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Channel: 恵介の映画あれこれ
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「世界一キライなあなたに」(Me Before You)(アメリカ・イギリス映画):四肢が麻痺し「尊厳死」を決めた貴族の恋人の頑固な意志を変えようと努力する労働者階級の女の子

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アメリカでは昨年6月3日に新登場した御涙頂戴映画「Me Before You」。デビュー週末は2704館で上映され18.3Mの好成績。観客の出口調査CSはA評価と好評。
制作費は21Mと低予算だから赤字の心配はない。

 観客の81%は女性で、53%が35歳以下。
夏映画で男性向け大作は多数あるが「女性向けが全く無いからね」とスタジオ関係者は得意顔。確かに女性客はCG満載の男たちのアクション映画にはうんざりしていたことだろう。

海外で16カ国で公開され7.7M。特にイギリスでは2.7M、韓国では1.6Mの成績。イギリスでのベストセラーや韓国人好みの人情ドラマがそれぞれの国で受けたのだろう。

イギリスの人気作家ジョジョ・モイーズ(Jojo Moyes)の2012年のベストセラー小説「Me Before You」(日本語翻訳本「きみと選んだ明日」)の映画化、
ジョジョは原作ばかりでなくこの映画の脚本を書いている。

映画で泣かされたシンガポールではベストセラートップを走っていると新聞(ストレイト・タイムス)にある。

イギリスの小さな町に住む失職したばかりの26歳の女の子ルイザ(エミリア・クラーク)が、ハローワークへ行く途中で大きなトレイナー屋敷の募集広告に応じて雇われる。
大家族を支えるルイザは何としてもどんな職でも手に入れなければならない。

2年前の交通事故で下半身マヒし手足が使えない青年ウィル(サム・クラフリン)の介護をすることになる。

ヒットしたフランス映画「最強のふたり」も失業中の黒人が車椅子に縛られた金持ちの老人の世話をしている内に友人として絆で結ばれるが、良く似たストーリーだ。
しかしフランス映画は喜劇、今日紹介する作品は涙が止まらない悲劇だ。


介護と言ってもベテランでがっしりしたプロの看護師(ステファン・ピーコック)が腕を発揮して面倒を見ている。

ウィルの母親(ジャネット・マクティア)と父親(チャールズ・ダンス)はルイザに採用を決めた後に言う。
「介護と言うより絶えず傍に居て話し相手になり励ましてくれれば良いのよ」と説明する。
介護には無知なルイザはコンパニオンのような仕事は得意だ。

ルイザは労働者階級の女性、事故後偏屈になったウィルは貴族の家系で大そうな城を持っている。イギリスならではの階級の壁があるがルイザはあっけらかんとして壁なんかひとっ飛びなのが気持ち良い。

金持ちの男性(リチャード・ギア)が娼婦(ジュリア・ロバーツ)を拾い、恋に落ちる「プリティ・ウーマン」に似ている。

スキーにウィンドサーフィン、高いクリフ・ダイビング、そして女の子たちと遊びまわっていたウィル・トレイナーは、ある雨の日出勤途上で通りを横切ろうとしてバイクに跳ねられ四肢が麻痺し車椅子に縛り付けられる生活を送ることになる。

 事故後は不機嫌になり偏屈のウィルも天然のルイザの介護に圧倒されて従うようになる。
二人でピクニックや豪勢な旅行をする内に「生きる喜び」を思い出させようとするルイザ。二人の間にロマンスに似た感情も湧いてくる。

 この辺りの描写はもう少しポジティブにウィルの態度の軟化を強調しても良かったのではないかと思うが、ウィルは頭の中は冷静だ。

イギリスでは禁じられている「尊厳死」を行うスイスの施設に申し込んだウィルを、母親は6カ月の考慮期間を求め、ルイザを雇ってウィルの決心を変えようと言うバック・グラウンドがあることを彼女は知らない。

観客はウィルがルイザへ徐々に心を開いていく展開にウィルのスイス行きを諦めるのでは無いかとの期待を込める。

明るい天然のルイザに心を開き始めるウィル。やがてふたりの間に信頼と恋が芽生えて来たとルイザは確信する。

ルイザ役のエミリア・クラークは美人では無いが下層階級の女性のあっけらかんとした明るさを発揮する。
貴族階級ウィル役のサム・クラフリンはハンサムで最初の鬱屈した顔にやがて笑みを浮かべるようになる演技が良い。
監督はシーア・ジェアイック。何れもスターでもないし、巨匠でもない。しかし原作者の書く脚本を忠実に追い展開することで「尊厳死」を決めた恋人の悲劇を浮き彫りにして涙を誘う。

10月1日より新宿バルト9他で公開される。

「われらが背きし者」(OUR KIND OF TRAITOR)(イギリス・フランス映画):モロッコで休暇中のペリー・ロンドン大学教授に酔っぱらったロシアン・マフィアがイギリス政財界を揺るがす「マネーロ

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また仰々しいタイトルを付けたものだ。
「寒い国から帰ってきたスパイ」(1965)で大ブレイクし、映画化も多く「ロシアハウス」「ナイロビの蜂」「裏切りのサーカス」「誰よりも狙われた男」などで有名なジョン・ル・カレのスパイ小説「Our Kind Of Traitor(邦題:われらが背きし者)」(12)を原作とする映画。
大袈裟なタイトルは本の訳者、上岡伸雄・上杉隼人の二人の所為だ。

平凡なイギリス人観光客のカップルが世界を救う大冒険に巻き込まれる切っ掛けが面白い。
モロッコ・マラケッシュでの休暇中、イギリス人でロンドン大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)とそのパートナーで法廷弁護士、ゲイル(ナオミ・ハリス)は高級レストランでノンビリと酒を飲み料理を待っていた。
二人の仲が怪しくなったのでペリーが関係修復のための休暇旅行の最中だ。

そこへゲイルに仕事の電話。ぽつりと取り残されたペリーに酔っぱらったスラブ系の老人が声をかける。
「クレジットカードの16桁の番号を瞬時で覚えるから勝ったら付き合え」と賭けを申し込まれる。実際覚えた老人を信用してパーティに出かけることになる。

老人はロシアン・マフィアのディマ(ステラン・スカルスガルド)でドラッグと大酒盛り。部下や娼婦を集めて飲めや踊れやで盛り上がっている。娼婦は白い馬に乗って屋内をパカパカと散策。

ディマはペリーを物陰に呼び寄せ、飛んでもない依頼をする。ロシアで自分が携わった地下組織のマネーロンダリングの口座と相手方の情報が入ったUSBをMI6(イギリス秘密情報部)に渡して欲しいと懇願される。

突然の依頼に戸惑うペルーだったが、ディマと妻と子どもたちの命が狙われているから頼むと囁かれると仕方なくゲイルと一緒に引き受けることになる。

だが、その日を境に何者かに襲われ二人は世界を股に掛けた危険な亡命劇に巻き込まれてゆく。

 見ている内にヒチコックの「知り過ぎていた男」を思い出す。60年前の映画だがよく覚えている。舞台もモロッコだ。アメリカ人マッケナ医師役ジェームズ・ステュアート主演、同夫人役ドリス・デイ。

ジェームズ・スチュワート扮するアメリカ人医師がドリス・デイの妻とモロッコで休暇中に謎のベルギー人から秘密の情報を与えられると同時に幼い息子が誘惑される。
ドリス・デイの歌う主題曲「ケ・セラ・セラ」大ヒットしスタンダードナンバーになっている。
60年前の映画だ。一瞬リメイクかと思う程前半の展開は似ている。

ただ謎のベルギー人は一瞬だが、太った老人、ロシアン・マフィアのディマは愛嬌があり陽気だ。観客は危険な立場に居ながら絶えず家族を守ろうとする老ギャングを愛し始める。

「何故僕を選んでこんな情報を渡すんだ?」とペリーが聞く。
「あのレストランで飲んでいたのはお前だけだったろう」と笑える返事。

 普通の平凡な大学教授ペリーと恋人、ゲイルはUSBを取り戻そうとするギャングや汚職政治家や財閥から狙われ始める。
 MI6に渡れば国家を揺るがすスキャンダルになる。家族を守ろうとするディマとペリー教授の命が危ない。

しかしMI6は昔の情報組織では無い。
MI6のヘクター(ダミアン・ルイス)がディマとペリー教授の前に現れ仲介役を引き受ける。だがどうも胡乱臭い。

陽気なロシアンマフィアと平凡な大学教授の会話や動きは楽しめる。
USBの中身はイギリスの政財界に爆弾を落とすスキャンダルになるので必死に食い止めようとする敵方の攻撃も手をかけ品を変えて熾烈だ。

ジョン・ル・カレ独特のどんでん返しがラストシーンに盛り込まれておりエキサイティングなエスピオナージは健在だ。

主役の平凡な大学教授ペリーを演じるのは、映画『トレインスポッティング』で注目され最近は「ゴーストライター」が好評のユアン・マクレガー。往年のJ・スチュワートのような間抜けでお人好しの風貌が役柄に合っている。

組織を裏切ったロシア・マフィアのディマに扮するのはスェーデンを代表するベテラン俳優で、「ニンフォマニアック」「ドラゴンタトゥーの女」などのステラン・スカルスガルド、彼の息子たちも俳優として活躍している。飲んだくれで粗野ながら家族愛に溢れる優しいギャングを好演している。

監督には「パレーズ・エンド」などイギリスのテレビドラマを中心に活躍し、「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」などのスザンナ・ホワイト。女流監督ならではの内面描写が上手い。

10月21日よりTOHOシネマズシャンテ他で公開される

「種まく旅人 夢のつぎ木」(日本映画):岡山県赤磐市で接ぎ木による新種の桃「赤磐の夢」を亡き兄の遺志を継ぎ生み出す努力のヒロイン片岡彩音、サポートする農水省地域調査官木村治

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これで「種まく旅人」シリーズ三作目だ。
シリーズは何れも日本の農業や漁業といった第1次産業に従事する人々を農水省の地域調査官が地方で一緒に暮らしながら農水作業に心血を注ぎ目標の理想の作物を収穫するまでの難関を描く。

川端康成の言う「美しい日本の私」の原風景は地方農業に負うところが大なのだ。その美しさをベースに、地域を変え作物を変えながらシリーズを追う。面白いコンセプトだと思う。

パターンが決まっているだけに、やり易い筈だが担当する日本の監督や脚本家の力不足か作品としての面白さや魅力は段々と薄まり詰まらなくなっているのが心配だ。シリーズものなら監督がフィックスするが毎回クビが挿げ替えられている。
延々と続く芯の通ったシリーズだけにもう少し変化球を交えバッターを惑わしながら勝利の道へ進んで欲しい。それにはやたらと投手をつぎ込むのでなく先発完投型の実力派監督と脚本家を据えなければならない。

大分臼杵、瀬戸内海・淡路島、岡山赤磐と日本の故郷,原形の美しさを堪能できるが、地域を変え農産物を選び、地域調査官の俳優と、主人公を入れ替えるだけの「着せ替え人形ゴッコ」で先が読めるし興奮もしない。

「種まく旅人 みのりの茶」(2012)では大分県臼杵市で有機栽培で苦労する茶の栽培を、陣内孝則扮する農水省地域調査官がリストラされて故郷にUターンした農園主の孫娘田中麗奈と苦労の末実らせる。監督は塩谷俊、脚本・井上勝巳。

 第二弾は「種まく旅人 くにうみの郷」(2015は瀬戸内海に浮かぶ淡路島で海苔の養殖に情熱を注ぐ三浦貴大と東京の広告代理店からUターンして先祖伝来の玉ねぎを育てる桐谷健太を栗山千明の農水省地域調査官が支援する。監督、篠原哲雄、脚本は江良至。

 そして今回は「種まく旅人」シリーズ第3弾。「夢のつぎ木」では岡山県赤磐市の桃農家を舞台に、急逝した兄の遺志を継ぎ帰郷して新種の桃栽培に挑戦するヒロイン、高梨臨を地域調査官の斉藤工がサポートする。


 大体農水省本省から派遣される地域調査官なるものがあるのだろうか?
二話の栗山千明などは本省事務次官から直接命令を受けてる。有りエーネー!

 農水省の組織図を見ると地域農政部がその地域の農政を担当している。
徳川時代の「御庭番」のようにじかに将軍の命令で探るなんてことはお役所天国の日本では考えられないので迫力が無い。

 それに地域農業に携わる主人公は東京へ出ていき夢破れたUターン組と言うのも面白く無い。
女優志望を断念したり、広告代理店のサラリーマンが上手く行かなかい負け犬たちだ。

9年前、片岡彩音(高梨臨)は女優になるという夢を追い掛けて上京する。両親亡き後は兄の悠斗が桃農家を継いで桃の栽培を手掛けていたが、ある日、兄は病に倒れ、そのまま他界する。
実家に戻り、兄の悲願だった新種の桃の栽培を始めた彩音の前に農林水産省の地域調査官、木村治(斎藤工)が現れる。

「地方から日本の農政を変える!」と張り切る木村は所詮ノンキャリアのペーペー。観客もわかっているだけに、このシリーズに登場する調査官なるものが日本の官僚機構でどれだけ力を発揮できるか見ものだ。

 入省後、思うように仕事ができずに理想を見失いかけている治だったが、彼にも霞ヶ関から農業を変えるという大きな夢があった。

 その夢を実現するために桃の接ぎ木を成功させようと彩音と力を合わせる。
ギクシャクしながらも、2人の距離が少しずつ縮まっていきロマンスも芽生える雰囲気。この描写も中途半端で楽しくない。

この着せ替え人形的クリシェのパターンを佐々部清監督が日本の農水産業の基底からどう変えて映画の上だけでも弁証法的発展を遂げるかを期待していた。

「ツレがうつになりまして。」「群青色の、とおり道」「半落ち」や特に「夕凪の街 桜の国」に僕は思わず泣かされたほどの実力派佐々部清監督だっただけに、従来パターンに埋もれ特異な種を植え付けるのに失敗している。
僕もがっかりだ。
脚本の安倍照雄もこんな三流のシナリオを書く人ではない。

主演もB級の役者。「わたしのハワイの歩きかた」などの高梨麟はスターとしてのオーラが無い。
「無伴奏」「虎影」などの斎藤工も脇役の俳優だ。
低予算映画は分かるがせめてどこかで誰か光って欲しい。

11月より有楽町スバル座にて公開される

「SCOOP」(日本映画):昔鳴らした中年パパラッチ、都城静は高額ギャラにつられて現場の芸能人を狙い始めるが、足手纏いの新人女性記者,行川野火を帯同することも義務づけられる

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パパラッチの映画と言えば昨年夏に公開された「ナイトクローラー」が面白かった。
事件現場に潜り込み映像をスクープしTV局に売り込む。
報酬が何百万は当たり前、特種次第では何千万円に達するものがあるから日本とはケタが違う。
同業者とのネタ競争も激しく、カーチェイスの熾烈さは度肝を抜かれた。

そこへ行くとこの映画は血生臭いアクションは後半にあるが,殆どは凄腕カメラマン・都城静(福山雅治)が経験と秘策を駆使してスクープを撮りまくるシーンと、オドオドしながら付いて来る不器用な新米記者、行川野火(二階堂ふみ)の関係、そして静の人生に関ずらわって来た元恋人や腐れ縁の人々に焦点を当てる人間ドラマに徹している。

髭ぼうぼうでモジャモジャ頭のむさくるしい恰好で雑誌編集部に現れる主人公・都城静の態度の大きさに驚く。
若い社員どころか副編集長の定子(吉田洋)も馬場(遠藤憲一)までも呼び捨て。
今でこそ落ちぶれているが写真週刊誌「SCOOP!」で数々の伝説的なスクープを飛ばしてきた伝説のカメラマンだから編集部もデカい態度を許容する。

副編の定子は借金まみれの静の懐具合を心配しもう一度現場復帰し芸能スキャンダルを追うパパラッチをやらないかと。一回30万円の高額ギャラに惹かれ思わずOKを出すがコンビとして新入社員の行川野火と組むことが条件と聞いて顔をしかめる。

「いやだよ、ションベン臭い処女を連れまわすなんて。足手纏いになるだけだ」と断るがそれが高額ギャラの条件と言われやむを得ず同行を許す。

その際、野火が処女かどうかを1万円賭けるが話の後半、何も知らない野火が定子に「アンタの勝だ」と言って静から預かったお金を渡すシーンは感動的で秀逸なインパクトを与える。

 蜂の巣を引っくり返したような雑誌編集室ばかりか、取材対象を待ち伏せるクラブや屋根の屋上、ストリップバーなど野火の視点を通して紹介される静の世界は初体験ばかりで驚きの連続。

 静の影となりネタを提供する怪しげな情報屋・チャラ源(リリー・フランキー)の存在も不気味だが興味をひく。

リリーが相変わらず上手い。静との長い付き合いのようだが暗黒部分が多く、副編の定子もいい加減縁を切れと再三忠告するが静はチャラ源に恩義があるとアドバイスに聞く耳を持たない。
薄い頭髪をバーコードにした小男は芸能人が入って行ったクラブの裏扉の鍵を開けてくれていた。静は野火の財布を出させ5万円のギャラを払う厚かましさ。

 小泉信二郎を思わせる将来首相候補の自民党議員、小田部(斉藤工)がSPにガードされたホテルの部屋にTVの人気アナ上原桃(護あさな)とシケこんだベッドシーンを盗撮する場面は、カーテンを開けさせるための奇策が痛快だ。

 その後のSPの車3台に追跡されるカーアクションも低レベルの邦画としては悪く無い。
いつも隅っこで黙っているだけの野火が、多くの女性を拉致し暴行殺人は許せない是非撮って顔を雑誌で曝け出したいと言うほど野火も成長している。

 ここでの奇策は詳しくは書けないがバカバカしくてそんなモンで上手く行くとは思えない。
しかし昔成功したと言う戦術は副編の馬場と静の忘れ難い経験だったようだ。

 ご褒美として連れて行かれた鶯谷のソープランドの相方は百貫デブ。静が言う「俺の筆卸しは50過ぎの婆あだったんだ。贅沢言うな!」

 原作は1985年の原田眞人監督・脚本の映画「盗写 1/250秒」のTV番組を基に、芸能スキャンダルから社会事件まで様々なネタを追いかける写真週刊誌カメラマンや記者たちの姿を描く。
数々の伝説的スクープをモノにした静も単なる芸能スキャンダル専門の中年パパラッチに落ちぶれ、借金や酒にまみれた自堕落な生活から抜け出すのを手伝う定子は静の元内縁の妻。この二人の陰謀や戦闘の波に野火は揉まれる
主役は中年パパラッチ、福山扮する静。ミュージシャンの芝居の上手さ表現力の豊富さを改めて認識する。
若手女優ではぴか一の演技派、二階堂ふみは赤毛に深々とキャップを被り「典型的な処女」と相棒に貶される。
修羅場にカメラを持たされ放り込まれ、「出来ません!出来ません!」と連呼しながら役目を果たす新米記者・野火役は嵌っている。
副編集長を吉田羊、滝藤賢一の二人。TVでは皆知っている顔だが映画ファンには新人。映画で大活躍して早く認められて欲しい。

 怪しげな情報屋・チャラ源役を、福山プライベイトでもと親交の深いリリー・フランキーが好演する。
超特大スクープ! となる「静とチャラ源」の1枚の写真を巡って雑誌の社会的責任やモラル問題が熱く論じられる。

主題歌は、“TOKYO No.1 SOUL SET feat.福山雅治 on guitar”という滅多に見られない台湾=韓国=日本と参加国のコラボレーション。

監督・脚本大根仁これまででベストの作品。これ以上の映画を大根は暫く撮れないだろう。

10月1日よりTOHOシネマズ日劇他で公開

「アングリーバード」(THE ANGRY BIRDS MOVIE)(アメリカ映画):平和な島に緑の豚の軍団がやって来て大切な子孫を残すタマゴを掻っ攫って行く。怒るレッドを頭のアングり―バードたちの反撃

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一体どうなってるのだろうか?
外国特派員協会の会長としてこの6月に就任したばかりのPeter Langanが転勤のため日本から去ることになり、NO2のファーストプレジデントの Khaldon Azhariが後を継いでPresident of the FCCJにSept. 21, 2016付けで就任する。

ピーターは長らくBloomberg Newsの支社長や嘱託を勤めフリーになって初めて会長職を引き受けたが何らかのオファーを受けて会長職維持が難しくなったようだ。

今までのジョージ・バウムガートナーやルーシー・バーミングハムなど日本人を小馬鹿にしたような会長が続き、ようやくまともなピーターが引き受けてくれて一安心していたのに元の木阿弥だ。

ジョージやルーシーの時代に「Kiss Ass」作戦で,日本人でありながhonorable whiteになりSecond Vice PresidentとNO3の地位に上り詰めた福永正明がまたもや復権するのではないかと怖れる。

福永はインドの日刊紙「The SANMARG」の日本特派員の資格で正会員になったのだが、僕はブログで特派員の給与など受けていない、記事も書いていないと攻撃した。

怒った福永は僕を査問委員会にかけ,前後3回、10カ月と5日の長きに亘る会員資格停止処分にした。出席していた理事の1人は何故僕が資格停止になるのか理由が分からなかったと打ち明ける。

「永久追放する」との脅しで僕も弁護士を立てて反抗し、反撃として協会事務局に福永がSANMARG紙に書いたと言う記事の提出を要求した。

2年に1回正会員は掲載紙提出の義務があるのに後ろめたいレギュラーメンバーは互いの傷を隠すため有耶無耶にしていた。

果たして福永の提出したSANMARG紙記事は他人の署名入りのコラムだった。
ヒンズー語は誰も読めないとタカを括った太々しさ。
福永に「寄生虫バングラディッシュ」と貶された記者が翻訳したS紙記事を事務局に見せたのだ。

見破られるや否や、即座に「退会届け」を出して受け入れられた。悪知恵を駆使した逃げ足は速い。

僕が怖れ、そして怒るのはこんな破廉恥罪を犯して「退会届」で済ますのか?
これは西法太郎が冤罪で受けた「永久追放」以上に悪い。

福永は「退会届」を提出するにあたり、「私はH&R担当理事として多くの従業員のクビを切った。それがトラウマとなって悪夢で蘇える」と。
バカなことをシラジラと言うではないか。
傍聴した都労委でも地裁でも胸を張って一点の曇りも無くFCCJのために堂々と行った」と述べているように確信犯なのだ。

そんな理由で「退会届」を受けているFCCJは、ピーター辞任のゴタゴタに紛れて福永の復帰届を簡単に受け入れる可能性もある。
改めて「退会届」を「永久追放」に書き改めなければ禍根を将来に残す。


今年5月20日よりアメリカで新登場したこの作品2804館で上映され39Mで首位。海外では中国の29.2Mを含め48か国で1位の94M、ワールドワイド累積は僅か3日間で150M(155億円)にもなった。
この夏休み、ファミリーアニメ特に動物主人公の「ズートピア」や「ファインディング・ドリー」「ペット」などこの作品も含め大稼ぎをした。

アニメと言ってもこの映画は世界中で人気のアクションゲーム「アングリーバード」のキャラクターたちの活躍を描く3Dアニメーションだ。音楽がスタンダードナンバーも含め適切なシーンに素晴らしい曲が挿入されている。

世界中で大ヒットとなったフィンランド発のモバイルアクションパズルゲームを、ハリウッドで長編アニメーション映画にしたもの。
ソニー映画での試写は日本語吹き替え版で3D,主人公は僕と同じように真っ赤になって怒りん坊の「レッド」(声:坂上忍)とおしゃべりでお調子者の「チャック」(勝杏里)、身体は大きいが小心者の「ボム」(乃村健次)の3羽。

きつい冗談や下品なギャグ満載のアニメは鮮明なパステルカラーの3Dで圧倒し、予想以上に観客を惹きつけている。

TVゲームの映画化は、古くは「スーパーマリオ」や「ストリートファイター」や「バイオハザード」、最近では「WAR DOGS」のような人気TVゲームの映画は大ヒットにはならないが知名度が高いだけに制作費は着実にカバーし外れが無い。

飛べない鳥たちが暮らす平和な島「バードアイランド」が舞台。太い眉毛がトレードマークのレッドが
ケーキ配達のトラブルで怒りを爆発させ「アンガーマネージメント」の教室へ送られるなどのエピソードが挿入される。
そんな時緑色の豚、レオナルド(岩崎ひろし)が遠いピギーアイランドから友好のために渡航して来たと言われ大歓迎。パーティを開きカウボーイショウなどが繰り広げられる。

しかし船底に隠れていたのは緑のピッグの兵士たち。何か陰謀があると隠棲している積年の英雄、マイティ・イーグル(山寺宏一)。しかしボケていてあてにならないと見て島へ帰ると、ピッグ軍団は島中の玉子を総て盗み出していた。

盗まれた大切なタマゴを取り返すため、伝説のヒーロー「マイティー・イーグル」に助けを求めピギー・アイランドに攻め込み死闘を繰り返す戦争。

バードアイランドだけが全世界と信じていたバードたちが船を追って行った先には、ブタたちの楽園があった。バードたちは勇気をふりしぼり、パチンコを使って鳥たちが弾丸の役目で空を飛ぶ。ピッグ軍団との決死のフライングバトルの末に、バードたちはタマゴを無事に取り戻せるのだろうか?

戦争が終わってもレオナルドとレッドは仲が良いのは平和主義を謳うゲームの精神か?

「怪盗グルーの月泥棒 3D」のベテラン・ジョン・コーエンが製作を務め、アニメ一筋で経験を積んできてこの映画がデビュー作となるファーガル・ライリーが監督する。
初監督とは思えぬ素晴らしい仕上がりだ。

10月1日より新宿ピカデリー他で公開される

「メカニック:ワールドミッション」(Mechanic: Resurrection)(アメリカ・イギリス映画):平穏な隠遁生活を送るビショップに愛人を人質に世界の武器商人たちを暗殺せよと迫る昔の仲間

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昨日(24日)に封切られたこの映画を品川プリンスH内の「T・ジョイPRINCE品川」にでかけた。
銀座や日比谷を避けて最近この小屋で見ることが多い。小劇場のシネコンプレックスで8割以上の観客で埋まっている。ガラガラの劇場での鑑賞は盛り上がらない。

座席は広いし座り心地が良い、階段式の落差が大きく前の座席の頭が帽子を被っていてさえ決して邪魔にならない。
更に品川駅から僕の足でも5分以内だし、何よりも帰りの常磐線の始発駅で必ず座れる。

アメリカで8月25日に新登場した ライオンズゲイト配給のジェイソン・ステイサム主演のアクショナー「Mechanic: Resurrection」は2258館で上映され7.5Mで5位に食い込んだが、2週目で10位に落ちその後はチャート外。総計は精々50M(50億円)位の興行成績で制作費や広告PR費の回収は難しい。要するに赤字映画だ。

僕の好きなジェイソン・ステイサム主演だから当たって欲しいと思うが、脚本が二流でB級アクションを自認しているので限界がある。

オリジナルはチャールズ・ブロンソン(「ウーン、マンダム!」のおっさん)の1972年の映画で、主人公アーサー・ビショップは「殺し屋」。仕事として「組織」からの依頼を請け負い、ターゲットを速やかに暗殺する。

雰囲気はブロンソンに似たジェイソン・ステイサムでそのリメイクが40年後の2011年の「Mechanic」が始まり、ソコソコの成績でこの映画はそれから5年後でその続編となる。

暗殺の仕事から離れ、ブラジル・リオで平穏な日々を送るビショップ(ジェイソン・ステイサム)。リオなんて犯罪都市に静かに暮らすことは考えられないが「オリンピック」効果だろう。

彼のクルーザーに昔の同僚で使いの女性(ミシェル・ヨ-)がやって来る。
依頼主は幼い頃に共に暗殺者として育て上げられたが、いつしかビショップを裏切っていった兄弟子クレイン(サム・ヘイゼルダイン)からの依頼で3人の暗殺を指示してくる。

 相手にしないつもりだったが、恋人ジーナ(ジェシカ・アルバ)を人質の取られて引き受けざるを得ない事態になる。

 ターゲットはフィクサーとして世界を裏で操る3人の武器商人のリストで提示される。彼らは世界を裏で操るフィクサーの武器商人。殺人でなく事故死に見せかける暗殺計画を練るビショップ。


映画が亜流なのは「ジェイソン・ボーン」「007」や「ミッション・インポッシブル」(MI)に酷似したシーンが続出することだ。

トム・クルーズがドバイの高層ビルで蜘蛛のように張り付き突入するシーンとそっくりのシドニーのスカイスクレイパーに突入して仕留める。

アフリカの族長は要塞のような牢獄に入って守られている。
自分も逮捕され牢獄に叩き込まれたビショップは族長を殺す。

3人目のターゲット・アダム(トミー・リー・ジョーンズ)に会った時は事情が変わっている。
役者の格が違うから何か起こると思っていたら、共存共栄のプランをビショップは持ち出す。

このまま成功しても自分もクレインに殺されることは必定。二人は死んだことにしてクレインの目を欺くと言う計画だ。

鍛え上げられた肉体と頭脳を駆使し、精密機械のように暗殺任務を遂行することから「メカニック」と呼ばれる殺し屋ビショップをチャールズ・ブロンサム+最先端CGを武器にステイサムが気持ち良く演じている。

再び暗殺者に戻ったビショップ対クレインの一騎打ちはラストシーンの大型クルーザーの上で死闘を繰り返す。

70歳を超えたトミー・リー・ジョーンズは老いて尚盛ん。
若くて美しいジェシカ・アルバは浅黒い肌を真っ白なスーツに包み、ビショップの死闘に支援の手を差し伸べようとする。

精密機器のように完璧に仕事をこなすことから「メカニック」と称される伝説の殺し屋ビショップの活躍を描いた「復活」(Resurrection)作品。
「トランスポーター」シリーズで一躍スターダムを登りつめ、今やハリウッドを代表するアクション俳優としての地位を確立したステイサムのキャリアでも熱い支持を受ける人気作だ。

舞台はブラジル、タイ、オーストラリア、ブルガリアなど世界各都市を(観光案内を兼ねた)バックに派手なアクションを披露する。
「メン・イン・ブラック」「告発のとき」などのトミー・リー・ジョーンズ、「イントゥ・ザ・ブルー」「シン・シティ」シリーズなどのジェシカ・アルバ、「グリーン・デスティニー」「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」のミシェル・ヨーらベテランの俳優が脇を固める。

監督は「THE WAVE ウェイヴ」などのデニス・ガンゼル。演出に冴えが見られない平凡さ。

T・ジョイPRINCE品川や新宿バルト9ほか全国で公開中。

「金メダル男」(日本映画):なんでも金メダル(一等賞)をとろうと一生を過ごす負け犬男は一緒にゴールを目指す生涯の伴侶を得る

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話題のオリンピックに因んで金メダルに拘る主人公の生きざまを描く。
20年前に大笑いしたヒット作「フォレスト・ガンプ 一期一会」のパロディを見ている感じで何も考えずに笑って楽しめる映画だ。

フォレストも主人公の泉一も「走って誰にも負けない」ことで一念発起する。
フォレストは無我夢中で逃げるときに走ることができ、そして俊足を発揮するようになった。

アメフトの試合中のコート内に進入してしまうが、その俊足ぶりで全米代表選手に選ばれるまでになる。
アメリカ陸軍に志願しベトナム戦争で足の速さで栄誉勲章を受け、卓球と出会い、才能を発揮する卓球全米チームで中国との国交を樹立する「ピンポン外交」の主役となる。その後エビ漁で成功し果物の会社(アップル)に投資し億万長者になり慈善事業に寄付をする。
幼馴染のジェニーとのロマンスも挟み込んで面白い話だった。

20年前の映画で今の若い人は知らないから、内村の映画は新鮮でオリジナリティあふれる作品だと思うだろう。

内村はサクセスと失敗を繰り返して話を進めている。

 1964年、日本は東京オリンピックに湧いていた。
その年に長野県塩尻市に生まれた一人の男の子の名は秋田泉一。
両親は新婚旅行に島々の白骨温泉での一発で出来た子どもだから温泉で一発で「泉一」と名付けられる。
出生の秘密はエロぽいが面白い。

 泉一は小学校の運動会の徒競走で後ろからゴボウ抜きで一位になり、それがきっかけに「一等賞」にこだわりを持ち始める。

絵画や書道、鮎のつかみどりから大声コンテストまで一等賞を取り続ける。
そんな泉一はまわりから「塩尻の金メダル男」と呼ばれるようになる。

 しかし高校へ行ってから挫折、誰も相手にしてくれないと1人芝居の「表現部」と言うのが笑える。
坂本龍馬の伝記を脱藩から暗殺されるまでを1人で演ずる。
これが大うけで部員も増えるが、あっさりと下級生から部長の座を奪われる。

 だが、子供時代の一等賞の荒稼ぎは高校までは何とかもったが、東京の大学へ行ってから「井の中の蛙」でおかしくなり、そのまま大人になった泉一は気持ちが先行するものの実績は付いて行かず失望と落胆そして波乱の人生が始まる。

 それでも失敗ばかりするが馬鹿正直に何度でも立ち上がる。
何でも挑戦するが、手漕ぎボートで太平洋横断中嵐に会い遭難し無人島で7か月をすごした体験で売れるようになった泉一は、売れないで過去を隠して生きる亀谷頼子 (木村多江)がマネージャーとしてついてくれる。
 一発屋のアイドル時代に歌った「わたしのサンクチュアリ」が泉一の人生のモチベーションとなっている因縁が2人を結びつた。

一緒に人生の難関を超えようと心に決める。ジェニーに三下り半を突き付けられるフォレストとは大違いだ。

内村光良が原作・脚本・監督・主演を務め、監督としては「ピーナッツ」(06)「ボクたちの交換日記」(13)に続いて3作目の作品となる。やはり段々と脚本も演出も上手くなっている。高校時代の「表現部」やサンクチュアリを歌った亀谷頼子とのロマンスなど素晴らしい発想だ。

 この作品は2011年に上演された内村の1人舞台「東京オリンピック生まれの男」を原作に映画化したもので、映画初主演となるHey! Say! JUMPの知念侑李が内村と二人一役でヤングの泉一を演じている。

共演はムロツヨシ、笑福亭鶴瓶、長澤まさみ、高嶋政宏、温水洋一、竹中直人、ユースケ・サンタマリアなど個性豊かな役者たちが脇を固めている。。

10月22日よりTOHOシネマズ新宿他で公開される

「弁護人」(THE ATTORNEY)(韓国映画):元大統領、盧武鉉の正義感溢れ、義憤にかられる軍事態勢国家に反抗する青年時代の物語をソン・ガンホが熱演する

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 京橋ビルの地下にあるテアトル試写室で上映終了後に拍手が起こる。関係者が初号を見るための試写なら当たり前だが3年前の韓国映画でそれも新宿駅前のチンケな小屋で単館公開される作品を称賛する拍手だ。

09年5月に釜山の自宅近くで飛び降り自殺した元大統領、盧 武鉉(ノ・ムヒョン)の話と聞いて積極的に見たいとも思わずスクリーンを見つめていた。戦争を知らない世代(終戦の1年後の生まれ)の若さで日帝時代を知らない韓国の世代ながら09年に自殺した時は63歳だった。

韓国の歴代大統領は政権時代に金銭欲に囚われ賄賂や汚職で蓄財し退任後検察の厄介になる。盧 武鉉は自分自身が犯した罪と言うよりは親戚が手を染めた汚職の責任を取ったと言われている。

何れにせよ盧 武鉉(ノ・ムヒョン)ことソン・ウソク(ソン・ガンホ)の正義感溢れ義憤にかられる青年時代の物語は波乱万丈で痛快で興奮する。

1980年代初頭、軍事政権下の韓国。ソウル大学延世大学など名門大学どころか商業高卒だけで苦労して司法試験に合格したソン・ウソク(ソン・ガンホ)は、検察官になるが高卒とバカにされ出世の道は閉ざされていた。

将来のアテもない検察官をやめて、故郷の釜山に戻り弁護士事務所を開き、不動産ブームに付け込み行政書士の仕事を兼てお金を稼ぐために、登記そして税務専門の弁護士として活動する。見事図に乗って毎晩どっさり現金の詰まった袋を持ち帰り、苦学生の頃土方をして煉瓦を積んだマンションを手にいれる。ヨットも手にいれ順風満帆の生活を送っていた。

だがある時、ウソクが苦労していた時代からの行きつけのクッパ屋のおばさん(キム・ヨンエ)の息子ジヌ(イム・シワン)が、友人たちと読書会の最中に公安当局に踏み込まれ逮捕され2か月間何処かに監禁されて行方が分からない。

ようやく拘禁されていることが分かり弁護士の特権を行使して面会に行ったおばさんとウソクは、ジヌの体に無数の傷跡があることに衝撃を受ける。体重も10キロ以上減っている。

大手建築会社の顧問弁護士の誘いも断った俗物弁護士のウソクだが、誰も引き受けたがらない国家保安法の裁判でジヌの弁護人を引き受けることを決める。
えい柄を拘束し50日間拘置できるとする。

ここからのウソクが素晴らしい。例え「国家保安法」が何よりも優先するとしても韓国の憲法、「韓国民の人権を無視」することは許されないと論破する。
更に検察側の証人、曲学阿世の学者がソ連に長らく滞在したアカの英国人E・H・カーの歴史書はアカの書籍だ。
それを回読していた読書会を検察と警察はの現場を押えジヌ(イム・シワン)を逮捕しchたと。

 ウソクが鼻を明かす。
E・H・カーは英国外務省勤務でモスクワに駐露大使として長く滞在したのは事実だ。
カーの書籍は歴史書でアカでは無い!
高い書籍代を払えない貧乏学生が集まって回読していたと論破するが検察チャ・ドンヨン(クアク・ドゥオン)はあの手この手で食い下がる。

この事件は痛み分けになるがウソクはその後も人権弁護士として活躍し政界入りをするのだが映画は政治家のウソクを描いていない。

 しかし国民的俳優のソン・ガンホの納得性のある素晴らしい演技は戸惑う同僚の弁護士とともに観客をグイグイ引っ張って自分の主張、目標に向けさせる。この釜山で起こった
アイドルグループ「ZE:A」のイム・シワンが、不当逮捕された弱々しい青年、ジヌ役を好演。

 その他、キム・ヨンエ(チェ・スネ役)、オ・ダルス(パク・ドンホ)、
クァク・ドウォン(チャ・ドンヨン役)が脇を固める。

 監督・脚本はヤン・ウソク。これがデビュー作だと言う。韓国映画作家の層は厚い。

 韓国では4人に1人は見たと言う大ヒット作。

11月12日より新宿シネマカリテで公開される。

「誰のせいでもない」(EVERY THING IS FINE)(独・仏・加・典・ノルウェーイ映画): ドキュメンタリ映画にのめり込んでいたドイツの巨匠、ヴィム・ヴェンダースの7年振りの劇映画

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84年「パリ、テキサス」87年「ベルリン・天使の詩」00年「ミリオン・ダラー・ホテル」など数多くの名作劇映画を発表してきた映画監督、ヴィム・ヴェンダースに何が起こったのだろうか?

1998年の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」以来11年の「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」14年の「セバスチャン・サルガド」などドキュメンタリ映画で数々の賞を獲得する傑作を生みだして、関心がドキュメンタリに移ったようだ。

それでも劇映画としては約7年ぶりとなる監督「誰のせいでもない」(原題: Every Thing Will Be Fine)を仕上げた。

何故この淡々としたメロドラマを3Dにしたのか?原題の「総て上手く行っている」は、現実的には「上手く行っていない」主人公の悪夢か?開き直りか?
どうもヴイム・ヴェンダーはこの映画をもって70歳過ぎた身体は映画監督として物理的にやって行けないと思っているのではないか?と言う気がする。劇映画よ「さようなら」だ。

 カナダ・ケベック州のモントリオール市の郊外。作家のトーマス(ジェイムズ・フランコ)は恋人サラ(レイチェル・マクアダムス)と暮らしているが、筆が進まず仕事がうまくいかずその関係はぎこちない。

ある大雪の日、車を走らせていたトーマスは、目の前に飛び出してきた何かに驚き急ブレーキをかける。ドアを開け走り寄った車の前に橇に乗った幼い子どもが一人。
車の前の雪の中で虚ろに座り込んでいる男の子、名前を聞くと「クリス」と答える。名前以外は何も言わないし、何処もケガが無いようなので負ぶって家まで届ける。

家の手前で母親、ケイト(シャルロット・ゲンズブール)が飛び出して来る。ニコラスはどうした!弟は何処にいるの?と半狂乱。

3人で車の処へ戻って来る。ニコラスは車の下敷きで死んでいた。
 事故に警察の介入が無いのに驚く。
子どもが一人ひき殺されているんだぜ。作家トーマスの心情と視点だけで追うドラマはおよそ現実性を欠く。
タイトルと違って何も上手く行っていない。

映画は事故の後10年間を追っている。

トーマスの心に大きな傷が残り、それが原因でパートナーのサラとは別れることになる。
その事を小説に書き始める。
不思議なことに事故の後トーマスは筆が進み完成した小説は傑作で数々の賞を受けることになる。

それから2年、小説は売れ始め事故の後初めて現場を訪れケイトに会う。ケイトは無気力で詰らない絵を描いている。

4年後、編集者のアン(マリ=ジョゼ・クローズ)と暮らし始める。アンには活発な娘、ミナを連れている.

登場人物に情熱とか拘りが感じられない。
ケイトの詰まらない絵。
10年後、弟・ニコラスの仇をとりにトーマス宅にやって来たハイティーンのクリスは復讐も中途半端だ。

アンとミナを連れて訪れた遊園地の観覧車が倒壊したが被害者も泣き叫ばない。

ヴェンダー監督は感情を込めずに出来事を淡々と追う。それも3Dで。
なんでわざわざ立体で描くのか訳が分からない。(試写は2Dだったが。それで充分)

主人公のトーマス役のジェームズ・フランコは「スパイダーマン」で善玉も悪玉も両方演じて世界に名を轟かせた。

ケイト役のシャルロット・ゲンズブールは体当たりで熱演した「アンチクライスト」(09)が話題を呼んだ。、あっさり消えるサラ役のレイチェル・マクアダムスは「ミッドナイト・イン・パリス」で注目を浴びた。アン役のマリ=ジョゼ・クローズら錚々たる女優陣がヴェンダースを慕って顔を出している。

僕には十分に理解も納得も行かない作品だが、ヴェンダース最後の劇映画なら見逃せない。

11月12日よりヒューマントラスト渋谷他で公開される。

「淵に立つ」(日が本映画):東京郊外で幸せな生活を営む3人家族を突如現れた謎の男が一家に入り込み深淵の見えない悲劇をもたらす

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昨日(28日)の外国特派員協会で今年のカンヌ国際映画祭のある視点部門で審査員賞を受賞した深田晃司監督を招いて、その受賞作を上映した。

上映前に小柄で人の良さそうな監督が司会の大柄なカレンに導かれて挨拶する。
眼鏡を光らせてニコニコしながらともかく映画を見てくださいと自信あり気なスピーチ。35歳の若い監督だ。

深田晃司は「人間を描くということは崖の淵に立って暗闇をのぞき込むような行為だ」と言う。今回の作品は更に一歩崖淵に近づいて人間の内部の暗闇を見つめている。

海辺の町を舞台に、受験に失敗した少女、二階堂ふみが過ごす2週間を描いた「ほとり朔子」を僕は気に入っている。淡いロマンスを感じる太賀も良かった。深田晃司監督はこの作品で二階堂ふみを世にだした。

深田の作品は所謂ジャンル映画と呼ばれアートハウスで上映され商業的に成功は覚束ない。
しかしジャンル映画を積み重ねている内に商業映画のプロデューサーに見い出されヒットメーカーとして世に出る。

ジャンル映画は自分の資質をお披露目する良い機会だ。まして今度はカンヌの新人監督登竜門でお墨付きを貰って当初予定されていなかった有楽町スバル座で興行が可能になった。
渋谷のユーロスペースや東中野のポポロ座では陽の目は見れない。

おまけに人気スターで「私の男」などの浅野忠信が影のある謎の男で平凡な家族に付きまとい始めて一家平穏な日常に不協和音が響き始める。

スターは謎の男を演じる浅野忠信だけ。
「私の男」で第36回モスクワ国際映画祭 最優秀男優賞、第57回ブルーリボン賞 主演男優賞を受賞している売れっ子。
脇の役柄が多い「かぐらめ」などの筒井真理子と「下衆の愛」の古舘寛治が普通の夫婦役、突如浅野扮する謎の男が齎す破滅的で深淵な悲劇が幸せな一家を地獄に突き落とす。

東京郊外で小さな金属加工工場を営む鈴岡家は、夫・利雄(古舘寛治)、妻・章江(筒井真理子)、10歳の娘・蛍(篠川桃音)の三人家族。

蛍は発表会で弾く曲の練習に余念が無い。章江は蛍に赤いドレスを発表会用に縫い上げている。
夫婦の間に仕事の連絡以外の会話はほとんどないものの、平穏な毎日を送るごく平凡な家族だ。章江は熱心なクリスチャン、食事の前に蛍と感謝の祈りは欠かさない。無視して勝手に食べ始める利雄。

そんな彼らの前にある日、利雄の旧い知人で、最近出所した八坂草太郎(浅野忠信)が現れる。
利雄は章江に断りなくその場で八坂を雇い入れ、自宅の空き部屋を貸す。

章江は突然の出来事に戸惑うが、人付き合いの良い八坂は敬虔なクリスチャンである章江の教会活動に参加し、蛍のオルガン練習にも昔習ったと言うタッチを教え一家と喜んで付き合う。言葉使いも礼儀も正しい八坂に章江は好意を抱くようになる。夫に隠れキスを交わす間柄になる。

一方、殺人罪を一人で背負って塀の中で8年過ごした八坂に負い目がある利雄は、家族の一員のように振る舞い、妻と親密な様子の八坂を見て見ぬ振りをするのだった。

その負い目とは何なのか観客には分からない。
物語にミステリアスなスリルを付け加える。

しかしある時、八坂は一家に残酷な爪痕を残し、姿を消す。
蛍が八坂に襲われ打撲を負って意識を失い、全身が麻痺し車椅子生活を余儀なくされる。
八坂の前後の行動を見て全く理解出来ないシーンだ。

一家は警察へは届けず興信所を雇い、八坂の足跡を捜すが杳として行方は知れない。

 この作品は今年の第69回カンヌ国際映画祭で新人作家に与えられる「ある視点部門」で審査員賞を受賞した。お墨付きで作品の興行価値は上がった。

それから8年。八坂の行方は相変わらず知れず、利雄は興信所に支払いを続け追跡調査をさせているが、一向に手がかりはつかめないでいた。もうやめようかと妻の提案に夫も頷く。

工場では古株の従業員・設楽篤(三浦貴大)が辞めることになり、代わりに山上孝司(太賀)が新人として入ってくる。

だが孝司の荷物の中から8年前、蛍を中心に一家と八坂が写っている写真が出て来る。孝司の父は八坂だった。だが孝司は父の顔を知らない。生まれた時には服役していたのだ。

皮肉な巡り合わせに呆然としている時、興信所は山形県の庄内地方で八坂の消息をつかめたと知らせが来る。利雄と章江は再び己の心の闇と対峙することになるのだった。平凡で幸せな家庭を築いてきたかに思われた夫婦の秘密が徐々に暴かれてゆく。

ここで利雄が説くのは「罪と罰」。
二人の愛の結晶、蛍の全身麻痺は利雄の犯した「殺人罪共犯」と章江と八坂の「不倫の罪」の「贖罪」だと言うのだ。

 深田のこの理論は「蛍」の人格を考慮に入れていない。「罪深き夫婦」よりも「蛍」をどうしてくれるんだ?

更に蛍と利江の「無理心中」。
敬虔なクリスチャンの利江が絶対に犯すことが出来ない「Commit Suicide」を監督は知らない筈が無い。

不条理に溢れるドラマだが終わって見れば強烈な人間性の弱さ、脆さのインパクトを観客にぶっつけている。


10月8日より有楽町スバル座他で公開される

「戦場のメロディ」(Thinking of My Older Brother)(韓国映画):朝鮮戦争の最中、実話をもとに描いた戦場に花開く戦争孤児合唱団

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1945年8月15日、日本帝国の敗戦で朝鮮の「光復節」。
朝鮮は国家を取り戻したが北と南は「共産主義」と「民主主義」のイデオロギーの差からいがみあっていた。

 戦後5年経った1950年6月25日、遂に小競り合いが本格的な戦争になり北朝鮮は38度線を南下し韓国の首都、ソウルに侵攻し忽ち占領してしまう。
そして怒涛のように北朝鮮軍は連合国軍を半島南端の釜山に追い詰める。

余談ながら反攻に出た連合国軍は仁川に上陸し、逆に北朝鮮と中国人民軍100万人を鴨緑江に追い詰めた。

この時連合国司令官マッカーサー元帥はトルーマン大統領に「原爆投下」を強く要請した。
共産主義を根元から断ち切るには「原爆」で100万人の北・中軍を壊滅する必要性を強く説いた。

チキンハートのトルーマンは逆にマッカーサーを解任して本国送還を決めた。落としておきさえすれば今の北朝鮮の将軍様も中国人民軍も存在しなかった。
尖閣諸島も核弾頭ミサイルにも悩まされることは無かっただろう。


この映画の主人公、ハン・サンヨル少尉(イム・シハン)は戦争真っ只中の1952年、小隊長としてソウルで戦ったが部隊は全滅、家族も戦友も皆死んで、失意のまま最前線から戦火を逃れた釜山に単身転属となる。

そこで彼を待ち受けていた任務は、両親を亡くした多くの戦争孤児の世話だった。最前線の小部隊とは言え部隊責任者が孤児の世話と言う軟弱な軍務を与えられるとは、凄いギャップを感じる。

サンヨル少尉は唯々諾々としてこれを受けるのが信じられない。前線で戦って敗れ尾羽打ち枯らして後部戦線に逃れた将校は商業軍人のプライドも無い。

むしろ音楽学校を出ているだけに子供の合唱団を作ると言う発想には飛びつく。
前線で一緒に戦って負傷した下士官のチョ上司(イ・ジュニック)が少尉の心を慮り、孤児院の世話係りに推薦し軍務から離れさせたと思われる。
 
 実話だと言うがご都合主義のストーリー展開。
先ず悪魔と天使が登場する。
天使は孤児院の若き美人院長、パク・ジュミ(コ・アソン)。ヴォランティア精神旺盛で夜に日を継いで身体を粉にして働くのを見てサンヨルは感動を覚える。

悪魔は戦争で右手を失い、カギ爪で孤児を脅かし自分の利益を確保しようと言うカルゴリ(イ・ヒジュン)。
孤児をかき集めて来たのは自分で当然だと。

主人公のサンヨル少尉を演じるのは男性アイドルグループ「ZE:A」のイム・シワン。盧武鉉(ノムヒョン)大統領の若き日を描く「弁護人」でアカのレッテルを「国家保安隊」の過酷な拷問を受ける学生を熱演していたが、ガラリと変わった朝鮮戦争で全てを失った子どもたちによる「児童合唱団」の指導者。親を無くした孤児たちにはサンヨル少尉は「父親」でもあり「兄貴」でもあり、家族意識を高揚し忽ちの人気者。

美人院長のジュミとはロマンスが生まれるが、カギ爪男のカルゴリは嫉妬のあまり対立が起こる。

実話をもとに描いた、殺伐とした戦場で歌声が人々の心を癒していく様をイム・シハンは水を得た魚のように熱演している。孤児の主役は兄ドング(チョン・ジュンウォン)と妹スニ(イ・レ)。
特にドングの歌う「故郷の春」は絶唱だ。

言ってみれば「韓国版サウンド・オブ・ミュージック」とも言うべきもので、美しい子供たちのコーラスを歌わせておけば映画は自然に動く。戦後も外国へ公演旅行などをしている。

米軍など連合国軍慰問では「楽しい我が家」(Home Sweet Home)「牧場の小道」(Stroloda Pumpa)など外国人受けの曲を、韓国大衆に向けては「兄思い」「若菜を摘む少女」など韓国の歌を送る。
日本人観客は韓国曲でヤマを作るので置いてきぼりにされた感じになる。

このように音楽が天職と心得るサンヨルは、熱心に子どもたちを集めて指導し合唱団を作り、歌を教える。

最初はぎこちなかった子どもたちも、次第に笑顔になっていく。
そんな合唱団が、死と隣り合わせの最前線の戦地で慰問公演を行うこととなるのがクライマックス。オシッコをしたいと言うスニを「誰にも見られない森の奥へ」と連れて行くドング。
そこで北朝鮮の小隊とぶっつかり、軽機関銃とライフルで攻撃される。

韓国で4人に1人は見たと言う社会派映画「弁護人」などでアカの学生を演じ拷問でボロボロになった演技が高く評価されたZE:Aのイム・シワン。
この映画が初主演作でより一層深みを増した演技力は音楽好き、子ども好きな軍人役を見事にこなす。
相手役の美人院長は「グエムル-漢江の怪物-」「スノーピアサー」などに出演し、始めて重要な役柄を演じるコ・アソン。

「児童合唱団」には約30名の子役が集められ、4ヶ月間にわたる特訓で身につけた美しいコーラスを披露する。

「優しい嘘」「ワンドゥギ」などのヒューマンドラマ得意の45歳、イ・ハン監督が、実話に基づく様々なエピソードを盛り込み、また戦争の悲惨さの中で力強く生きる子供たちの雄姿を描き切った。

10月29日よりシネマート新宿他で公開される。

「pk」(pk)(インド映画):「神様は何処にいる?」地球に迷い降りたエイリアンのpkは宇宙船を呼び出すリモコン探しを頼もうと神様探しを始める。

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主人公は宇宙の彼方から地球にやって来た「PK」。ヒンズー語で「飲んだくれ」と言う意味だそうだが、S・スピルバーグの「ET」のパロディか?

何もないインド西部のラジャスタン荒野を真っ裸で歩いていた男、pk(アーミル・カーン)は最初に出会った地球人は乱暴な男でPTのペンダントを取り上げる。

ピカピカ光る緑の宝石をはめ込んだペンダントはPTが自分の星へ帰還のために宇宙船を呼ぶリモコンで、これが無ければ帰れなくなる。
PTは出会う人たちに色んなことを聞くが人間社会のことは全く無知、道理や規則、社会常識は何も知らない。

インド・ボリウッドの巨匠、ラージクマール・ヒラーニ監督と、インド映画界の大スター、アーミル・カーンが「きっと、うまくいく」(日本公開2014年)で競争社会での友情やロマンスを描いて大ヒットを飛ばして以来、6年振りのリユニオンだ。ヒラーニ監督はコメディに鋭い風刺や批判を込めるのが得意技だがこの映画は宗教にメスを入れている。

それにしても今年51歳のアーミル・カーンの魅力はどうだ。
大きなブルーの瞳、真っ裸で冒頭登場するが引き締まった身体に筋肉はバッシリと張り付いている。生まれたばかりの赤ん坊のように人間とその社会や宗教に無知だが学ぶことが多い。

pkは大都会、デリに行き「神様のみが自分を救って『リモコン』を探してくれる」と神様を探し始める。

しかしその神様が種々雑多。仏教の寺院に行き、イスラムのモスクへ、キリスト教の教会へシバの神々を崇める大会へと探し回る。
遂には産婦人科医院に潜り込み生まれたばかりの赤ん坊の背中に仏教徒かモスレムかクリスチャンとラベルが張られてないかと。「神様は行方不明」が結論だ。

一方、留学先のベルギーで大失恋をし、今は母国インド・デリのTV報道局でプロューサーとして働くジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男、PKを見かける。

チラシには神様の絵に「行方不明」の文字。
興味を持ったジャグーは、「PK」を取材することにする。
「この男はいったい何者?なぜ神様を捜しているの?」
しかし、彼女が男から聞いた話は、リモコンを探す手伝って貰おうと神様を探していると、とても信じられないものだった。

何とテーマは「神と宗教」だ。こんな大テーマを振りかざして結論が出るのだろうか?冒頭のクレジットでこの映画はどの宗教をも非難したり傷つけるものでは無いと。

しかしTVで有名になったpkに新興宗教の教祖が挑戦する。宗教を傷つけるのはインチキ新興宗教だけと言うのも映画としたては思慮深い。
pkは教祖の欺瞞を暴き、更に超能力でジャグーのパキスタンの失恋相手は未だ彼女のことを思い詰め電話を待っていると看破する。

もう一つの超能力の軽いエピソードも面白い。身なりの立派な老人がpkに近寄り「妻が心臓手術をしたが100ルピー不足で貸してくれと。
すんなり100ルピーとそれに50ルピーを差し出すpk。ジャグーが「ほら騙された。この近くに病院は無いんだから」

「いや豪華なレストランがあり老人は請求金額に100足りない。残りの50は妻の好きなバニラアイスクリームを追加するためのものだ」と。
実際二人がショウウィンドウ越しに老人と若い妻のデザートにアイスを食べる食事風景が見える。

こんな超能力をアチコチで使えばよいのに。

 世界中で記録的なヒットを飛ばし1たインド映画「きっと、うまくいく」(2009)のラージクマール・ヒラーニ監督と、インド映画界のスターであるアーミル・カーンが再びタッグをくんだ報復絶倒の喜劇。
相変わらず突然歌いだし踊りだすインド映画独特のトーンは変わりなく、それも2時間半を優に超える長さ。

この作品は本国では14年に公開され、インドでの興収は「きっと、うまくいく」を抜いて歴代第1位となる約50億円を記録し、全世界興収は100億円を突破した。
米映画観客評価の「Rotten Tomatoes」では90%のフレッシュネスを獲得しているおり、51歳になったカーンの熱演が結果に表れている。

ちょっと見にカーンはトム・クル-ズに似ていて、大きな人を飲み込むブルーの瞳は世界一だ。
彼は様々な宗教を信仰しようとするが、その都度ややこしいトラブルに見舞われ、そして一向に願いは聞き届けられない。

そんな彼に美人TVプロデューサーのジャグーは興味を持ち、「宗教とは何か?」を検証するTV番に出演させ、新興宗教教祖と対決をさせる。

宗教こそが世界中で巻き起こるテロや戦争など社会問題を起こしている。
ドタバタ喜劇を通してタブーの宗教に鋭いメスを入れようとするラージクマール・ヒラーニ監督は天才だ。

10月29日よりYEBISU GARDEN CINEMA他で公開される

「92歳のパリジャンヌ」(LA DERNIERE LECON)(フランス映画):ジョスパン元フランス首相の母親、ミレーヌ(役名=マドレーヌ)が92歳の誕生日に家族に宣言する強い「尊厳死」の遺志。

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僕がと言うより映画観客が「尊厳死」に関心を持つようになったのは2004年のスペイン映画、アレハンドロ・アメナーバル監督の「海を飛ぶ夢」だ。

25歳の時に頸椎を損傷し、以来30年近くものあいだ全身の不随と闘った実在の船乗り、ラモン・サンペドロの手記「地獄からの手紙」をもとに、尊厳死を求めて闘う主人公を描いた映画だ。ラモンに扮するハビエル・バルデムの熱演も見事だった。

そしてこのところ「尊厳死」を扱った映画が目立つ。

「安楽死」を認める国はオランダ、スイス、ベルギー、ルクセンブルグなど極く少ない。

「世界一キライなあなたに」(Me Before You)(アメリカ映画)は四肢が麻痺し「尊厳死」を決めたイギリス貴族の若者。介護に雇われた労働者階級の女の子は介護を超えて青年を愛するようになり、彼の頑固な意志を変えようと努力する。スイスの安楽死の施設へ旅立つ恋人を見送る姿は涙なしには見られない。

今年初夏にこうかいされた「或る終焉」も印象深い作品だった。
死期が迫った患者をフリーランンスで個人的に看護師として働くデビッド。自分の息子の死をきっかけに元妻や娘と疎遠になった彼は、患者の在宅看護とエクササイズに励むだけの寂しい日々を送っており、患者たちとの親密な関係が心の拠りどころとなっていた。そんなある日、デビッドは末期がん患者のマーサから、安楽死を手伝ってほしいと頼まれる。

これも今年初夏に上映されたフランス映画「君がくれたグッドライフ」
難病に冒された男性が、「尊厳死」が許されるベルギーまでをゴールに、妻や仲間たちと自転車で旅立つ人生最後のロードムービー。コメディトーンに涙を綴った人間ドラマだった。

昨年公開されたイスラエルの「ハッピーエンドの選び方」も尊厳死を齎す機械装置にとりくむ。
発明が好きなヨヘスケルは、妻のレバーナと共にエルサレムの老人ホームに住んでいる。ある日、彼は死の床にある親友マックスに、何とか自らの意志で穏やかな最期を迎えられる装置を発明してほしいと頼み込まれる。人の良いヨヘスケルは妻や友人たちの反対にも耳を貸さず、親友の心からの頼みに新たな発明に挑む。


しかし今日紹介する映画「92歳のパリジャンヌ」はフィクションでは無い。切実に尊厳死を求めた91歳の老女の実話に基づくだけに説得力も迫力も感動もある。原題は「最後の教訓(レッスン)」とあるが、邦題は何だかバカみたいだ。

パリ11第大学の経済学教授からフランス社会党入りをしたリオネル・ジョスパンは1997年6月から5年間、ジャック・シラク大統領の下で第16代フランス首相を勤めた。
そのジョスパン首相の実母・マドレーヌの人生を、首相の娘で孫娘のノエル・シャトレが綴った小説「最期の教え」を原案を映画化したもの。

「死」をま近に迎える老婆。自分で出来ることのリストが段々に減って行く。92歳の誕生日に「尊厳死」を決意した老嬢とその家族を描く人間ドラマ。
かつて若い頃は助産婦として活躍し、今は子供や孫にも恵まれ、ひとり穏やかな老後を過ごしているマドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)。

まだまだ元気な彼女だが、気がかりなのは、数年前からノートに書き記している「一人でできなくなったことリスト」の項目がどんどん増えていること。
そんな中で迎えた92歳の誕生日、お祝いに駆けつけた家族に対して彼女は驚くべき発表をする。家族全員を前に「2か月後の10月17日に私は逝きます」と宣言する。

「皆に迷惑をかける前に、自らの手で人生に幕を下ろす決意をした」というのだ。
絶対反対を唱える家族全員たちと、決して揺るがないマドレーヌの意志。子供や孫がそれぞれの立場で、マドレーヌの選択をどのように受け止め「死」とどのように向き合うのか、家族の心情の変化を映画は丹念に追う。

自分のユマニテ美学を貫き、人生を終える決意をした1人の老婆とその家族の姿を描く感動作だ。劇中では有名な人物がたくさん登場するので本名でなく役名で出演している。

かつては助産婦として働き、子どもや孫にも恵まれて、現在は穏やかな老後を過ごしているマドレーヌ。(首相の母=ミレーヌ・ジョスパン)。
まだまだ元気な彼女だったが、数年前から書き記している「一人でできなくなったことリスト」の項目が増えていることが気がかりだった。

そして迎えた92歳の誕生日、マドレーヌは「2カ月後の10月17日に私は逝きます」と宣言し、祝いに集まった家族たちは耳を疑うが、それは周囲に迷惑をかける前に人生に幕を下ろしたいという、マドレーヌの揺らぐことのない強い意志だった。

娘のサンドリーヌ(ボネール・ディアーヌ)が母に一番近しく母の心情を理解して行くのだが兄のピエール(アントワーヌ・ピエリ)(大学教授で後の首相)が一番母の心情を理解しないのが可笑しい。
頭の良さと人間性の問題は離れている。

ピエールは[一人にするからイケないのだ、家族の誰かが絶えず付き添うか大金を払ってでも手厚く介護する老人ホームへ入れるべきだと主張する。

まさにそのことこそを母親マドレーヌが一番嫌うことだとは理解しようとしない。「出来るだけ生きながらえることが幸せだ」と信じ切っている。

余談になるが私の義母(家人の母)も一切延命策をとらないで欲しいと強い遺志を残していた。
迷惑をかけるので介護ハウスへは入るが、酸素マスクや点滴などチューブに繋がれたまま死にたく無い、との強い要望で一切延命策は取らず自然のまま「99歳の生涯」を閉じた。あと半年生きて100歳の誕生日を迎えてはどうか?などとボクが提案しても聞く耳を持たなかった。

監督はパスカル・プザドゥー。女優としても活躍しているが孫娘の小説に感動し脚色・監督をしたもの。

主人公、92歳のマドレーヌを「溺れゆく女」や「私の好きな季節」のマルト・ヴィラロンガが演じる。少し違うのでは無いかと思ったのはマルトはもともと喜劇役者。エンドクレジットにマドレーヌのモデルになった元首相の母のミレーヌ・ジョスパンの実写が出て来るが、小太りでオカシナ顔のヴィラロンガに比べ痩せぎすで上品な顔立ちだ。
それに83歳で92歳を演じるには少し若すぎる。

その娘で母親思いのサンドリーヌを「親密すぎるうちあけ話」「仕立て屋の恋」のボネール・ディアーヌが演じる。こちらは美人の58歳で役柄も実年齢もピッタリだ。

ジャック・シラクと大統領選を争い僅差で敗れたリオネル・ジョスパンは超有名人だけに、元首相の言動が母親を十分理解できないことを映画で指摘されているのが興味深い。

10月29日よりシネスィッチ銀座他で公開される

「92歳のパリジャンヌ」(LA DERNIERE LECON)(フランス映画):ジョスパン元フランス首相の母親、ミレーヌ(役名=マドレーヌ)が92歳の誕生日に家族に宣言する強い「尊厳死」の遺志。

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僕がと言うより映画観客が「尊厳死」に関心を持つようになったのは2004年のスペイン映画、アレハンドロ・アメナーバル監督の「海を飛ぶ夢」だ。

25歳の時に頸椎を損傷し、以来30年近くものあいだ全身の不随と闘った実在の船乗り、ラモン・サンペドロの手記「地獄からの手紙」をもとに、尊厳死を求めて闘う主人公を描いた映画だ。ラモンに扮するハビエル・バルデムの熱演も見事だった。

そしてこのところ「尊厳死」を扱った映画が目立つ。

「安楽死」を認める国はオランダ、スイス、ベルギー、ルクセンブルグなど極く少ない。

「世界一キライなあなたに」(Me Before You)(アメリカ映画)は四肢が麻痺し「尊厳死」を決めたイギリス貴族の若者。介護に雇われた労働者階級の女の子は介護を超えて青年を愛するようになり、彼の頑固な意志を変えようと努力する。スイスの安楽死の施設へ旅立つ恋人を見送る姿は涙なしには見られない。

今年初夏にこうかいされた「或る終焉」も印象深い作品だった。
死期が迫った患者をフリーランンスで個人的に看護師として働くデビッド。自分の息子の死をきっかけに元妻や娘と疎遠になった彼は、患者の在宅看護とエクササイズに励むだけの寂しい日々を送っており、患者たちとの親密な関係が心の拠りどころとなっていた。そんなある日、デビッドは末期がん患者のマーサから、安楽死を手伝ってほしいと頼まれる。

これも今年初夏に上映されたフランス映画「君がくれたグッドライフ」
難病に冒された男性が、「尊厳死」が許されるベルギーまでをゴールに、妻や仲間たちと自転車で旅立つ人生最後のロードムービー。コメディトーンに涙を綴った人間ドラマだった。

昨年公開されたイスラエルの「ハッピーエンドの選び方」も尊厳死を齎す機械装置にとりくむ。
発明が好きなヨヘスケルは、妻のレバーナと共にエルサレムの老人ホームに住んでいる。ある日、彼は死の床にある親友マックスに、何とか自らの意志で穏やかな最期を迎えられる装置を発明してほしいと頼み込まれる。人の良いヨヘスケルは妻や友人たちの反対にも耳を貸さず、親友の心からの頼みに新たな発明に挑む。


しかし今日紹介する映画「92歳のパリジャンヌ」はフィクションでは無い。切実に尊厳死を求めた91歳の老女の実話に基づくだけに説得力も迫力も感動もある。原題は「最後の教訓(レッスン)」とあるが、邦題は何だかバカみたいだ。

パリ11第大学の経済学教授からフランス社会党入りをしたリオネル・ジョスパンは1997年6月から5年間、ジャック・シラク大統領の下で第16代フランス首相を勤めた。

そのジョスパン首相の実母・マドレーヌの人生を、首相の娘で孫娘のノエル・シャトレが綴った小説「最期の教え」を原案を映画化したもの。

「死」をま近に迎える老婆。自分で出来ることのリストが段々に減って行く。92歳の誕生日に「尊厳死」を決意した老嬢とその家族を描く人間ドラマ。
かつて若い頃は助産婦として活躍し、今は子供や孫にも恵まれ、ひとり穏やかな老後を過ごしているマドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)。

まだまだ元気な彼女だが、気がかりなのは、数年前からノートに書き記している「一人でできなくなったことリスト」の項目がどんどん増えていること。
そんな中で迎えた92歳の誕生日、お祝いに駆けつけた家族に対して彼女は驚くべき発表をする。家族全員を前に「2か月後の10月17日に私は逝きます」と宣言する。
「皆に迷惑をかける前に、自らの手で人生に幕を下ろす決意をした」というのだ。
絶対反対を唱える家族全員たちと、決して揺るがないマドレーヌの意志。子供や孫がそれぞれの立場で、マドレーヌの選択をどのように受け止め「死」とどのように向き合うのか、家族の心情の変化を映画は丹念に追う。

自分のユマニテ美学を貫き、人生を終える決意をした1人の老婆とその家族の姿を描く感動作だ。劇中では有名な人物がたくさん登場するので本名でなく役名で出演している。

かつては助産婦として働き、子どもや孫にも恵まれて、現在は穏やかな老後を過ごしているマドレーヌ。(首相の母=ミレーヌ・ジョスパン)。
まだまだ元気な彼女だったが、数年前から書き記している「一人でできなくなったことリスト」の項目が増えていることが気がかりだった。

そして迎えた92歳の誕生日、マドレーヌは「2カ月後の10月17日に私は逝きます」と宣言し、祝いに集まった家族たちは耳を疑うが、それは周囲に迷惑をかける前に人生に幕を下ろしたいという、マドレーヌの揺らぐことのない強い意志だった。

娘のサンドリーヌ(ボネール・ディアーヌ)が母に一番近しく母の心情を理解して行くのだが兄のピエール(アントワーヌ・ピエリ)(大学教授で後の首相)が一番母の心情を理解しないのが可笑しい。頭の良さと人間性の問題は離れている。

ピエールは「一人にするからイケないのだ、家族の誰かが絶えず付き添うか大金を払ってでも手厚く介護する老人ホームへ入れるべきだと主張する。

まさにそのことこそを母親マドレーヌが一番嫌うことだとは理解しようとしない。「出来るだけ生きながらえることが幸せだ」と信じ切っている。

余談になるが私の義母(家人の母)も一切延命策をとらないで欲しいと強い遺志を残していた。
迷惑をかけるので介護ハウスへは入るが、酸素マスクや点滴などチューブに繋がれたまま死にたく無い、との強い要望で一切延命策は取らず自然のまま「99歳の生涯」を閉じた。あと半年生きて100歳の誕生日を迎えてはどうか?などとボクが提案しても聞く耳を持たなかった。

監督はパスカル・プザドゥー。女優としても活躍しているが孫娘の小説に感動し脚色・監督をしたもの。

 主人公、92歳のマドレーヌを「溺れゆく女」や「私の好きな季節」のマルト・ヴィラロンガが演じる。少し違うのでは無いかと思ったのはマルトはもともと喜劇役者。エンドクレジットにマドレーヌのモデルになった、元首相の母のミレーヌ・ジョスパンの実写が出て来るが、小太りでオカシナ顔のヴィラロンガに比べ痩せぎすで上品な顔立ちだ。それに83歳で92歳を演じるには少し若すぎる。

 その娘で母親思いのサンドリーヌを「親密すぎるうちあけ話」「仕立て屋の恋」のボネール・ディアーヌが演じる。こちらは美人の58歳で役柄も実年齢もピッタリだ。

 ジャック・シラクと大統領選を争い僅差で敗れたリオネル・ジョスパンは超有名人だけに、元首相の言動が母親を十分理解できないことを映画で指摘されているのが興味深い。

10月29日よりシネスィッチ銀座他で公開される

「Kubo and the Two Strings」(アメリカ映画・日本未公開):古代の日本の村を背景に孫子を狙う弱な祖父と戦う母子。

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毎週月曜はアメリカでの週末の映画興行成績が発表されるのが楽しみだ。
直近の9月30日から10月2日までの直近の成績は
首位はFOXのティム・バートン監督「Miss Peregrines Home for Peculiar Children」(邦題「ハヤブサが守る家」公開日未定)は3522館で開けて26M。アメリカ以外の海外市場では好調で59か国で36.5Mを稼いでいます。ワールドワイド総計は62.5M(63.1億円)映画を見終わった観客の出口調査CS(=CinemaScor)ではB+評価。

バートン監督としては初めて巨額な制作費110M(112億円)もかけているから海外市場で成績を上げない限り黒字は難しい。昔のジョニー・デップと組んでいたころの「シザーズハンド」ほどの勢いが無い。
主人公高校生ジェイコブ(アサ・バターフィールド)が、謎の死を遂げた祖父の昔話と写真をもとに謎めいたウェールズの島に行き、驚くべき力を持つ子供たちが収容されている孤児院を見つける。
ひょんなことから自分の家族に繋がる不思議な能力の奇妙な子供たちを収容するミス・ペリグリン(エヴァ・グリーン)の児童養護施設で働くことになり、子供たちと交流を深めていったが、彼らを狙う恐ろしい化物が現れて戦いに巻き込まれていく。

原作はランサム・リグズの小説「ハヤブサが守る家」。FOXのクリス・アーロン配給チーフは「結果は満足
のいくものだが続編を制作するかどうかは未だ決めていない」と。
バートン監督のブラック・ユーモアはお金にならない。

2位は同じく新登場のライオンズゲイト配給「Deepwater Horizon」(日本公開未定)は3259館で公開され20.6M。出口調査CSはA−評価。 Mark Wahlbergと監督 Peter Bergの提携で制作された。批評家は好意的に書いておりロットントマトも82%で悪く無いのだがチケットのセールスに結びついていないのが問題。
11人の作業員が行方不明になり、490万バレルの原油が流出した、2010年のメキシコ湾の原油流出事件を描く。
出演はマーク・ウォルバーグを主人公に敵役にカート・ラッセル、ジョン・マルコヴィチ、ケイト・ハドソンなど豪華キャスト。「ディープウォーター・ホライズン」はアメリカルイジアナ州ベニス沖にある原油掘削施設の名前。2010年4月20日、噴出した油が爆発を起こし2日間燃え続けた。
メキシコ湾の沖合で作業中だったイギリスの石油会社・BPの石油プラットフォームの「Deepwater Horizon(ディープウォーター・ホライズン)」で爆発事故が発生し、大量の原油がメキシコ湾に流出した「2010年メキシコ湾原油流出事故」を映画化。
史上最悪の原油流出事故になった同事故では、原油掘削施設で作業中だった11人の作業員が死亡したが、約110人の作業員は無事に脱出し一命をとりとめた。
そんな被害を最小限に抑えるため事故現場で奮闘した作業員たちにスポットを当てた作品だ。

3位は2週目の、西部劇、黒澤明の「7人の侍」と「荒野の7人」のリメイク、ソニー映画とMGMの「The Magnificent Seven」(邦題「マグニフィセント・セブン」:SPE配給17年1月27日より日本公開)3,674館で開けて55%ダウンの15.5M, 2週目累積は61.4M。西部劇でBOを挙げるのは難しいが最高クラスの成績を挙げている。
7人の中心的存在となるサム役を「トレーニング デイ」「イコライザー」でもフークア監督とコンビを組んだデンゼル・ワシントンが演じ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ジュラシック・ワールド」のクリス・プラットや「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホーク、「G.I.ジョー」「ターミネーター:新起動 ジェニシス」などの韓国人気俳優イ・ビョンホンらが共演する。黒沢明の本歌なのに日本人俳優が一人も居ないのが淋しい。
クロサワと言っても今の若い人は黒沢清のことで世界のクロサワ・アキラを知る人が少なく、三船敏郎は故人で無理だとしてもイ・ビョンホンは無いだろう。
このようにハリウッド映画のごく一部が日本で(遅れて)上映されるので成るべく未公開映画を紹介したい。

日本の古代をバックに日本人を主人公としたストップアニメーション「Kubo and the Two Strings」はなかなかの人気映画で公開1カ月でもベスト10に残っている。
少年クボが主人公。制作会社はライカで「コララインとボタンの魔女」(’07)、「パラノーマン ブライス・ホローの謎」(’12)などのライカ・スタジオ制作。

専門の映画評は好評。古代の日本を舞台にした冒険絵巻。バックの音楽は三味線、太鼓などの日本の伝統的楽器で演奏。主人公の侍の子供の衣装や村人の農業のモンペや着物にせよ、村の藁ぶき屋根の民家のディテールにせよよく調べて違和感なくすんなりと入って行ける。
映画の冒頭は大嵐の海。赤ん坊を抱いて岸まで漂流した母と子。

それから数年、聡明で心優しいクボ(アート・パーキンソン)は海辺の町でびゅうきがちの母と一緒に暮らしている。生活費は吟遊詩人とし三味線を弾くと折り紙が動物や植物になって物語を繰り広げる。その謝礼の小銭て慎ましい生活を送っている。

しかし母がいつも注意しているように陽が落ちてから夜空を見上げることを禁じていたが、不意にも敵討ちを求める祖先の悪霊を召喚してしまった。母はクボを祖父から守るために命を落とし、クボが大道芸の吟遊詩人で折り紙に命を拭き込む村の広場は火を噴く龍に荒らされ消失する。

ことで、静かな生活は終わり、戦いの旅にでることになる。
クボは猿(シャーリーズ・セロン)とカブトムシ(マシュー・マコノヒー)を旅のお供とし、家族のため、そして世界で最も偉大な侍だったクボの父親の死の真相のために、血湧き肉躍る冒険へと旅立っていく。母から聞いた話では祖父から母子を守るために剣を持って立ち向かい一命を落としたのだと言う。

魔法の楽器である「三味線」を携え、 自分の出世の秘密を知るため、亡くなった家族の霊と再会し一家再結束のため、そしてサムライ英雄としての務めを果たすために、執念深き祖父の月王(ムーン・キング/レイフ・ファインズ)や悪の双子姉妹(ルーニー・マーラ)たちと戦い繰り広げる。

この作品は約60億円をかけて制作された作品だ。 への尊敬
声優陣もシャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、レイフ・ファインズ、ジョージ・タケイと、豪華かつ実力派がそろっている。

日本の古い村やお祭り(月が出た出たの民謡)の模様、屋台や村人たちが几帳面に描かれて
日本人が見てもハリウッド製のトンチンカンな日本人や風景でなく、侍精神や祖先の念がしっかりと軸を押えてあるだけに見応えがある。

バラバラにされた三味線の日本の糸は母親の髪の毛とお守りのヒモ。これが2ストリングスだ。

いつかDVDで出るので楽しみにしてほしい。

「スーサイド・スクワッド」(SUICIDE SQUAD)(アメリカ映画):スーパーヒーローたちに捕らえられた悪漢どもを刑務所から出して特殊チーム、「自殺部隊」として社会に蔓延る悪を退治させる

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このところの映画興行成績は邦画が圧倒的に強く、ハリウッド映画は80歳を遥かに過ぎたクリントイースト・ウッド監督が「ハドソン川の奇跡」のみで1人頑張っている。

確かに悪くない、ジンと来る邦画アニメ「君の名は」がもう6週間もトップを走っていて130億円を突破する勢いなのも異常だ。この週末2日間で8億円を挙げ現時点で『風立ちぬ』の120億2000万円を超え、「崖の上のポニョ』の155億円に次ぐ邦画アニメーション歴代5位となっている。

田舎町で暮らす女子高生と東京で暮らす男子高生が、心と身体が入れ替わる不思議な体験を通して成長していく姿を描く、突拍子も無いにアこみニメが何故こんなに受けるのだ?w

僕は「スーサイド~」を入院していたこともあって自由の身になった9月27日にロードショウ館丸の内ぴかデリーに出かけたら,公開は既に終了。他の劇場を探し、品川プリンスのTJOYの4時20分の回に駆けつけるが館内(S10)はガラガラ。

確かにアメリカで熱狂的もてるDCコミックス、いやアメコミ全般に日本の観客は冷たい。それにしても小屋の中は閑古鳥が鳴いている、目の子で20人は居るか居ないかだ。丸ピカが2週間でオロすのも無理は無い。

アメコミは日本と違い同じアジアでも中国や韓国などでは受けている。
韓国のイ・ビョウンホンが準主役(スタートレックやGIジョー)で出たり、中国資本のアリババや、ダーリンワンダがハリウッドに資本参加しロケ地を中国本土に持ってくれば中韓での興行成績は日本の数十倍になる。

しかし日本の映画界はこれで良いのだろうか?世界から取り残されガラパゴス状態でアニメにうつつを抜かしている現状を憂う.

DCコミックスが刊行する同名の漫画シリーズの実写じ映画化作品で、様々なDCコミックスの映画作品を、同一の世界を舞台にした作品群として扱う『DCエクステンデッド・ユニバース』シリーズとしては3番目の作品である。

DCコミックスが刊行する「バットマン」などのヒーローコミックの、スピン・オフした複数の敵キャラクター(ヴィラン)を主役に据えた作品。

主役級が出すぎだと、脇で目立つワルを主役に持ってくる手法が流行っている。

 スーパーマンが死去してからしばらく経った後、アメリカ政府の高官アマンダ・ウォーラーは第二のスーパーマンへのカウンターとして、死刑や終身刑となって服役していた悪党達を減刑と引き換えに構成員とした特殊部隊タスクフォースX。

通称「スーサイド・スクワッド」を結成する。実際の戦争しでも服役囚を前線に駆り立て戦わせた「ならず者部隊」の例は枚挙に暇ない。
ヒーローたちによって捕らえられた悪党・犯罪者たちが、減刑と引き換えに政府の汚い仕た事を引き受けるために結成された、「アンチヒーロー・チーム」。

 冷酷かつ狡猾な政府の高官、アマンダ・ウォーラーによって結成される。部隊名は直ようせい訳すると「自殺部隊」。減刑と引き換えるからには、かなり危険なミッションが多く、メンバもしばしば死んでしまう。

例えが悪いが第二次大戦中に日系人強制収容所から募集した若者たちの「442部隊」に似ている。
強制収容所では押さえつけられていた戦闘能力や愛国心(アメリカと日本に対する)でヨーロッパ戦線で大活躍をした。
正に「自殺部隊」で最大の死傷者を出している。

 バットマンをはじめとするヒーローたちによって投獄され、死刑や終身刑となった悪党たちが、減刑と引き換えに「スーサイド・スクワッド(自殺部隊)」の結成を強制され、危険なミッションに挑む。

 有象無象がやたらと出て来て暴れるがウイル・スミスのデッド・ショットで絵が締まる。
やはりスターだね。

 ウィル・スミスの他は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のマーゴット・ロビー、「ロボコップ」のジョエル・キナマンら豪華キャストが共演。異色なのは日本人の女の子、カタナが登場する。オーディションで見染められたカレン・フルカワ。雨に濡れ太ももにピタりのズボンに「我が刃は地を求めている」と白抜きで大書してある。

 バットマン最大の宿敵ジョーカーを、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー賞男優助演賞を受賞したジャレッド・レトが演じる。
監督は「フューリー」のデビッド・エアー。

品川プリンスTJOY他で公開中

「胸騒ぎのシチリア」(A BIGGER SPLASH)(イタリア・フランス映画):未だ焼け棒杭に火の付いたままの男女4人が8年振りにイタリア・シチリア島で再会する

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何かどこかで見た映画だな、と思って調べたらアラン・ドロン、ロミー・シュナイダーそれにジェーン・バーキンと当時の売れっ子スターが出た1969年の「太陽が知っている」のリメイク作品だった。半世紀も昔のことだ、忘れているのも無理は無い。

場所は南仏サントロペの豪華な別荘でアラン・ドロン扮する作家のジャン・ポールとロミー・シュナイダーのマリアンヌは快適な休暇を過していた。
だがマリアンヌが招待した昔の恋人、ハリー(モーリス・ロネ)とその娘ペネロープ(ジェーン・バーキン)が別荘にやはって来てから雰囲気は一変した。

ハリーは、昔の恋人マリアンヌを今でも取り戻す自信があるとジャン・ポールを前にして嘯く。
物語の基本路線は極めて似ているが、人間関係はもっと複雑だ。主人公はアラン・ドロンでなく、世界的な人気歌手、マリアンヌ・レイン(ティルダ・スウィントン)を軸に展開する。

また舞台がサントロペと言う人気で人混みの賑やかな海岸では無く、地中海の澄んだブルーの海に囲まれた閑静なシチリアのパンテッレリーア島と言う淋しい火山島なのが良い。遠くにチュニジアを望み避難民が日に何人も不法入国を繰り返す。


世界的ロックスターのマリアン・レインは、職業病で声が出なくなりコンサーを総て中止し声帯を癒すため、年下の恋人でドキュメンタリー作家のポール(マティアル・スーナールツ)とシチリアのパンテッレリーア島で静かな時間を過ごしていた。

二人がスッポンポンの真っ裸でプール横の岩で日光浴の冒頭のシーンは度肝を抜かれる。今年56歳のスウィントンはシェイプされ締まる処は締まったヌードはカメラがロウアングルで背後から迫るので眩しい限りだ。

そこへスマホが鳴る、マリアンの元彼でカリスマ音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、後5分で島の空港に着く、迎えに来いと。タラップを降りたハリーはセクシーなブロンド美人22歳の娘、ペン(ダコタ・ジョンソン)を連れている。アメリカに母親と住んでいる実娘で昨年会ったばかりだと。間違い無く俺の娘だと、頑張るのが気になる。

ハリーは昔マリアンと8年暮らし、その後友達のポールに彼女を譲って8年。またぞろマリアンを恋しく復縁を目論んでいるようだ。あれほどセックス好きで終わっても直ぐに迫る女は居ないと、ポールに同意を求めるのがオカシイ。

いずれも脳内麻薬エルドルフィンがミチミチていて一触触発状態だ
ハリーは昔話でローリング・ストーンのレコーディングのエピソードを語るが、ドラムが気に入らなくてゴミ箱を叩かせたアルバムは現存すいfるだけに興味をそそる。

退屈そうの娘のペンはポールへの好奇心を募らせる。この金髪の若い娘はドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの実子だ。「フィフティ・シェイド・オブ・グレイ」で見事な裸体を見せてくれたが何処で披露するのか随分待たせる。
小さな湾入口の灰色の火山岩に横たわるペンはビーナスだ。堅物?のポールも思わず覆いかぶさる。

4人の思惑に亀裂が生じ明日早朝に島を発つと言う真夜中のプールでハリーとポールの鬱積した確執が爆発する。

如何にもイタリア的、太陽が一杯のロマンスは日本人を羨ましがらせるシークエンスだが、それに伴う悲劇と喜劇には付き合い切れない。
ハリウッド製のCG大アクションはもう見たく無く、こんな似非ロマンスや美男美女の裸体を満喫するとB級作品ながらノスタルジックな想いに浸れる。

主役のティルダ・スウィントンは「イングリッシュ・ペイシェント」や「フィクサー」などでオスカー女優となり既に56歳ながら原価償却は済みでは無く男性観客の目を楽しませてくれる。

ハリー役は「グランド・ブダペスト・ホテル」、「ハリー・ポッターシリーズ」のヴォルデモート役のレイフ・ファインズ。

22歳(実は17歳だった)ペンは「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のダコタ・ジョンソン、
そして皆に振り回されるドキュメンタリ作家のポールは「君と歩く世界」のマティアス・スーナールツ。
この4人のチームワークはルカ・グァダニーノ監督の演出の下で素晴らしいハーモニーを生じている。

「ミラノ、愛に生きる」に続いてルカ・グァダニーノはお気に入りのティルダ・スウィントンを主演に迎えて力の籠った演出で2時間を超えるミステリーを交えたロマンティック劇に仕上げている。
何か心にキュンと響く作品だ。

11月より新宿ピカデリー他で公開される

「うつろいの標本箱」(日本映画):若い女性たちはいつも誰かを想い恋をしている。

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昨日(5日)の映画美学校での試写会は満席の盛況。
B1エントランスでは若い出演者全員が映画シーンをプリントしたTシャツを着こみ、上映前には小柄で少しふっくらして来た鶴岡監督が劇場公開に漕ぎつけられたことを嬉しそうに語る

映画は完成したが小屋にかからず陽の目を見ないままにDVD直行の作品も多い中、前回の「過る日のやまねこ」がマラケッシュ映画祭で観客賞受賞に続く勢いで劇場公開され、この作品も場末のユーロスペースと言えど映画館での上映は立派な映画作家の勲章なのだ。

僕は鶴岡の卒業制作やエチュードの短篇やPPF作品を含めて鶴岡作品を総て見ているが今まででベストの映画だ。少なくとも独りよがりの独走にブレイキはかかり始めた。
後は外国で賞を取って凱旋興行、商業的に稼げる作品を作るコツを学ぶことだ。鶴岡にはそれだけの才覚がある。
 
大学の卒業制作で手がけた「くじらのまち」がPPFアワード・グランプリなど高い評価を受け、15年にはPPFスカラシップで製作した「過ぐる日のやまねこ」が劇場公開された28歳の鶴岡慧子監督が、今まで拘っていた生まれ故郷,長野県上田市の舞台を離れ東京近郊にシーンを移す。

主人公たちは女性6人。
シンガーソングライター・黒木渚のアルバム「標本箱」の歌詞に歌われるモチーフでオリジナル脚本を書き監督したドラマ。

邦画で脚本と言いながら殆どは原作(それもコミックなどの)を脚色したものを脚本と主張している作家が多い中、鶴岡の優れているのは必ず脚本はオリジナル、そして延々と撮ったフーテージを自分でハサミを入れて編集する。

オリジナのル脚本と編集、そしてメガホンを取っての監督。
これは監督に必須な三種の神器だ。
大成した巨匠はこの神器を守り抜いている。

6人の女性たちはの黒木の歌詞で描かているように「強さ」やその反面の「揺れる思い」の弱さを秘めている。
忙しさにかまける6人の女性の日常の中で彼女たちを巡る9人の男性たちの再会や想いやすれ違いや出会いを、細かいいくエピソードとして散りばめていく。
結果は求めない。夫々のバラバラの思惑が空へ向かって拡散し消滅していく。
鶴岡監督はそれはそれで良しとして映画を終わる。

映画として唯一のドラマは冒頭に起こる。江戸川べりである朝、カメラマンの松島鉄也(渡辺琢真)が川辺で荷物を残して消おえた。死体は川底で発見される。

死んだことを発見したのは大学生の山田イツキ(桜木百)と小野田悠一(小川ゲン)。
イツキは悠一に思いを寄せており、松島を見つけたその日も、頭の中は悠一のことでいっぱいだった。
一方、悠一も通っている絵画教室では、アルバイトでヌードモデルの落合みその(橋本致里)を描くことになっているが他の女の裸を見ることイツキは許せない。

偶然出会った年上に家庭教師坂本亜里沙(岡明子)にその悩みを訴え、坂本が意中の人に「コクる」なら自分もコクると決心する。
坂本はカフェの店主、伊部竜平(伊藤公一)が大好きだった。

桜木は新人群でスター性がある。主人公の大学生役を、16年7月にアイドルグループ「ゆるめるモ!」を卒業した櫻木百が務める。
その他の新人たちの芝居とセリフは桜木同様しっかり着実に展開される。

クローズアップなし、ロングショット長廻しのシーンでNGやトチリは許されない.
本読みやセリフ、エチュードは相当に練習した後が伺われる。
大道具や美術、衣装に金がかけられない。役者の芝居命の映画だ。

3年もサナエ(小久保由梨)は中島(森田祐史)同棲しながら大学時代からの男性ファンが多い。改めてカフェの主人にしらされてた中島は、ジェラシー一杯。同棲し毎日身体を繋いでも心は別だ。

松島と日奈子(今村雪乃)は電車の中で出会い、松島が日奈子を激写したことから暫く付き合った。いつしか付き合いを止めていたが松島の母親が遺品を日奈子に送って来たことから死んだことを知る。労災病院の看護師、西沢淳子(illy)は偶然コーヒーを零した松島にハンカチを貸してあったが母親はそのハンカチを日奈子に送って来ていた。

 日奈子は帰宅途中、患者の坂本(佐藤開)が病院を抜け出して来たのを捕まえる。坂本は松島の残したカメラが空っぽだからフィルムがどこかに落ちていると探す。

 ラストシーンではその松島のフィルムが現像され無数の若者たちの姿が順不同に映し出される。
空に広がる字幕「私たちはいつも誰かを想い恋している」

少し甘いが、若い映画ファンの共感を得るだろう。

11月29日より渋谷ユーロスペースにて公開される。

「湯を沸かすほどの熱い愛」(日本映画):余命二カ月の銭湯の妻が決心した4つのこと。宮沢りえの熱演が光る。

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最近の邦画では随一。今年のナンバー1に推薦できる映画だ。
途中から泣けた泣いた!

中野量太監督はよく知らないが、この作品が商業映画デビューだと言う。
これほどの才能がある人が埋もれていたとは知らなかった。

ただ一点、苦言を呈するなら2時間5分の映画の最後の10分間は要らなかった。
「画竜点睛点睛を欠く」と言うか、もっと適切な言葉で言えば
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なのだ。
タイトルの興に乗って不条理な結末を付け加える必要な無い。

本来なら劇場は「丸の内ピカデリー」か「新宿ピカデリー」などの一流館での上映すべき上質な作品が、二流の新宿バルト9が旗艦になってしまった。

何としてでも最後の10分はカットして映画祭などへ出品して欲しい。ブライアン・デ・マルマも言っている。映画が快適なのは1時間半位の長さで、どんなに長尺でも2時間を超えてはいけないと。


茨木県足利市の町。大きな銭湯「幸の湯」のドアに張り紙。
「亭主が蒸発につき暫く休業いたします」

一家の主、幸野一浩(オダギリジョー)がパチンコに行くと家を出たままこの一年行方不明。

40代の後半だろうか妻の幸野双葉(宮沢りえ)は持ち前の明るさと強さで、休業中の銭湯に代わりパン屋でパートをしながら中2の娘・安澄(杉咲花)を育てている。
しかし安澄は学校へ行きたがらない。苛めを受けているからだ。
「立ち向かうのよ!」と双葉は無理矢理にも学校へ送り出す。
そんなある日、パン屋の店先で突然倒れた双葉は担ぎ込まれた病院でCTスキャンとMRIの検査を受け、突然「余命2カ月」という厳しい宣告を受けてしまう。腎臓がんが体中に転移しレベル4、緩和ケアも適わず抗がん剤も効かず在宅のまま余命を受け入れることになる。しかし誰にも打ち明けない。

その日から余命を数える双葉は、「絶対にやっておくべきこと4つ」を決めて実行していく。
1.夫、一浩を連れ戻し銭湯を再開させる
2.学校で苛められる娘、安澄を独り立ちさせる
3.娘を高足ガニを送ってくれる人に会わせる。
4.自分の実母に会う

依頼した興信所の滝本(駿河太郎)は腕が良く、あっさりと一浩のアパートを探し出す。若い女と暮らしているらしかったが安澄が訪ねると9歳の女の子鮎子(伊東蒼)を残して何処かへ消える。一浩に一発パンチを食らわし鮎子と共に家へ連れて帰る。

双葉の子どもたちとの繋がるエピソードが感動的だ。
「立ち向かうのよ!」と学校へ送り出された安澄は制服を隠され、裸になって授業を受ける。苛めっ子もこれには参る。

鮎子は生みの母親が誕生日までに帰ると約束した手紙を持ち昔のアパートで立ち尽くす。しかし母親は深夜を過ぎても現れない。
大好きなシャブシャブを朝から食べ、泣きながら鮎子は訴える。「これからお風呂の手伝いもします。家に置いてください」

興信所の滝本も母親を昔に亡くした娘を育てている。その幼い娘にママは天国から見ててくれるからね、と双葉は話しかける。

毎年、決まった時期に坂巻君江と言う女性から「高足ガニ」が送られてくる。そのお礼は必ず双葉が書くことになっている。

新婚旅行はエジプトへピラミッドを見に行くと言う約束も反故になり(このピラミッドエピソードも終盤泣かせるが)その代わりに双葉は娘二人を連れて温泉に泊まり最後は駿河湾戸田港へ旅に行く。
そこで聾唖の坂巻君江(篠原ゆき子)に双葉を会わせる。

「私がお父さんと結婚したのは15年前。16年前には君江さんと一緒だったのよ」

双葉を演じる宮沢りえは「紙の月」以来となる映画主演作。原爆で死んだ父親の幽霊との「父と暮らせば」に匹敵する好演。
会う人すべてを包みこむ優しさと強さを持つ双葉役は今回も数々の女優賞を獲得するだろう。

脇を固めるオダギリジョー、子役の杉崎花、伊東蒼、そして松坂桃李、篠原ゆき子、駿河太郎など芸達者の配役が良い。
と言うか中野量太監督の演出力が優れているのだろう。これがデビュー作とは信じられない。それにオリジナル脚本の出来の良さ。最近はコミックの脚色で本物の脚本に出会っていないので強烈な印象と感動を受ける。

ただ冒頭に述べたように、「画竜点睛点睛を欠く」と言うか、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」だけが残念であり勿体無い。

10月29日より新宿バルト9他で公開される

「私の少女時代」(OUR TIMES)(台湾映画):アラフォーの台湾キャリアウーマンが激情の高校時代の男女関係をノスタルジックに思い出す

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台湾映画は日本人にとって何か親しみを感じる。
中国や韓国に見られない親近感だ。
例えばこの主人公、林真心(リン・ジェンシン)は本屋で真っ先に手を取るのは雑誌「NON-NO」でビニール袋に入っているので中身を読もうと家へ急ぐ。表紙の可愛い日本人モデルの女の子が微笑んでいる。

僕みたいな年寄りには今頃の歌手や俳優は全く分からないがこの林真心が大好きで「結婚したい!」ほど憧れるのはアンディ・ラウなら、僕自身もこの高倉健を若くしたような、54歳の香港の俳優を「インファーナル」シリーズ以来大好きだ。

映画の最後にラウ自身が自分のコンサート会場前に現れ、主人公と一緒に写真を撮るなんて、夢みたいな気持ちだ。

四半世紀前の台北市の高校生の群像劇。

ごく普通すう平凡の女子高校生の林真心(リ=ン・ジェンシン)(ビビアン・ソン)。ボサボサ頭にダサい丸眼鏡をかけ勉強も運動もフツーの女の子。夢にまで見る憧れのスターはアンディ・ラウ。レコード屋の前にある等身大のカットアウトに抱き着き店主に追い払われる。

真心が学校一番イケメン男子で優等生、欧陽非凡(=オウヤン・フェイファン)(ディノ・リー)に片思いする。
真心は片思いをしながらも欧陽が学園一のアイドル美女
敏敏と内緒で付き合っていると勘違い、学校のヤンキー少年徐太宇(=シュー・タイユー)(ダレン・ワン)と手を組み、「お似合いカップル」を別れさせようと試み、様々な爆笑ハプニングを引き起こす。

徐太宇は存在感がある。今でこそ学校一の不良だが中学時代は数学オリンピックに出た記録を持つ。真心に励まされて猛勉強をし、10位の優秀賞を取るのに生活指導教官が認めない。この指導教官は校長より権限を持っているから始末が悪い。
全校大会の表彰式で徐を差別したことから真心が造反し優等生も含め全校生徒が一丸になって反抗し立ち上がるシーンは感動的だ。

自分では平凡でドジでブスだと思っている真心は欧陽非凡も不良の徐太宇も憧れの存在。言ってみれば三角関係が成り立っている。90年代ノスタルジーを背景に誰もが経験する初恋の蹉跌をユーモアに描く青春映画だ。

だが欧陽は東大とも言うべき台湾大学に、大宇はアメリカへ留学。

一人残された真心は気が付けば30台後半のOL。
部下を多数率いるチーフでカレシも居ない。

激務の間に真心は高校時代を回想する。 輝かしい青春の日々、ほろ苦い想い出。
社畜状態の自分を脱するため手書きの辞職届けを出して、青春時代のシンボル、アンディ・ラウのコンサートへ出かけたいがチケットは完売。

そこで奇跡が起こる。アンディ・ラウと不良の徐太宇の出現。ノスタルジックな映画のクライマックスは期待して良い。

アンディ・ラウ、ジェリー・イェンら人気スターがカメオ出演。ラウの歌がBGMに使われ、彼の当時の写真やポスターがありとあらゆるところに張ってあるのが嬉しい。

テレビドラマをヒットさせた女性プロデューサーの陳玉珊(フランキー・チェン)の監督デビュー作。昨年夏、台湾で13億円、中国で16億円と大ヒットを記録した作品だ。

11月26日より新宿武蔵野館で公開される
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