさっきわかれたばかりのヨナが突然現れ仔犬を差し出し、
「大事に育てて行きましょう」と「じゃがいも」と名付けた犬を渡す。

電話ボックスで会った若い男は犬の名前を言い当てるなどスヒヨンしか知らない事実を告げる。
「俺は30年後のお前えだ」
「お願いだからもう一度だけヨナに会いたい」と言う思いを話すが、
若いスヒヨンは取り合わず
「彼女に指一本触れるな」と命令する。

過去の自分と現在の自分とヨナを巡ってトゲトゲしい三角関係が面白い。

韓国映画のキモは「泣かせ」だ。
相思相愛の片方が不治の病か不慮の事故で突然亡くなる。
時空を超えたSFでどう泣かせるか?

スヒョンの願いは、30年前に亡くなった恋人ヨナにもう一度会うこと。
カンボジア長老の薬を飲み、本当に1985年にタイムスリップし、過去の自分と出会う。

そこで会った若き時代のスヒョン。
ヨナの死を知っているので過去に戻りは彼女を助けたいと願うが、
ヨナとの未来を選べば、彼女の死から10年後に誕生するはずの娘が存在しないことになってしまう。過去と現在、2人のスヒョンは、どんな決断をするか?
ここからのドラマは感動の涙を流させ映画そのものを堪能する。

スポイラー(ネタバレ)になるから細かなことは書けない。
見事に盛大に泣かせてくれる。隣の中年の女性などは準備万端、ハンカチを2枚も用意している。

原作はフランスの作家ギヨーム・ミュッソのベストセラー小説「時空を超えて」を舞台に韓国に移して実写映画化したもの。

主演は「チェイサー」などの実力派俳優キム・ユンソクと、テレビドラマ「ミセン 未生」の若手俳優ピョン・ヨハンが、過去と現在の主人公スヒョンを2人1役で演じる。
ヒロイン、ヨナを演じるチェ・ソンジンは韓国TVドラマで活躍しているので日本には馴染みが無い。楚々とした清純な美人だ。

監督は「結婚前夜 マリッジブルー」や「キッチン 3人のレシピ」などの女性らしいタッチで注目されたホン・ジヨン。

10月14日よりヒューマントラスト有楽町ほかで公開される

「スマーフ」(SMURFS: THE LOST VILLAGE)(アメリカ映画):意地悪な魔法使いガーガメルは青い妖精・スマーフを沢山捕まえて自分の魔法力を強化しようと企む

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元々はベルギーの漫画から生まれた青色の体をした妖精のキャラクターたちをこれまでは実写とCGを組み合わせて作り上げて来たアドベンチャー・コメディー。
アメリカではImaxや3Dで上映される小屋の方が多い。

しかしこの3弾目は実写はなくなり全編アニメ。

森の中の青い妖精スマーフの村。長老パパ・スマーフが管理しているが皆個性豊かでパパ・スマーフが何を言っても気にしない。
だが、その中で唯一女の子、スマーフェットは異色だ。彼女は粘土から作られていると信じ,出生の秘密を探ろうとする。ある日空を凧で飛んでいて禁断の森に入ってしまう。そこで不思議なスマーフに出会う。彼の落とした帽子から失われた村(THE LOST VILLAGE)があることを知る。

意地悪な魔法使いガーガメルはスマーフを沢山捕まえてそのエッセンスで魔法の力を強化しようと考えている。その帽子をガーガメルに拾われてスマーフの村の存在を知られてしまう。

いつも思うがファミリーアニメで子供を連れて行く親の身にもなって欲しい。親が見ても楽しめる内容やストーリーが欲しいのだ。

NYでのスマーフは結構堪能できたが今回の詰らないストーリー、理屈に合わない展開、面白くも無いジョーク。幼稚園児から小学生低学年の子どもたちは喜ぶが親は余りの幼稚さに唖然とするばかり。

親でも笑えたのはエンディングクレットへのガーガメルの八つ当たりだ。
「何だ!青い空から延々と降って来る白い文字は、
どうしてこんなに長いんだ!『マット・ペインター』って何のことだ!
そもそも『マット』とは何だ!」

観客がいつも抱くエンドクレジットへの不満を晴らしてくれる。
実際誰が食事を出したか(ケイタ―リング)誰が車を運転したかを
どうして知らせる必要があるんだろう。
魔法使いガーガメルよ,良く言ってくれた。

アメリカでは4月7日より登場し3位にランクされたのがSPE(コロンビア)のフルアニメーションのファミリー層狙いの「Smurfs: The Lost Village」。
3610館で14.1M(15億円)と期待外れの数字で関係者を失望させている。
この時点では日本公開は見送られているが、
スタジオの要請で急遽ユーナイテッド・シネマ・コンプレックス36スクリーンの上映が決まる。
都心にはUCの劇場は無い。
ローカルの小さな小屋だから字幕も読めない。
だから吹き替えの2D版のみの上映となる。

きのこの形の家に住む青色の体をした小さな妖精のキャラクターたちを主人公とするコミックは1928年にベルギーの漫画家、ピエール・クリフォールの原作に登場するや忽ちヨーロッパ諸国を始めアメリカでも大人気となった。

4年振りのシリーズ3作目。
「Smurfs: The Lost Village」は2011年に公開された実写とCGIアニメの第一弾「The Smurfs」(邦題「スマーフ」「The Smurfs」(2011)はワールドワイド総計で563.7M(626億円)と好調だったが、2013年の「The Smurfs 2」は,制作費105Mをかけたのにワールドワイド総計、347.5M(386億円) しか稼げなかった。

だから第三弾のこの「Smurfs: The Lost Village」は一気に再活性化し挽回しようと言うものだがどうやら失敗に終わったようだ。制作費は半分に抑えて60M(66億円)だが赤字になりそうだ。

ファミリー映画が氾濫している真っ只中に公開することは無かった、何故もう少し延ばせなかったのかと言う声も聞こえます。
SPE関係者は白旗を上げていません。「出口調査がA評価なので口コミが徐々に効いて来る」と先行きを楽観視している。

「シュレック2」や「ノミオとジュリエット」などのケリー・アスベリーが監督。

大都会NYを離れ、、今回は深い森の中の平和なスマーフの村で仲良く暮らす妖精たちを虎視眈々と狙う魔法使いガーガメル。

アメリカや世界でダメでも、小さなお子さんたちは何とか青い妖精たちを応援して日本では立派な興行成績を残して欲しいと願うのみ。

10月7日よりユナイテッドシネマ豊洲他で公開される。

「リングサイド・ストーリー」(日本映画):夢だけは大きい役者バカのヒデオは年上のカナコのヒモ。稼ぎもプライドも無い癖に嫉妬心だけは人一倍強く、恋敵との戦いをリングの上でつけようとする。

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サトエリこと佐藤江梨子も35歳。
ブラジル人と結婚し、2年半前子供を産んでも
未だシェイプアップされたナイスボディで魅力的。

交通事故により左半身の麻痺と記憶障害の後遺症を抱えて車椅子での生活を送る女性と
平凡なタクシードライバーとの、実話に基づくシリアスな純愛物語「抱きしめたい -真実の物語-」
から4年、

ようやく主演映画が登場した。
10年付き合い同棲中の江ノ島カナコ(佐藤江梨子)の彼は、ヒモ同然というかヒモの売れない役者、村上ヒデオ(瑛太)。

出会った頃、舞台袖で見たヒデオは輝いていて、7年前大河ドラマで主役ではないが脇役をふられた時は、ヒデオの言うように「カンヌ映画祭」に連れていってくれると信じていた。

ところが最近は、オーディションに落ち続け、マネージャー百木(近藤芳正)が決めた
エロVシネの大役さえ、撮影当日にドタキャンする始末。

ある日、カナコは勤め先の弁当工場を突然クビになり
唯一の収入源が無くなり二人の生活は大ピンチとなる。

プロレス好きだったヒデオは、武藤敬司(本人)率いるプロレス団体「WRESTLE-1」(レッスル・ワン)の広報が人員募集している事を知り、彼女の職探しをアシストし広報の担当のポジションを得る。

しかしカナコは新天地でイキイキと働きだし、自分を少しも構ってくれない。
てっきり浮気していると勘違いして嫉妬に狂ったヒデオは、
とんでもない事件を起こしてしまう。

リング上でケリをつけろと命じられたヒデオはK-1チャンピオン和希(武尊=たける)と
一騎打ちをする羽目に。

可笑しいのはヒデオの錯覚。
チャンピオンと言っても和希は164センチのチビで体重は僅か63キロ、
自分は183センチで79キロもある。
身体のサイズだけで圧倒出来るのではないか。

武藤がスパークリングの相手になるがヒデオはグローブの重さだけでヘナヘナと崩れ落ちる。
ダメだコリャと思ったが幾らかモノになりそうなのが右のパンチ。
当たるとドシンとインパクトがある。

「僕ね、小学校から卓球やってるの、だから右の振りだけは年季が入っている」と。
トレーナーが知恵を付ける。
リングに上がりゴングが鳴った瞬間にダッシュして右パンチを繰り出せ!と。

さて役者だけにヒデオの入場は派手だ。
テーマ曲に乗って白いガウンに白いマスク、華やかな入場で観客を湧かせ
リングにロープを飛び越え着地。

さて肝心に右パンチが炸裂するのだろうか?
興味津々の瞬間が近づく。

夢だけはデカい典型的なダメ男と、彼を支える健気な女が繰り広げるアクションのラブコメディ。

主演は、4年ぶりの映画主演作となる佐藤江梨子。
ブラジル人と結婚したっていい女には変わりない。

ヒモの瑛太もサトエリの1歳下の33歳。
主演デビュー作の「サマータイムマシン・ブルース」(06)で注目され、
「嫌われ松子の一生」や「余命一カ月の花嫁」「土竜の唄 香港狂騒曲」「殿、利息でござる!」などなどどんな役柄もこなしてキャラ七変化して役者としても円熟期に入っている。

他に、近藤芳正、余貴美子、田中要次、有薗芳記、高橋和也などベテランたちが脇を固める。
武藤敬司、武尊、黒潮“イケメン”二郎など、K-1×プロレス界のアスリートたちが顔を揃えて出演している。

監督は、長い間助監督を務めあげた50歳の武正晴。2014年の「百円の恋」で苦労が報われ、日本アカデミー賞の優秀監督賞を受賞した。

オリジナル脚本は横幕智祐と李鳳宇。
李も「シネカノン」を倒産させた後も頑張っている。
「パッチギ」や「フラガール」などの才能は未だ残っているようだ。

「百円の恋」の脚本家・足立紳の実話をもとに制作したオリジナルストーリーだと言う。
久し振りに笑わせてもらい堪能したコメディだ。

10月14日より新宿武蔵野館他で上映される

「スキップ・トレース」(Skiptrace)(米・中・香映画):殉職した同僚の遺児が闇の組織に誘拐される。米人詐欺師と組み拉致された遺児を探しまわる香港警察ベニー刑事。

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 業界紙に依ると、映画制作の裏話が報道されている。
予定していた監督がサム・フェルからレニー・ハーリンに代わり、ジャッキーの相棒がショーン・ウィリアム・スコットからジョニー・ノックスヴィルになり、撮影監督チャン・クオック・ハンが撮影中に溺死する(献辞がエンドクレジットに捧られている)などの事件が相次いで仕上がりも公開日も1年以上遅れたと言う。

原題の「skip trace」とは行方不明者を探すとか、借金取り立てるの意味。

還暦を過ぎた(63歳)ジャッキー・チェンの主演で、香港の刑事とアメリカ人詐欺師が、ひょんなことからあちこちのマフィアや警察から追われる身となりロシアや東南アジアで逃亡劇を繰り広げる様子を描いたバディムービー。

9年前、香港警察の刑事ベニー・チャン(ジャッキー・チェン)は、香港犯罪界のドンと疑う「マタドール」と呼ばれるヴィクター・ウォン(ウィンストン・チャオ)を捜査中、相棒のヤン(エリック・ツァン)を失った。

ヤンもマタドールも仕掛けられたダイナマイトで焼死し、彼の一人娘のサマンサ(ファン・ビンビン)を託されたその後見人として面倒をみることになる。

しかし死んだ筈のマタドールは生きていた。
引き続きマタドールを追っていたベニーは、潜入捜査の失敗から住宅街に甚大な被害を与えたことで停職処分を受ける。

川沿いに建つ古い木造住宅がドミノ倒しのように次々と倒壊して行く様は笑える。美術も良く考えたものだ。

その頃、マカオのカジノで働くサマンサのもとに現れたアメリカ人詐欺師コナー・ワッツ(ジョニー・ノックスヴィル)はサマンサを巻き込んだイカサマにより大金をせしめて姿をくらます。

サマンサの上司、ハンサム・ウィリー(ヨン・ジョンフン)は何としてでもコナーを探し出すようサマンサに命令、彼女はベニーに助けを求める。
だがサマンサは闇の組織に拉致され何処かに監禁される。

コナーを追えばサマンサの監禁場所も分かるとふんだベニーは、既にコナーはロシアまで高飛びしているとわかったベニーは、単身ロシアに乗り込んで彼を逮捕する。簡単に捕まるのであれって感じ。

しかし、サマンサは見つからず、なぜか二人まとめて追われることになってしまう。
コナーはロシアン・マフィア、香港マフィアなどありとあらゆる組織に狙われている厄介者だったのだ。どちらを向いても敵だらけ。

とんだ疫病神に出会ってしまったベニーだったが、何と、よりによってこの男が、ベニーが9年も追っているヴィクター(またはマタドール事件のカギを握っている人物だということがわかる。

二人は衝突しながらも世界を逃げ回ることになる。所謂「バディムービー」なのだが、親密感は無い。
サマンサを見つけなければならないのに、逃亡先でさらに敵を作るコナー。

怒り心頭のベニー。
相性最悪なコンビは、巨大な犯罪に立ち向かうため、と言うより目の前の敵からとりあえず逃げるため、ありとあらゆる手段を使ってサマンサを解放すると約束された香港・啓徳クルーズターミナルを目指す。

あの懐かしい湾に突き出た狭い空港が今やフェリーの発着所だ。
そこへ約束の男が現れる。

ジャッキー・チェンが主人公の刑事ベニーを演じるが、千尋の谷底を覗いて尻込みし、水中アクションはモタモタするなど、往年の派手なスタントは陰を潜め、むしろギャグで笑わせる。だから観客へのエンターテイメントサービスは忘れていない。

例えば、ロシアのマトリョーシカ人形のジョークは面白い。
カンフーの突きで壊しても次から次へと入子人形が出て来る。

コナー役を「ジャッカス」シリーズで派手なスタントを披露したジョニー・ノックスヴィルが演じる。
ドラム缶に入れられゴロゴロ転がりながら逃亡したり,歯でドアを開けようとしたり、ジョークでも冴えを見せる。

サマンサ役を「X-MEN:フューチャー&パスト」のファン・ビンビンが美しく花を添えるがそれだけ。

むしろ興味を惹くのはコナーの愛人的存在のロシア美女、ダーシャ(イヴ・トーレス)。細身のシェイプした強靭な体から繰り出すパンチや蹴り,突きは本物だ。

監督は「ダイハード2」「クリフハンガー」などのアクションの演出に長けたフィンランド出身のレニー・ハーリン。「5デイズ」以来になるから5年振りの現場復帰だ。

相変わらずのエンディングのNGカット集は楽しいし、ジャッキー・チェンの賞味期限は切れることはない。

9月1日よりTOHOシネマズ・スカラ座他で公開される。

「All Eyes On Me オール・アイズ・オン・ミー」(All Eyes On Me)(米映画):ラッパーの大スター2Pacは96年9月にラスベガスで凶弾に倒れ僅か25歳で亡くなる

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この映画の前,15年に伝説のギャングスタ・ラップ「N.W.A」を描く「ストレイト・アウタ・コンプトン(StraightouttaCompton)」があった。

1980年代、麻薬売買が横行するアメリカ屈指の危険な街、カリフォルニア州コンプトンでくすぶっていた5人の若者によって結成されたN.W.A。
黒人差別の時代に彼らはラップで世界を変えようとした。あまりに過激な歌詞は若者たちを先導すると同時に政府から目をつけられることとなる。ギャングスタ・ラップを生み出し、今や伝説となったN.W.Aの結成から成功、そして挫折までを映し出す。

今日紹介するこの映画は全米興行収入3週連続1位と大ヒットを記録し、アメリカで社会現象になり、音楽伝記映画として過去最高のヒットを記録した。

アメリカでは6月16日から公開され、新登場「CARS3」とホールドオーバーの「Wonder Woman」に続いてチャ-ト3位にランクされた。全米、2471館で上映され27.1M。観客の出口調査はA評価と好評だ。

トゥパック・アマル・シャクール(2Pac)は1971年6月16日の生まれ、1996年9月にラスベガスで凶弾に倒れ25歳の若さでこの世を去った。

生誕46年を記念して今年の6月16日に映画は公開された。

冒頭はブラックパンサーの闘士だった母親アフェニ(ダナイ・グリラ)が無罪判決で出所し大きなお腹を抱えてインタビューを受ける。
アフェニはNYブルックリンのスラム街で2Pacと妹を産み育てる。
ブラックパンサーでの活躍で住居を転々とするので友達は居ない。アフェニはドラッグ依存症で2Pacどんなに意見し止めさせようとするが無駄で彼は一生薬に手を出さない。(アフェニは昨年死去)

役者に憧れていた彼は12歳の時ハーレムの劇団に入りシェイクスピア劇などを演じ1986年にバルチモアに移住しバルチモア芸術学校に入学する。その頃からラップに没頭し多くの詞を書き始める。
薬物依存の母親の所為で家庭は貧困のどん底、借金取りに追われるように17歳の時にカリフォルニアに移住した。

ラッパーになり大金を稼ぎ母親や妹に余裕のある裕福な暮らしをさせたいとの想いがあった。
1991年には2Packの名でアルバム「2Paclypse Now」でソロデビューを果たす。自分の名を入れ込んだフランシス・フォード・コッポラ監督の「Apocalypse Now」(地獄の黙示録)をモジった見事なネーミングだ。
「All Eyes On Me」(僕は皆に注目される)は最後のアルバム名。
これが映画のタイトルになっている。

ラッパーとして着々と実績を積み上げて行くがレコーディングに訪れたスタジオで強盗に会い5発の銃弾を受ける。
それでも奇跡的に一命を取りとめた2Packはアルバムは次々とミリオンセラーを記録する。

映画は時系列的に2Packの自伝を描写するがどうも表面的で思想やフィロソフィーに踏み込めない。
セクシュアルハラスメントと言う冤罪(女など掃いて捨てる程いるのに)で1年半の刑期で拘留されている彼の自伝を撮影すると言う形でインタービュアが延々と質問をし2Packが回想する形で前半は単調に進む。

後半はシュグ・ナイト(ドミニク・サンタナ)の主宰するデスロウ・レコードで活躍し、東海岸に「デスロウ・イースト」を設立しビジネスを拡張するよう動いていた。
東対西の対立の中で2Packは殺されたと言うのが定説になっているが、ラスベガスでシュグと乗ったリモに並行して走って来た白いリモから至近距離の銃撃は避けようが無かった。20年経った今も犯人の目星もついていない。

2Packを巡る女性陣の華やかさ。特に最後の愛人だったキダーダ・ジョーンズ(アニー・イロンゼ)は
クィンシ―・ジョーンズの娘、成功した黒人のトロフィーワイフで白人を貰う、だから本物のニガーでは無いと揉めながら最後はただ一人の女になる。アニー自身も白人の血が入っていて美人だ。
「シュグに呼び出されたが1時間で戻る、必ず戻るから赤いドレスを着て待ってろ、直ぐに食事に出かけるから」が最後の言葉
他に彼に思慕を寄せ続ける女性、カットグラハム役にジェイダ・ピンケット=スミス。ウィル・スミス夫人だ。

監督はMV出身でこれが4作目のベニー・ブーム(Benny Boom)。
09年の「Next Day Air」(日本未公開)で長編劇場用映画デビュー。
素材が良いのに充分にこなしきれていない。力量不足が散見される。

主演は4000人のオーディションから選ばれたディミーイトリアス・シップ・ジュニア(Demetrius Shipp Jr)がズブの素人ながら堂々と2Pacを演じ歌い踊る。映画の終わった今はロングビーチに住んでおり祖父の所有する教会で趣味のドアムを叩いている。,

デスロウ・レコードのオーナー、シュグ・ナイト役のドミニク・サンタナはプラチナレコードの連続で舞い上がる2Pacを諫める。良い奴か悪い奴か分からない巨体にスキンヘッド、不敵な面構えと存在感がある。

観客はアフリカ系52%と圧倒的に多く、白人は22%、ヒスパニックは19%の順。
この人種構成は前述の「Straight Outta Cmpany」とほぼ同じ。

2Pack自身の在り物のフーテージでたっぷり聞かせてくれるラップのリズミカルな歌声、絶えず襲われるなど危険と隣り合わせの生活を送る姿、毅然としたその「Thug Life」(ギャング的ストリートの生き方)」とタトゥーで身体に彫り主張している。

母親アフェニの口癖「I’m gonna be a revolusionary」(革命的に生きる)とか義父のムチュール・シャクールの「I'd rather die on my feet than live on my knees」(膝まついて相手に媚びて生きるより、反抗して立ち上がり殺される生き方を選ぶ)などと言う陳腐な言葉を並べるのにはガッカリする。

12月新宿バルト9他で公開される

「永遠のジャンゴ」(Django)(仏映画):1940年、ナチスドイツに占領されたフランスでジプシー音楽の巨匠、ジャンゴ・ラインハルトはギター一本を武器にサババルを図る。

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ナチが絶滅収容所に送り込んだのはユダヤ人ばかりでは無かった。同性愛者の他にジプシーは純血ではないと絶滅された。

インドから端を発したジプシーはヨーロッパを中心に、東アジアを除くほぼ世界中に分布しているといわれる。

馬車で移動をする。 各地で劇場やサーカスを運営したりして生計を立てている、 自然を愛し、家でじっとすることが難しいくらいである。

そして、音楽によってジプシーは自分たちの心を表現する。
ジプシーへの差別はヨーロッパのどこにでもあるようにドイツでも伝統があった。
ユダヤ人と一緒にジプシーは拘束された。
1939年9月にはドイツ国土の推定「3万人のジプシー」をユダヤ人と同様にポーランドへ移送された。
大量虐殺計画を隠ぺいするために支配下におき植民地と化していたアウシュビッツのような殲滅収容所を建てるのにポーランドは適所であったのだ。

50万人もの人が犠牲になったのにもかかわらずユダヤ人とは異なり、迫害後も長い間援助や理解をほとんどあてにすることができなかった。

主人公、ジャンゴ・ラインハルト(レダ・カテブ)は同胞たちを襲う不幸なナチの圧政を知りながら
自分と家族は大丈夫だと考えていた。
何よりも自分の音楽は世界的に有名だ。
ナチも尊敬し遠慮してジャンゴへは手出しをすまいと。

ジャンゴこそ、ロマ(ジプシー)音楽とスウィング・ジャズを融合させた音楽で、後のミュージシャンたちに多大な影響を与えたジャズギタリストだからだ。
 ナチはジャンゴの音楽で欧州に大きな影響力を与えているアメリカ黒人のブルースを打ち消そうと考えている。

1943年、ナチス・ドイツ占領下のフランス・パリでもっとも華やかなミュージックホールに出演していたラインハルトは、満員の観客を魅了し続けていた。

 ジプシーの旅芸人の家庭に生まれ、才能ある演奏家としてパリで活躍するジャンゴが、ナチスによるロマへの迫害に危機を感じている最中に、ナチスの官僚が集う晩餐会での演奏を命じられる。天国から地獄だ。

 ナチスによるジプシーへの迫害はさらに悪化し、多くの仲間たちが虐殺され、家族、そしてジャンゴ自身にも危険が迫っていた。

 自分だけは大丈夫だと信じ切っているジャンゴにナチス官僚が集う晩餐会での演奏が命じられる。
久しぶりにパリに舞い戻ったジャンゴの愛人、ルイーズ(セシル・ドゥ・・フランス)からナチはそんなに甘いもんじゃないと警告を受ける。
「家族全員でただちにスイスへ逃げなさい」と。

事の重大さを知ったジャンゴは年老いた母親ネグロス(ビンバン・メルスタイン)と妊娠中の妻、ナギーヌ(ベア・バーリャ)を連れ、目の前にスイスが見える小さな村、トノン=レ=バンに移り、レマン湖の畔の家を借りて住み始める。

 古くは「サウンド・オブ・ミュージック」新しくは「少女ファニーと運命の旅」にみられるように
国境を越えスイスへ逃げ込みさえすれば身の安全は守れる。。
これらの映画の逃亡者はユダヤ人だ、捕まれば確実に収容所へ送られ殺されることは必至だ。

しかしジャンゴはユダヤ人ではない。
懐が甘い。近くにある親戚や友人たちのジプシー・キャンプに出掛け、食い扶持を稼ぐためにジャンゴは即席のバンドを組み地元のバーで演奏を始める。
そこへナチスの将校たちが押し寄せ,色々と命令し始める。
レジスタンスを助けたり,イギリス兵の逃亡に手を貸したり、様々なアクションシーンが展開される。

観客は活劇を見に来たわけでは無い。
火事で大やけどを負い3本指でギターを奏でる道徳の奏法を浴び出し、自信の作曲を含め全編ジプシージャズの名曲が流れる。

「黒い瞳」「13日の金曜日」大ヒットした「雲」(Nauges),「涙」「夢の城」「たそがれのメロディ」などなど80年近くなっても昔耳にした美しい弦のメロディは残っている。

長編劇映画は初めてのエチエンヌ・コマール監督の不器用さ未熟さが散見されるが、
アルジェ系フランス人のレダ・カティブの熱演と、
撮影監督のクリストフ・ボーカルヌの演奏シーンのショット、そして一歩外へでたレマン湖と広がる草原と山並み、緩急自在のカメラワークの見事さに耽溺する。

主人公・ジャンゴ・ラインハルト役に「ロスト・リバー」「ゼロ・ダーク・サーティ」「黒いスーツを着た男」などののレダ・カティブ、40歳のアルジェリア系フランス人で口髭に黒い中折れのソフト帽を被り長い馬面が古典的で役柄に合っている。

舞台が長かったが映画デビュー作「預言者」で注目を浴びる。見た顔だが名前が思い出せないと言う典型的な脇専門の役者。
だから主演のこの作品が代表作となるだろう。

大きな役ではないが、劇中花を添えるのは「スパニッシュ・アパートメント」「ある秘密」「ヒア アフター」などのフランスを代表するセシル・ドゥ・フランスが花を添える。

ベテランのプロデューサーのエチエンヌ・コマールは「チャップリンからの贈り物」「大統領の料理人」などの脚本を手がけ、本作が初監督となる。勿論アレキシス・サァクトの小説から脚色した脚本も書いている。

ナチス支配下の戦争の時代を生きた不世出の天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの伝記映画としての仕上がりは凡庸。ベルリン国際映画祭のコンペに出品したがカスリもしなかった。

実在のジャンゴは「マイナー・スウィング」など数々の名曲を残し、ジミ・ヘンドリックス、B.B.キング、エリック・クラプトン、ジェリー・ガルシア、ジミー・ペイジ、カルロス・サンタナ、ジェフ・ベックなど世界中のミュージシャンたちが影響を受けたギタリストだが、その部分は欠落している。

 ストーケロ・ローゼンバーグ率いるローゼンバーグ・トリオが、劇中の楽曲すべてのレコーディングを担当している。


音楽を担当したThe Rosenberg Trioはギタリストのストーケロ・ローゼンバーグが率いるバンドで、2010年にジャンゴにオマージュを捧げるアルバム『Djangologists』を発表している。
日本人の我々が知り得ない、ジプシー(ロマ)の音楽、彼らの人生、生き様、哲学を披露して貰える

11月25日からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開される。

「MASTER マスター」(MASTER)(韓国映画):ハリウッドから久し振りに祖国映画に復帰のイ・ビョンホンが希代の詐欺師で悪役とは

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アメリカのこの週末の興行成績を見て驚く。2001年の911後の週末BO以来15年振りの悲惨な成績だ。
チャートトップ12作品の総合計は60M(66億円)を切る。2011年9月21-23日は総合計は59M,トップ12の総計は43.5Mだった。

あの頃は非常時で皆ピリピリし映画どころでは無かったのですが、今年の夏映画のこの惨状は一体何が原因だろうか?

まさかハリウッド嫌いのトランプ大統領の陰謀ではあるまいに。

そもそもアメリカでは夏映画シーズンと言うのがあり5月末のメモリアルデイから9月初めのレイバーデイの14週間で興行成績の1/3を稼ぐ。

普通で言えば8月は最後の拍車をかけての盛り場の筈なのだが、シリーズ大作に客が入らず、「8月のブルース」と呼ぶ映画離れが蔓延して急激に興行成績が落ち込んできている。

ハリウッドの大作は中国の熱狂的立体映画好きで何とか救われているが、ハリウッドから好みの映画が来ないと自力で「戦狼2」(Wolf Warrior2)を制作したところ1か月で900億円も稼いだ。14億の民は映画好き。

この映画はアフリカの傭兵隊と中国民族軍が戦う単純なアクションだが、傭兵にアメリカ人が多く登場し、中国軍創設80周年と重なり中南海(共産党要人の住居区)の支持もあり国民一丸となって映画館へ突っ走る。中国の大富豪がハリウッドのスタジオや映画館網を買い漁る。

今や映画のメッカは中国へ移ったか。

もう一つ面白く無いニュース。これは日本の映画興行界にショックの話だと思う。

低迷するアメリカ興行界の成績のチャートで、先週トップで今週も首位を維持する
Lionsgateの「The Hitman's Bodyguard」が
日本では邦題「ヒットマンズ・ボディーガード」と言う題名でインターネットのNetflixで25日から公開している。

辣腕の殺し屋のダリアス・キンケイド(サミュエル・L・ジャクソン)は国際司法裁判所で証言することになり、 安全に移動するために世界最高のボディーガードであるマイケル・ブライス(ライアン・レイノルズ)を雇う。 2人はダリアスを殺そうとする凶悪な刺客たちを蹴散らしながら裁判所を目指す。


監督は「レッド・ヒル」「エクスペンダブズ3 ワールドミッション」などのパトリック・ヒューズ。

Netflixは映画館のような大画面では無くPCのモニターにVOD(月額690円)で鑑賞するもの。
PCの小さな画面で見るものを映画と呼べるかどうか疑問に感じるが、
言えるのは映画業界の衰退を加速させるものでしょうね。


韓国でナンバー1の男優はイ・ビョンホンだろう。なぜならデビューしてから優しい男の役が多く眼尻を下げての笑顔が気に入り今では熱狂的に僕は彼を応援しているから。「悪魔は見た」のリベンジ劇なんて興奮したね。 のっぺりした韓国顔でも彼なら許せる。

しかしこの映画は気に入らない。ハリウッドで「GIジョー」だの「マグニフィセント・セブン」などイケイケドンドンのイ・ビョンホンがなんでこんな薄汚い悪役をそれも、臆病で皆からバカにされる詰らない人物を演じなければならないの?

濃い目の茶髪にサングラス、見た目はいつも通りカッコ良いイケメンなのだが「詐欺のマスター」悪のピラミッド、ワン・ネットワークの頂点に立つチン会長に扮するイ・ビョンホンなのだから。
いつでも白馬に跨った王子様でいて欲しい。
それが落ちぶれて外へ出ると殺し屋に襲われると、刑務所内の病院に逃げ込んでベッドで震えているとは情けない。

8年前にも「グッド・バッド・ウィアード」で悪役をやったが評判は良く無い。


金融投資会社の「ワン・ネットワーク株式会社」は数万人の個人投資家から巨額の資金を集め政府の要人に賄賂をばら撒き莫大な利益を上げて来た。まあ、韓国ならではの典型的な会社だ。

綿密に計算された施策と言葉巧みなスピーチで投資家を丸め込む。
金融スペシャリストのチン・ヒョンビル会長(イ・ビョンホン)とキムママと呼ばれ共同経営者のキム・ミヨン(チン・ギョン),天才プログラマーのパク・ジャングン(キム・ウビン)など会社のトップメンバーが一同に会する投資家向けのイベント。

その会場でただ一人厳しい視線で会社の経営陣を見詰めているのは警察の知能犯犯罪捜査班長、キム・ジェミョン刑事(カン・ドンウォン)だった。
半年も内偵を重ね会長以下の不正な事実を掴んで来ている、不正な被害にあった預金者に全額返済する「預金者保護法」を初めて採用した会社だがどうも胡散臭い。

極秘裏にチン会長の懐刀、パクに司法取引を持ち込む。
賄賂の詳細が記載された帳簿ファイルを盗み出せたら「執行猶予にする」と言う司法取引だ。韓国やアメリカにあっても日本には無い。司法取引だと思いこませて重い量刑を食らった容疑者は多い。

パクはあっさり世話になったチン会長を裏切って警察に協力する。
キムはパクを説得し、罪を軽くする代わりにTech Hubとジンの秘密元帳を手に入れる。パクは警察に密告するという自分の任務を遂行する間、協力するふりをして会社の多額の機密費を盗み出していた。

チンは捜査の手が自分に及んでいる噂を聞きつけ、韓国での計画を止めパートナーとフィリピンへ密航。裏切ったパクも暗殺されてしまうが、キムは諦めずにチンを追い続けている。

半年経ってチンが東南アジアで殺害されたとのニュースが国中を駆け巡る。
大金を奪って東南アジアへ高飛びした韓国の投資会社の会長と、切れ者の刑事が攻防は続けられる。

監督は「監視者たち」などの30歳と若いチョ・ウィソク。これが監督三作目。

事実上の主演はチン会長を追う、知能犯罪捜査班長の「華麗なるリベンジ」などのカン・ドンウォン。イ・ビョンホンと一回り年齢が下の韓国映画界のホープだ。
まんまとキム刑事の口車に乗せられるテクノロジー担当役員のパクに「技術者たち」などのキム・ウビン。27歳、187センチのハンサムボーイ。

実際にあった金融詐欺事件を基に制作された作品だが、通り一辺の上っ面を舐めただけで主人公へ感情移入が起こらないので詰らない仕上がりになっている。

11月10日よりTOHOシネマズ新宿他で公される。

「ミックス」(日本映画):母の残した「フラワー卓球クラブ」を再興し、自分を捨てた男にリベンジを果たすアラサー富田多満子のスポ根。

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「6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む」(Le Lisur du 6h27)(ハーパーコリンズ・ジャパン:2017年6月刊)のタイトルを見て飛び上がった。

僕は我孫子駅から千代田線直通の常磐線、6時27分発の電車に乗って日比谷で乗り換え東銀座駅に着くまでの1時間5分、必ず本を読んでいる。(この本もそうやって読んだ)

著者のジャン=ポール・ディエディエローランはフランスのヴォージュ県に住んでいる。今まで2編短編でヘミングウェイ賞を受けたが、この作品は長編デビュー作と言うが発売前から話だいになり世界36カ国で翻訳されフランスでは26万部を売るベストセラーになったと言う。

主人公ギレン・ヴィニョールは36歳で独身。パリ郊外に住んでいて電車で通勤している。彼の職業は一風変わっていて、返品された本の破壊、溶解の仕事だ。
例えば、村上春樹の「騎士団長殺し」などは130万部刷って70万部しか売れなかった。そういう不要な本を日々断裁しパルプへ変換する工場で働いている。

破壊しきれずに残ったページを救出し通勤電車の中でそこに書かれた文章を朗読することを日課としている。
朗読するのでも奇妙なのは、断片的な少なくとも前日とは違った文章を読むだけでも人々は奇異に感じるだろうが、通勤電車は同じ人々が乗り合わせていていつしかギレンのファンも増えて行く。
ギレンの声に深みがあり朗々と響くのも聞き惚れる要因の一つだ。

ある日電車の中でギレンはUSBを拾う。
ショッピングモールのトイレで働くジュリーの日記がメモリーに入っている。日記から何処のショッピングモールかを捜し歩くギレン。

ジュリー仕事もギレンの仕事もどちらも人々がやりたがらない「最終段階での処理の仕事」
3週間かけて探し当てたジュリーへ大きな花束がギレンから送られて来る。

最後までヘンテコなラブロマンスだ。

タイトル「ミックス」では何のことか分からなかったが、テニスや卓球のチャンピオンシップで男女混合ダブルスのことで、どのチームも力を入れないので、弱小チームでも勝する可能性があると言う説明に納得する。

こんなに笑ったコメディは久し振りだ。
一重に脚本家、古沢良太のオリジナル脚本に負うところが大きいい。

彼のこれまでの作品は総てAクラスだ。「Always三丁目の夕日」シリーズ3本、「キサラギ」「探偵はバーにいる」シリーズなど期待を裏切られたことは無い。

ストーリーもさることながら、丁々発止と遣り合うセリフが可笑しく楽しい。

監督はテレビドラマ「リーガル富田多満子ハイ」で古沢と組んだ石川淳一。TVドラマ専門で映画は「エイプリル・フール」を一本撮っただけ、映画の文法を余り知らないが古沢の本に助けられている。この作品は長編映画2作目に当たる。

 石川佳澄や15歳でオリンピックを目指す伊藤美誠の話はよく聞くが、
主人公の多満子(新垣結衣)も母のスパルタ教育により、
「天才卓球少女」とうたわれ一流会社に就職したものの平凡な日々を送っていた。
が、会社の卓球部のイケメンエース・江島晃彦(瀬戸康史)に告白され付き合うことになる。

「ついに憧れていたバラ色の人生が!」と思った矢先、新入社員で多満子より美人の卓球選手・小笠原愛莉(永野芽郁)に江島を寝取られてしまう。
確かに永野の方が新垣より清楚で美しい(と感心している場合でない)

人生のどん底に落ち、逃げるように田舎に戻った多満子。

 しかし、亡き母が経営していた町に一軒の卓球クラブ、「フラワー卓球クラブ」は赤字に陥り、
自分の青春を捧げた活気のある練習風景はそこにはない。
さらにクラブのメンバーも、元ヤンキ―で姉貴分の吉岡弥生(広末涼子)や
引きこもりの高校生佐々木優馬(佐野優斗)とか、
中年の落合元信(遠藤憲一)は試合になると頭痛がする、
頼りになるメンバーはまるでいない。

 い。唯一モノになりそうなのは妻と娘に見捨てられた新入部員の萩原久(瑛太)だけ。
少なくとも昔プロボクサーをやっていたから運動神経はある筈。
「リングサイド・ストーリー」アゲインのようなアスリートだがこれも覇気がない。
瑛太はロンゲにうっすらと生やした顎と口髭が良く似合う。

だが江島と愛莉の幸せそうな姿を見た多満子はリベンジに燃える一方、クラブ再建き「と打倒江島・愛莉ペアを目標に、全日本卓球選手権の男女混合(ミックス)ダブルス部門への出場を決意する。
前述のように正式種目でありながら強豪チームは力をいれない男女混合のミックスはアナだ。
リーダー多満子の意気込みだけは凄く、部員たちは戸惑いながらも、大会へ向け猛練習を開始する。

多満子は萩原とミックスを組むものの、全く反りが合わずケンカばかり。でも。だからこそ先が読める。そんな二人の関係にも、やがて変化が訪れるのだから。

やがて「フラワー卓球クラブ」が出場する全日本卓球選手権 神奈川地区大会の幕が切っておとされる。
果たして、クラブは予選を勝ち抜き、奇跡の「全日本選手権出場」の夢を叶えることができるのか?

主人公同様アラサーの新垣結衣。
19歳の時に撮った「恋空」が一番のお気に入りだ。
TVドラマで活躍しているようだが映画は久し振りではなかろうか。

元プロボクサーの萩原久役の瑛太は僕のお気に入りの役者。七変化の演技力で時代劇、現代劇、喜劇・悲劇、何でもこなす。サトエリのヒモになる「リングサイド・ストーリー」(17)には大笑いをした。他に「64-ロクヨン-」(16)、「殿、利息でござる!」(16)など実力派俳優・瑛太が脚本の面白さを盛り上げる。

他に広末涼子、瀬戸康史、永野芽郁、斎藤 司(トレンディエンジェル)、蒼井 優、真木よう子、吉田鋼太郎、生瀬勝久、遠藤憲一、小日向文世ら、顔馴染みの役者が一杯。

古沢良太の脚本は役者一同を盛り上げる、引き立てる。

10月21日よりTOHOシネマズ系にて全国公開され

「ロキシー」(Vincent N Roxxy)(アメリカ映画):ギャングに追われ暴行を加えられているロキシーを救うが、彼女はファムファタルだった。

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この手のインディ・クライム・ムービーと言うかB級アクション映画は僕の好みだ。
150-200億円もかけたハリウッドの夏の大作がコケる中10億円もかけていない無名の役者が身体をはって頑張るアクションは一服の清涼剤だ。

クェンティン・タランティーノがこのところ新作が無いが、彼の「デスプルーフin グラインド・ハウス」とか「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を見ている感じになる。

舞台はルイジアナ州のどこか田舎だろうか、革ジャンを着込み大型のマッスルカ―を運転しているヴィンセント(エミール・ハーシュ)が交差点の赤信号で止まる。
横切る黒いセダンが、目の前で信号無視で直進して来たピックアップトラックに激突される。
車から降りた大柄の黒人が「このアマ、逃げられると思うか」と引きずりながら殴る蹴るの暴行。

黙っていられないヴィンセントは大柄の黒人、後で知るがギャングの親玉、シュガ(スコット・メスカディ)から女を取り返すが、銃で撃たれる。
女が後ろからシュガを鉄棒でぶん殴り、二人して逃げる。

車の中で女はロキシー(ゾーイ・クラヴィッツ)と名乗り、自分は疫病神だから近ずか無い方が良いと忠告する。

黒人ながら野性的なロキシーは美人で魅力たっぷり。たらこ唇があんなにセクシーに見えるとは。
演じるゾーイ・クラヴィッツは28歳。これまで「幸せのレシピ」(08)や「X-Men」(10)や「マッドマックス」(16)でも顔を見ている。

一匹狼を自認する白人のヴィンセントも薄い髭が似合う良い男。
出会った瞬間から二人は一目惚れ、忽ち離れられなくなる。

家族が所有する農園に据えたトレーラーに引き籠り、セックスは勿論2人の会話は延々と閉塞した現状や未来、世界感などを話す。カメラは長廻しで2人の仲睦まじいケミストリーを追う。
そうかと言ってロキシーは従順な普通の女の子ではない、か弱い女性かと思えばいきなり強面の強気に出る。

しかしB級アクションのクリシェ、二人は夫々秘密を抱えている。
ロキシーは殺された兄がシュガから大金を借り、ロキシーがその金を持っていると一味から追われていたのだ。

ヴィンセントはどうしようもない兄貴JC(エモリ―・コーヘン)を抱えている。母親が詩の病に伏している時にフラリと何処かへ出かけ3カ月も姿をくらませた。
バーのウェイトレス、ケイト(ゾーイ・ドゥイッチ)と良い仲だが何か上手く行っていない。JCもケイトもシュガたちギャングから高利の金を借りて支払いがとどこっている。

ヴィンセントとロキシーの大喧嘩から後半のバイオレンスシーンに続く。
彼のポケットにロキシーの兄の住所メモがあったのだ。
ヴィンセントもギャング仲間の一員だったと知ってロキシーの怒りは爆発する。

そんな中、シュガを頭にギャング団が雪崩れ込んで来て、JCもケイトもロキシーも捉えられ拷問される。
1人自由な身のヴィンセントは単身シュガ達が兄貴を含め3人を拷問している現場に車を走らせ殴り込みをかけるが逆に背後から撃たれロープで吊るされる。

実に間の抜けた単独急襲だ。シュガは拘束しているケイトとJCを簡単に銃で撃ち殺し、ヴィンセントが絞首刑で息が絶えたのを見て、子分たちにロキシーをマワシてよいと許可を与え自分の邸宅へ引き上げる。

これで終わってしまったら面白くも可笑しくも無いがインディクライムムービーには大逆転がある。
aruba
ロキシーを「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のゾーイ・クラヴィッツ、
相手役のヴィンセントを「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュが演じる。

ギャングの親玉、シュガを演じるスコット・メスカディの存在感が凄い。
彼は有名なラッパーでスコット・「キッド・クディ」・メスカディで先輩のアイス・Tやアイス・キューブも顔負けの堂々たる威圧感と演技力がある。

そのほか、ヴィンセントの気弱な兄JCを「ブルックリン」 のエモリー・コーエンが、JCのガールフレンド、ケイトを「ダーティ・グランパ」のゾーイ・ドゥイッチが顔を並べる。普段は声がかからない役者たちだがBムービーも映画であることは変わりない。一生懸命に演じている

監督と脚本を担当したのはゲイリー・マイケル・シュルツは、デビュー作だけに人一倍この映画への愛着は深い。
「暴力や残虐行為に溢れているが、この映画は『愛』という普遍的なものを描いていてキャラクターたちの感情に共感できるだろう」と述べている。

初監督として出来は悪く無く、これからもこの手のインディ・クライム・アクションをもっと撮って欲しい。松竹メディア事業部が安い費用で購入し配給するが、よくぞ地下から掘り起こしてくれた、と拍手を送りたい。

10月21日より新宿シネマカリテにて公開される。
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