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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」(PAY THE GHOST)(カナダ映画):ハロウィーンの夜、大学教授・マイクの9歳の息子は「僕たち霊に償えるの?」と呟いて姿を消す

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 高級車好き、豪邸好き、浪費癖の激しいニコラス・ケイジはオスカー俳優(95年:「リービング・ラスベガス」)でありフランシス・コッポラの甥と言う名門の出で出演料15億円も取りながら、銀行から差し押さえ、税務署から税金未納で追い回され、出演を年間3-5本と作品を選ばず顔を出している。

ハッキリ言ってこの映画も借金返済のためのB級映画だ。

ニューヨークの(どこかの)大学で文学の教鞭をとるマイク(ニコラス・ケイジ)は、ラブクラフトやアービング、ゲーテの専門家として懸命に教授として終身地位(ティニュア)を獲得しようと頑張っている。

ハロウィンの夜だというのに「トリック・オア・トリート!」の時刻はすっかり過ぎ、すっかり不貞腐れた7歳の息子チャーリー(ジャック・フルトン)の機嫌を取ろうと、NYの余り出歩かない下町のカーニバル(祭り)見物に出る。

ところがチャーリーは、「僕たち霊(ゴースト)に償えるの?」(CAN WE PAY THE GHOST?)と謎めいたひとことを残し、突然人混みの中へ姿を消してしまう。

観客はチャーリーが最近窓の外に不気味な物体を目にしていたことを知っている。

チャーリー失踪の手がかりをあちこちにビラ(missing child)を貼って必死に探し続けるマイクは、妻クリステン(サラ・ウェイン・カリー)とも険悪な雰囲気になる。

何の手がかりも得ぬまま1年経ち次のハロウィンが迫る中、マイクは恐るべき事実にたどりつく。

毎年ハロウィンに子供たちの失踪事件が起きていること、そしてその子たちは決して帰ってこないということ。
マイクは不思議な幻想を抱く。無数のハゲタカがローワー・マンハッタンに住み着いている。そしてホームレスの野営地に「PAY THE GHOST」と大きな落書きがこれ見よがしにしてある。

果たしてこのオカルト・スリラーは何者の仕業なのか?万聖節も近づきタイムリーな映画だが、どうにも内容が無い。

こうしてストーリーを見ると如何にも超自然的なオカルトで怖そうだが、退屈な話で余り興奮しない。

ニコラス・ケイジが大きな目を更に剝きだして頑張っているがどうにも空回り。

監督はドイツ生まれのウーリー・エデル。スリラーは得意分野。
「ブルックリン最終出口」(89)で注目されハリウッドでの地歩を固めた。

10月22日より渋谷シネパレス他にて公開される

「スーパー歌舞伎 Ⅱ ワンピース」(日本映画):市川猿之助の真っ赤な漁師姿のルフィを花道で見る驚きと嬉しさ

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このところ電通の評判はさっぱりで株価までも低迷している。

8日に記者会見を開いた東大卒女子新入社員・高橋まつりさん(22歳)の母親。
昨年12月に自殺、母親は今月に入り記者会見を開いて、娘は残業が100時間を超える異常な労働を強いられていて「過労死」だとし「鬱病」をも発症していたと訴える。

私自身は半世紀以上前東大卒で電通の新入社員だった。
超多忙のラジオ・テレビ局に勤務していたから高橋さんの気持ちも分かる。
 
 先ず東大卒も拓殖大学卒も入社したら差別せずバシバシ使う。東大卒だから鼻にもかければ周りからバッシングを受ける。これは電通の良いところだ。

 女性も男性も差別をしない。
100時間労働など当たり前、徹夜など当たり前。
今と違って「ビューティフル前のモーレツ」時代では社員は覚悟が出来ていた。

代理店#1電通なんて矜持は捨てなければならない。
一歩外へでれば博報堂、旭通、一企が鎬を削って迫って来る。

 修羅場を潜っている内に鬱病だの過労など忘れてしまう。
自殺は弱さや甘えの結果に過ぎない。
 
 しかし高橋さんの記事を読むと涙がこぼれる。
「仕事も人生も、とてもつらい。今までありがとう」と言い残して飛び降りた。
昨年のクリスマスの早朝、東京で1人暮らしの高橋まつりさんから静岡県に住む母幸美さん(53)にメールが届いた。

 高橋さんが中学生の時に両親が離婚。「お母さんを楽にしてあげたい」と猛勉強して東京大に入り、電通に入社した。だが高橋さんのSNSの書き込みは昨年10月以降、「体も心もズタズタ」「眠りたい以外の感情を失った」などと深刻になった。

「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」などと上司からパワハラ発言を繰り返されていた様子も書かれていたという。
こんな思いやりの無い上司は始末しなければならない。

 
 電通は先月23日、ネット広告を契約通りに流さず、広告主に過大請求していた問題を公表している。高橋さんが所属していたダイレクトマーケティング・ビジネス局もこの問題に関わっていたという。

 インターネット広告で実際に掲載されていないのに、広告料金を請求するなど不適切な取引が見つかったと発表した。新聞や雑誌などの紙媒体に比べて、ネット広告は掲載されているかを広告主が確認するのが難しい。

 テレビや新聞などのマスメディア広告に関して電通は日本で、いや世界でナンバー1だ。しかし保守的で頑迷な新聞局の幹部が社長以下役員を占めた時に時代のネット広告の底流に気が付いていない。
 
 ネット広告の市場は拡大しており、15年では1兆1594億円と全体の19%を占めるまでに成長している。
広告業界では首位の電通だが、ネット広告の分野では頑迷固陋のバカ指導者のおかげで専業のサイバーエージェントなどに遅れをとっている。

おまけに顧客からの需要が急増するなかで人材が不足し「報告書のチェック体制など、組織の整備が遅れた」と言う基礎的なことが不祥事につながった。

IT関係ではヤフーと協働するCCIなどがあるが構造は従来通りのヤフー・バナーなどの場所取りに過ぎず、ITを使った革新的なクライアントサービスは他店に遅れをとっている。
高橋さんが所属したダイレクトマーケティング・ビジネス局の幹部も上からのプレッシャーは相当なものだっただろう。

 社員の自死はその一端、買収した「イージス」の業績に煽られ、アンシャンレジーム体制に亀裂が入り、不必要な圧制が行われていないだろうか?

 恒例の幹部が記者会見で頭を下げる写真には石井社長が抜けているのが気にかかる。
頭の天辺が河童の皿状に禿げているから「頭を低くするのが嫌いな男」だが、社の一大事を中本副社長に任せっきりにするのは良く無いね。


 真っ赤な漁師服の市川猿之助が現れるとビックリする。
本当に猿之助?
尾田栄一郎のド派手な見得を切る猿之助のポスターを見るだけでドキドキしていたから。

 舞台はなかなか見に行けないがこうして映画になると気軽に安い料金で(演舞場だと昼夜見ると2万7千円もする)好きな時間に行けるのが嬉しい。
「ヤマトタケル」以来猿之助のスーパー歌舞伎はシネマ歌舞伎のラインアップに加わっていたが「ワンピース」まではと思いもよらなかった。

 東映アニメは毎回見ているが歌舞伎となると別だろうと待ち構える。
だがアニメの雰囲気はそのまま演舞場のステージで花開く。

シャボンディ諸島での海軍との戦いの中で、麦わらの一味はバラバラに吹き飛ばされてしまう。
 吹き飛ばされたルフィは辿りついた島で兄エースの公開処刑の知らせを耳にする。ルフィはエースを助けるために脱獄不可能の海底監獄インペルダウンへ向かうことを誓うのだった。
 海底監獄への侵入に成功したルフィは、そこでボン・クレーに再会する。エース救出のために共に戦う二人であったが、監獄署長のマゼランによってルフィは絶体絶命の状態に。
さらに、エースはすでに海軍本部へ移送されてしまった後であった!

 エースを助けようとする白ひげ海賊団、ルフィが海軍本部に集結し、いよいよエースを巡って海賊たちと海軍の頂上戦争が今始まる。

3年前、2013年から始まった歌舞伎の舞台を映画館で上映する「シネマ歌舞伎」シリーズもこの「ワンピース」をもって第25弾で(1年に8本強シネマ歌舞伎は送り出されている)。
人気コミック「ONE PIECE」はそれにしても新しい企画で、四代目市川猿之助による「スーパー歌舞伎II」で舞台化し、2015年に新橋演舞場などで上演された「スーパー歌舞伎II ワンピース」をスクリーン上映するものだ。

10月22日より新宿ピカデリー他で公開される

「マイルス・デイヴィス 空白の5年間」(MILES AHEAD)(アメリカ映画):「ジャズの帝王」が全盛期に姿を消す。その謎を追う俳優、ドン・チールドの脚本・監督作品

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ジャズ奏者や歌手の伝記映画は多い。古くはクリント・イーストウッド監督のチャーリー・パーカーを描く「バード」、ジェイミー・フォックスが盲目の歌手レイ・チャールズに扮する「レイ」、ジョニー・キャッシュ伝の「ウォーク・イン・ザ・ライン」、昨年の伝説的黒人歌手、ジェイムス・ブラウンの「GET ON UP」(邦題「ジェイムス・ブラウン 最高の魂を持つ男」)など枚挙に暇ない。

死んでから4半世紀も経っている「ジャズの帝王」ことマイルス・デイヴィスのことを若い世代は知らない。

本名をマイルス・デューイ・デイヴィス三世(Miles Dewey Davis IIIと言い、, 1926年5月に生まれ、 1991年9月に65歳で亡くなった。

若い人でも詳しくは知らないがジャズトランペット奏者だと言うことは認識しているだろう。
時代に応じて様々な音楽性を見せ、ジャズ界を牽引した王者だ。
そのジャズの帝王が油の乗った5年間、音楽シーンから姿を消した。

「ホテル・ルワンダ」でアカデミー主演男優賞にノミネートされたドン・チードル。
その歴史的謎を黒人スター、ドン・チールドが脚本、製作、自身の主演で追ったのがこの映画だ。

役者には慣れているが作家では無いチールドは上述のジャズ映画に比べ遊びも少ないし真面目に取り組んでいるせいかドラマ的な盛り上がりに欠ける。


物語は1970年代後半、突如としてマイルスが音楽シーンから姿を消した5年間にスポットを当てている。
慢性の腰痛に悩まされ、ドラッグや鎮痛剤の影響ですさんだ生活を送っているマイルスの元に、したたかな音楽レポーター、デイヴ・ブレイデン(ユアン・マクレガー)が強引におしかける。

それから2日間、ふたりは盗まれたマイルスの最新曲のテープを取り戻すため思わぬ追跡劇に巻き込まれる。
追跡劇の合間のフラッシュバックでマイルスは元妻であり彼のミューズでもあったフランシス・テイラー(エマヤツィ・コーリナルディ)との破綻した結婚生活を思い起こし、苦悩と絶望から死をも考えたマイルスだが、音楽から救いを見出し、復活への道を探していた。

音源は本物を使い、チールドはリップシンクならぬ、ペットシンクを巧みに演じる。トランペットを猛練習して臨み、迫真の演奏シンクにトライしたのだ。

ライブシーンではマイルスとの共演経験もあるハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターをはじめとする一線級のミュージシャンが顔を揃えているのもみものだ。


原題は「Miles ahead」。本名に引っ掛け、「数マイル先を見つめる」という意味だろうか。マイルス・デイヴィスが1957年にリリースしたアルバムと同名だ。

主人公マイルス・デイヴィスを演じるのは監督デビューも飾るドン・チードル。
マイルスのもとに押しかける音楽レポーター、デイヴ・ブレイデン役をイギリスを代表する俳優、ユアン・マクレガー。

マイルスの最初の妻でダンサーのフランシス・テイラー役をエマヤツィ・コリネアルディ。この黒人女優は余り馴染みが無い。
マイルスが所属していたコロンビア・ミュージックのプロデューサーのハーパー役をマイケル・スタールバーグ

マイルス・デイヴィス・ファンにとっては見逃せない作品だが、一般受けはどうだろうか?

12月23日よりTOHOシネマズ・シャンテ他で公開される

「牝猫たち(日本映画):実力派・白石和彌監督の池袋風俗店のデルヘリ三匹の牝猫たち実録風の展開は迫力もエロもある

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1カ月近くも飯田橋の逓信病院に入院中だったが、抜け出して初めて外出したことをブログにも書いた。
外国特派員協会(FCCJ)で「Nikkatsu Roman Reboot」と題してロマンポルノを名だたる監督たちに撮らせ、その意気込みを聞く記者会見が行われた。

 冒頭に日活・佐藤社長が「何故今ロマンポルノ(RP)か?」を説明する。
2010年、日活ロマンポルノ・40周年記念で宍戸錠と代表的作品を上映しながら、世界を廻った。
USC(南カリフォルニア大)で「こんなに素晴らしいものをどうして止めてしまったのか?」とかもっと女性に見せるべきだ」と言う意見が続出した。

そこで佐藤社長は考えた。
日本は世界では稀な現象で、邦画は洋画を圧倒している。
邦画花盛りだが実は「自由」と言うものが無い。

日活ロマンポルノは映画界が斜陽になった1970年に一週間の撮影、70分程度の尺、10分に1回の濡れ場、完全オリジナル脚本、それに何より低予算(3千万円以下)。

この条件を満たしてくれればスリラーでも反体制でもどんな政党宗教、コメディでもアクションでも何でも良いと監督たちに任せた。

 その結果、田中登、神代辰巳、鈴木清順、藤田敏八、根岸吉太郎、小沼勝、金子修介などその後の日本映画を背負って立つ映画作家を輩出した。
今年は45周年。再び若い気鋭の監督5人に依頼して「自由」にRP作品を作ってもらうことにしたのだと。

  監督5人は5分程度の自作メイキングのフーテージを上映した後、未だ制作中の新作を紹介した。

塩田明彦(「黄泉がえり)「どろろ」など)は「風に濡れた女」、
白石和彌(「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」など)は「牝猫たち」、
園子温(「冷たい熱帯魚」「新宿スワン」など)は「アンチポルノ」、
中田秀夫(「リング」「クロユリ団地」など)は「ホワイトリリー」、
行定勲(「GO」「世界の中心で、愛をさけぶ」など)は「ジムノペディに乱れる」
について質問に答える。

ハリウッド映画を圧倒するこの世の栄華を極めている邦画に「自由」は無いのか?の問いに塩田が簡潔に答える。
「全く無い」と。
自分のオリジナルの脚本はまず通らない。
原作もの、それも殆どがコミックで何百万部売れたものとか、TVで当たったシリーズドラマの特番的映画に限定されてしまう。

 キャスティングも自由はきかない。
売れていて客が呼べる役者ばかり。自分のイメージに合っている俳優は使えた試しが無い。
映画のキャラクターの「適否」も考慮しない。ポイントは客が目当てで足を運んでくれるかどうか。

 ロケも季節も自由がきかない。上映時期を決めているから真夏にホワイトクリスマスを撮らなければいけない。

 監督なんて操り人形、スタジオやプロデューサーの言いなりだと白石ばかりでなく、全員が憤然としている。

中田も同意見だが、メジャーの邦画は資本主義の塊で金が儲かるかどうかが判断基準だから仕方が無いと諦観。中田はLAに拠点を移し自作の本でホラーを撮って華を咲かせたから何でも言える。

白石は、ロマンポルノは役割を終わったと言う。
70-80年代は男の子たちがRPで「抜けた」。

 だが今やAVが本番を見せてそれ以上のことをやっている。
ロマンポルノのソフトな絡みは「抜きたい」男には関心が無い。

最近RPをゲリラ的に上映すると観客の6割以上は女性客だ。ターゲット層を女性に絞ってREBOOTをすれば必ずやブームを巻き起こす。
それはかつてのシルビア・クリステルで大ブームを巻き起こした「エマニュエル夫人」の路線だ。

そんな意味で名匠五人の監督作品の観客動向を精査しロマンポルノを発展させたいと会社側は意気軒高だ。

そんな記者会見から1か月。
作品は完成し渋谷のユーロライフで試写が始まった。

昨日(11日)は「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」などの白石和彌が監督するの「牝猫たち」。
未だ41歳の若手に入るが若松孝二や行定勲などについた助監時代が長く、TV出身のポット出の監督とは一線を画する。

絵も本も年季が入っている。
10分に一回の絡みシーンもヘアもチラチラと興奮度も全盛時代のロマンポルノに引けをとらない。

池袋の風俗店「極楽若奥様」で働くデルヘリ嬢、3人の「牝猫たち」が主人公。互いを店の名前で呼び合うだけで本名も出自も働く動機も知らない。
 
ある日の夜から明け方までの牝猫たちを追う。
雅子(井端珠理)の客はネットお宅で引きこもりの高田(那智博)。ネットで世間を眺める客に身体を提供し、終わると雅子で口直しをしてネグラのネットカフェに戻る。

 ベビーシッターに一晩6千円で子供を預けるデルヘリ嬢,結衣(真上さつき)はサービスが得意で無く常連客が居ない。店長の野中(音尾琢磨)に客を廻せと愚痴る毎日。主婦の里枝(美知枝)は毎回指名して来る一人暮らしの老人金田(吉澤健)から身体を求められることも無くただ一緒に過ごすだけ。

そんな中「薄汚い娼婦3号」とタイトルの動画がSNSにアップされ忽ち炎上。
「極楽若奥様」の店名、住所、それに店長の野中が売春をそそのかす言動までが盗撮されている。

 実録池袋の風俗の雰囲気は迫力がある。女優の井端珠理も真上さつきも美知枝も初めて見る顔でソコソコの美人だが、白石の演出力が優れているのだろう、
素人ながらしっかりした芝居や全裸の絡みを見せてくれる。

かつての日活ロマンポルノ女王・白石和子がSMクラブママ役でカメオ出演している。古稀を迎える女王の裸は今は見たくない。

2月11日より新宿武蔵野館他で公開される。

「バースデーカード」(日本映画):天国に召された母は娘、紀子に11歳から20歳まで誕生日カードを贈り続け、25歳の結婚式当日には最後の手紙と自分で編んだ花嫁ベールを贈る

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恋人や妻、家族など死んだ筈の人たちから手紙、音声テープ、DVDなどのイメージが届けられる映画は多い。
突然どういう訳か届けられるミステリータッチのものや、最初から予告されてある一定の時期に届くものもある。

この映画は後者の例だ。

内容の大部分は二人の楽しかった過去を振り返って、残された方を強く生きろと励まし色々な助言をする、どうしてもお涙頂戴の哀しい話になってしまう。

こんな映画で一番有名なのは数年前の「PSアイラブユー」
アイルランド元首相の娘セシリア・アハーンによる同名ベストセラー小説をオスカー女優ヒラリー・スワンク&ジェラルド・トラー主演で映画化したもの。

最愛の夫を突然亡くし、家に引きこもっていた主人公、ホリー。
しかし30歳の誕生日に夫のメッセージが録音されたテープが届き、その後テープの予告通りに夫から消印のない手紙が届き始める。

少しミステリアスなのは、現在も日比谷のTOHOシネマズと・シャンテで上映中の「ある天文学者の恋文」。
イタリア映画で、ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。トルナトーレとしては初めての英語セリフの映画だ。

 老いた天文学者で大学教授エド(ジェレミー・アイアンズ)は、教え子の美人女子学生エイミー(オルガ・キュリレンコ)と恋仲になっている。
しかし、エドはエイミーの知らない處で急逝してしまう。彼女が知ったのは4日後、エドに代わった教授の冒頭の挨拶で知る。

だがその直後から、エイミーのもとにはエドからメールや手紙、贈物が次々と届く。天文学者だけに、何百万年も前に死んだ星の光が今も地球に届いている科学的事実を思わせる、思わず泣かせるストーリー。

日本映画の「ニライカナイからの手紙」は、熊澤尚人の脚本・監督した2005年の作品。蒼井優の初単独主演映画で。父の死後、父の愛用したカメラで写真を撮る少女の話。沖縄の竹富島を舞台に、離島した母と、母から毎年誕生日に送られてくる手紙を支えに生きる少女との絆、そして少女の成長を、沖縄の美しい風景が印象に残る。但し母は離れているが生きているので上述の死者

昨年公開された日本映画「愛を積むひと」も死んだ妻が送り続けて来た手紙に励まされ家族が農作業に励む。

今日紹介する「バースデーカード」はタイトルから、娘の誕生日に死んだ母親からカードが送られて来るストーリーは予見できる。ミステリーは何も無いが主人公、鈴木紀子の10歳から25歳までの成長を天国から見守り、その時期の娘の状態、悩み、恋などを予見し長いユーモアを交えたカードのメッセージを伝える妙は見ていて気持ちが良い。

主人公は娘の方でそれが宮崎あおいだと思っていた。
宮崎のデビュー作「害虫」の時は17歳、「ツレがうつになりまして」が25歳、そしてこの映画では実年齢は30歳だ。

そうなると娘役は無理で、主演は20歳の橋本 愛。21ねと受けて13歳から14歳の初潮を見るまでのローティーンをCMで活躍する中村ひなの、そして真打登場と17歳から25歳までの紀子を20歳の橋本愛が演じる。つまり4人がかりで21年間の長年月に亘る映画だ。

それにしては父親役のユースケ・サンタマリアが殆ど年を取っていないのが気になる。舞台は長野県諏訪市。大学教授を兼ねる父、鈴木宗一郎は湖畔にある天文台に勤め研究に励んでいる。(J・アイアンの天文学者には少しも似ていない)

11歳の誕生日から毎年届く死んだ母からの「バースデーカード」。
最初のメッセージでは毎年カードを贈ることを約束し割引で買った「ひまわり」の種を添えてカードで何処へ植えるか指示している。

癌が発見された時は体中に転移し末期症状だった。死のベッドの中で最愛の娘の成長を見守ることが出来ないことを悟った母が、ありったけの愛を込めて綴った未来の娘への「手紙」はまるで紀子の近況を知り尽くしたように適切な指示と忠告に満ちている。

紀子は何事にもネガティブで、いつもチャレンジすることをあきらめてしまいがちな内気な少女。折角クラス代表でクイズの回答者になるのに簡単な「愛媛県の県庁所在地に励まし、カードにもその事に何度も触れる。 

一方母、芳恵は明るく気丈で行動的で、いつも家族を温かく見守り大きな愛で包み行動を指示する。

卒業の時はマフィンのつくり方を丁寧に教える。

14歳の初キス指南がオカシイ。口臭除去の歯磨き法、上目使いで相手を見る、何よりも素敵な相手を選ぶ、チャンスが来たら積極的にキスをする。
母親の言うことかねウ。しかしイラストはコミック風で笑わせる。

小4でクイズに挑戦で敗れた紀子は恋人・立石純(中村蒼)と父親を引き連れ大阪ABC放送の「アタック25」に挑戦する。最後の質問、第一回芥川賞作家、石川達三(蒼氓)が答えられずに敗北。(僕だって読んでいるぜ)

知っていながら小学校の時にように臆したのだ。
天国の母から届くバースデーカードの励ましに応えられない紀子にイラつく。

しかし紀子はもっと大きな勲章を獲得する。長年の恋人立石純との結婚式だ。25歳のウェディングドレスを纏った紀子に最後のメッセージが届く。
病床で一生懸命に編んだ真っ白なベールだ。薄暗い教会の中でベールが光を浴びて美しい。(考えて見れば14年前のベールがあんなに真っ白に保存されているかね?)

少女から若い女性そして花嫁と女のスポットライトを浴びた青春の華やかな時機を見守りながら天国からの会話と励まし、助言。精一杯幸せに向かっていく等身大の女の子・主人公の紀子のストーリーは十分魅力的だ。

しかし余りに甘く無害で毒が無いのが淋しい。映画は疾風怒濤とまでいかなくとも、紆余曲折があって初めてゴールに辿り着く幸せがあると言うもの。

監督・脚本の吉田康弘は37歳。
「キトキト!」(07)で監督デビュー。
「旅立ちの島唄~十五の春~」(13)、「江ノ島プリズム」(13)、「クジラのいた夏」(14)などがある。
吉田としては「キトキトに次ぐ佳作になるだろう。

10月22日より丸の内TOEI他で公開される。

「MIC メン・イン・キャット」(Nine Lives)(フランス・中国映画):猫になってしまったドナルド・トランプ似の大富豪トム・ブランド。

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 「猫は9つの命を持つ」(Cat has 9 lives)の格言からの原題が、飛んでもない邦題になっている。
死んでも死んでも生き返る猫、高い所から落下してもケガをしない猫と言うイメージは西欧に強いが日本では何のことかわからない。

 こんな日本タイトルはハリー・ソネンブルグ監督の名作シリーズ「MIB」からのイージーな発想と引用だ(と思った)。
主役の体長1Mにもなる長毛種で茶縞の巨猫は「メインクーン(Maine Coon)」と呼ばれ家猫の中でも大きな品種で「ジェントルジャイアント(穏やか人)」という愛称を持つ。賢くて遊び好きなことで人気がある。
 
 日本でもペットショップで見かけるがアメリカ東北部のメイン州が原産で「州猫」として認定されている。
邦題で配給会社のイージーさを揶揄したが「メイン州のキャット」=「メイン・キャット」と深読みしなければならなかったのかも知れない。ここに謝って前言を取り消す。

 冒頭は完成したばかりのNYマンハッタンの自社高層ビルへのパラシュート降下。マスコミや関係者の集まる中ピタッと目標地点に着地する。

NYの不動産王、ドナルド・トランプに酷似したワンマン主人公、トム・ブランド(ケヴィン・スペイシー)は世界一高いビルを建てることに執念を燃やす。
側近たちは呆れかえって非公開会社をIPOに持って行こうと画策する。
自他ともに認めるが、トムの息子・デビッド(ロビー・アメル)は未熟で臆病で役に立たない。

当分は自分1人でやって行こうと決心する。
オフィスに妻のララ(ジェニファー・ガーナー)から電話、明日は末娘のレベッカ(マリーナ・ワイズマン)の誕生日だと。

 プレゼントに猫を欲しがっているからペットショップ・パーキンス(クリストファー・ウォーケン)に寄ってMr.Fazzypantsを引き取って来ること。

雨の中猫と一緒に店を一歩外へ出て車に乗り込もうとすると、社員のイアン(マーク・コンスエロ)が待ち構えていて、重役たちが待っているので屋上まで来てくれと。
重役たちの陰謀は既に巡らされており、トムの退陣と即刻の株式公開、息子のデビッドへの譲渡は認めないと。

一笑に付し帰ろうとすると大きな雷が屋上を襲う。トムはファジーパンツと一緒に落下し意識を失う。

気が付くと病院のICU。
トムがしゃべる言葉はミャーミャーと猫言葉だけ。自分はちゃんとものを言っているのに猫になってしまった。

一方無傷でレベッカたちに連れられ家に帰って来たファジーパンツにトムが入れ替わっている。
ララやレベッカに自分の意志や考えを伝えようとしても、ニャーニャーとしか発音できない。

「猫のガーフィールド」を始めとして動物擬人化映画は今年の夏は大ヒット。「ズートピア」「ファインディング・ドリー」「ペット」など動物主人公は大活躍をするが、動物の中に人間が入り込む作品はこれが初めてだ。

アニメと実写の違いがあるが、どうしても面白さの質が違う。
VFXで巨猫は懸垂をしたり、悪漢のパンツを引っかいたり、高層ビルに3センチほどの窓淵を歩いたりするが実感が湧かない。

大体会社乗っ取りとかIPO陰謀などと言うクリシェがストーリーを陳腐なものにしている。

オスカー俳優、ケヴィン・トレーシーも植物人間じゃ活躍のしようが無い。
唯一73歳になるクリストファー・ウォーケンのカリスマペットショップのオーナーが少しばかりの超能力を駆使するだけだ。

脇では妻ララ役をジェニファー・ガーナー。娘レベッカをマリーナ・ワイズマンが演じる。

撮影監督出身のハリー・ソネンフェルドは「アダムスファミリー」シリーズや「MIB」シリーズですっかり名を馳せたが、久しぶりのコメディ小品で巧みな演出を試みるが、猫相手に空回り感もある。

この映画を含め、中国の映画制作進出は目立つ。不動産王ダーリン・ワンダ、Eコマースのアリババなどハリウッドやフランスへの進出が目立つ。

僕の好みからいえば巨猫、メインクーはどうもタイプでは無い。10数年前に死んだシャムの「タヌ」ことを今でも思い出す。

11月25日よりTOHOシネマズシャンテ他で公開される。

「マイ・ベスト・フレンド」(Miss You Already)(イギリス映画):ロンドンに住み、幼い頃から大親友の二人に別れの日が近づく。

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日経平均は上昇しているのに、今日も電通の株価は低迷。一昔前は電通スキャンダルはTVや新聞で報道されなかったが、最近は逆に大々的に扱われる。

女性新入社員(高橋まつりさん)の自殺から起因した労基法違反容疑で労働基準監督署は電通本社に立ち入り検査に入ったとネット上で流れている。黄色の腕章を付けた係員8人が汐留の本社に入り、労務管理の資料や人事担当者への聞き込みに入ったと言う。東京本社ばかりか関西(大阪)京都、中部(名古屋)の三支社にも夫々の労基局が調査に入ったと言うからただ事では済まされない。

余り知られていないが電通には労基法違反の「過労死」の前科がある。

朝日新聞元社長中江利忠氏の次男もラジオ局勤務だった大島君も自殺をしている

大島君のケースは恋人との破綻から来た心の傷で過労死では無いと最高裁まで争って敗れた。その当時ラジオ局長だった友人のK君は出世が止まった。

朝日新聞の中江社長は電通に協力する形で息子の自殺報道をストップしたが,今も東大社会学同窓会(クローネ会)会長を務めており、僕が挨拶しても冷たい。
電通を恨んでいることは確かだ。


プロローグで目が合った瞬間絆が生まれる2人の女の子を紹介する。
父親の転勤で小学生の頃オレゴンからロンドンに越して来たジェスと家が近くでアメリカ訛りの英語がオカシイと「本物の英語」(bloodyとかrubbishなど)を教えるミリー。アルバムに写真は沢山あるがジェスの写真にミリーが一緒にいないのは無い。この時点で既に、互いに「無くてはならない存在」Miss You Alreadyなのだ。

最高の思い出は一緒に処女を無くしたロックコンサートの夜。
数十年来にわたる大親友で互いの全てを知っているミリー(トニー・コレット)とジェス(ドリュウ・バリモア)。ファッションもキャラクターも圧倒的なカリスマ性で周囲を魅了するミリーにジェスは従うだけで幸せだ。

大人になった2人は、仕事も順調で、ともにパートナーを持ち、幸せな毎日を送っていた。

ミリーの相手は最先端ゴス・ルックのバンドボーイ、キット(ドミニク・クーパー)。破天荒のロマンスもミリーの妊娠で「出来ちゃった」婚。結婚してしまうと以外に家庭的で大人しい夫に変身するキット。オカシイのはミリーの母親、女優のミランダ(ジャクリーヌ・ビセット)で今でも人気TVスターで常識に欠ける。

スピーカーの販売会社「サウンズ音響社」を立ち上げ夫婦で活躍し立派な一軒家に一家仲良く住む。
一方環境保護の役所で働くジェスはそこで出会った整備士ジェイゴ(バディ・コンシダイン)とボートハウスで同棲を始める。ジェイゴは優しく思いやりもあるがミリーが2人も娘がいるのにジェスには子供が出来ない。「不妊治療」を続けていた。

大親友二人の紹介は駆け足でここまで10分足らず。

本番はミリーに乳がんが見つかるところから始まる。癌専門医が2人の娘に乳がんのMRIやCTスキャンを見せて説明し、ミリーは化学療法のため抗がん剤の点滴(IV)を打たれる。
同じ頃、不妊治療を続けてきたジェスに待望の子どもができる。ミリーのことを思みみうと、妊娠を伝えられないジェス。

それぞれが相手を思う気持ちから、2人の間に言葉にできない事柄が増えていった。

それでも、ミリーの誕生日パーティを抜け出し、タクシーを拾い、二人で憧れのエミリー・ブロンテの「嵐が丘」のヨークシャーの荒地へ乗り付けるシーンが印象的。
ロンドンから400キロも離れているのだ。「カードは(無制限の)ブラックだから」と運転手を納得させる。

 ミリーのガンは全身に転移し始める。余命を数えるステージになっても明るく病状をジェスに伝える。
脳に転移した腫瘍は「目の裏にあり、CTで見ると大きな牡蠣のようなの、とても美味しそう」
ミリーは全く見えなくなり伊達の大きな黒縁の眼鏡をかける。
抗がん剤副作用で毛が抜け落ちるとカツラに凝り始める。

 お腹が大きくなったジェスは流石に隠すことが出来なくミリーにオズオズと告白する。
祝福の雨霰!

 いよいよ破水し生まれそうになってからのジェスの慌てようとベッドから車椅子に移ったミリーの手助け。本当は足手纏いになるだけなのだが友情の厚さを示す絶好の時。

 肝心の父親ジェイゴは荒海のど真ん中で長期の掘削作業の最中。
スカイプでお産の中継を頼み込む。

 ジェスの顔を写すカメラを下のアソコへ移動させ仲間10数人と頭が出て来るところから完全に産まれるまでの中継を歓喜の声を上げながら見入るシーンが興奮する。

 主役の二人。
子役から馴染んでいるドリュー・バリモアも41歳、ベン・スティラーなどと組んでおバカコメディの常連だが、こういうヒューマンドラマは久し振りだ。

「リトル・ミス・サンシャイン」でブレイクしたオーストラリア出身の44歳トニ・コレットは歯切れが良くって人生のどん底でもポジティブな芝居は好感が持てる。
ミリーの母親、ミランダを演じるジャクリーヌ・ビセットは久し振り。72歳とも思えぬ若々しさでスクリーンを暴れ回る。

 ジェスのパートナー役を演じるパディ・コンシダインは最新の「ブリジット・ジョーンズ3」でもロンドンに住むアメリカ人に扮しているがロンドン訛りの大衆の中でアメリカ英語は新鮮だ。

 監督は「トワイライト~初恋~」などのキャサリン・ハードウィック。女性特有の感性で主人公の心の襞を濃密に描く。

 11月18日よりTOHOシネマズシャンテ他

「ハッピー・ログイン」(韓国映画):韓国人気スターを揃え、華やかな職業の3組の紆余曲折のラブロマンスを軽く描くコメディ

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過労死問題は電通の聖典「鬼十則」に及んできた。これは「パンドラの函」を開けることになる。「過労死」はこじつけて辿って行けば必ず「鬼十則」に触れざるを得ないからだ。

電通社員は入社すると必ず「鬼十則」を暗誦させられる。
東大卒女子新入社員の高橋おどりさんの自殺には弁護士側は、
電通の過労体質を指摘した上で、
第4代吉田秀雄社長の遺訓とされる「鬼十則」がその遠因だと指摘する.(産経新聞)

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2.仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4.難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなもの だ。
10.摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる

僕を始め電通社員は電ノートの最終頁の10則を仕事で行き詰まった時は必ず上司と共に暗誦した。聖書やコーランと同じだ。

過労死の原因は「鬼十則」と言われれば反論のしようが無い。不条理な精神論は「頑張る」上にはどうしても必須なのだ

戦後灰塵に帰した銀座7丁目、土橋通りに唯一生き残った12階の鉄筋コンクリートビル。油脂焼夷弾で周囲は何も残らなかったが昭和11年(1936年)に建立された電通ビルの外側は焦げた程度で唯一生き残った。
今でも年寄りは土橋(外堀)通を「電通通り」と呼ぶ。
戦後何も無いところから電通再生を任された吉田秀雄社長は社員を鼓舞し精神的に導く「鬼十則」を書きあげ社員に配布した。

十則はアナクロそのものだが、僕ら電通社員はジンと来るものがある。但し人に押し付けるもので無く内省のため頭をクリアにするためそして何よりも仕事に取り組むために自分で仕事を「創り出して」行った。
鬼十則でボクは電通を乗り切れた。(ただし嫌な上司に巡り合う不運があったが)

石井社長以下電通幹部は「過労死」の遠因として「鬼十則」を破棄する愚かさだけは避けて欲しい。
「鬼十則」が無くなれば海図を持たずに荒れ狂う大海原に乗り出すようなものだ。


昨日(15日)が初日で4時20分の品川プリンスTJoyは大混雑だろうと早めにチケット販売機に並んだ。
驚いたことに未だ4枚しか売れていない。
スクリーン4には結局8人しか観客は居なかった。

 韓国のイケメンたちが顔を揃えるのにオバサマたちの姿は見えない。

 登場人物の職業は華やかだ。先生と呼ばれる売れっ子の女性脚本家とオーディションで彼を認めて育てた人気俳優、KAL(かな?)のCAとひねくれシェフ、聾唖の天才作曲家とドラマの女性プロデューサー。
年齢も職業も異なる恋愛ベタな3組の男女が、SNSを通して関係が壊れたり絆が深めていく姿を描く。

 日本よりもSNSが流行っているからこんなラブコメディが成り立つのだろう。

 詐欺に遭い家を失った独身アラフォーCA(チェ・ジウ)と婚期を逃したお節介なシェフ(キム・ジュヒョク)。出された料理は美味だが口汚く喧嘩ばかり。
「私を女として見てないでしょ」「男として見てるかよ。どう見ても女だよ」「でも手を出さなの根」

 気難しく悪名高い売れっ子女性脚本家(イ・ミヨン)は人気絶頂で天狗になっている韓流スター・ジン(ユ・アイン)を軽く扱う。
ジンが新人でオーディションを受けに来た時、素質を見抜いた脚本家の目から見ればジンはいつまでも子どもだ。
 しかし2人の間には秘密がある。世間に知られればジンは芸能界を去らなければならない。

 恋愛ベテランだが仕事は初心者の新米ドラマプロデュサー(イ・ソム)と、女性と交際経験がなく劣等感を抱いている天才作曲家(カン・ハヌル)。
恋愛経験ゼロの草食系作曲家は人には言えないがベートーベンと同じように耳が聞こえない。

 華やかな世界で働きながらも仕事に悩み、恋には奥手で今ひとつ上手くいかない男女6人たち。
夫々人には言えない秘密がSNSを通して漏れて行き、またSNSで繋がり「いいね!」を繰り返す中、次第に本当の恋に変わってゆく。

 クライマックスの仁川空港で写メの威力が発揮され一気に問題解決のカタルシス。女性脚本家と人気俳優との子ども「ボン」が可愛いこと!

「連理の枝」などのチェ・ジウ、「べテラン」のユ・アイン、
「二十歳」のカン・ハヌル、「ある会社員」のイ・ミヨン、
「ビューティ・インサイド」などのキム・ジュヒョク、
「愛のタリオ」のイ・ソムなどのスター俳優、オールスターキャストの韓国映画界の人気者たちが顔を揃えた。

観客が8人しかいなかったが、監督のパク・ヒョンジンの軽いタッチのコメディは見応えがある。

品川プリンスのTJOYシネマで公開中。

「ANTIPORNO」(日本映画):園子温監督が復活した日活がポルノ映画に「怒り」をぶつける「反ポルノ」作品。

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8月24日の日活ロマンポルノ・リブートの外国特派員協会での記者会見で園子温が可笑しかった。

ともかく昨年から何か知らないがオレは「怒って」いる。
何本か作った映画のテーマはすべて「怒り」だ。

日活から話が来た時も怒って、断ったらプロデューサーがその「怒り」をテーマにロマンポルノを創れと言うから、乗せられて名前も怒りに任せて「アンチポルノ」になった。

ストロウハットに黒縁メガネのすっかり巨匠の雰囲気を漂わせる園子温は記者会見でもニコリともしない。

やはり出来は良くて面白かった。


冒頭大きなキングサイズベッドに小さな赤いパンティだけの女性。
最近やたらと売れっ子の女流作家・京子(富手麻妙)は小説を書く前に大きなキャンバスに登場人物の絵を描く。

絵の細部を描きそれを小説に登場する。これまで4本の小説を書き4回の個展を行ったが爆発的なカリスマ人気だ。

映画は一幕ものだから京子の独白で観客に背景は知れる。

部屋はトイレも食卓もソファーも見渡せるだだ広いワンルーム。黄色く塗った壁には大きな京子の登場人物像の絵がかかっている。

そこへマネジャーの典子(筒井真理子)が今日のスケジュールの打ち合わせに入って来る。
今日のスケジュールだ。午前中から雑誌のインタビュー、午後に入ってグラビア撮影、TV番組、文芸雑誌と目いっぱいだ。

イライラした京子はマネジャー典子に当たり散らす 。
「売女になれ!」
「犬になって首輪を付け四つん這いで私の足を舐めろ」
果ては「服を脱いで全裸になり這いまわれ!」

雑誌のスタッフが編集長以下ドヤドヤと入って来る。
スタッフはSMの皮胴着を付け、さらに巨大な張り型(ディルド)を股間に聳えさせている。
京子の命令で典子はディルドを背後から挿入される。

「ハイ、カット!」で園監督以下スタッフが部屋に入って来る。

これだけでも面白いのに、苛め抜かれディルドを挿入された典子が不貞腐れ、京子を引っぱたく。
挿入されたから出ない。
京子のセリフが入って無い、芝居ができていない。
「監督、何でこんな下手な子を使うのよ」

全裸で挿入までされた典子の方が大スターなのだ。
「もうやって居られないから帰るわよ」にスタッフ一同大慌て。

 芸歴35年の筒井真理子はTVドラマではクィーンの座を占める。
今年54歳の細身の白い裸身にくっきりと漆黒のヘアが浮かび上がる。

 京子役の冨手とは32歳も違う。露出度は筒井がリードし全裸で芝居をさせられ冨手に鞭で引っぱたかれるから「やっちゃいらんれない」と。
だから観客には面白いのだ。

傲慢不遜役の京子は青菜に塩、「済みません、済みません」を繰り返し、
もうワン・テイクを懇願する。
こんな映画では良くあるような一シーンも観客には魅力的で画面に惹きつけられる。

園監督はそれだけでは終わらない。
京子の過去を振り返り、死んだ仲の良かった妹がピアノで華麗な演奏をする場面を繰り返す。
天井に糸鋸で切れ目、父と義母との食卓風景を幻想的に挿入する。

 サディズムとマゾヒズム、カリスマと奴隷、トイレで座りながら見る京子の悪夢。

園監督は怒っている。
その解決法を見いだせないままに映画は終わる。

1月28日より新宿武蔵野館にて公開される。

「インフェルノ」(INFERNO)(アメリカ映画):世界の人口が100億人を突破すれば地球は壊滅する。生化学の天才が創出した人口滅亡のウィルス散布を阻止しようとハーバード大学ラングドン教授が立ち上がる

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本家のアメリカを除いて先週14日の金曜から海外で公開が始まったこの作品「INFERNO」(邦題「インフェルノ」ソニー映画配給:10月28日よりTOHOシネマズ日劇他で公開)に注目が集まっている。

コンビを組むのは3度目になるロン・ハワード監督と主演のトム・ハンクス。
ダン・ブラウン原作の「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code)(06)や「天使と悪魔」(Angels & Demons)(09)に次ぐ7年振りの第3弾だ。

海外53か国で開けて既に50M(53億円)超を挙げている。
US公開は日本と同時で10月28日より。
それまでに軽く100億円は突破しているだろう。

ソニー映画によると制作費は「天使と悪魔」の半分で75M(78億円)くらいだと言う。

地球を守るスーパーヒーローや特殊効果の目にもとまらぬアクションスリラーに溢れた夏映画で疲れた後に、こういう大人のドラマを見るとホットして、頭で考え反芻して、本格スリラーにのめり込むことが出来る。

先週11日夜に行われた東京日本橋TOHOシネマズの試写会の観衆は僕と同じような満足感でスクリーン7を後にした。

世界人口は長く緩やかな増加を続けてきたが、19世紀末から21世紀に至るまで「人口爆発」と呼ぶほどのスピードで急増した。西暦1年頃に約1億人だった人口は1000年後に約2億人となり、1900年には約16億5000万人にまで増えた。

その後の20世紀、特に第二次世界大戦後における人口の増加は著しく、1950年に25億人を突破すると、50年後の2000年には2倍以上の約61億人にまで爆発的に増えている。
国連人口基金は、2011年に70億人を突破したと推計している。

プロローグに字幕で表示される人口統計は恐ろしい。

 21世紀初頭では、アジアやラテンアメリカをはじめとする多くの発展途上国で出生率は低下してきており、1年間当たりの世界の人口増加は減少する傾向にあるものの、中東やアフリカ地域の出生率は依然高く、急激な人口増加は続いており、西暦2050年までには90億人を突破、21世紀末までに世界の人口は100億人を超えることは間違いない。

 14世紀なかごろ、東方からヨーロッパに、ペストが襲来した。この疫病は感染すると全身が黒くはれ、数日後にはほとんど完全に死に至らしめるので黒死病とよばれた。ペストは地中海からイタリアに入り込むと、またたくまに全ヨーロッパに浸透した。ヨーロッパの人口の3分の1が失われた。実はこのペストのお陰で衰退していたヨーロッパは息を吹き返したのだ。ルネサンスの栄光もペスト無しでは語れない。

「インフェルノ」の前提は爆発する人口を急激に減らし地球の危機を救おうという生化学者の提唱を検討するものだ。

 この映画ではヨーロッパから中東の人口を減らそうとしているが、問題はアフリカだ。

 人口の最大増加地域はアフリカだ。今アフリカは10億人程度だが2050年には20億人に達すると言う。21世紀の終わりにはアフリカの黒人たちは全人口1/3を超えることは間違い無く、彼らの活発な生殖活動が人口増加に拍車をかけ地球を滅亡に導いている。

 この映画(小説)では人口減をヨーロッパ中心に考えているが、地球の危機は人口の爆発的増加と考えるならウィルスは「アフリカをターゲット」にしなければ意味が無いのではと、不遜なことを僕は考える。
内戦やエボラ熱なんてDrop in a bucketに過ぎない。
映画の冒頭、数々の謎を解き明かしてきた宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)が頭に傷を負い病院のベッドに横たわっている。

 夢かうつつか人類滅亡のウィルスの開発に成功し、それを効率良くばら撒くと言う恐ろしい計画を企てたアメリカの大富豪にして生化学者、バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)がフィレンツェの塔の上から飛び降り自殺をする。
 
 ゾブリストは「このままでは人類は100年後に滅びてしまう」と言われるほどの深刻な人口増加問題の過激な解決策として、人類の半数を滅ぼす強力なウィルスを開発し完成させる。
ゾブリストが自死して、残されたのはウィルスの隠し場所。ゾブリストは詩人ダンテの叙事詩「神曲」地獄編(インフェルノ)に隠し潜める暗号の謎にラングドン教授が挑むことになる。
ゾブリストはダンテが予言した人類の「地獄」の未来図=地獄編になぞり計画を実行しようと試み仕掛けが終わったところで自殺をした。

 謎を解き、隠されたウィルスを爆発させる時限爆弾を解除しなければウィルスはヨーロッパと中近東を壊滅する。

「100年後の人類滅亡」か?または「今人類の半分を滅亡させて生き残る道」か?どちらが正しい未来なのだろうか?

 大局的に見ればゾブリストの言う地球の人口を減らすのが先決だろうが、ヒューマニズムの立場から何億人の人々が「黒死病」のようにもがき苦しんで死んでいくのをラングドン教授は座して見守ることはできない。

 毛沢東もスターリンも数千万人の人民を殺して英雄になったが、ゾブリストの英雄への道をラングドン教授は阻止する決意をする。
何処にウィルスを隠し何処に仕掛けたか?肝心ゾブリストはフィレンツェの塔から身を投げて死んでしまっているのだ。

 宗教象徴学の天才ラングドンに対して、生化学のマッドサイエンティストが突き付けた挑戦状。
ラングドン教授は地獄篇(インフェルノ)の暗号(コード)に挑み、ウィルスの発見やゾブリストの投げかけた人口問題も考えなければならない。

 原作は2013年に刊行されたダン・ブラウンの同名小説をもとにした映画化。
10年前の2006年に映画版が公開された「ダ・ヴィンチ・コード」、2009年に公開された「天使と悪魔」に続いて、7年振りにトム・ハンクス演じるハーバード大学の宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授が主人公として活躍する。
ラングドンが迫る謎は教授の愛読書、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリが残した叙事詩「神曲」に隠された暗号。

 フィレンツェやヴェネチア、イスタンブールなどを巡り、ボッティチェリらの美術品や建築から暗号を読み解きながら、秘められた謎を解き明かしていくという快刀乱麻の道筋を観客は辿って行く。

 ゾブリストが生前契約を結んでいたのが危機統轄機構(CRC)。その総監、ハリー・シムズ(イルファン・カーン)は人口爆発の地球危機を理解する。シムズは教授を捕らえようと女性刺客を放つ。一方ウィルス拡散を防ごうとWHO(世界保健機構)のエリザベス・シンスキー博士(シセ・バベット・クヌッセン)は昔馴染みのラングドン教授と接触し協力をしようとする。世界二大勢力がパワーを出し切ってぶっつかる。

 暗号の一端が垣間見える。イタリア語「CERCA TROVA」(尋ねて見出せ)の言葉がヒント。ヴェッキオ宮殿の「ダンテのデスマスク」からトルコのイスタンブールの地下宮殿、貯水池「バシリカ・シスタン」でクライマックスを迎える。

手に汗を握りながら2時間を超すスリラーを久々に堪能する。

10月28日よりTOHOシネマズ日劇他で公開される

「恋妻家宮本」(日本映画):妻の署名捺印し隠していた離婚届を夫が見つける。結婚後25年、二人きりになった夫婦に何が起こっているのか?

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電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺問題で電通はすっかり「ブラック企業」にされてしまった。
それにしてもこれまで巨大出稿主・電通に遠慮して何も触れなかったTV・新聞がここぞとばかりに電通を叩く、叩く。

「売国奴・朝日」の時の数十倍ものバッシングを電通は受けている。
皆で渡れば怖く無い、のか轡を並べて悪口雑言の数々は今までの鬱憤晴らしかとも思える。

電通は昨18日、労使36協定で最長70時間としていた月間の時間外労働時間の上限を5時間引き下げ65時間にすると発表した。「泥縄」とはこのことを言うのだ。
石井直社長は「この難局を打開することは、私たち電通の新たな可能性を切り拓くことでもあります。共に、私たち自身の新たな未来を創り上げましょう」

こんな綺麗ごとを言っている場合ではない。
石井社長と中本副社長、高田専務の3人のクビは後述のような実質的なダメージで確実に飛ぶ。
どのメディアも未だ触れていないが電通はこの事件でイメージばかりでなく実質的な収益で相当な損失を蒙ることになるのだ。

塩崎泰久厚労相は電通支社支局総てに査察を指示した。
労基の査察が入ったことで官公庁自治体の広告・公告・PRの入札から電通は締め出されることになるのだ。
電通はこの分野でも専門の営業局を作るなど力の入れようが違うしアカウントも莫大な予算となる。
喜ぶのは博報堂や旭通など競合他社だ。
何度トライしても脇が固い実績のある電通に持って行かれたのが、突如ライバルが消えるのだから。

石井社長の後任はというとナンバー3のティム・アンドレーの名前が挙がる。
電通粗利益の55%を稼ぐ国際部門のトップだ。

10年前まで米国プロバスケットボールNBAのChicago Bullsでマイケル・ジョーダンと一緒にプレーしていたティム・アンドレー。
2M10センチで見上げるような53歳の大男。
NBLから足を洗うとトヨタ(NYマンハッタン)、キャノン(ロングアイランド)と日系のクライアントを渡り歩き、6年前に電通アメリカの社長にリクルートされた。

イギリスの大手広告代理店「イージス」買収で功があり、ボードに迎えられたが、実績面では業績は残すものの保守的で日本的な電通では受け入れられるかどうか?
だが今はそんなことを言っている時ではない。
石井社長がいつ決断するかどうか?時間の問題になっている。

さて今日の映画。
冒頭に東宝とDentsuの提携作品のクレジットが出る。
ブラック企業で炎上している電通の名前が一枚看板で冒頭に出て支障無いのか気にかかるね。

JKなど若者の恋愛を描いた作品ばかりの日本映画。
その中で大人の恋愛映画を企画した脚本家の遊川和彦は目の付け所が違う。オリジナルだともっと良かったが原作があり作家・重松清の小説「ファミレス」を脚色している。タイトルの「恋妻家」と言う造語も新鮮で良い。

妻を愛するだけでなく、結婚後四半世紀も経つのに未だ妻に恋していると言うコンセプトは本人も気に入って、監督までしてしまおうと意欲的なデビューを飾った。
しかし本はともかく演出面で物足りなさが目立つ。
次は映画をもっと勉強し独自の脚本でトライすべきだ。

一人息子、正が独ち立ちした中学教師の宮本陽平(阿部寛)と妻・美代子(天海祐希)は、25年ぶりに訪れた夫婦二人きりの生活に戸惑ってしまう。間があわなくなるんでしょうな。

ある夜、妻側の記入欄がきっちり記載された「離婚届」を見つけた陽平は激しく動揺するが、美代子に意図を聞き出すこともできず悶々とした日々を過ごす。
浮気もしたことも無いし好きな女性も居ない。

陽平と美代子は学生時代に合コンで知り合い、卒業と同時にお腹に「できちゃった」婚。

若い頃を演じる工藤阿須賀と早見あかりが阿部と天海に似ているばかりか芝居も上手い。普通なら軽く済ませる若き日のフラッシュバックを後半に続けるしっかりした土台にしている。

その時からファミレスに入ってメニューを見て美代子はサッと決めるのに陽平はモタモタばかり。「どうせハンバーグなんでしょ」と注文に来たウェイトレスにオーダーを出すと「和風おろし」か「デミグラス」と聞かれまた迷う。これが延々27年間も繰り返されるのも可笑しい。

妻に聞くことも出来ず、離婚届が心に引っ掛ったまま陽平は料理教室へ通いともだちも多く出来る。佐藤二朗と菅野美穂の夫婦喧嘩、フィアンセの自慢話の相武紗季、教え子の祖母の冨司純子など豪華キャストは増量剤。

料理教室の仲間や教え子と関わる中で家族の在り方を教えられ見つめ直す。
妻を愛し続ける「愛妻家」ではなく、妻に優しさを伝える、そして改めて恋をする「恋妻家」となろうと決心する。

阿部寛はすこしワンパターになって来ているが相変わらず芝居上手。
50歳を過ぎた天海祐希も大きな目ぱっちり開けて若い思わせぶりな演技で阿部を煙に巻く。

二人の本音が分かる深夜のプラットフォームのシーンが上手い。ヨーロッパ映画に出て来るような、肝心の言葉が通貨列車で消されるとか。

「家政婦のミタ」(11)など数々の話題作の人気脚本家、遊川和彦が自らの本で映画監督デビュー。
遊川監督は「女性が優しいからこそこの世の中は成り立っている。女性の優しさと強さが支えていて、男性はそれに気づくことができるか、それに気づいて愛を表現できるか」がテーマだと語る。

1月28日よりTOHOシネマズで全国公開される。

「ミュージアム」(日本映画):雨の日にカエルのマスクを付けた正体不明な男が次々と奇妙な殺しを執行する。

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余り期待していなかっただけに異常で過激なストーリー展開(不条理な部分も多いが)で面白かった。
日本映画としては2時間12分の長尺も飽きもせずにたっぷり見せる。

冒頭からショッキングなシーンから始まる。警視庁捜査一課巡査部長、沢村久志(小栗旬)は殺人現場に駆り出される。雨の中の倉庫街。新米刑事、西野純一(野村周平)が吐いている。「いい加減に慣れろよ!」とベテラン沢村。

檻の中の大型犬がうるさく吠える。所轄の警官に「警察犬だろう。躾が出来ていないぞ!」「いえ、これが殺人の凶器です」
若い女性が大型犬ドーベルマンに食い殺されている。
両手両足を拘束され長い間エサを与えられていない犬を放つ。
越して来たばかりの若いカップル。ペット禁止で飼っていた犬
果たして犬の胃の中からメモが見つかる「ドッグフードの刑」

引き籠りでゲームお宅の若い男。母親がパートタイムで働き男は遊ぶだけ。
雨の日に殺され切断された死体は量りに乗せられ針は3300グラムを指す。
「母の痛みを知りましょうの刑」

被害者の共通点は4年前に起きた「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判員裁判の裁判員たちだった。
犯人は直ぐに捕まり死刑判決を受けたが独房で自殺をしている。犯人の身内が復讐に走っているのか?しかし彼は天涯孤独でそれらしい人物像は浮かばない。
冤罪だった可能性は充分ある。

幼女樹脂裁判の裁判員たちが被害者と聞いて沢村は飛び上がる。
妻、遥(尾野真千子)も裁判員だった。
しかし沢村が警察の仕事に追われ余りに家庭を顧みないので息子の将太(五十嵐陽向)を連れて家出をして2週間になる。携帯は相変わらず繋がらない。

一方被害者は裁判員の他にも検事や判事にも及んでくる。

妻と愛人と二人の間で情事を重ねる男の死体は真っ二つになって晒される。
「均等の愛の刑」

若い美しい女性裁判員は全裸を樹脂で固められた「ずっと美しくの刑」

捜査員たちの目の前で残酷な刑がいともたやすく行われる。

目撃証人から犯人は20-30代の若い男で、カエルのマスクをして黒いレインコートを着用、犯行時にはかならず雨が降っている。被害者の共通点は4年前に起きた「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判員にたいして怒っているとしか考えられない。

残酷な刑の執行と裁判員裁判の冤罪という2つの目玉がストーリーをグイグイ引っ張て行く。
大友啓史監督と主人公小栗旬のコンビはテンポ良く飛ばす。hatu

沢村と西野がカエル男を繁華街のビル屋上に迫った時にその動機が分かる。自分を追わず無能な男を犯人に仕立てた恨み、その裁判に関係した人間を処刑する。
だがその遺体はアート(芸術作品)であり、自分はアーティストだと。
そして沢村の目の前で西野はビルから突き落とされる。

カエル男がしきりと首筋を掻いている、雨の中でし病院か活躍しない事から沢村は男は「紫外線アレルギー」と判断しを病院やクリニックの患者名簿をチェックし始めて観客はようやくカタルシスを味わいはじめる。

原作は「ヤングマガジン」に発表された巴亮介による過激な描写と緊迫のストーリー展開で人気を博するサスペンスホラー漫画。

主人公・沢村刑事役の小栗旬、沢村の妻を演じる尾野真千子はじめ、脇に野村周平、大森南朋、市川実日子、伊武雅刀、大森南朋、松重豊ら豪華キャストが揃う。

驚くのはカエル男の正体。不気味な仮面の下は妻夫木聰。イケメン男がスキンヘッドの凶悪な人相で暴れ廻る。

吸血鬼ヴァンパイアの本歌取りだが、雨の日だけの犯行とかカエルの仮面、執行する刑の名前など斬新なアイディアに興味が湧く。

11月12日より丸の内ピカデリー他で公開される

「海賊とよばれた男」(日本映画):欧米の石油メジャーや官僚や石統など強大な包囲網で田岡商店の輸入ルート封鎖に対抗し、民族石油・日本の石油を守り抜いた男。

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この映画のモデルになった石油会社・国岡商店は「出光興産」で主人公、田岡鉄造は出光佐三であることは知られている。
 
現在の出光興産に大事件が起きている。
出光と昭和シェル石油が合併すると言うのだ。
 
映画を貫くテーマはアメリカの石油メジャーへの反骨精神で民族石油を守り通した出光の精神や意志だ。

上場以来、創業家側は経営に参加していない。ボードに誰も居ないのだ。
しかし持ち株は1/3を超える34%だと言う。
だから「メジャーとの合併反対」と言う出光佐三の意志は貫ぬける。

石油業界は需要低迷等から業界再編の必要性が求められており、出光の現経営陣は、様々なリスクは懸念を考慮した上で、「昭和シェルとの合併が生き残る最善の策」と判断したのだが墓の下の佐三は黙ってはいまい。
創業家一族は佐三の信念を裏切るようなことはすまい。


原作は2013年度本屋大賞第1位を獲得した百田尚樹の同名ベストセラー小説。700ページを一気に読ませるほどの迫力も興味もあった。

だから映画に期待をし貪るように画面を見つめた。
そして失望した。

先ずこれだけの大分の原作を2時間半には収容しきれない。どこかを
端折らねばならない。

要らなかったのは鉄造(岡田准一)と妻ゆき(綾瀬はるか)のエピソード。
子供が出来ないから身を引くとか、緩和ケアの鉄造をゆきの姪が訪ねる話は蛇足。
男ばかりの映画に女っ気がない、色気が無いと無理矢理突っ込んだ。

戦中の満鉄の話も不要。
唯、焼玉エンジンの傳馬船に乗り石油を売りさばく「海賊」のエピソードだけで良い。

映画は戦後廃墟と化した銀座4丁目と昭和通りの角の焼け残ったビルからフェニックスのように飛び立つ岡田商店にフォーカスすべきだ。

そして焦点はメジャーや石油配給統制会社やGHQとの戦いに絞ればもっとビビッドに鉄造の人柄も浮かび上がる。

 アバダンへ送り込んでイギリスの艦隊を尻目に無事イランの石油を持ち帰った「日章丸」ももっと知りたい。

バカバカしいのは田岡商店社歌。
歌詞(山崎貴作)も曲も三流なのにタンカーの上でオフィスの宴会で大の男が大声で歌うとシラケてしまう。
「軍艦マーチ」(替え歌で)でも歌ってくれた方が未だマシだ。

原作に沿った物語がメインストリーム。
敗戦後の1945年、旧日本海軍のタンクの底に残った油を処理する仕事を請けおうことで石油事業に乗り出した田岡商店。石油会社を率いる国岡鐵造(岡田准一)は、日本人としての誇りを持ち復興に向け突き進もうと従業員を激励する。
戦後の混乱期にもかかわらず、そして戦前に営んでいた中国や満州での海外事業の全てを失いながら、1000人の従業員を1人もクビにせず「仕事ならなんでもする」という独自の経営哲学と行動力で事業を広げていく。

 欧米の石油メジャーも国岡を警戒し、官僚や石統も一緒になり強大な包囲網で同社の石油輸入ルートは全て封鎖されてしまう。大東亜戦争に踏み切ったABCD包囲網に似ている。


 岡田准一が出光興産創業者の出光佐三の国岡鐵造を演じ、脇を吉岡秀隆、染谷将太、綾瀬はるか、堤真一、鈴木亮平ら豪華キャストが固める。

 百田尚樹のベストセラー小説「永遠の0」の監督&主演コンビ、山崎貴と岡田准一のタッグは息が合っている。
アイドルミュージシャンの岡田はいい役者になった。

「永遠の0」「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ、「STAND BY MEドラえもん」など多くの佳作を演出して来た山崎 貴だが、所詮は特殊効果一筋の男。
この映画で惜しまれるのは山崎の才能を過信したプロデューサーが、原作の脚色はプロでも難しいのに、素人の山崎に書かせたことだ。(あの国岡商店社歌もそうだが)

12月10日よりTOHOシネマズ日劇他で公開される。

「14の夜」(日本映画):「百円の恋」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞の足立紳のデビュー作。14歳中学生タカシの大人への通過儀礼。 

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今週初めハリウッドの業界紙「ザ・ハリウッド・レポーター」(THR)のフロントページに真っ赤な大型オープンカーに乗った中国人がハリウッドヒルを駆け降りる写真が載っていた。

先週末プライベイトジェットで到着した中国不動産王、ワン・ツャンリン(王健林)会長(61歳)がミッド・ウィルシャーのLAカウンティ・ミュージアム・オブ・アートでLA市長やアカデミー会長などハリウッドを代表する人たちを招いてレセプションを開く。

アトラクションに中国の雑技団のアクロバットやマジシャン、ポップスターの歌も見せる。「チャイナ・ミーツ・ハリウッド」のパーティで制作中の映画TVプロダクションの発表も行われる。

王健林会長は既に中国での映画館網を整備し2012年に全米2位の大手映画館チェーン、「AMCエンターテインメント・ホールディングス」を26億ドル(273億円)で買収。今年7月にはそのAMCが全米4位の「カーマイク・シネマズ」を買収する計画を公表した。保有映画館数は全米トップにとどまらず、世界一を目指す。
今年1月には「ジュラシック・ワールド」や「GODZILLA(ゴジラ)」などの制作で知られる「レジェンダリー・エンターテインメント」も35億ドル(367億円)で買収し、映画制作分野への進出にも成功している。

中国産の映画をアメリカへ送り込むばかりかアメリカ映画の中国ロケ(ミッション・インポッシブルやX-Menなど)を推奨する。大物スターは日本での記者会見をパスして中国で開く。

王健林会長は中国を世界第二位の映画大国に仕上げた。

エンタメ業界の先を読む目もするどい。
「今後20年間、中国でのディズニー社のビジネスは、利益が出ないだろう」と予測した通り「上海ディズニーランド」の不振は目を覆うばかりだ。上海は雨が多いと。

5月末にオープンしたワンダの江西省の行政の中心地南昌では、ディズニーランドの競争相手となると見られる大型娯楽施設「ワンダ・シティ(Wanda City)」は巨大ショッピング・センターのほか、屋外・屋内のテーマパーク、多くのレストランやバー、ホテル、映画館などを備え、ショーや様々な出し物を見せる舞台もありワンダ会長の目論見は当たっている。

遼寧省大連は雨が少ない。
そこを拠点とした不動産・観光・ホテルおよびエンターテインメント.事業 を手がける総合企業「ダリアン・ワンダ(Dalian Wanda)グループ」の代表、ワン・ツャンリン(王健林)会長は中国国内での地の利を得て益々エンタメ事業を発展させる。

ウォールストリートジャーナルは9月下旬、ダリアン・ワンダがテレビ番組制作会社、ディック・クラーク・プロダクションズを約10億ドル(約1030億円)で買収する交渉を進めていると報じた。

 ディック・クラーク社は、ハリウッド外国人映画記者協会の会員の投票によって選ばれる、優れた映画とテレビ番組を表彰するゴールデングローブ賞の番組を制作しているほか、音楽賞のアメリカン・ミュージック・アワードなどの番組も手がける。買収に成功すれば、映画界だけでなく、テレビや音楽業界にも影響力を及ぼすため、欧米メディアの注目度は高い。



「百円の恋」で第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した足立紳が、「14の夜」で監督デビューを果たした。
映画評論家たちは足立のデビューにポジティブで東映の試写室は満員札止めの盛況。「百円の恋」と同様に今作も主要キャストをオーディションで決めたので知っている役者はだれも居ない。

舞台は1987年、初めてレンタルビデオ屋が開店した地方都市。一般ヴィデオとカーテンで区切られた「未知なる世界」セックスへの妄想で頭がいっぱいの主人公タカシと友人たち。

中学生のタカシは、どうにも悶々とした日々を送っている。
ずっと家でうじうじしている教師を停職になった父親もカッコ悪くて嫌い。
外に出れば会うたび絡んでくるヤンキーたちも鬱陶しく、隣に住む幼なじみで巨乳のメグミがちょっと気になっている。

そんなタカシが柔道部の仲間たちと入り浸っている、町に開店した1軒だけあるレンタルビデオ屋に、AV女優の「よくしまる今日子」(薬師丸ひろ子のもじりにわらえる)がサイン会にやってくるという噂が聞こえてきて大騒ぎ。
ビデオ屋を目指して夜道を自転車で疾走する。
横暴な上級生や暴走族ヤンキーの妨害、思わぬ友人たちの裏切りなどに遭いながら目的地にたどり着いたタカシを待ち受けていたものは。

中学生たちのバカバカしくも大真面目な冒険の始まり、そして予期せぬ事態と大騒動の果てにタカシが見つけたものは?

 「アメリカン・グラフィティ」「スタンド・バイ・ ミー」などの青春通過儀礼映画を彷彿とさせる内容は足立監督演出未熟の分があるが、見どころが一杯詰まっている。

日本映画学校卒業後、故相米慎二監督に師事し助監督経験のある足立が、いよいよメガホンをとる。「40歳を超えて初めて映画を監督することになり、ワクワクした気持ちでいっぱいです」と足立は語る。「自分のことを大嫌いな人間が今の自分から一歩でも脱却しようともがくお話です」と。

11月24日よりテアトル新宿にて公開される

「ボクの妻と結婚してください」(日本映画):余命6カ月の放送作家、修治の最後の企画は「妻が幸せでいられるような相手」を見つけ結婚させること

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自分はTVも舞台もみないので題名をみたとき奇異に感じた。
昭和の初め谷崎潤一郎が妻、千代を佐藤春夫に譲ったような「夫婦交換」の話かと思ったが、見始めると時代は現代でどうも泣けるストーリーだ。

2012年に発表された樋口卓治の同名のベストセラー小説をNHKがTVドラマ化して大ヒットし次いで舞台にも乗り、この度映画になったのだと言う。
世の中こんなに騒いでいるのに自分はトンチンカンなことを考えていたものだ。

好きな織田裕二が主人公の放送作家、三村修治をやっている。
ちょっと見ない間に老け顔になっているが考えて見ればアラフィーなんだ、もう。歳を重ねた分、演技に深みが出てきている。

カミさんはレンタルフォトの仕事を通じて知り合った彩子(吉田羊)。
注目していなかったが「SCOOP」の訳あり副編集長の芝居は上手かった。
公私の顔を使い分け惚れた男を無言で送る。

ここでも亭主を心から愛しながら感情を抑え修治の理性に従う二律背反の味が良く出ている。
余り美人で無いのがいいのかも。

三村修治の職場は華やかなバラエティ番組制作現場。売れっ子の修治は忙しい、忙しい。
身体に違和感を覚え検査を受けると膵臓癌、CTスキャンとMRI検査ではっきりと影が出ている。
レベル4.他の部位への転移もあり末期症状。余命は6か月。

修治の仕事は世の中のいろいろなことを好奇心で「楽しいこと」に変えること。
家族、妻・綾子と一人息子・陽一郎(込江海翔)に残せる笑顔の企画は何だろう?
2人とも気丈そうに見えてもろいところがある。

ふと見かけたのは「結婚相談所」の看板。
そうだ、妻の結婚相手を探そう!
「妻が笑顔でいられるような人生最後の企画」だ。

婚活パーティに潜入し人柄人品人格、妻に相応しい男性探しが始まる。
修治の見染めた相手は真面目一徹で内気で不器用、仕事一筋で婚期を逸したインテリア販売会社社長。
まさに求めていた男だ、伊東正蔵(原田泰造)。
婚活も親と妹が無断で登録し積極的でなかった。
正蔵も写真で彩子に一目ぼれ。

これで修治の企画の登場人物がそろい、スタートラインに並ぶ。
さてここからが彩子への理性への訴え納得性を得る挑戦が始まるのだ。

 理想的な結婚相手とは、とメモを取る
*ゴミ捨てをしてくれる人
*冷蔵庫のものを勝手に食べない人
*無駄使いをしない人
*一緒に夕食を食べてくれる人
要するに修治と反対の人柄が望ましいのだ。

監督は50歳の三宅喜重。
「阪急電車片道15分の奇跡」で監督デビュー。45歳と遅咲きだが助監督が長く映画の現場の経験は積んでいる。
僕は昨年公開された「レインツリーの国」が気に入っている。
人間の内面に入り込んだ描写が上手い。ヒューマンドラマの名手。

だからこの映画も泣かせどころのツボを押さえ涙なしでは見られない。
教会での結婚式。
ヴァージンロードを花嫁の父ならぬ元夫が新婦の腕をとり真っ赤な絨毯を踏みしめ進む。
新郎の手に新婦をそっと渡す修治の表情が微妙だ。泣く!泣く!

不治の病の変化球で見事に三振に打ち取られる作品だ。
三宅監督は4作目だが、ベテラン監督の域に達した。

11月5日よりTOHOシネマズ日劇他で公開される

「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」(JACK REACHER:NEVER GO BACK)(アメリカ映画):トム・クルーズはお金をかけていないのでイーサン・ハントになれない。

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アメリカで先週末(21日)に開けて週末3日間の成績は想定外の2位。
1位はデブの黒人コメディアンが女装した「マディア」シリーズで上映館数は1500館も多い3,780館で公開されながら、23M(24億円)の低レベルに落ち着いている。
制作費は60M(62.4億円)と低予算だからもとは取れる.
観客の出口調査(CS)はB+評価と良くも無し悪くも無し。

最初の「Jack Reacher」(邦題「アウトロー」)は2012年12月 21-23日の週末に15Mで今回は8Mも上回り、前回も海外で稼いで最終的にワールドワイド総計218.3 M(227億円)を記録しているのでスタジオで余り心配はしていない。
否、むしろ前回を遥かに超すのではないかと言う期待ばかりだ。
これは主演のトム・クルーズが北米では人気がおちても国際的ではビッグスターであり続けていることによる。


しかしオリジナル版はロザムンド・パイク、ロバート・デュヴァル、ヴェルナー・ヘルツォーク、リチャード・ジェンキンスと脇役も豪華だが、この作品は無名の役者が多い。

スタジオは前作の成績を見て、海外で行けるからとシリーズを続けた。
先々週の1週目は40か国で31M、ワールドワイド総計では54Mになっている。
PPのワールドワイドMKT社長ミーガン・コリガンは夏の大作では無いのだからこの数字には満足していると。

2週目の海外は大作「インフェルノ」を破って第一位の28.9M、これでグローバル総計は94.8M(98.6億円)になる。

尚トム・ハンクス主演の「インフェルノ」は今週末に日米同時に公開される。

原作はリー・チャイルドのベストセラー小説「ジャック・リーチャー」の20冊に及ぶシリーズの18作目を実写映画化したサスペンスアクションで「アウトロー」の4年後に制作された続編。

 冒頭がカッコ良い。
どこか田舎町。保安官が駆けつける。4人の男が路上で伸びている。目撃者が店のカウンターに座っている男が素手でアッという間に殴り倒した。銃を構え保安官は男の傍に寄り頭をカウンターに叩き付けて手錠をかける。男は言う。「30秒以内にそこの電話がなり、この手錠はお前の手首にかけられる」
MPの車が数台サイレンを鳴らして店の前に並び、保安官は連行される。

この超能力的ヒーローはここまでで、後は並みのアクションになってしまう。
終盤のハロウィーン・ペイジェントに紛れての逃走劇はキワもの要素のねらいだろうか。

元アメリカ軍MPのエリート秘密捜査官ジャック・リーチャー(元少佐)は、現在はたったひとりで街から街へと放浪の旅を続けている。

前述のケンカ騒ぎの末に保安官に連行されそうになったリーチャーは、この騒動が何者かによって仕組まれたものだと気づく。

元同僚のターナー少佐に会うためWC本部を訪れると、ターナーは部下を二人殺された上に、スパイ容疑で軍法会議にかけられ逮捕されていた。
堅固な牢獄からターナーを救い出したリーチャーは、軍内部に不審な動きがあることを知り、真相を探り出そうとする。
軍の陰の闇は大抵腹黒い経営者の軍需産業がバックにいるものだ。

アクション劇で話がそれて面白かったのはリーチャーに娘がいるかも知れないう割り込みだ。

サスペンスアクションでトム・クルーズ主演「ミッション・インポッシブ(MI)」のイーサン・ハントとジャック・リーチャーをどうしても比較してしまう。
 
でもはじめから明らかなのは、おざなりの予測できる筋書き、平凡なロケ地、どこかで見たカーチェイスにアクション、名前も知らないギャラの安い役者。ハッキリ言ってクルーズだけは頑張ってもB級活劇には間違いない。何しろMIの予算の1/3しかお金は使っていない。
相手役のターナーに「アベンジャーズ」シリーズのコビー・スマルダース位しか知らない。

「ラスト サムライ」などの名匠エドワード・ズウィックが監督を務めるが、こんな企画と低予算を押し付けられたズウィックも困ってしまう。

11月11日よりTOHOシネマズスカラ座他で公開される

「島々清しゃ」(日本映画):沖縄・石垣八重山諸島のターコイズブルーの海原を背景に、心を閉ざす絶対音感少女と東京からやって来たバイオリニストとの交流は「G線上のアリア」からはじまる。

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三線が奏でるこの曲「島々清しゃ」なら聞いたことがある。
映画の中で歌に乗せて紺碧の珊瑚礁と石垣・八重山諸島の青幻の海原と島々の自然の清らか美しいたたずまいを歌っている。

映画の中で歌に乗せて紺碧の珊瑚礁と石垣・八重山諸島の青幻の海原と島々の自然の清らか美しいたたずまいを歌っている。

島々清(かい)しゃや <カイシャヌ>
城(ぐしく)に御願所(うがんじゅ)よ
前の田んぼによ
夕日赤く燃えてよ   <サーユイヤサー>
畑(はる)で草焼く
白い煙の煙の清(かい)しゃよ

「清(かい)しゃ」が美しいと言う意味だそうだが沖縄弁は分からない。
タイトルに有名なこの歌を引用した作品で「おんぶ映画」だ。
曲が前面に出て実質的な物語や内容が殆ど無い。

ヒットした沖縄映画「ナビィの恋」の音楽監督・磯田健一郎が脚本を書いている。
沖縄に精通していても、本は素人がいじってはいけない。
素材が良いのに物語になっていない。

超能力的な、耳が良すぎるために少しの音のズレも気になり、エアマフで耳を塞いでいる変てこな9歳の少女、花島うみ(伊東蒼)を主人公にする。
話を面白くするための無理な設定だ。

冒頭で「あめりかーの飛行機、ちんだみ狂ってる」と少女が叫ぶ。
「ちんだみ」は何かわからないが正常な音のことらしい。
沖縄らしく米軍のジェット戦闘機のエンジン音がオカシイと遭難を予言するシーンを入れる。
「沖縄の顔」の平婆さんが海に墜落した轟音で家から飛び出す。

バイオリニストの北川祐子(安藤サクラ)は、コンサートのために東京から沖縄の慶瑠間島へやってきて少女と出会う。こんなちっぽけな島でのコンサートとは大げさだ。

少女は体育館のピアノが調教が出来ていない。「ちんだみが狂っていて気持ちが悪い」と文句を言い、吹奏楽のチーフ、トランペットの子ともみ合う内に机に腕をぶっつけてケガをする。ばんそうこうで治療をしてやり、少女を港へ連れ出し「G線上のアリア」を弾いて聞かせる。
聞き惚れたうみは「きれいな音。波の音と同じさ」と呟くのを祐子も同調する。

それをきっかけに人付き合いをしなかったうみは吹奏楽部に参加することになる。
周囲との関係がうまくいかないがために頑なに閉ざしていた自分自身を、少しずつ解放していく。
綺麗な音を出したら「母さんが帰って来る」と、母、三吾(山田真歩)とは別れて暮らしている寂しさでうみは心を閉ざしていたのだ。

やはりストーリーの展開は不自然だ。
少女の祖父が沖縄の音階に普通の音楽にはない「色」画あることなど説かれても観客はついて行けない。

うみを演じる伊東蒼は宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」に家出をしていた浅野忠信がつれてきた少女役が無口で上手かったが、ここでも不思議な少女を印象的に演じ、芸達者の安藤サクラとがっぷり四つに組む。

僕の大好きな渋川清彦が顔を出しているが変なキャラクター。
腕利きの真栄田船長は、その昔は東京で鳴らしたサックス奏者がいきなり登場しピチピチした鮮魚を扱いながら吹奏楽団を指揮する。

タイトルは、島々の清らかで美しい佇まいを歌い上げた普久原恒勇の沖縄民謡「島々清しゃ」からとられた。

故新藤兼人監督の孫で祖父の助監督を長く勤めた新藤風が、「転がれ!たま子」(2006)以来、約11年ぶりにメガホンをとった長編監督作。やはりお爺ちゃんのテクを十分盗んでいない。
本も前述のように悪いので映画としてはとっ散らかっちゃった。

沖縄・慶良間諸島を舞台はそれこそ絵に描いたように美しい。その豪華な風景と伊東蒼の才能を見せつけられただけの映画だ。

来年の正月第二弾、1月21日よりテアトル新宿他で公開される。

「変態だ」(日本映画):ミュージシャンのその男は妻と子供を愛する普通の生活の裏にのめり込むSM趣味。サドの女王薫子との長い愛人関係は断ち切れない。

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スペインのアントニオ・G・イトゥルベの「アウシュビッツの図書係」(集英社クリエイティブ:2016年7月刊)はあの「アウシュビッツ=ビルケナウ絶滅収容所」に学校があり図書館があったと言う秘話を伝えてくれる。

 半分はノンフィクションだが主人公、図書係りの少女ディタ・クラウスは生き残り、テル・アビブに89歳で今も健在で著者イトゥルベに自伝を語っている。

ディタは1929年にチェコのプラハで生まれた。祖父母に弁護士の父と母、妹の6人家族の平穏無事な生活は1939年3月15日、ナチスドイツのチェコ侵攻で終わりを告げる。p
一家はテレジートのゲットーで1年すごした後、1943年12月に貨車で3日3晩飲まず食わずでアウシュビッツ台に収容所へ送り込まれる。

劣悪な環境の中、国際監視団の目を逸らすために家族用キャンプBbは子どもたち300人を収容する学校があり、青少年のリーダー、フレディ・ヒルシュの指導のもと授業が行われている。
 そして先生たちの授業のため本を貸し出す。

その本が見つかればSSに処刑されるがディタはヒルシュに命じられ本を回収し秘密の場所に隠すと言う使命を与えられる。
この作品のタイトル「アウシュビッツの図書係」だ。
 本は僅か8冊、古い「世界地図」Y・ハシェクの「兵士シュヴェイクの冒険」「ニルスのふしぎな旅」「ユダヤ人の歴史」「幾何学入門」やH・G・ウェルズの「世界史概観」訳が分からないのが「ロシア語文法」フロイトの「精神分析入門」表紙が無いので分からないロシア語の小説など8冊の他、「生きた本」が6冊ある。
物語を詳細に覚えている老人たちが「モンテクリスト伯」や「ニルスの不思議な旅」などを語って聞かせられる本が6冊。

悪魔のような収容所SS隊員たち。ヨーゼフ・メンゲレ大尉は医師で人体実験を行っている。双子の遺伝子を調べるとか伝染病のチェックのため彼の医務室に入った囚人は生きて出て来ない。SS曹長のシュタインは「司祭」と呼ばれその厳しい査察で違反が発見されればその場で処罰される。

その内、エディタの憧れの白馬の王子で守護神のヒルシュが謎の自殺を遂げる。

一日一回だけの蕪が一片浮いているようなスープを飲みながら、虱の蔓延、チフスやペストなどの伝染病と戦い生き延びるのは14歳の少女にしては至難の業だった。


この低予算でB級映画は呆れるほど未熟で拙い撮影だがインパクトだけは強烈だ。
企画&原作・みうらじゅん、長編映画初監督となる安齋肇のコンビで製作されたロックとポルノを素材にした作品。

一浪の末、都内の三流大学に進学したごく普通の男(前野健太)。
寝坊して駆けつけた入学式はとっくに終わって講堂は空っぽ。
1人残っていたデブ女(信江勇)に強引に引き摺り込まれたのが「ロック研究会」。部員は4人しかいない。高校時代にギターの経験があるので渋々バンド活動を始める。

やがて部長だったデブが卒業し就職してしまい、「ヴォーカリスト不在」になる。残った3人を見まわし、その男を指して、デブは「お前が歌え」と言い残して去る。
ドラムとベースギターの他にその男だけ。
男はしょっちゅう受け取っている馴染みの「不合格通知」をバンド名に1曲、苦心して作った「ジェレミー」をアチコチで歌う。

 企画・原作のみうらじゅんの作詞・作曲のバラードだが中々メロディアスで良い。
その内ファンも増えて結構な人気が出て来る。

主演の前野健太が何度も「ジェレミー」を歌うのだが音程を外したりして下手。
前野の本職はシンガーソング・ライターと聞くがこんな才能でやって行けるんだ。
下手なりきにムードは出ていて哀愁を込めて惹きつける。

 ドラムとベースギターの二人はロンゲを切ってスーツを着て就職してしまい、毛むくじゃらの顔にサングラスをかけたその男だけが独り立ちしてプロになり、そこそこ食っていける。

唐突に激しいセックスシーン。
裸になっても毛むくじゃらのその男、ポチャポチャとした白い肌の若い女(白石茉莉奈)の上になって喘いでいる。

 天井から赤ん坊用のモビールや玩具がぶら下がっているから結婚して、妻と息子との普通な家族生活を送っていることが分かる。しかしこのセックスシーンの長いこと。際どい所にボカシが入るがこの絡みが映画の売りなんだと分かる。R18の成人指定にもなっている。

結婚生活は順調だが、その一方で男は学生時代から続く薫子(月船さらら)との愛人関係が続いている。
その男は縄で縛られ這い蹲って「犬」になり黒皮の胴着にブーツ,鞭で引っぱたきアナルに電動バイブを突っ込む。

 元宝塚男役の41歳・月船さららは気持ち良くサド女王を演じている。
ヘアヌードで話題を呼んだがこの映画ではマゾ女王に徹し裸は見せない。

問題が起こる。
寒い地方でライブの仕事が入り、男は薫子をマネージャーとして連れて旅行に出かけていった。
雪の降りしきる野外ライブがスタートし、ステージに立った男の目に飛び込んだのは、まばらな観客に交じってそこにいるはずのない妻の姿だった。
そう言えばその寒村は妻の実家の近くだ。
パニくった男は薫子を引っ張って裏山に逃げこむ。
 誰も居ないのを見透かしてそこで繰り広げられるSMプレイ。

 真っ白な雪景色をバックに黒装束の薫子の女王と亀甲縛りの毛むくじゃらの男はくっきりと浮かび上がる。白と黒のコントラストでおぞましいプレイは展開される。

素人映画ながら安藤肇はみうらじゅんのコンセプトを良く理解している。ただ予算と未熟な演出が追いつかないだけで、温かい観客は試写会場でも随分と笑ってくれる。

素人集団で唯一のプロの月船も老齢に鞭打って付き合っている。
「ジェレミー」をはじめみうらじゅんの提供する楽曲が悪く無いのでミュージックシーンも観賞に耐えうる。

12月10日より新宿ピカデリー他で公開される。

「コウノトリ大作戦!」(STORK)(アメリカ映画):赤ん坊をくちばしで咥えて届けた「コウノトリ宅配便社」は現代のネット社会に合せてコウノトリは要らなくなった。

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ドイツ刑事弁護士で小説を書き続けるフェルディナント・フォン・シーラッハの「テロ」(東京創元社:2016年7月刊)は戯曲の形をとりながら凄絶な裁判を描く。変わっているのは裁判官裁判だから読者に自分はどう言う裁定を下すか、判断を求めている点だ。

被告はドイツ空軍少佐ラース・コッホ。
2013年7月26日20時21分、空対空ミサイル・サイドワインダーでルフトハンザ航空機を撃墜し乗員乗客164人を殺害した。
少佐は戦闘機ユーロファイター・タイフーン小隊でコッホ少佐はヴァンベルガ―中尉と組んで警戒飛行中だった。
ルフトハンザ機は19時20分、ベルリン=テーゲル空港を発ち20時30分にミュンヘン空港に到着予定だった。

旅客機は19時32分にテロリストにハイジャックされミュンヘン近郊のサッカー場、アリアンツ・アレーナに墜落させる、ムスリム同胞を十字軍以来殺してきた報復をする積りだと機長を通じて伝えて来た。アルカイダから分派したテロ組織の自爆テロだ。

当日はドイツ対イギリスの国際試合が行われ、7万人近い観衆が集まっていた。
規則通りの航路妨害や威嚇の機銃掃射をするが無線は切られたまま、一直線にサッカー場へ下降している。
アリーナまで後25キロのギリギリの地点でミサイルを発射、ルフトハンザ航空機は撃墜され164人は全員死亡する。

しかし裁判ではその数は問題にされない。
その数にいかなる差があろうと人間の生命を他の人間の生命と天秤にかけることは過ちである。
このような極端な状況下にあっても「人間の尊厳」は最上位の原則である。
乗客は殺害された。人間としての尊厳、譲渡不能の権利、人間としての全存在が軽視された。人間はモノではない、人命は数値化できない、と「有罪」判決を受ける。

しかし次章では「無罪」判決を下している。
それは「超法規的緊急避難」による判断だ。

 これはドイツ基本法、刑法以下いかなる法律にも規定されてはいない。
被告人が真摯かる良心に従って正しい決断を試みたことは疑いは無い。被告人はスタジアムにいる人間を救うために旅客機を撃墜した。客観的により「小さな悪」を選択したのだ。

どちらが正しいか結論を読者に委ねている。


この映画はアメリカで9月23日より公開されデビュー週末3日間で、2位に入ったファミリーアニメ「Storks」は3922館で上映され21.8M。
4000館近い数の公開ではさみしい数字だ。

 スタジオの事前調査の予測を下回っている。海外市場では33カ国で開けて18.3M(中国ではいつもと違い5.2Mと低い)ワールドワイド総計は40.1Mになる。制作費はテントポール半分の70M(73億円)。観客の出口調査CSではA-評価と悪くないのだが。

 今年夏は動物アニメはアメリカでは当たり年だった。「ズートピア」「ファインディングドリー」「ペット」などなどデビューで首位を取らないアニメは無かった。唯一不振なのがこの映画。
その所為か日本では立体大型の3DやImax上映は無い。それどころか場末の小さな小屋でしか上映されない。
オリジナル声優もAndy Samberg, Katie Crown, Kelsey Grammer, Keegan-Michael Keyなど無名の俳優ばかりで大スターが出ていないから日本でも殆ど吹き替え上映。
WBでの試写も日本語吹き替えだった。

歌はオリジナルで聞きたいが吹き替えが殆どのシネコンプレックス上映となると、そうは行かないようだ。

 小さな子供たちの疑問、「赤ちゃんは何処から来るの?」に答える「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるのよ」というお伽噺をベースにした物語だ。

 フラミンゴは分かるがコウノトリと言われても咄嗟に思い出せない。
しかし近代化しリスク回避のため、赤ん坊は小型宇宙船のようなコンシューマーパッケージで宅送していたものだ今ではコウノトリたちは高層に聳える「コーナーストーン・コム」でネット・コンシューマリズムのクーリエで機械的に発送される。
 
 少しも面白くない展開だ。お伽噺は何処へ行ったのだ。長い嘴に赤んぼを包んだ布を咥えて遥々配達した昔が懐かしい。

そんなノスタルジーを思い出させるアナクロな話が始まる。。
お人好しのコウノトリ・ジュニアは、赤ちゃんを運ぶコウノトリ宅配便社のナンバーワン配達員だった。

しかし会社はある事件をきっかけに赤ちゃんのお届けを禁止し、売上重視の営業政策を採っていた。そんなある日、ジュニアは手違いから誕生した人間の赤ちゃんと出会い、内緒で人間界に届けようと決意する
コウノトリが赤ちゃんを運んでくるという寓話をベースに、コウノトリの宅配便会社の騒動を描いた冒険アニメーション。

 弟が欲しいネイト。忍者遊びの最中に物置で古い「赤ちゃん申込書」を見つける。
ネイトが大喜びで書いた申込書の宛て先は「コウノトリ宅配便社」だった。

 ところが売上重視になっていた会社は、すでに効率が悪いしリスキーな「赤ちゃんお届け」を禁止していた。
そのきっかけとなったのは、18年前のある大事件。女の赤ちゃんは未だ親元にとどいていない。

ところが、ある手違いから、可愛い男の赤ちゃんが誕生してしまう。
配達係のコウノトリで、その人間の赤ちゃんにメロメロになったコウノトリのジュニア(会社社長の息子)は、父親と会社に内緒で赤ちゃんを人間界に届けることを決心する。

字幕と違って吹き替えでジョークは伝わり難い。おまけに出て来る冗談はオチにも欠けまるで面白く無い。 
アメリカでも1か月も経たない内に失速してしまったのもストリー展開にあると思う。

大作アニメの制作費は半分も使っていないからクォリティも落ちる。子供連れの大人に迎合しようとするから加熱するネット消費のクーリエを出してもシラケるだけだ。

それに18年の届け損なったチューリップなんておぞましいだけだ。両親が会った塗炭に分かる訳が無い。

出て来るコウノトリは皆可愛いのだが、その反骨精神やネット社会へのフィットが出来ないとは子どもにも(そして大部分の大人でも)理解出来ない。

 監督は「ネイバーズ」シリーズのニコラス・ストーラーと「ファインディング・ニモ」「モンスターズ・インク」などディズニー・ピクサーで経験を積み、初監督作「マジシャン・プレスト」でアカデミー賞にノミネートされたダグ・スウィートランドの共同監督。

11月3日よりシネマメディアージュで公開される。

「ヒトラーの忘れもの」(LAND OF MINE)(デンマーク・ドイツ映画):第二次大戦直後のデンマーク。捕虜となった少年兵たちが地雷処理にあたり次々と命をおとしていく。

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1945年5月、第二次大戦直後のデンマークが舞台。
ドイツナチスはデンマークのユトランド半島・西部海岸に220万個の地雷を埋めた。

冒頭ジープを駆るデンマーク軍軍曹ラスムスン(ローラン・モラー)は憤怒の顔つき。ナチス・ドイツは1940年から侵攻し無抵抗のデンマークを5年間占領し無法の限りをつくしていた。ラスムスンもその中で被害を受けドイツに激しい恨みと憎しみを抱いていた。

ドイツの軍服を身に着けくたびれきった捕虜たちは皆若い。
20歳を超す者は皆無。
誰もが高校生の顔つきで最年少は13歳だ。
戦争末期のドイツ軍は国土防衛の名の下に兵役適齢期を外れた老人や子供を戦場へ送り込んでいた。

ラスムスン軍曹は行列の中から少年兵14人をピックアップする。
自分の受け持ちの海岸にある2万2千個の地雷の処理をさせるためだ。

ドイツ軍が埋めた危険物をドイツ軍捕虜が始末するのは当然だと、そこには同情や哀憫のかけらも無い。
おまけにどこでもそうだが食料危機、少年兵は食べるものも食べずに砂浜の這い蹲って地雷除去に励む。

感圧式地雷なので信管に重量がかかれば爆発する単純なものだが、除去訓練が簡単に行われる。しかしその間も1人の少年兵が吹き飛ばされる。
しかし次々に撤去失敗や誤爆によって目の前で死んでいく少年たちを見るうちに、ラスムスンは葛藤を感じるようになる。

少年兵のリーダーとなるセバスチアン(ルイス・ホフマン)双子のエムストとヴェルナー(エミールとオスカー・ベルトン)、ちょっと皮肉屋のヘルムート(ジョエル・バスマン)とドイツ人の少年たちは素人と思えないナイーブでパセティックな芝居を見せてくれる。話題は故郷に早く帰りたい、母親はどうしているだろう。

そんな中で1人1人と爆風に吹き飛ばされていく。
悲惨なのは数十個処理済みの地雷をトラックに積み込み5-6人の少年が故郷の食べ物自慢をしていた時に不発弾が爆発し全員が死亡した時だった。

少年たちのキャンプインしている農家の主婦(ローラ・ブロ)と少女(ゾー・ザンドヴィリエット)は少年兵たちに懐く。寒々とした風景にホッとする暖か空気が流れる。

2万2千個の地雷を処理し終わった時にラスムスン軍曹はエベ大尉によびだされる。後200万個の地雷がある。お前の捕虜が一番優秀だ。釈放帰国命令はキャンセル、ただちに仕事にとりかかれと。

軍曹は当然反抗する。14人の内10人が死んだ、生き残ったら故郷へ帰すと言う約束は反古にはできない。大尉は命令違反で捕虜を射殺しても良いと銃を取り出す。

軍曹と少年たちの絆と友情の深さはこの後のシーンで展開され、涙を流すほどうれしいカタルシスで救われる。

地雷撤去を強制される敗残ドイツ軍の少年兵たちの過酷な運命。
彼らを指揮するデンマーク人軍曹はナチスに激しい憎しみを抱きながらも、無垢な少年たちが次々と命を落とすのを見て良心の呵責に苛まれ、憎しみが氷解する過程が良くえがかれている。。憎しみの中、人間に良心は存在するのだろうか。

昨年2015年・第28回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、軍曹役のローラン・モラーと少年兵役のルイス・ホフマンが最優秀男優賞を受賞した

歴史上の事実でありながら、デンマーク国内でもほとんど知られていなかった悲劇を題材にした本作は、デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞や監督賞を含む最多6部門を受賞。

長編映画3作目の監督となる新鋭、マーチン・サントフリートがドキュメンタリータッチで演出する。

12月17日よりシネスイッチ銀座にて公開される
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