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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ハートストーン」(Heartstone)(アイスランド・デンマーク映画):性に目覚める少年たちのLGBTの側面に光を当て、大人への一歩手前の通過儀礼を濃密に描いている。

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アイスランド共和国は、北ヨーロッパの北大西洋上に位置する国家。首都はレイキャビク。総人口は約31万人。

「春にして君を想う」(91)などのフリドリック・トール・フリドリクソン監督の,日本人の地質調査隊の事故を永瀬正敏主演で扱った「コールド・フィーバー」(1995年)を見た記憶がある。

東京での築地市場や人の溢れる澁谷駅前交差点をはじめとする狭苦しい東京]から一転してアイスランドのスケールの広い空間の対比は印象に残っている。

フリドリクソン監督以外にはアイスランドに大作家がいないので、
短編で修練を積んだ34歳の若いグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督の
デビューも難しく無かった。

 アイスランドの総人口は僅か31万人、首都レイキャビクに21万人住むから
田舎のコミュイティに暮らす人々は互いのことは知りつくしプライバシーなど存在しない。

大部分の映画観客は大都会で生活していて、東アイスランドの小さな漁村には興味を抱く。
アイスランドの鄙びた漁港での漁と広大な草原や丘陵に囲まれた漁村に住む人たち。
人口の流入も流出もないので互いに知り尽くしている状況は閉鎖コミュニティだ。

映画の冒頭、埠頭の真下に集まった魚群。
少年たちは餌が無いと慌てるが釣り糸を垂れると「入れ食い」大きな魚がどんどん釣れる。

ただ「カサゴ」だけは美味しく無いので少年たちが足で踏みつけ頭蓋を挫くシーンは不快だ。

籠一杯の魚をソール(バルドル・エイナルソン)は家に持ち帰ると
母親ラケル(ニーナ・ドッグ・フィリップスドッテイル)は何処から盗んで来たと詰問する。
14歳のソールは大人の言うことも聞かず勝手気ままな少年なのだろう。

そんな漁村に住む濃密だが保守的にならざるを得ない人たちの間で、
少年たちがLGBTに入り込んでしまう描写は特異なオーラを放つ。

 改めて説明するがLGBTとは性的少数者を限定的に指す言葉。レズビアン(女性同性愛者)のL、
ゲイ(男性同性愛者)のG、バイセクシュアル(両性愛者)B、
トランスジェンダー(性同一視障害)の頭文字を繋げたものだ。
大人になる手前、思春期真っ盛りの2人の少年、14歳のソールと親友のクリスティアン(ブラーイル・ヒンリクソン)。

2人は幼馴染で大の仲良し、いつも一緒だ。
ソールは天使のような美しい顔、体は未成熟だが声変わりをしている。
大人びた美少女ベータ(ディルヤゥ・ワルスドッティル)のことが気になり始めている。

背が高くブロンドのクリスティアンはソールが大好きだが、感情を抑えソールとベータの後押しをする。クリスティンに想いを寄せるベータの女友達ハンナ(カトラ・ニャルスドティル)も加え4人いっしょにいつも群れている。

ややこしいのはベータとハンナもレズっぽい。

ゲイに見えるがストレイトなソールとストレイトのようだがソールへの強い想いを秘めるクリスティアンのソールを見詰める眼差しは忽ち村人の評判になる。

関係がぎこちなくなったソールはクリスティアンに頼む。
「普通にしてくれよ。そしたら元へ戻れるから」

クリスティアンはソールのために一大決心をする。

 この初長編作品が各国の映画祭で絶賛され数々の受賞を受けている。

アイスランド語の題名は「Hjartasteinn」の英訳はHeartstone。
グズムンドソン監督が「Heart(ハート)」と「Stone(ストーン)」という2つの単語を1語に合わせて作った造語である。

「温かい感情」と「厳しい環境」を意味しており、監督はこの新しい言葉が詩的な形でこの映画にとても良くフィットすると感じたと言う。

 映画のストーリーは監督自身が幼い頃に過ごした漁村での経験が元になっていると言う。大人から子供までみなが顔見知りで、古くからの慣習を尊重する村の環境は些細なことが大きな火種となる。ソールとクリスティアンに向けられた好奇の眼差しは二人の関係をぎこちなく浮彫にする。

明るいテーマでは無く映画はヒットを望めないだろうが
(アメリカでは一般公開されない)
性に目覚める少年たちのLGBTの側面に光を当て、
大人への一歩手前の通過儀礼を濃密に描いている。

7月15日よりYEBIS GARDEN CINEMAにて公開される。

「獣道」(日本映画):東京郊外の地方都市で周囲の大人たちに翻弄されながら居場所を求める若い男女の生き様

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ブラジル・リオデジャネイロ出身と言う聞くからに特異なキャリアでヘンテコな映画を撮り続ける内田英治監督が渋川清彦を主演にして迎え、インディーズフィルムシーンの底辺に巣食う下衆な人々の葛藤や映画愛を描いた「下衆の愛」はインパクトの強い映画だった。

その内田英治監督が、同じようなドキュメンタリのトーンで東京郊外の地方都市で周囲の大人たちに翻弄されながら生きる場所を探す若い男女の姿を、実話をベースに描いたブラック・コメディ。

冒頭の「獣道」と下手な字で大書されたトイレの落書きを見た高校生3人がやりたい一心で携帯から連絡を入れる。半グレの男たちに連れられて金髪の愛衣が白いワンピースを着て現れる。全員が童貞と確かめて、いきなりスカートを捲って何もつけていない下半身を見せて「ヤリタイ?」と聞く?異口同音に大声で「ヤリタイ!」っと斉唱する出だしが愉快だ。

東京に近いある地方都市で生まれた愛衣(伊藤愛衣)は、次から次へと宗教を変え憑きものの信仰狂い(ジャンキー)の母親によって宗教施設に入れられ、7年間世間から隔離された生活を送っていた。
愛衣の過ごす宗教施設は遠くに富士山を望む山梨県の上九一色村に酷似し,したがって警察の摘発を受ける母娘のカルト宗教もオーム真理教をモデルにしている。無我の境地で両手を挙げて揺らしながら集団で踊るシーンは何度も出て来る。

愛衣はここでは「アコナンダ」と呼ばれその名を気にいる。
教団が危険薬物を扱ったため、警察に摘発され、保護された愛衣は中学に通い始めるが、そこにも彼女の居場所はない。

ドロップアウトした愛衣は、万引きと生活保護で生きるヤンキー一家や、サラリーマン家庭などを転々としながら、自分の落ち着き生きられる場所を必死に探していた。

そんな愛衣に恋をし、愛衣の唯一の理解者である不良少年の亮太(須賀健太)もまた自分の居場所を探していたが、やがて半グレたちの世界に居場所を見つけ、愛衣は風俗の世界に身を落とす。

愛衣役を伊藤沙莉、亮太役を須賀健太が演じるほか、お笑いコンビ「マテンロウ」の黒人アントニー、「太陽を掴め」などの吉村界人らが脇を固める。

内田英治監督は笹野高史がストーカーに監禁され逆襲に転じるストーリーが面白かった。
ありあまる毒で今まで見たことが無いホームドラマをオムニバスで見せる「家族ごっこ」、
渋川清彦主演で生々しいピンク映画業界を魅せる「下衆の愛」と、
ここ数作がとにかくとんでもなくぶっ飛んでいてフツーの映画に飽きた僕にはカッコ良いのだ」。

 これは一部実話でややフィクションとしての誇張をしていて辻褄の合わないところもあるが
内田監督は気にしない。

しかし彼もまた居場所を求める一人で、いわゆる半グレ、アウトロー集団の中に身を置くことになる。
「下衆の愛」などの内田英治が監督を務め、実話を基に脚本も担当。逆境を生き抜いていく主人公たちを、子役出身の伊藤沙莉と須賀健太が熱演。『太陽を掴め』などの吉村界人、芸人のアントニーと矢部太郎、ベテランのでんでんら多彩な顔ぶれが脇を固める。
彼女に思いを寄せる亮太(須賀健太)は、半グレ集団で居場所を見つけ、愛衣は風俗の世界にまで身を落とす。

愛衣のセックスシーンはサラリと描かれている。乳房も小さく痛々しい感じさえする。
だが愛衣は「アコナンダ」と言う芸名でAVに出演しハードコアの演技で人気女優となる。何だか壇蜜をモデルにしたようだ。

DVD店で愛衣のサイン会は長蛇の列。思いがけずその列に亮太の姿を見て再会の感動を味わう愛衣。
内田英治が監督のほか、実話を基に脚本も担当。

 逆境を生き抜いていく主人公たちを、子役出身の伊藤沙莉と須賀健太が熱演。
「太陽を掴め」などの吉村界人、お笑い芸人の黒人のアントニーと矢部太郎、ベテランのでんでんら多彩な顔ぶれが脇を固める。

7月15日よりシネマート新宿にて公開される。

「リベリアの白い血」(OUT OF MY HAND)(日本・米映画):戦争で荒廃した西アフリカのリベリアからNYマンハッタンに移住して来たシスコは元兵士に出会い、故国でのトラウマに悩まされる

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映画のバックグラウンドを見る前におさらいが必要だ。
「リベリア」は「自由」と言う意味で、リベリア共和国は、奴隷解放の南北戦争でアメリカ合衆国から解放された黒人奴隷によって建国され、1847年に独立し、現在のアフリカの中ではエチオピアに次いで古い国。国の標語は「The love of liberty brought us here」(自由への熱愛が我々をここに導いた。)
だから国旗は合衆国の星条旗に酷似している。

西アフリカに位置し、北にギニア、西にシエラレオネ、東にコートジボワールと国境を接し、南は大西洋に面する。首都はモンロビア。

しかし1989年から2003年にかけて14年間、断続的に2度も起きた内戦により、荒廃している。
映画の冒頭はゴム農園でシスコ(ビショップ・プレイ)がゴムの木に筋を入れて真っ白な樹液を収集している。リベリア人のシスコはアメリカの黒人と違い白人の血が混じらない純血だから真っ黒。アメリカ黒人みたいにブヨブヨ太っておらず筋骨は隆々シェイプアップされている。
シスコ役のビショップ・プレイはゴム農園で働いた経験もある素人でプロの俳優ではないが、地でそのまま行ける役柄なので好演している

安い賃金で酷使に耐え兼ね、労組リーダー(ジョセフ・デュオ)の指揮下仲間たちとストライキを策謀しているところへスト破りが入り、揉みあいになり画面も大きく揺れる。
この前半部分の撮影は秀逸で、日本人の村上涼が撮っていたが
撮影中にマラリアにかかり死亡する。33歳の若さだった。
映画にとっても村上個人にしても、痛ましいアクシデントだ。

NYシーンから変わったオーエン・ドノバンのカメラはトーン&マナーも変わる。

ストをしても労働環境は改善されない。
そんな時に従兄、マーヴィン(ロドニー・ロジャース・ベックレー)からNYで働かないかと声がかかり愛する家族を残してNYへ渡る。

驚いたことにNYではいきなりタクシー運転手として働いている。
ポット出の田舎どころか文化果つるアフリカの小国から来て
おまけに英語も殆ど喋れない状態で、
ビジーなマンハッタンをクルージンできるとは映画と言えど無理がある。

タクシー運転の最中に元兵士ジェイコブスに出会い、故国で受けたトラウマが浮かび上がって来る。

監督・脚本はNY在住の福永壮志。
悲しいかな素人でこの作品がデビュー作。
だから描き切れないテーマやモチベーションを抱えたまま、映画としての完成度は低い。

粗削りの素朴さがウケてベルリン国際映画祭やLA映画祭で注目を集めているが、
精査し綻びの無い脚本とパートナーのカメラマンを厳選の上、
同じテーマでトライしてみたらどうだろうか?

8月5日より渋谷アップリンクにて公開される。

「怪盗グルーのミニオン大脱走」(Despicable Me 3)(アメリカ映画):人類の敵、バルタザールに敗れたグルーとルーシーは反悪党同盟捜査官をクビになり、これで悪党に戻れると喜ぶミニオンズたち

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ユニバーサル・スタジオとイルミネーション・スタジオによる人気アニメーション「怪盗グル―」シリーズの第3弾。

このところハリウッド関係者の間に「シリーズ疲労」(Sequel Fatigue)と言う言葉が流行っている。
観客にシリーズものは飽きられて数字が伸びないことを指す。

夏の大作として200億円超の制作費を投じた作品がアメリカで予想外の不振に落ちているのだ。

 パラマウントの「Transformers: The Last Knight」(邦題「トランスフォーマー/最後の騎士王」)
ウォルトディズニーの「Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales」(邦題「パイレーツ・オブ・カリビアン―最後の海賊―」
Disney/Pixarの「Cars 3」 (邦題「カーズ/クロスロード」)
などが雁首を揃えて討ち死にしている。

だがハリウッド大作のシリーズ疲労を救うのは海外市場、特に中国だ。

例えば、デビュー週で首位だったが。2週目に疲労で3位に落ちた「Transformers: The Last Knight」(邦題「トランスフォーマー/最後の騎士王」は4132館で上映され62%落ちで17M,
国内累積で102.1.海外市場はFatigueに関係無く、44か国で開け68M、累積で327.8M,
ワールドワイド総計は429.9M(487億円)に達している。
その内中国は単独で193.5M(219億円)を挙げているから凄い。

独立記念日を控えた先週末で
興行成績の首位は、UNIとイルミネーションのシリーズ第三弾「Despicable Me 3」は4529館で75.4 Mを挙げた。

 金曜(30日)までは関係者は少なくとも80M超は軽く行くだろうと予想していたら書き入れ時の土曜(1日)にトラフィックが急に落ちたもの。他の大作同様にシリーズ疲労(Sequel Fatigue)をおこしている。

前作の第2弾は13年の独立記念日週末で3日間BOは83.5M,記念日込みの5日間で143.1M、15年のスピンオフ映画「Minions」(邦題「ミニオンズ」)(15)は7月10-12の週末で115.7Mもあげている。

この作品の「シリーズ疲労」を帳消しにしたのはまたもや海外市場の成績だ。
52か国で95.6M, 2週前から公開した国も含めると累積は116.9M,ワールドワイド総計は192.3M(218億円)。
海外援助でどうやら赤字にはならないだろうが、ハリウッドはシリーズに頼らない企画を考えなければならない。

日本での配給を担当する東宝東和は良く考えている。
主役の「怪盗グルー」では売れないと読んで端役のミニオンズにスポットライトを当てるPR作戦に出ている。

しかし映画題名の示す通り、メインのストーリーはグルーを軸になっている。
晴れて結婚したグルー(声:スティーブ・カレル)とルーシー(クリステン・ウィグ)の前に、新たな強力な敵、バルタザール・ブラット(トレイ・パーカー)が現れる。

1980年代に子役として人気を博した過去の栄光にすがり、80年代ファッションに身を包んだスターリン髭をひけらかすバルタザールは、強力な武器、ベタベタのバブルガム弾を使い世界最大のダイアモンドを盗み出す
バルタザールを取り逃がした、グルーとルーシーは反悪党同盟の捜査官をクビになる。

そんな時、グルーにドルー(スティーブ・カレル二役)という生き別れになっていた双子の兄弟がいることが判明。
父親から養豚場と莫大な遺産を相続しているドルーは、父の志を受け継ぎ天下の大悪党になることを夢見ていた。
金髪にピンクの仕事着に身を包むドル―は自分の住むフリードニアまで会いに来て欲しいとグルーを呼び寄せる。

グルーの相棒ミニオンたちは、グルーが反悪党同盟をクビになったことで再び悪の道に戻ってくることを期待していたが、グルーにその気がないことを知り、新たなボスを求めて旅に出る。
ミニオンたちはグルーに一生懸命に「悪の道」に戻るように説得するのが本性なのだが面白い。

 PRや広告では出番が少ないが、意味不明の言葉を喋る三兄弟に焦点を当てる。
• ミニオン・ケビン: 背が高く目は二つ、頭頂から飛び出た逆毛が特徴のミニオン。
     リーダーシップがあり頼もしい。
• ミニオン・スチュアート: 背は標準で目は一つ、真ん中分けのヘアスタイルのミニオン。
• ミニオン・ボブ: 背が小さく、目は二つのオッドアイ、毛の生えていないミニオン。

ミニオンたちがメインでないので日劇のようなキーの劇場では公開しない。
メインは新宿や六本木ヒルズの小屋になる。

因みにミニオンズの意味は(権力者に奴隷のように仕える)手先,取り巻き,子分でボスは悪党でなければならない。

余談だがユニバーサル映画は電通が制作費を一部負担し協賛している。
エンドクレジットに必ずin Association with Dentsuと出るから注目して欲しい。
「ブラック企業」から金を出して貰ってよいのだろうかと言う疑問は無いようだ。

7月21日よりTOHOシネマズ新宿他にて公開される。

「二度目の夏、二度と会えない君」(日本映画):わざわざ転校して来て、高校最後の文化祭で一緒にライブをやり、最高の時間を共に過ごし、そして彼女は死んだ。

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泣かせる韓国映画の特徴は相思相愛の若い男女の片方が不治の病に倒れること、残された片方がどれだけその喪失を悼むか号泣するかがポイントだった。

この邦画はいい加減ワンパターのクリシェに飽きたところへ「タイムリープ」(タイムトラベル)と言うSFメソッドを使って天にも昇る熟愛を二度味わい、その間に何とかしようと言うトリックに満ちたロマンスドラマだ。

「この夏、俺は、君を二度失った。」 奇妙なスローガンだがこれが映画のポイントだ。
自分が告げた「好き」という言葉は不治の床にある彼女には罪だった。

それを取り戻すためにタイムリープをすると言うからやり過ぎだ。

高校3年の夏、篠原智(村上虹郎)の通う北高に森山燐(吉田円佳)が転校して来る。

燐は北高から生まれたバンド「Animato Animato」に転校前自分も結成に参加したのだったが、生まれつき不治の病を患っていて、余命のカウントダウンで最後の文化祭でライブをやるために改めて転校して来たのだった。

最後のライブとは穏やかではないが、「不治の病」が何で、どうして北高を離れたのか?」が分からない。

しかし燐に扮する吉田円佳は実際はプロで5
人組ガールズバンド「たんこぶちん」のヴォーカルとギターだから上手いのは当然。
主演で演技に初挑戦だがキュートな笑顔を見せて芝居も一流だ。

そこへ行くと相手役の村上虹郎は役者一筋で芸能界を勝ち上がってきたが、
ギターをプロ並みに弾きこなす。歌は音痴だが(映画の中だけかも知れないが)楽器演奏はTVドラマでトランペットを演奏するなど音楽的才能には恵まれているようだ。

バンドのメンバーもミュージシャンではないが素人芸じゃない。
ドラムの花京院姫子(金城茉奈)、ベースの石田六郎(山田佑貴)。
かつて部外者の楽器店のオーナー榎本優(菊池亜希子)や生活指導の布施敦子先生(本上真由美)達の協力も得られる。

念願のライブが大歓声と拍手の中で成功した帰り道、燐は倒れてそのまま病院へ運ばれICUに収容される。

 一体燐に何が起こったのか?
一瞬意識を取り戻した燐は智に隠していた不治の病のことを告白し、治療で僅かな延命より学校の文化祭でのライブを選んだこと、そして満足し楽しい時間を過ごせたことを伝える。Quality of Lifeを大事にする生き方だ。

感極まった智は燐のことがずっと「好きだった」と告白するが、燐は怒る。
「何で最後にそんなことを言うの!出てって」。
その後息を引き取った燐との最後の言葉になった。

高校最後の文化祭で、一緒にライブをやり、最高の時間を共に過ご、そして、燐は死んだ。

死に際の彼女に、「好きだ」、と決して伝えてはいけなかった言葉を、智は放ってしまった。
取り乱す燐に追いだされて病室を後にした智には、紙切れが、一言「ごめんなさい」と書かれた手紙が菅野瑛子(加藤玲菜)から届けられただけだった。

あんな気持ち、伝えなければよかった。
俺みたいな奴が、燐と関わらなければよかった。
  
一歩も外へ出かけない、部屋に閉じこもって3カ月経って冬となり雪が積もった。

燐と出会ったその場所で手紙を読む智。
その瞬間足を滑らせ雪の土手を転がり落ちる。
気付くと雪は消え周りは夏景色。
燐とあったその日だった。

 智は、タイムリープを体験するのだ。
そして、はじめて燐と出会った河原で、智はもう一度燐と出会ってしまった。
ずっと、会いたいと思っていた燐に、あの眩しい笑顔に再び出会った。

だから、今度こそ間違えない。 絶対にこの気持ちを伝えてはいけないから。

YA映画だがハッピーで楽しい映画ではない。切なく、寂しい物語だ。
原作は赤城大空の同名の人気ライトノベル。
「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」で第6回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞した赤城が、2015年に発表した2作目の小説だ。

監督は中西健二。
原田正人や篠原哲雄、成島出などの助監督を務めた後
08年の「青い鳥」で監督デビュー。

TVディレクタ―上がりのポット出の監督と違い、55歳の中西は映画のことを良く知っている。

ヒロイン・森山燐は、5人組ガールズバンド「たんこぶちん」のヴォーカル兼ギターの吉田円佳で、
主題曲をはじめ劇中の音楽を担当している。

「タイムリーブ」など、一歩間違えれば詰らない作り物になってしまうところを
「純愛」で不治の病の永遠の別れを乗り切る青春ラブロマンスは見ごたえある上に、
涙無くしては見られない作品に仕上がっている。

9月1日より新宿バルト9他で公開される。

「関ケ原」(日本映画):僅か6時間で決まった日本の未来を石田三成の視点で描く関ヶ原の戦い

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これから成田へ向かう。
香港で3日間、「スマイル・アジア」(Smile Asia)カウンシル会議出席のためだ。
口唇口蓋裂(兎唇)の赤ん坊は400人に1人と言う発症率は黄色人種独自のもので、黒人種や白人種に比べ遥かに高い。

シンガポールを中心に日本、香港、米国、インド、カンボジアなどからなるスマイル・アジアの各国代表は年に1度集まり、資金やスケジュールを議論する。

今年は30回のミッション(集団無料手術)を行い、日本チームは既に、ミャンマー・シャン、モンゴル・ウランバートルなどに医師団を送り、8月にはカンボジア・シエム・リープとミャンマー・ヤンゴンに飛ぶ予定だ。

 経費も出す、医師も送ると言うことで日本への期待は高いが、このところ寄金が減り、新聞広告も効かないので苦しい台所事情だ。

 私は自分の懐から随分と支援をしてきたが、主としてリソースは電通株の売却だった。
ところが侵入女子社員の「失恋死」を「過労死」と取り違えるマスコミや労基のお陰で「ブラック企業」と叩かれて以来、株価が急激にダウンしてリソース額も減ってきている。ブラック企業の汚名は早いうちにそそがねばならない。

今朝の朝刊1面に大きく電通の労基法違反の書類送検の活字が躍っている。これで取りあえずは総ての捜査は終了したと言うがコラテラルダメージ(巻き添えを食った損害)は残るし大きい。株価の回復は早急に期待できない。

司馬遼太郎の名作小説を、岡田准一、役所広司、有村架純ら豪華キャスト共演で映画化。何も司馬の小説を原作としなくとも関ヶ原は万人の知る歴史的事実だが、司馬の視点でベクトルも違って来る。

最初に語り部(木場勝巳)が菊池寛の文章を引用している。
「歴史小説で迷ったら一番初めに頭に浮かんだ人物から手をつけよ」

司馬の小説は石田三成に焦点を当て、山寺に駆け込んだ喉の乾いた豊臣秀吉に文字通り茶坊主として登場し、飲み頃の温度の茶、熱い茶、少量の濃い茶と三度に分けて茶を出す気配りのエピソードを紹介する。

これで関ヶ原の主人公は秀吉の懐に入り込んだ石田三成(岡田准一)となる。
しかし岡田の背の低さはたの武将と並んだ時に目立つ。

石田三成は、秀吉(遠藤賢一)に忠誠を誓いながらも、正義ではなく利害で天下を治めようとする秀吉の姿勢に疑問も抱いていた。
そんな正義漢、三成の下には、猛将として名高い島左近(平岳大)や伊賀の忍びの初芽(有村架純)ら犬として仕えるようになる。左近の人品や腕を見込んで三成は土下座をして家臣になってくれ頼み込むシーンが良い。

秀吉の体調が思わしくないなか、そこへ出て来る狸親父の徳川家康(役所広司)は、天下取りの野望を抱き言葉巧みに武将たちを自陣に引き込んでいく。特に西陣の大物、小早川秀秋(東出昌大)や三成嫌いの加藤清正(松角洋平)福島正則らを取り込んでいく。権謀術策を操る家康の役所は相変わらず上手い。腹黒さ丸出しだ。苛々すると爪を噛む癖があるようだが家康のイメージからは思いつかないリアリティだ。

1598年8月、秀吉が逝去。
そして1600年9月15日、毛利輝元を総大将に立てた三成の西軍と、家康率いる東軍が関ヶ原で天下分け目の決戦に挑むこととなる。

岡田や役所に加えて日本の映画界を背負う役者陣が揃っている。東出昌大、松山ケンイチ、平岳大、有村架純、伊東歩、和田正人などなど、AV出身の壇蜜まで顔を揃え原田監督の演出の下、一糸乱れぬ大活劇が展開される。

カメラは空撮を多用し、深緑美しい草原と森に囲まれた関ヶ原をロングショットでゆっくりと捕らえる。ドローンでの撮影だろうか、クレーンではあそこまで高くとばせない。
かと思うと両陣営のぶっつかる死闘はハンディカメラでのクローズアップ。手持ちだとぶれるがしっかりと押えているのは見事。
撮影監督の柴主高秀のカメラは冴えている。

原田正人監督は「突入せよ! あさま山荘事件」(02)や役者として出演した「ラストサムライ」(03)から随分と合戦シーンをイメージしたと思う。
実際「ラスト~」から思いを馳せ「世界戦略時代劇」を作りたいと思ったと言う。

その思いも込めた脚本・監督のこの作品は原田正人の代表作になるだろう。

8月26日よりTOHOシネマズ日劇 ほかで公開される。

「ナラタージュ」(日本映画):塾愛ながら別れたりくっついたり、優柔不断の先生と生徒の禁断の恋。

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昨日(7日)午後香港に到着しカオルーン(九龍)のリッツカールトン・ホテル(RCH)にチェックインした。

空港から高速鉄道MTRで2駅目、20分で到着する。今までは市内に入るのはタクシーしか使ったことが無いが車ではこうはいかない。
しかし驚くのは駅を降りて表示に従いホテルに到達するまでの距離と時間だ。

B2の地下道からエレベーターとエスカレーターと歩きでチェックインカウンターのある9階まで僕の足ではたっぷり15分はかかる。
チェックインして部屋に辿り着くまでがまた大変。
ホテルの入っているビルはインターナショル・コマース・センター(International Commerce Centre)高さ484mで、地上118階建て、世界で4番目の背の高いビルだそうだ。だがホテルは世界一高い場所にある。

客室は102階から113階まで。僕の部屋が107階だから約100階分をエレベーターで駆け上る。
元々はセントラルにあったが西九龍に移転してきたのが2011年3月末。オープンから6年も経ち従業員の教育や躾も完璧だ。

香港は何度も来ていてペニンシュラとかインターコンチやシャングルらや元日航ホテルなど結構高層ホテルに泊まった経験があるが、100階から見下ろす光景はトム・クルーズの映画かはたまたドローンの空撮のシーンを見ている感じだ。鳥瞰はヴィクトリア.・ピークにヒケをとらない。

NYに住んでいるとき小さなRCHはセントラルパーク・サウスの僕のアパートの隣りだったし、仕事でアトランタに行くときはバックヘッドのリッツカールトンのヘッドクォーターのクラシックでゴージャスなホテルに泊まった。

だから東京も大阪も宿泊の経験あるお馴染みのホテルだが、ここ香港のRCHは異次元の世界で驚くことばかり。

夜のとばりが降りたナイトシーンはまた宙に星屑をばら撒いたような様変わりなシーンを見せてくれる。

何故、慈善団体「スマイル・アジア」がこんなゴージャスなホテルで会議をしカウンシルを招集するかと言うと、毎年5月の初めに「アジア・ウィーク」と称してアジア諸国のRCHが自家製のケーキを売り出し、その売上金を総て寄付してくれるからだ。

日本では東京、大阪、京都、沖縄と4ホテルでの売り上げが毎年150万円を超える。
有難いクライアントだ。もちろん宿泊代や会議室は大幅に割引してくれている。


「ナラタージュ」とはある人物の語りや回想によって過去を再現する手法のこと。
ここでは主人公、工藤泉の回想だ。

冒頭は主人公、泉(有村架純)の職場、映画会社のオフィス。
深夜資料調べをしている泉に声をかける宮沢慶太(瀬戸康史)。
泉は物思いに耽っている。

大学2年生になった泉のもとに高校時代の恩師・葉山貴司(松本潤)から、演劇部の卒業公演に出ないかと電話がくる。
泉にとって葉山は、高校時代に学校になじめなかった自分に演劇部に入るように勧め、救ってくれた人物だった。

公演の練習で葉山と泉は再会する。泉と同級生で演劇部OBの黒川博文(金子大k地)や親友の山口志緒(大西礼芳)、そして黒川の大学の同級生で演劇経験のある小野怜二(坂口健太郎)と演劇部の下級生たちと練習の日々を過ごしながら葉山と泉はまたもや惹かれあい想いを募らせていく。

卒業式の日の葉山とのある思い出を心に封印した泉だったが、1年振りの再会を機に抑えていた気持ちが芝居の稽古を繰り返す毎日の中で膨らんでいく。

泉の気持ちが頂点に達し、妻(市川実日子)とは別れたと聞いていたから、これからは一緒に過ごせると思った時、葉山は妻を捨てる訳には行かないと言う。

ここからの二人の行動、特に泉の態度に我慢できない。葉山がダメなら自分に好意を寄せ付き纏う小野怜二と付き合ってやるか、と。

大喜びの小野は履きにくそうな泉の靴を職人を目指す自分自身が手縫いの靴をプレゼントする。クリスマスには豪華レストランでリングをプレゼントしようとする瞬間に葉山を思い出し、すべての小野の好意を無視して逃げ出す。

何というエゴイスティックで身勝手で他人の好意を無視する女かと腹が立つ。

追いついた小野が葉山のところへ戻るなら、土下座して謝れ!靴を返せ!といきり立つのもわかるし小野に同情する。

土下座し靴を脱いで深夜の人通りの無い歩道を雨に濡れて裸足で歩いていると葉山の車がハザードランプをつけて泉を待ち受けている。

そうかと言って焼け棒杭に火が付く訳でも無いし、小野とも気まずく分かれたまま映画会社の資料編集の仕事についていて4年前の実らなかったロマンスを「ナラタージュ」しているということだ。


2006年版「この恋愛小説がすごい」(どこが凄いか分からないが)で1位に輝いた島本理生の小説を映画化したもの。島本は「アンダスタンド・メイビー」「夏の裁断」などで知られる。

監督は大ヒットした「世界の中心で、愛をさけぶ」でブレイクした行定勲が監督を務める。しかし映画専門学校を卒業し数々の助監督をこなしてきた行定監督の得意なのは「GO」や「パレード」のような若者達の集団心理の描写でラブロマンスは得意なレパートリーで無い。

主演の高校教師、葉山に嵐の松本潤、教え子のヒロインに「映画 ビリギャル」などの有村架純。狂おしい恋に落ちる,無分別の男女を演じる松本と有村は熱演しているが、ストーリー自体に納得がいかない。
振り回される小野役の坂口健太郎が同情される芝居が上手い.

10月7日よりTOHOシネマズにて全国公開される。

「オン・ザ・ミルキー・ロード」(On The Milky Road)(セルビア・英・米映画):謎の花嫁衣裳を着た美女が助けを求めてのんびりした村に逃げ込み兵士が攻め込んで来て事態は一変する

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馳星周は好きな作家の1人で特にクライムノベルをハードボイルタッチで描かれるとゾクゾクほ読む。
 この「暗手」(あんしゅ)(角川書店:2017年4月刊)は馳の出世作「不夜城」や「夜光虫」とも並ぶ面白さ。450Pを超える大部な小説も一気に読了する。

顔も名前も変えて過去を抹消、流れ着いたのはサッカーの地、イタリアだった。
イタリアの黒社会で殺し以外の仕事なら何でも請負いいつしか暗闇から伸びて来る「暗手」と呼ばれるようになっていた。


今日紹介する映画の監督、エミール・クストリッツァは、カンヌ国際映画祭の最高賞・パルム・ドールを2回、ベルリン国際映画祭・銀熊賞、ベネチア国際映画祭・銀獅子賞を受賞と、世界三大映画祭を制覇したースゴスラビアの巨匠で9年ぶりの監督作品。

今回は監督・脚本だけでなく主演も務めて、ヒロインにむかえたのは「アレックス」や「マレーナ」の他大ヒットの「007 スペクター」でボンドガールに抜擢されたモニカ・ベルッチ。

舞台は隣国と戦争中のバルカン半島のある国。
右肩にハヤブサを乗せたコスタ(エミール・クストリッツァ)は、
戦線の兵士たちにミルクを届けるため(これがタイトルの由来)、
毎日雨傘で銃弾をかわしながら村からロバに乗って前線を渡り歩いている。

国境を隔てただけの、すぐ近場同士で続く殺し合い。
一体戦争はいつ終わるのか、誰にも見当がつかない。

そんな死と隣り合わせの状況下でも、村には呑気な暮らしがあった。
おんぼろのハプスブルグ帝国時代の大時計に手を焼いている母親と一緒に住んでいる
ミルク売りの娘、ミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ。
美しく活発な彼女の魅力に村の男たちはメロメロで、皆がミレナ目当てでこの家のミルクを注文する。

そのミルクの配達係に雇われているのがコスタだ。
コスタに想いを寄せているミレナは、ひとつの計画を思い描いていた。
戦争が終わったら、兵士である兄のジャガ(ミキ・マノイロヴィッチ)が
アフガンの戦場から帰ってくる。
兄は、この家に花嫁として迎える女性と結婚する予定だ。

その時と同じ日に、自分はコスタと結婚するのだと。
ミルカは80年代にユーゴスラヴィアを代表するオリンピックの体操選手。
アクロバティックな愛の表現が可笑しい。

しかしある日、花嫁衣裳を着た謎の美女が助けを求めて村に逃げ込んで来たことから事態は一変する。
美女(ベルッチ)はドイツ高官(大佐)が想いをよせている。
結婚式の当日ウェディングドレスを着たまま逃げ出したのだ。

大佐は部下の兵士たちに奪還を命じ村を襲い花嫁を捜していた。
第一次大戦前夜とは言えドイツ軍はナチ同様に野蛮で乱暴狼藉。
村に火を付け逃げ惑う村人を片端から射殺する。

コスタが花嫁を連れて森の中や丘陵、川の底へと逃げ回るシーンはスリリング。
最後は羊の群れに隠れるが地雷原に近づき悲劇が起こる。

映画のエピローグ、愛する人を総て失った戦争から15年経ち、セルビア正教会の修道士となったコスタはひたすら地雷原に石を積み上げている。どういう意味か測りかねるが冒険とファンタジーの収斂がキリスト教なんだろうか?

監督のエミール・クストリッツァは、62歳、旧ユーゴスラビアのサラエヴォ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)出身。
渋いジャン・ギャバンに似た男っぽい風貌に屈強な体躯。ドイツ兵を躱し花嫁の手を引き逃げ回る姿は頼もしい。俳優としてのクストリッツァは演技力も十分兼ね備えている。本を書いて(当然自身の宛書だ)美女、ベルッチを抱きかかえ、演出するなんて極楽だろう。

モニカ・ベルッチも52歳。未だ美しいしチャーミングだ。
しかし52歳の花嫁なんて現実社会では考えられない。


監督は三つの実話を軸にフィクションを組み立てたという。

1つは90年代にユーゴスラヴィアでイギリス人のスパイから逃れようとした女性の伝記、
2つ目はアフガニスタンの紛争中に毎日20キロの道程を戦場の兵士たちにミルクを配達した男の物語。
3つ目は地雷原で羊の群れを飼うことで自由を得たボスニア人の羊飼いの話だと。

音楽は監督の息子、ストリボール・クウトリッツァ。「ダーティダンシング」のテーマ曲以外は打楽器を軸のジプシー音楽でまとめ上げ父親の画面を盛り立てる。

ハリウッド映画に飽きた映画ファンにはユーモラスでとぼけながら
平和とロマンスを訴える作品にはたまらない魅力を覚えるだろう。

9月よりTOHOシネマズシャンテにて公開される。

「ワンダーウーマン」(Wonder Woman)(アメリカ映画):女性監督で女性スーパーヒローが大活躍する大冒険映画

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太陽神ゼウスが悪い軍神アレスから庇護しているアマゾン族とのイントロでどんな神話映画かと疑問を抱く。

しかしここパラダイス島ではアレスの攻撃をかわすべく激しいトレーニングが続けられている。
ダイアナ(8才の時はリリーアスペル、12才はエミリー・ケェアリー)は島で唯一の子供でプリンセス。

ティーネージャーになったダイアナ(ガル・ガドット)は女王である母親、ヒッポリタ(コニー・ニールセン)から武闘の訓練を受けていたが、叔母でアンティオペ将軍(ロビン・ライト)から直接指導を受け戦士として力を付けていた。

そんな折、島の沖合に不時着した単葉機からアメリカ軍情報部中尉のスティーブ・トレバー(クリス・パイン)を救助することから話が大きく展開する。

アメリカでは6月2日からスタートしたこの作品珍しく女性のパティ・ジェンキンス監督し、新人ガル・ガドットが主演している。スーパーヒーローものでは奇妙な取り合わせだがデビュー週末3日に4,165館で上映され100.5M(111億円)を挙げ,海外では55か国で開け122.5M,ワールドワイド総計は223M(246億円)。

アメリカ国内では夏のシリーズもの大作は「疲労」(Fatigue)を起こし不振に喘いでいるのに、マーベル・スピンオフの快挙にスタジオは大喜びで続編の検討に入っている。

海外市場では中国の38Mを筆頭に韓国で8.5M、メキシコで8.4M、ブラジルで8.3M、UKは7.5Mで第一位だ。
日本やフランス、ドイツは未だ上映が始まっていないが映画を見たが日本でも行ける。
6週目を迎えた昨日(9日)まででアメリカ国内累積は368.8M(420億円)、ワールドワイド総計は745.8M(850億円)を越えている。

北米BOでスーパーヒーローものが100Mを超えた16番目の映画となる。
トップは「The Avenger」の207M,「Avenger: Age of Ultron」が191.3M, 「Captain America: Civil War」の179.1 Mなどがトップ3だから、差は大きいが女性映画作家、パティ・ジェンキンスがジェンダーの壁を破ったところに意味がある。

さて話を戻そう。
バットマンが地球上最強と認めた美女戦士のスーパーヒーロー・プリンセス・ダイアナは
外の世界を知らず男を見たことが無くスティーブが初めての男性だ。

時は1918年、第一次大戦の真最中、プリンセス・ダイアンはアマゾンのThemyscira島の浜辺に不時着した男性パイロット、スティーブ・トレバー(クリス・パイン)を助けたことから、運命の歯車が動き出す。

ダイアンは戦争を止めようとスティーブと共に島を出てロンドンに飛ぶ。
文化文明に接するのが初めてのダイアナが露出過多の甲冑では人目を惹いて仕方が無い。
早速デパートで着せ替え人形ごっこ。

剽軽でユーモラスなスティーブにダイアンはいつしか心を動かしている。
メガネをかけてダークなパンツスーツで一変するダイアナ。女性監督らしく太ももや胸が大きく開いた露出過多のダイアナを決して厭らしいカメラで撮っていない。

ドイツ軍は化学兵器を開発中で実験にいくつかの失敗を犯した女性のマル博士(エレナ・アナヤ)の顔面亀裂の形相が恐ろしい。しかし着々とガスを使った化学兵器は完成の域に達しており、スティーブは軍事会議でドイツ軍の陰謀を阻止すべきだと訴えるが「休戦協定」が進められていると却下される。

そこでスティーブとダイアナは仲間を集め独自の作戦を実行することになる。

ベルギーからパリ、ドイツの大軍が待ち受ける戦場へ飛び込むダイアナ。
スローモーションで掲げた盾で弾丸や砲弾を除け、一対一の素手の死闘など悪漢ドイツ兵をバッタバッタとなぎ倒すプリンセス・ダイアナ。

「モンスター」でシャーリーズ・セロンにオスカーを齎した、バディ・ジェンキンスは才能あふれる女流監督だ。男性社会のハリウッドに女性旋風を巻き起こす。

主人公、ワンダーウーマンを演じるのはミス・イスラエルで
「ワイルド・スピード」にも顔を出している新人のガル・ガドット。
目鼻立ちがくっきりした、大きな潤んだ瞳で見つけられるとゾクゾクとする。

これまでハリウッドは女性監督を雇うことを嫌い、特に巨費を投じるスーパーヒーローもの大作では絶対に起用しなかった。

これは女性が主演の映画を女性監督がメガホンをとり大ヒットを飛ばしたことに意義がある。今後ハリウッドは女性監督の起用は視野に入れることになるだろう。

振り返ると、女性スーパーヒーローものは上手く行ってない。
2000年代半ばに出した「Catwoman」も「Elektra」も2作とも轡を並べて失敗している。

この作品は1996年から20年もかけて検討し練られたもので、
スーパーヒーロー映画は男性客(60%以上)が多いが、
女性客をターゲットとして制作されたのが功を奏し52%を獲得している。

制作費は150M(171億円)と巨費を投じているが,プロの批評家にも受けて好評。
観客のRotten Tomatoesは94%のfresh rating。
出口調査CinemaScoreもA評価。映画を見た客も満足している。

WB/DCは「Man of Steel」(13)「Batman V. Superman」(16)での批評がサンザンでコケたから、久しぶりにこのような批評家や観客からの高い支持は有難がる。

WB国内配給社長のジェフ・ゴールドスタインは「パティのビジョンは観客を魅了し世界中の映画ファンの共感を勝ち得た。ダイアナはこれからも、もっと活躍するだろう」とシリーズ化されることを示唆している。

単純に「悪」を憎み正義を貫き通す、昔の良き時代のスーパーヒーロ-ものが帰って来た。シンプルで単純でストレイトで良い。
ただスティーブとのロマンスが気になる。

「僕は今日を救う。君は世界を救え」なんてカッコ良いセリフを残してスティーブは空中で炎上してしまう。
シリーズになるのは確実なので次回にはユーモラスな彼は出て来ないのかしら。

予想以上に面白く2時間半もアッと言う間に過ぎて中だるみもなく堪能できる。

8月25日より丸の内ピカデリー他で3D/2D/IMAXで公開される。

「ボス・ベイビー」(THE BOSS BABY)(米映画):生まれたての赤ん坊がダークスーツに身を包みアタッシェケースをさげて両親と一緒にタクシーでやって来る

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直木賞作家の西 加奈子の40歳の経歴は異色だ。
イラン ・テヘラン生まれ。エジプト・カイロ、大阪府和泉市光明台育ち。大阪府立泉陽高等学校、関西大学法学部卒業。既婚。殆ど「大阪人」だと。

「ぴあ」のライターを経て、出版社への持ち込み原稿であった「あおい」で2004年にデビューする。 2005年「さくら」が20万部を超えるベストセラーとなる。2015年の「サラバ!」で直木賞受賞している。
「i(アイ)」(ポプラ社:2016年11月刊)を読んだ

主人公は女子高生、ワイルド曽田アイ。
アメリカ人の父、ダニエル・ワイルドと日本人の母、曽田綾子の養子だ。
 1988年にシリアで生まれ、(ハイハイを始める前に)養子縁組をして両親の住むニューヨークのブルックリン・ハイツと言う高級住宅地で小学校卒業まで育つ。

「この世界にアイは存在しません」
いきなり言われたのは数学の最初の授業だった。「二乗して『マイナス』(-)になる、そのような数はこの世界に存在しないのです」と風間という数学教師が数気亮箸埜世辰拭ii=-1だなんて全く理解できない。
この虚数は映画「博士の愛した数式」にも出て来る。

両親ともアイが「愛」に相当すること、英語の「I」を指すことに満足していた。

シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の養子となった「アイ」。
両親は惜しみなく愛してくれ、何不自由なく育てられてしあわせだったのだが、幼いころから、何かの被害に遭った人を見るたび、「なぜ自分ではなかったのか」と自問自答し、申し訳ないような思いにとらわれている。

小説の初めで高校数学教師が「この世界にアイは存在しません」というひと言が彼女の胸に深く入り込み生涯付いてまわる。

誰かを不幸にしてしあわせになっている自分が、こんなにしあわせで申し訳ない、という屈折した思いは、人と違う容姿をしていること、人と違う家庭環境にあること、意識的無意識的にかかわらず異分子として見られること、さまざまなことを考えすぎてしまうアイにとって、この世界は生きづらいことこの上ないのだった。

だが、高校で出会ったミナと心を通わせるうちに、少しずつ他者を通して自らの内面を客観的に眺められるようにもなり、大学院生時代に知り合ったユウと恋愛すると、自分の異質さなど意識せずに夢中になれることがあることにも気づく。アイの悩みも喜びも、実は周りの親しい人たちが、いつも大きく見守ってくれているのである。

「この世界にアイは存在しません」
この言葉はアイの胸に居続け圧迫する。しかしある「奇跡」が起こり、「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさがアイが世界に存在することを認めてくれる。

子どもが欲しくて夫、ユウと人工授精をするが失敗、一方レズの筈の親友ミラがNYでアイの音楽家となった昔のボーイフレンドとセックスし妊娠してしまう。
おろす決心をしたミラを訪ねてLAで数年振りに再会したアイとミラ。サンタモニカの海岸で「生む」決心を伝えられ嬉しくて全裸で海に飛び込むシーンが良い。

西の小説は何冊か読んだがこの「i」が一番感動を齎してくれた。



 今日紹介する映画は、日本人の感覚では付いていけない部分があるが欧米では大ヒットを飛ばしている。

両親から「弟か妹が欲しく無いか?」と聞かれ、赤ん坊は何処から来るか?と言う男の子の発想から映画がスタートしている。

これは普通の常識内の範囲だが、
この家の男の赤ちゃんは最初からネクタイを締め背広を着てアタッシェケースをさげ
両親に連れられてタクシーでやって来る。
そしていきなり大企業の重役のように喋り出すから可笑しい。

アメリカで3月31日から始まったファミリー・アニメ。
2週連続トップの「Beauty and the Beast」(美女と野獣)はドリーム・ワークス・アニメーション(DWA)の制作したマンガ、怒れる赤ん坊の「The Boss Baby」に首位の座をあっさり奪われた。

Fox配給のDreamWorks Animation制作「The Boss Baby」(日本公開未定)は30M超くらいだろうとの大方の予想を上回る健闘をし、
3,773館で上映され49Mを挙げて首位の座についた 。
このデビュー週、海外では35か国で開け59M、ワールドワイド総計は108Mで世界BOランキングでは第3位。

監督は トム・マクグラス(Tom McGrath)。DWAで「マダガスカル」シリーズの制作や演出を担当するほか,声優としても活躍している。この映画でも監督をしながらTVシェフとして出演をしている。
声の出演はアレック・ボールドウィンが大企業の重役のような声色で赤ん坊を吹き替え、これが当たっている。
ボス・ベイビーだからボールドウィンの威張った声が嵌ったのだろう。他にスティーヴ・ブシェミ、ジミー・キメル、トビー・マクガイアなど。

観客の出口調査(CS)はA-評価、25才以下ではA評価にランクが上がる。
ファミリー層が67%、白人が53%、ヒスパニックが19%、アフリカン・アメリカンが14%。
アジア系が9%と万遍無くどの層にも受け入れられている。

翌週も3829館で26.3M、10日間累積89.4Mで首位の座を守った。
海外市場も好調で累積は110.3M,ワールドワイド総計は199.7M(222億円)。

3週目で首位の座を譲り2位に落ちたが3743館で15.5M,17日間累積は116.3M。ワールドワイド総計は287M(327億円)。

現在はチャート外へ落ちているが、ワールドワイド総計は推定で350M(400億円)位になるだろう。

トム・マクグラス監督とマイケル・マッカラーズが脚色したマーラ・フレイジーの文章とイラスト入りの「The 2010 children’s book」絵本を、3Dアニメーションで仕上げたもの。
PGレイトでCGアニメの映画化に当たっては換骨奪胎、大幅な変更がなされたようだ。


赤ん坊に2種類あると言う。
家族の一員として両親に可愛がられる普通の赤ん坊と
大企業「Baby Corp」(赤子会社)のマネージメントに携わる赤ん坊。

最初は親の愛を独占しようと弟と熾烈な争いがあるが、その内に大人たちの非常識な言動を見つけて二人して戦い、最後には兄弟愛を感じるとてもキュートで心温まるかわいい3Dアニメーションだ。

7歳のティム(声:マイルス・クリストファー・バクシ)は弟ボス・ベイビー(声;アレック・ボールドウィン)が家にやってきたことで両親(声:リサ・クドロウ&ジミー・キンメル)の愛情を奪われる。アタッシェケースにローレックスの腕時計、ダークグレイのスーツ。出世したら高層ビルのオフィスの「おまる」が付いている角部屋へ移れるインセンティブがある。

ティムは両親の愛情を取り返そうとするが、やがてボス・ベイビーはもっと広壮な計画、世界の家庭で親の愛情をペットから奪い返す活動をしていることを知る。

世界中で赤ん坊なんか必要ない。誰にでも好かれる子犬を開発しうりだせば良い。両親の勤める「パピー・カンパニー」は子犬開発会社で、完璧に可愛い子犬が出来たのでそのお披露目で父母はラスベガスのコンベンション・センターへ二人を残して飛んで行く。
追いかけて詰らない計画に関わるなと飛行機を追う二人。
ラスベガスとくれば「エルビス・プレスリーそっくりさん大会」と手垢のついた発想は面白くない。

ティムはボス・ベイビーに力を貸し、二人で我が家と世界の愛情のパワーバランスを変えよと奮闘する。人間の赤ん坊は子犬に取って代わられてはダメなのだ。

世界的にFOXの配給だが日本での公開は未定。

「三度目の殺人」(日本映画):あっさり殺人を認め「死刑」判決を待つ犯人、三隅の心に秘めた心情を探る弁護士、重盛。役所と福山の熱演が見もの。

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7月2週の週末2日間、日本での映画興行成績を見ると、アメリカではシリーズ疲労を起こして冴えなかった「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」が2週連続首位をキープして累計180万人を超え、興収は26億円を突破した。
初登場2位にランクインしたのは宮崎駿のスタジオジブリを卒業した米林宏昌監督によるアニメーション「メアリと魔女の花」。ジブリ臭さは抜けないが魔法の話は面白く、動員32万4千人、興収4億3千万円をあげた。
ランクこそ落ちているが公開12週目を迎えて尚も観客数が衰えない『美女と野獣』は累計122億円を突破し、更に伸び続ける。

ハリウッド映画には法廷ものは多い。
学生の時にみたシドニー・ルメット監督の「12人の怒れる男」(1957)は一人の信念を曲げない陪審員(ヘンリー・フォンダ)の説得と論理的推論で有罪が無罪になると言う作品で「法廷映画」に興味を持ち始めた。
ビリー・ワイルダー監督、タイロン・パワー、マリ―ネ・デートリッヒ主演の「情婦」(57)もまんまと一杯食わされる。

 検事同士の恋愛から殺人となった本格的なスリラー「推定無罪」(90)のアラン・J・朴ら監督の仕上げの見事さ。

知恵遅れの男と少女の友情が裁かれる「I am Sam」では泣かされる。
人種問題を扱ったジョエル・シューマッハー監督「評決のとき」のマシュー・マコノヒーの素晴らしい弁護の主張。

ところが日本では戦争裁判でB級戦犯の「私は貝になりたい」はロジックがお粗末だし
周防監督の「それでもボクはやっていない」はかなりセクハラを追及して面白いが
本来のクライムサスペンスからは離れている。

邦画も徐々にこの分野で増えて来て「半落ち」などは結構見せる。
しかしこの是枝裕和の原案・脚本そして監督したこの作品ほど純粋に法廷に取り組んだスリラーは初めてではないか。
そういう意味で是枝作品にエールを送りたいのだが
今一つロジックと迫力に欠けるし、大体2時間を超す内容でもない。

第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作「そして父になる」の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。

「間違いありません。殺しました」
恥じ得て拘置所で面会した弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人犯の三隅(役所広司)は淡々と罪を認める。

金庫の金を盗んでクビになった食品加工会社工場の社長を殺し財布を奪ってガソリンで火をつけたのだ。30年も前に殺人の前科がある三隅はこれで有罪となれば「死刑」は確実だ。

同じ事務所の摂津(吉田剛太郎)が担当だったのだが会うたびに供述が変わる三隅にサジを投げ、
勝つことを第一目標に掲げる重盛が弁護を渋々引き受ける。
クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。

しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。
三隅の犯行動機は「食品加工に混ぜ物をして偽装しているのを懲らしめるため」とか、「奥さん(斎藤由貴)に頼まれ保険金を目当てに」。

しかし三隅は語らないがビッコをひいている社長の娘、高校生の咲江(広瀬すず)の告白を聞いて重盛の三隅に対する考えはガラリと変わる。

咲江は父親に子供の頃からレイプをされていたという。自殺を図り屋根から飛びおあり足に重傷を負ってビッコになった。

親娘の残虐な悲劇は当然知っている筈の母親は何をしていたか?三隅の銀行口座に振り込まれた50万円は母親の送金か?(銀行の通帳に送金人が印字される筈だからミステリーにならない)

重盛は確信する、三隅は私憤に駆られて社長を殺したに違い無い。
三隅は頭から否定する。あくまでも窃盗殺人事件の犯人だと。

この辺の展開は迫力があるし役所の芝居の上手さは抜群だ。役所で無ければ事実や心情を隠ぺいする演技がシラケるシーンだ。

殆どが役所と福山の拘置所での対峙で費やされるので下手な役者じゃ務まらない。二人は熱演して盛り上げるが、白黒のカタルシスを欠くだけに今一つ面白さが無い。

どうして?と納得性に欠く点が散見されるのは残念だが、是枝裕和監督が本格的法廷スリラーに取り組んだ意欲とそれがある程度のレベルをクリアしていることは称賛にあたいする。

福山雅治は是枝監督作品には2回目の主演で息があっている。初参加となる役所広司が殺人犯・三隅役で福山と初共演を果たすが芝居が上手い二人の弾が飛び交うような会話は見ものだ。

是枝の「海街diary」で注目を集めた広瀬すずが物語の鍵を握る被害者の娘役を演じる。被害者の妻役を斉藤由貴が冷たく演じている。

9月9日よりTOHOシネマズ・スカラ座にて公開される。

「カーズ/クロスロード」(Cars 3)(アメリカ映画):天才カーレーサー、ライトニング・マックィーンも最新テクノロジーを誇る若い新人、ジャクソン・ストームに敗れ、再起を決意するのだが

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ピクサーの作品はこれで16本目でどれも好きだが、どうしても違和感のある、映画が「カーズ」シリーズだ。
車がレースをし仲間が集まり盛り上がるのは良い、が自分の考えを持ち喋るのだけは抵抗がある。擬人化した車に親近感が持てないのだ。

しかしそんなことを考えて否定的な意見を言うのは僕だけだろうか?

シリーズ3本目のこの映画はアメリカでは6月16日より始まった。
Disney/Pixar制作でウォルトディズニーの配給、4256館で上映され53.5M(61億円)を挙げ、それまで2週連続首位の「Wonder Woman」の40.8Mを抜き去り首位に立った。

観客の出口調査CSではA評価、18本になるPIXA作品は総てA評価を受けており、その内16作品はデビュー週に興行成績のトップになっている。

大作アニメシリーズ第3弾の「Cars 3」は、「父の日」と言う活況の日曜日のお陰で(実際男性が僅かだが50%を超える)。

オリジナルの「Cars」(06)はデビュー週末が60.1M、ワールドワイド総計が462.2M,「Cars 2」(11)はデビュー週末は66.1Mで最終的にワールドワイド総計は562.1Mで、シリーズ2本で1Billion(1134億円)を超えている。

天才レーサー、ライトニング・マックィーン(声:元気で快活なOwen Wilson)はチェリー・ピンクのレース・カーを駆って、「ピストンカップ」5回の優勝を誇る戦歴を経てレジェンダリー・レーサーになりつつあった。

シーズン・最後のレースで、トップでフィニッシュをしたと思った瞬間、二位。首位は黒紫のカーを操る新人・ジャクソン・ストーム(声:アーミー・ハーマ―)。

「ライトニング・マックィーンの最後のレース(Farewell Race)で一緒に走れるなんて光栄だね」
生意気な新人にムッとして「最後のレースなんかじゃない!」と言い返すのが精一杯のマックィーン。

最新テクノロジーを誇るストームと競り負けたうえに大クラッシュを起こしてしまう。
待ち受けていたのは、最新テクノロジーを限界まで追求したストームのような新たな世代の台頭と、
レース人生を揺るがす衝撃的な大クラッシュだった。

数か月後、マックィーンはケガから回復したものの失意のどん底にいた。

「いったい自分はいつまで走り続けるのか?」
誰もが直面する人生の大きな壁や、思いがけない挫折、そしてその先に見えてくる新たな道。夢の続きか、それとも新たな道か?

そんな彼に再挑戦する勇気を与えてくれたのは故郷のラジエーター・スプリングスの仲間、恋人サリーや親友メーターたちの友情と激励だった。
ディジタルのアニメなのだがマックィーンの世界は懐古的なアナログの世界。

昔、新人の頃教えを仰いだ、ポール・ニューマンが吹き替えたドック・ハドソンまで現れるので驚く。
2006年のオリジナル「カーズ」でニューマンはこの2年後、2008年に亡くなった。
マックィーンはドックの友人だったスモーキー(クリス・クーパー)のアドバイスを取り入れるとともに再起をかけて、
スターリング(ネイサン・フィリオン)の経営する最新のレーシングセンターに入り、
新たな女性の相棒クルーズ・ラミレス(クリステア・アロンツォ)とともに運命に立ち向かって行く。

「カーズ」シリーズの主人公はあくまでもライトニング・マックィーンで彼の人生を追って話は進んで来た。
ここで新たにクルーズ・ラミレスと言うラティーノ女性が登場し主人公の座が入れ替わるとなるとこのシリーズは終焉を迎える。

男尊女卑が良いとか悪いと言う問題ではなく、男性至上主義の作品がフェミニストと言うか男性をしもべとする女主人公の映画に転換せざるを得ないのだから。

監督はブライアン・フィー。「ズートピア」などのヒット作を手掛け「カーズ」「カーズ2」の監督ジョン・ラセターが製作総指揮にまわり、前2作にストーリーボードアーティストなどで参加したブライアン・フィーが初監督を務めた。

7月15日よりTOHOシネマズシャンテ

「ザ・ウォール」(THE WALL)(アメリカ映画):イラク奥地の砂漠地帯で消息を絶ったパイプライン建設業者の行方を追うアメリカ軍の偵察隊2人。イラク軍の「死神」狙撃兵との極限下で死闘を繰り返す

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 犬好き猫好きの小説は多いが「おやすみ、リリー」(Lily and the Octopus)(ハーパーコリンズ・ジャパン:2017年4月刊)は少し変わっていて面白かった。

 主人公、テッド・フラスクはカナダと国境を接する東北部メイン州出身。今はカリフォルニアのLAに移住しフリーライターをしている。
変わっているのは42歳のゲイで余り仕事が無くアパートで26時中雌のダックスフント、リリーと会話をしていることだ。

 長く一緒に住み愛し合ったジェフリーと言う恋人と別れ、人生に前向きな気持ちを持てないままに一人暮らしを続けて3年にもなる。

そんなテッドの話し相手は老犬リリーだ
 子どもの頃から犬好きで絶やしたことが無い。
老犬リリーは傷ついたテッドの心を癒してくれる。

 ある晩、愛しのリリーの頭左半分に不気味なタコが住み着いているのを発見する。タコのせいで徐々に弱って行くリリーを救うため動物クリニックに全財産(75万円)を投じてタコ除去の手術をしてもらうがタコはしぶとく動こうとしない。

徐々に弱って行くリリー。
その内、タコは墨を吐きリリーは暗黒の世界に閉じ込められる。

テッド・フラスクは著者自身、スティーブン・ローリーのことだと知れる。
12歳のリリー(実際の名前も同じ)は犬齢では84歳、胴の長いダックスフントが罹る
椎間板ヘルニアの手術を終え、ついでに取ったMRI検査で脳腫瘍が見つかる。
手術の甲斐なく脳腫瘍は肥大し全身に癌細胞は転移して苦しむ前に
安楽死をさせてやるのがテッドの愛情だ。

リリーの死後、無気力な日々を送っていたが、行き詰まりを打破できないかと
リリーとの思い出を自由に書き連ね「脳腫瘍」を「タコ」に比喩した短編を書き、
新しい恋人、バイロンにみせたとところ絶賛され更に書き足し長編に仕上げる。

スティーブン・ローリーの半自伝的処女作「お休み、リリー」は自費出版の準備をしていたが大手出版社の編集者に見いだされ100万ドルのオファーを受けて出版されベストセラーになる。

人生の悩み、命の尊厳、生きることへの渇望がリリーとの想像的な会話を通してユーモラスな筆致で綴られている。久しぶりで泣き笑いの小説に堪能する。



2007年、イラクの奥地。連絡の途絶えたパイプライン建設業者の偵察に送られたアメリカ兵のアレン・アイザック軍曹(アーロン・テイラー=ジョンソン)とシェーン・マシューズ軍曹(ジョン・シナ)は、頭部を撃ち抜かれた死体がゴロゴロ転がっているのを見つける。イラクの狙撃兵が散発的に狙って来る。

瓦礫の中に残る大きな壁に潜む敵を狙っていたが、20時間まったく動きがないため、マシューズが死体をもっと詳細に様子を見るために壁に近づいたところ、想定外の場所から銃撃されてしまう。無線の呼びかけも虚しくマシューズの反応はない。

援護に向かったアイザックも銃弾に狙われ膝を撃ち抜かれ、なんとか壁の背後に退避したものの、まったく身動きが取れなくなってしまった。

傍に転がっていた通信機で救助を呼びかける。
ここまでが第一幕で、孤立したアイザックの焦燥感が伝わる。

その時、仲間を名乗る謎の男から無線が入る。やれ嬉しやと姓名階、階級、認識番号を応えているが、その声にネイティブでないかすかな訛りを聞き分けたアイザックは、男の正体を確認しようとする。

男は正確な位置を教えろ、そこへ救援ヘリを飛ばすと言う。どう考えてもイラクの狙撃兵に違いない。アメリカ軍から「死神」と恐れられているスナイパー、ジューバだった。
「位置を知らせるため曳光弾を撃て、無かったら拳銃でも良い」と要求するに至りジューバだと確信する。
この狙撃兵との遣り取りが第二幕。これが盛り上がる。

監督、ダグ・リーマンは「ボーン」シリーズの総指揮をとり「Mr&Mrs.スミス」や「ジャンパー」などの監督を経たアクションは得意のジャンルだ。

ハリウッド・ザ・ブラックリスト」で埋もれたドウェイン・ウォーレルの脚本に目を付け、
アマゾンから制作費を受け、インディもどきの実験的作品を作った。

閉所恐怖症的プレッシャーを受けながら死神・狙撃兵と一対一の対峙など
ハリウッド映画では出来ない人間の恐怖を描いている。

但しアメリカでは限定公開として、5月半ばに数件の小屋で行われただけ、
忽ち動画でアマゾン配信ネット公開された。

主人公のアイザック役に「GODZILLA ゴジラ」「キック・アス」の子役出身のアーロン・テイラー=ジョンソン。96年生まれだから、やっと20歳。口髭に顎鬚、イケメン大人の容貌になって来た。

相棒、マシューズ役をWWEのプロ・レスラーで世界王者15回のスター。
第二のザ・ロックを目指すのか?と39歳のジョン・シナが演じる。


9月1日より新宿バルト9にて公開される。

「スパイダーマン:ホームカミング」(Spider-Man: Homecoming)(米映画):高校生ピーターは近隣の平和を守るローカルヒーローだがアイアンマンなどのアヴェンジャーが仲間入りを勧める

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タイトルの「ホームカミング」とは、日本人には馴染みが無いが、高校生活で卒業式の「プロム」と同様に重要な儀式。

普通学年始めの9月または10月に行われて、旧教職員や卒業生を招待して行うビッグイベント。
フットボールやバスケットボールなどの他校との対抗試合や、ダンスパーティに未成年だから酒はダメだがフルーツパンチやレモン水ピザドーナツサンドウィッチの祝宴、マーチング・バンドが先導するパレード、出席者のホームカミング「クイーン&キング」の投票による選出と「戴冠式」などが行われそのシーンが延々と津展開される。

つまりスーパー・ヒーローの世界でなく高校生、ピーター・パーカーの生活に基盤を置いた展開だあることが分かる。

アメリカでは7月6日に上映が始まり4,348館で公開され(内, 392 Imaxと601 premium large-format screens)、関係者の予測を遥か上回る117M(133億円)を越えた。前回の「The Amazing Spider-Man 2」(2014 年5月)で91.6Mの週末デビューだったので20Mも積み上げている。

SPEとしてはデビュー週末、史上二番目の興行成績。

今年に入ってからは「Beauty and the Beast」の174.8M、「Guardians of the Galaxy Vol.2」の146.5Mに次ぐ3番目の成績で100Mを超えたスーパー・ヒーローもので11番目の映画になる。

海外市場では60%にあたる56か国で上映され140Mを挙げている。
特に韓国では25.8Mと言うハリウッド・タイトルでは史上最高の成績。
次いでメキシコが12M,UKが11.8M。最大市場の中国は未だ開けていないし日本も未だだ。

プロの批評家も高く評価し、
受け手の観客も同様でRotten Tomatoesは94%のFresh rating, 出口調査CSはシリーズで最高のA評価をうけている。

観客層は男性が60%、25才以下が50%。
制作費は175M(200億円)。

「マーベル・コミック」のスタン・リー原作の「スパイダーマン」の実写映画化作品で、過去にも実写映画化されているが物語の最初からリブート(再始動)した新シリーズの第1作目となる。
これまでの「スパイダーマン」シリーズと大きく異なる点は、様々な「マーベル・コミック」の実写映画を、同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」(Marvel Cinematic Universe)(MCU)シリーズに属する作品として製作されており、同シリーズ内の作品としては第16作品目の映画となる。

同一世界のMCU作品なので、ロバート・ダウニーJrのIron Man/Tony StarkやAvengerの仲間が顔を出し高校生のスパイダーマンを教育し助ける。

エピローグではキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンズ)が登場しスパイダーマンをこれからも助けると宣言するからMCUは注目の的。

アヴェンジャーズ仲間のスタークからスパイダーマンのスーツを貰い、スタークの側近のハッピー(ジョン・ファブロー)を通してレポートを送る毎日。

ヒーローたちが悪と戦い街が瓦礫の山になることはここ数本の作品で問題となっている。
エイドリアン・トゥームス(マイケル・キートン)とその仲間たちは残骸回収業に従事している。彼らは回収した廃棄武器の中からウルトロン物質を取り出し強力な武器を作成している。スタークスは政府の合弁会社ダメージ・コントロール局が回収を行うことになりトゥームスはアヴェンジャーズに商売を邪魔されたと恨む。

段々分かって来るが高校生ピーターは既に蜘蛛に噛まれてヒーローの力を付けている。高校生活の化学部で出会った頭の良いリズ(ローラ・ハリアー)に出会う。
Avengersたちとの冒険を終え学校へ戻ると高校生活に順応するための辛い時間が待っている。母親代わりに一緒に暮らし服装から言動を細かくチェックするメイ叔母さん(マリッサ・トウメイ)の躾にも耐える。

おのれの未熟さからスタッテン・アイランド行きの巨大フェリーボートが真っ二つに裂けてしまったが、直ぐにアイアンマンが駆けつけ避けた部分をくっつけて事なきを得ている。
笑えるのが終盤の記者会見。
アイアンマンはアヴェンジャーズ・チームにスパイダーマンが加わることを記者発表しようと50人のプレスを集める「ブロガーじゃないぞ」
パーカーは迷った末、ボクはNYの街を守るローカルヒーローに徹しますとスタークに断る。怒るかと思いきや、アイアンマンは優しい。「そうか。」秘書が記者たちが時間が過ぎた早くしろと騒いでますとご注進。「それじゃ、僕らの婚約発表にしよう」のオチが素晴らしい。

19才のイギリスで舞台を経験して来た新人トム・ホーランドが扮するPeter Parker/Spider-Man高校生は初々しいし駆け引きのできない15才の少年を演じる。

頭の禿げたマイケル・キートンが敵役のエイドリアン・トゥームス/バルチャーで、パーカーがホームカミングのパーティに連れて行くガールフレンド、ミシェル(ゼンティヤ)の父親としてリムジンで迎えに来たパーカーを迎え入れる。
コサージュを渡される娘の前では好好爺の父親を演じるが二人きりになると恐ろしい形相で脅しまくる。

キートンはオスカー候補作の「バードマン」のように翼を付けたバルチャーとなって空を飛ぶ。

監督はB級ホラー映画を3本ほど作った若手の作家、ジョン・ワッツ。今回はいきなり夏のメジャー大作で言わば監督デビューだ。

SPEワールドワイド・マーケティングのジョシュ・グリーンスタインは「ソニーとマーヴェルにとって素晴らしい結果と勝利を齎してくれた。
スパイダーマンはマーヴェル・ユニバーサルでもっとも愛されるキャラクターだがこの作品は新解釈を付け加えてくれた」と。
前SPE副会長のエイミー・パスカルがプロデューサーを務めマーヴェルとスタジオ間のユニークなパートナーシップを調整した。

8月11日よりTOHOシネマズスカラ座他全国公開される

「ジョン・ウィック・2」(John Wick: Chapter 2)(米映画):仔犬を可愛がる引退した敏腕の殺し屋が犬の仇でロシアンマフィアを全滅させ、犬と暮らす家を焼いたイタリアン・マフィアを攻撃

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 昨日(15日)土曜の4時にTOHOシネマズみゆき座に時間を過ぎて駆けつけた。9割方席は埋まっており2列目の中程にようやく座れた。

 日本にはイケメン、キアヌ・リーブスのファンが多いことを忘れていた。ゲイで下手なミュージシャンも額が後退し52歳の年齢は隠せないが、口髭顎鬚を生やして目から頬はクリアで相変わらずの男も惚れ惚れする美男子。

「スピード」や「マトリックス」などのヒット作も多いが何でも顔を出す主義ではない。
しかしジェームズ・ボンドやジェイソン・ボーン、ミッション・インポシブルの
世界を股にかけて暴れ回る主人公に相応しいことを2作目で証明する。

僕はこの犬好きで引退した辣腕の殺し屋と言う設定は好きだ。

 5年前に最愛の女性ヘレン(ブリジット・モイナハン)と出会い「殺し屋」から足を洗う。
平穏な結婚生活を送るジョンであったがヘレンが病で亡くなり、生きる希望を失う。

ヘレンは残される夫を心配して仔犬を手配しており、その存在がジョンの新たな希望となりつつあった。
その矢先、ジョンの愛車69年型黒の「フォード・マスタング・マッハ1」を狙った強盗に家を襲われ、
車を奪われただけではなく仔犬も殺されてしまう。

車を盗まれただけなら我慢もするが、仔犬をロシアン・マフィアに殺されたのが勘弁出来ない。犬の仇の復讐戦だったが凄絶だった。

ロシアン・マフィアを完膚無きまでに叩きのめした壮絶な復讐劇から5日後、
ジョン・ウィックのNYの邸宅に、イタリアン・マフィアのサンティーノ・ダアントニオ(リカルド・スカマルシオ)がやって来る。

前に命を救ってやった、イタリアン・マフィアの血の同盟の約束を果たせと要求する。マフィア・ファミリーの首領は彼の姉、ジアンナ(クロウウディア・ジェリニ)だが自分がボスになるために姉を殺せと要求し今までの借りを返せと。

断るとその夜、サンティーノとその一味にグルネード・ランチャーを撃ち込まれジョンは新しい犬と一緒に命からがら逃げだす。

冒頭のロシアマフィアのカーチェイス、イタリアン・マフィアのグルネード攻撃に銃撃戦と立て続けのアクションはノンストップだ。

武器も無くジョンは陰の裁定者ウィンストン(イアン・マクシェーン)に相談する。

「ファミリーの掟に従い依頼されたことをやり遂げること。さもなくばイタリアン・マフィアは全員敵になる」

選択の余地は無いと言われジョンはローマに飛ぶ。

ここで昔馴染みの武器ソムリエに会い準備万端怠らない。
メイン武器となるハンドガンはH&K好きのジョン・ウィックではあるが、
彼の勧めるオーストリア製のグロックを使用する。
コンペティションモデルのグロック G34と、前作でもバックアップとして使用していたサブコンパクトモデルのグロック G26。

更に軽い防弾繊維ケプラーを織り込んだダークな背広をフォーマル用とカジュアルと二着注文する。

準備が完了しジアンナを狙う。

当然彼女は忠実な殺し屋、カッシアン(グラミー賞受賞のラッパー、コモン)らの厳重な護衛に守られている。ガードの入れない浴場に忍び込み裸のジアンナのクビを切る。

ジョンはジアンナの殺害に成功するが収まらないのは理不尽な殺人を強制したサンティーノ・ダアントニオだ。彼を当然狙う。

今や姉に代わりファミリーのボスになったサンティーノは700万ドル(8億円)の懸賞金でジョンの殺しを世界中に依頼する。

ローマのカタコーム(地下墓地)NYの地下鉄、ホテルの現代美術展会場、
レストランやクラブ至る処で色んな恰好をした殺し屋がおそいかかる。
全世界の殺し屋とのバトルロワイヤル開始

鏡を貼った廊下で幻影を追うようなアクションも変わっていて面白い。
前回に引き続き監督チャド・スタエルスキーはスタイリッシュなアクションに徹している。

「マトリックス」でスタント及びスタント指導したスタエルスキーがこのシリーズで
初めて監督として手掛けた作品だけにアクションのコリオグラフィーは綿密だ。

キアヌ・リーブスも多彩なマーシャルアーツを披露する。
特に柔道の背負い投げ、一本背負い、巴投げなどを織り交ぜ、
更にカンフーを融合させたアクション「ガン・フー」がパワーアップして登場する。
キアヌ自身もスタントを使わない格闘劇に興味を持っているようだ。

アメリカで2月10日公開されたシリーズ第2弾「John Wick: Chapter 2」は3113館で30Mはスタジオの予測以上の成果だ。

殺された犬の復讐から血の同盟に従いローマに飛び群がる敵をバッタバッタと殺しまくる辣腕殺し屋ウィック。

前回に引き続き監督チャド・スタエルスキー、主演キアヌ・リーブス。敵役にラッパーのコモン、新顔には「マトリックス」での盟友、ローレンス・フィッシュバーンらが加わる。

主演はもちろん「マトリックス」のキアヌ・リーブス。撃って撃って打ちまくるノンストップ・キリング・アクションで生き生きとしている52歳。

後半「マトリックス」の盟友,ローレンス・フィッシュバーン演じるロワーマンハッタンの地下社会を牛耳る「バワリー・キング」と言うキャラクターが登場する。
イーストリバーからの風に吹かれて鳩に餌をやるだけだが、
フィッシュバーンの登場で第三弾が予定されるのが見える。
その他のキャストは回想シーンで亡き妻、ヘレン・ウィックを演じるのは、アメリカの女優でモデルとしても活動しているブリジット・モイナハン。

謎の仲介人のウィンストンには黒ひげ役で知られるイアン・マクシェーン。

他に殺し屋にはレリオ役のジョン・レイグイザモ、
女首領の護衛役でグラミー賞ラッパーのコモン、
金髪で聾唖の女性殺し屋に「トリプルX 再起動」のルビー・ローズらがジョンを狙う。

チャド・スタエルスキーのスタイリッシュなコリオグラフィーを完璧にマスターしたキアヌ・リーブスのパーフォーマンスが秀逸で久しぶりで堪能出来る活劇を見た。

TOHOシネマズみゆき座他で公開中。

みゆき座を出て猛暑の中を歩くとシャンテ前広場のゴジラが生ビールを飲んでいた。

「ドリーム」(Hidden Figures)(アメリカ映画): 宇宙開発でソ連と鎬を削る前線で戦うNASAを支える黒人女性数学者たち。戦う相手はソ連でなく頑迷固陋で男尊女卑のNASAそのものだった

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南北戦争で奴隷解放以降でも南部諸州では黒人の一般公共施設(学校、バス、カフェテリア、トイレなど)の利用を禁止制限したジム・クロウ法が1964年まで施行されていた。

最初タイトルの「Hidden Figures」の意味が分からなかった。
隠れた統計、データ、計算とかだろうが何のことだ?

映画が始まりジム・クロウ法で差別を受けているヴァージニア州の黒人女性数学教師たちが臨時雇いでNASAの前身であるNACA(アメリカ航空諮問委員会)から招集をかけられるシーンで直ぐに分かる。

NACAの運営する南ヴァージニア州ハンプトンにあるラングレー研究所は「人間コンピュータ」、つまり素早く高度な計算を正確にできる頭脳の持ち主を探していたのだ。

ソ連が宇宙合戦で一歩先んじていて1957年に打ち上げられたスプートニクは毎日アメリカの上空を飛びスパイしている。一刻も早くソ連に追いつき追い越すためにやっきとなったジョン・F・ケネディ大統領はNASAにハッパをかけ、宇宙ロケットの開発と軌道計算に人種の壁で邪魔をする優秀な黒人女性数学者の採用を余儀なくさせられていた。デジタル・スーパーコンピュータが出現する前の話だ。

 時代はもっと遡り1943年の第二次大戦中のこと。
高校数学教師、ドロシー・ヴォ―ン(オクタビア・スペンサー)は男たちが戦場に送られ人手不足で航空機開発の黒人女性計算手として雇われる。

 先進的なNACAですら男尊女卑や色人種差別は行われていて、「黒人女性数学専門職」のドロシーも他の黒人女性とともに西計算グルーに隔離され陽の当たらない存在だった。

 大戦が終了と同時にソ連との冷戦が始まる。1961年、西計算グループのベテラン、ドロシーは管理職への昇進を希望していたが上司のミッチェル(キルスティン・ダンスト)は「黒人グループには管理職を置かない」自分が直接見るとすげない返事。南部女性の黒んぼへの口癖だ。

技術部へ移転を希望するメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は黒人は入れない学校でしか数学は学べないと直接校長に交渉し夜間部で勉強する。
数学を学びたい一心のメアリーの意気込みが白人老教師に通じる瞬間はカタルシスを覚える。
数学を修め「技術部」へ希望通りの転進するメアリー。

キャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)の場合はもっとドラマティックだ。幼い頃から数学
 天才少女と評判だった彼女は黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属される。ソ連との宇宙開発戦争最前線の本部長はアル・ハリソン(ケビン・コスナー)。大統領から直接電話の入る研究所はオール

白人男性。優秀だと誰でも認めざるを得ないキャサリンへの風当たりも強い。

キャサリンについての痛快なエピソードが幾つか挿入される。
ハリソン本部長がキャサリンに向かって「僕が来ると君はいつもトイレだ」と詰問する。「だって仕方無いでしょ、この棟には有色人種用トイレが無く、800M離れた西計算所のトイレへ通わなくてはならないんですもの」

ハリソンはトイレの入口の「白人専用」のサインを金槌で叩き壊す。

1961年、ソ連のガガーリンを乗せたボストーク1号がアメリカ上空を横切るやNASAへのプレッシャーは凄まじい。

キャサリンはロケットの軌跡や着水地点の計算を上げるが始終変動を伴うから現場を指揮する会議に出席させてくれと上司のポール・スタフォード(ジム・パーキンス)に頼み込むが黒人女性はダメだとニベも無い。

おまけに計算式の分析をP・スタフォードとK・ジョンソンと署名してあるのを破り取り自分の名前だけにする。
白人と言えどもユダヤ人(南部では迫害されている)、でも男性と言うことだけでこうも違う。
キャサリンはハリソン本部長の推薦で現場指揮会議に出られることになった。
「僕の隣に座って発言しないように」とポールの命令。

62年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレン大尉の初の地球周回軌道飛行に挑んだ。途中隔離版が剥がれる事故があり着水地点の計算が難しかった。(この宇宙⒦プセルやグレン大尉は実写フーテージが使用されている)

本部長の命令で黒板に立ちスラスラと複雑な計算を終え、
そして見事にジョン・グレンは正確に着水し空母にカプセルは回収される。

NASAの黒人女性数学者たちの知られざる功績を描く感動の伝記ドラマだ。
NASAの頭脳として尽力した女性たち、キャサリン・ジョンソンを「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」などのタラジ・P・ヘンソンが演じる。キャサリンは98歳で存命だ。

第二次大戦中から務めていたドロシー・ヴォ―ン役を「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」などでアカデミー助演女優賞のオクタヴィア・スペンサー。ドロシーは8年前に98で死亡。

メアリー・ジャクソンを「ムーンライト」などのジャネール・モネイが演じる。メアリーは15年前、84歳で亡くなっている。

監督・脚本は「ヴィンセントが教えてくれたこと」などのCM出身の黒人映画作家、セオドア・メルフィ。最近は引退した老人たちが銀行強盗を働く「ジーサンズのはじめての強盗」の脚本を書いている。

ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当した。

全米大ヒットを記録し、アカデミー賞では作品賞など3部門にノミネートされた実録ドラマ。

アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げる東西冷戦の時代に
NASAの歴史的な偉業に貢献した黒人女性3人の知られざる真実を描き出す。

宇宙開発と数学者としての彼女たちもさることながら、ジム・クロウ法と言う冷徹で南部の歴史そのものの人種差別を突き破って行く姿に感動する。
差別を扱いながらも、3人の個性的で前向きなキャラクターとユーモア溢れるトーンが楽しい。

9月29日よりTOHOシネマズシャンテにて公開される。

「僕のワンダフル・ライフ」(A Dog's Purpose)(アメリカ映画):少年イーサンとラブラドール・ベイリーの友情は時を超え、犬を変えて「永遠」に続くのだ

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原題A Dog's Purpose、「犬の生きる目的」は先ず楽しむこと、人間と一緒に楽しく生きることにある」と結論する。

映画は最初のゴールデンリトリーバーの「ベイリー」の老衰の死によって引き裂かれたイーサンとベイリーの絆が50年後にリユニオンされる運命を描く。

アメリカでは1月27日から上映が始まったが新登場では2位。
Amblin EntertainmentとWalden Media制作UNI配給のラッセ・ハルスト監督「A Dog's Purpose」はファミリー層を惹きつけ3058館で公開され18.4Mの興行成績だが制作費は22M(25億円)だからリクープは問題ないだろう。

スェーデン出身のベテラン,71歳のラッセ・ハルストレムは「ギルバート・グレイプ」や「ショコラ」などでデカプリオやデップを送り出したことで知られる巨匠だが、犬好きで評判だ。
忠犬ハチ公をモデルにした「HACHI 約束の犬」や犬のように扱われる見捨てられた少年の「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」など犬をテーマにした作品を制作しキャリアを積んで来て犬映画は3本目になる。

青天の霹靂事件が起きたのは、公開前のプロモ・ヴィデオがTMZの動画にアップされ、犬が「水責め」の誤解を招くようなトレーラーが流れた。

ダムに落ちた少女を助けようと「警察犬」に転じたジャーマン・シェパードが後を追って飛び込むシーンだ。無理矢理背中を押して突き出すように見える。。

怒った動物愛護団体「PETA」が(映画を見もしないで)犬が虐待されていると訴え、映画のボイコットをマスコミを通して呼びかけ、実際幾つかのシネコンの前ではプラカードを掲げ、観客に「見るな!」デモを繰り広げ訴えた。

これさえ無ければ少なくとも2週間前の予測調査では24Mを超えると報告が出ていたのだから20Mにも届かない結果にユニバーサル・スタジオ関係者は怒り悔しがる。

8歳の少年イーサン(プライス・ゲーサー)の家に引き取られた犬ベイリーは、イーサンと喜びも悲しみも分かち合いながら成長する。工場をリストラされた父親と母親は喧嘩が絶えず夫婦は離婚し父親は家を出る。
だがイーサンはベイリーが傍に居る限り気にしない。

高校生となったイーサン(K・J・アパ)とベイリーの人生のハイライトは二人で遊んだフットボールのお陰でイーサンは高校チーム「Tigers」のクォーバックでパスの名人となりスカウトの目に留まりミシガン大学の奨学金を受けることが決定する。恋人ハンナ(ブリット・ロバートソン)も学業成績優秀で既に奨学金を得ている。

これを妬んだ同級生の悪ガキがイーサンの家に爆竹や花火を投げ込み、家事になる。炎上する二階から母親と犬を救い出し自分の番になるとシーツが燃え切れ庭に落ちた所を家が崩れその下敷きになる。
ベイリーが駆けずり回るが大きな柱の下から引っ張り出せない。

消防隊員が救助するが左脚は重傷で生涯ビッコをひくことになる。
ミシガン大学のクォーターバックの夢は破れるがイーサンの一大決心は愛するハンナと別れること。
彼女に引っ付いて勉学に励む足枷になってはいけない。

泣く泣く別れ自分は農業学校へ行き、祖父母の経営する農園を受け継ぐことにする。小さな生きて行くのが精一杯に農園だがこれしか選択の余地はない。

18歳に満たないK・J・アパ演じるイーサンの涙を堪えての決別の辞はハンナと観客の胸にズシリと重い感動を届ける。

W・ブルース・キャメロンが愛犬を亡くし嘆く恋人のために
「死んでも生まれ変わった君のところへ戻って来るんだよ」と、
書いた小説「野良犬トビーの愛すべき転生」(新潮文庫)は大ベストセラーとなりここに映画化された。

ヒンズー教や仏教では人が何度も転生し、
また動物なども含めた生類に生まれ変わる「輪廻」を信じる。

何十年も隔てて、何匹の犬を経てイーサンのもとに戻って来る愛犬ベイリーとの絆は「仏教徒」か「ヒン
ズー教」でなければ信じられない輪廻の世界だ。

50年で3回転生するベイリーは、劇中で最初はゴールデン・レトリバーの仔犬だったが、
生まれ変わってジャーマン・シェパードはシカゴ警察犬K9になるが
人質を救出し揉みあった瞬間に犯人に射殺される、一番勇敢で短命な犬だった。
それから可愛いコーギーを経て、最後の犬はベイリーのラブラドールに負けない大きさ。
セントバーナードとオーストラリアン・シェパードのミックスに姿を変えて
野原にポツンと一軒立つ懐かしいい白い家の戸口に立つ。

50台半ばのイーサン(デニス・クエィド)は老け込んでベイリーだとは分からない。
尻尾を追いかけてグルグル廻っても「どこの犬も同じだよな」と感銘もしない。

納屋の片隅に空気の抜けたフットボールを見つけイーサンに渡し投げろのサイン。投げて四つん這いになったイーサンの背中からジャンプしボールをキャッチしてイーサン、大声で「ベイリー!」と気付いて呉れる。
そこから過去の負債をチャラにする。イーサン&ベイリー、コンビは夫を亡くし孫娘と暮らしているハンナ(ペギー・リプトン)を楽しませ、失われた青春を取り戻し結婚に漕ぎつける。

農園の庭に大きなテントをはりカントリーバンドをいれた華やかなイーサン、ハンナのウェディングパーティ。
そして二人に挟まれてベイリーの再出発。

犬の使命は人間と共に生きる楽しみを堪能すること」
少し時間がかかったがこれがDog's Purposeだ。

ベイリーほか総ての犬の声を担当するは、ディズニー映画「アナと雪の女王」でオラフの声を演じ、
実写版「美女と野獣」ではル・フウ役を演じたジョシュ・ギャッド。
声がユーモラスで牝の警察犬、K9の声も違和感が無い。

成人したイーサン役にデニス・クエイドが渋い顔で現れると安心感が湧く。
役者の中でデニスしかしらない人も多い筈。

余り馴染みがないがイーサンの初恋の女性ハンナ役のブリット・ロバートソン、大人になり孫娘もいるハンナをペギー・リプトンが爽やかに演じる

ともかく犬の映画は良い。
愛犬を殺されて怒ったジョン・ウェルチはロシアン・マフィアとイタリアン・マフィアを全滅する。犬愛好家の気持ちだ。

9月29日よりTOHOシネマズ日劇他全国公開される。

「笑う故郷」(The Distinguished Citizen)(亜・西映画):アルゼンチンの小さな町「サラス」を書きノーベル文学賞を授与されたD・マントバーニが40年振りに帰郷しての大騒動

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原題の「名誉市民」(The Distinguished Citizen)とは、主人公の作家がアルゼンチンの田舎の市長から贈られる称号だ。

アルゼンチンの故郷、小さな町「サラス」のことを書き続けてノーベル文学賞を授与されたダニエル・マントバーニ(オスカル・マルティネス)。

ストックホルムでの授賞式で「これは喜びよりも、作家として衰退のしるし」とひねくれたスピーチ。

それから5年、執筆は一切行わず、講演の依頼もサイン会も断り、スペイン・バルセロナの豪邸から一歩も外へ出なかった。

ここまで来るとアルゼンチンではないが、コロンビアのノーベル文学賞受賞者、ガブリエル・ガルシア・マルケスを思い出す。短編集「落ち葉」や「百年の孤独」などを読んだがエッセイ集「ぼくはスピーチをするために来たのではありません」で、映画の主人公、ダニエル・マントバーニはマルケスをモデルにしていることが分かる。

コロンビアの人口2000人に満たないアルカタカで祖父母に育てられボゴダに移るがガルシアの故郷として頻繁に登場するのは架空の町「マコンド」だ。
マコンドでの様々な人々の生き様やエピソードを小説の中で活かしている。

だからマルケスの積りでダニエルを追う。

授賞以来、何もせずに5年間、バルセロナの大邸宅に引き籠り、秘書のヌリア(ノラ・ナバス)を心配させていたノーベル賞作家ダニエルは、アルゼンチンの生まれ育った故郷、田舎町「サラス」の市長(マニエル・ビセンテ)から「名誉市民」の称号を授与したいと招待を受ける。

20代の若い頃逃げるように逃げ出したサラスだが、嫌悪と侮蔑だけだと思ったら、心からもう一度見てみたいとのノスタルジアもあり40年ぶりに遥々スペイン・バルセロナから飛行機に乗りポゴダに到着する。

さぞや華かな歓迎陣が待ち受けているだろうと税関を抜けロビーに出るとTシャツで小太りのラモンと言うどんくさい男が小さく名前を書いたプラカードを持って立っている。

サラスまではまともに行けば7時間かかる、近道を知っているからとオンボロ自動車の助手席に乗せられ人家の見えない野っぱらをとことこ走ること3時間ほででパンク。スペアタイアも無し携帯もつながらないと言う最悪の状態で夜になる。そして野原で一晩過ごす。

ようやくオカシイと捜索隊が出たらしく、その一台にピックアップしてもらい町のホテルへチェックイン。
 とてもじゃないが歓迎してくれている状態でない。

市長、カチョが巨体を揺すって部屋を訪ねて来る。明日の名誉市民賞贈呈式典のこと、滞在中のスケジュールを説明する。自分のイメージアップのためにこの著名人をどう活用したら良いかを思案している様子が見て取れるのが笑える。

消防車がやって来てパレードをやると言う。人口が少ないし消防車しか派手な公用車は無いと言うので渋々乗り込む。

嬉しかったのは幼馴染で学校も一緒に通ったアントニオ(ダディ・ブリーバ)に再会できたこと。アントニオはダニエルの恋人だったイレーネ(アンドレア・フリヘリオ)と結婚し
フリア(ぺレン・チャパンネ)と言う美しい娘を設けている。
(このフリアがダニエルに惹かれいるのでややこしい)

アントニオとは過去の柵などいろいろありそうだ。愛憎入り混じったアンビバレントなフリヘリオの演技が上手い。

さて肝心の名誉市民賞贈呈式、ダニエルの生まれたばかりの写真から小学生中学生の頃、そして現在までを纏めたショートフィルムは当の本人、ダニエルが感動し涙が止まらない。

「これはノーベル賞より価値のある名誉です、その名に恥じないように残りの人生を歩みます」とオーバーなスピーチをしてしまう。

しかしお祭り騒ぎはここまで、概して町の人々に冷たかったダニエルへの反発(しっぺ返し)は
ノーベル賞を貰ったからと言って消え去るものではない。

二次会のクラブの飲食で踊りまくるダニエルに詰めたい目、
絵画コンクールで審査委員長のダニエルの評価は八百長だと怒鳴り込む男、
果てはホテルの部屋に裸の若い女性が二人、追い出すのに一苦労だ。

国際的文化人と歓迎してくれていると調子に乗っているが、ふと気づいてみると、彼を取り巻く事態は、いつの間にか思いもよらぬ方向へと方向転換しはじめている。

どうも故郷と言うものは「遠きにありて想うもの」が良さそうだ。

主演のオスカル・マルティネス。アルゼンチン生まれの68歳。TVで活躍していて馴染みが無いが硬軟織り交ぜた演技は絶品だ。


監督は日本でも2012年に公開された「ル・コルビュジエの家」のガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンの共同演出。脚本はアンドレアス・ドゥプラット。監督の実兄で建築家でもある。

この作品は米アカデミー外国語賞のアルゼンチン代表作に選出されたのを始め、スペイン・アカデミー賞で最優秀イベロマロウ文化賞を受賞。
同じくスペイン国際映画祭の作品賞/脚本賞をW受賞、ギリシャ・テッサロニキ国際映画祭で観客賞など南米のみならず、ヨーロッパ各国で数々の映画賞を受賞。

しかしスペインやイタリアなどヨーロッパでは評判のコメディだがアメリカでは今年の1月に小さなパームスプリング映画祭で1回上映されただけ、一般劇場公開はなく直ぐにDVDになってしまった。

故郷を捨てたノーベル文学賞作家、コロンビアのガブリエル・ガルシア・マルケスとダブルイメージで見るのも一興だ。

9月16日より岩波ホールにて公開される。

「プラネタリウム」(PLANETARIUM)(仏・白映画):第二次大戦前のパリにやって来たアメリカ人姉妹。ビジネスとして降霊術を金儲けと割り切る姉ローラと本当に幽霊と話ができると信じ切っている妹ケイト

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フランス映画界のソフィア・コッポラと評判の、「美貌の天才レベッカ・ズロトヴスキ監督」とプレスに書いてはあるが、37歳のポチャッと下膨れの顔はそんなに美人ではない。それにデビュー作の「美しき刺」も日本ではフランス映画祭で上映されただけで一般公開はされていない。

だから注目のスターを使ってのこの作品が実質的に日本への初お披露目と言うことになる。アメリカでも8月半ばから上映が始まる。

1930年代。第二次世界大戦の前夜、アメリカ人スピリチュアリストのローラとケイトのバーロウ姉妹は、憧れのパリへと向かう。

クラブでの交霊術ショ―。幽霊や死者を呼び寄せ話をすると言う。
姉のローラ(ナタリー・ポートマン)が仕切り妹のケイト(リリー=ローズ・メロディ・デップ)が霊を呼び出す。
呼吸が荒くなり声が高まる「来るわ来るわ」(It’s coming!)と叫んだ後、
声色がしわがれて死者の声になる。

感動した観客に「自宅へ赴き個人的に親しかった死者を呼び出します」と誘いをかける。
この降霊術ショーは19世紀にヨーロッパを渡り歩いたアメリカ人女性トリオFOXショウが実在し彼女たちをモデルとしていると言う。

聡明な姉のローラはショーを仕切る野心家で、純粋な妹のケイトは自分の世界に閉じこもりがちな少女。
死者を呼び寄せる降霊術ショーを披露し、話題の美人姉妹として活躍し金を稼いでいた。

しかしクラブなどで多数の観客を集めての降霊術には限界があり、
個人的にバーやレストランなどで行っていた。

そんな二人の才能に魅せられた富豪の映画プロデューサーのアンドレ・コルベン(エマニュエル・サランジェ)は、世界初の「幽霊映画」を撮影しようと姉妹と契約する。

南仏の海辺の豪邸に住まわせ映画を始まり、ローラは端役ながら巧みに演じるが肝心のローラはどうも不器用だ。

コルベンと監督は、ローラに女優としての才能を感じ、彼女を主演に映画製作を進めることに。
相手役の若き美男俳優フェルナン(ルイ・ガレル)との熱いキスを演じたことで、映画の魔法がローラを女優として目覚めさせる。

「何もかもすぐ成功させたい。すべて欲しい」そんなローラは、野心を剥きだしにしていく。
ある夜、なにもかにも楽しくて仕方ないコルベンはローラに「君たちが来てから人生が変わった。扉を開けてくれた」と洩らす。

ローラはドイツ生まれのフランス人と自称するコルベンのフランス語に違和感を覚え
「あなたはフランス人ではないのね」と決めつけるが、
コルベンはれっきとしたフランス人だと言い張る。
この件は後になってコルベンの運命を分ける重大な要素となる。

コルべンのスタッフや監督も映画に反対するがコルべンはワンマン、
金に物を言わせてドンドン進行する。

コルベンは豪邸に夜な夜な美女を連れ込み淫行に耽るがそんな彼にケイトは惹かれる。
それを良いことに
コルベンは死んだ彼の妻を呼び出し、妻となったケイトに熱いキスをする。
ケイトを通して妻を愛し始める。

更にケイトの降霊の源を探ろうと顔中にピンを建て有害な電磁波を放つ機械をに使い実験をする。コルベンを純粋に愛し信じるケイトはバカげた治験で白血病に罹りそのまま命を絶つ。

コルベンの会社のスタッフは臨時株主総会を開き、降霊術に夢中になるコルベンの退任を決定する。

出自を調べ上げた副社長の親友は「本名はコルベンでなくコルビンスキー、ポーランド生まれのユダ公だ!」と決めつける。

 逮捕され法廷で国籍をはく奪されたコルベンはその後フランス官憲の手
(ナチスに強力)で東部へ送られ行方は知れない。

 死者と話が出来ると言うインチキチャネリングで稼ぐアメリカ女性、
一瞬の恋に燃え尽きる若い男女、
民族差別、色んな要素をスタイリッシュに取り入れては居るがシリアスな悲劇も消化不足でアラが目立つ。

素材もテーマも面白い。
「見えないものをどう見るか?」
星は昼には見えないが夜になると見える。映画は明るいと見得ないが暗くなると見える。降霊術は信じないと見得ないが信じると見える。

ビジネスとして降霊術を金儲けの手段と考えている姉ローラはクールに割り切っている。妹ケイトは本当に幽霊と話ができると信じ切っている。

ユダヤ人の大富豪は金の力でフランス人に成りきれると信じている。

しっかりしたテーマを扱っているのにレベッカ・ズロトヴスキ監督には荷が重い。

主演の姉ローラ役には「ブラック・スワン」でアカデミー主演女優賞のナタリー・ポートマン。12歳の時、「レオン」でデビューしたかわいいイスラエル女優もう35歳になる。

純情で本当に幽霊と話せると信じるのはジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘リリー=ローズ・メロディ・デップ、17歳。
両親の血を継ぎ美しく芝居も上手い。

アンドレ・コルベン役の52歳のエマニュエル・サランジェはフランス映画ではお馴染みのベテラン役者だ。

9月23日 よりヒューマントラストシネマ有楽町他で上映される。

「アメイジング・ジャーニー 神の小屋より」(The Shack)(アメリカ映画):今年春、アメリカで大ヒットしたキリスト教信仰映画(Faith Movie).無神論者の日本人観客にどれだけ受け入れて貰

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アメリカで今年3月3日より開けたこの作品、2800館で全国公開され16.1Mを挙げいきなりチャートの3位につけた。

信仰映画は南部のキリスト教徒の多い「バイブル・ベルト地帯」で当たるが都市部では振るわない。
しかし全世界で2000万部を売ったと言うウィリアム・ポール・ヤングのベストセラー小説の映画化は既に本を読んだ人が多いのでヒットにつながる。
(日本でも「神の小屋」という邦題で出版)

この後も連続4週興行成績のチャートに顔を出し信仰映画としては大ヒット作品となっている。
そして遂に日本でもクロックワークスが購入し配給することとなった。

原作の人気の他に日本人には2000人からのオーディションを受け選ばれた
人気俳優の石田純一と松原千明の娘、すみれが
神秘的な聖霊「サラユー」役でアメリカ映画デビューが話題となっているからだ。
ハワイ育ちの可憐な美少女、すみれの英語は完璧なネイティブだ。

信仰映画と言いながら飛んでもないエピソードから始まる。
いきなり40年前にさかのぼる。

マックス少年(カ-ソン・ローム)は酒に酔ってママ(タニヤ・ハバーレリ)に暴力を振るうパパ(デレク・ハミルトン)が許せない。

ママを守ろうと間に入るとコテンパンに打ちのめされる。
教会の牧師に告白し神様から暴力を止めて貰おうと皆の前でパパの暴力を懺悔したからパパの怒りは頂点に達し、殴る蹴るばかりか鞭で体中打たれ意識を無くす。

数日後動けるようになったマックスはパパの好きな牛乳の中に「殺鼠剤」を混入する。
パパの死因は警察の追求に合わず、完全犯罪で信仰映画には相応しく無いが、映画はそのことには触れず、40年後に飛ぶ。

成長し50代となったマックス(サム・ワーシントン)はフロリダ州の田舎で妻と3人の子供たちに囲まれて幸せな生活を送っている。

夏休みのある日、子ども3人を連れて教会のサマー・キャンプに出掛ける。
マックスの幸せな人生は、最愛の末娘ミッシー(アメリ―・イブ)がキャンプ中に誘拐されたことで終りを告げる。

捜索から数時間後、廃れた山小屋で彼女の血に染まったドレスが発見される。
そこに残されたテントウ虫のピンは、警察が追い続ける連続殺人犯の凶行である証拠でシリアルキラーであることは間違いなかった。

しかしミッシーの遺体は警察やFBIの懸命な捜索でも見つからなかった。

5年の月日がすぎても、マックは深い悲しみから抜け出せず、酒に溺れ怠惰となり、妻や子供たちとも距離ができ、家庭は崩壊寸前だった。

そんなマックの元へある日、「あの小屋へ来い」と書かれた奇妙な招待状が届く。疑念を抱きつつもマックは一人、山小屋へ向かう。

しかし久山小屋へ向かう車は大型トレーラーと衝突しマックは意識を失いICUに収容される。

幻想か夢か、辿り着いた山小屋で待ち受けていたのは3人の人物だった。

パパ(オクタヴィア・スペンサー)とイエス(アヴラハム・アヴィヴ・ラッシュ)それに聖霊のサラユー(すみれ)の三位一体だった。

これも出来過ぎた話だが、
パパと呼ばれるスペンサー扮するデブの黒人女が「父なる神」と言うのも俄かに信じがたい。
但し、ラッシュのイエスは髯も似合うイケメン納得性があるのは白人だからだろうか。
黄色人種のすみれの聖霊は違和感が無い。

彼らの住む山小屋(シャック)こそが神の小屋だったのだ。 

食事をし、話し合う。
人生を変える「神との体験」だった。

神様のなさることは意味があることで受け入れなければならない。
確かにミッシーが誘拐され殺されたことはマックスにとって耐えられないかも知れないが、
そこに神の意図をくみ取り、連続殺人犯人も許してあげなければならない。

「ケジメ」とか「倍返し」などとリベンジばかり考える不信仰のボクには納得できないが、
どうやらこれが映画の結論のようだ。
そして信仰映画として幕を閉じる。

毎日曜日欠かさずに家族揃って教会へ通い、
聖書を絶えず読み引用するアメリカ南部のバイブル・ベルトの人たち向けの内容だが、
無神論者が殆どの日本人に、この作品がどのように受け入れられるか興味を抱く。

9月9日より新宿バルト9他で公開される。
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